(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20230926BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20230926BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/32 621C
B60H1/32 624E
B60H1/22 651A
F25B13/00 S
F25B13/00 J
(21)【出願番号】P 2020013331
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】島内 隆行
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-063644(JP,A)
【文献】特開2016-199203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221413(US,A1)
【文献】特開2019-219133(JP,A)
【文献】特開2018-020646(JP,A)
【文献】特開2018-140720(JP,A)
【文献】特開2017-077880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/32
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたヒートポンプシステムと、
前記ヒートポンプシステムを制御する制御装置とを備える車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプシステムの運転モードは、冷房モード、暖房モードおよび電池冷却モードを含み、
前記ヒートポンプシステムは、室外熱交換器と室内熱交換器と圧縮機と暖房用熱交換器と電池用熱交換器とを含んでおり、前記冷房モード時に前記圧縮機によって循環される冷媒の前記室内熱交換器での気化熱を利用して車室内を冷房可能に構成され、前記暖房モード時に前記圧縮機によって循環される冷媒の前記暖房用熱交換器での凝縮熱を利用して前記車室内を暖房可能に構成され、かつ、前記電池冷却モード時に前記圧縮機によって循環される冷媒の前記電池用熱交換器での気化熱を利用して電池を冷却可能に構成され、
前記制御装置は、前記冷房モードから前記電池冷却モードへの切り替えを許可する条件と、前記暖房モードから前記電池冷却モードへの切り替えを許可する条件とが、個別に設定されており、
前記制御装置は、前記冷房モードから前記電池冷却モードへの切り替えが許可されるか否かを、デフロスタ吹出口の開閉状態、冷房負荷、車両始動からの冷房優先時間、前記車室内の空気の温度、前記室内熱交換器の温度、および、除湿能力のうちの少なくとも一つに基づいて判断するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記暖房モードから前記電池冷却モードへの切り替えが許可されるか否かを、前記電池の温度に応じて決定される電池冷却要求レベルに基づいて判断するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記暖房モード時に、前記電池冷却要求レベルが、前記電池の冷却が即時に必要なレベルである場合に、前記電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記冷房モード時に、前記デフロスタ吹出口が開状態であり、前記除湿能力が不足しない場合に、前記電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記冷房モード時に、前記デフロスタ吹出口が閉状態であり、前記冷房負荷が低く、前記除湿能力が不足しない場合に、前記電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項
1~
5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記冷房モード時に、前記デフロスタ吹出口が閉状態であり、前記冷房負荷が高く、前記冷房優先時間を経過している場合に、前記電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項
1~
6のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記冷房モード時に、前記デフロスタ吹出口が閉状態であり、前記冷房負荷が高く、前記冷房優先時間を経過しておらず、前記車室内の空気の温度が低い場合に、前記電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項
1~
7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記冷房モード時に、前記デフロスタ吹出口が閉状態であり、前記冷房負荷が高く、前記冷房優先時間を経過しておらず、前記車室内の空気の温度が高く、前記室内熱交換器の温度が低い場合に、前記電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項9】
請求項
1~
8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷房優先時間は、前記電池の温度に応じて決定される電池冷却要求レベルが高い場合に短く設定されるとともに、車両停車中の場合に比べて車両走行中の場合に短く設定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項10】
請求項
1~
9のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記電池の温度に応じて決定される電池冷却要求レベルが、前記電池の冷却が即時に必要なレベルである場合に、前記除湿能力が不足しないと判断するとともに、前記冷房優先時間を経過していると判断するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記ヒートポンプシステムは、冷却水が循環される冷却水回路を含み、
