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特許7354829接合用ペースト、それを用いた接合体、並びに接合体の製造方法
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  • 特許-接合用ペースト、それを用いた接合体、並びに接合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】接合用ペースト、それを用いた接合体、並びに接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/0545 20220101AFI20230926BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20230926BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20230926BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20230926BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B22F1/0545
B22F9/00 B
B22F1/102
B22F7/08 E
H01B1/22 A
H01L21/52 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019231071
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098875
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池上 智紀
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄二
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172728(JP,A)
【文献】国際公開第2011/007402(WO,A1)
【文献】特開2013-167002(JP,A)
【文献】特開2014-188561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機成分(a)により被覆された金属粒子(A)と分散媒(B)とを、金属粒子(A)/分散媒(B)=80/20~95/5(質量比)の割合、且つ金属粒子(A)と分散媒(B)とを合計で99~100質量%含有し、
金属粒子(A)は、1%積算粒径分布粒子径(d1)が30~200nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が100~350nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が300~900nmであり、
熱重量-示差熱分析により求められる前記金属粒子(A)の最も高温側の発熱ピークの補外終了温度Teが200℃以上、300℃以下であり、
熱重量-示差熱分析により求められる前記金属粒子(A)の最も低温側の発熱ピークの補外開始温度Tsにおける金属粒子(A)の質量を100質量%とした際、
補外終了温度Teにおける金属粒子(A)の質量減少率が1~5質量%であり、
前記分散媒(B)が、沸点180℃以上、230℃未満の有機溶剤(B-1)を、分散媒全体の80質量%以上含む、
接合用ペースト。
【請求項2】
前記有機溶剤(B-1)が、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソホロン、γ-ブチルラクトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種ないし2種以上からなる請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項3】
粘度が1~150Pa・sである請求項1または2記載の接合用ペースト。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載の接合用ペーストを、第一の被接合体に塗布し、乾燥した後、乾燥した表面に第二の被接合体を載置し、0.3~3MPaの圧力をかけた後、前記の圧力をかけたままの状態で、またはさらに加圧した状態で200~300℃まで昇温する、接合体の製造方法。
【請求項5】
昇温終了後、昇温終了時の圧力をかけながら、昇温終了時の温度を、または昇温終了時の温度よりも高温を10分~2時間維持する、請求項記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合用ペースト、それを用いた接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材同士、金属部材と半導体素子、または金属部材とLED素子等を接合するための接合材料としては、はんだが使用されていた。次世代パワーエレクトロニクスの分野では、高温動作可能なSiCなどのデバイスのための接合材としては高温駆動信頼性の観点で、はんだの代替材が求められており、例えば、特許文献1~10に示すように金属粒子を用いた接合用ペーストの利用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-172728号公報
【文献】特開2017-137375号公報
【文献】WO2011/007402
【文献】特開2011-801471号公報
【文献】WO2011/155615号
【文献】WO2012/169076号
【文献】WO2013/061527号
【文献】WO2015/060173号
【文献】WO2017/169534号
【文献】W02019/026799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属粒子を用いた接合用ペーストに求められる事として、(1)焼結後に十分な接合強度が得られる事、(2)冷熱サイクル等の環境試験後に接合強度が維持されている事、(3)接合用ペーストを印刷/塗布するのに最適な流動特性、これらすべてを満たす事が求められる。
