(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】車両用前照灯のレンズ及び車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/265 20180101AFI20230926BHJP
F21S 41/255 20180101ALI20230926BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20230926BHJP
F21S 41/155 20180101ALI20230926BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20230926BHJP
F21W 102/18 20180101ALN20230926BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/255
F21S41/148
F21S41/155
F21W102:155
F21W102:18
(21)【出願番号】P 2019150595
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三菅 大
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118241(JP,A)
【文献】特開2014-165088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103225780(CN,A)
【文献】特開2008-226542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21W 102/155
F21W 102/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用前照灯のレンズであって、
光源からの光が入射する入射面と、
前記入射面から入射した光を出射する出射面と、を備え、
前記出射面は、車両搭載状態で上端を含む上縁領域において、前記入射面から入射する光のうち前記出射面で前記入射面側に内面反射され前記入射面で前記出射面側に内面反射されて前記上縁領域に到達する光を車両搭載状態における後方に内面反射する形状を有
し、
前記入射面は、前記上縁領域に対応する対応領域を有し、
前記対応領域は、当該対応領域と前記上縁領域とで形成されるレンズ部分の焦点が、他の部分の焦点の下方に位置する形状を有する
車両用前照灯のレンズ。
【請求項2】
前記出射面は、車両搭載状態における前方から見て円形状である
請求項1に記載の車両用前照灯のレンズ。
【請求項3】
前記上縁領域は、光軸に垂直な平面、又は、当該光軸に垂直な平面に対して車両搭載状態の上側が前記光源側に所定角度傾いた平面に沿った形状を有する
請求項1又は請求項2に記載の車両用前照灯のレンズ。
【請求項4】
前記出射面は、前記入射面から入射する光を車両前方に照射して主照射パターンを形成する主照射領域を有し、
前記上縁領域は
、前記入射面から入射して直接当該上縁領域に到達する光を車両前方のうち前記主照射パターンの上方に照射して補助照射パターンを形成する形状に形成される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用前照灯のレンズ。
【請求項5】
前記上縁領域は、前記主照射領域よりも上方に配置される
請求項4に記載の車両用前照灯のレンズ。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタで反射された前記光を車両前方に照射する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用前照灯のレンズと
を備える車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯のレンズ及び車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
光源と、光源からの光を反射するリフレクタと、リフレクタで反射された光を入射面から入射して出射面から車両前方の照射領域に出射するレンズと、を備える車両用前照灯が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両用前照灯においては、レンズの入射面から入射した光の一部が出射面で入射面側に内面反射される場合がある。この内面反射された光は、更に入射面で出射面側に内面反射されて出射面の上部に到達し、出射面の上部から上方に出射される場合がある。このように出射される光は、グレア光となる可能性がある。このため、グレア光の発生を抑制することが可能なレンズが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、グレア光の発生を抑制することが可能な車両用前照灯のレンズ及び車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用前照灯のレンズは、車両に搭載される車両用前照灯のレンズであって、光源からの光が入射する入射面と、前記入射面から入射した光を出射する出射面と、を備え、前記出射面は、車両搭載状態で上端を含む上縁領域において、前記入射面から入射する光のうち前記出射面で前記入射面側に内面反射され前記入射面で前記出射面側に内面反射されて前記上縁領域に到達する光を車両搭載状態における後方に内面反射する形状を有する。