前記冷却水回路には、ヒータコアおよび前記暖房用熱交換器が設けられ、
前記ヒートポンプシステムは、前記暖房モード時に、前記暖房用熱交換器で冷却水が暖められるとともに、前記ヒータコアによって前記車室内が暖房されるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却モードと加熱モードとを切り替え可能な車両用のヒートポンプシステムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のヒートポンプシステムは、乗員室の冷暖房を行うとともに、バッテリの冷却を行うように構成されている。このヒートポンプシステムは、室外熱交換器と、室内熱交換器と、コンプレッサと、中間熱交換器と、バッテリ冷却器とを備えている。そして、冷却モード時には、コンプレッサによって循環される冷媒が、室外熱交換器で凝縮されるとともに、室内熱交換器およびバッテリ冷却器で蒸発され、その冷媒の気化熱を利用して乗員室およびバッテリが冷やされる。なお、冷却モードでは、乗員室およびバッテリを、同時に冷やすことが可能であるとともに、選択的に冷やすことが可能である。加熱モード時には、コンプレッサによって循環される冷媒が、中間熱交換器で凝縮されるとともに、室外熱交換器で蒸発され、その冷媒の凝縮熱を利用して乗員室が暖められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した従来のヒートポンプシステムでは、バッテリを冷やしながら乗員室を暖めることができない。このため、バッテリの劣化を抑制しながら、乗員室内の空調快適性の向上を図ることについて改善の余地がある。たとえば、バッテリの冷却を許可する条件が、ヒートポンプシステムの運転モードにかかわらず同じであると、バッテリが劣化することや、乗員室内の空調快適性が低下することが考えられる。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、電池の劣化を抑制しながら、車室内の空調快適性の向上を図ることが可能な車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両用空調装置は、車両に搭載されたヒートポンプシステムと、ヒートポンプシステムを制御する制御装置とを備える。ヒートポンプシステムの運転モードは、冷房モード、暖房モードおよび電池冷却モードを含む。ヒートポンプシステムは、室外熱交換器と室内熱交換器と圧縮機と暖房用熱交換器と電池用熱交換器とを含んでおり、冷房モード時に圧縮機によって循環される冷媒の室内熱交換器での気化熱を利用して車室内を冷房可能に構成され、暖房モード時に圧縮機によって循環される冷媒の暖房用熱交換器での凝縮熱を利用して車室内を暖房可能に構成され、かつ、電池冷却モード時に圧縮機によって循環される冷媒の電池用熱交換器での気化熱を利用して電池を冷却可能に構成されている。制御装置は、冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを許可する条件と、暖房モードから電池冷却モードへの切り替えを許可する条件とが、個別に設定されている。制御装置は、冷房モードから電池冷却モードへの切り替えが許可されるか否かを、デフロスタ吹出口の開閉状態、冷房負荷、車両始動からの冷房優先時間、車室内の空気の温度、室内熱交換器の温度、および、除湿能力のうちの少なくとも一つに基づいて判断するように構成されている。
【0008】
このように構成することによって、冷房モードに応じた適切なタイミングで電池冷却モードへの切り替えを許可するとともに、暖房モードに応じた適切なタイミングで電池冷却モードへの切り替えを許可することにより、電池の劣化を抑制しながら、車室内の空調快適性の向上を図ることができる。
【0009】
上記車両用空調装置において、制御装置は、暖房モードから電池冷却モードへの切り替えが許可されるか否かを、電池の温度に応じて決定される電池冷却要求レベルに基づいて判断するように構成されていてもよい。
【0010】
この場合において、制御装置は、暖房モード時に、電池冷却要求レベルが、電池の冷却が即時に必要なレベルである場合に、電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていてもよい。
【0012】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、制御装置は、冷房モード時に、デフロスタ吹出口が開状態であり、除湿能力が不足しない場合に、電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていてもよい。
【0013】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、制御装置は、冷房モード時に、デフロスタ吹出口が閉状態であり、冷房負荷が低く、除湿能力が不足しない場合に、電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていてもよい。
【0014】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、制御装置は、冷房モード時に、デフロスタ吹出口が閉状態であり、冷房負荷が高く、冷房優先時間を経過している場合に、電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていてもよい。
【0015】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、制御装置は、冷房モード時に、デフロスタ吹出口が閉状態であり、冷房負荷が高く、冷房優先時間を経過しておらず、車室内の空気の温度が低い場合に、電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていてもよい。
