(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】フロントグリル
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20230926BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B60R19/52 K
G01S7/03 246
(21)【出願番号】P 2019185655
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】勝倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】澤田 行宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 敦
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114944(JP,A)
【文献】特開2016-156734(JP,A)
【文献】特開2005-112193(JP,A)
【文献】特開2014-069634(JP,A)
【文献】特開2019-075283(JP,A)
【文献】特開2017-077881(JP,A)
【文献】特開2006-117048(JP,A)
【文献】特開2010-188987(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0025191(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
G01S 7/03
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠面を構成するパネル材と、
前記パネル材の裏側に設けられ、アンテナ面が前記パネル材の裏面との間に隙間をあけて配置されたレーダアンテナと、
を備え、
前記パネル材は、前記アンテナ面から出射された電波が直接入射する第1領域と、前記第1領域以外の領域であって前記アンテナ面よりも前記電波の出射方向前方側に位置する第2領域とを含み、
前記第2領域では、前記パネル材の表面及び裏面の少なくとも一方に、前記パネル材の厚さ方向に凹んだ凹部及び該厚さ方向に突出した凸部の一方または両方が
複数形成されており、
前記凹部及び凸部の一方または両方が、前記意匠面に形成された模様パターンの一部を構成して
おり、
単位面積当たり前記凹部及び凸部の占める面積の割合は前記第1領域に近くなるほど小さくなる、フロントグリル。
【請求項2】
前記パネル材の短手方向の各位置において最も中心線寄りに位置する前記凹部及び凸部の一方または両方によって形成される列が、下方に行くほど前記中心線寄りに位置するように傾斜している、請求項1に記載のフロントグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
他車両等対象物と自車両との間の相対距離や対象物の相対速度を測定するセンサとして、ミリ波レーダ等のレーダ装置がある。レーダ装置は、一般にフロントグリルの背後に配置される。特許文献1には、レーダ装置のビーム経路上にフロントグリル及びエンブレムが配置された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンブレムは、文字等に立体感や金属光沢を付与するために、樹脂材料に凹凸を形成したり、金属皮膜を設けたりすることが多い。また、フロントグリルは、通常、材料の厚さが不均一であり、また、金属メッキが施されることもある。このため、特許文献1の上記構造では、電波透過損失を低減するには限界があり、レーダ装置の送受信性能を向上させることが難しい。
【0005】
本発明の目的は、外観品質を維持しつつ、レーダ装置の送受信性能を向上させることが可能なフロントグリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるフロントグリルでは、意匠面を構成するパネル材が、アンテナ面から出射された電波が直接入射する第1領域と、第1領域以外の領域であってアンテナ面よりも電波の出射方向前方側に位置する第2領域とを含む。第2領域では、パネル材の表面及び裏面の少なくとも一方に、パネル材の厚さ方向に凹んだ凹部及び該厚さ方向に突出した凸部の一方または両方が形成されている。当該凹部及び凸部の一方または両方は、意匠面に形成された模様パターンの一部を構成している。
