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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】タイヤ部材の成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/24 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B29D30/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019187869
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062529
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】鬼松 博幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 薫
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康資
(72)【発明者】
【氏名】森 光司
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274392(JP,A)
【文献】特開昭50-157477(JP,A)
【文献】特開平03-189130(JP,A)
【文献】特開2008-254383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム外周面にタイヤの材料を巻回して円筒状のタイヤ部材を形成するためのタイヤ部材の成形装置であって、
中心軸と、前記中心軸の周りに並べられて前記ドラム外周面を構成する複数のセグメントからなるドラム本体と、前記セグメントをドラム半径方向に移動させることで前記ドラム本体を拡縮させる拡縮手段とを含み、
前記複数のセグメントは、ドラム周方向に交互に配される第1セグメントと第2セグメントとを含み、
前記拡縮手段は、前記第1セグメントを拡縮移動させる第1リンク機構と、前記第2セグメントを拡縮移動させる第2リンク機構とを含み、
前記第1リンク機構と前記第2リンク機構とは、ドラム軸方向に重なることなく位置を違えて配されるタイヤ部材の成形装置。
【請求項2】
前記第1リンク機構及び前記第2リンク機構は、それぞれ、
前記中心軸に固着される固定部と、
前記中心軸にドラム軸方向に移動可能に支持されるスライド部と、
一端部が前記固定部又は前記スライド部の一方に枢支され、かつ他端部が前記第1セグメント又は前記第2セグメントにそれぞれ枢支される複数の長リンク片と、
一端部が前記固定部又は前記スライド部の他方に枢支され、かつ他端部が前記長リンク片にそれぞれ枢支される複数の短リンク片とを含む、請求項1記載のタイヤ部材の成形装置。
【請求項3】
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記ドラム外周面の一部をなす基準面を有し、前記基準面のドラム周方向の側縁は、ドラム軸方向に対して傾斜している、請求項1又は2記載のタイヤ部材の成形装置。
【請求項4】
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記基準面を有する外側セグメント部と、前記外側セグメント部の半径方向内側に取り付く内側セグメント部とからなる、請求項3記載のタイヤ部材の成形装置。
【請求項5】
前記外側セグメント部は、ドラム軸方向に間隔を有して配される複数の分割片からなる、請求項4記載のタイヤ部材の成形装置。
【請求項6】
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、ドラム周方向の一方側の側縁部に、この側縁部の側で隣り合う前記第1セグメント又は前記第2セグメントの側縁部をドラム半径方向内側から受ける受け面部を具える、請求項1~5の何れかに記載のタイヤ部材の成形装置。
【請求項7】
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記ドラム外周面の一部をなす基準面を有し、
前記受け面部は、前記基準面から段差を介して連なる、請求項6記載のタイヤ部材の成形装置。
【請求項8】
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記拡縮手段によってドラム半径方向に移動する主セグメント片と、前記主セグメント片のドラム周方向の一方側の側縁部に屈曲可能に枢着される屈曲セグメント片とを含み、
前記屈曲セグメント片は、付勢手段によりドラム半径方向内側へ付勢される、請求項1~7の何れかに記載のタイヤ部材の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム本体を構成するセグメントの数を増加でき、高速走行におけるタイヤのノイズや振動を低減しうるタイヤ部材の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、タイヤのノイズや振動を低減する成形装置が提案されている。この装置では、中心軸の周りに並べられてドラム外周面を構成する複数のセグメントからなるドラム本体と、各セグメントをドラム半径方向に移動させることで前記ドラム本体を拡縮させる拡縮手段とを含む。