【0016】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、制御装置は、冷房モード時に、デフロスタ吹出口が閉状態であり、冷房負荷が高く、冷房優先時間を経過しておらず、車室内の空気の温度が高く、室内熱交換器の温度が低い場合に、電池冷却モードへの切り替えを許可するように構成されていてもよい。
【0017】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、冷房優先時間は、電池の温度に応じて決定される電池冷却要求レベルが高い場合に短く設定されるとともに、車両停車中の場合に比べて車両走行中の場合に短く設定されていてもよい。
【0018】
上記冷房モードから電池冷却モードへの切り替えを判断する車両用空調装置において、制御装置は、電池の温度に応じて決定される電池冷却要求レベルが、電池の冷却が即時に必要なレベルである場合に、除湿能力が不足しないと判断するとともに、冷房優先時間を経過していると判断するように構成されていてもよい。
【0019】
上記車両用空調装置において、ヒートポンプシステムは、冷却水が循環される冷却水回路を含み、冷却水回路には、ヒータコアおよび暖房用熱交換器が設けられ、ヒートポンプシステムは、暖房モード時に、暖房用熱交換器で冷却水が暖められるとともに、ヒータコアによって車室内が暖房されるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用空調装置によれば、電池の劣化を抑制しながら、車室内の空調快適性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態による車両用空調装置のヒートポンプシステムの構成を示した図である。
【
図2】本実施形態による車両用空調装置のエアコンECUを示したブロック図である。
【
図3】
図1のヒートポンプシステムにおける冷房モード時の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図4】
図1のヒートポンプシステムにおける暖房モード時の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図5】
図1のヒートポンプシステムにおける直列除湿暖房モード時の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図6】
図1のヒートポンプシステムにおける並列除湿暖房モード時の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図7】
図1のヒートポンプシステムにおける電池単独冷却モード時の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図8】
図1のヒートポンプシステムにおける冷房電池冷却モード時の冷媒の流れを説明するための図である。
【
図9】本実施形態のエアコンECUによる電池冷却可否判定を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図9のステップS3の空調要件判定を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS15の冷房モード時判定を説明するためのフローチャートである。
【
図12】曇り易いときの除湿能力判断を説明するための図である。
【
図13】曇りにくいときの除湿能力判断を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0023】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態による車両用空調装置100の構成について説明する。
【0024】
車両用空調装置100は、たとえば、車両走行用の駆動力源として内燃機関110および電動機(図示省略)を備えるプラグインハイブリッド車両に適用される。プラグインハイブリッド車両には電池パック120が搭載され、その電池パック120には電池121が収容されている。電池121は、充放電可能な高圧バッテリであり、車両走行用の電動機を駆動する電力を供給するとともに、その電動機で発電された電力を蓄電するように構成されている。車両用空調装置100は、
図1に示すように、ヒートポンプシステム1と、エアコンECU2(
図2参照)と、室内空調ユニット3とを備えている。
【0025】
-ヒートポンプシステム-
ヒートポンプシステム1は、車室内の冷暖房を行うとともに、電池121の冷却を行うように構成されている。このヒートポンプシステム1の運転モードは、冷房モード、暖房モード、直列除湿暖房モード、並列除湿暖房モード、電池単独冷却モードおよび冷房電池冷却モードなどを含んでいる。各運転モードの詳細については後述する。ヒートポンプシステム1は、熱媒体である冷媒が循環される冷媒回路10と、熱媒体である冷却水が循環される冷却水回路20とを含んでいる。
【0026】
[冷媒回路]
冷媒回路10には、冷媒通路10a~10h、圧縮機11、中間熱交換器12、室外熱交換器13、室内熱交換器14、アキュムレータ15、電池用熱交換器16および膨張弁17a~17cが設けられている。なお、冷媒回路10の冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が含まれている。
【0027】
圧縮機11は、気体状の冷媒を高温高圧で吐出することにより、冷媒回路10において冷媒を循環させるように構成されている。圧縮機11は電動モータ(図示省略)によって駆動され、その電動モータは回転速度を調整可能である。圧縮機11の吐出口は、冷媒通路10aによって中間熱交換器12の冷媒入口と接続されている。
【0028】
