(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】光通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/114 20130101AFI20230926BHJP
【FI】
H04B10/114
(21)【出願番号】P 2019174709
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正紀
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-285114(JP,A)
【文献】特開2004-096414(JP,A)
【文献】特開2016-162804(JP,A)
【文献】特開2017-126701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0129341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を他の光通信装置に送信する発光素子と、
前記他の光通信装置が送信した光信号を受信する受光素子と、
前記発光素子と第1インピーダンス整合回路との接続点である第1接続点に接続され、第1ショートスタブ及び第1受動素子の並列回路である第1バイアス回路と、
前記受光素子と第2インピーダンス整合回路との接続点である第2接続点に接続され、第2ショートスタブ及び第2受動素子の並列回路である第2バイアス回路と、
前記受光素子が受信電気信号を出力すると前記第1ショートスタブ及び前記第2ショートスタブを遮断する切替回路とを備えることを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信装置であって、
前記切替回路は、前記受信電気信号の出力が途絶すると前記第1受動素子及び前記第2受動素子を遮断することを特徴とする光通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光通信装置であって、
前記第1ショートスタブ及び前記第2ショートスタブは、λ/4ショートスタブの一端をキャパシタで接地したものであり、
前記第1受動素子及び前記第2受動素子は、チョークコイルと抵抗器との直列回路である
ことを特徴とする光通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光通信装置であって、
前記切替回路は、前記
第2受動素子のチョークコイルの起電力により短絡状態になる第1トランジスタと、該第1トランジスタの短絡状態で開放状態になる第2トランジスタと、該第1トランジスタの短絡状態で開放状態になる第3トランジスタとを備え、
前記第2トランジスタは、前記第2ショートスタブの他端と直列接続されており、
前記第3トランジスタは、前記第1ショートスタブの他端と直列接続されていることを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置に関し、例えば、可視光帯よりも長い波長(例えば、800nm以上)で空間光通信を行う技術に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光素子及び受光素子を用いた可視光通信専用モデムが開示されている。一般的に、発光素子に電流を流し、受光素子に逆バイアス電圧を印加する必要がある。伝送速度が数十MHz程度までは単に抵抗を挿入するのみで問題が無い。しかしながら、数GHzを超えるような場合では、伝送線路に外乱を与えないようバイアス回路を用いるのが一般的である。また、特許文献2には、このようなバイアス回路を用いた光電変換回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような光通信装置は、光の特性上、光軸線上に配置しないと伝送を確立できない。また、軸ズレや光軸上の障害物等により、光通信が遮断したり、伝送品質が劣化したりする。