【発明の効果】
【0007】
上記フロントグリルによれば、外観品質を維持しつつ、レーダ装置の送受信性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両に取り付けられた状態のフロントグリルの正面図である。
【
図5】パネル材の凹部の作用を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図中の矢印FR、LH、RH、UPは、それぞれ車体前後方向前側、車幅方向左側、同右側、車体上下方向上側を示す。フロントグリル及びその構成部品においては、車体に取り付けられた状態における前側を「表側」とし、後側を「裏側」とする。
【0010】
<第1実施形態>
フロントグリル1は、
図1に示すように、車両Vの前面に設けられている。車両Vは、例えば電動モータのみを駆動力源として走行する電気自動車(EV)である。なお、車両Vは、特に限定されず、ハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)、内燃機関車などであってもよい。
【0011】
車両Vには、レーダ装置としてミリ波レーダ2が設けられている。ミリ波レーダ2は、後述するレーダアンテナ3から測定波として電波を送信し、対象物(例えば、他車両、路上固定構造物、歩行者など)により反射された反射波としての電波をレーダアンテナ3で受信して、対象物と車両Vとの間の相対距離や相対速度を測定する。電波の周波数は、例えば76GHz~77GHzである。
【0012】
ミリ波レーダ2は、
図1に示すように、レーダアンテナ3と、例えば電気配線4等によってレーダアンテナ3に接続されたコントローラ5とから構成されている。レーダアンテナ3は、ミリ波レーダ2の検知範囲を最適化するべく、フロントグリル1の車幅方向中央部の裏側に設けられている。レーダアンテナ3は、電波を送受信する平面状のアンテナ6と、アンテナ6を駆動する図示しないRF回路とを備えている。アンテナ6は、同一基板上に配列された、複数の送信専用のアンテナ素子及び複数の受信専用のアンテナ素子から構成してもよく、RF回路の設定により送受信兼用としたアンテナ素子から構成してもよい。アンテナ6の前面は、車体前方に向けられている。以下、アンテナ6の前面を「アンテナ面6a」と称する。RF回路は、例えば、図示しない電圧制御発振器、結合器、ミキサ、増幅器、フィルタ回路等から構成される。RF回路は、コントローラ5からの送信指令に基づいて、高周波数の測定波をアンテナ6から出力し、アンテナ6が受信した反射波と測定波を処理して得られた処理信号をコントローラ5へ出力する。コントローラ5は、例えば、図示しないCPU、A/D変換器、電源回路等から構成される。CPUは、A/D変換器により送信指令をアナログ信号に変換してRF回路へ出力し、RF回路に測定波を送信させ、A/D変換器によりデジタル信号に変換されたRF回路からの処理信号に基づいて、対象物との相対距離及び相対速度等を算出する。
【0013】
フロントグリル1は、
図2及び
図3に示すように、フロントグリル1の意匠面1aを構成するパネル材7と、パネル材7の裏側に隣接して設けられたフレーム材8と、ミリ波レーダ2のレーダアンテナ3とを少なくとも備える。フロントグリル1は、上部よりも下部が車体前方に位置するような傾斜した姿勢で車体に取り付けられている。
【0014】
パネル材7は、
図1に示すように、正面視において、水平方向に長手方向を有し、かつ、上底よりも下底が短い逆台形状を呈する板状部材である。パネル材7は、
図2に示すように、長手方向中央部が表側に凸となるように円弧状に湾曲している。同中央部の上部には、車両Vの製造元や車種等を表示するエンブレムE(
図1参照)を取り付けるためのエンブレム取付部71が設けられている。エンブレム取付部71は、その前面にボルト等所定の締結具を用いてエンブレムEを固定することが可能に構成されている。
【0015】
パネル材7は、電波透過性が高く、かつ透明な樹脂から形成されている。「透明」とは、パネル材7を表側から見たときに、表面7aを通して裏面7bの形状が透けて視認できる程度に透明であればよく、従って完全に透明な場合のほか、半透明の場合を含む。また「透明」は、無色透明であっても有色透明であってもよい。パネル材7の樹脂材料は、典型的には、ポリカーボネート(PC)樹脂である。パネル材7は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂で形成してもよい。
