(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】血圧計、血圧測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A61B5/022 A
(21)【出願番号】P 2019213489
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168799(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168797(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/018029(WO,A1)
【文献】特開2002-165765(JP,A)
【文献】特開平5-68669(JP,A)
【文献】特開平2-55033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードを有する血圧計であって、
上記スケジュールは、予め決められた時刻に血圧測定を開始する第1タイプのスケジュールと、指定時刻から予め決められた時間間隔で血圧測定を開始する第2タイプのスケジュールとを含み、
上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なる場合、又は、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下の場合、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に空き時間を設ける制御部を有する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記夜間血圧測定モードへモードを切り替えるためのモード指示を入力するモード操作部を備え、
上記制御部は、
上記モード指示が入力されて上記夜間血圧測定モードへ移行したのに伴って、上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された上記第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なるか否か、又は、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が上記予め決められた値以下であるか否かを判定する判定部と、
上記判定の結果が上記部分的に重なる又は上記予め決められた値以下であるという肯定的結果である場合、上記判定の結果が得られたのに伴って、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける調整を行う調整部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項2に記載の血圧計において、
表示器と、
血圧測定の開始時刻をシフトさせるずらし量を入力するための時刻操作部とを備え、
上記調整部は、
上記判定の結果が肯定的結果である場合、上記第1の血圧測定の開始時刻及び/又は上記第2の血圧測定の開始時刻を上記表示器に表示させ、
上記時刻操作部によって入力されたずらし量を用いて、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方をシフトして上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1に記載の血圧計において、
上記制御部は、
上記夜間血圧測定モードにおいて、上記第1タイプのスケジュールに基づく上記第1の血圧測定又は上記第2タイプのスケジュールに基づく上記第2の血圧測定が行われたのに伴って、上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された次回の第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された次回の第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なるか否か、又は、上記次回の第1の血圧測定の時間帯と上記次回の第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が上記予め決められた値以下であるか否かを判定する判定部と、
上記判定の結果が上記部分的に重なる又は上記値以下であるという肯定的結果である場合、上記判定の結果が得られたのに伴って、上記次回の第1の血圧測定又は上記次回の第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記次回の第1の血圧測定の開始時刻又は上記次回の第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記次回の第1の血圧測定と上記次回の第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける調整を行う調整部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の血圧計において、
過去の血圧測定に実際に要した測定所要時間を記憶する時間記憶部を備え、
上記制御部は、少なくとも前回の血圧測定に要した測定所要時間に基づいて、上記第1の血圧測定の時間帯の幅と上記第2の血圧測定の時間帯の幅とを設定する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記制御部は、上記第1の血圧測定の時間帯の幅と上記第2の血圧測定の時間帯の幅とをそれぞれ一定の長さに設定する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1、2、または4に記載の血圧計において、
上記制御部は、上記空き時間を一定の長さに設定する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記制御部が上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にした、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設けたことを記憶する調整記憶部
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項9】
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードで行われる血圧測定方法であって、
上記スケジュールは、予め決められた時刻に血圧測定を開始する第1タイプのスケジュールと、指定時刻から予め決められた時間間隔で血圧測定を開始する第2タイプのスケジュールとを含み、
上記血圧測定方法は、
上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なる場合、又は、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下の場合、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に空き時間を設ける
