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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】カム切換機構および内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20230926BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
F01L13/00 301V
F01L13/00 301W
F02D13/02 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019135477
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017872
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 精一
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 友裕
(72)【発明者】
【氏名】深尾 友晶
(72)【発明者】
【氏名】奥出 竜騎
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232323(JP,A)
【文献】特開2003-106179(JP,A)
【文献】特開2004-124752(JP,A)
【文献】特開2003-206766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00-28/00
F01L 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁を開閉する第1カムおよび第2カムを備え、
記第1カムにより、前記吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における前記下死点と前記上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定し、前記第2カムにより、前記吸気弁を前記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するとともに、前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成され、
前記第2カムは、バルブ開閉タイミングの位相において、前記吸気弁の開弁時における位置と前記吸気弁の閉弁時における位置とが互いに近傍の位置になるように構成されている、カム切換機構。
【請求項2】
前記第2カムは、前記吸気弁を、前記上死点の近傍で開く開閉タイミングに設定するように構成されている、請求項1に記載のカム切換機構。
【請求項3】
少なくとも、出力トルクの発生要求が解除されてインジェクタからの燃料噴射が停止された期間、または、燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、前記第2カムにより前記吸気弁を開閉するように構成されている、請求項1または2に記載のカム切換機構。
【請求項4】
前記出力トルクの発生要求が解除されて前記インジェクタからの燃料噴射が停止された期間において前記第2カムにより前記吸気弁を開閉する場合には、前記出力トルクの発生要求が解除された直後の前記燃焼室内の点火がオフになるタイミングで、前記第1カムから前記第2カムに切り換えるように構成されている、請求項に記載のカム切換機構。
【請求項5】
前記第1カムおよび前記第2カムは、前記吸気弁と排気弁とが同時に開くことがないように、前記吸気弁の開閉タイミングを設定するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載のカム切換機構。
【請求項6】
吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、
前記吸気弁を開閉する吸気側カム切換機構とを備え、
記吸気側カム切換機構は、前記吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における前記下死点と前記上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する第1カムと、前記吸気弁を前記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定する第2カムとを含み、前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成され、
前記第2カムは、バルブ開閉タイミングの位相において、前記吸気弁の開弁時における位置と前記吸気弁の閉弁時における位置とが互いに近傍の位置になるように構成されている、内燃機関。
【請求項7】
吸気弁を開閉する第1カムおよび第2カムを備え、
前記第1カムにより、前記吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における前記下死点と前記上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定し、前記第2カムにより、前記吸気弁を前記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するとともに、前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成され、
前記第2カムは、前記吸気弁を、前記上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている、カム切換機構。
【請求項8】
吸気弁を開閉する第1カムおよび第2カムを備え、
