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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230926BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230926BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019236259
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106454
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 啓太
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077028(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096727(WO,A1)
【文献】特開2009-187720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60R16/00-17/02
G01R31/36-31/44
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電池システムであって、
片タブ構造を有する全固体リチウムイオン二次電池である電池と、
前記電池の電流を検出する電流センサと、
前記電池の少なくとも1つの箇所の温度を検出する温度センサと、
判定装置と、を備え、
前記温度センサは、前記電池の同一面内における、前記タブ側の電池端部、前記タブとは反対側の電池端部、および、電池中心部を少なくとも含む、9箇所の温度を検出し、
前記判定装置は、
前記温度センサから、前記箇所における通電開始時の電池温度である温度Tを取得する第1取得部と、
前記電流センサにより検出された通電開始時から所定時間経過時までの電流履歴を取得し、前記電流履歴を基に、電池負荷を算出する第1算出部と、
前記温度Tおよび前記電池負荷から、前記所定時間経過時における前記箇所の予想温度である温度Tを算出する第2算出部と、
前記温度センサから、前記所定時間経過時における前記箇所の実温度である温度Tを取得する第2取得部と、
前記温度Tおよび前記温度Tに基づき、前記電池が正規品か否かの判定を行う判定部と、
を有し、
前記判定部は、前記9箇所における前記温度T の最高温度および最低温度の差(ΔT)、および、前記9箇所における前記温度T の最高温度および最低温度の差(ΔT)について、前記ΔT同士の差が、±2℃の範囲内である場合に、前記電池が正規品であると判定する、電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池に関して、正規な製造者により製造された電池(以下、正規品と称する)と、正規品を模倣した電池および正規品を不正に改造した電池等(以下、非正規品と称する)とを判別する技術が知られている。例えば特許文献1には、電池の重量の差の絶対値が予め設定したしきい値より大の場合に、電池が正規でないと判定する制御部とを備える電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-174487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1では、電池重量の差に基づき非正規品の判別をおこなっているが、電池重量に差がない場合でも非正規品を判別できることが望ましい。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池の重量に基づかず非正規品の判別が可能な電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示においては、電池と、上記電池の電流を検出する電流センサと、上記電池の少なくとも1つの箇所の温度を検出する温度センサと、判定装置と、を備え、上記判定装置は、上記温度センサから、上記箇所における通電開始時の電池温度である温度Tを取得する第1取得部と、上記電流センサにより検出された通電開始時から所定時間経過時までの電流履歴を取得し、上記電流履歴を基に、電池負荷を算出する第1算出部と、上記温度Tおよび上記電池負荷から、上記所定時間経過時における上記箇所の予想温度である温度Tを算出する第2算出部と、上記温度センサから、上記所定時間経過時における上記箇所の実温度である温度Tを取得する第2取得部と、上記温度Tおよび上記温度Tに基づき、上記電池が正規品か否かの判定を行う判定部と、を有する、電池システムを提供する。
【0006】
本開示によれば、電池温度に基づき正規品であるか否かの判定を行うことから、非正規品と正規品との重量が同じ場合であっても、非正規品を判別することができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示においては、非正規品と正規品との重量が同じ場合であっても、非正規品を判別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示における電池システムが搭載された車両の全体構成を概略的に例示する模式図である。