このように、空間光通信では光が受光素子に届かない場合、相互通信が途絶えるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、光通信が遮断しても通信を行うことができる光通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の光通信装置は、光信号を他の光通信装置(101)に送信する発光素子(1)と、前記他の光通信装置が送信した光信号を受信する受光素子(11)と、前記発光素子と第1インピーダンス整合回路(8)との接続点である第1接続点(P)に接続され、第1ショートスタブ(6)及び第1受動素子(2,3)の並列回路である第1バイアス回路(25)と、前記受光素子と第2インピーダンス整合回路との接続点である第2接続点(Q)に接続され、第2ショートスタブ(16)及び第2受動素子(12,13)の並列回路である第2バイアス回路(26)と、前記受光素子から受信電気信号(バイアス光)を取得すると前記第1ショートスタブ及び前記第2ショートスタブを遮断する切替え回路(7)とを備えることを特徴とする。なお、括弧内の符号や文字は、実施形態において付した符号等であって、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光通信が遮断しても通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態である光通信装置を用いた光通信システムの構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態である光通信装置の回路図である。
【
図3】本発明の第1実施形態である光通信装置の詳細回路図である。
【
図4】本発明の比較例である光通信装置の回路図である。
【
図5】本発明の第2実施形態である光通信装置を用いた光通信システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である光通信装置100,101を用いた光通信システムS1の構成図である。
【0011】
光通信システムS1は、対を成す2つの光通信装置100,101が空間光伝送可能に配設されたものである。光通信装置100,101は、発光素子1と、受光素子11と、λ/4ショートスタブ6とを備える。発光素子1は、数GHz程度の動作を可能にする素子、例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)である。受光素子11は、フォトダイオード(PD:Photo Diode)である。なお、光通信装置100と、光通信装置101とは、同一構成である。
【0012】
光通信装置100の発光素子1は、他の光通信装置101の受光素子11に光信号を送信し、光通信装置101の発光素子1は、他の光通信装置100の受光素子11に光信号を送信する。λ/4ショートスタブ6,16は、光信号が途絶えたときに、無線通信を行うためのアンテナとして機能する。
【0013】
図2は、本発明の第1実施形態である光通信装置100の回路図である。
【0014】
光通信装置100は、発光素子1と、受光素子11と、バイアス回路25,26と、インピーダンス整合回路8,18と、伝送線路9,19と、デカップリングキャパシタ4,14と、カップリングキャパシタ10,20と、RFin端子と、RFout端子とを備えて構成される。
【0015】
光通信装置100は、さらに、多軸モータ40を備える。多軸モータ40は、光通信装置100の姿勢を制御し、対を成す光通信装置101との可視光通信を回復させるために用いられる。つまり、光通信システムS1は、通常時は、発光素子1及び受光素子11を用いた可視光通信で光軸の微調整を行い、光軸が大きくずれたときに、無線通信で光軸調整を行う。このとき、対を成す光通信装置100,101の一方が多軸モータ40で姿勢を制御することで光軸調整が可能であるが、対を成す光通信装置100,101の双方が多軸モータ40で姿勢を制御して光軸を調整することもできる。光通信システムS1が行う無線通信は、対を成す光通信装置100,101間の状態確認を行うものであり、原則的には、多量なデータ伝送を行わない。
【0016】
インピーダンス整合回路8,18は、伝送線路31,33の一端を入力端とし、伝送線路31,33の他端と伝送線路32,34の一端とキャパシタ30,35の一端とを接続し、伝送線路32,34の他端を出力端とするT型回路である。なお、キャパシタ30,35の他端は、接地されている。伝送線路31,32,33,34は、特性インピーダンスZo=50Ωである。
【0017】
バイアス回路25,26は、λ/4ショートスタブ6,16とスイッチ7としてのトランジスタ23,22との直列回路と、受動素子としての抵抗器3,13と受動素子としてのチョークコイル2,12との直列回路と、λ/4ショートスタブ6,16の一端に接続されるショートスタブ用キャパシタ5,15とを備えて構成される。なお、ショートスタブ用キャパシタ5,15の他端は、接地される。
【0018】