前記第1カムにより、前記吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における前記下死点と前記上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定し、前記第2カムにより、前記吸気弁を前記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するとともに、前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成され、
前記第1カムは、前記吸気弁を、前記下死点よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成され、
前記吸気弁を、前記上死点の近傍で開くとともに、前記下死点よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する小型カムをさらに備え、
前記小型カムと前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成されている、カム切換機構。
【請求項9】
吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、
前記吸気弁を開閉する吸気側カム切換機構とを備え、
前記吸気側カム切換機構を設ける場合には、前記吸気側カム切換機構は、前記吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における前記下死点と前記上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する第1カムと、前記吸気弁を前記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定する第2カムとを含み、前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成され、
前記第2カムは、前記吸気弁を、前記上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている、内燃機関。
【請求項10】
吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、
前記吸気弁を開閉する吸気側カム切換機構とを備え、
前記吸気側カム切換機構を設ける場合には、前記吸気側カム切換機構は、前記吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における前記下死点と前記上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する第1カムと、前記吸気弁を前記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定する第2カムとを含み、前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成され、
前記第1カムは、前記吸気弁を、前記下死点よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成され、
前記吸気弁を、前記上死点の近傍で開くとともに、前記下死点よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する小型カムをさらに備え、
前記小型カムと前記第1カムと前記第2カムとを切り換え可能に構成されている、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カム切換機構および内燃機関に関し、特に、吸気弁および排気弁の少なくとも一方を開閉するカム切換機構および内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気弁を開閉するカム切換機構を備える内燃機関が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、吸気弁を開閉するカムを切り換えるカム切換機構を備える内燃機関が開示されている。カム切換機構は、カムを切り換えることにより、吸気弁が開かれる位相幅を制御するように構成されている。なお、内燃機関は、吸気弁および排気弁が開かれている位相幅が約90度から180度程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-144945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の内燃機関では、吸気弁および排気弁が開かれている位相幅が約90度から180度程度であり比較的小さいため、気筒内において長く吸気が密閉され、気筒内が大きな負圧になりやすい。このため、スロットルバルブ以降(下流側)の吸気通路も大きな負圧になりやすく、吸気通路の下流側に吸気を吸い込む際に、スロットルバルブによる抵抗(ポンピングロス)が大きくなるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ポンピングロスを低減することが可能なカム切換機構および内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるカム切換機構は、吸気弁を開閉する第1カムおよび第2カムを備え、第1カムにより、吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定し、第2カムにより、吸気弁を上記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するとともに、第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成され、第2カムは、バルブ開閉タイミングの位相において、吸気弁の開弁時における位置と吸気弁の閉弁時における位置とが互いに近傍の位置になるように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるカム切換機構では、上記のように構成することによって、第1カムおよび第2カムを設ける場合には、極めて遅い位相で吸気弁を閉じる第2カムに切り換えることにより、吸気弁を、ピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも遅角側で閉じることができる。