(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】線状部材整形装置および線状部材整形方法
(51)【国際特許分類】
B21F 1/02 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B21F1/02 A
(21)【出願番号】P 2019174678
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】駒谷 隆行
(72)【発明者】
【氏名】西牧 悟
(72)【発明者】
【氏名】関 寿昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 利典
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-259619(JP,A)
【文献】特開2010-075957(JP,A)
【文献】特開昭57-113212(JP,A)
【文献】特開昭62-185400(JP,A)
【文献】実開昭62-152427(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 1/02
B21D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材を整形して所定位置に配置する線状部材整形装置であって、
前記線状部材を挟み込む動作を行う第1移動部および第2移動部を備える移動部と、
前記線状部材を固定する状態および解放する状態との間で切り替える固定部と、
前記移動部の動作を制御する移動制御部と、を備え、
前記移動制御部は、前記線状部材が前記固定部に固定された状態でかつ前記第1移動部および前記第2移動部の間に配置された状態において、前記第1移動部の対向面および前記第2移動部の対向面に内接する円の直径である内接円直径を、前記線状部材の断面の直径よりも大きい状態にするとともに、前記移動部を、前記固定部における前記線状部材の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動させ
、
前記線状部材が前記固定部に固定された状態でかつ前記第1移動部および前記第2移動部の間に配置された状態とするために前記移動制御部は、
前記内接円直径を変更することにより前記移動部と前記線状部材とを固定し、前記移動部を移動させることにより前記線状部材を前記固定部に配置し、その後前記内接円直径を前記線状部材の断面の直径よりも大きい状態に変更する線状部材整形装置。
【請求項2】
前記第1移動部における前記線状部材が接触しうる点と、前記第2移動部における前記線状部材が接触しうる点とを結ぶ直線に対する前記固定位置からの距離を第1距離とすると、前記第1距離に対する前記内接円直径の割合が、前記線状部材の振れ幅の精度が要求される位置までの前記固定位置からの距離に対する、前記精度として要求される上限値の割合以下である請求項
1に記載の線状部材整形装置。
【請求項3】
前記固定部は、2つのローラが互いにローラ面で対向して配置された構造でおり、2つの前記ローラの距離を変化させることによって前記線状部材を固定する状態および解放する状態との間で切り替える請求項
1に記載の線状部材整形装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の線状部材整形装置を用いて前記線状部材を整形する線状部材の整形方法であって、
前記第1移動部の対向面および前記第2移動部の対向面に内接する円の直径である内接円直径を変更することにより前記移動部と前記線状部材とを固定する第1ステップと、
前記移動部を移動させることにより前記線状部材を前記固定部に配置し、前記線状部材を前記固定部に固定させる第2ステップと、
前記線状部材が前記固定部に固定された状態でかつ前記第1移動部および前記第2移動部の間に配置された状態において、
前記内接円直径、前記線状部材の断面の直径よりも大きい状態にする第3ステップと、
前記移動部を、前記固定部における前記線状部材の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動させる第4ステップとを含む線状部材の整形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線状部材整形装置および線状部材整形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線状部材は、屈曲癖を有するなどにより、真直度が低くなる場合がある。線状部材の真直度が低い場合、機械を用いた線状部材の取付け時などにおいて線状部材の端部の位置が変わることにより、取り付け不良が発生する虞がある。そこで線状部材は、当該線状部材と密着する部材などを用いて行うしごき矯正などにより整形される。
【0003】
特許文献1には、部品本体に線材端部が固着された少なくとも1本の線材に対し、ベース体にスライド自在に設けられた線材チャック部を移動させることによりしごき矯正する。そして、しごき矯正において線材と部品本体との間に発生する引っ張り力を測定し、測定した引っ張り力が所定値以上の場合に線材チャック部の線材方向の移動を停止することによりしごき矯正を停止する線材矯正装置が提案されている。当該線材矯正装置によれば、線材と部品本体との間に発生する引っ張り力を所定値以下に制御することで、引っ張り力が部品本体と線材との接合強度より大きくなることを制限できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2010-75957号公報(2010年4月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では線材端部が部品本体に固着された線材において、線材と部品本体との間に発生する引っ張り力を測定し、測定した引っ張り力を部品本体と線材との接合強度より大きくなることを制限する。これにより、線材が部品本体から離脱する不良などの発生を抑制した、線材端部が部品本体に固着した線材のしごき矯正装置が得られる。