【0005】
平均粒径が100nm未満のいわゆる金属ナノ粒子を用いた接合用ペーストが提案されているが、ナノ粒子に含まれる被覆材が塗膜中に残存し、接合強度の低下や環境試験後の接合強度の低下がみられる。また粘度が高く、塗布適性が悪い。
上記の問題を解決すべく、平均粒径が100nm未満の金属ナノ粒子と平均粒径1μm以上の金属マイクロ粒子を併用する接合用ペーストが提案されているが、金属粒子の分散性が十分確保できず、塗布適性や塗布後の接合用膜の平滑性/レベリング性が確保できない。
【0006】
一方、金属粒子と焼結促進剤や樹脂成分を併用する提案もなされているが、接合強度の低下や耐熱性などの環境試験後の接合強度の低下がみられる。
また、液状分散媒の量を増加させることにより接合用ペーストの粘度を低下させることはできるが、接合時に加熱することにより接合用ペースト中の液状分散媒は揮散し、接合完了時には存在しなくなるにも関わらず、接合強度が低下してしまう。
【0007】
本発明は、金属粒子を高い比率で含有しながらも低粘度で塗布適性に優れる接合用ペーストであって、初期および冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる接合体を形成できる接合用ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、接合用ペースト中の金属粒子の粒径、金属粒子の被覆材の分解温度や被覆量、接合用ペースト中の溶剤の乾燥性をコントロールする事で、塗布適性に優れ、接合強度にも優れる接合用ペーストを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は有機成分(a)により被覆された金属粒子(A)と分散媒(B)とを、金属粒子(A)/分散媒(B)=80/20~95/5(質量比)の割合、且つ金属粒子(A)と分散媒(B)とを合計で99~100質量%含有し、
金属粒子(A)は、1%積算粒径分布粒子径(d1)が30~200nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が100~350nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が300~900nmであり、
示差熱分析により求められる金属粒子(A)の最も高温側の発熱ピークの補外終了温度Teが200℃以上、300℃以下であり、
示差熱分析により求められる金属粒子(A)の最も低温側の発熱ピークの補外開始温度Tsにおける金属粒子(A)の質量を100%とした際、
補外終了温度Teにおける金属粒子(A)の質量減少率が1~5質量%であり、
分散媒(B)が、沸点180℃以上、230℃未満の有機溶剤(B-1)を、分散媒全体の80質量%以上含む、接合用ペーストに関する。
【0010】
好ましくは、分散媒(B-1)は、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソホロン、γ-ブチルラクトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種ないし2種以上である。
【0011】
接合用ペーストの粘度は好ましくは1~150Pa・sである。
【0012】
また、本発明は、前記接合用ペーストによって、第一の被接合体と第二の被接合体とが接合されてなる接合体に関する。
【0013】
また、本発明は、前記の接合用ペーストを、第一の被接合体に塗布し、乾燥した後、乾燥した表面に第二の被接合体を載置し、0.3~3MPaの圧力をかけた後、前記の圧力をかけたままの状態で、またはさらに加圧した状態で200~300℃まで昇温する、接合体の製造方法に関する。
【0014】
接合体の製造方法において、昇温終了後、昇温終了時の圧力をかけながら、昇温終了時の温度を、または昇温終了時の温度よりも高温を10分~2時間維持することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、金属粒子を高い比率で含有しながらも低粘度で塗布適性に優れる接合用ペーストであって、初期および冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる接合体を形成できる接合用ペーストを提供する事ができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明における金属粒子について、示差熱-熱重量同時測定装置(TG-DTA)を用いて測定した結果の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の接合用ペーストは、前述の通り、有機成分により被覆された金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む組成物である。
【0018】
(金属粒子(A))
例えば金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、および白金等の金属粉、ならびにこれらの合金、ならびにこれらの複合粉が挙げられる。また、核体と、前記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、例えば酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、およびGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、ならびにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられる。
使用する金属の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明では、1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)が制御された金属粒子(A)を用いることが重要である。なお、金属粒子(A)の1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)は、有機溶剤(IPA:イソプロピルアルコール)に金属粒子(A)を0.5質量%となるように超音波分散機にて分散を行い、得られた分散液について求めたものである。測定には例えば、ナノトラックUPA-EX150(日機装社製)を用いることができる。