すなわち、吸気弁を極めて遅くに閉じることができる。このため、気筒内に流入した吸気の大部分を、ピストンの上昇時に吸気通路側に吹き戻すことができるので、気筒内が負圧になるのを抑制することができる。すなわち、スロットルバルブ以降(下流側)の吸気通路が負圧になるのも抑制することができる。その結果、吸気通路の下流側に吸気を吸い込む際に、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができる。また、従来より、触媒性能を効果的に発揮することが望まれている。触媒性能は、触媒を通過する酸素量が大きくなるほど、触媒の熱劣化が発生しやすくなるため、低下する。上記のように、ピストンの上昇時に吸気を吸気通路側に吹き戻すことができると、触媒側に流れる酸素量を低減することができるので、触媒の熱劣化(性能低下)を抑制することができる。また、吸気を吸気通路側に吹き戻すことができると、吸気通路内で吸気および燃料を効果的に温度上昇(霧化)させることができるので、燃料の噴射量を低減(リッチスパイクを軽減)することができる。
【0012】
上記第1の局面によるカム切換機構において、好ましくは、第2カムは、吸気弁を、上死点の近傍で開く開閉タイミングに設定するように構成されている。
【0013】
このように構成すれば、吸気弁を、ピストンが下降を開始してから上昇を完了するまでの略全位相で開いたままとすることができるので、気筒内が負圧になるのをより抑制することができる。このため、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
【0014】
上記第1の局面によるカム切換機構において、好ましくは、少なくとも、出力トルクの発生要求が解除されてインジェクタからの燃料噴射が停止された期間(燃料カット時)、または、燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間(エンジン始動時)において、第2カムにより吸気弁を開閉するように構成されている。
【0015】
このように構成すれば、燃料カット時や、エンジン始動時において、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができるとともに、触媒性能を効果的に発揮することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、出力トルクの発生要求が解除されてインジェクタからの燃料噴射が停止された期間において第2カムにより吸気弁を開閉する場合には、出力トルクの発生要求が解除された直後の燃焼室内の点火がオフになるタイミングで、第1カムから第2カムに切り換えるように構成されている。
【0017】
このように構成すれば、燃料カットが開始されるタイミングに合わせた適切なタイミングにより、第1カムから第2カムに切り換えることができる。このため、燃料カットが開始された直後においても、適切に、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができるとともに、触媒性能を効果的に発揮することができる。
【0018】
上記第1の局面によるカム切換機構において、好ましくは、第1カムおよび第2カムは、吸気弁と排気弁とが同時に開くことがないように、吸気弁の開閉タイミングを設定するように構成されている。
【0019】
このように構成すれば、バルブオーバーラップを確実に防止することができるので、吸気が排気側に流れるのを確実に防止することができる。
【0022】
この発明の第2の局面における内燃機関は、吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、吸気弁を開閉する吸気側カム切換機構とを備え、吸気側カム切換機構は、吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する第1カムと、吸気弁を上記中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定する第2カムとを含み、第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成され、第2カムは、バルブ開閉タイミングの位相において、吸気弁の開弁時における位置と吸気弁の閉弁時における位置とが互いに近傍の位置になるように構成されている。
【0023】
この発明の第2の局面による内燃機関では、上記のように構成することによって、上記第1の局面のカム切換機構と同様に、ポンピングロスを低減することができる。
この発明の第3の局面におけるカム切換機構は、吸気弁を開閉する第1カムおよび第2カムを備え、第1カムにより、吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定し、第2カムにより、吸気弁を中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するとともに、第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成され、第2カムは、吸気弁を、上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。
この発明の第3の局面におけるカム切換機構では、上記のように構成することによって、上記第1の局面のカム切換機構と同様に、ポンピングロスを低減することができる。また、より効果的に、気筒内に流入した吸気を、吸気通路側に吹き戻すことができる。このため、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