ことを特徴とする血圧測定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、夜間(睡眠時)血圧測定モードを有する血圧計に関する。また、この発明は、そのような血圧計によって血圧を測定する血圧測定方法に関する。また、この発明は、そのような血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、血圧測定は、被験者の血圧を確実に調べるため、毎日同じ時間帯で実施されることが好ましい。この要求を満たすように、予め設定した時刻になると血圧測定を実施する血圧計が特許文献1に開示されている。上述の血圧計により、例えば被験者が就寝している夜間においても、血圧測定を自動的に実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
夜間の血圧測定の結果は、被験者の心血管疾患リスクを調べる上で重要な情報である。そのため、夜間の血圧測定の結果として安定した血圧値を得ることが好ましい。夜間の血圧測定は、予め定められた時刻(例えば午前2時)、又は就寝から一定時間後の時刻(例えば4時間後)に実施されることで、安定した血圧値を算出できることが分かっている。一方、被験者の就寝時間が大きく変わる場合、例えば被験者がシフトワーカーであって、午後10時に就寝することと午前10時に就寝することを週ごとに切り替える場合、所定の時刻に血圧測定を実施できないことがある。したがって、夜間の血圧測定は、様々な被験者の多様な生活習慣にできる限り対応できるように、予め決められた時刻と就寝した時刻から予め決められた時間間隔との両方で実施されることが好ましい。
【0005】
一方、被験者が就寝する時刻が様々に異なると、予め決められた時刻に実施される血圧測定と就寝した時刻から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定とが重なり、血圧測定が連続して実施されることがある。血圧測定の方法が、例えば血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して血圧を測定するオシロメトリック法である場合、血圧測定が連続して実施されると、被験者の身体的負担が過剰に大きくなり、睡眠を阻害する恐れがある。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解消するためになされたもので、予め決められた時刻に実施される血圧測定と就寝した時刻から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態を回避できる血圧計および血圧測定方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、この開示の血圧計は、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードを有する血圧計であって、
上記スケジュールは、予め決められた時刻に血圧測定を開始する第1タイプのスケジュールと、指定時刻から予め決められた時間間隔で血圧測定を開始する第2タイプのスケジュールとを含み、
上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なる場合、又は、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下の場合、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に空き時間を設ける制御部を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本明細書で、「スケジュール」に含まれた「第1タイプのスケジュール」、「第2タイプのスケジュール」は、それぞれ血圧測定(通常は1分間~2分間程度要する)の開始時刻を定める。「第2タイプのスケジュール」における血圧測定の「時間間隔」は、「指定時刻」と或る血圧測定の開始時刻との間の間隔、または、或る血圧測定の開始時刻とその次の開始時刻との間の間隔を意味し、周期と同義であるものとする。
【0009】
「指定時刻」は、この血圧計のユーザ(典型的には、被験者)によって指定された時刻を意味し、例えば、ユーザがこの血圧計に夜間血圧測定モードへ移行すべき旨の指示を入力した時刻であってもよい。
【0010】
血圧測定の「時間帯」とは、実際に血圧測定が行われる時間(例えば、血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して血圧を測定するオシロメトリック法では、通常は1分間~2分間程度要する)を指す。
【0011】
この血圧計によれば、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なる場合、又は上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下である(小さい)場合、制御部は、予定された第1の血圧測定の開始時刻又は予定された第2の血圧測定の開始時刻を調整する。すなわち、制御部は、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定の間に空き時間を設ける。これにより、夜間の血圧測定において、予め決められた時刻に実施される血圧測定と就寝から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態が回避される。したがって、被験者の身体的負担が少なく、睡眠が阻害されない。
【0012】
一実施形態の血圧計では、
上記夜間血圧測定モードへモードを切り替えるためのモード指示を入力するモード操作部を備え、
上記制御部は、
上記モード指示が入力されて上記夜間血圧測定モードへ移行したのに伴って、上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された上記第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なるか否か、又は、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下であるか否かを判定する判定部と、
上記判定の結果が上記部分的に重なる又は上記予め決められた値以下であるという肯定的結果である場合、上記判定の結果が得られたのに伴って、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける調整を行う調整部と
を備えたことを特徴とする。
【0013】
「夜間血圧測定モードへ移行したのに伴って」とは、典型的には、上記夜間血圧測定モードへ移行した時点を指すが、例えば、その時点から5分間以内のように、被験者が未だ入眠していないと期待される時間内でもよい。同様に、「判定の結果が得られたのに伴って、」とは、典型的には、上記判定の結果が得られた時点を指すが、例えば、その時点から5分間以内のように、被験者が未だ入眠していないと期待される時間内でもよい。
【0014】
この血圧計によれば、上記モード指示が入力されてこの血圧計が上記夜間血圧測定モードへ移行したのに伴って、上記判定の結果が得られ、上記判定の肯定的結果が得られたのに伴って、上記調整部による調整が行われる。したがって、被験者が、上記モード操作部によって上記モード指示を入力した後、未だ入眠していないと期待される時間内で、上記調整部による調整が行われる。
【0015】
一実施形態の血圧計では、
表示器と、
血圧測定の開始時刻をシフトさせるずらし量を入力するための時刻操作部とを備え、
上記調整部は、
上記判定の結果が肯定的結果である場合、上記第1の血圧測定の開始時刻及び/又は上記第2の血圧測定の開始時刻を上記表示器に表示させ、