なお、本明細書でいう1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)とは、それぞれ積算粒径分布の1%、50%、99%に対応した粒子径(体積基準)を意味する。
【0020】
1%積算粒径分布粒子径(d1)としては、30~200nm、好ましくは30~150nm、より好ましくは30~100nmである。
50%積算粒径分布粒子径(d50)としては、100~350nm、好ましくは100~300nm、より好ましくは、100~250nmである。
99%積算粒径分布粒子径(d99)としては、300~900nm、好ましくは300~750nm、より好ましくは300~600nmである。
【0021】
より小さい金属粒子は大きな金属粒子よりも相対的に多くの被覆材、即ち有機成分で被覆される。従って、ある程度大きな金属粒子を用いることによって、被覆材由来の有機成分の接合材(以下、接合塗膜ともいう)中への残存を抑制し、接合塗膜に空隙(ボイド)の発生を抑制し、接合強度を大きくできる。
一方、よりも大きな金属粒子はより小さな金属粒子に比して相対的に融点が高くなる。従って、ある程度小さな金属粒子を用いることによって、著しく高温にせずとも、金属粒子同士の溶融一体化(以下、焼結ともいう)を十分に進め、緻密な接合塗膜が形成出来、冷熱サイクル後の接合強度の低下を抑制できる。
つまり、接合塗膜中の空隙(ボイド)の発生を抑制するという点からは金属粒子は小さすぎず、焼結し易さという点からは金属粒子は大きすぎないことが重要である。
更に、空隙(ボイド)の発生の抑制には1%積算粒径分布粒子径(d1)が、焼結し易さには99%積算粒径分布粒子径(d99)の大きさが重要である。金属粒子の大きさ(粒径)が揃っていると、接合の過程で形成されつつある塗膜の中の金属粒子間の隙間を十分に埋めることできず、接合塗膜の空隙(ボイド)の発生の原因となる。金属粒子の大きさ(粒径)に分布を持たせる事で、金属粒子間の隙間を効果的に埋めることが可能となり、接合塗膜の空隙(ボイド)発生を抑制することが可能となる。以上の理由より、前述の1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)の範囲が必要となる。
【0022】
金属粒子(A)は、特定の粒径範囲のものを単独で使用してもよいし、異なる粒径範囲のものを複数組み合わせて使用してもよく、単独もしくは組み合わせた金属粒子の1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)の粒径が、前記の範囲内であればよい。
【0023】
また、金属粒子(A)は、前述の通り表面が有機成分(a)により被覆されており、接合用ペーストにおいては、有機成分(a)の加熱による分解温度や被覆している有機成分(a)の量は重要である。
【0024】
金属粒子(A)の被覆材の分解温度(分解開始温度、分解終了温度)や、被覆材量は、熱重量-示差熱分析(以下、TG/DTA分析ともいう)装置(例えば、EXSTAR TG/DTA6200(セイコーインスツルメント社製))にて、昇温速度5℃/分で加熱した際の測定データを元に算出する。
図1は、昇温時のDTA曲線、TG曲線を模式的に示すものである。図1に示すように、DTA曲線にて示される最も低温側の発熱ピークの開始温度Tsは補外開始温度の意であり、加熱測定において低温側のベースラインを高温側へ延長した直線と,最も低温側の発熱ピークの低温側の曲線に勾配が最大となる点で引いた接線との交点の温度である。同様に、DTA曲線にて示される最も高温側の発熱ピークの終了温度Teは補外終了温度の意であり、加熱測定において高温側のベースラインを低温側へ延長した直線と、最も高温側ピークの曲線に勾配が最大となる点で引いた接線との交点の温度である。
そして、最も低温側の発熱ピークの補外開始温度Tsから被覆材の分解が開始し、金属粒子の質量が減少し始め、補外終了温度Teに被覆材の分解が終了すると考察されるので、Tsを分解開始温度、Teを分解終了温度ともいう。
即ち、下記質量減少率が被覆材量と解される。
質量減少率=[(分解開始温度における質量-分解終了温度における質量)/分解開始温度における質量]×100
なお、分解開始温度Tsよりも低温領域や分解終了温度Teよりも高温領域でも金属粒子の質量減少が多少観察されることがあるが、明確な発熱ピークが観察されない場合には、分解に起因するものではないと解される。
【0025】
金属粒子(A)における被覆材の分解終了温度Teは、200℃以上、300℃以下であることが重要であり、好ましくは200℃以上、280℃以下である。
金属粒子(A)における被覆材の量は、1~5質量%であることが重要であり、好ましくは2~4%である。
【0026】
被覆材の分解終了温度Teが200℃以上であることにより、長期保存しても接合用ペーストの粘度が安定して保たれる。被覆材の分解終了温度Teが300℃以下であることによって、著しく高温に加熱しなくても、金属粒子同士が十分に焼結でき、初期だけでなく環境試験後にも良好な接合強度を発現できる。なお、被覆材の分解終了温度Teが300℃を超える場合、良好な接合強度を発現するために、より高温で焼結すると被接合部材へ熱的ダメージを与えてしまう。
【0027】
金属粒子(A)における被覆材の量が1質量%以上であることによって、接合用ペーストの高粘度化を抑制でき、良好な塗布性能を発揮でき、緻密な接合塗膜を形成でき、良好な接合強度を発現できる。一方、金属粒子(A)における被覆材の量が5質量%以下であることによって、焼結後の被覆材の残存を抑制し、接合塗膜における空隙(ボイド)の発生を抑制し、良好な接合強度を発現できる。
【0028】
本発明における金属粒子(A)の被覆材は、前記の熱分解条件を満たしていれば、特に制限はなく、例えば、炭素数が3~22の飽和または不飽和の脂肪酸などを用いることができる。
【0029】
