(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】車両用シート用計測装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20230926BHJP
B60N 2/885 20180101ALI20230926BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20230926BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20230926BHJP
A61B 5/318 20210101ALI20230926BHJP
A61B 5/389 20210101ALI20230926BHJP
【FI】
B60N2/879
B60N2/885
A47C7/62 Z
A61B5/352
A61B5/318
A61B5/389
(21)【出願番号】P 2019200216
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-019857(JP,A)
【文献】特開2018-043677(JP,A)
【文献】特開2005-058287(JP,A)
【文献】特開2003-325466(JP,A)
【文献】特開2007-215671(JP,A)
【文献】特開2004-284449(JP,A)
【文献】米国特許第06220668(US,B1)
【文献】特開2016-116813(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1601559(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第2018-0042742(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
A61B 5/05-5/0538;5/24-5/398
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の背部を支持可能なシートバックに取り付け可能とされると共に、当該乗員の頭部をシート後方側から支持可能なヘッドレストの主な部分を構成するヘッドレスト本体部と、
前記ヘッドレストの一部を構成し、前記ヘッドレスト本体部のシート幅方向一方側にシート前方側に
シート上下方向周りに回動可能に取り付けられると共に、シート前方側に回動した状態で乗員の首部を支持可能な第1側部と、
前記ヘッドレストの一部を構成し、前記ヘッドレスト本体部のシート幅方向他方側にシート前方側に
シート上下方向周りに回動可能に取り付けられると共に、シート前方側に回動した状態で乗員の首部を支持可能な第2側部と、
前記第1側部に設けられると共に、当該第1側部が前記首部を支持している状態において当該首部に接触可能な第1電極部と、
前記第2側部に設けられると共に、当該第2側部が前記首部を支持している状態において当該首部に接触可能な第2電極部と、
前記第1電極部と前記第2電極部との間の電位差と経過時間とに基づき当該電位差の波形を取得可能とされた計測部と、
を有する車両用シート用計測装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記電位差の波形から周波数の異なる複数の波形を抽出可能とされている、
請求項1に記載の車両用シート用計測装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記乗員の心電図波形を取得可能とされると共に、当該心電図波形のR波間の間隔を計測可能とされている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート用計測装置。
【請求項4】
前記乗員の着座を検知したときに検知信号を出力する着座状態検知部と、
前記検知信号に基づき前記第1側部をシート前方側に回動させる第1アクチュエータと、
前記検知信号に基づき前記第2側部をシート前方側に回動させる第2アクチュエータと、
前記第1側部に設けられ、前記首部から受ける圧力が所定の値になったときに第1圧力信号を出力可能な第1圧力検知部と、
前記第2側部に設けられ、前記首部から受ける圧力が所定の値になったときに第2圧力信号を出力可能な第2圧力検知部と、
前記第1圧力信号及び前記第2圧力信号に基づき前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを停止させる制御部と、
をさらに有する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート用計測装置。
【請求項5】
前記乗員が操作可能な解除装置をさらに備え、
前記制御部は、前記乗員による前記解除装置の操作に基づいて前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動させて前記第1側部及び前記第2側部を初期状態に復帰可能とされている、