上記時刻操作部によって入力されたずらし量を用いて、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方をシフトして上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける
ことを特徴とする。
【0016】
血圧測定の「開始時刻をシフトさせる」とは、開始時刻を早める向き又は遅らせる向きに移動させることを指す。
【0017】
この血圧計によれば、上記調整部は、上記判定の結果が肯定的結果である場合、上記第1の血圧測定の開始時刻及び/又は上記第2の血圧測定の開始時刻を上記表示器に表示させる。したがって、ユーザ(主に、被験者)は、表示器の表示を見ることによって、上記判定の結果が肯定的結果であり、調整処理が必要であることを認識できる。ここで、ユーザが、時刻操作部によって、血圧測定の開始時刻をシフトさせるずらし量を入力すれば、上記調整部は、上記時刻操作部によって入力されたずらし量を用いて、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方をシフトして上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける。例えば、上記第2の血圧測定の開始時刻を、上記時刻操作部によって入力されたずらし量だけ遅らせる向きにシフトする。これにより、上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に、ユーザの希望に応じて上記空き時間を設けることができる。
【0018】
一実施形態の血圧計では、
上記制御部は、
上記夜間血圧測定モードにおいて、上記第1タイプのスケジュールに基づく上記第1の血圧測定又は上記第2タイプのスケジュールに基づく上記第2の血圧測定が行われたのに伴って、上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された次回の第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された次回の第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なるか否か、又は、上記次回の第1の血圧測定の時間帯と上記次回の第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が上記予め決められた値以下であるか否かを判定する判定部と、
上記判定の結果が上記部分的に重なる又は上記値以下であるという肯定的結果である場合、上記判定の結果が得られたのに伴って、上記次回の第1の血圧測定又は上記次回の第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記次回の第1の血圧測定の開始時刻又は上記次回の第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記次回の第1の血圧測定と上記次回の第2の血圧測定との間に上記空き時間を設ける調整を行う調整部と
を備えたことを特徴とする。
【0019】
「上記第1タイプのスケジュールに基づく第1の血圧測定又は上記第2タイプのスケジュールに基づく第2の血圧測定が行われたのに伴って」とは、典型的には、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定が行われた直後の時点を指すが、例えば、その時点から、例えば5分間以内のように、次の血圧測定が行われるまでの時間内でもよい。同様に、「判定の結果が得られたのに伴って、」とは、典型的には、上記判定の結果が得られた時点を指すが、例えば、その時点から5分間以内のように、次の血圧測定が行われるまでの時間内でもよい。
【0020】
この血圧計によれば、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定が行われたのに伴って、上記判定の結果が得られ、上記判定の肯定的結果が得られたのに伴って、上記調整部による調整が行われる。したがって、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定が行われる度、上記調整部による調整が行われる。
【0021】
一実施形態の血圧計では、
過去の血圧測定に実際に要した測定所要時間を記憶する時間記憶部を備え、
上記制御部は、少なくとも前回の血圧測定に要した測定所要時間に基づいて、上記第1の血圧測定の時間帯の幅と上記第2の血圧測定の時間帯の幅とを設定する
ことを特徴とする。
【0022】
ここで、「時間帯の幅」とは、時間帯を定める時間の長さを意味する。
【0023】
この血圧計によれば、時間記憶部に、過去の血圧測定に実際に要した測定所要時間が記憶される。上記制御部は、少なくとも前回の血圧測定に要した測定所要時間に基づいて、上記第1の血圧測定の時間帯の幅と上記第2の血圧測定の時間帯の幅とを設定する。したがって、時間帯の幅を設定する精度が高まり、適切な判定の結果が得られる。
【0024】
一実施形態の血圧計では、
上記制御部は、上記第1の血圧測定の時間帯の幅と上記第2の血圧測定の時間帯の幅とをそれぞれ一定の長さに設定する
ことを特徴とする。
【0025】
ここで、「一定の長さ」とは、例えば2分間のように、通常の血圧測定が完了し、かつ、次回の血圧測定のために無用に長くない長さを指す。
【0026】
この血圧計によれば、上記制御部は、上記第1の血圧測定の時間帯の幅と上記第2の血圧測定の時間帯の幅とをそれぞれ一定の長さに設定する。したがって、上記時間帯の幅が簡単に設定され得る。また、上記時間帯の幅が一定の長さになるので、安定した判定の結果が得られる。
【0027】
一実施形態の血圧計では、
上記制御部は、上記空き時間を一定の長さに設定する
ことを特徴とする。
【0028】
ここで、「一定の長さ」とは、被験者の身体的負担を考慮して、測定の合間に設けることが好ましい時間(例えば、血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して血圧を測定するオシロメトリック法では、通常は1分間程度要する)を指す。
【0029】
この血圧計によれば、上記制御部は、上記空き時間を一定の長さに設定する。したがって、上記空き時間の長さが簡単に設定され得る。また、血圧測定が連続して行われる事態が回避されて、被験者の身体的負担が減少する。
【0030】
一実施形態の血圧計では、
上記制御部が上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にした、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設けたことを記憶する調整記憶部
を備えたことを特徴とする。
【0031】
この血圧計によれば、上記調整記憶部により、上記制御部が上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にした、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に上記空き時間を設けたことを記憶する。したがって、被験者は、夜間の血圧測定において、予め決められた時刻に実施される血圧測定と就寝から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態が回避されたことを事後的に、例えば起床後に確認できる。
【0032】
別の局面では、この開示の血圧測定方法は、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードで行われる血圧測定方法であって、