本発明の接合用ペーストは、分散媒(B)を含有する。分散媒(B)は、金属粒子(A)を分散する機能を担う。
分散媒(B)は、沸点180℃以上、230℃未満のいわゆる有機溶剤(B-1)を、分散媒(B)
100質量%中に80質量%以上含む。沸点が180℃以上の分散媒(B-1)を80質量%以上用いることにより、接合用ペーストを接合の対象である被接合体に塗布する際に接合用ペーストが直ちには乾燥しないので、連続して多くの被接合体に塗布することができる。一方、沸点が230℃未満の分散媒(B-1)を80質量%以上用いることにより、加熱焼結時に分散媒(B)が速やかに揮発し、乾燥後の塗膜中に残りにくくなり、接合時の加熱の際に空隙(ボイド)発生の原因となりにくく、良好な接合強度の発現に貢献する。
【0030】
分散媒(B-1)の具体例として、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソホロン、γ-ブチルラクトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、エチレングリコール、ヘキサン酸、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコール、炭化水素系溶剤に含まれるイソパラフィン系溶剤等が挙げられる。中でも、特に、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソホロン、γ-ブチルラクトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく用いられる。
これら分散媒(B-1)は、適宜単独で、または複数用いることができる。
【0031】
本発明の接合用ペーストは、金属粒子(A)と分散媒(B)を金属粒子(A)/分散媒(B)=80/20~95/5(質量比)で含むことが重要である。金属粒子(A)を上記範囲で含むことにより、接合用ペーストとして良好な塗布適性を確保できるとともに、乾燥塗膜中への有機成分の残分を抑制し、接合時の加熱の際の空隙(ボイド)の発生を抑制し、良好な接合強度を発現できる。
【0032】
本発明の接合用ペーストは、金属粒子(A)と分散媒(B)とを合計で99~100質量%含有する。即ち、本発明の接合用ペーストは、焼結促進剤、樹脂成分などの添加剤を含むことができるが、それらの合計量は、接合用ペースト100質量%中、1質量%未満である。添加剤を含む場合もその量をごく少量とすることにより、ボイドの発生を抑制し、緻密な接合塗膜を形成できる。
【0033】
焼結促進剤は、金属粒子(A)に親和性の高い官能基を有する化合物であり、その親和性の高さから、金属粒子(A)の周囲を覆っている有機物を引き剥がす働きを持つ。有機物が引き剥がされた金属粒子は分散安定性を失い凝集が起こるため、粒子同士の接触、融着が促進され、緻密な金属の膜を形成することが可能となる。金属粒子(A)に親和性の高い官能基は、特に限定されず極性基等が例として挙げられるが、特に、窒素原子を含有するものは金属粒子(A)との親和性が高く、焼結促進剤として好適に用いられる。
【0034】
樹脂成分としては、接合用ペースト中の金属粒子(A)同士の凝集を防止し、経時粘度安定性や塗布適性を更に向上させる狙いで樹脂型分散剤や、初期/冷熱サイクル後の接合強度を更に向上させる狙いで、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のバインダー樹脂などを添加することもできる。
【0035】
本発明の接合用ペーストの粘度は、25℃において好ましくは、1~150Pa・sである。粘度が前記範囲にあることによって、塗布性能がより良好となる。
【0036】
本発明の接合用ペーストによって、第1の被接合体と第2の被接合体とを接合し、接合体を得ることができる。
例えば、本発明の接合用ペーストを、第一の被接合体に塗布し、乾燥した後、乾燥した表面に第二の被接合体を載置し、次いで、加熱し、2つの被接合体を接合し、接合体を製造することができる。
あるいは、本発明の接合用ペーストを、第一の被接合体に塗布し、接合用ペースト上に第二の被接合体を載置し、次いで、加熱し、2つの被接合体を接合し、接合体を製造することもできる。
【0037】
接合用ペーストを塗布する方法としては、部材上に均一に塗布できる方法であれば特に限定されるものではない。例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、およびグラビアオフセット印刷等の各種印刷法、ディスペンサー等が挙げられる。
【0038】
接合工程における焼結条件は、適宜変更されるが、例えば、大気圧下、窒素雰囲気、真空中、加圧または還元雰囲気で200~300℃等の条件を挙げることができる。焼成装置としては、熱風オーブン、赤外線オーブン、リフローオーブン、マイクロウエーブオーブン、ホットプレートおよび光焼成装置等が挙げられる。光焼成装置の場合、照射する光の種類はとくに限定されないが、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、レーザー光等が挙げられる。これら装置を適宜単独でまたは複数用いることができる。
【0039】
焼成工程の前に、接合塗膜中の有機成分を取り除く目的で、適宜予備乾燥工程を入れることもできる。例えば、熱風オーブン、赤外線オーブン、リフローオーブン、マイクロウエーブオーブン、ホットプレートなどで60~180℃の範囲での加熱工程、減圧乾燥工程などが挙げられる。
【0040】
また、本発明の接合用ペーストを塗布した第一の被接合体に第二の被接合体を載置させる際に、圧力をかけながら載置させる事が好ましい。圧力としては、接合用ペーストの粘度やペーストの乾燥状態により適宜設定されるが、好ましくは0.1~5MPa、更に好ましくは0.3~3MPaである。
【0041】
2つの被接合体を接合する好ましい方法としては、本発明の接合用ペーストを、第一の被接合体に塗布し、乾燥した後、乾燥した表面に第二の被接合体を室温付近から乾燥時の温度付近の温度にて載置し、0.3~3MPaの圧力をかけた後、次いで前記の圧力をかけたままの状態でもしくはさらに加圧した状態で200~300℃程度まで、1℃/分~15℃/分程度の昇温速度で昇温し焼結を行う方法が挙げられる。昇温終了後、昇温終了時の温度を、もしくは昇温終了時の温度よりも高温を10分~2時間程度維持することが好ましい。