λ/4ショートスタブ6,16は、特性インピーダンスZ0a(基板設計で許す線幅及び流す電流の大きさによるが、Z0=50Ωよりも大きな値、例えば100Ω以上)に設定される。チョークコイル2,12は、伝送線路に対し高抵抗になるように、2GHz程度で数十nH程度のものを用いる。ショートスタブ用キャパシタ5,15は、λ/4ショートスタブ6,16をλ/4の位置で高周波的に接地するためのものである。λ/4ショートスタブ6,16は、例えば、周波数2.4GHz、基板の比誘電率3.66として、λ/4=16.3mm程度のマイクロストリップ線路である。
【0019】
RFin端子は、伝送線路9の一端に設けられ、高周波電力源(高周波信号源)を接続する。伝送線路9の他端は、カップリングキャパシタ10の一端と接続される。カップリングキャパシタ10の他端は、インピーダンス整合回路8の入力端に接続される。インピーダンス整合回路8の出力端と、発光素子1のアノードと、スイッチとして機能するトランジスタ23及びチョークコイル2の接続端とが接続される。この接続点を第1接続点Pと称する。バイアス回路25のλ/4ショートスタブ6と抵抗器3と接続点には、デカップリングキャパシタ4の一端が接続され、バイアス電流ILDを流す電流源(不図示)が接続される。また、発光素子1のカソード及びデカップリングキャパシタ4の他端は、接地される。
【0020】
一方、RFout端子は、伝送線路19の一端に設けられ、高周波増幅器(不図示)が接続される。伝送線路19の他端は、カップリングキャパシタ20の一端と接続される。カップリングキャパシタ20の他端は、インピーダンス整合回路18の入力端に接続される。インピーダンス整合回路18の出力端と、受光素子11のアノードと、スイッチとして機能するトランジスタ22及びチョークコイル12の接続端とが接続される。この接続点を第2接続点Qと称する。バイアス回路26のλ/4ショートスタブ16と抵抗器13の接続点には、デカップリングキャパシタ14の一端が接続され、バイアス電圧VPD(正値)を印加する電圧源(不図示)が接続される。なお、受光素子11のカソード及びデカップリングキャパシタ14の他端は、接地される。デカップリングキャパシタ4,14は、電源の安定性を図るためのものである。また、RFin端子の前段やRFout端子の後段には、高利得の(電力)増幅器(不図示)が接続される。
【0021】
なお、抵抗器3,13は、回路安定性のために電圧ドロップが許す範囲で直列・並列に接続することも可能である。
【0022】
(動作の説明)
まず、トランジスタ22,23が開放状態であるときの、光通信装置100の動作を説明する。
【0023】
発光素子1には、受動素子としての抵抗器3及びチョークコイル2の直列回路を介して、バイアス電流ILDが流れる。これにより、発光素子1は、バイアス光を一定光量で発光する。この状態で、RFin端子に送信用電気信号(高周波信号)が入力されると、その送信用電気信号が発光素子1に流れるバイアス電流ILDに重畳される。これにより、発光素子1は、光信号を出力する。
【0024】
受光素子11には、受動素子としての抵抗器13及びチョークコイル12の直列回路を介して、バイアス電圧V
PD(正値)が印加されている。このため、受光素子11には、インピーダンス整合回路,及びカップリングキャパシタ20を介して、順方向のバイアス電流が流れる。この状態で、受光素子11が他方の光通信装置101(
図1)からバイアス光を受光すると、受光素子11に流れる電流I
PDは、光電流がバイアス電流に重畳した値になる。さらに、受光素子11が光信号を受信すると、受信電気信号(高周波信号)がRF
out端子から出力される。
【0025】
次に、トランジスタ22,23が短絡状態であるときの、光通信装置100の動作を説明する。
【0026】
トランジスタ22,23が短絡状態であると、λ/4ショートスタブ6,16は、直流的には導通状態であるが、高周波的には、オープン状態である。しかしながら、実際には伝送路からの影響を受ける。特に、受光素子11の後段に高利得の電力増幅器を挿入している場合には、λ/4ショートスタブ6,16は、アンテナとして機能する。
【0027】
λ/4ショートスタブ6は、アンテナ機能により、送信用電気信号に対応する電磁波を放射する。また、λ/4ショートスタブ6により、発光素子1にも、バイアス電流I
LDに重畳する送信用電気信号が流れる。また、λ/4ショートスタブ16は、そのアンテナ機能により、光通信装置101(
図1)からの電磁波を受信する。なお、受光素子11には、λ/4ショートスタブ16により、バイアス電圧V