【0016】
パネル材7の表面7aは、全体が滑らかな曲面に形成されている。パネル材7の裏面7bには、
図2に示すように、表側に向けて凹んだ凹部72が複数形成されている。裏面7bは、全体が着色膜73に覆われている。着色膜73は、各凹部72の形状がパネル材7の表側からパネル材7の透明な樹脂を透かして立体的に視認されやすくなるように、
図4及び
図5に示すように、凹部72の内側の面全体(側面72a及び底面72b)を覆うように設けられている。
【0017】
着色膜73は、公知の電波透過塗料からなる電波透過性の塗膜である。電波透過塗料としては、金属を含有しない塗料を用いることができるが、少量のアルミフレーク等金属フレーク顔料を含有する塗料であってもよい。金属フレーク顔料を含有する塗料を使用することで、意匠面1aに金属光沢を付与することができる。なお、着色膜73は、複数の層から構成されてもよく、また、複数の色を組み合わせて用いられてもよい。着色膜73は、パネル材7の裏面7b全体に形成されていてもよいし、裏面7bの一部にのみ形成されていてもよい。着色膜73の厚さは、例えば0.05mm~0.1mmである。着色膜73は、スクリーン印刷、金属蒸着、ホットスタンプ等により形成してもよい。なお、パネル材7の樹脂の透明度によっては、着色膜73を省略してもよい。
【0018】
パネル材7は、射出成形により成形することができる。具体的には、軟化温度に加熱したポリカーボネート樹脂を図示しない射出成形装置の金型に押込み、パネル材7を成形する。次に、成形したパネル材7を金型から取り出し、バリを切除し、さらにアニーリング(応力除去焼きなまし)行う。その後、パネル材7の裏面7b全体に、着色が施される。
【0019】
フレーム材8は、
図2及び
図3に示すように、パネル材7の裏側に隣接して設けられた板状の補強材である。フレーム材8は、正面視においてパネル材7の外形と同形状の外形を有するフレーム部81と、複数の固定用ブラケット82とを備えている。フレーム部81は、枠部81aと、縦桟部81bと、横桟部81cと、中桟部81dとを備える。枠部81aは、台形枠状であり、パネル材7の上辺に沿って延びる上辺部81a
1、下辺に沿って延びる下辺部81a
2、左辺に沿って延びる左辺部81a
3、及び、右辺に沿って延びる右辺部81a
4を備える。縦桟部81bは、上辺部81a
1と下辺部81a
2とに両端が接続されて、上下方向に延在する。横桟部81cは、左辺部81a
3と右辺部81a
4とに両端が接続され、上辺部81a
1及び下辺部81a
2と平行に延在する。中桟部81dは、横桟部81cと上辺部81a
1とに両端が接続され、上下方向に延在する。
【0020】
各固定用ブラケット82は、枠部81aの左辺部81a3及び右辺部81a4の裏面から後方に突出して形成されている。フロントグリル1は、各固定用ブラケット82を、図示しない車体側部材に対して係止させ、或いは、ボルト等所定の締結具により締結することで、車体側部材に固定される。
【0021】
フレーム材8は、例えば、アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)などの樹脂から形成することができる。AESは、PCと収縮率及び比誘電率が近いため、好適に用いることができる。フレーム材8は、パネル材7と同様に射出成形により成形することができる。
【0022】
フレーム材8は、パネル材7の裏面7bに接着固定されている。具体的には、枠部81a、縦桟部81b、横桟部81c、及び中桟部81dの前面が、パネル材7の裏面7bに接着剤により接着されている。接着剤は、例えば、熱可塑性樹脂を主成分とする公知のホットメルト接着剤を使用できる。ホットメルト接着剤によりフレーム材8をパネル材7に接着固定する際は、ホットメルト接着剤を加熱溶融してフレーム材8に塗布し、これを冷却して固化させればよい。
【0023】
フレーム材8の長手方向中央部の上部には、パネル材7のエンブレム取付部71を受容するためのエンブレム受容部83が設けられている。エンブレム受容部83は、エンブレム取付部71を表側から受容するために裏側に向けて凹んだ形状を有している。フレーム材8のうち、エンブレム受容部83の下方、かつ、レーダアンテナ3の前方には、電波透過用の開口84が設けられ、少なくともアンテナ6から出射される測定波の経路上に、フレーム材8が位置しないようになっている。開口84の周縁部には、レーダアンテナ3をフレーム材8に取り付けるための取付ボス部85が、周縁部の裏面から後方に向けて突設されている。