【0042】
被接合体の種類は特に限定されず、金属部材、電子素子、プラスチック材料、セラミック材料等を挙げることができる。金属部材同士、金属部材と半導体素子、金属部材とLED素子とを接合することが好ましい。
【0043】
金属部材としては、例えば、銅基板、金基板、アルミ基板等を挙げることができる。
電子素子としては、半導体素子、LED素子を挙げることができる。
半導体素子としては、シリコン(ケイ素)やゲルマニウムのほかに、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、硫化カドミウムなどが用いられる。LED素子としてはアルミニウム、窒化珪素、ダイヤモンド、黒鉛、酸化イットリウム及び酸化マグネシウムなどが用いられる。特に、炭化ケイ素や窒化ガリウム等のパワーデバイス素子を使用することができる。
プラスチック材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。
セラミック材料としては、例えば、ガラス、シリコン等を挙げることができる。
第1の被接合体及び第2の被接合体は、同じ種類だけではなく、異なる種類の部材であってもよい。上記部材は、接合強度を大きくするため適宜コロナ処理、メッキ等で加工してもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0046】
(合成例1)金属粒子A1
窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸0.28部(金属1molに対し0.01mol 倍)を添加し溶解させた。その後、還元剤として濃度20%のコハク酸ジヒドラジド(以下、SUDH)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返した後、トルエンを加え遠心分離後に上澄み液を除去する工程を2回繰り返した。沈殿物を乾燥させてヘキサン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A1を得た。1%積算粒径分布粒子径(d1)が30~200nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が100~350nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)
金属粒子A1の粒径を後述する方法で求めたところ、1%積算粒径分布粒子径(d1)は45nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)は150nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)は450nmであった。
また、金属粒子A1の分解開始温度Ts、分解終了温度Te、TsとTeとの間における質量減少率を後述する方法で求めたところ、分解開始温度Tsは170℃、分解終了温度Teは270℃、TsとTeとの間における質量減少率は2.7%であった。
【0047】
(合成例2)金属粒子A2
オレイン酸の量を0.23部(金属1molに対し0.008mol倍)とした以外は合成例1と同様にしてヘキサン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A2を得、粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めた。
【0048】
(合成例3)金属粒子A3
500部のエチレングリコール中に硝酸銀を10部溶解させた。次いで、エチレングリコール中にポリビニルピロリドンを5部分散させた。次いで、エチレングリコールを150℃(反応温度)まで昇温させた後、反応温度150℃を保ちつつ400rpmの回転速度で攪拌しながら1時間反応を行った。このとき、硝酸銀とエチレングリコールとが反応することにより、窒素酸化物のガスが発生し、硝酸銀が還元され、ポリビニルピロリドンで被覆された金属粒子A3の分散体を得た。金属粒子A3の分散体を遠心分離し、上澄み液を除去し、沈殿物にエチレングリコールを加え撹拌した後、再度遠心分離し、上澄み液を除去した。沈殿物を乾燥させてポリビニルピロリドンで被覆された金属粒子A3を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0049】
(合成例4)金属粒子A4
3-メトキシプロピルアミン50部とドデシルアミン5部とジグリコールアミン60部を充分に攪拌を行いながら、シュウ酸銀45部を添加し、増粘させた。得られた増粘物質を恒温槽に入れ反応させた後、レプリン酸100部を加え更に反応し、懸濁液を得た。メタノールを加えて攪拌後、遠心分離により銀粒子を沈殿させて分離し、上澄みを除去した。この操作をもう一度繰り返し、レプリン酸で被覆された金属粒子A4を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0050】
(合成例5)金属粒子A5
ヘキサン酸銀22.3部の代わりにプロピオン酸銀18.1部を用いた以外は合成例1と同様にしてプロピオン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A5を得、粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めた。
【0051】
(合成例6)金属粒子A6
ヘキサン酸銀22.3部の代わりにペンタン酸銀20.9部を用いた以外は合成例1と同様にしてペンタン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A6を得、粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めた。
【0052】
(合成例7)金属粒子A7