図2】本開示における温度検出箇所の位置の一例を示す概略図である。
図3】本開示における判定基準を説明する説明図である。
図4】本開示における判定装置が実行する処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における電池システムについて、詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示における電池システムが搭載された車両の全体構成を概略的に例示する模式図である。車両20は、電池システム10と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)11と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)12と、駆動輪13とを備える。電池システム10は、電池1と、監視ユニット2と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)3とを備える。
【0011】
監視ユニット2は、後述する電流センサおよび温度センサを少なくとも有する。また、ECU3は、車両20の各種電子制御を行うが、判定装置としても機能する。判定装置は、その機能を実現するための処理ブロックとして、第1取得部、第1算出部、第2算出部、第2取得部および判定部を有し、予想温度(温度T)および実温度(温度T)に基づき、正規品か否かの判定を行う。
【0012】
本開示によれば、電池温度に基づき正規品であるか否かの判定を行うことから、非正規品と正規品との重量が同じ場合であっても、非正規品を判別することができる。通電した場合の電池面内における温度は、例えば、タブの厚み等の電池構成および電池に用いる材料等の条件によって変動する。そのため、たとえ電池全体として正規品と非正規品とで重量に差がなかったとしても、電池温度に着目することで、非正規品を判別することができる。
【0013】
1.電池
本開示における電池システムは、電池を備える。電池は単電池であってもよく組電池であってもよい。例えば図1において、電池1は、MG12を駆動するための電力を蓄え、PCU11を通じてMG12へ電力を供給する。また、電池1は、MG12の発電時にPCU11を通じて発電電力を受けて充電される。
【0014】
電池は液系電池であってもよく、全固体電池であってもよい。また、電池は一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも二次電池であることが好ましい。また、電池はリチウムイオン電池であることが好ましい。
【0015】
2.電流センサおよび温度センサ
本開示における電池システムは、電流センサおよび温度センサを備える。例えば図1において、監視ユニット2は、電池1の状態を監視し、その監視結果をECU3に出力する。監視ユニット2は、電流センサおよび温度センサを少なくとも含み、必要に応じて、電圧センサを含んでいてもよい。また、監視ユニット2は、非正規品の電池が検出された場合に、電池の充放電を停止する充放電制御部を含んでいてもよい。
【0016】
電流センサは、電池1の電流を検出し、その検出値をECU3へ出力する。温度センサは、電池1の少なくとも1つの箇所の温度を検出し、その検出値をECU3へ出力する。温度センサとしては、例えばサーミスタを挙げることができる。
【0017】
温度センサが温度を検出する箇所は1箇所であってもよい。温度検出箇所が1箇所である場合、温度検出箇所としては、電池の温度が最も高くなる箇所が好ましい。正規品と非正規品との差異が生じやすいためである。なお、通常、集電タブに近くなるほど温度が高くなる。
【0018】
また、温度センサが温度を検出する箇所は2箇所以上であってもよい。この場合、温度検出箇所は、例えば、3箇所以上であってもよく、6箇所以上であってもよく、9箇所以上であってもよい。温度検出箇所が多いほど、非正規品を判別する精度が向上する。検出箇所は電池の同一面内であることが好ましい。また、温度検出箇所は、少なくとも通電中の電池温度(到達温度)が最も低くなる箇所および最も電池温度が高くなる箇所を含むことが好ましい。電池温度が最も低くなる箇所および最も電池温度が高くなる箇所は、予備検証を行い予め把握しておくことが好ましい。例えば図2(a)に示すような両タブ構造の電池においては、少なくとも集電タブ付近(X)と電池中央付近(Y)に温度センサを配置する。また、図2(b)に示すような片タブ構造の電池においては、少なくとも集電タブ付近(X)と集電タブとは反対の電池端部付近(Y)に温度センサを配置する。また、図2(b)に示すように、XとYの間の位置(Z)にさらに温度センサを設けてもよい。
【0019】
3.判定装置
(1)判定装置の構成
本開示における電池システムは、判定装置を備える。判定装置は、予想温度と実温度に基づき、電池が正規品か否かの判定が可能なように構成されている。例えば図1において、ECU3は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含む。メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、書き換え可能な不揮発性メモリを含む。メモリに記憶されているプログラムをCPUが実行することで、各種制御が実行される。ECUが行なう各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0020】
