(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20230926BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230926BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 100A
B60C11/01 B
(21)【出願番号】P 2019145647
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英駿
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-048716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
B60C 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、トレッド端を含むショルダー陸部が形成され、
前記ショルダー陸部には、タイヤ周方向に延びる縦細溝が設けられ、
前記縦細溝は、最も深い溝底を含み、
前記縦細溝の横断面において、前記縦細溝は、タイヤ赤道側に配される内側溝壁と、前記トレッド端側に配される外側溝壁とを含み、
前記内側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向内側に向かって窪む内側凹曲面を含み、
前記外側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向外側に向かって窪む外側凹曲面を含み、
前記内側凹曲面のタイヤ半径方向の外端は、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置
し、
前記外側溝壁は、前記外側凹曲面を形成する外側円弧状部と、前記外側円弧状部のタイヤ半径方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側に延びる外側直線部とを含み、
前記溝底は、前記外側直線部をタイヤ半径方向内側に延長させた仮想線よりも前記トレッド端側に配される、
タイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、トレッド端を含むショルダー陸部が形成され、
前記ショルダー陸部には、タイヤ周方向に延びる縦細溝が設けられ、
前記縦細溝は、最も深い溝底を含み、
前記縦細溝の横断面において、前記縦細溝は、タイヤ赤道側に配される内側溝壁と、前記トレッド端側に配される外側溝壁とを含み、
前記内側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向内側に向かって窪む内側凹曲面を含み、
前記外側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向外側に向かって窪む外側凹曲面を含み、
前記内側凹曲面のタイヤ半径方向の外端は、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置し、
前記内側溝壁は、前記内側凹曲面を形成する内側円弧状部と、前記内側円弧状部のタイヤ半径方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側に延びる内側直線部とを含み、
前記外側溝壁は、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側に延びる外側直線部を含み、
前記内側凹曲面のタイヤ軸方向の内端と前記内側直線部との間のタイヤ軸方向の長さは、前記外側凹曲面のタイヤ軸方向の外端と前記外側直線部との間のタイヤ軸方向の長さよりも小さい、
タイヤ。
【請求項3】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、トレッド端を含むショルダー陸部が形成され、
前記ショルダー陸部には、タイヤ周方向に延びる縦細溝が設けられ、
前記縦細溝は、最も深い溝底を含み、
前記縦細溝の横断面において、前記縦細溝は、タイヤ赤道側に配される内側溝壁と、前記トレッド端側に配される外側溝壁とを含み、
前記内側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向内側に向かって窪む内側凹曲面を含み、
前記外側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向外側に向かって窪む外側凹曲面を含み、
前記内側凹曲面のタイヤ半径方向の外端は、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置し、
前記ショルダー陸部は、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分され、かつ、前記縦細溝と前記トレッド端とで区分される外側部と、前記縦細溝と前記ショルダー主溝とで区分される内側部とを含み、