この発明の第4の局面におけるカム切換機構は、吸気弁を開閉する第1カムおよび第2カムを備え、第1カムにより、吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定し、第2カムにより、吸気弁を中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するとともに、第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成され、第1カムは、吸気弁を、下死点よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成され、吸気弁を、上死点の近傍で開くとともに、下死点よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する小型カムをさらに備え、小型カムと第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成されている。
この発明の第4の局面におけるカム切換機構では、上記のように構成することによって、上記第1の局面のカム切換機構と同様に、ポンピングロスを低減することができる。また、小型カムにより、車両の駆動状況に応じてより適切な(細かな)カムの切り換えを行うことができるようになるので、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
この発明の第5の局面における内燃機関は、吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、吸気弁を開閉する吸気側カム切換機構とを備え、吸気側カム切換機構を設ける場合には、吸気側カム切換機構は、吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する第1カムと、吸気弁を中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定する第2カムとを含み、第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成され、第2カムは、吸気弁を、上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。
この発明の第5の局面における内燃機関では、上記のように構成することによって、上記第1の局面のカム切換機構と同様に、ポンピングロスを低減することができる。また、より効果的に、気筒内に流入した吸気を、吸気通路側に吹き戻すことができる。このため、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
この発明の第6の局面における内燃機関は、吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、吸気弁を開閉する吸気側カム切換機構とを備え、吸気側カム切換機構を設ける場合には、吸気側カム切換機構は、吸気弁をピストンが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する第1カムと、吸気弁を中間の位相よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定する第2カムとを含み、第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成され、第1カムは、吸気弁を、下死点よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成され、吸気弁を、上死点の近傍で開くとともに、下死点よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する小型カムをさらに備え、小型カムと第1カムと第2カムとを切り換え可能に構成されている。
この発明の第6の局面における内燃機関では、上記のように構成することによって、上記第1の局面のカム切換機構と同様に、ポンピングロスを低減することができる。また、小型カムにより、車両の駆動状況に応じてより適切な(細かな)カムの切り換えを行うことができるようになるので、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
【0024】
なお、本出願では、上記カム切換機構および内燃機関において、以下のような構成も考えられる。
【0025】
(付記項1)
すなわち、上記カム切換機構および内燃機関において、第2カムは、内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して点火した後の吸気工程および圧縮工程に相当するピストンの移動タイミングにおいて、吸気弁が開状態に保持されるように、吸気弁の開閉タイミングを設定するように構成されている。
【0026】
このように構成すれば、吸気工程および圧縮工程に相当するピストンの移動タイミングにおいて、吸気弁を、より長い位相幅にわたり開き続けて、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができるとともに、触媒性能を効果的に発揮することができる。
【0027】
(付記項2)
また、上記カム切換機構および内燃機関において、第2カムは、吸気弁の開閉タイミングにおいて、吸気弁の開弁期間の角度幅が360度となるように構成されている。
【0028】
このように構成すれば、吸気弁が移動する際に、気筒内(スロットルバルブ以降(下流側)の吸気通路)に負圧が発生するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態によるエンジンの構成を示した図である。
図2】第1実施形態によるエンジンのカム切換機構を模式的に示した正面図および側面図である。
図3】第1実施形態によるエンジンの第1カム使用時の吸気弁および排気弁のバルブタイミングを示した図である。
図4】第1実施形態によるエンジンの第2カム使用時の吸気弁および排気弁のバルブタイミングを示した図である。
図5】第1実施形態のエンジンの吸気弁のバルブ位相とバルブリフト量との関係を示した図である。