中間熱交換器12は、暖房モード時などにコンデンサとして機能して、冷却水回路20の冷却水を暖めるために設けられている。中間熱交換器12は、冷媒流通部および冷却水流通部を有し、冷媒流通部を流通する冷媒と冷却水流通部を流通する冷却水との間で熱交換するように構成されている。なお、中間熱交換器12は、本発明の「暖房用熱交換器」の一例である。中間熱交換器12の冷媒出口は、冷媒通路10bによって室外熱交換器13の冷媒入口と接続されている。冷媒通路10bには、膨張弁17aが設けられている。
【0029】
膨張弁17aは、たとえば電動アクチュエータ(図示省略)によって開度を調整可能な電子弁であり、暖房モード時などに開度を絞ることにより、通過する冷媒を減圧して膨張させるように構成されている。なお、膨張弁17aは、冷房モード時などに開度が全開にされることにより、減圧作用が発揮されないようになっている。
【0030】
室外熱交換器13は、エンジンコンパートメントに配置され、内部を通過する冷媒と外気との間で熱交換するように構成されている。室外熱交換器13は、たとえば、冷房モード時にコンデンサとして機能し、暖房モード時にエバポレータとして機能する。室外熱交換器13の冷媒出口は、冷媒通路10cによって室内熱交換器14の冷媒入口と接続されている。冷媒通路10cには、冷媒の流れ方向の上流側から順に、逆止弁18a、電磁弁19aおよび膨張弁17bが設けられている。
【0031】
逆止弁18aは、冷媒の逆流(室外熱交換器13側に向かう流れ)を防止するために設けられている。電磁弁19aは、冷媒通路10cを開閉可能に構成され、冷媒の循環経路を切り替えるために設けられている。膨張弁17bは、たとえば電動アクチュエータ(図示省略)によって開度を調整可能な電子弁であり、冷房モード時などに開度を絞ることにより、通過する冷媒を減圧して膨張させるように構成されている。
【0032】
室内熱交換器14は、室内空調ユニット3のケーシング33内に配置され、ケーシング33内の送風空気を冷却および除湿するために設けられている。室内熱交換器14は、冷房モード時などにエバポレータとして機能し、内部を通過する冷媒と送風空気との間で熱交換するように構成されている。室内熱交換器14の冷媒出口は、冷媒通路10dによってアキュムレータ15の冷媒入口と接続されている。冷媒通路10dには、蒸発圧力調整弁14aが設けられている。蒸発圧力調整弁14aは、室内熱交換器14での冷媒の蒸発圧力を調整するために設けられている。
【0033】
アキュムレータ15は、冷媒の気液を分離するために設けられている。アキュムレータ15の冷媒出口は、冷媒通路10eによって圧縮機11の吸入口と接続されている。このため、圧縮機11には、気体状の冷媒のみが吸入されるようになっている。
【0034】
冷媒通路10fは、室内熱交換器14を迂回するように設けられている。冷媒通路10fの一方端部(上流側の端部)は、室外熱交換器13の冷媒出口と逆止弁18aとの間の冷媒通路10cに接続され、冷媒通路10fの他方端部(下流側の端部)は、蒸発圧力調整弁14aとアキュムレータ15の冷媒入口との間の冷媒通路10dに接続されている。冷媒通路10fには、電磁弁19bが設けられている。電磁弁19bは、冷媒通路10fを開閉可能に構成され、冷媒の循環経路を切り替えるために設けられている。
【0035】
冷媒通路10gは、室外熱交換器13を迂回するように設けられている。冷媒通路10gの一方端部(上流側の端部)は、中間熱交換器12の冷媒出口と膨張弁17aとの間の冷媒通路10bに接続され、冷媒通路10gの他方端部(下流側の端部)は、逆止弁18aと電磁弁19aとの間の冷媒通路10cに接続されている。冷媒通路10gには、電磁弁19cが設けられている。電磁弁19cは、冷媒通路10gを開閉可能に構成され、冷媒の循環経路を切り替えるために設けられている。
【0036】
冷媒通路10hは、室内熱交換器14を迂回するように設けられている。冷媒通路10hの一方端部(上流側の端部)は、逆止弁18aと電磁弁19aとの間の冷媒通路10cに接続され、冷媒通路10hの他方端部(下流側の端部)は、蒸発圧力調整弁14aとアキュムレータ15の冷媒入口との間の冷媒通路10dに接続されている。冷媒通路10hには、冷媒の流れ方向の上流側から順に、電磁弁19d、膨張弁17c、電池用熱交換器16および逆止弁18bが設けられている。
【0037】
電磁弁19dは、冷媒通路10hを開閉可能に構成され、冷媒の循環経路を切り替えるために設けられている。膨張弁17cは、たとえば電動アクチュエータ(図示省略)によって開度を調整可能な電子弁であり、電池単独冷却モードおよび冷房電池冷却モード時に開度を絞ることにより、通過する冷媒を減圧して膨張させるように構成されている。逆止弁18bは、冷媒の逆流(電池用熱交換器16側に向かう流れ)を防止するために設けられている。
【0038】
電池用熱交換器16は、電池パック120内に配置され、電池パック120に収容された電池121を冷却するために設けられている。電池用熱交換器16は、内部に冷媒が流通する冷媒流通部が設けられ、冷媒入口が膨張弁17cに接続されるとともに、冷媒出口が逆止弁18bに接続されている。電池用熱交換器16は、電池単独冷却モードおよび冷房電池冷却モード時にエバポレータとして機能し、その気化熱を利用して電池121を冷やすように構成されている。たとえば、電池用熱交換器16に電池121が載置され、電池121が電池用熱交換器16によって直接冷やされるようになっている。
【0039】
なお、冷媒回路10には、温度センサ41~47および圧力センサ48および49が設けられている。温度センサ41は、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出するために設けられている。温度センサ42および圧力センサ48は、それぞれ、中間熱交換器12を通過した冷媒の温度および圧力を検出するために設けられている。温度センサ43は、室外熱交換器13を通過した冷媒の温度を検出するために設けられ、温度センサ45は、室内熱交換器14を通過した冷媒の温度を検出するために設けられている。温度センサ44は、室内熱交換器14の温度(蒸発器温度)を検出するために設けられている。温度センサ46および47は、電池用熱交換器16を通過する前後の冷媒の温度を検出するために設けられ、圧力センサ49は、電池用熱交換器16を通過した冷媒の圧力を検出するために設けられている。