前記外側部の踏面は、前記内側部の踏面よりもタイヤ半径方向の内側に位置する、
タイヤ。
【請求項4】
前記縦細溝は、前記内側直線部と前記外側直線部との間のタイヤ軸方向の中点を前記縦細溝の深さ方向に延長させた直線の溝中心線を含み、
前記溝底は、前記縦細溝の前記溝中心線よりも前記トレッド端側に位置する、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記縦細溝の溝深さは、前記ショルダー主溝の溝深さの1.5倍以下である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記外側凹曲面のタイヤ軸方向の外端における前記外側部のタイヤ軸方向の長さは、前記外側部の踏面のタイヤ軸方向の長さの1~1.4倍である、請求項3又は5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記縦細溝の前記トレッド部の開口端での溝幅は、前記縦細溝の前記溝底側の最大溝幅以下である、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、空気入りタイヤが記載されている。前記空気入りタイヤには、トレッド端縁から小距離を隔ててタイヤ周方向にのびる偏摩耗防止用の細溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、耐溝底クラック性能及び耐偏摩耗性能を高めることについて、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、耐溝底クラック性能及び耐偏摩耗性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、トレッド端を含むショルダー陸部が形成され、前記ショルダー陸部には、タイヤ周方向に延びる縦細溝が設けられ、前記縦細溝は、最も深い溝底を含み、前記縦細溝の横断面において、前記縦細溝は、タイヤ赤道側に配される内側溝壁と、前記トレッド端側に配される外側溝壁とを含み、前記内側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向内側に向かって窪む内側凹曲面を含み、前記外側溝壁は、前記溝底側でタイヤ軸方向外側に向かって窪む外側凹曲面を含み、前記内側凹曲面のタイヤ半径方向の外端は、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置する。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記溝底が、前記縦細溝の溝中心線よりも前記トレッド端側に位置する、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記外側溝壁が、前記外側凹曲面を形成する外側円弧状部と、前記外側円弧状部のタイヤ半径方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側に延びる外側直線状部とを含む、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、前記溝底が、前記外側直線状部をタイヤ半径方向内側に延長させた仮想線よりも前記トレッド端側に配される、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記内側溝壁が、前記内側凹曲面を形成する内側円弧状部と、前記内側円弧状部のタイヤ半径方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側に延びる内側直線状部とを含む、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記外側溝壁が、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側に延びる外側直線状部を含み、前記内側凹曲面のタイヤ軸方向の内端と前記内側直線状部との間のタイヤ軸方向の長さは、前記外側凹曲面のタイヤ軸方向の外端と前記外側直線状部との間のタイヤ軸方向の長さよりも小さい、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記ショルダー陸部が、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分され、かつ、前記縦細溝と前記トレッド端とで区分される外側部と、前記縦細溝と前記ショルダー主溝とで区分される内側部とを含み、前記外側部の踏面は、前記内側部の踏面よりもタイヤ半径方向の内側に位置する、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記縦細溝の溝深さが、前記ショルダー主溝の溝深さの1.5倍以下である、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記外側凹曲面のタイヤ軸方向の外端における前記外側部のタイヤ軸方向の長さが、前記外側部の踏面のタイヤ軸方向の長さの1~1.4倍である、のが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤは、前記縦細溝の前記トレッド部の開口端での溝幅が、前記縦細溝の前記溝底側の最大溝幅以下である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤは、ショルダー陸部に、タイヤ周方向に延びる縦細溝が設けられている。