【0003】
又前記複数のセグメントは、周方向幅が異なる2種類以上のセグメントを具え、これによって、前記ドラム外周面が周方向に不等分割されている。即ち、ドラム外周面に形成された円筒状のゴム部材では、周方向において、セグメントの分割位置が非周期的に位置する。そのため、ラジアルフォースバリエーション(以下、RFVという)の変動を非周期化でき、タイヤのノイズや振動を低減しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-134822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、高速走行におけるノイズや振動には、RFVの高次成分も強く関与している。そして本発明者の研究の結果、RFVの高次成分とセグメントの分割数との間には強い相関関係があり、セグメントの分割数を増やすことで、RFVの高次成分を減じうることが判明した。
【0006】
そこで本発明者は、高速走行におけるノイズや振動を減じるために、ドラム本体を構成するセグメントの数(分割数)を増加させることを提案した。
【0007】
しかし、セグメントの数の増加に伴い、セグメントの周方向幅も減少する。そのため、各セグメントを半径方向に移動させるための拡縮手段の配置スペースを確保することが難しくなり、セグメントの数の充分な増加が見込めなくなる。
【0008】
本発明は、拡縮手段としてリンク機構を採用するとともに、周方向で隣り合うリンク機構同士を、ドラム軸方向に重なることなく位置を違えて配することを基本として、セグメントの数を増加でき、高速走行におけるタイヤのノイズや振動を低減しうるタイヤ部材の成形装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ドラム外周面にタイヤの材料を巻回して円筒状のタイヤ部材を形成するための成形装置であって、
中心軸と、前記中心軸の周りに並べられて前記ドラム外周面を構成する複数のセグメントからなるドラム本体と、前記セグメントをドラム半径方向に移動させることで前記ドラム本体を拡縮させる拡縮手段とを含み、
前記複数のセグメントは、ドラム周方向に交互に配される第1セグメントと第2セグメントとを含み、
前記拡縮手段は、前記第1セグメントを拡縮移動させる第1リンク機構と、前記第2セグメントを拡縮移動させる第2リンク機構とを含み、
前記第1リンク機構と前記第2リンク機構とは、ドラム軸方向に重なることなく位置を違えて配される。
【0010】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記第1リンク機構及び前記第2リンク機構は、それぞれ、
前記中心軸に固着される固定部と、
前記中心軸にドラム軸方向に移動可能に支持されるスライド部と、
一端部が前記固定部又は前記スライド部の一方に枢支され、かつ他端部が前記第1セグメント又は前記第2セグメントにそれぞれ枢支される複数の長リンク片と、
一端部が前記固定部又は前記スライド部の他方に枢支され、かつ他端部が前記長リンク片にそれぞれ枢支される複数の短リンク片とを含むのが好ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記ドラム外周面の一部をなす基準面を有し、前記基準面のドラム周方向の側縁は、ドラム軸方向に対して傾斜しているのが好ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記基準面を有する外側セグメント部と、前記外側セグメント部の半径方向内側に取り付く内側セグメント部とからなるのが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記外側セグメント部は、ドラム軸方向に間隔を有して配される複数の分割片からなるのが好ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、ドラム周方向の一方側の側縁部に、この側縁部の側で隣り合う前記第1セグメント又は前記第2セグメントの側縁部をドラム半径方向内側から受ける受け面部を具えるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記受け面部は、前記基準面から段差を介して連なるのが好ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤ部材の成形装置において、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、それぞれ、前記拡縮手段によってドラム半径方向に移動する主セグメント片と、前記主セグメント片のドラム周方向の一方側の側縁部に屈曲可能に枢着される屈曲セグメント片とを含み、前記屈曲セグメント片は、付勢手段によりドラム半径方向内側へ付勢されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、第1セグメントを拡縮移動させる第1リンク機構と、第2セグメントを拡縮移動させる第2リンク機構とが、ドラム軸方向に重なることなく位置を違えて配されている。