図6】エンジンから排出されるアクセルのオンオフと、点火時期と、カム切換と、スロットル開度と、燃料噴射と、O排出量との関係について説明するための図である。
図7】第2実施形態によるエンジンのカム切換機構を模式的に示した正面図および側面図である。
図8】第2実施形態のエンジンの吸気弁のバルブ位相とバルブリフト量との関係を示した図である。
図9】第1実施形態の変形例によるエンジンの構成を示した図である。
図10】第1実施形態の変形例によるエンジンの第2カムおよび第4カム使用時の吸気弁および排気弁のバルブタイミングを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
[第1実施形態]
図1図6を参照して、第1実施形態によるエンジン1(内燃機関の一例)の構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、第1実施形態のエンジン1は、エンジン本体2(特許請求の範囲の「内燃機関本体」の一例)と、ECU(Engine Control Unit)3と吸気側カム切換機構4(特許請求の範囲の「カム切換機構」の一例)とを備えている。
【0033】
エンジン本体2は、シリンダブロック21と、シリンダブロック21の上部に取り付けられるシリンダヘッド22とを含んでいる。シリンダブロック21は、燃焼室23が内側に設けられた気筒24を有している。エンジン本体2内には、クランクシャフト(図示せず)が設けられている。また、エンジン本体2には、吸気弁25aおよび排気弁25bが設けられている。
【0034】
エンジン本体2には、上流側から吸気管4aが接続されるとともに、下流側から排気管4bが接続されている。吸気管4aは、吸気弁25aを介して燃焼室23に吸気を供給するように構成されている。排気管4bは、排気弁25bを介して燃焼室23から排出された排気(排気ガス)を外部(大気)に放出するように構成されている。排気管4bには、触媒Cが設けられている。
【0035】
エンジン1は、クランクシャフトの動力により、タイミングチェーン(図示せず)を介して、吸気側カムシャフト26aおよび排気側カムシャフト26bを回転させることによって、吸気弁25aおよび排気弁25bをそれぞれ所定のバルブタイミングにより開閉するように構成されている。
【0036】
各図(図1図2図7および図9)では、吸気側カムシャフト26aおよび排気側カムシャフト26bの軸方向(延びる方向)を、S方向として図示している。
【0037】
ECU3は、吸気側カム切換機構4に所定の駆動信号を送信して、第1カム42aと第2カム42bとを切り換える制御を行うように構成されている。
【0038】
(吸気側カム切換機構の構成)
図2に示すように、吸気側カム切換機構4は、動力伝達部41と、第1カム42aと、第2カム42bとを備えている。なお、第2カム42bは、側面視で(吸気側カムシャフト26aの軸方向から見て)、第1カム42aよりも大きく形成されている。
【0039】
〈動力伝達部の構成〉
動力伝達部41は、第1カム42aと第2カム42bとを切り換え可能に構成されている。動力伝達部41は、第1カム42aと第2カム42bとを切り換えて、第1カム42aと第2カム42bとの一方の動力を吸気弁25aに伝達するように構成されている。
【0040】
動力伝達部41は、第1カム42aにより駆動される第1ロッカーアーム41aと、第2カム42bにより駆動される第2ロッカーアーム41bと、第1ロッカーアーム41aおよび第2ロッカーアーム41bを連結して両者の駆動を同期させる連結部(図示せず)とを備えている。なお、第1ロッカーアーム41aおよび第2ロッカーアーム41bは、共通のシャフト43に回動可能に支持されている。
【0041】
第1ロッカーアーム41aは、一端において吸気弁25aを直接支持している。したがって、吸気弁25aは、通常、第1ロッカーアーム41aを介して、第1カム42aにより駆動されるように構成されている。また、吸気側カム切換機構4は、ECU3(図1参照)から所定の駆動信号を受信した場合、連結部により第1ロッカーアーム41aおよび第2ロッカーアーム41bを連結して、第2カム42bにより吸気弁25aを駆動する状態に切り換えるように構成されている。
【0042】
〈第1カムの構成〉
第1カム42aは、エンジン1が駆動され、車両が通常の運転状態にある場合に、動力伝達部41を介して吸気弁25aを駆動させるように構成されている。第1カム42aは、図3に示すように、吸気弁25aを、上死点の近傍で開くとともに、ピストンPが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相αよりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。
【0043】
具体例として、第1カム42aのカムプロファイルは、IVOが約TDC0度に設定されている。また、第1カム42aのカムプロファイルは、IVCが約ABDC45度に設定されている。
【0044】
なお、上記IVOは、Intake Valve Openを省略した記載である。また、上記TDCは、Top Dead Centerを省略した記載である。また、上記IVCは、Intake Valve Closeを省略した記載である。また、上記ABDCは、After Bottom Dead Centerを省略した記載である。
【0045】
図5に示すように、第1カム42aは、IVO(約ABDC45度)と、IVC(約TDC0度)との中間の位相で、吸気弁25aのバルブリフト量が最大値R2に瞬間的に到達するように構成されている。すなわち、第1カム42aは、吸気弁25aをバルブリフト量が最大値R2となる状態を保持(キープ)するように構成されていない。
【0046】
したがって、第1カム42aは、概して、側面視で(吸気側カムシャフト26aの軸方向から見て)、円形状部分と、円形状部分の外周側に設けられた三角形状部分とを組み合わせた形状に形成されている(図2参照)。
【0047】
〈第2カムの構成〉