上記スケジュールは、予め決められた時刻に血圧測定を開始する第1タイプのスケジュールと、指定時刻から予め決められた時間間隔で血圧測定を開始する第2タイプのスケジュールとを含み、
上記血圧測定方法は、
上記第1タイプのスケジュールに基づいて予定された第1の血圧測定の時間帯と上記第2タイプのスケジュールに基づいて予定された第2の血圧測定の時間帯とが少なくとも部分的に重なる場合、又は、上記第1の血圧測定の時間帯と上記第2の血圧測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下の場合、上記第1の血圧測定又は上記第2の血圧測定の一方を無効にする、又は、上記第1の血圧測定の開始時刻又は上記第2の血圧測定の開始時刻の一方を変更して上記第1の血圧測定と上記第2の血圧測定との間に空き時間を設ける
ことを特徴とする。
【0033】
この開示の血圧測定方法によれば、夜間の血圧測定において、予め決められた時刻に実施される血圧測定と就寝から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態が回避される。
【0034】
さらに別の局面では、この開示のプログラムは、上記血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0035】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧測定方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上より明らかなように、本発明の血圧計および血圧測定方法によれば、予め決められた時刻に実施される血圧測定と就寝した時刻から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態を回避できる。また、本発明のプログラムによれば、そのような血圧測定方法をコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施形態に係る手首式血圧計の概略図である。
【
図2】
図1に示す手首式血圧計が左手首に巻き付けられた状態を示す概略図である。
【
図3】
図1に示す手首式血圧計のブロック図である。
【
図4】
図1に示す手首式血圧計により実施される夜間の血圧測定のフローチャートである。
【
図5】
図1に示す手首式血圧計による測定時刻の調整を示す概略図である。
【
図6】
図1に示す手首式血圧計による測定時刻をシフトするフローチャートである。
【
図7】別の実施形態の手首式血圧計による測定時刻の調整を示す概略図である。
【
図8】別の実施形態の手首式血圧計により実施される夜間の血圧測定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る、手首式血圧計の実施形態を説明する。
【0039】
[手首式血圧計]
図1は、本発明の実施形態に係る手首式血圧計(以下、適宜「血圧計」という。)100の概略構成を示す。この血圧計100は、後述するように、血圧測定スイッチがオンされた直後に血圧測定を開始する通常血圧測定モードと、予め決められた時刻に又は指定時刻から予め決められた時間間隔で血圧測定を開始する夜間血圧測定モードを有する。
【0040】
[手首式血圧計の構成]
図1に示すように、血圧計100は、被験者の被測定部位に巻き付けられる血圧測定用のカフ10と、カフ10に一体に取り付けられている血圧計本体20を備える。
【0041】
図2に示すように、実施形態の血圧計100は手首式血圧計である。したがって、カフ10は、被験者200の例えば左手首210に巻き付けられるように細長い帯状の形状を有している。カフ10は、左手首210を圧迫するための空気袋12(
図3参照)が内包されている。なお、カフ10を常時環状に維持するために、カフ10内に、適度な可撓性を有するカーラ(図示せず)が設けられてもよい。
【0042】
血圧計本体20は、帯状のカフ10の長手方向に関して略中央の部位に一体に取り付けられている。実施形態では、血圧計本体20が取り付けられる部位は、左手首210の掌側面(手の平側の面)210aに対応することが予定されている。
【0043】
血圧計本体20は、カフ10の外周面に沿った扁平な略直方体の形状を有しており、被験者200の睡眠の邪魔にならないように、小型且つ薄く形成されている。また、血圧計本体20の上面(
図1に現れる面)とその周りを囲む側面とを繋ぐ角部は、曲面状の面取りが施されている。
【0044】
図1に示すように、血圧計本体20の外面のうち左手首210から最も遠い側の上面には、表示画面をなす表示器30と、被験者200からの指示を入力するための操作部40とが設けられている。
【0045】
実施形態において、表示器30は、LCD(液晶ディスプレイ)を含み、後述のCPU(中央演算処理装置)110からの制御信号に従って所定の情報、例えば最高血圧(単位;mmHg)、最低血圧(単位;mmHg)、脈拍(単位;拍/分)、さらに後述するカフ10の巻き付け判定を表示するように構成されている。なお、表示器30は有機ELディスプレイ又はLED(発光ダイオード)のいずれであってもよい。
【0046】
操作部40は、被験者200が操作する複数のボタン又はスイッチを有する。実施形態では、操作部40は、通常血圧測定モードの血圧測定指示を被験者200が入力するための血圧測定スイッチ42Aと、夜間血圧測定モードの血圧測定指示を被験者200が入力するための夜間測定スイッチ(モード操作部)42Bを含む。血圧測定スイッチ42Aは、該スイッチが血圧測定中に押されたときは実行中の血圧測定を停止するスイッチとして機能する。
【0047】
以下の説明において、「通常の血圧測定」とは、血圧測定スイッチ42Aがオンされた直後に開始される血圧測定をいう。また、以下の説明において、「夜間の血圧測定」とは、夜間測定スイッチ42Bを通じて血圧測定指示が入力された後に、予め定められたスケジュールに従って自動的に行われる血圧測定を意味し、例えば被験者200の睡眠中に行われる。予め定められたスケジュールに従って行われる血圧測定は、例えば深夜1時、2時、3時などの決められた時刻に行われる血圧測定、または、夜間測定スイッチ42Bが押されてから例えば2時間間隔で行われる血圧測定である。
【0048】
実施形態において、血圧測定スイッチ42Aと夜間測定スイッチ42Bは、いずれもモーメンタリタイプ(自己復帰タイプ)のスイッチであり、押し下げられている間だけオン状態になり、離されるとオフ状態に戻るように構成されている。
【0049】
【0050】
上述のカフ10に含まれる空気袋12と血圧計本体20に含まれる種々の流体制御機器(以下に説明する)は、エア配管50によって流体流通可能に接続されている。
【0051】
血圧計本体20は、上述の表示器30と操作部40とに加えて、制御部であるCPU110と、調整記憶部であるメモリ112と、電源部114と、圧力センサ62と、ポンプ72と、弁82を有する。また、血圧計本体20は、圧力センサ62の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換回路64と、ポンプ72を駆動するポンプ駆動回路74と、弁82を駆動する弁駆動回路84を有する。圧力センサ62、ポンプ72、及び弁82は、エア配管50を通して、空気袋12と流体流通可能に接続されている。
【0052】