請求項4に記載の車両用シート用計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート用計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートに関する発明が開示されている。この車両用シートは、心拍センサを備えており、乗員の生体信号から乗員の心拍を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術では、心拍センサが静電容量式センサとされている。このため、心拍センサの電極部と乗員との相対位置関係が変化すると、すなわち乗員が車両用シート上で動くと、心拍センサで得られる生体信号の波形が変化することが考えられる。つまり、上記特許文献1に記載された先行技術は、検出される乗員の生体信号の波形の精度を向上させるという点においては改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、検出される乗員の生体信号の波形の精度を向上させることができる車両用シート用計測装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用シート用計測装置は、乗員の背部を支持可能なシートバックに取り付け可能とされると共に、当該乗員の頭部をシート後方側から支持可能なヘッドレストの主な部分を構成するヘッドレスト本体部と、前記ヘッドレストの一部を構成し、前記ヘッドレスト本体部のシート幅方向一方側にシート前方側にシート上下方向周りに回動可能に取り付けられると共に、シート前方側に回動した状態で乗員の首部を支持可能な第1側部と、前記ヘッドレストの一部を構成し、前記ヘッドレスト本体部のシート幅方向他方側にシート前方側にシート上下方向周りに回動可能に取り付けられると共に、シート前方側に回動した状態で乗員の首部を支持可能な第2側部と、前記第1側部に設けられると共に、当該第1側部が前記首部を支持している状態において当該首部に接触可能な第1電極部と、前記第2側部に設けられると共に、当該第2側部が前記首部を支持している状態において当該首部に接触可能な第2電極部と、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電位差と経過時間とに基づき当該電位差の波形を取得可能とされた計測部と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、乗員の背部がシートバックによって支持され、当該乗員の頭部が当該シートバックに取り付けられたヘッドレストによってシート後方側から支持される。
【0008】
ヘッドレストは、その主な部分がヘッドレスト本体部で構成されている。そして、ヘッドレスト本体部のシート幅方向一方側には、当該ヘッドレストの一部を構成する第1側部が取り付けられており、当該ヘッドレスト本体部のシート幅方向他方側には、当該ヘッドレストの一部を構成する第2側部が取り付けられている。
【0009】
また、第1側部には、第1電極部が設けられており、第2側部には、第2電極部が設けられている。そして、計測部では、第1電極部と第2電極部との間の電位差と経過時間とに基づき当該電位差の波形が取得される。このため、本発明では、第1電極部及び第2電極部が乗員の生体電位を取得可能な状態であれば、乗員の生体信号の波形を取得することができる。
【0010】
ところで、乗員の生体電位を第1電極部及び第2電極部によって安定して取得するには、第1電極部及び第2電極部と乗員との相対位置関係が一定の状態で、第1電極部及び第2電極部が乗員に接触していることが好ましい。
【0011】
ここで、本発明では、第1側部をヘッドレスト本体部に対してシート前方側に回動させることで、乗員の首部が第1側部によって支持される。そして、第1電極部は、第1側部が首部を支持している状態において当該首部に接触する。また、第2側部をヘッドレスト本体部に対してシート前方側に回動させることで、乗員の首部が第2側部によって支持される。そして、第2電極部は、第2側部が首部を支持している状態において当該首部に接触する。
【0012】
このため、第1電極部及び第2電極部を安定した状態で乗員に接触させ、第1電極部及び第2電極部によって、乗員の生体電位を安定して取得することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車両用シート用計測装置は、請求項1に記載の発明において、前記計測部は、前記電位差の波形から周波数の異なる複数の波形を抽出可能とされている。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、計測部によって、第1電極部と第2電極部との間の電位差の波形から、周波数の異なる複数の波形が抽出される。このため、乗員の状態に関する種々の生体信号の波形を取得することができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る車両用シート用計測装置は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記計測部は、前記乗員の心電図波形を取得可能とされると共に、当該心電図波形のR波間の間隔を計測可能とされている。