図1に示すエンジン1は、出力トルクの発生要求が解除されてインジェクタからの燃料噴射が停止された期間(車両の停止時を含む)において、第2カム42bにより吸気弁25aを開閉するように構成されている。なお、出力トルクの発生要求が解除されたとは、要するに、アクセルがオフになったことを意味する。
【0048】
ここで、図6に示すように、エンジン1は、出力トルクの発生要求が解除された直後(アクセルがオフにされた直後)の燃焼室23内の点火がオフになるタイミング(燃料カットのタイミング)で、吸気側カム切換機構4により、第1カム42aから第2カム42bに切り換えるように構成されている。これにより、エンジン1から排出される酸素量は、略ゼロとなるように低減される。なお、第1カム42aから第2カム42bに切り換えられる際に、わずかに酸素が排気側に排出されるが、以降は酸素が排気側に排出されることはない。
【0049】
また、エンジン1は、出力トルクの発生要求が解除された直後(アクセルがオフにされた直後)に、インジェクタからの燃料噴射をオフにするように構成されている。また、エンジン1は、出力トルクの発生要求が解除された直後(アクセルがオフにされた直後)に、スロットルの開度を小さくするように構成されている。
【0050】
また、エンジン1は、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、第2カム42bにより吸気弁25aを開閉するように構成されている。要するに、エンジン1は、車両の始動時において、第2カム42bにより吸気弁25aを開閉するように構成されている。
【0051】
図4に示すように、第2カム42bは、吸気弁25aを、ピストンPが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相αよりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。詳細には、第2カム42bは、吸気弁25aを、上死点の近傍(上死点を含む)で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。また、第2カム42bは、吸気弁25aを、上死点の近傍で開く開閉タイミングに設定するように構成されている。すなわち、第2カム42bは、吸気弁25aをピストンPが上死点から再び上死点に移動するまでの間において開いたままとする開閉タイミングに設定するように構成されている。
【0052】
具体例として、第2カム42bのカムプロファイルは、IVOおよびIVCが、ともに約TDC0度に設定されている。したがって、第2カム42bは、吸気弁25aの開閉タイミングにおいて、吸気弁25aの開弁期間の角度幅が360度となるように構成されている。
【0053】
要するに、第2カム42bは、エンジン本体2の燃焼室23に燃料を供給して点火した後の吸気工程および圧縮工程に相当するピストンPの移動タイミングにおいて、吸気弁25aが開状態に保持されるように、吸気弁25aの開閉タイミングを設定するように構成されている。
【0054】
図5に示すように、第2カム42bは、第1カム42aのバルブリフト量が最大値R2をとる位相から、所定の位相間隔だけ、バルブリフト量を最大値R2に保持(キープ)するように構成されている。
【0055】
したがって、第2カム42bは、概して、側面視で(吸気側カムシャフト26aの軸方向から見て)、円形状部分と、円形状部分の外周側に設けられた台形状部分とを組み合わせた形状に形成されている(図2参照)。
【0056】
図3および図4に示すように、排気弁25bを駆動させるカム5(図1参照)は、排気弁25bを、ピストンPが上死点から下死点に移動する間における上死点と下死点との中間の位相βよりも遅角側で開くとともに、上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。
【0057】
具体例として、カム5のカムプロファイルは、EVOが約BBDC45度に設定されている。また、カム5のカムプロファイルは、EVCが約TDC0度に設定されている。
【0058】
なお、上記EVOは、Exhaust Valve Openを省略した記載である。また、上記BBDCは、Befor Bottom Dead Centerを省略した記載である。また、上記EVCは、Exhaust Valve Closeを省略した記載である。
【0059】
したがって、図1に示す第1カム42aおよび第2カム42bは、吸気弁25aと排気弁25bとが同時に開くことが(略)ないように、吸気弁25aの開閉タイミングを設定するように構成されている。すなわち、エンジン1は、吸気弁25aと排気弁25bとのバルブオーバーラップが(略)ないように構成されている。なお、バルブタイミングにおいて、排気弁25bが閉じられてから吸気弁25aが開かれるまでの角度幅(位相幅)は、(略)0度である。すなわち、エンジン1は、排気弁25bが閉じられた直後に吸気弁25aが開かれるように構成されている。
【0060】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
第1実施形態では、上記のように構成することによって、第1カム42aおよび第2カム42b(吸気側カム切換機構4)を設けて、極めて遅い位相で吸気弁25aを閉じる第2カム42bに切り換えることにより、吸気弁25aを、ピストンPが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相よりも遅角側で閉じることができる。すなわち、吸気弁25aを極めて遅くに閉じることができる。このため、気筒24内に流入した吸気の大部分を、ピストンPの上昇時に吸気通路側に吹き戻すことができるので、気筒24内が負圧になるのを抑制することができる。すなわち、スロットルバルブ以降(下流側)の吸気通路が負圧になるのも抑制することができる。その結果、吸気通路の下流側に吸気を吸い込む際に、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができる。また、従来より、触媒性能を効果的に発揮することが望まれている。触媒性能は、触媒Cを通過する酸素量が大きくなるほど、触媒Cの熱劣化が発生しやすくなるため、低下する。上記のように、ピストンPの上昇時に吸気を吸気通路側に吹き戻すことができると、触媒C側に流れる酸素量を低減することができるので、触媒Cの熱劣化(性能低下)を抑制することができる。また、吸気を吸気通路側に吹き戻すことができると、吸気通路内で吸気および燃料を効果的に温度上昇(霧化)させることができるので、燃料の噴射量を低減(リッチスパイクを軽減)することができる。なお、気筒24内が負圧になるのを抑制することができると、クランクケース内から、ピストンPと気筒24の内表面との間を介して、クランケース側からエンジンオイルが燃焼室23内に浸入することを抑制することができる。その結果、エンジンオイルが減少するのを抑制することができる。