メモリ112は、血圧計100を制御するためのプログラム、血圧計100を制御するために用いられるデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶している。メモリ112はまた、プログラム実行中の各種情報を一時的に保存するワークメモリとしても用いられる。特に、実施形態におけるメモリ112は、プログラム記憶部として構成されており、後述する、オシロメトリック法による血圧算出のための通常血圧測定プログラムと夜間血圧測定プログラム、予め決められた時刻(以下、絶対測定時刻と呼称する。)と、指定時刻から予め決められた時間間隔で設けられる時刻(以下、相対測定時刻と呼称する。)とを設定する測定時刻設定プログラム、絶対測定時刻と相対測定時刻を比較する測定時刻比較プログラム、絶対測定時刻又は相対測定時刻を更新する測定時刻更新プログラムを記憶している。
【0053】
CPU(制御部)110は、血圧計100全体の動作を制御するように構成されている。具体的には、CPU110は、メモリ112に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って、ポンプ72又は弁82を駆動する圧力制御部、後述する測定時刻設定プログラムを実施する測定時刻設定部、後述する測定時刻比較プログラムを実施する測定時刻比較部(判定部)、後述する測定時刻更新プログラムを実施する測定時刻更新部(調整部)、及び絶対測定時刻と相対測定時刻において夜間血圧測定プログラムを実施する夜間測定実施部として構成されている。CPU110はまた、通常血圧測定プログラム又は夜間血圧測定プログラムを実施することで得られる血圧値、及び更新された夜間の血圧測定の絶対測定時刻と相対測定時刻を表示器30に表示し、該血圧値、及び更新された絶対測定時刻と相対測定時刻をメモリ112に記憶させる。
【0054】
実施形態において、電源部114は、2次電池からなり、CPU110、圧力センサ62、ポンプ72、弁82、表示器30、メモリ112、A/D変換回路64、ポンプ駆動回路74、および弁駆動回路84の各部に電力を供給するように構成されている。電源部114はまた、オン/オフ状態を切り替えることができるように構成されており、オフ状態のとき、血圧測定スイッチ42Aが例えば3秒間以上連続して押されると、オン状態になる。
【0055】
ポンプ72は、カフ10に内蔵された空気袋12内の圧力(以下、適宜「カフ圧」という。)を上げるために、エア配管50を通して空気袋12に流体としての空気を供給するように構成されている。弁82は、カフ圧を制御するため、開くことによってエア配管50を通して空気袋12の空気を排出する、又は閉じることによってカフ圧を保持するように構成されている。ポンプ駆動回路74は、CPU110から与えられる制御信号に基づいてポンプ72を駆動するように構成されている。弁駆動回路84は、CPU110から与えられる制御信号に基づいて弁82を開閉するように構成されている。
【0056】
圧力センサ62とA/D変換回路64は、カフ圧を検出するように構成されている。実施形態における圧力センサ62は、ピエゾ抵抗式圧力センサであり、空気袋12のカフ圧をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として検出し出力する。A/D変換回路64は、圧力センサ62の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。実施形態では、CPU110は、圧力センサ62から出力される電気抵抗に応じて、カフ圧を取得する。
【0057】
[血圧測定プログラム]
血圧測定プログラムは、血圧計本体20を左手首210に取り付けている被験者200の血圧を算出する。血圧測定プログラムは、通常血圧測定プログラムと夜間血圧測定プログラムを含む。通常血圧測定プログラムは、被験者200が椅子などに座り、血圧計本体20が取り付けられている左手首210を被験者200の心臓と同じ高さに保つことを想定している。夜間血圧測定プログラムは、被験者200がベッドなどに横たわり、血圧計本体20が取り付けられている左手首210が被験者200の心臓よりも低い位置に置かれることを想定している。血圧計本体20の高さと被験者200の心臓の高さの関係が異なることで、異なる血圧値が算出されることが分かっている。そのため、通常血圧測定プログラムと夜間血圧測定プログラムは、それぞれが想定する血圧計本体20の高さと被験者200の心臓の高さの関係を考慮して、血圧算出に用いるパラメータが予め調整されている。
【0058】
CPU110は、通常血圧測定プログラム又は夜間血圧測定プログラムを実施するとき、圧力センサ62により得られるカフ圧に含まれる脈波の変動成分から脈波信号を得て、メモリ112に記憶されているそれぞれのプログラムを用いて、血圧値(最高血圧と最低血圧)を算出する。
【0059】
[夜間血圧測定モード]
夜間の血圧測定について説明する。実施形態において、夜間血圧測定プログラムを実施する絶対測定時刻の初期値として、午前2時、3時、4時がメモリ112に予め記憶されている。測定時刻設定プログラムは、メモリ112に記憶されている上記時刻を参照し、この夜間の血圧測定における絶対測定時刻T1,T2,T3に設定する。
図5(a)は、絶対測定時刻T1,T2,T3のスケジュールであり、それぞれの絶対測定時刻T1,T2,T3になると、夜間血圧測定プログラムが2分間実施されることを示している。
【0060】
血圧計100のカフ10が被験者200の左手首210に巻き付けられている状態で、未就寝の被験者200が血圧計本体20の夜間測定スイッチ42Bを一度押下すると、夜間の血圧測定指示(モード指示)がCPU110に出力される。これにより、CPU110はポンプ72と弁82を駆動してカフ10のカフ圧を増加し、左手首210がカフ10により一時的に圧迫される。また、この夜間の血圧測定指示がCPU110に出力された時刻が指定時刻T10になる。測定時刻設定プログラムは、指定時刻T10から2時間間隔で設けられる時刻を相対測定時刻T11,T12に設定する。
図5(b)は、指定時刻T10が午前1時1分であるときの相対測定時刻T11,T12のスケジュールであり、それぞれの相対測定時刻T11,T12(この場合、相対測定時刻T11は午前3時1分であり、相対測定時刻T12は午前5時1分である。)になると、夜間血圧測定プログラムが2分間実施されることを示している。
【0061】
血圧計100のCPU110は、測定時刻比較プログラムに基づいて、設定された絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12を比較する。実施形態において、CPU110は、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定(第1タイプのスケジュール)のいずれかと相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定(第2タイプのスケジュール)のいずれかが重なると判定したとき、測定時刻更新プログラムに基づいて、該絶対測定時刻T1,T2,T3又は該相対測定時刻T11,T12をずらす。
【0062】
その後、絶対測定時刻T1,T2,T3のスケジュールと相対測定時刻T11,T12のスケジュールに従って夜間血圧測定プログラムが実施される。ただし、血圧計100が夜間の就寝中の被験者200の血圧測定を実施するまでの時間に(例えば、所定の夜間血圧測定プログラムを実施する時刻までの待機時間内に)、夜間測定スイッチ42Bが再び押し下げられると、夜間血圧測定の停止が指示され、夜間血圧測定プログラムは実行されることがない。