前記縦細溝の内側溝壁は、溝底側にタイヤ軸方向内側に向かって窪む内側凹曲面を含み、前記縦細溝の外側溝壁は、前記溝底側にタイヤ軸方向外側に向かって窪む外側凹曲面を含んでいる。このような縦細溝は、前記ショルダー陸部の接地による歪を、前記内側凹曲面及び前記外側凹曲面に分散して前記溝底に集中することを抑制できるので、耐溝底クラック性能を高める。
【0017】
例えば、直進走行時、前記ショルダー陸部の前記縦細溝よりもタイヤ赤道側の部分は、前記ショルダー陸部の前記縦細溝よりもトレッド端側の部分よりも大きな接地圧が作用する。本発明のタイヤでは、前記内側凹曲面のタイヤ半径方向の外端が、前記外側凹曲面のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置されている。換言すると、前記縦細溝に隣接するタイヤ赤道側の前記ショルダー陸部のタイヤ半径方向長さは、前記縦細溝に隣接するトレッド端側の前記ショルダー陸部のタイヤ半径方向長さよりも大きくなる。これにより、前記縦細溝に隣接するタイヤ赤道側の前記ショルダー陸部の縦剛性(タイヤ半径方向の剛性)は、前記縦細溝に隣接するトレッド端側の前記ショルダー陸部の縦剛性よりも大きくなる。このため、前記タイヤ赤道側の前記ショルダー陸部及びトレッド端側の前記ショルダー陸部の剛性バランスが高められ、前記ショルダー陸部の耐偏摩耗性能が向上する。
【0018】
したがって、本願発明のタイヤは、優れた耐溝底クラック性能と耐偏摩耗性能とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態を示すのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。本発明は、例えば、乗用車用、自動二輪車用等の空気入りタイヤの他、空気が充填されない非空気式タイヤなど、様々なカテゴリーのタイヤ1に用いることができる。本実施形態のタイヤ1は、重荷重用の空気入りタイヤとして構成されている。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝3が設けられている。これにより、トレッド部2は、ショルダー主溝3とトレッド端Teとの間に区分されるショルダー陸部5を含んでいる。本実施形態のトレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側に、ショルダー主溝3及びショルダー陸部5が設けられている。
【0022】
前記「トレッド端Te」とは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。両トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離が、トレッド幅TWである。
【0023】
「正規状態」とは、タイヤ1が正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0025】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"である。
【0026】
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"とする。
【0027】
本実施形態のショルダー陸部5には、タイヤ周方向に延びる縦細溝8が設けられている。これにより、ショルダー陸部5は、例えば、縦細溝8とショルダー主溝3との間で区分される内側部5Aと、縦細溝8とトレッド端Teとの間で区分される外側部5Bとを含んでいる。
【0028】
図3は、縦細溝8の横断面図である。
図3に示されるように、縦細溝8は、最も深い溝底9と、タイヤ赤道C側に配される内側溝壁10と、トレッド端Te側に配される外側溝壁11とを含んでいる。
【0029】
本実施形態の内側溝壁10は、溝底9側でタイヤ軸方向内側に向かって窪む内側凹曲面12を含んでいる。本実施形態の外側溝壁11は、溝底9側でタイヤ軸方向外側に向かって窪む外側凹曲面13を含んでいる。このような縦細溝8は、ショルダー陸部5の接地による歪を、内側凹曲面12及び外側凹曲面13に分散して溝底9に集中することを抑制できるので、耐溝底クラック性能を高める。
【0030】