PDが印加され、順方向のバイアス電流が流れる。そのため、トランジスタ22が短絡状態であっても、受光素子11に光が入射すれば、順方向のバイアス電流に光電流が重畳し、第2接続点Qの電位が変化する。
【0028】
図3は、本発明の第1実施形態である光通信装置100の詳細回路図である。
【0029】
トランジスタ22,23は、受光素子11に光信号が入力しているときに、開放状態になり、受光素子11に光信号が入力していないときに短絡状態になる。この機能の実現について、
図3を用いて説明する。
【0030】
バイアス回路25,26は、
図2で説明したように、λ/4ショートスタブ6,16と、トランジスタ23,22と、抵抗器3,13と、チョークコイル2,12との直列回路と、λ/4ショートスタブ6,16の一端に接続されるショートスタブ用キャパシタ5,15とを備えて構成される。ここで、トランジスタ23,22は、ベースが共通なスイッチ7として構成され、切替回路として機能する。
【0031】
バイアス回路26は、さらに、トランジスタ21と抵抗器17とを備える。トランジスタ21のベースは、チョークコイル12と抵抗器13との接続点に接続されている。トランジスタ21のコレクタは、抵抗器17の一端と2つのトランジスタ22,23のベースに接続されている。抵抗器17の他端は、抵抗器13、λ/4ショートスタブ16、ショートスタブ用キャパシタ15及びデカップリングキャパシタ14と共に、バイアス電圧VPD(正値)を印加する直流電源(不図示)に接続されている。
【0032】
(動作の説明)
バイアス電圧VPD(正値)が印加されているので、受光素子11には、直流のバイアス電流が抵抗器13及びチョークコイル12の直列回路を流れる。バイアス電流が直流なので、チョークコイル12の電圧降下が小さく、トランジスタ21はオフ状態である。このオフ状態で、受光素子11に光信号が入力されると、チョークコイル12に高周波電流IL1が流れ、チョークコイル12の電圧降下が大きくなり、トランジスタ21がオン状態になる。トランジスタ21がオン状態になると、トランジスタ22,23は、オフ状態になる。なお、受光素子11に流れる電流(バイアス電流+光電流)は、トランジスタ21のコレクタ電流IBと抵抗器13に流れる電流IPDとに分流する。
【0033】
一方、受光素子11に光信号が入力されなくなると、トランジスタ21がオフ状態になる。これにより、受光素子11に流れる電流(バイアス電流+光電流)は、抵抗器17及びトランジスタ22を介して流れる。つまり、トランジスタ22,23がオン状態になり、λ/4ショートスタブ6,16に電流IS1,IS2が流れる。この状態で、高周波電気信号が入力され、Q点の電位が変動すると、λ/4ショートスタブ16は、アンテナとして機能して、電磁波を放射する。また、λ/4ショートスタブ6は、この電磁波を受信し、第1接続点Pの電位を変動させる。
【0034】
(効果の説明)
以上説明したように、本実施形態の光通信装置100によれば、受光素子11にバイアス光が入射した状態で、信号光が入力されると、受光素子11は、受信電気信号を出力する。受光素子11が受信電気信号を出力すると、切替回路としてのトランジスタ7(トランジスタ22,23)がλ/4ショートスタブ16,6を遮断する。一方、受光素子11に信号光が入力されなくなると、受光素子11は、受信電気信号を出力しなくなる。受光素子11が受信電気信号を出力しなくなると、切替回路としてのトランジスタ7(トランジスタ22,23)は、λ/4ショートスタブ16,6を機能させる。したがって、本実施形態の光通信システムは、光通信が不通になったときでも、無線通信で補完される。
【0035】
(比較例)
図4は、本発明の比較例である光通信装置102の回路図である。
【0036】
光通信装置102は、発光素子1と、バイアス回路27と、RFin端子と受光素子11とバイアス回路28とRFout端子とを備えて構成される。バイアス回路27,28は、チョークコイル2,12とデカップリングキャパシタ4,14とカップリングキャパシタ10,20とを備える。
【0037】
RFin端子は、カップリングキャパシタ10の一端と接続される。カップリングキャパシタ10の他端は、チョークコイル2の一端と発光素子1のアノードとに接続されている。チョークコイル2の他端は、デカップリングキャパシタ4の一端が接続されており、その接続点にはバイアス電流ILDを流す電流源(不図示)が接続されている。なお、発光素子1のカソード及びデカップリングキャパシタ4の他端は、接地されている。
【0038】