【0063】
実施形態において、絶対測定時刻T1,T2,T3は、午前2時、3時、4時にそれぞれ設定されているが、この内容に限定されることなく、例えば午前0時、1時などの別の時刻に設定されていてもよい。また、相対測定時刻T11,T12は、指定時刻T10から2時間間隔で設けられる時刻に設定されているが、この内容に限定されることなく、例えば指定時刻T10から1時間後の時刻と3時間後の時刻に設定されていてもよい。
【0064】
図4は、被験者200が血圧計100により夜間の血圧測定を実施するときの動作フローを示す。この夜間の血圧測定の間、左手首210に血圧計100を装着した被験者200は、ベッドなどに横たわった状態を保つ。また、電源部114がオン状態であれば、上述の絶対測定時刻T1,T2,T3は既に設定されている。
【0065】
この状態で、
図4のステップS1に示すように、被験者200が血圧計本体20に設けられている夜間測定スイッチ42Bを押下して夜間の血圧測定指示を入力すると、CPU110は、測定時刻設定プログラムにより、指定時刻T10を基準として、上述の相対測定時刻T11,T12を設定する。
【0066】
次に、CPU110は、測定時刻比較プログラムに基づいて、設定された絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が重なるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、測定時刻比較プログラムは、絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯(第1の血圧測定の時間帯)の幅と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯(第2の血圧測定の時間帯)の幅を、測定に要する一定の長さの測定所要時間T20(実施形態では2分間)に設定する。これにより、絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯の幅と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯の幅が簡単に設定される。この絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯が、少なくとも部分的に重なるとき、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定は「重なる」(肯定的結果である)と判定される。一方、この絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯が、全く重ならないとき、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定は「重ならない」と判定される。
【0067】
図5(a),(b)に示すように、絶対測定時刻T1,T2,T3が午前2時、3時、4時にそれぞれ設定され、相対測定時刻T11,T12が午前3時1分、5時1分にそれぞれ設定される。このとき、絶対測定時刻T2(午前3時)の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11(午前3時1分)の相対測定時間帯は部分的に重なる(相対測定時刻T11が絶対測定時刻T2の絶対測定時間帯内にある)。したがって、絶対測定時刻T2に実施される血圧測定と相対測定時刻T11に実施される血圧測定は「重なる」と判定される。一方、他の絶対測定時間帯と相対測定時間帯は全く重ならない(相対測定時刻T12が他の絶対測定時刻の絶対測定時間帯内にない)ため、他の絶対測定時刻と相対測定時刻に実施される血圧測定は「重ならない」と判定される。これにより、判定に用いられる絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯の幅と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯の幅が一定の長さになるので、安定した判定の結果が得られる。
【0068】
ステップS2において、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が「重なる」と判定されるとき、CPU110は、測定時刻更新プログラムに基づいて、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12を調整する(ステップS3)。具体的には、測定時刻更新プログラムは、絶対測定時刻T1,T2,T3の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11,T12の相対測定時間帯の間に一定の長さ、例えば1分間の空き時間T22を設けるように、相対測定時刻T11,T12をずらす。これにより、空き時間T22の長さが簡単に設定され得る。
【0069】
図5(a),(b)に示すように、最初に設定された絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12の内、絶対測定時刻T2の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11の相対測定時間帯は部分的に重なるため、絶対測定時刻T2に実施される血圧測定と相対測定時刻T11に実施される血圧測定は「重なる」と判定される。このとき、CPU110は、測定時刻更新プログラムに基づいて、絶対測定時刻T1,T2,T3の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11,T12の相対測定時間帯の間に空き時間T22を設けるように、すなわち絶対測定時刻T2における測定の終了予定時刻(午前3時2分)から相対測定時刻T11における測定の開始予定時刻(午前3時1分)までの時間を空き時間T22(1分)まで拡げるように、相対測定時刻T11を遅くする、すなわち相対測定時刻T11を午前3時1分から午前3時3分に更新する(
図5(c)参照)。したがって、絶対測定時刻T2に実施される血圧測定と相対測定時刻T11に実施される血圧測定は、「重ならない」状態となる。これにより、被験者200が、夜間測定スイッチ42Bによって夜間の血圧測定指示を入力した後、未だ入眠していないと期待される時間内で、CPU110による調整が行われる。また、血圧測定が連続して行われる事態が回避されて、被験者200の身体的負担が減少する。
【0070】
このとき、CPU110は、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12を調整したことを、絶対測定時刻T1,T2,T3と調整された相対測定時刻T11,T12と共に、メモリ112に保存する。これにより、被験者200は、夜間の血圧測定において、予め決められた時刻に実施される血圧測定(絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定)と就寝から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定(相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定)とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態が回避されたことを事後的に、例えば起床後に確認できる。
【0071】