内側凹曲面12のタイヤ半径方向の外端12eは、外側凹曲面13のタイヤ半径方向の外端13eよりもタイヤ半径方向内側に位置する。換言すると、内側凹曲面12の外端12eと内側部5Aの踏面5aとの間のタイヤ半径方向長さL1は、外側凹曲面13の外端13eと外側部5Bの踏面5bとの間のタイヤ半径方向長さL2よりも大きくなる。これにより、縦細溝8近傍の内側部5Aの縦剛性(タイヤ半径方向の剛性)は、縦細溝8近傍の外側部5Bの縦剛性よりも大きくなる。このため、内側部5A及び外側部5Bの剛性バランスが高められ、例えば、直進走行時の接地圧の差によるショルダー陸部5の偏摩耗が抑制される。
【0031】
図4は、縦細溝8の溝底9側の拡大図である。
図4に示されるように、内側溝壁10は、例えば、内側凹曲面12を形成する内側円弧状部14と、内側円弧状部14のタイヤ半径方向の外端(内側凹曲面12の外端12e)に連なってタイヤ半径方向外側に延びる内側直線状部15とを含んでいる。
【0032】
内側円弧状部14は、本実施形態では、第1内側部14aと、第1内側部14aに滑らかに連なる第2内側部14bとを含んでいる。本実施形態の第1内側部14aは、円弧の中心が内側凹曲面12よりもタイヤ赤道C側に位置し、かつ内側直線状部15に連なっている。第2内側部14bは、円弧の中心が内側凹曲面12よりもトレッド端Te側に位置し、溝底9を含んでいる。このような内側円弧状部14は、接地圧をタイヤ赤道C側及びトレッド端Te側に分散できるので、耐溝底クラック性能を高める。
【0033】
内側直線状部15は、本実施形態では、内側部5Aの踏面5a(
図3に示される)から第1内側部14aまで直線状に延びている。内側直線状部15は、例えば、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向内側に延びている。このような内側直線状部15は、例えば、直進走行時の接地圧を分散して、溝底9に生じる歪を小さくする。
【0034】
外側溝壁11は、例えば、外側凹曲面13を形成する外側円弧状部16と、外側円弧状部16のタイヤ半径方向の外端(外側凹曲面13の外端13e)に連なってタイヤ半径方向外側に延びる外側直線状部17とを含んでいる。
【0035】
外側円弧状部16は、本実施形態では、第1外側部16aと、第1外側部16aに滑らかに連なる第2外側部16bとを含んでいる。本実施形態の第1外側部16aは、円弧の中心が外側凹曲面13よりもトレッド端Te側に位置し、かつ外側直線状部17に連なっている。第2外側部16bは、円弧の中心が外側凹曲面13よりもタイヤ赤道C側に位置し、溝底9を含んでいる。このような外側円弧状部16は、接地圧をタイヤ赤道C側及びトレッド端Te側に分散できるので、耐溝底クラック性能を高める。
【0036】
第2内側部14b及び第2外側部16bは、本実施形態では、溝底9を介して滑らかに連なっている。これにより、溝底9の近傍のショルダー陸部5の剛性が確保され、耐溝底クラック性能が高められる。「滑らかに連なって」とは、第2内側部14bと第2外側部16bとが溝底9を含む単一の円弧で連なっていることをいう。このような、第2内側部14b及び第2外側部16bが溝底9を含み、単一の円弧の部分を溝底成形部19という。第2内側部14bは、例えば、溝底成形部19と、溝底成形部19よりもタイヤ半径方向外側に配される内側主部20とを含んでいる。第2外側部16bは、例えば、溝底成形部19と、溝底成形部19よりもタイヤ半径方向外側に配される外側主部21とを含んでいる。
【0037】
第1内側部14aの曲率半径R1は、例えば、1.0mm以上が望ましく、3.0mm以上がさらに望ましく、7.0mm以下が望ましく、5.0mm以下がさらに望ましい。内側主部20の曲率半径R2は、第1内側部14aの曲率半径R1よりも小さい、とりわけ上限値が小さいのが望ましい。内側主部20の曲率半径R2は、例えば、1.5mm以上が望ましく、3.0mm以上がさらに望ましく、5.5mm以下が望ましく、4.0mm以下がさらに望ましい。溝底成形部19の曲率半径R3は、第1内側部14aの曲率半径R1及び内側主部20の曲率半径R2よりも小さいのが望ましい。溝底成形部19の曲率半径R3は、例えば、0.25mm以上が望ましく、0.50mm以上がさらに望ましく、1.25mm以下が望ましく、1.00mm以下がさらに望ましい。
【0038】
第1外側部16aの曲率半径R4は、第1内側部14aの曲率半径R1よりも大きいのが望ましい。第1外側部16aの曲率半径R4は、例えば、4.0mm以上が望ましく、6.0mm以上がさらに望ましく、8.0mm以下が望ましく、7.0mm以下がさらに望ましい。外側主部21の曲率半径R5は、第1外側部16aの曲率半径R4よりも小さいのが望ましく、溝底成形部19の曲率半径R3よりも大きいのが望ましく、外側主部21の曲率半径R5は、例えば、1.0mm以上が望ましく、3.0mm以上がさらに望ましく、7.0mm以下が望ましく、5.0mm以下がさらに望ましい。曲率半径R1、R2、R4及びR5は、それぞれ、最大値と最小値との平均である。