RFout端子は、カップリングキャパシタ20の一端と接続される。カップリングキャパシタ20の他端は、チョークコイル12の一端と受光素子11のアノードとに接続されている。チョークコイル12の他端は、デカップリングキャパシタ14の一端が接続されており、その接続点には逆バイアス電圧VPD(負値)を印加する電圧源(不図示)が接続される。
【0039】
(動作の説明)
発光素子1には、バイアス電流ILDが流れ、受光素子11には、逆バイアス電圧VPD(負値)が印加される。これにより、発光素子1からバイアス光が発生する。この状態で、RFin端子から高周波電気信号(高周波電力)が入力(供給)されると、発光素子1から光信号が出力される。
【0040】
光通信装置102に対向する他の光通信装置(不図示)の発光素子1がバイアス光を発生している状態では、受光素子11は、直流電流を流す。しかしながら、カップリングキャパシタ20により、直流電流が阻止され、RFin端子の電位は、変動しない。この状態で、他の光通信装置の発光素子1が光信号を出力すると、RFin端子の電位が変動し、電気信号として、取り出すことができる。
【0041】
つまり、比較例の光通信装置102は、光路が遮断されると、受光素子11は光信号を電気信号に変換しない。また、光出力が弱くなると電気出力も弱くなり、光信号が電気信号に変換されない現象が生じる。つまり、光通信装置102は、光出力が弱くなると、光通信を行うことができなくなる。しかしながら、前記第1実施形態の光通信装置100によれば、光軸がずれて、光信号が途切れても、無線通信により通信を行うことができる。
【0042】
(第2実施形態)
前記第1実施形態の光通信システムS1は、多軸モータ40を使って、光通信装置100,101の姿勢制御を行ったが、メムスミラーを用いて、焦点調整することもできる。
【0043】
図5は、本発明の第2実施形態である光通信システムの構成図である。
【0044】
本実施形態の光通信システムS2は、2つの光通信装置104,104で構成される。光通信装置104は、前記第1実施形態の光通信装置100の構成において、多軸モータ40の代わりに、メムスミラー41とレンズ42と電動機43とを備えたものである。発光素子1及び受光素子11は、レンズ42の焦点位置に配設されている。電動機43を用いて、メムスミラー41を回転させると、光の集光位置が変動する。つまり、光軸がずれて、光通信が困難になったとき、光通信装置104は、メムスミラー41を回転させ、対を成す光通信装置104,104間の無線通信によって、それぞれの光の集光位置をレンズ42の焦点に合わせればよい。これにより、光通信が回復する。
【0045】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
【0046】
(1)前記各実施形態の切替回路としてのトランジスタ7(トランジスタ22,23)は、λ/4ショートスタブ16,6を遮断したが、受動素子(チョークコイル2,12及び抵抗器3,13の直列回路)を遮断しても構わない。つまり、トランジスタ7(トランジスタ22,23)は、λ/4ショートスタブ16,6及び受動素子の何れか一方を遮断し、他方を機能させても構わない。
【0047】
(2)前記実施形態では、スタブのアンテナ効果を利用したが、バイアス回路25,26の外部にリード線(アンテナ)を用いると、リード線がアンテナに見えて、伝送効率があがることがある。
【0048】
(3)前記実施形態では、数GHz程度の動作を可能にするVCSELを前提に説明したが、可視光に対応した送受光素子を用いることもできる。
【0049】
(参考例)
前記各実施形態の光通信システムの切替回路は、簡易的なトランジスタでスイッチを構成したが、デジタル処理も可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 発光素子
2 チョークコイル(第1受動素子)
12 チョークコイル(第2受動素子)
3 抵抗器(第1受動素子)
13 抵抗器(第2受動素子)
5,15 ショートスタブ用キャパシタ
6 λ/4ショートスタブ(第1ショートスタブ)
16 λ/4ショートスタブ(第2ショートスタブ)
7 スイッチ(切替回路)
8 インピーダンス整合回路(第1インピーダンス整合回路)
18 インピーダンス整合回路(第2インピーダンス整合回路)
11 受光素子
21,22,23 トランジスタ(スイッチ)
25 バイアス回路(第1バイアス回路)
26 バイアス回路(第2バイアス回路)
30,35 キャパシタ
100,101,102,104 光通信装置