ヘキサン酸銀22.3部の代わりにミリスチン酸銀33.5部を用いた以外は合成例1と同様にしてミリスチン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A7を得、粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めた。
【0053】
(合成例8)金属粒子A8
ヘキサン酸銀22.3部の代わりにステアリン酸銀39.1部を用いた以外は合成例1と同様にしてステアリン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A8を得、粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めた。
【0054】
(金属粒子A9)
ポリビニルピロリドンで被覆された銀粒子であるnanoComposix社製 NCXAGPD200について、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0055】
(合成例101)金属粒子A101
ヘキサン酸銀の量を22.3部から23部に変更した以外は合成例1と同様にしてヘキサン酸およびオレイン酸で被覆された金属粒子A5を得、粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めた。
【0056】
(合成例102)金属粒子A102
水3400部を反応槽中に入れ、窒素雰囲気とした後、温度が60℃になるように温度調整を行った。更にアンモニアとして28質量%含有するアンモニア水7部を反応槽に投入した後、1分間攪拌した。次にヘキサン酸45部を添加、4分間攪拌した。その後、50質量%のヒドラジン水和物水溶液を24部添加した(還元剤溶液)。別の容器に硝酸銀結晶34部を水180部に溶解した硝酸銀水溶液を用意した(銀塩水溶液)。この銀塩水溶液中に更に硝酸銅三水和物0.00008部を添加し、60℃に温度調整を行った。その後、銀塩水溶液を還元剤溶液に一挙添加することにより混合し、還元反応を開始させた。スラリーの色は還元反応開始から10秒程度で変化が沈静化した。攪拌しながら10分間熟成させた後、吸引濾過による固液分離、純水による洗浄、及び40℃で12時間の乾燥を経てヘキサン酸で被覆された金属粒子A102を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0057】
(合成例103)金属粒子A103
硝酸銀135部を純水720部へ溶解させた(原料液)。別の容器に14000部の純水を仕込み、ここへ窒素を30分間通気させて溶存酸素を除去しつつ、40℃まで昇温した。そして、ソルビン酸180部を添加し、次に、安定化剤として28%アンモニア水28部を添加した。当該アンモニア添加溶液の攪拌を継続し、銀粒子の調製開始5分経過後に還元剤として含水ヒドラジン(純度80%)60部を添加して、還元液を調製した。調製開始10分経過後に、液温を40℃に調整した原料液を、還元液へ一挙に添加して反応させ、撹拌を終了し、30分熟成してソルビン酸で被覆された銀粒子凝集体を形成させた。その後、濾過、純水で洗浄し、銀粒子凝集体を得た。当該銀粒子凝集体を、真空乾燥機中で80℃12時間の条件で乾燥させ、ソルビン酸で被覆された金属粒子A103を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0058】
(合成例104)金属粒子A104
トルエン200部にヘキシルアミン15部を加え、攪拌した。攪拌を行いながら、硝酸銀10部を加え、硝酸銀が溶解したところでオレイン酸5部及びヘキサン酸10部を順次添加し、硝酸銀のトルエン溶液を調製した。この硝酸銀のトルエン溶液に、イオン交換水50部に水素化ほう素ナトリウム1部を添加して調製した0.02g/mLの水素化ほう素ナトリウム水溶液を滴下し、攪拌を一時間続けて銀粒子を生成させた。その後、メタノールを250部加えて銀粒子を沈降させ、更に遠心分離にて銀粒子を完全に沈降させた後、上澄みに含まれる反応残渣や溶媒等の除去を行った。上澄みを除去した後に残った銀粒子を含む沈降物(未処理銀粒子組成物)を、エバポレーターを用いて60℃で45分間、減圧下で加熱処理し、銀粒子組成物中において、ヘキシルアミン、オレイン酸及びヘキサン酸を含む有機物の量を適量に減らし、最後に乾燥させ、ヘキシルアミン、オレイン酸及びヘキサン酸で被覆された金属粒子A104を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0059】
(合成例105)金属粒子A105
水3400部を反応槽中に入れ、窒素雰囲気とした後、温度が60℃になるように温度調整を行った。更にアンモニアとして28質量%含有するアンモニア水7部を反応槽に投入した後、1分間攪拌した。次にソルビン酸45部を添加、4分間攪拌した。その後、50質量%のヒドラジン水和物水溶液を24部添加した(還元剤溶液)。別の容器に硝酸銀結晶34部を水180部に溶解した硝酸銀水溶液を用意した(銀塩水溶液)。その後、銀塩水溶液を還元剤溶液に一挙添加することにより混合し、還元反応を開始させた。スラリーの色は還元反応開始から10秒程度で変化が沈静化した。攪拌しながら10分間熟成させた後、吸引濾過による固液分離、純水による洗浄、及び40℃で12時間の乾燥を経てソルビン酸で被覆された金属粒子A105を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0060】
(合成例106)金属粒子A106
リシノール酸3部、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン260部、及びブタノール480部を投入し、1分間程度攪拌したのち、シュウ酸銀320部を投入し、約10分間攪拌することで、銀粒子調製用組成物を得た。その後、40℃で30分間攪拌、さらに90℃にて30分間攪拌した。放冷後、メタノール1500部を添加して攪拌した後、遠心分離機にて遠沈操作を実施し、上澄みを除去した。メタノール1500部の添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返した後、乾燥し、リシノール酸で被覆された金属粒子A106を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0061】