【0006】
しかしながら、本件発明者は、線材端部が部品本体に固着された線材を線材チャック部によりしごき矯正することで、線材チャック部の移動時に摩擦などにより線材に傷が発生する虞があることを見出した。
【0007】
本開示の一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、固定部材により固定された線状部材に対し、摩擦などにより線状部材に傷が発生することを低減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
すなわち、本開示の一側面に係る線状部材整形装置は、線状部材を整形して所定位置に配置する線状部材整形装置であって、前記線状部材を挟み込む動作を行う第1移動部および第2移動部を備える移動部と、前記線状部材を固定する状態および解放する状態との間で切り替える固定部と、前記移動部の動作を制御する移動制御部と、を備え、前記移動制御部は、前記線状部材が前記固定部に固定された状態でかつ前記第1移動部および前記第2移動部の間に配置された状態において、前記第1移動部の対向面および前記第2移動部の対向面に内接する円の直径である内接円直径を、前記線状部材の断面の直径よりも大きい状態にするとともに、前記移動部を、前記固定部における前記線状部材の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動させる。
【0010】
当該構成では、第1移動部および第2移動部の間に線状部材が配置された状態において、移動部を所定の方向に延びる直線に沿って移動させることにより、線状部材を整形できる。また、内接円直径が線状部材の断面の直径よりも大きい状態のため、移動部と線状部材との間で摩擦が発生しにくく、線状部材に傷などが発生しにくい。
【0011】
前記一側面に係る線状部材整形装置において、前記線状部材が前記固定部に固定された状態でかつ前記第1移動部および前記第2移動部の間に配置された状態とするために前記移動制御部は、前記内接円直径を変更することにより前記移動部と前記線状部材とを固定し、前記移動部を移動させることにより前記線状部材を前記固定部に配置し、その後前記内接円直径を前記線状部材の断面の直径よりも大きい状態に変更する。
【0012】
当該構成によれば、線状部材を固定部に配置するためのガイドとして移動部を用いることができる。それにより、線状部材を固定部に固定するために線状部材をガイドする、ガイド機構が不要となり、線状部材整形装置を簡略化できる。
【0013】
前記一側面に係る線状部材整形装置において、前記第1移動部における前記線状部材が接触しうる点と、前記第2移動部における前記線状部材が接触しうる点とを結ぶ直線に対する前記固定位置からの距離を第1距離とすると、前記第1距離に対する前記内接円直径の割合が、精度が要求される位置までの前記固定位置からの距離に対する、前記精度として要求される上限値の割合以下である。
【0014】
当該構成によれば、内接円直径を制御することにより、線状部材が移動部に接触できない場所であっても、線状部材を所望の振れ幅以下となるよう制御できる。
【0015】
前記一側面に係る線状部材整形装置において、前記固定部は、2つのローラが互いにローラ面で対向して配置された構造であり、2つの前記ローラの距離を変化させることによって前記線状部材を固定する状態および解放する状態との間で切り替える。
【0016】
当該構成によれば、整形処理後に、ローラを適宜回転させることによって、線状部材の延伸方向への移動を容易に実施することができ、線状部材を所望の位置に配置できる。それにより、整形処理後の線状部材に対する加工処理を効率的に実施することができる。
【0017】
前記一側面に係る線状部材整形方法は、線状部材整形装置を用いて線状部材を整形する線状部材の整形方法であって、前記線状部材が前記固定部に固定された状態でかつ前記第1移動部および前記第2移動部の間に配置された状態において、前記第1移動部の対向面および前記第2移動部の対向面に内接する円の直径である内接円直径を、前記線状部材の断面の直径よりも大きい状態にする第3ステップと、前記移動部を、前記固定部における前記線状部材の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動させる第4ステップとを含む。
【0018】
当該構成によれば、第3ステップと第4ステップとを行うことにより、線状部材が摩擦などにより発生する傷などの発生が少ない線状部材の整形方法となる。
【0019】
前記一側面に係る線状部材整形方法は、前記第3ステップの前に、前記内接円直径を変更することにより前記移動部と前記線状部材とを固定する第1ステップと、前記移動部を移動させることにより前記線状部材を前記固定部に配置し、前記線状部材を前記固定部に固定させる第2ステップとを実施する。
【0020】