【0039】
外側直線状部17は、本実施形態では、外側部5Bの踏面5b(
図3に示される)から第1外側部16aまで直線状に延びている。外側直線状部17は、例えば、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向内側に延びている。このような外側直線状部17は、例えば、直進走行時の接地圧を分散して、溝底9に生じる歪を小さくする。
【0040】
図5は、縦細溝8の横断面図である。
図5に示されるように、外側直線状部17と内側直線状部15とは、本実施形態では、タイヤ半径方向内側に向かって先細りのテーパ状に延びている。なお、外側直線状部17と内側直線状部15とは、例えば、互いに平行に延びていても良い。
【0041】
溝底9と内側凹曲面12の外端12eとの間のタイヤ半径方向の高さ(以下、「内側凹曲面高さ」という場合がある。)H1は、4mm以下であるのが望ましい。溝底9と外側凹曲面13の外端13eとの間のタイヤ半径方向の高さ(以下、「外側凹曲面高さ」という場合がある。)H2は、4mmを超えるのが望ましい。これにより、縦細溝8近傍の内側部5A及び縦細溝8近傍の外側部5Bの剛性の低下を抑制しつつ、直進走行時の接地圧を適切に分散することができる。
【0042】
特に限定されるものではないが、内側凹曲面高さH1は、3.0mm以上であるのが望ましい。また、外側凹曲面高さH2は、縦細溝8の溝深さd1の50%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。また、外側凹曲面高さH2は、ショルダー主溝3の溝深さD1(
図2に示す)の85%以下であるのが望ましく、50%以下がさらに望ましい。縦細溝8の溝深さd1は、内側部5Aの踏面5aから溝底9までのタイヤ半径方向の長さである。
【0043】
溝底9は、本実施形態では、縦細溝8の溝中心線8cよりもトレッド端Te側に位置する。このような縦細溝8は、縦細溝8近傍の内側部5Aの剛性を外側部5Bの剛性よりも高く維持して、耐偏摩耗性能を高める。溝中心線8cは、内側直線状部15と外側直線状部17との間のタイヤ軸方向の中点を縦細溝8の長手方向に滑らかに延長させた直線である。
【0044】
本実施形態の溝底9は、外側直線状部17をタイヤ半径方向内側に延長させた仮想線17jよりもトレッド端Te側に配されている。これにより、上述の作用がより効果的に発揮される。
【0045】
溝底9が仮想線17jよりも過度にトレッド端Te側に配される場合、溝底9近傍の剛性が小さくなり、耐溝底クラック性能が悪化するおそれがある。このため、仮想線17jと溝底9との間のタイヤ軸方向の長さL3は、縦細溝8の最大溝幅wxの10%~35%であるのが望ましい。縦細溝8の溝幅は、溝中心線8cと直交する向きの長さである。
【0046】
図6は、縦細溝8の横断面図である。
図6に示されるように、内側凹曲面12のタイヤ軸方向の内端12iと内側直線状部15との間のタイヤ軸方向の長さL4は、外側凹曲面13のタイヤ軸方向の外端13kと外側直線状部17との間のタイヤ軸方向の長さL5よりも小さいのが望ましい。これにより、縦細溝8近傍の内側部5A及び縦細溝8近傍の外側部5Bの剛性バランスがさらに高められる。前記タイヤ軸方向の長さL4は、前記タイヤ軸方向の長さL5の10%~35%が望ましい。このように、本実施形態の縦細溝8は、略丸底フラスコ形状であって、タイヤ軸方向に非対称な形状を有する。
【0047】
外側凹曲面13のタイヤ軸方向の外端13kにおける外側部5Bのタイヤ軸方向の長さWs1は、外側部5Bの踏面5bのタイヤ軸方向の長さWsの1~1.4倍であるのが望ましい。これにより、踏面5bに隣接する外側部5Bの剛性と、縦細溝8の溝底9に隣接する外側部5Bの剛性とのバランスが確保され、外側部5Bの偏摩耗が抑制される。
【0048】
外側部5Bの踏面5bのタイヤ軸方向の長さWsは、ショルダー陸部5のタイヤ軸方向の長さWt(
図1に示す)の3%~8%であるのが望ましい。このような外側部5Bは、内側部5Aの剛性が過度に高くなるのを抑制して、内側部5Aのすべりによる肩落ち摩耗を抑制する。
【0049】
縦細溝8のトレッド部2の開口端2kでの溝幅w1は、縦細溝8の溝底9側の最大溝幅wx(
図5に示す)以下であるのが望ましい。これにより、ショルダー陸部5の体積を維持してその剛性が確保されるとともに、溝底9に生じるクラックが抑制される。このような観点より、縦細溝8の溝幅w1は、最大溝幅wxの50%以下であるのがさらに望ましい。また、縦細溝8の溝幅w1は、最大溝幅wxの20%以上であるのが望ましく、30%以上であるのがさらに望ましい。縦細溝8の溝幅w1は、例えば、0.3~6.0mmであるのが望ましく、0.6~2.4mmであるのがさらに望ましい。
【0050】