(合成例107)金属粒子A107
オレイン酸6部、n-オクチルアミン140部、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン43部、n-ドデシルアミン16部、シクロヘキシルアミン12部、n-ブチルアミン64部を投入し、1分間程度攪拌したのち、シュウ酸銀320部を投入し、約10分間攪拌することで、銀粒子調製用組成物を得た。その後、40℃で30分間攪拌し、さらに、90℃にて30分間攪拌した。放冷後、メタノール1500部を添加して攪拌した後、遠心分離機にて1分間の遠沈操作を実施し、上澄みを除去した。メタノール1500部の添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返した後、乾燥し、シュウ酸で被覆された金属粒子A107を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0062】
(合成例301)
<金属粒子A201>
3-メトキシプロピルアミン20部を充分に攪拌しながら、シュウ酸銀30部を添加し、増粘させた。得られた増粘物質を恒温槽に入れ反応させた後、レプリン酸100部を加え更に反応し、懸濁液を得た。メタノールを加えて攪拌後、遠心分離により銀粒子を沈殿させて分離し、上澄みを除去した。この操作をもう一度繰り返した後、乾燥し、レプリン酸で被覆された金属粒子A201を得た。粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めたところ、1%積算粒径分布粒子径(d1)は15nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)は45nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)は95nm、分解開始温度Tsは150℃、分解終了温度Teは230℃、TsとTeとの間における質量減少率は4.9%であった。
【0063】
<金属粒子A301>
合成例5で得た金属粒子A5:58.5部と前記金属粒子A201:31.5部とを混合し、金属粒子A301を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0064】
(合成例302)
合成例5で得た金属粒子A5:72部と前記金属粒子A201:18部とを混合し、金属粒子A302を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0065】
(合成例303)
合成例105で得た金属粒子A105:81部と、1%積算粒径分布粒子径(d1)が0.1μm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が0.6μm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が1.2μm、DOWAエレクトロニクス株式会社製の銀粒子「D2-1-C」:9部とを混合し、金属粒子A303を得、粒径、分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
なお、前記銀粒子「D2-1-C」単独の粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めようとしたところ、粒径については求めることができたが、分解開始温度等については、300℃まで昇温したが、明確な質量減少は観察されず、23℃における質量を基準とすると300℃における質量減少率は0.2%未満であった。
【0066】
(合成例304)
金属粒子A105:45部、前記「D2-1-C」:45部とした以外は合成例303と同様にして金属粒子A304を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0067】
(合成例305)
1%積算粒径分布粒子径(d1)が0.1μm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が1.0μm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が3.2μm、トクセン工業株式会社製の銀粒子「LM1」:67.5部と、1%積算粒径分布粒子径(d1)が2.1μm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が6.0μm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が10.1μm、福田金属箔株式会社製の銀粒子「AgC239」:22.5部とを混合し、金属粒子A305を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
なお、銀粒子「LM1」および「AgC239」それぞれ単独の粒径や分解開始温度等についても合成例1と同様にして求めようとしたところ、粒径については求めることができたが、分解開始温度等については、300℃まで昇温したが、明確な質量減少は観察されず、23℃における質量を基準とすると300℃における質量減少率は0.2%未満であった。
【0068】
(合成例306)
合成例106で得た金属粒子A106:9部と合成例107で得た金属粒子A107:81部とを混合し、金属粒子A306を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0069】
(合成例307)
合成例5で得た金属粒子A5:45部と前記金属粒子A201:45部とを混合し、金属粒子A307を得、粒径や分解開始温度等について合成例1と同様にして求めた。
【0070】
[粒径の測定]
各金属粒子にイソプロピルアルコールを加え音波分散機にて分散し、0.5質量%の分散液を得、ナノトラックUPA-EX150(日機装社製)を用いて、前記分散液の粒径を測定し、各金属粒子の1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)を求めた。
【0071】