当該構成によれば、さらに第1ステップと第2ステップとを行うことにより、移動部を固定部に配置するための部材が不要となる。それにより、線状部材整形装置を簡略化できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一側面によれば、固定部材により固定された線状部材において、線状部材と移動部との摩擦により線状部材に傷が発生することを低減した、線状部材の整形技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る線状部材整形装置における、要部構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る線状部材整形装置の構成の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る線状部材整形装置を固定部における線状部材の固定位置から所定の方向に延びる直線方向から示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る線状部材整形装置を固定部における線状部材の固定位置から所定の方向に延びる直線に対し垂直な方向から示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図3におけるPPで示す部分を拡大して示す図である。
【
図6】
図6は、内接円直径と線状部材の振れ幅との関係を模式的に例示する図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る線状部材整形装置の処理手順の一例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0024】
§1 適用例
図1を用いて、本実施形態に係る線状部材整形装置の構成概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る線状部材整形装置における、要部構成を示すブロック図である。
【0025】
線状部材整形装置1は、移動部10と、固定部20と、制御部30と、を少なくとも備えた、線状部材40を整形して所定位置に配置する装置である。以下では、1本の線状部材を整形して所定位置に配置する場合を例にして説明を行うが、複数の線状部材を整形して所定位置に配置する線状部材整形装置であってよい。
【0026】
移動部10は、第1移動部11および第2移動部12を備える。移動部10は、後述する固定部20における線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動することにより線状部材40を整形する。第1移動部11および第2移動部12は、線状部材40を挟み込む動作を行い、両者の間の距離である第1移動部11の対向面および第2移動部12の対向面に内接する円の直径である内接円直径(以降、「内接円直径」と称する)が可変となっている。
【0027】
固定部20は、固定部20と線状部材40とを固定する状態および解放する状態を切り換えることができる。
【0028】
制御部30は、固定部制御部31および移動制御部32を備える。固定部制御部31は、固定部20と線状部材40とを固定する状態または解放する状態を切り替える制御を行う。移動制御部32は、内接円直径の制御と、移動部10を固定部20における線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動させる制御とを行う。移動制御部32において線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線は、例えば、線状部材40の略延伸方向である。
【0029】
移動制御部32は、線状部材40が固定部20に固定された状態でかつ第1移動部11および第2移動部12の間に配置された状態において、内接円直径を、線状部材40の断面の直径よりも大きい状態にするとともに、移動部10を、固定部20における線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿って移動させる。
【0030】
上記のような制御によれば、固定部20に固定された状態の線状部材40は、移動部10の移動に伴い、移動部10の位置において、内接円直径以下の振れ幅に整形される。また、内接円直径が線状部材40の断面の直径より大きいため、移動部10の移動時に、移動部10と線状部材40とが擦れることを低減できる。すなわち、固定部20により固定された線状部材40に対し、摩擦などによる線状部材40に傷が発生することを低減しつつ、整形することが可能な線状部材整形装置1を実現することができる。
【0031】
§2 構成例
<線状部材整形装置>
次に、
図2~6を用いて、本実施形態に係る線状部材整形装置1の構成の一例について説明する。
図2は、本実施形態に係る線状部材整形装置1の構成の一例を模式的に例示する斜視図である。
図3は、本実施形態に係る線状部材整形装置1の構成を固定部20における線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線の方向から示す一例を模式的に例示する図である。
図4は、本実施形態に係る線状部材整形装置1の構成を固定部20における線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線に対し垂直な方向から示す一例を模式的に例示する図である。
図5は、
図4におけるPPで示す部分を拡大して示す図である。
図6は、固定部20に固定された線状部材40が、移動部10が備える第1移動部11および第2移動部12の間に配置された状態を示す模式図である。
【0032】