【0040】
[冷却水回路]
冷却水回路20には、冷却水通路20a~20d、ウォータポンプ21、中間熱交換器12、三方弁22およびヒータコア23が設けられている。
【0041】
ウォータポンプ21は、内燃機関110の停止時に冷却水回路20において冷却水を循環させるように構成されている。ウォータポンプ21は電動モータ(図示省略)によって駆動され、その電動モータは回転速度を調整可能である。ウォータポンプ21の吐出口は、冷却水通路20aによって中間熱交換器12の冷却水入口と接続されている。
【0042】
中間熱交換器12の冷却水出口は、冷却水通路20bによって三方弁22の冷却水入口と接続されている。なお、冷却水通路20bには、中間熱交換器12を通過した冷却水の温度を検出する温度センサ40が設けられている。
【0043】
三方弁22は、冷却水の循環経路を切り替えるために設けられている。三方弁22の冷却水出口の一方は、冷却水通路20cによってヒータコア23の冷却水入口と接続されている。
【0044】
ヒータコア23は、室内空調ユニット3のケーシング33内に配置され、ケーシング33内の送風空気を加熱するために設けられている。ヒータコア23は、暖房モード時などに内部を通過する冷却水と送風空気との間で熱交換するように構成されている。ヒータコア23の冷却水出口は、冷却水通路20dによってウォータポンプ21の吸入口と接続されている。
【0045】
また、冷却水回路20には、冷却水通路20eが設けられている。冷却水通路20eには、冷却水の流れ方向の上流側から順に、ウォータポンプ24、内燃機関110のウォータジャケットおよび切替弁25が設けられている。冷却水通路20eの一方端部(上流側の端部)は、冷却水通路20dに接続され、冷却水通路20eの他方端部(下流側の端部)は、冷却水通路20cに接続されている。また、ウォータポンプ24よりも上流側の冷却水通路20eは、冷却水通路20fによって三方弁22の冷却水出口の他方と接続されている。
【0046】
ウォータポンプ24は、内燃機関110の運転時に冷却水回路20において冷却水を循環させるように構成されている。ウォータジャケットは、内燃機関110に形成された冷却水流通部であり、流通する冷却水によって内燃機関110の熱を奪うために設けられている。すなわち、ウォータジャケットを流通する冷却水が内燃機関110によって暖められるようになっている。切替弁25は、FSV(Flow Shutting Valve)であり、冷却水通路20eを開閉するために設けられている。
【0047】
なお、冷却水回路20には、冷却水の熱を外気に排出するためのラジエータ(図示省略)などが設けられているが、簡略化のために説明を省略する。
【0048】
このような冷却水回路20では、内燃機関110の運転時に、切替弁25が開かれるとともに、三方弁22の冷却水入口が冷却水出口の他方と接続されている。そして、ウォータポンプ24が駆動されることにより、ウォータポンプ24から吐出された冷却水がウォータジャケットを通過する際に暖められ、その暖められた冷却水がヒータコア23に流れ込む。ヒータコア23から流出する冷却水は、中間熱交換器12および三方弁22を介してウォータポンプ24に吸入されるとともに、中間熱交換器12および三方弁22を迂回してウォータポンプ24に吸入される。
【0049】
また、内燃機関110の停止時には、切替弁25が閉じられるとともに、三方弁22の冷却水入口が冷却水出口の一方と接続されている。このため、冷却水回路20では、内燃機関110を経由しない冷却水の循環経路が形成されている。そして、たとえば暖房モード時には、ウォータポンプ21が駆動されることにより、ウォータポンプ21から吐出された冷却水が中間熱交換器12を通過する際に暖められ、その暖められた冷却水が三方弁22を介してヒータコア23に流れ込み、ヒータコア23から流出する冷却水がウォータポンプ21に吸入される。
【0050】
-室内空調ユニット-
室内空調ユニット3は、ヒートポンプシステム1によって温度が調整された空調風を車室内に吹き出すために設けられている。この室内空調ユニット3は、送風機31と、室内熱交換器14と、ヒータコア23と、PTCヒータ32と、それらを収容するケーシング33とを含んでいる。
【0051】
ケーシング33は、送風機31によって生成される送風空気の通路を構成している。ケーシング33には、送風空気の流れ方向における上流端部に外気導入口34aおよび内気導入口34bが形成されている。外気導入口34aは、ケーシング33の内部に外気(車室外空気)を導入するために設けられ、内気導入口34bは、ケーシング33の内部に内気(車室内空気)を導入するために設けられている。外気導入口34aおよび内気導入口34bの近傍には、内外気切替ドア34および送風機31が設けられている。内外気切替ドア34は、外気導入口34aおよび内気導入口34bの開口面積を調整することにより、ケーシング33に導入される内外気の割合を調整するように構成されている。送風機31は電動モータ(図示省略)によって駆動され、その電動モータは回転速度を調整可能である。
【0052】
送風機31に対して送風空気の流れ方向における下流側には、室内熱交換器14が配置されている。ケーシング33内における室内熱交換器14の下流側には、エアミックスドア35および仕切壁36が設けられている。仕切壁36により、ケーシング33内に加熱用通路33aおよびバイパス通路33bが形成されている。
【0053】
加熱用通路33aには、ヒータコア23およびPTCヒータ32が配置されている。このため、加熱用通路33aを通過する送風空気は、ヒータコア23の冷却水の温度が送風空気の温度よりも高い場合に加熱されるとともに、PTCヒータ32が作動中の場合に加熱される。バイパス通路33bは、送風空気がヒータコア23およびPTCヒータ32を迂回可能なように設けられている。エアミックスドア35は、加熱用通路33aおよびバイパス通路33bを通過する風量の割合を調整することにより、車室内に供給される空調風の温度を調整するように構成されている。