その後、CPU110は、絶対測定時刻T1,T2,T3と調整された相対測定時刻T11,T12とを表示器30に出力して、相対測定時刻T11,T12を更新したことを示す(ステップS4)。これにより、被験者200は、表示器30の表示を見ることによって、
絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が「重なる」と判定され(判定の結果が肯定的結果であり)、相対測定時刻T11,T12を調整する調整処理が行われたことを認識できる。
【0072】
その後、CPU110は、絶対測定時刻T1,T2,T3又は相対測定時刻T11,T12であるか否かを判断し(ステップS5)、いずれかの測定時刻でなければ(ステップS5でNOへ分岐するとき)、該測定時刻になるまで待つ。
【0073】
上記測定時刻になるとき(ステップS5でYESへ分岐するとき)、CPU110は、圧力センサ62を初期化する(ステップS6)。具体的には、CPU110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ72を停止し、弁82を開いた状態で、圧力センサ62の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0074】
次に、CPU110は、弁駆動回路84を介して弁82を閉じ(ステップS7)、続いて、ポンプ駆動回路74を介してポンプ72を駆動して、カフ10(空気袋12)の加圧を開始する(ステップS8)。このとき、CPU110は、ポンプ72からエア配管50を通して空気袋12に空気を供給しながら、圧力センサ62の出力に基づいて、空気袋12内の圧力であるカフ圧の加圧速度を制御する。
【0075】
次に、ステップS9において、CPU110は、この時点で取得されている脈波信号に基づいて、メモリ112に記憶されている上述の夜間血圧測定プログラムを用いて血圧値(最高血圧と最低血圧)を算出する。
【0076】
この時点で、CPU110は、データ不足のために未だ血圧値を算出できないとき(ステップS10でNOへ分岐するとき)、カフ圧が上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS8,S9の処理を繰り返す。
【0077】
血圧値が算出されると(ステップS10でYESへ分岐する場合)、CPU110は、ポンプ72を停止し(ステップS11)、弁82を開いて(ステップS12)、カフ10(空気袋12)内の空気を排気するように制御する。
【0078】
その後、CPU110は、算出した血圧値を表示器30へ表示し(ステップS13)、血圧値をメモリ112へ保存するように制御する。
【0079】
上述のスケジュールで定められた1回の血圧測定が完了すると、CPU110は、上述のスケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する(ステップS14)。上述のスケジュールで定められた血圧測定が未だ予定されている場合(ステップS14で「未完」へ分岐するとき)、CPU110は、ステップS5に戻り、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12の内、次の測定時刻であるか否かを判断し、該測定時刻でなければ(ステップS5でNOへ分岐するとき)、該測定時刻になるまで待つ。
【0080】
絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12の内、次の測定時刻になるとき(ステップS5でYESへ分岐するとき)、CPU110は、ステップS6~S13の処理を繰り返し、ステップS14において、再び、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12における全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。
【0081】
絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12における全ての血圧測定が完了すると(ステップS14で「終了」へ分岐するとき)、CPU110は夜間の血圧測定を終了する。
【0082】
なお、上述の測定時刻更新プログラムは、絶対測定時刻T1,T2,T3の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11,T12の相対測定時間帯の間に一定の長さ(上の例では、1分間)の空き時間T22を設けるように、相対測定時刻T11,T12をずらしているが、これに限られるものではない。例えば、ユーザの希望に応じて上記空き時間を設けても良い。具体的には、絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯が、少なくとも部分的に重なるとき(
図4のステップS2)、
図6のステップS31に示すように、CPU110は、第1の血圧測定の開始時刻としての絶対測定時刻T1,T2,T3と第2の血圧測定の開始時刻としての相対測定時刻T11,T12とを表示器30に表示させる。次に、CPU110は、被験者200が、相対測定時刻T11,T12を調整するため、夜間測定スイッチ(時刻操作部)42Bの操作によって、血圧測定の開始時刻をシフトさせるずらし量を入力したか否かを判断する(ステップS32)。被験者200がずらし量を入力しなければ(ステップS32でNOへ分岐するとき)、CPU110は被験者200がずらし量を入力するまで待つ。一方、被験者200が夜間測定スイッチ42Bを操作してずらし量を入力すると(ステップS32でYESへ分岐するとき)、CPU110は、その入力されたずらし量を用いて、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12との一方をシフトして絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12との間に空き時間(T22´とする。)を設ける。例えば、
図5(a),(b)の重なり例では、相対測定時刻T11を、その入力されたずらし量(例えば、3分間)だけ遅らせる向きにシフトして、絶対測定時刻T2と相対測定時刻T11との間に空き時間T22´を設ける。これにより、絶対測定時刻T1,T2,T3の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11,T12の相対測定時間帯との間に、被験者200の希望に応じて空き時間T22´を設けることができる。
【0083】
また、上述の測定時刻更新プログラムは、絶対測定時刻T1,T2,T3の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11,T12の相対測定時間帯の間に空き時間T22を設けるように、相対測定時刻T11,T12をずらすことで、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が重ならないように調整している。一方、
図7(a)~(c)に示すように、測定時刻更新プログラムは、最初に設定された絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12の内、絶対測定時刻T2の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11の相対測定時間帯が部分的に重なるとき、相対測定時刻T11における血圧測定を無効にすることで、絶対測定時刻T2に実施される血圧測定と相対測定時刻T11に実施される血圧測定が重ならないように調整してもよい。