【0016】
請求項3に記載の本発明によれば、計測部によって、乗員の心電図波形が取得されると共に、当該心電図波形のR波間の間隔が計測される。このため、乗員の心拍変動を観測することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シート用計測装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記乗員の着座を検知したときに検知信号を出力する着座状態検知部と、前記検知信号に基づき前記第1側部をシート前方側に回動させる第1アクチュエータと、前記検知信号に基づき前記第2側部をシート前方側に回動させる第2アクチュエータと、前記第1側部に設けられ、前記首部から受ける圧力が所定の値になったときに第1圧力信号を出力可能な第1圧力検知部と、前記第2側部に設けられ、前記首部から受ける圧力が所定の値になったときに第2圧力信号を出力可能な第2圧力検知部と、前記第1圧力信号及び前記第2圧力信号に基づき前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを停止させる制御部と、をさらに有している。
【0018】
請求項4に記載の本発明によれば、乗員が車両用シートに着座すると、着座状態検知部から検知信号が出力される。そして、着座状態検知部からの検知信号に基づき、第1側部が第1アクチュエータによって、第2側部が第2アクチュエータによって、それぞれシート前方側に回動する。
【0019】
ところで、第1側部及び第2側部が過度にシート前方側に回動すると、第1側部及び第2側部によって乗員の首部が過度に圧迫されることが考えられる。
【0020】
ここで、本発明では、第1側部に設けられた第1圧力検知部と、第2側部に設けられた第2圧力検知部と、制御部とを備えている。第1圧力検知部は、当該第1圧力検知部が乗員の首部から受ける圧力が所定の値になると、第1圧力信号を出力する。一方、第2圧力検知部は、当該第2圧力検知部が乗員の首部から受ける圧力が所定の値になると、第2圧力信号を出力する。
【0021】
そして、制御部は、第1圧力信号及び第2圧力信号に基づき第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを停止させ、第1側部及び第2側部の回動を停止させる。このため、第1側部及び第2側部によって乗員の首部が過度に圧迫されることを抑制し、乗員の生体電位に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シート用計測装置は、請求項4に記載の発明において、前記乗員が操作可能な解除装置をさらに備え、前記制御部は、前記乗員による前記解除装置の操作に基づいて前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動させて前記第1側部及び前記第2側部を初期状態に復帰可能とされている。
【0023】
請求項5に記載の本発明によれば、乗員が解除装置を操作すると、制御部が第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを駆動させることで、第1側部及び第2側部が初期状態に復帰する。このため、例えば、乗員が首部に衣類等を装着しているとき等、当該乗員が、生体信号の検出に適さないと判断した場合等に、当該乗員の生体信号の検出を停止することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート用計測装置は、検出される乗員の生体信号の波形の精度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る車両用シート用計測装置の非作動時の状態を模式的に示す正面図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用シート用計測装置の作動時の状態を模式的に示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用シート用計測装置を備えた車両用シートの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】乗員の生体信号の時系列データを示す図である。
【
図5】(A)は、乗員の生体信号の波形から抽出された乗員の心電図であり、(B)は、乗員の生体信号の波形から抽出された乗員の眼輪筋周辺の筋電図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1~