【0054】
PTCヒータ32は、ヒータコア23に対して送風空気の流れ方向における下流側に配置され、ヒータコア23による送風空気の加熱を補助するために設けられている。PTCヒータ32は複数のPTC素子を有し、各PTC素子は通電によって発熱する発熱体である。このため、PTCヒータ32は、通電するPTC素子の数を調整することにより、加熱能力を調整することが可能である。
【0055】
また、ケーシング33には、送風空気の流れ方向における下流端部に吹出口37a~39aが形成されている。吹出口37aは、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口であり、吹出口38aは、車室内の乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口であり、吹出口39aは、フロントガラス(図示省略)の内面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口である。吹出口37a~39aには、それぞれ、開口面積を調整するためのドア37~39が設けられている。ドア37は吹出口37aを開閉するフェイスドアであり、ドア38は吹出口38aを開閉するフットドアであり、ドア39は吹出口39aを開閉するデフロスタドアである。
【0056】
ここで、吹出口モードとしては、たとえば、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、デフロスタモードおよびフットデフロスタモードが設定されている。フェイスモードでは吹出口37aから空調風が吹き出され、バイレベルモードでは吹出口37aおよび38aから空調風が吹き出され、フットモードでは吹出口38aから空調風が吹き出される。デフロスタモードでは吹出口39aから空調風が吹き出され、フットデフロスタモードでは吹出口38aおよび39aから空調風が吹き出される。
【0057】
-エアコンECU-
エアコンECU2は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むマイクロコンピュータであり、ヒートポンプシステム1および室内空調ユニット3を制御するように構成されている。なお、エアコンECU2は、本発明の「制御装置」の一例である。
【0058】
エアコンECU2には、
図2に示すように、上記した温度センサ40~47および圧力センサ48および49と、内気温センサ51と、外気温センサ52と、日射センサ53と、窓表面湿度センサ54とが接続され、各センサの検出結果が入力されるようになっている。内気温センサ51は、車室内の空気の温度(内気温)を検出するために設けられ、外気温センサ52は、車室外の空気の温度(外気温)を検出するために設けられている。日射センサ53は、車室内に照射される日射量を検出するために設けられている。窓表面湿度センサ54は、フロントガラス近傍の車室内の空気の相対湿度を算出するために設けられている。
【0059】
また、エアコンECU2には、電池ECU6が接続されている。電池ECU6は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むマイクロコンピュータであり、電池121を管理するように構成されている。
【0060】
そして、エアコンECU2は、各センサおよび電池ECU6からの入力などに基づいて、ヒートポンプシステム1および室内空調ユニット3を制御するように構成されている。
【0061】
たとえば、室内空調ユニット3に関して、エアコンECU2は、内外気切替ドア34を制御することにより、ケーシング33に導入される内外気の割合を調整する。エアコンECU2は、送風機31による送風量を調整するとともに、PTCヒータ32を制御する。エアコンECU2は、エアミックスドア35を制御することにより、加熱用通路33aを通過する風量を調整する。エアコンECU2は、吹出口モードに応じて、ドア37~39を制御して吹出口37a~39aを開閉する。
【0062】
また、エアコンECU2は、ヒートポンプシステム1の各部を制御することにより、ヒートポンプシステム1を運転モードに応じて作動させるように構成されている。
【0063】
-ヒートポンプシステムの運転モード-
次に、
図3~
図8を参照して、ヒートポンプシステム1の運転モードについて説明する。以下では、内燃機関110が停止状態であり、PTCヒータ32が非作動状態(非通電状態)である場合について説明する。また、冷房モード、暖房モード、直列除湿暖房モード、並列除湿暖房モード、電池単独冷却モードおよび冷房電池冷却モードの順に説明する。
【0064】
[冷房モード]
冷房モードは、送風空気を冷却して車室内を冷房するモードである。
図3に示すように、冷房モード時には、エアコンECU2(
図2参照)により、電磁弁19aが開かれ、電磁弁19b~19dが閉じられ、膨張弁17aが全開状態にされており、圧縮機11が駆動されるとともに、膨張弁17bが絞り状態で制御される。なお、膨張弁17cは、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0065】
これにより、圧縮機11から吐出された冷媒は、中間熱交換器12、室外熱交換器13、電磁弁19a、膨張弁17b、室内熱交換器14およびアキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に戻される。このとき、室外熱交換器13がコンデンサとして機能するとともに、室内熱交換器14がエバポレータとして機能することから、室内熱交換器14での冷媒の気化熱により、室内熱交換器14を通過する送風空気が冷やされる。
【0066】
[暖房モード]
暖房モードは、送風空気を加熱して車室内を暖房するモードである。
図4に示すように、暖房モード時には、エアコンECU2(