図5に示されるように、縦細溝8の溝深さd1は、本実施形態では、ショルダー主溝3の溝深さD1の1.5倍以下である。このような縦細溝8は、外側部5Bの大きな剛性の低下を抑制する。このような観点より、縦細溝8の溝深さd1は、ショルダー主溝3の溝深さD1の1.0倍以下であるのが望ましい。縦細溝8の溝深さd1は、例えば、ショルダー主溝3の溝深さD1の0.5倍以上であるのが望ましい。
【0051】
外側部5Bの踏面5bは、内側部5Aの踏面5aよりもタイヤ半径方向の内側に位置する。これにより、外側部5Bの踏面5bのすべりが抑制され、肩落ち摩耗を防止することができる。このような観点より、外側部5Bの踏面5bと内側部5Aの踏面5aとのタイヤ半径方向の位置ずれ量H3は、1.0~4.0mmである。
【0052】
図1に示されるように、縦細溝8は、本実施形態では、タイヤ周方向に連続して延びている。これにより、本実施形態の外側部5Bは、タイヤ周方向に連続するように形成されている。
【0053】
縦細溝8は、本実施形態では、直線状に延びている。縦細溝8は、例えば、ジグザグ状や波状に延びていても良い。
【0054】
内側部5Aは、本実施形態では、タイヤ軸方向に延びるショルダー細溝23が設けられている。本実施形態のショルダー細溝23は、一端がショルダー主溝3に連なり、他端がショルダー陸部5内で終端している。ショルダー細溝23は、タイヤ周方向に複数並べられている。ショルダー陸部5は、例えば、ショルダー細溝23を除いて、他の溝状部が設けられていない。
【0055】
ショルダー細溝23は、例えば、タイヤ軸方向に対する角度θ1が10度以下、本実施形態では、0度で延びている。ショルダー細溝23の溝幅w2は、0.3~0.9mmであるのが望ましい。ショルダー細溝23の溝深さ(図示省略)は、0.5~1.5mmであるのが望ましい。ショルダー細溝23のタイヤ軸方向の長さL6は、1.0~5.0mmであるのが望ましい。
【0056】
また、本実施形態のトレッド部2には、ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間にタイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝4が設けられている。クラウン主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cの両側に設けられている。これにより、トレッド部2には、例えば、ショルダー主溝3とクラウン主溝4との間に区分されるミドル陸部6と、両側のクラウン主溝4、4の間に区分されるクラウン陸部7とがさらに設けられる。
【0057】
ショルダー主溝3及びクラウン主溝4は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びている。これにより、ショルダー主溝3又はクラウン主溝4近傍の陸部の剛性が高く維持されて、耐偏摩耗性能が高められる。なお、ショルダー主溝3及びクラウン主溝4は、例えば、ジグザグ状や波状に延びていても良い。
【0058】
図1のB-B線断面が、
図2のショルダー主溝3及びクラウン主溝4の実線で示される。また、
図1のC-C線断面が、
図2のショルダー主溝3及びクラウン主溝4の破線で示される。
図2に示されるように、ショルダー主溝3及びクラウン主溝4は、それぞれ横断面において、トレッド端Te側の第1溝壁25と、タイヤ赤道C側の第2溝壁26と、第1溝壁25と第2溝壁26とを継ぐ溝底27とを含んでいる。溝底27は、各溝3、4のそれぞれにおいて、最も溝深さが深いところである。本実施形態の溝底27は、ショルダー主溝3及びクラウン主溝4ともに、タイヤ軸方向に一定の幅を有している。
【0059】
第1溝壁25及び第2溝壁26は、例えば、タイヤ半径方向に対して傾斜している。本実施形態の第1溝壁25及び第2溝壁26は、そのタイヤ半径方向に対する角度αが、タイヤ周方向に変化している。
【0060】
ショルダー主溝3の第1溝壁25の角度αの変化のピッチ(角度αの最小値間の距離(図示省略))は、例えば、ショルダー主溝3の第2溝壁26の角度αの変化のピッチ(角度αの最小値間の距離(図示省略))と半ピッチずれている。同様に、クラウン主溝4の第1溝壁25の角度αの変化のピッチ(角度αの最小値間の距離(図示省略))は、例えば、クラウン主溝4の第2溝壁26の角度αの変化のピッチ(角度αの最小値間の距離(図示省略))と半ピッチずれている。
【0061】
図1に示されるように、このようなショルダー主溝3は、その溝底27の幅中心線27cが、溝中心線3cを挟んで波状に延びるように形成される。同様に、クラウン主溝4は、その溝底27の幅中心線27cが、溝中心線4cを挟んで波状に延びるように形成される。このようなショルダー主溝3及びクラウン主溝4は、これらの溝底27に作用する歪が分散されるので、溝底27に生じるクラックが抑制される。
【0062】
このような第1溝壁25及び第2溝壁26の角度αの最小値は、3~9度であるのが望ましく、角度αの最大値は、15~21度であるのが望ましい。
【0063】