【0007】
また、前記出射面は、車両搭載状態における前方から見て円形状であってもよい。
【0008】
また、前記上縁領域は、光軸に垂直な平面、又は、当該光軸に垂直な平面に対して車両搭載状態の上側が前記光源側に所定角度傾いた平面に沿った形状を有してもよい。
【0009】
また、前記出射面は、前記入射面から入射する光を車両前方に照射して主照射パターンを形成する主照射領域を有し、前記上縁領域は、前記主照射領域よりも上方に配置され、前記入射面から入射して直接当該上縁領域に到達する光を車両前方のうち前記主照射パターンの上方に照射して補助照射パターンを形成する形状に形成されてもよい。
【0010】
また、前記入射面は、前記上縁領域に対応する対応領域を有し、前記対応領域は、当該対応領域と前記上縁領域とで形成されるレンズ部分の焦点が、他の部分の焦点の下方に位置する形状を有してもよい。
【0011】
本発明に係る車両用前照灯は、光源と、前記光源からの光を反射するリフレクタと、前記リフレクタで反射された前記光を車両前方に照射する上記の車両用前照灯のレンズとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、グレア光の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、レンズの上部の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、レンズを車両前方から見た場合の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、レンズにおける焦点を説明するための図である。
【
図5】
図5は、比較例に係る車両用前照灯の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る車両用前照灯の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、他の例に係る車両用前照灯を示す図である。
【
図8】
図8は、車両用前照灯から照射される前照灯パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用前照灯のレンズ及び車両用前照灯の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯100の一例を示す図である。
図1に示すように、車両用前照灯100は、光源10と、リフレクタ20と、レンズ30と、放熱部材40と、シェード50とを備えている。光源10、リフレクタ20、レンズ30、放熱部材40、及びシェード50は、いわゆるプロジェクタ型のランプユニットを構成している。
【0016】
車両用前照灯100は、車両前部の左側及び右側にそれぞれ取り付けられる。車両に取り付けられる場合、車両用前照灯100は、不図示のランプハウジングとランプレンズ(例えば、素通しのアウターレンズなど)とで形成される灯室に収容され、不図示の光軸調整機構に接続される。光軸調整機構は、車両用前照灯100は、上下方向及び左右方向の光軸調整が可能となっている。
【0017】
灯室内には、上記ランプユニットの他、例えばクリアランスランプユニット、ターンシグナルランプユニット、デイタイムランニングランプユニットなどが配置される場合がある。また、灯室内には、インナーパネル(図示せず)やインナーハウジング(図示せず)やインナーレンズ(図示せず)などが配置される場合がある。
【0018】
光源10は、本実施形態において、例えばLEDやOLED(有機EL)などの半導体型光源である。光源10は、発光面11を有する。光源10は、発光面11がランバーシアン分布を形成するように光を出射する。車両用前照灯100が車両に取り付けられた場合、発光面11は例えば上方に向けられ、水平面に平行に配置される。
【0019】
光源10は、放熱部材40の光源固定部42に固定されている。なお、光源固定部42は、フィン43に連結されている。フィン43には、不図示のフィンが設けられている。このため、半導体型光源である光源10において生じた熱が光源固定部42からフィン43を介して外部に放出されるようになっている。なお、光源固定部42とフィン43とは、ヒートシンクとして一体に形成されていてもよい。
【0020】