図5を用いて、本発明に係る車両用シート用計測装置の実施形態の一例について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印RHは、それぞれ本実施形態に係る「車両用シート用計測装置10(以下、計測装置10と称する)」の一部を備えた「車両用シート12(以下、シート12と称する)の前方向、上方向、右方向を示している。
【0027】
まず、
図1及び
図3を用いて、シート12の構成について説明する。このシート12は、乗員14の臀部及び大腿部を支持するシートクッション16と、乗員14の背部を支持する「シートバック18」と、乗員14の頭部20を支持する「ヘッドレスト22」とを備えている。
【0028】
そして、計測装置10は、ヘッドレスト22、第1アクチュエータとしての「アクチュエータ24」、第2アクチュエータとしての「アクチュエータ26」、第1電極部としての「電極部28」、第2電極部としての「電極部30」、第1圧力検知部としての「圧力センサ32」、第2圧力検知部としての「圧力センサ34」、着座状態検知部としての「圧力センサ36」、「制御部38」及び「解除装置40」を含んで構成されている。
【0029】
ヘッドレスト22は、その主な部分を構成する「ヘッドレスト本体部42」、第1側部としての「側部44」及び第2側部としての「側部46」を含んで、シート前後方向から見てシート上方側からシート下方側に向かうに従って拡幅された台形状とされている。
【0030】
また、ヘッドレスト本体部42には、ヘッドレスト本体部42からシート下方側に延出された一対のヘッドレストステー48が設けられている。これらのヘッドレストステー48は、シートバック18に設けられた図示しないホルダ部に支持されると共に、当該ホルダ部に対するシート上下方向の相対位置を所定の範囲において調整可能とされている。これにより、ヘッドレスト22のシートバック18に対するシート上下方向の相対位置を調整することが可能となっている。
【0031】
側部44は、ヘッドレスト本体部42のシート下方側の部分におけるシート幅方向右側(シート幅方向一方側)の部分に、そのシート幅方向中央側の部分を中心にシート上下方向周りに回動可能に取り付けられている。
【0032】
一方、側部46は、ヘッドレスト本体部42のシート下方側の部分におけるシート幅方向左側(シート幅方向他方側)の部分に、そのシート幅方向中央側の部分を中心にシート上下方向周りに回動可能に取り付けられている。
【0033】
アクチュエータ24は、側部44の図示しないパッド部に内蔵されると共に、図示しないモータ及びウォームギアを含んで構成されている。また、ウォームギアのウォームは、モータの軸部に設けられており、ウォームギアのウォームホイールは、側部44をヘッドレスト本体部42に対して軸支する図示しない軸部に設けられている。そして、アクチュエータ24のモータが駆動されることで、側部44がシート上下方向周りに回動するようになっている。
【0034】
一方、アクチュエータ26は、側部46の図示しないパッド部に内蔵されると共に、ウォームホイールが、側部46をヘッドレスト本体部42に対して軸支する図示しない軸部に設けられている点を除き、アクチュエータ24と同様の構成とされている。そして、アクチュエータ26のモータが駆動されることで、側部46がシート上下方向周りに回動するようになっている。
【0035】
電極部28、30は、それぞれ電圧検出用とされている。そして、電極部28は、側部44の図示しないパッド部に主な部分が埋め込まれると共に、側部44の表皮部50から測定対象に接触する接触面部52が露出した状態となっている。
【0036】
一方、電極部30は、側部46の図示しないパッド部に主な部分が埋め込まれると共に、側部46の表皮部54から測定対象に接触する接触面部56が露出した状態となっている。
【0037】
圧力センサ32は、側部44の図示しないパッド部と表皮部50との間に配置されると共に、圧力センサ32に作用する圧力が所定の値になったときに、第1圧力信号としての「信号S1」を出力可能とされている。
【0038】
一方、圧力センサ34は、側部46の図示しないパッド部と表皮部54との間に配置されると共に、圧力センサ34に作用する圧力が所定の値になったときに、第2圧力信号としての「信号S2」を出力可能とされている。
【0039】
圧力センサ36は、シートクッション16の図示しないパッド部と表皮部58との間に配置されると共に、圧力センサ36に作用する圧力が所定の値になったときに、検知信号としての「信号S3」を出力可能とされている。
【0040】
制御部38は、シート12のシート下方側に配置されており、ヘッドレストステー48内を通された導線部60、62を介して、アクチュエータ24、26、電極部28、30及び圧力センサ32、34と電気的に接続されている。また、制御部38は、導線部64を介して圧力センサ36とも電気的に接続されている。なお、制御部38には、図示しない車載電源から電力が供給されるようになっている。