図2参照)により、切替弁25が閉じられるとともに、三方弁22の冷却水入口が冷却水出口の一方と接続された状態で、ウォータポンプ21が駆動される。これにより、ウォータポンプ21から吐出された冷却水は、中間熱交換器12、三方弁22およびヒータコア23の順に流れ、ウォータポンプ21に戻される。
【0067】
また、エアコンECU2により、電磁弁19bが開かれ、電磁弁19a、19cおよび19dが閉じられており、圧縮機11が駆動されるとともに、膨張弁17aが絞り状態で制御される。なお、膨張弁17bおよび17cは、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0068】
これにより、圧縮機11から吐出された冷媒は、中間熱交換器12、膨張弁17a、室外熱交換器13、電磁弁19bおよびアキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に戻される。このとき、中間熱交換器12がコンデンサとして機能するとともに、室外熱交換器13がエバポレータとして機能することから、中間熱交換器12での冷媒の凝縮熱により、中間熱交換器12を通過する冷却水が暖められる。そして、ヒータコア23において冷却水と送風空気とが熱交換することにより、ヒータコア23を通過する送風空気が暖められる。
【0069】
[直列除湿暖房モード]
直列除湿暖房モードは、送風空気を冷却して除湿した後に加熱することにより車室内を除湿暖房するモードである。
図5に示すように、直列除湿暖房モード時には、エアコンECU2(
図2参照)により、切替弁25が閉じられるとともに、三方弁22の冷却水入口が冷却水出口の一方と接続された状態で、ウォータポンプ21が駆動される。これにより、ウォータポンプ21から吐出された冷却水は、中間熱交換器12、三方弁22およびヒータコア23の順に流れ、ウォータポンプ21に戻される。
【0070】
また、エアコンECU2により、電磁弁19aが開かれ、電磁弁19b~19dが閉じられており、圧縮機11が駆動されるとともに、膨張弁17aおよび17bが絞り状態で制御される。なお、膨張弁17cは、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0071】
これにより、圧縮機11から吐出された冷媒は、中間熱交換器12、膨張弁17a、室外熱交換器13、電磁弁19a、膨張弁17b、室内熱交換器14およびアキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に戻される。このとき、中間熱交換器12がコンデンサとして機能するとともに、室内熱交換器14がエバポレータとして機能する。また、室外熱交換器13での冷媒の飽和温度が外気温よりも高い場合には、室外熱交換器13がコンデンサとして機能し、室外熱交換器13での冷媒の飽和温度が外気温よりも低い場合には、室外熱交換器13がエバポレータとして機能する。そして、室内熱交換器14での冷媒の気化熱により、室内熱交換器14を通過する送風空気が冷却されて除湿される。また、中間熱交換器12での冷媒の凝縮熱により、中間熱交換器12を通過する冷却水が暖められる。そして、ヒータコア23において冷却水と送風空気とが熱交換することにより、除湿された後にヒータコア23を通過する送風空気が暖められる。
【0072】
[並列除湿暖房モード]
並列除湿暖房モードは、送風空気を冷却して除湿した後に加熱することにより車室内を除湿暖房するモードであり、直列除湿暖房モードよりも高い暖房能力を有するモードである。
図6に示すように、並列除湿暖房モード時には、エアコンECU2(
図2参照)により、切替弁25が閉じられるとともに、三方弁22の冷却水入口が冷却水出口の一方と接続された状態で、ウォータポンプ21が駆動される。これにより、ウォータポンプ21から吐出された冷却水は、中間熱交換器12、三方弁22およびヒータコア23の順に流れ、ウォータポンプ21に戻される。
【0073】
また、エアコンECU2により、電磁弁19a~19cが開かれ、電磁弁19dが閉じられており、圧縮機11が駆動されるとともに、膨張弁17aおよび17bが絞り状態で制御される。なお、膨張弁17cは、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0074】
これにより、圧縮機11から吐出された冷媒は、中間熱交換器12、膨張弁17a、室外熱交換器13、電磁弁19bおよびアキュムレータ15の順に流れるとともに、中間熱交換器12、電磁弁19c、19a、膨張弁17b、室内熱交換器14およびアキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に戻される。すなわち、中間熱交換器12を通過した冷媒が、膨張弁17aおよび室外熱交換器13を介して圧縮機11に戻る経路と、膨張弁17bおよび室内熱交換器14を介して圧縮機11に戻る経路とに分岐される。このとき、中間熱交換器12がコンデンサとして機能するとともに、室外熱交換器13および室内熱交換器14がエバポレータとして機能する。そして、室内熱交換器14での冷媒の気化熱により、室内熱交換器14を通過する送風空気が冷却されて除湿される。また、中間熱交換器12での冷媒の凝縮熱により、中間熱交換器12を通過する冷却水が暖められる。そして、ヒータコア23において冷却水と送風空気とが熱交換することにより、除湿された後にヒータコア23を通過する送風空気が暖められる。
【0075】
[電池単独冷却モード]
電池単独冷却モードは、電池121の冷却のみを行うモードである。
図7に示すように、電池単独冷却モード時には、エアコンECU2(
図2参照)により、電磁弁19dが開かれ、電磁弁19a~19cが閉じられ、膨張弁17aが全開状態にされており、圧縮機11が駆動されるとともに、膨張弁17cが絞り状態で制御される。なお、膨張弁17bは、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0076】