図2~4に示すように、本実施形態に係る線状部材整形装置1は、移動部10、第1ローラ21、および第2ローラ22を備えている。移動部10は、第1移動部11、第2移動部12、および移動駆動機構13を備えている。移動駆動機構13は、内接円直径を変化させるとともに、第1移動部11および第2移動部12の上下方向の位置および前後方向の位置を変化させる。ここで、前後方向とは、固定部20における線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線に沿った方向である。
【0033】
図5に示すように、第1移動部11および第2移動部12は、線状部材40に対して所定の方向、図においては左右方向から挟み込むことによって、線状部材40を保持することが可能となっている。ここで、内接円直径D1は変更可能となっている。内接円直径D1を線状部材40の直径と等しい、あるいは線状部材40の弾性変形分を考慮して直径よりも少し小さい値にすることによって、移動部10は線状部材40を保持することができる。一方、内接円直径D1を線状部材40の直径よりも所定量大きくすることによって、第1移動部11および第2移動部12と線状部材40との間に間隙を設けることが可能な状態でガイドすることができる。
【0034】
なお、第1移動部11および第2移動部12のそれぞれにおける、線状部材40との当接面の下部には突起部が設けられている。これらの突起部によって線状部材40の下部が支えられることによって、内接円直径D1が線状部材40の直径よりも所定量大きい状態であっても、線状部材40が下方へ垂れ下がることを防止できる。
【0035】
また、本実施形態では、第1移動部11の対向面および第2移動部12の対向面は互いに平行となっているが、これに限定されるものではない。例えば、第1移動部11の対向面および第2移動部12の対向面が、互いに平行な状態から所定の角度傾いた状態で配置されていてもよい。この構成において、第1移動部11または第2移動部12の少なくともいずれか一方の構造が、線状部材40との当接面の下部において第1移動部11および第2移動部12の間の距離が短くなる構造であれば、突起部を設けなくても線状部材40が下方へ垂れ下がることを防止できる。
【0036】
第1ローラ21および第2ローラ22は、固定部20の一例である。第1ローラ21および第2ローラ22は、互いのローラ面で対向して配置された構造である。固定部20は、第1ローラ21と第2ローラ22との距離を変化させることにより、線状部材40を固定する状態および解放する状態との間で切り替えることができる。また、固定部20は、第1ローラ21および第2ローラ22を適宜回転させることにより、線状部材40を該線状部材の延伸方向への移動を容易に実施することができる。これにより、整形処理後の線状部材40を線状部材整形装置1から移動させることができ、整形処理後の線状部材40に対する加工処理を効率的に実施することができる。以上のように固定部20として第1ローラ21および第2ローラ22を用いることで、固定部20に線状部材40を固定した状態または解放した状態とする機能と、線状部材40を所定の位置に配置する機能と、を兼ね備えた固定部20となる。
【0037】
線状部材40は、整形処理が行われる線状の部材であればよい。本実施形態では、線状部材40として、電気配線としてのリード線を想定している。
【0038】
<制御部>
移動制御部32は、移動駆動機構13を制御することにより移動部10を移動させる。また、移動制御部32は、移動駆動機構13を制御することにより、内接円直径を変化させる。
【0039】
また、移動制御部32は、第1ローラ21と第2ローラ22との相対位置を制御することにより、固定部20が線状部材40を固定する状態および解放する状態を制御する。
【0040】
<内接円直径と要求される振れ幅の上限値との関係>
図6を用いて内接円直径と線状部材40の精度を求められる位置における、要求される振れ幅の上限値との関係について説明する。
【0041】
図6は、固定部20に固定された線状部材40が、移動部10が備える第1移動部11および第2移動部12の間に配置された状態を示す模式図であり、上側から見た際の図を501、側面側から見た際の図を502、501において点Iを中心として拡大した図を503で示している。
【0042】
図6において、線状部材40が、第1移動部11に接触した状態を41で示し、第2移動部12に接触した状態を42で示し、線状部材40の固定位置から所定の方向に延びる直線51に沿った状態を43で示す。ここで、直線51は、線状部材40が41で示す状態である場合と、線状部材40が42で示す状態である場合との中間の位置にあるものとする。
【0043】
図6に示す線状部材整形装置1は、§2構成例の線状部材整形装置1に加え、さらに線状部材40の先端の位置決めを行うガイド部60を備える。ガイド部60は、線状部材40を上下方向から挟み込むように移動する第1ガイド61と第2ガイド62とを備える。
【0044】
線状部材40の第1ローラ21と第2ローラ22とにより固定される位置を固定位置Dとする。また、線状部材40と第1移動部11とが接触する点を点Eとする。点Eにおいて線状部材40と第1移動部11とが接触する場合における線状部材40の断面形状の重心の位置を点Fとする。この点Fを通り、直線51に対する垂直に交わる直線の、直線51との交点を点Gとする。また、固定位置Dから点Gまでの距離をBとする。そして、直角三角形FDGの角Dのなす角をθとする。また、線状部材40と第2移動部12とが接触する点を点Lとし、点Lにおいて線状部材40と第2移動部12とが接触する場合における線状部材40の断面形状の重心の位置を点Kとする。