【0018】
従って、第1リンク機構同士をドラム周方向に密に、かつ第2リンク機構同士をドラム周方向に密に配置することが可能になる。そのため、第1リンク機構と第2リンク機構とをドラム周方向に交互に並べて配置する場合に比して、ドラム本体を構成するセグメントの数を増加することが可能になる。
【0019】
これにより、RFVの高次成分を減じることができ、高速走行におけるタイヤのノイズや振動を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の成形装置の一実施形態を示すドラム軸方向の断面図である。
図2】第1リンク機構及び第2リンク機構の配置を示すドラム軸心と直角方向の断面図である。
図3】リンク機構を示す斜視図である。
図4】(a)、(b)はリンク機構による拡径状態と縮径状態とを示すドラム軸方向の断面図である。
図5】セグメントをドラム半径方向外側から見た平面図、及びドラム軸方向の側面図である。
図6】セグメントの他の例を示すドラム半径方向外側から見た平面図、及びそのA-A断面図である。
図7】第1リンク機構及び第2リンク機構の他の例を示すドラム軸心と直角方向の断面図である。
図8】セグメントの他の例を示すドラム軸心と直角方向の部分断面図である。
図9】ドラム本体の拡縮径の状態を示すドラム軸心と直角方向の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の成形装置1は、中心軸2と、中心軸2の周りに並べられる複数のセグメント3からなる円筒状のドラム本体4と、各セグメント3をドラム半径方向に移動させることでドラム本体4を拡縮させる拡縮手段5とを含む。便宜上、ドラム半径方向内外への移動を拡縮移動と云う場合がある。
【0022】
成形装置1では、ドラム本体4の外周面であるドラム外周面S上でタイヤの材料が巻回されることにより、円筒状のタイヤ部材が順次形成される。本例では、ドラム本体4上にインナライナ、カーカスプライ等を含むシェーピング前の円筒状の1stカバーが形成される場合が示される。
【0023】
中心軸2は、例えばフレーム(図示省略)によって片持ち状に保持された支持軸であり、水平な軸心j回りで回転可能に支持される。なお本明細書では、中心軸2の自由端側(図1において右側)を、ドラム軸方向の一方側F1、その反対側(図1において左側)をドラム軸方向の他方側F2として説明する。
【0024】
図1、2に示すように、ドラム本体4は、ドラム周方向に配置される複数のセグメント3からなり、各セグメント3が協働して、円筒状の前記ドラム外周面Sを構成する。
【0025】
複数のセグメント3は、ドラム周方向に交互に配される第1セグメント3Aと第2セグメント3Bとを含む。本例では、第1セグメント3Aと第2セグメント3Bとは同一形状をなす。従って、本例では、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bは、ドラム周方向で隣り合う一方側、他方側のセグメント3を区別するためだけに命名されている。しかし、第1セグメント3Aと第2セグメント3Bとで構造を相違させることもできる。
【0026】
拡縮手段5は、第1セグメント3Aをそれぞれ拡縮移動させる第1リンク機構5Aと、第2セグメント3Bをそれぞれ拡縮移動させる第2リンク機構5Bとを含む。
【0027】
本例では、ドラム軸方向に距離を隔てて配される一対の第1リンク機構5A、5Aを用いることで、第1セグメント3Aを半径方向内外に平行移動可能に支持している。また第2セグメント3Bも同様に、ドラム軸方向に距離を隔てて配される一対の第2リンク機構5B、5Bを用いることで、第2セグメント3Bを半径方向内外に平行移動可能に支持している。
【0028】
そして、第1リンク機構5Aと第2リンク機構5Bとは、ドラム軸方向に重なることなく、ドラム軸方向に位置を違えて配されている。
【0029】
本例の第1リンク機構5Aは、中心軸2に固着される一つの固定部6と、中心軸2にドラム軸方向に移動可能に支持される一つのスライド部7と、一端部が固定部6又はスライド部7の一方に枢支される複数の長リンク片8と、一端部が固定部6又はスライド部7の他方に枢支される複数の短リンク片9とを含んで構成される。
【0030】
図3に示すように、固定部6は、本例では、中心軸2に外挿される例えばリング状の本体部6aを具え、この本体部6aは、中心軸2に一体に固定されている。
【0031】
スライド部7は、本例では、中心軸2に外挿される例えばリング状の本体部7aを具え、この本体部7aは、中心軸2に、ドラム軸方向にスライド移動可能に保持される。なお本体部7aは、キー溝等により中心軸2とは一体回転可能に係止される。スライド部7は、固定部6よりもドラム軸方向の他方側F2に配されるのが好ましい。
【0032】