【0024】
レーダアンテナ3は、
図1乃至
図3に示すように、枠状のアンテナブラケット61に固定された状態で、フレーム材8の取付ボス部85に固定され、支持される。アンテナブラケット61は、ボルト等所定の締結具により取付ボス部85に締結される。
【0025】
レーダアンテナ3のアンテナ面6aは、
図4に示すように、パネル材7のうちエンブレム取付部71が形成された部分以外の部分の背後において、パネル材7の裏面7bとの間に車体前後方向の隙間Gをあけて配置される。車体に取り付けられた状態では、アンテナ面6aは車体前方に向けられているのに対し、パネル材7は表面7aが車体前方かつ上方に向くように傾斜しているため、隙間Gは、下方ほど大きくなる。
【0026】
パネル材7は、
図1及び
図4に示すように、第1領域である出射領域R1と、出射領域R1以外の非出射領域R2とからなる。出射領域R1では、
図4に示すように、アンテナ面6aから出射された測定波としての電波B1が、パネル材7の裏面7bから直接入射し、パネル材7の内部を透過して表面7aから出射される。また、出射領域R1では、対象物により反射された反射波としての電波B2が、パネル材7の表面7aから入射し、パネル材7の内部を透過して裏面7bからアンテナ面6aへ入射する。非出射領域R2では、アンテナ面6aから出射された電波B1が裏面7bから直接入射することはないが、測定対象物以外からの反射波B3が表面7aから入射しうる。出射領域R1と非出射領域R2とが一体となって、フロントグリル1の意匠面1aを構成している。
【0027】
出射領域R1では、
図1及び
図4に示すように、パネル材7の表面7a及び裏面7bがいずれも平滑面に形成されている。出射領域R1は、電波B1,B2が透過するときの減衰量を抑えるべく、その範囲全体において実質的に一定の厚さを有していることが望ましい。具体的には、出射領域R1のパネル材7の厚さ(着色膜73の厚さを含む)は、透過する電波(ミリ波)の波長の半分の整数倍であるとよい。出射領域R1のパネル材7の厚さは、例えば4.5mm程度である。
【0028】
非出射領域R2では、
図1及び
図4に示すように、パネル材7の表面7aは、出射領域R1における表面7aと滑らかに連続した平滑面に形成されている。一方、裏面7bは、出射領域R1における裏面7bと滑らかに連続しているが、
図2に示すように、裏面7bには、凹部72が複数形成されている。
【0029】
各凹部72の形状(穴の三次元形状)は、
図1及び
図2に示すように底面72bが四角形状や六角形状など多角形状であり、パネル材7の厚さ方向に深さを有する角柱状である。従って、凹部72は、これをパネル材7の表側からみたときに、頂面が多角形の柱状構造を呈する。なお、各凹部72の深さは、例えば1.5mm程度である。
【0030】
図5に示すように、凹部72の内側の面(例えば側面72a)は、パネル材7を構成する樹脂と着色膜73を構成する塗料との境界面となっている。また、着色膜73の表面(凹部72内側に露出した面)は、着色膜73の塗料と空気との境界面となっている。そのため、パネル材7の表面7aを通して側面72aに入射してきた反射波B3の一部は、上記2つの境界面で反射されることとなる。なお、凹部72の形状は、特に限定されず、角錐状、角錐台状、円柱状、円錐状、円錐台状、半球状などであってもよい。
【0031】
複数の凹部72は、パネル材7の正面視において、パネル材7の長手方向中心線Xに対して線対称な幾何学的パターンPgで配列されている。幾何学的パターンPgで配列された複数の凹部72は、凹部72以外の部分(出射領域R1の裏面7bの平滑面、非出射領域R2の裏面7bの凹部72以外の部分など)と一体となって、意匠面1aの全体にわたって継ぎ目なく広がる模様パターンPを形成している。
【0032】
幾何学的パターンPgでは、凹部72の配置密度が、
図1に示すように、車幅方向両外側から車幅方向中心側へ向かって、密から疎に徐々に変化するように分布している。具体的には、パネル材7の正面視において、単位面積当たり凹部72が占める面積の割合が、パネル材7の長手方向端部から出射領域R1に近くなるほど小さくなるように分布している。この配置密度の変化は、例えば、正面視における各凹部72の大きさ(長さ、幅など)を、出射領域R1に近づくに従って大から小へ変化するように設定することで実現できる。また、単位面積当たりの凹部72の個数を、出射領域R1に近づくに従って多から少へ変化するように設定してもよい。さらに図示した例のごとく、それらの両方の手段によって、配置密度を変化させてもよい。これにより、意匠面1aに、より緩やかな色調(濃淡、明暗など)のグラデーションが生まれ、左右の凹部72の群とそれらの間の領域(平滑面)とがより一体的に融合し(若しくはそれらの間の境界線が判別し難くなり)、フロントグリル1の外観品質が向上する。