【0041】
詳しくは、制御部38は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ(記憶部)及び入出力I/Fを含んで構成されている。
【0042】
CPUは、中央演算処理ユニット(演算部)とされており、各種プログラムを実行することが可能とされている。このCPUは、ROMからプログラムを読み出し、RAMを作業領域として各種プログラムを実行可能とされている。
【0043】
そして、本実施形態では、ROMに記憶された実行プログラムが、CPUで読み出されて実行されることで、制御部38は、後述するように、種々の機能を発揮することが可能となっている。
【0044】
具体的には、入出力I/Fには、アクチュエータ24、26及び圧力センサ32、34、36が接続されており、乗員14の着座時において、制御部38は、圧力センサ32、34、36からの信号に基づき、アクチュエータ24、26の作動を制御するようになっている。
【0045】
詳しくは、制御部38は、乗員14がシート12に着座することで信号S3が圧力センサ36から入力されると、
図2に示されるように、アクチュエータ24、26を駆動させて、側部44、46をシート前方側に回動させるようになっている。そして、側部44、46は、乗員14の首部66に当接されるまで回動し、側部44、46によって首部66が支持されるようになっている。このとき、電極部28、30は、乗員14の首部66に接触した状態となっている。なお、ヘッドレスト22の高さは、電極部28、30が、乗員14の首部66における頭半棘筋の近傍に接触するように調整されている。
【0046】
また、制御部38は、乗員14の首部66が側部44、46で押圧されることで、圧力センサ32から信号S1が、圧力センサ34から信号S2が、それぞれ入力されると、アクチュエータ24、26を停止させるようになっている。
【0047】
また、入出力I/Fは、電極部28、30と接続されており、ストレージには、所定時間毎の電極部28と電極部30との間の電位差が記憶されるようになっている。そして、制御部38では、電極部28と電極部30との間の電位差と経過時間とに基づき、当該電位差の波形を取得することが可能とされている。つまり、本実施形態では、乗員14の首部66において電極部28と電極部30との間の電位差の波形、より具体的には、乗員14の頭半棘筋の筋電図が取得されることとなる。
【0048】
さらに、制御部38は、図示しないローパスフィルタ等を備えており、電極部28と電極部30との間の電位差の波形から周波数の異なる複数の波形を抽出することが可能となっている。
【0049】
例えば、制御部38は、乗員14の心電図波形を取得すると共に、当該心電図波形のR波間の間隔(RRI)を計測することが可能となっている。すなわち、制御部38は、計測部としても機能する。
【0050】
解除装置40は、シート12に設けられた図示しないプッシュスイッチを備えると共に、制御部38に電気的に接続されている。そして、乗員14がプッシュスイッチを操作すると、制御部38は、アクチュエータ24、26を駆動させて、側部44、46をシート後方側に回動させ、側部44、46を初期状態に復帰させるようになっている。
【0051】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0052】
本実施形態では、
図3に示されるように、乗員14の背部がシートバック18によって支持され、乗員14の頭部20がシートバック18に取り付けられたヘッドレスト22によってシート後方側から支持される。
【0053】
ヘッドレスト22は、その主な部分がヘッドレスト本体部42で構成されている。そして、ヘッドレスト本体部42のシート幅方向一方側には、ヘッドレスト22の一部を構成する側部44が取り付けられており、ヘッドレスト本体部42のシート幅方向他方側には、ヘッドレスト22の一部を構成する側部46が取り付けられている。
【0054】
また、側部44には、電極部28が設けられており、側部46には、電極部30が設けられている。そして、制御部38では、
図4に示されるように、電極部28と電極部30との間の電位差と経過時間とに基づき当該電位差の波形が取得される。このため、本実施形態では、電極部28及び電極部30が乗員14の生体電位を取得可能な状態であれば、乗員14の生体信号の波形を取得することができる。
【0055】
ところで、乗員14の生体電位を電極部28及び電極部30によって安定して取得するには、電極部28及び電極部30と乗員14との相対位置関係が一定の状態で、電極部28及び電極部30が乗員14に接触していることが好ましい。
【0056】