リフレクタ20は、光源10からの光をレンズ30に向けて反射する。リフレクタ20は、光源10の上方に配置され、例えば樹脂部材など、耐熱性が高くかつ光不透過性の材料を用いて形成されている。リフレクタ20は、スクリューなどの固定部材によって放熱部材40に固定されている。
【0021】
リフレクタ20は、前側部分および下側部分が開口し、かつ、後側部分および上側部分および左右両側部分が閉塞した中空形状となっている。リフレクタ20の内面には、反射面21が形成されている。反射面21は、光源10からの光をレンズ30に向けて反射する。
【0022】
反射面21は、回転楕円面又は当該回転楕円面を基調とした自由曲面となっている。本実施形態において、反射面21は、焦点F1及び焦点F2を有する楕円形の反射面である。焦点F1は、光源10の発光面11の中心若しくはその近傍に配置される。焦点F2は、後述のレンズ30の焦点と重なる位置に配置される。
【0023】
また、シェード50は、例えば金属板など、光源10からの光を遮光可能な部材で構成されている。シェード50は、光源10とレンズ30との間に配置されている。シェード50は、不図示の駆動部に接続されており、例えばリフレクタ20によって反射された光の一部を遮光する第1位置と、当該光を遮光しない第2位置との間を移動可能としてもよい。
【0024】
レンズ30は、リフレクタ20に対して車両の前方に配置される。レンズ30は、例えばポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂材料によって形成される。レンズ30は、例えば不図示のレンズホルダに支持される。レンズ30は、焦点(図示せず)と、光軸(レンズ光軸)AXとを有する。レンズ30の光軸AXは、リフレクタ20の光軸と一致もしくはほぼ一致する。レンズ30は、反射面21からの反射光を車両の前方に照射する。
【0025】
レンズ30は、入射面31及び出射面32を有する。入射面31は、リフレクタ20からの反射光が入射する。入射面31は、光源10側に凸形状を有する非球面状である。入射面31は、上部に対応領域31aが設けられる。対応領域31aは、後述する出射面32の上縁領域32aに対応する領域である。対応領域31aの詳細な構成については、後述する。
【0026】
出射面32は、入射面31から入射した光を車両前方に向けて出射する。出射面32は、全体としては光源10とは反対側に向けて凸形状を有する。出射面32は、上端部32bを含む上縁領域32aを有する。上縁領域32aは、光源10側に凹状となる凹状部である。
【0027】
図2は、レンズ30の上部の一例を示す断面図である。
図3は、レンズ30を車両前方から見た場合の一例を示す図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態において、上縁領域32aは、出射面32のうち、上下方向において上端部32bから下方(光軸AX側)に所定距離D1だけ離れた位置までの範囲であって、左右方向の全体に亘る範囲である。光軸AXから上縁領域32aの上端部32bまでの距離、すなわちレンズ30の半径D2に対する所定距離D1の割合は、例えば10%以上、20%以下とすることができる。なお、距離D2に対する距離D1の割合は、上記に限定されず、他の値とすることができる。
【0028】
上縁領域32aは、主照射領域32cよりも上方に配置される。主照射領域32cは、入射面31から入射する光を車両前方に照射して主照射パターンP1(
図8参照)を形成する。本実施形態において、主照射パターンとしては、例えばロービームパターン等が挙げられる。
【0029】
上縁領域32aは、上端部32bから下方にかけて形成される後方反射部32dを有する。後方反射部32dは、入射面31から入射する光のうち出射面32で入射面31側に内面反射され入射面31で出射面32側に内面反射されて上縁領域32aに到達する光L2を車両搭載状態における後方に内面反射する。
【0030】
後方反射部32dは、例えば光軸AXに垂直な平面S1、又は、当該平面S1に対して車両搭載状態の上側が光源10側に所定角度α傾いた平面S2に沿った形状を有する。後方反射部32dは、平面又は曲面とすることができる。所定角度αは、例えば0°より大きく15°より小さい角度とすることができる。
【0031】
後方反射部32dの下端側は、出射面32の主照射領域32cに接続する接続部32eが形成される。接続部32eは、後方反射部32dの下端から下方に向けて徐々に車両前方への突出量が大きくなる形状(車両後方に凸の形状)となる部分と、途中から徐々に突出量が小さくなる形状(車両前方に凸の形状)となる部分とを有する。この構成により、主照射領域32cから後方反射部32dにおいては、滑らかに接続されている。
【0032】
図4は、レンズ30における焦点を説明するための図である。