【0062】
第1実施形態では、上記のように、第2カム42bは、吸気弁25aを、上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。これによって、より効果的に、気筒24内に流入した吸気を、吸気通路側に吹き戻すことができる。このため、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
【0063】
第1実施形態では、上記のように、第2カム42bは、吸気弁25aを、上死点の近傍で開く開閉タイミングに設定するように構成されている。これによって、吸気弁25aを、ピストンPが下降を開始してから上昇を完了するまでの略全位相で開いたままとする(開き続ける)ことができるので、気筒24内が負圧になるのをより抑制することができる。このため、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
【0064】
第1実施形態では、上記のように、少なくとも、出力トルクの発生要求が解除されてインジェクタからの燃料噴射が停止された期間(燃料カット時)、または、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間(エンジン始動時)において、第2カム42bにより吸気弁25aを開閉するように構成されている。これによって、燃料カット時や、エンジン始動時において、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができるとともに、触媒性能を効果的に発揮することができる。
【0065】
第1実施形態では、上記のように、出力トルクの発生要求が解除されてインジェクタからの燃料噴射が停止された期間において第2カム42bにより吸気弁25aを開閉する場合には、出力トルクの発生要求が解除された直後の燃焼室23内の点火がオフになるタイミングで、(吸気側カム切換機構4により)第1カム42aから第2カム42bに切り換えるように構成されている。これによって、燃料カットが開始されるタイミングに合わせた適切なタイミングにより、第1カム42aから第2カム42bに切り換えることができる。このため、燃料カットが開始された直後においても、適切に、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができるとともに、触媒性能を効果的に発揮することができる。
【0066】
第1実施形態では、上記のように、第1カム42aおよび第2カム42bは、吸気弁25aと排気弁25bとが同時に開くことがないように、吸気弁25aの開閉タイミングを設定するように構成されている。これによって、バルブオーバーラップを確実に防止することができるので、吸気が排気側に流れるのを確実に防止することができる。
【0067】
第1実施形態では、上記のように、第2カム42bは、エンジン本体2の燃焼室23に燃料を供給して点火した後の吸気工程および圧縮工程に相当するピストンPの移動タイミングにおいて、吸気弁25aが開状態に保持されるように、吸気弁25aの開閉タイミングを設定するように構成されている。これによって、吸気工程および圧縮工程に相当するピストンPの移動タイミングにおいて、吸気弁25aを、より長い位相幅にわたり開き続けて、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)を低減することができるとともに、触媒性能を効果的に発揮することができる。
【0068】
第1実施形態では、上記のように、第2カム42bは、吸気弁25aの開閉タイミングにおいて、吸気弁25aの開弁期間の角度幅が360度となるように構成されている。これによって、吸気弁25aが移動する際に、気筒24内(スロットルバルブ以降(下流側)の吸気通路)に負圧が発生するのを確実に防止することができる。
【0069】
[第2実施形態]
図7および図8を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、吸気側カム切換機構204(特許請求の範囲の「カム切換機構」の一例)が小型カム42cをさらに備える例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して図示する。
【0070】
図7に示すように、第2実施形態によるエンジン201(特許請求の範囲の「内燃機関」の一例)は、第1カム42aと、第2カム42bと、小型カム42cと、動力伝達部241とを含む吸気側カム切換機構204を備えている。なお、動力伝達部241については、第1実施形態の動力伝達部41と同様の仕組みを有する構成であるため説明を省略する。
【0071】
図8に示すように、小型カム42cは、吸気弁25aを、上死点の近傍で開く開閉タイミングに設定するように構成されている。また、小型カム42cは、吸気弁25aを、第1カム42aよりも進角側で閉じるように閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。また、小型カム42cのバルブリフト量の最大値R1は、第1カム42aのバルブリフト量の最大値R2よりも小さい。