【0084】
上述の測定時刻比較プログラムは、絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯が、少なくとも部分的に重なるとき、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定は「重なる」と判定している。一方、絶対測定時刻T1,T2,T3における測定の時間帯と相対測定時刻T11,T12における測定の時間帯との間の時間差が予め決められた値以下、例えば1分以下の場合も、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定は「重なる」と判定してもよい。これにより、CPU110は、絶対測定時刻T1,T2,T3の絶対測定時間帯と相対測定時刻T11,T12の相対測定時間帯の間に、予め決められた猶予時間である1分間を確実に設けることができる。
【0085】
上述の夜間の血圧測定において、予め決められた時刻に実施される血圧測定(絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定)と就寝から予め決められた時間間隔で実施される血圧測定(相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定)とが重なる、又は近いとき、血圧測定が連続して行われる事態が回避される。したがって、被験者200の身体的負担が少なく、睡眠が阻害されない。
【0086】
血圧計100は、被測定部位としての手首(実施形態では左手首210としたが、右手首でもよい。)を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比べて、被験者200の睡眠を妨げ難いことが期待される。したがって、上記血圧計100は夜間血圧測定に適する。
【0087】
また、血圧計100は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成されているため、被験者200が扱い易い。
【0088】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、測定時刻比較プログラム(ステップS2)と測定時刻更新プログラム(ステップS3)は、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12になる前に実施されているが、
図8に示すように、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12における血圧測定が終了した後、実施されてもよい。この場合、算出した血圧値を表示した(ステップS113)後、CPU110が測定に要した時間を算出する(ステップS120)ことが好ましい。CPU110は、この算出された時間を測定所要時間T20としてメモリ(時間記憶部)112に保存してもよい。また、このメモリ112に保存される測定所要時間T20は、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12における血圧測定に要した時間に限定されることなく、例えば、血圧計100が夜間血圧測定モードに設定されるより前に通常血圧測定モードで測定したときに要した時間でもよい。その後、絶対測定時刻T1,T2,T3と相対測定時刻T11,T12における全ての血圧測定が完了していなければ(ステップS121で「未完」へ分岐するとき)、CPU110は測定時刻比較プログラムを実施する(ステップS122)。これにより、CPU110が実際の測定所要時間を基準に判定するため、時間帯の幅を設定する精度が高まり、適切な判定の結果が得られる。次回の絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と次回の相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が「重なる」と判定されるとき、CPU110は、測定時刻更新プログラムに基づいて、次回の絶対測定時刻T1,T2,T3と次回の相対測定時刻T11,T12を調整する(ステップS123)。次回の絶対測定時刻T1,T2,T3と次回の相対測定時刻T11,T12の調整が完了した後、又は次回の絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定と次回の相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が「重ならない」と判定されるとき、CPU110は、絶対測定時刻T1,T2,T3又は相対測定時刻T11,T12であるか否かを判断するステップS105に戻る。これにより、絶対測定時刻T1,T2,T3に実施される血圧測定又は相対測定時刻T11,T12に実施される血圧測定が行われる度、CPU110による調整が行われる。他のステップは、
図4に示す動作フローと同様に実施される。
【0089】
上述の実施形態では、測定時刻更新プログラムは、相対測定時刻T11,T12を調整したが、絶対測定時刻T1,T2,T3を調整するように構成されてもよい。
【0090】
上述の実施形態では、CPU110は、カフ10(空気袋12)の加圧過程で血圧を算出したが、カフの減圧過程で血圧を算出してもよい。
【0091】
上述の実施形態では、血圧計100は、通常の血圧測定指示が入力される血圧測定スイッチ42Aと、夜間の血圧測定指示が入力される夜間測定スイッチ42Bを備えるが、例えば、血圧計の外部に存在するスマートフォン等から無線通信を介して、血圧計の信号受信部が指示(モード指示)を受け付け、この信号受信部が受信する信号を通常の血圧測定スイッチ又は夜間測定スイッチからCPUに出力される信号に代えてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、血圧計100は、血圧測定スイッチ42Aが通常の血圧測定指示の信号をCPU110に出力し、夜間測定スイッチ42Bが夜間の血圧測定指示の信号をCPU110に出力するように構成されているが、例えば、血圧測定スイッチを1回押下することにより、通常の血圧測定指示の信号(モード指示)をCPUに出力し、血圧測定スイッチを一定時間内に2回押下することにより、夜間の血圧測定指示の信号(モード指示)をCPUに出力するように構成されてもよい。
【0093】
上述の実施形態では、血圧計本体20は、カフ10に一体に取り付けられているが、カフと別体に設けられ、可撓性のエアチューブを介してカフ10(空気袋12)と流体流通可能に接続されてもよい。
【0094】
上述の実施形態では、通常血圧測定プログラム、夜間血圧測定プログラム、測定時刻設定プログラム、測定時刻比較プログラム、測定時刻更新プログラム、及びこれらのフローは、ソフトウェアとしてメモリ112に記憶されているが、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的な媒体に記録されてもよい。上述の媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることにより、それらのコンピュータ装置に、上述のプログラムとフローを実行させることができる。
【符号の説明】
【0095】
100:血圧計、110:制御部(CPU)、T1,T2,T3:第1の血圧測定の開始時刻(絶対測定時刻)、T11,T12:第2の血圧測定の開始時刻(相対測定時刻)、T20:時間帯(測定所要時間)、T22:空き時間。