図4においてレンズ30を通過する光線は、光源10からの光を示すものではなく、レンズ30の焦点を通る代表的な光の光路を示している。入射面31の対応領域31aは、上縁領域32aに対応する範囲に設けられる。対応領域31aは、当該対応領域31aと上縁領域32aとで形成されるレンズ部分30aの焦点F3が、他の部分30bの焦点F2の下方に位置する形状を有する。対応領域31aは、焦点F3からの光が対応領域31aに入射する場合に、対応領域31aに入射した光が上縁領域32aから出射され、車両前方に補助照射パターンP2(
図8参照)を形成する形状に形成される。補助照射パターンP2としては、例えばオーバーヘッドパターン等が挙げられる。このような形状として、例えば、対応領域31aは、上端31b側に至るにつれて車両前方への湾曲量が大きくなる形状となっている。
【0033】
上記のように構成された車両用前照灯100において、例えば車両に設けられた点灯スイッチがオフの場合、光源10は消灯した状態である。この状態から点灯スイッチがオンに切り替えられた場合、光源10が点灯する。光源10が点灯すると、発光面11から光が放射され、リフレクタ20の反射面21によってレンズ30側に反射される。リフレクタ20によって反射された光は、入射面31に入射する。
【0034】
図5は、比較例に係る車両用前照灯200の一例を示す図である。車両用前照灯200は、光源110、リフレクタ120及びレンズ130(光軸AXA)を有する。レンズ130は、入射面131及び出射面132を有する。出射面132には、本実施形態に係る車両用前照灯100とは異なり、後方反射部を有する上縁領域は設けられておらず、入射面131には対応領域が設けられていない構成である。車両用前照灯200の他の構成については、車両用前照灯100と同様とすることができる。
【0035】
このような車両用前照灯200において、リフレクタ120によって反射された光LAが入射面131に入射した場合、一部の光LA1が出射面132から出射されるが、一部の光LA2が出射面132において入射面131側に内面反射される場合がある。この内面反射された光LA2は、更に入射面131で出射面132側に内面反射されて出射面132の上部に到達し、出射面132の上部から上方に出射される場合がある。このように出射される光LA2は、グレア光となる可能性がある。
【0036】
図6は、本実施形態に係る車両用前照灯100の一例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯100において、リフレクタ20によって反射された光Lが入射面31に入射した場合、一部の光L1が出射面32から出射される。
図8は、車両用前照灯から照射される前照灯パターンPの一例を示す図である。
図8におけるH-H線は水平面を示し、V-V線は水平面に垂直であり車両の中心を示す線である。出射面32から出射された光L1により、例えば
図8に示すように、カットオフラインCLを有するロービームパターン等の主照射パターンP1が車両前方に形成される。
【0037】
一方、上記比較例における場合と同様に、一部の光L2が出射面32において入射面31側に内面反射される場合がある。本実施形態において、この内面反射された光L2は、更に入射面31で出射面32側に内面反射されて出射面32の上部に到達するが、出射面32の上縁領域32aの後方反射部32dにおいて後方に反射される。後方反射部32dにおいて反射された光L2は、レンズ30の上部又は入射面31から外部に出射され、不図示のハウジング等の部材により吸収される。このように、後方反射部32dにより光L2を車両後方に反射することで、グレア光の発生が抑制される。
【0038】
図7は、他の例に係る車両用前照灯100Aを示す図である。
図7に示すように、車両用前照灯100Aは、上記車両用前照灯100と同様の光源10、リフレクタ20、及びレンズ30を有する。また、車両用前照灯100Aは、サブリフレクタ25及びシェード55を有する。
【0039】
サブリフレクタ25は、リフレクタ20に対して車両前方側に配置される。サブリフレクタ25は、反射面26を有する。反射面26は、例えば回転楕円面又は当該回転楕円面を基調とした自由曲面となっている。反射面26は、光源10からの光Lのうちリフレクタ20の反射面21から車両前方側にはみ出す光L3をシェード55に向けて反射する。
【0040】
シェード55は、例えば平板状であり、リフレクタ20の反射面21で反射された光Lの一部を車両後方側において遮光する。また、シェード55は、車両前方側に反射面56を有する。反射面56は、サブリフレクタ25で反射された光L3をレンズ30側に反射する。
【0041】
サブリフレクタ25及びシェード55は、当該シェード55で反射される光L3が、焦点F3からレンズ30のレンズ部分30aに向けた光路に沿ってレンズ部分30aに向けて進行するように配置される。この構成により、光L3は、レンズ部分30aの入射面31、つまり対応領域31aに入射する。対応領域31aから入射した光L3は、出射面32、つまり上縁領域32aに到達した場合、内面反射されることなく上縁領域32aから出射される。上縁領域32aから出射された光L3により、例えば