長リンク片8は、その一端部であるドラム半径方向の内端部が、固定部6又はスライド部7の一方(本例ではスライド部7)に枢支点P1にて枢支されている。また長リンク片8の他端部であるドラム半径方向の外端部は、第1セグメント3Aに枢支点P2にて枢支される。
【0033】
短リンク片9は、長リンク片8よりも短寸であり、その一端部であるドラム半径方向の内端部が、固定部6又はスライド部7の他方(本例では固定部6)に枢支点P3にて枢支されている。また短リンク片9の他端部であるドラム半径方向の外端部は、長リンク片8に枢支点P4にて枢支されている。
【0034】
なお固定部6は、本体部6aの外周面から半径方向外側に突出する複数の枢着片6bを具え、この枢着片6bに、各短リンク片9の一端部が枢支点P3で枢支されている。スライド部7も同様に、本体部7aの外周面から半径方向外側に突出する複数の枢着片7bを具え、この枢着片7bに、各長リンク片8の一端部が枢支点P1で枢支されている。
【0035】
第1セグメント3Aは、本例では、ベース部11を介して、長リンク片8の他端部と枢支される。ベース部11は、第1セグメント3Aの半径方向内面に固定される基部11aと、この基部11aの半径方向内面にさらに固定されるリンク取付け部11bとを含む。リンク取付け部11bの半径方向内面には、長リンク片8の他端部を枢支させるための例えば溝状の枢着凹部12が形成されている。
【0036】
従って、図4(a)、(b)に示すように、スライド部7が、固定部6に近接する向きであるドラム軸方向の一方側F1にスライド移動することにより、長リンク片8を立ち上げる向きに傾動でき、第1セグメント3Aを縮径状態STから拡径状態STに拡径移動させうる。逆に、スライド部7が、固定部6から離間する向きであるドラム軸方向の他方側F2にスライド移動することにより、長リンク片8を寝かせる向きに傾動でき、第1セグメント3Aを拡径状態STから縮径状態STに縮径移動させうる。
【0037】
第2リンク機構5Bは、本例では、前記第1リンク機構5Aと、実質的に同構成であって、第2リンク機構5Bの長リンク片8の他端部が、第2セグメント3Bに枢支されることのみ、第1リンク機構5Aと相違する。従って、第2リンク機構5Bの説明は、本明細書では省略される。
【0038】
図1に示すように、第1リンク機構5Aは第1の作動部13により作動し、また第2リンク機構5Bは第2の作動部14により作動する。
【0039】
第1の作動部13は、中心軸2に外挿されてドラム軸方向にスライド移動可能に支持される例えば円盤状の移動部13a、及びこの移動部13aと第1リンク機構5Aにおけるスライド部7、7とを順次連結する連結軸13bを含む。また第1の作動部13は、移動部13aをドラム軸方向に移動させる作動軸13cをさらに含む。この作動軸13cは、例えばボールネジ機構等と接続し、移動部13aをドラム軸方向の任意の位置に移動させうる。
【0040】
第2の作動部14は、中心軸2に外挿されてドラム軸方向にスライド移動可能に支持される例えば円盤状の移動部14a、及びこの移動部14aと第2リンク機構5Bにおけるスライド部7、7とを順次連結する連結軸14bを含む。また移動部14aは、移動部13aとは接続部14cを介して一体移動可能に接続される。
【0041】
このような拡縮手段5は、第1リンク機構5Aと第2リンク機構5Bとが、ドラム軸方向に重なることなく、リンク軸方向に位置を違えて配されている。そのため、第1リンク機構5Aの枢着片6b同士を、ドラム周方向に互いに隣り合わせて配置できる。なお図示されないが、第2リンク機構5Bの枢着片7b同士も、ドラム周方向に互いに隣り合わせて配置できる。そのため、第1リンク機構5Aの枢着片6bと第2リンク機構5Bの枢着片7bとをドラム周方向に交互に並べて配置する場合に比して、枢着片6b及び枢着片7bを密に配置することが可能になる。即ち、セグメント3の数を増加することができる。
【0042】
なお図2には、第1リンク機構5Aと第2リンク機構5Bとを明確に区別するために、敢えて、枢着片6b、6b同士の間隔を広くとって描いている。しかし、実際には、例えば図7に示すように、枢着片6b、6b同士を密に配置することができる。
【0043】
これにより、セグメント3の数の増加によって、RFVの高次成分を減じることができ、高速走行におけるタイヤのノイズや振動を低減することが可能になる。
【0044】
図5に示すように、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bは、それぞれ、ドラム外周面Sの一部をなす基準面Saを有する。この基準面Saは、曲率半径Raの円弧面で形成される。
【0045】
本例では、基準面Saのドラム周方向の側縁eは、ドラム軸方向に対し角度θで傾斜している。ここで、ドラム本体4が拡径することで、ドラム外周面S上で形成されたタイヤ部材は、第1セグメント3Aの基準面Saと第2セグメント3Bの基準面Saとの間で不均一に延び、RFVの高次成分の悪化を招く。しかし本例では、基準面Saの側縁eが傾斜することで、タイヤ部材の延びの部分が、ドラム周方向に徐々に位置ズレし分散される。そのため、RFVの高次成分の減少に貢献しうる。なお前記角度θは、特に規制されないが、0.5~10度の範囲が好適である。