判定装置は、その機能を実現するための処理ブロックとして、第1取得部、第1算出部、第2算出部、第2取得部および判定部を有する。第1取得部は、上記温度センサから、上記箇所における通電開始時の電池温度である温度Tを取得するように設定されている。
【0021】
第1算出部は、上記電流センサにより検出された通電開始時から所定時間経過時までの電流履歴を取得し、上記電流履歴を基に、電池負荷を算出するように設定されている。本開示における所定時間は特に制限されないが、通電による電池温度の上昇が止まった時であることが好ましい。正規品と非正規品との差異がより顕著になり、より正確に非正規品を判別できるからである。このような時間は、正規品の電池を用いた予備検証を行い予め把握しておくことが好ましい。また、電池負荷は、例えば印加した電流値(I)から充放電負荷電力に関するIを算出して求めることができる。
【0022】
第2算出部は、上記温度Tおよび上記電池負荷から、上記所定時間経過時における上記箇所の予想温度である温度Tを算出するように設定されている。ここで、所定時間経過時における正規品の温度(予想温度)は、メモリ(記憶部)にマップとして記憶されている。メモリには、正規品において、種々の条件における、電池面内の温度の分布が記録されている。第2算出部は、温度Tおよび電池負荷をメモリと照合する。そして、正規品の電池における温度(予想温度)を算出する。
【0023】
第2取得部は、上記温度センサから、上記所定時間経過時における上記箇所の実温度である温度Tを取得するように設定されている。
【0024】
判定部は、上記温度Tおよび上記温度Tに基づき、上記電池が正規品か否かの判定を行うように設定されている。温度の検出箇所が1箇所の場合、温度Tと温度Tとが同等であるならば、判定部は電池を正規品と判定する。ここで、温度センサの読み取り誤差および温度センサそのものの素子誤差を考慮して、予想温度と実温度との差が、±2℃の範囲に収まる場合、両者は同等であると判断することができる。なお、上記範囲は使用するセンサの種類等によって適宜設定することができる。
【0025】
また、温度検出箇所が2箇所以上の場合、図3(a)に示すような3つの基準それぞれに基づき判定を行ってもよい。具体的には、複数の検出箇所における最高温度(Tmax)と最低温度(Tmin)との差(ΔT)を判定基準としてもよい(基準1)。基準1において、予想温度(温度T)におけるΔTと実温度(温度T)におけるΔTとの差異が、例えば±2℃の範囲内であれば、両者は同等と判断することができる。また、上記Tmaxおよび上記Tminそれぞれを判定基準としてもよい(基準2)。基準2において、予想温度(温度T)におけるTmaxおよびTminそれぞれが、実温度(温度T)におけるTmaxおよびTminそれぞれと、例えば±2℃の範囲内であれば、両者は同等と判断することができる。さらに、温度検出箇所の位置(D)に対する温度(T)の変化を示すグラフを作成する。そして、このグラフにおけるセル面内の温度勾配(dT/dD[℃/cm])を判定基準としてもよい(基準3)。基準3において、予想温度(温度T)における温度勾配と実温度(温度T)における温度勾配との差が、例えば±2℃の範囲内の差に基づく場合、両者は同等と判断することができる。なお、位置(D)は、集電タブが接続された電池面の法線方向の距離を意味する。法線方向の距離は、図3(b)に示すような集電タブが接続された電池面と対向する面からの距離であってもよく、集電タブが接続された電池面からの距離であってもよい。上記基準1~基準3のいずれかにおいて、予想温度と実温度が同等であるならば、判定部は電池を正規品と判定する。なお、上記±2℃の範囲は、使用するセンサの種類等によって適宜設定することができる。
【0026】
(2)判定装置の処理
図4は、本開示における判定装置の処理を例示するフローチャートである。図4に示すように、ステップS1では、温度センサから、通電開始時の電池温度である温度Tを取得する。ステップS2では、電流センサにより検出された通電開始時から所定時間経過時までの電流履歴を取得し、電流履歴を基に、電池負荷を算出する。ステップS3では、ステップS1で取得した温度TおよびステップS2で算出した電池負荷から、所定時間経過時における、温度Tを検出した箇所の予想温度である温度Tを算出する。ステップS4では、温度センサから、所定時間経過時における、温度Tを検出した箇所の実温度である温度Tを取得する。
【0027】
そして、ステップS5では、ステップ3で取得した温度Tおよびステップ4で取得した温度Tに基づき、電池が正規品か否かの判定をする。温度Tと温度Tとが同等である場合正規品と判定し、同等でない場合非正規品と判定する。また、図示しないが、非正規品が検出された場合、判定装置は、例えば充放電制御部に、電池の充放電を停止するよう指令を出すことができる。
【0028】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0029】
1 …電池
2 …監視ユニット
3 …ECU
10 …電池システム
図1
図2
図3
図4