【0045】
このとき、点Eと点Lとを結ぶ直線ELは内接円直径に相当し、距離はおよそA+2dとなる。なお、Aは、点Fから点Kまでの距離である。また、dは、線状部材40の断面形状の半径である。
【0046】
固定位置Dから線状部材40の振れ幅の精度が要求される位置までの距離をCとする。距離Cにおいて、線状部材40が41の位置にある場合の、当該線状部材40の最も外側の面上の点を点Hとする。また、この場合の線状部材40の断面形状の重心の位置を点Iとする。当該線状部材40の最も外側の面に対し、点Iから垂直に交わる直線を引いた場合における、当該線状部材40の最も外側の面と直線とが接する点を点Mとする。そして距離Cにおける直線51上の点を点Jとする。このとき、点Hと点Jとを結ぶ直線HJの距離Xの2倍は、線状部材40の振れ幅の精度として要求される上限値となる。
【0047】
ここで、第1移動部11における線状部材40が接触しうる点Eと、第2移動部12における線状部材40が接触しうる点Lとを結ぶ直線に対する前記固定位置からの距離であるBを第1距離とする。この場合、前記第1距離に対する内接円直径の割合が、線状部材40の振れ幅の精度が要求される位置である点Jまでの固定位置Dからの距離Cに対する、精度として要求される上限値の割合以下であることが好ましい。これにより、線状部材40の振れ幅が要求される精度以下となるように、線状部材40を整形することができる。
【0048】
なお、移動制御部32は、点Gの位置が、固定位置Dからの距離が少なくともBより大きくなるような範囲で、移動部10を前後に移動させることが好ましい。
【0049】
また、上述の関係を式で示せば、以下の式1~式3で表すことができる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
式1は、角Gが直角である直角三角形FGDにおけるtanθ=(直線FGの距離)/(直線DGの距離)を変形したものである。
【0054】
式2は、角Jが直角である直角三角形HJDに関して、距離Xが、点Iと点Jとを繋ぐ直線IJの距離(C×tanθ)と、線状部材40の半径(d)とを加えた距離に略同等であることを示している。また、式3は、式2において点Hと点Iとを繋ぐ直線HIの距離を線状部材40の半径(d)と、角Mが直角である直角三角形HMIにおける角Iの大きさ(θ)とを用いて示す式である。
【0055】
すなわち、上記の式1および式2、または式1および式3を満たすようなA以下となるように内接円直径を設定することによって、線状部材40の振れ幅が要求される精度以下となるように、線状部材40を整形することができる。
【0056】
§3 動作例
次に、
図7を用いて、線状部材整形装置1の動作例を説明する。
図7は、線状部材整形装置1の処理手順の一例を例示する図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実際の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、および追加が可能である。
【0057】
図7に示す線状部材整形装置1は、§2構成例の線状部材整形装置1である。
【0058】
線状部材整形装置1は、101に示すように、移動制御部32によって移動部10における内接円直径を制御することにより、移動部10と線状部材40とを固定する(第1ステップ)。次に、移動制御部32は、第1ローラ21と第2ローラ22との間に線状部材40を配置するように移動部10を移動させる。次に、線状部材整形装置1は、102に示すように、固定部制御部31により固定部20が線状部材40を固定する状態となるよう第1ローラ21と第2ローラ22との相対位置を制御する(第2ステップ)。次に、線状部材整形装置1は、103に示すように、移動制御部32により移動部10の内接円直径を制御することにより、移動部10と線状部材40との固定を解除し、第1移動部11および第2移動部12と線状部材40との間に所定の間隙を設ける。(第3ステップ)。次に、移動制御部32は、移動部10を、固定位置Dと
図5に示す点Gとの間で、線状部材40の延伸方向に移動させる(第4ステップ)。上述のように第1ステップから第4ステップまで行うことにより、線状部材40を整形することができる。
【0059】
線状部材整形装置1は、さらに104に示すように、線状部材40を第1ガイド61および第2ガイド62で挟み込むように移動させる。ここで、線状部材40を第1ガイド61および第2ガイド62で挟む位置は、
図5において示した、線状部材40の振れ幅の精度が要求される位置としての点Jである。すなわち、上記のように移動部10における内接円直径が設定されていることによって、線状部材40がガイド部60に対してずれることなく、的確に第1ガイド61および第2ガイド62に挟まれるようにすることができる。
【0060】
第1ガイド61および第2ガイド62は、線状部材40を所定の間隙をあけた状態で挟み込むことにより、線状部材40を、延伸方向に移動させることが可能な状態とする。この状態で、固定部20によって線状部材40の位置を調整することによって、線状部材40の先端を、3次元空間内の所定の位置に正確に配置させることができる。その後、線状部材40の先端部分に対して、所定の加工作業、例えば端子の取り付け作業などが行われる。
【符号の説明】
【0061】
1 線状部材整形装置
10 移動部
11 第1移動部
12 第2移動部
20 固定部
32 移動制御部
40 線状部材
D1 内接円直径