[分解開始温度、分解終了温度、質量減少率]
各金属粒子について、示差熱-熱重量同時測定装置(TG-DTA)を用い、昇温速度5℃/分の条件にて昇温し、分解開始温度、分解終了温度、質量減少率を求めた。
図1に示すように、DTA曲線にて示される最も低温側の発熱ピークの補外開始温度をTs、DTA曲線にて示される最も高温側の発熱ピークの補外終了温度をTeとする。補外開始温度Tsから被覆材の分解が開始し、金属粒子の質量が減少し始め、補外終了温度Teに被覆材の分解が終了すると考察されるので、Tsを分解開始温度、Teを分解終了温度という。
質量減少率=[(分解開始温度における質量-分解終了温度における質量)/分解開始温度における質量]×100
なお、分解開始温度Tsよりも低温領域や分解終了温度Teよりも高温領域でも金属粒子の質量減少が多少観察されることがあるが、明確な発熱ピークが観察されない場合には、分解に起因するものではないと解される。
【0072】
[実施例1]
金属粒子A1:85質量部とターピネオール:15質量部とを自公転式攪拌機を用いて混合し、接合用ペーストを作製し、後述する方法にて評価した。
【0073】
[実施例2~11]、[比較例1~6]
表1~2の組成に従い、金属粒子の種類とターピネオールの量を変更し、実施例1と同様にして接合用ペーストを得、評価した。
【0074】
[比較例7~10]
表2の組成に従い、金属粒子の種類とターピネオールの量を変更し、さらに下記添加剤を加え、実施例1と同様にして接合用ペーストを得、評価した。
(C1)硬化促進剤:ジシアンジアミド 三菱化学株式会社製 jERキュアDICY7
(C2)樹脂型分散剤:アクリル共重合系樹脂型分散剤 DISPER-BYK-2020
【0075】
[実施例12~20]、[比較例11~17]
表3~4の組成に従い、金属粒子A1:85質量部と種々の分散媒:15質量部とを用い、実施例1と同様にして接合用ペーストを得、評価した。なお、表3には実施例1も合わせて記載した。なお、表3中のジヒドロターピネオールは、異性体を含むので200~220℃の幅広い沸点を呈する。
【0076】
[実施例21~22]、[比較例18~22]
表5の組成に従い、金属粒子A301~A307:90質量部とターピネオール:10質量部とを用い、実施例1と同様にして接合用ペーストを得、評価した。
【0077】
[初期粘度測定]
接合用ペースト調合直後の25℃の環境下で粘度を、E型粘度計を用い、治具3°、R=7.7mmのローターにて回転数5min-1で測定した。
【0078】
[経時粘度安定性]
各接合用ペーストを23℃の環境下に30日間放置した後、初期粘度測定と同様にして測定した。
〇:粘度変化率が、-20%より大きく+20%未満
△:粘度変化率が、-50%より大きく-20%以下、または+20%以上+50%未満
×:粘度変化率が、-50%以下、または+50%以上
なお、初期100Pa・sであった粘度が、200Pa・sに変化した場合を、+100%変化とする。
【0079】
[塗布適性]
各接合用ペーストを下記基材1に下記条件で塗布し、1回目及び連続100回後の塗布適性を下記基準で判断した。なお、連続100回の塗布は、毎回新しい基材1に塗布した。
<基材1>
・金メッキ処理銅基材:20×20×3mm
<塗布条件>
・メタルマスク:開口部4mm角、板厚50μm(セリアコーポレーション製)
・メタルスキージ:40mm×250mm、厚み1mm(セリアコーポレーション製)
<評価基準>
○:接合材が、開口部(4mm角)全体に均一に付着している状態。
△:接合材が、開口部の一部(2~3mm角の範囲)に付着している状態。
×:接合材が、開口部のうち、2mm角範囲以下にしか付着せず、付着した部分がひび割れし
ている状態。
【0080】
[接合体の作製]
前記基材1に各接合用ペーストを前記条件にて1回塗布した後、75℃で5分乾燥した後、乾燥後の表面に下記基材2(チップ)を載置し、基材2の上から下記実装条件にて加圧を行い、基材1に基材2を仮接合した。次いで、仮接合体を下記焼結条件にて加熱し、接合体を得た。
<基材2>
・金メッキ処理Siチップ:5×5×0.3mm
<実装条件>
・25℃、0.5MPa、10秒間加圧
<焼結条件>
・熱風オーブンに仮接合体を入れ、室温から250℃まで2.5℃/分の条件にて昇温し、250℃に達したら同温度で1時間維持した。
【0081】
[接合強度(初期、冷熱サイクル試験後]
得られた接合体について、下記測定装置、試験条件にて接合強度(ダイシェア強度)を測定した。
測定装置:万能型ボンドテスタ( デイジ・ジャパン株式会社製、4000シリーズ)
<試験条件>
・測定高さ:100μm
・測定スピード:500μm/s
具体的には基材1を固定し、基材1と接合材との界面を起点として基材2に向かって高さ100μmの位置を、500μm/sの速度で押し、接合が破壊される初期強度、および下記サイクル試験後の強度を求めた。
<冷熱サイクル試験>
接合体を-40℃の温度条件で30分保持した後、150℃の温度条件で30分間保持する処理工程を1サイクルとし、この処理を300サイクル行った。
【0082】
◎:30MPa以上
○:25MPa以上30MPa未満。
×:25MPa未満
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
表1、3、5の通り、実施例1~22の本発明の接合ペーストは、経時保存(粘度)安定性や塗布適性に優れており、本接合ペーストを用いると、初期および環境(冷熱サイクル)試験後の接合強度の高い接合体を得ることが可能となった。
【0089】
一方、表2、4、5の通り、
1%積算粒径分布粒子径(d1)・50%積算粒径分布粒子径(d50)・99%積算粒径分布粒子径が最適範囲でない金属粒子を用いた比較例1~4及び18~22、
金属粒子と分散媒の比率が最適範囲でない比較例5~6、
接合ペースト中の金属粒子と分散媒との合計の比率が最適範囲でない比較例7~10、
沸点が最適範囲でない分散媒を用いた比較例11~17、
の各接合ペーストは、経時保存(粘度)安定性や塗布適性が不十分であり、本接合ペーストを用い得られた接合体の初期および環境(冷熱サイクル)試験後の接合強度が劣る結果であった。
図1