図8に示すようなオーバーヘッドパターン等の補助照射パターンP2が車両前方に形成される。このように、上縁領域32aにおいて、主照射パターンP1を形成する主照射領域32cから外れた位置に到達する光を利用することで、車両前方に主照射パターンP1とは異なる補助照射パターンP2を形成することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る車両用前照灯100のレンズ30は、車両に搭載される車両用前照灯100のレンズ30であって、光源10からの光が入射する入射面31と、入射面31から入射した光を出射する出射面32と、を備え、出射面32は、車両搭載状態で上端を含む上縁領域32aにおいて、入射面31から入射する光のうち出射面32で入射面31側に内面反射され入射面31で出射面32側に内面反射されて上縁領域32aに到達する光を車両搭載状態における後方に内面反射する形状を有する。また、本実施形態に係る車両用前照灯100は、光源10と、光源10からの光を反射するリフレクタ20と、リフレクタ20で反射された光を車両前方に照射する上記のレンズ30とを備える。
【0043】
この構成によれば、入射面31に入射した一部の光L2が出射面32において入射面31側に内面反射され、更に入射面31で出射面32側に内面反射されて出射面32の上部に到達する場合、出射面32の上縁領域32aの後方反射部32dにおいて光L3を後方に反射することができる。これにより、光L3が出射面32から出射されることが抑制されるため、グレア光の発生を抑制することができる。
【0044】
本実施形態に係る車両用前照灯100のレンズ30において、出射面32は、車両搭載状態における前方から見て円形状である。これにより、前方から見た場合の円形状の外観を維持しつつ、グレア光を抑制できる。
【0045】
本実施形態に係る車両用前照灯100のレンズ30において、上縁領域32aは、光軸AXに垂直な平面、又は、当該光軸AXに垂直な平面に対して車両搭載状態の上側が光源10側に所定角度傾いた平面に沿った形状を有する。これにより、レンズ30で内面反射されて上縁領域32aに到達した光を、確実に後方に反射することができる。
【0046】
本実施形態に係る車両用前照灯100のレンズ30において、出射面32は、入射面31から入射する光を車両前方に照射して主照射パターンP1を形成する主照射領域32cを有し、上縁領域32aは、主照射領域32cよりも上方に配置され、入射面31から入射して直接当該上縁領域32aに到達する光を車両前方のうち主照射パターンP1の上方に照射して補助照射パターンP2を形成する形状に形成される。この構成では、上縁領域32aにおいて、主照射パターンP1を形成する主照射領域32cから外れた位置に到達する光を利用することにより、車両前方に主照射パターンP1とは異なる補助照射パターンP2を形成することができる。
【0047】
本実施形態に係る車両用前照灯100のレンズ30において、入射面31は、上縁領域32aに対応する対応領域31aを有し、対応領域31aは、当該対応領域31aと上縁領域32aとで形成されるレンズ部分30aの焦点F3が、他の部分30bの焦点の下方に位置する形状を有する。この構成により、例えば焦点P3とレンズ部分30aとを結ぶ光路に沿って光源10からの光を進行させることで、対応領域31aにより多くの光を到達させることができる。
【0048】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、レンズ30において入射面31に対応領域31aが設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。対応領域31aは、設けられなくてもよいし、例えば上縁領域32aの一部に対応する範囲に設けられてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、レンズ30が車両前方から見て円形状である構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。レンズ30は、車両前方から見て円形状とは異なる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
AX…光軸、CL…カットオフライン、D1,D2…距離、F1,F2,F3…焦点、L,L1,L2,L3,LA,LA1,LA2…光、P…前照灯パターン、P1…主照射パターン、P2…補助照射パターン、S1,S2…平面、10,110…光源、11…発光面、20,120…リフレクタ、21,26,56…反射面、25…サブリフレクタ、30,130…レンズ、30a…レンズ部分、30b…部分、31,131…入射面、31a…対応領域、31b…上端、32,132…出射面、32a…上縁領域、32b…上端部、32c…主照射領域、32d…後方反射部、32e…接続部、40…放熱部材、41…レンズホルダ、42…光源固定部、43…フィン、50,55…シェード、100,100A,200…車両用前照灯