【0072】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
【0075】
第2実施形態では、上記のように、第1カム42aは、吸気弁25aを、下死点よりも遅角側で閉じる開閉タイミングに設定するように構成され、吸気弁25aを、上死点の近傍で開くとともに、下死点よりも進角側で閉じる開閉タイミングに設定する小型カム42cをさらに含み、小型カム42cと第1カム42aと第2カム42bとを切り換え可能に構成されている。これによって、小型カム42cにより、車両の駆動状況に応じてより適切な(細かな)カムの切り換えを行うことができるようになるので、ポンピングロス(スロットルバルブによる抵抗)をより低減することができるとともに、触媒性能をより効果的に発揮することができる。
【0076】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、吸気弁側のみにカム切換機構(吸気側カム切換機構)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図9および図10に示す第1実施形態の変形例のエンジン301(特許請求の範囲の「内燃機関」の一例)のように、排気弁25b側にもカム切換機構(排気側カム切換機構7(特許請求の範囲の「カム切換機構」の一例))を設けてもよい。一例として、エンジン301を以下のように構成する。
【0079】
エンジン301は、動力伝達部71と、第3カム72aと、第4カム72bとを含む排気側カム切換機構7を備えている。動力伝達部71は、第1実施形態の動力伝達部41と同様の構成である。すなわち、動力伝達部71は、ロッカーアーム71aとロッカーアーム71bとを含んでおり、ロッカーアーム71aとロッカーアーム71bとは、共通のシャフト73に回動可能に支持されている。第3カム72aは、排気弁25bを、ピストンPが上死点から下死点に移動する間における上死点と下死点との中間の位相よりも遅角側で開くとともに、上死点の近傍で閉じる開閉タイミングに設定するように構成されている。すなわち、第3カム72aは、第1実施形態の排気弁25bのカム5と同様のバルブタイミングに設定する構成である。第4カム72bは、排気弁25bを、上死点の近傍で開くとともに、上死点の近傍で閉じる開閉タイミング(EVOおよびEVCが、ともに約TDC0度)に設定するように構成されている。要するに、第4カム72bは、エンジン本体2の燃焼室23に燃料を供給して点火した後の燃焼工程および排気工程に相当するピストンPの移動タイミングにおいて、排気弁25bが開状態に保持されるように、排気弁25bの開閉タイミングを設定するように構成されている。
【0080】
したがって、第4カム72bは、排気弁25bの開閉タイミングにおいて、排気弁25bの開弁期間の角度幅が360度となるように構成されている。排気側カム切換機構7を設けることによって、上死点から次の上死点までの略全位相で排気弁25bを開いたままとする(開き続ける)第4カム72bに切り換えることにより、排気弁25bを、ピストンPが下降を開始してから上昇を完了するまでの略全位相で開いたままとする(開き続ける)ことができるので、気筒24内が負圧になるのを抑制することができる。このため、スロットルバルブ以降(下流側)の吸気通路が負圧になるのも抑制することができるので、ポンピングロスを低減することができる。
【0081】
また、上記第1および第2実施形態では、吸気側カム切換機構を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記排気側カム切換機構を備えているならば、吸気側カム切換機構を備えていなくてもよい。
【0082】
また、上記第1および第2実施形態では、吸気弁と排気弁とのバルブオーバーラップがない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸気弁と排気弁とのバルブオーバーラップがあってもよい。
【0083】
また、上記第1および第2実施形態では、第2カムにより吸気弁を閉じるタイミングを、上死点近傍とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2カムにより吸気弁を閉じるタイミングを、上死点近傍としなくてもよい。
【0084】
また、上記第1および第2実施形態では、吸気側カム切換機構により切り換えるカムの数を2つまたは3つとした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、気側カム切換機構により切り換えるカムの数を4つ以上としてもよい。
【0085】
また、上記第1および第2実施形態では、吸気側カム切換機構の第2カムの最大リフト量を、第1カムの最大リフト量と同じにした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2カムの最大リフト量を、第1カムの最大リフト量よりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0086】
また、上記第1および第2実施形態では、吸気側カム切換機構の第2カムを、最大リフト量で所定の位相幅の間、保持(キープ)するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸気側カム切換機構の第2カムを、最大リフト量で所定の位相幅の間、保持することなく、第1カムと同様に(図5参照)、瞬間的に最大リフト量となるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、201、301 エンジン(内燃機関)
2 エンジン本体(内燃機関本体)
4、204 吸気側カム切換機構(カム切換機構)
7 排気側カム切換機構(カム切換機構)
23 燃焼室
25a 吸気弁
25b 排気弁
42a 第1カム
42b 第2カム
42c 小型カム
72a 第3カム
72b 第4カム
P ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10