【0046】
また本例では、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bは、それぞれ、ドラム周方向の一方側の側縁部Eaに、受け面部20を具える。この受け面部20は、前記側縁部Eaの側で隣り合う第1セグメント3A又は第2セグメント3Bの側縁部Ebを、ドラム半径方向内側から受ける。これにより、ドラム本体4の真円性の確保に貢献しうる。
【0047】
受け面部20は、基準面Saよりも小な曲率半径Rbの円弧面からなり、基準面Saから段差21を介して連なる。なお段差21として傾斜面が好適である。
【0048】
また本例では、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bは、それぞれ、基準面Saを有する外側セグメント部22と、外側セグメント部22の半径方向内側に取り付く内側セグメント部23とから構成されるのが加工性の観点から好ましい。なお内側セグメント部23に受け面部20が形成される。
【0049】
このとき、図6に示すように、外側セグメント部22が、ドラム軸方向に間隔Gを有して配される複数の分割片24から形成されるのが好ましい。この場合、分割により、基準面Saの面積が小となる。そのため、ドラム外周面S上で形成されたタイヤ部材は、ドラム本体4が拡径する際、基準面Saと滑りやすくなり、タイヤ部材の延びが広く分散される。そのため、RFVの高次成分の減少に、さらに貢献しうる。
【0050】
図8にセグメント3の他の実施例を示す。図8に示すように、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bは、それぞれ、拡縮手段5によって拡縮移動しうる主セグメント片30と、主セグメント片30のドラム周方向の一方側の側縁部Ecに屈曲可能に枢着される屈曲セグメント片31とを含む。
【0051】
屈曲セグメント片31は、付勢手段33により、主セグメント片30に対してドラム半径方向内側へ付勢されている。
【0052】
詳しくは、屈曲セグメント片31は、主セグメント片30の側縁部Ecに蝶番34を介して屈曲可能に連結される。蝶番34は、主セグメント片30と屈曲セグメント片31との間に跨って取り付く。
【0053】
なお主セグメント片30には、前記受け面部20が設けられており、この受け面部20上には、ドラム周方向で隣り合う第1セグメント3A又は第2セグメント3Bの屈曲セグメント片31の自由端側の端部分31Eが載置される。
【0054】
付勢手段33は、主セグメント片30の内面、及び屈曲セグメント片31の内面からそれぞれドラム半径方向内側に突出する一対の突軸33Aと、この突軸33A、33A間に架け渡され両軸を互いに接近する向きに付勢するコイルばね33Bとを含む。
【0055】
図9に、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bが、それぞれ主セグメント片30と屈曲セグメント片31とに分割されたドラム本体4による作用効果が示される。図9に示すように、ドラム外周面Sを、半径Dsの基準外径状態STから半径Dmの拡径状態STまで拡大させた場合でも、主セグメント片30と屈曲セグメント片31との重なりが維持され、セグメント3A、3B間に隙間が生じるのを防ぐことができる。なお基準外径状態STとは、半径Dsと基準面Saの曲率半径Raとが実質的に等しい状態を意味する。
【0056】
拡径状態STでは、ドラム外周面Sの半径Dmが、基準面Saの曲率半径Raよりも大となる。しかし、屈曲セグメント片31が主セグメント片30に対して屈曲することで、ドラム外周面Sを、複数の基準面Saにより真円に近似させることが可能となる。なお、ドラム外周面S上に形成されたタイヤ部材は、最小の縮径状態STまで縮径することで取り外すことができる。このときにも、屈曲セグメント片31が主セグメント片30に対して屈曲することで、縮径状態STにおけるドラム外周面Sを真円に近づけつつ、その半径Drをより小さくできる。そのためタイヤ部材の取り外しをより容易にすることが可能となる。
【0057】
なお、第1セグメント3A及び第2セグメント3Bを、それぞれ、主セグメント片30と屈曲セグメント片31とに分割した構造の場合、セグメント3の数を実質的に増加しうる。この点からも、RFVの高次成分の減少に貢献しうる。
【0058】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0059】
1 成形装置
2 中心軸
3 セグメント
3A 第1セグメント
3B 第2セグメント
4 ドラム本体
5 拡縮手段
5A 第1リンク機構
5B 第2リンク機構
6 固定部
7 スライド部
8 長リンク片
9 短リンク片
20 受け面部
21 段差
22 外側セグメント部
23 内側セグメント部
24 分割片
30 主セグメント片
31 屈曲セグメント片
33 付勢手段
e 側縁
Ea、Eb、Ec 側縁部
S ドラム外周面
Sa 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9