【0033】
幾何学的パターンPgでは、
図1及び
図4に示すように、一部の複数の凹部72が、非出射領域R2のうちアンテナ面6aよりも車体前方側に位置する部分R2aの範囲内に位置するように形成されている。即ち、複数の凹部72は、第2領域である、電波の出射方向前方側に位置する部分R2aの範囲内に位置するように形成されている。
【0034】
また、幾何学的パターンPgでは、
図1に示すように、パネル材7の短手方向(上下方向)の各位置において、最も車幅方向中心側に位置する(即ち、最も中心線Xに近い)凹部72によって形成される列Lが、下方ほど中心線X寄りに位置するように傾斜している。
【0035】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0036】
(1)フロントグリル1によれば、非出射領域R2のうちアンテナ面6aよりも電波の出射方向前方側に位置する部分R2aに、凹部72が形成されている。このため、
図4及び
図5に示すように、当該部分R2aに入射してきた反射波B3の一部を、少なくとも凹部72の内側の面(例えば側面72a)で反射させることができる。即ち、反射波B3がアンテナ面6aとパネル材7との間に形成される隙間Gを介してアンテナ面6aに直接入射することを抑制することができる。これによりレーダアンテナ3に雑音電波、クラッタ等が高強度で混入することを抑制し、ミリ波レーダ2の送受信性能を向上させることができる。特にフロントグリル1では、各凹部72が、凹部72以外の部分(出射領域R1の平滑面等)とともに、意匠面1aに継ぎ目なく広がる模様パターンPを構成している。従って、フロントグリル1によれば、その外観品質を高く維持しつつ、ミリ波レーダ2の送受信性能を向上させることができる。
【0037】
(2)フロントグリル1によれば、非出射領域R2において単位面積当たり凹部72の占める面積の割合が、出射領域R1に近くなるほど小さくなっている。このため、パネル材7を成形する際の金型内の樹脂の流動抵抗は、出射領域R1に近い場所ほど低くなり、成形時の樹脂流れが非出射領域R2よりも出射領域R1においてより滑らかになる。これにより、出射領域R1におけるヒケ、ウェルドライン等の発生を抑制し、出射領域R1の電波透過性能を高く維持することができる。また、フロントグリル1の外観品質をさらに高めることができる。
【0038】
(3)幾何学的パターンPgでは、パネル材7の短手方向の各位置において最も中心線X寄りに位置する凹部72によって形成される列Lが、下方に行くほど中心線X寄りに位置するように傾斜している。即ち、アンテナ面6aの中心より下方に、より多くの凹部72が存在することになる。このため、路面からの反射波等、下方からの反射波B3によるクラッタを、より効果的に抑制することができる。
【0039】
<他の実施形態>
上記実施形態では、非出射領域R2の裏面7bに複数の凹部72が形成されていたが、代替的または追加的に裏面7bの同じ領域に対して、パネル材7の厚さ方向に突出した複数の凸部を設けてもよい。さらに別の実施形態では、代替的または追加的に非出射領域R2の表面7aに対して、複数の凹部及び凸部の一方または両方を形成してもよい。当該凸部の形状は、特に限定されないが、例えば凹部72の形状をそれが形成された面(裏面7b)に対して反転した形状とすることができる。これら他の実施形態では、非出射領域R2に形成された複数の凹部及び凸部の一方または両方と、他の部分(出射領域R1の平滑面など)とが一体となって、意匠面1aに継ぎ目のない模様パターンPを構成する。これら他の実施形態のいずれの場合においても、凹部や凸部が上記凹部72と同様の機能を発揮することにより、上記(1)~(3)の効果を得ることができる。
【0040】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【符号の説明】
【0041】
1 フロントグリル
1a 意匠面
3 レーダアンテナ
6a アンテナ面
7 パネル材
7a 表面
7b 裏面
72 凹部
B1 電波
G 隙間
P 模様パターン
R1 出射領域(第1領域)
R2a 非出射領域のうちアンテナ面よりも電波の出射方向前方側に位置する部分(第2領域)