ショルダー主溝3及びクラウン主溝4は、特に限定されるものではないが、その溝幅W1が6~15mmであるのが望ましく、その溝深さD1(
図2に示す)が10~18mmであるのが望ましい。
【0064】
本実施形態のミドル陸部6には、タイヤ周方向に延びるミドル縦溝30と、ショルダー主溝3に連なる第1ミドル細溝31と、クラウン主溝4に連なる第2ミドル細溝32とが設けられている。
【0065】
本実施形態のミドル縦溝30は、タイヤ軸方向に屈曲しており、横向きV字状に形成されている。ミドル縦溝30は、両端がミドル陸部6内で終端している。ミドル縦溝30は、例えば、縦細溝8の溝幅w1よりも大きな溝幅を有している。ミドル縦溝30は、例えば、トレッド端Te側に屈曲する第1ミドル縦溝30Aと、タイヤ赤道C側に屈曲する第2ミドル縦溝30Bとを含んでいる。第1ミドル縦溝30A及び第2ミドル縦溝30Bは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0066】
本実施形態の第1ミドル細溝31及び第2ミドル細溝32は、それぞれ、ミドル陸部6内で終端している。第1ミドル細溝31及び第2ミドル細溝32は、例えば、タイヤ周方向に複数並べられている。第1ミドル細溝31及び第2ミドル細溝32の本数は、本実施形態では、ミドル縦溝30の本数よりも多い。
【0067】
本実施形態のクラウン陸部7には、タイヤ周方向に連続して延びるクラウン縦溝35と、クラウン縦溝35とクラウン主溝4との間を継ぐクラウン横溝36と、クラウン主溝4からタイヤ赤道C側に向かって延びるクラウン細溝37とが設けられている。
【0068】
本実施形態のクラウン縦溝35は、タイヤ赤道C上を直線状に延びている。クラウン縦溝35は、例えば、縦細溝8よりも大きな溝幅を有している。
【0069】
本実施形態のクラウン横溝36は、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状に延びている。クラウン横溝36は、クラウン縦溝35からタイヤ軸方向の一方側(図では右側)へ延びる第1クラウン横溝36Aと、クラウン縦溝35からタイヤ軸方向の他方側(図では左側)へ延びる第2クラウン横溝36Bとを含んでいる。第1クラウン横溝36A及び第2クラウン横溝36Bは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に配されている。第1クラウン横溝36A及び第2クラウン横溝36Bは、例えば、クラウン細溝37と重複するようにしてクラウン主溝4に連なっている。
【0070】
本実施形態のクラウン細溝37は、タイヤ軸方向の一方側のクラウン主溝4に連なる第1クラウン細溝37Aと、タイヤ軸方向の他方側のクラウン主溝4に連なる第2クラウン細溝37Bとを含んでいる。第1クラウン細溝37A及び第2クラウン細溝37Bは、それぞれ、タイヤ周方向に並べられている。
【0071】
クラウン細溝37、第1ミドル細溝31及び第2ミドル細溝32は、本実施形態では、ショルダー細溝23と溝幅、溝深さ、タイヤ軸方向に対する角度、及び、タイヤ軸方向の長さが同じで形成されている。
【0072】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0073】
図1の基本パターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの耐偏摩耗性能及び耐溝底クラック性能がテストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
タイヤサイズ:295/75R22.5
リム:22.5×8.25
内圧:760kPa
【0074】
<耐偏摩耗性能及び耐溝底クラック性能>
ドライバーが、各試供タイヤをリム組みして下記車両の全輪に装着し、アスファルト路面のテストコースを20000km走行させた。走行後、ショルダー陸部の内側部の踏面、及び、縦細溝の溝底がテスターの目視によって確認された。耐偏摩耗性能については、前記踏面の偏摩耗状態、耐溝底クラック性能については、前記溝底のクラックの状態がテスターの官能で評価された。結果は、比較例1の値を100とした評点で示される。数値の大きいほうが良好である。
車両:10tトラック、荷台中央に標準積載量の100%の荷物を積載
速度:80km/h
【0075】
【0076】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤよりも耐偏摩耗性能及び耐溝底クラック性能が優れていることが確認できる。また、タイヤサイズの異なるタイヤを用いてテストを行ったが、同様の結果であった。
【符号の説明】
【0077】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ショルダー陸部
8 縦細溝
9 溝底
10 内側溝壁
11 外側溝壁
12 内側凹曲面
12e 内側凹曲面の外端
13 外側凹曲面
13e 外側凹曲面の外端