ここで、本実施形態では、側部44をヘッドレスト本体部42に対してシート前方側に回動させることで、乗員14の首部66が側部44によって支持される。そして、電極部28は、側部44が首部66を支持している状態において首部66に接触する。また、側部46をヘッドレスト本体部42に対してシート前方側に回動させることで、乗員14の首部66が側部46によって支持される。そして、電極部30は、側部46が首部66を支持している状態において首部66に接触する。
【0057】
このため、電極部28及び電極部30を安定した状態で乗員14に接触させ、電極部28及び電極部30によって、乗員14の生体電位を安定して取得することができる。
【0058】
また、本実施形態では、制御部38によって、電極部28と電極部30との間の電位差の波形から、周波数の異なる複数の波形が抽出される。このため、乗員14の状態に関する種々の生体信号の波形を取得することができる。
【0059】
具体的には、
図5(A)に示されるように、本実施形態では、乗員14の心電図波形が取得されると共に、当該心電図波形のR波間の間隔、すなわちRRIが計測される。このため、乗員14の心拍変動を観測することが可能となる。
【0060】
ところで、頭半棘筋の挙動は、眼輪筋の挙動と関連しており、乗員14の頭半棘筋の筋電図である
図4の波形から乗員14の眼輪筋の挙動に関連する信号を抽出することができる。そして、本実施形態では、
図5(B)に示されるように、乗員14の眼輪筋の筋電図が取得される。
【0061】
また、本実施形態では、乗員14がシートに着座すると、圧力センサ36から信号S3が出力される。そして、信号S3に基づき、側部44が第1アクチュエータによって、側部46がアクチュエータ26によって、それぞれシート前方側に回動する。
【0062】
ところで、側部44及び側部46が過度にシート前方側に回動すると、側部44及び側部46によって乗員14の首部66が過度に圧迫されることが考えられる。
【0063】
ここで、本実施形態では、側部44に設けられた圧力センサ32と、側部46に設けられた圧力センサ34と、制御部38とを備えている。圧力センサ32は、圧力センサ32が乗員14の首部66から受ける圧力が所定の値になると、信号S1を出力する。一方、圧力センサ34は、圧力センサ34が乗員14の首部66から受ける圧力が所定の値になると、信号S2を出力する。
【0064】
そして、制御部38は、信号S1及び信号S2に基づきアクチュエータ24及びアクチュエータ26を停止させ、側部44及び側部46の回動を停止させる。このため、側部44及び側部46によって乗員14の首部66が過度に圧迫されることを抑制し、乗員14の生体電位に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、乗員14が解除装置40を操作すると、制御部38がアクチュエータ24及びアクチュエータ26を駆動させることで、側部44及び側部46が初期状態に復帰する。このため、例えば、乗員14が首部66に衣類等を装着しているとき等、乗員14が、生体信号の検出に適さないと判断した場合等に、乗員14の生体信号の検出を停止することができる。
【0066】
したがって、本実施形態では、検出される乗員14の生体信号の波形の精度を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、乗員14の覚醒時における眼輪筋の筋電図及び乗員14の傾眠時における眼輪筋の筋電図を制御部38に記憶させると共に、これらとシート12に着座中の乗員14の筋電図とを制御部38で比較することで、乗員14の状態を制御部38で推定することができる。
【0068】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、制御部38がシート12のシート下方側に配置されると共に、圧力センサ36がシートクッション16に配置されていたが、これに限らない。例えば、シート12の仕様等に応じて、制御部38及び圧力センサ36をヘッドレスト22に設けるような構成としてもよい。
【0069】
(2) 上述した実施形態では、取得された乗員14の生体信号が制御部38で処理されていたが、これに限らない。例えば、シート12に通信部を設けて乗員14の生体信号をサーバ等に送信して処理してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 車両用シート用計測装置
12 車両用シート
18 シートバック
22 ヘッドレスト
24 アクチュエータ(第1アクチュエータ)
26 アクチュエータ(第2アクチュエータ)
28 電極部(第1電極部)
30 電極部(第2電極部)
32 圧力センサ(第1圧力検知部)
34 圧力センサ(第2圧力検知部)
36 圧力センサ(着座状態検知部)
38 制御部(計測部)
40 解除装置
42 ヘッドレスト本体部
44 側部(第1側部)
46 側部(第2側部)
S1 信号(第1圧力信号)
S2 信号(第2圧力信号)
S3 信号(検知信号)