これにより、圧縮機11から吐出された冷媒は、中間熱交換器12、室外熱交換器13、電磁弁19d、膨張弁17c、電池用熱交換器16およびアキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に戻される。このとき、室外熱交換器13がコンデンサとして機能するとともに、電池用熱交換器16がエバポレータとして機能することから、電池用熱交換器16での冷媒の気化熱により電池121が冷やされる。
【0077】
[冷房電池冷却モード]
冷房電池冷却モードは、送風空気を冷却して車室内を冷房しながら、電池121の冷却を行うモードである。
図8に示すように、冷房電池冷却モード時には、エアコンECU2(
図2参照)により、電磁弁19aおよび19dが開かれ、電磁弁19bおよび19cが閉じられ、膨張弁17aが全開状態にされており、圧縮機11が駆動されるとともに、膨張弁17bおよび17cが絞り状態で制御される。
【0078】
これにより、圧縮機11から吐出された冷媒は、中間熱交換器12、室外熱交換器13、電磁弁19a、膨張弁17b、室内熱交換器14およびアキュムレータ15の順に流れるとともに、中間熱交換器12、室外熱交換器13、電磁弁19d、膨張弁17c、電池用熱交換器16およびアキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に戻される。すなわち、室外熱交換器13を通過した冷媒が、膨張弁17bおよび室内熱交換器14を介して圧縮機11に戻る経路と、膨張弁17cおよび電池用熱交換器16を介して圧縮機11に戻る経路とに分岐される。このとき、室外熱交換器13がコンデンサとして機能するとともに、室内熱交換器14および電池用熱交換器16がエバポレータとして機能する。そして、室内熱交換器14での冷媒の気化熱により、室内熱交換器14を通過する送風空気が冷やされるとともに、電池用熱交換器16での冷媒の気化熱により、電池121が冷やされる。
【0079】
-電池冷却可否判定-
ここで、本実施形態のエアコンECU2では、電池121の冷却の可否を判定するための条件として空調要件が設定されている。空調要件では、ヒートポンプシステム1の運転モードに応じて、電池冷却の可否が設定されている。すなわち、運転モードを電池単独冷却モードまたは冷房電池冷却モードに切り替え可能とする条件がその運転モードに応じて設定されている。
【0080】
たとえば、冷房モード時に電池121の冷却を許可する条件と、暖房モード時に電池121の冷却を許可する条件とが、個別に設定されている。なお、直列除湿暖房モード時に電池121の冷却を許可する条件、および、並列除湿暖房モード時に電池121の冷却を許可する条件は、暖房モード時に電池121の冷却を許可する条件と同じに設定されている。これにより、電池121の劣化を抑制しながら、車室内の空調快適性の向上を図ることが可能である。なお、冷房モード、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードでは、内燃機関110が停止された状態で、ヒートポンプシステム1によって車室内の空調が行われる。また、冷房モードは、本発明の「冷房モード」の一例であり、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードは、本発明の「暖房モード」の一例であり、電池単独冷却モードおよび冷房電池冷却モードは、本発明の「電池冷却モード」の一例である。
【0081】
図2に示すように、電池ECU6には、電池121の温度を検出する電池温度センサ61が接続され、その電池温度センサ61の検出結果が入力されている。電池ECU6は、電池121の温度に応じて電池冷却要求レベルを決定し、その決定された電池冷却要求レベルをエアコンECU2に出力するように構成されている。たとえば、電池冷却要求レベルは「0」~「7」の8段階で設定され、電池121の温度が高くなるに連れて電池冷却要求レベルが高くなる。このため、電池冷却要求レベルが「0」のときは、電池121の温度が低く、電池121の冷却が要求されない状態である。電池冷却要求レベルが「1」~「7」のときは、電池121の温度上昇によって冷却が要求される状態であり、レベルが高くなるに連れて要求度合いが高くなる。電池冷却要求レベルが「6」以上のときは、電池121の冷却が即時に必要な状態である。
【0082】
そして、エアコンECU2は、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードの場合に、電池ECU6から入力される電池冷却要求レベルに基づいて、電池121の冷却が許可されるか否かを判断するように構成されている。具体的には、エアコンECU2は、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードの場合に、電池冷却要求レベルが、電池121の冷却が即時に必要なレベルであるときに、電池121の冷却を許可するように構成されている。すなわち、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合に、電池121の冷却を許可するように設定されている。
【0083】
また、エアコンECU2は、冷房モードの場合に、吹出口39aの開閉状態、冷房負荷、車両始動からの冷房優先時間、内気温、室内熱交換器14の温度、フロントガラスの曇り易さ、および、除湿能力に基づいて、電池121の冷却が許可されるか否かを判断するように構成されている。
【0084】
また、ヒートポンプシステム1の運転モードには、除霜モード、マイルームモード、プレ空調モードおよびアイドルモードが含まれている。
【0085】
除霜モードは、室外熱交換器13に付着した霜を取り除くためのものである。除霜モード時には、たとえば、冷媒回路10の冷媒が冷房モードと同様の経路で循環され、室外熱交換器13での凝縮熱によって霜が溶かされる。除霜モード時には、ヒートポンプシステム1の能力回復を優先するために、電池121の冷却が禁止される。
【0086】
マイルームモードとは、プラグインハイブリッド車両に外部電源(図示省略)が接続された状態で、その外部電源からの電力を用いて車両用空調装置100などの車載電気負荷を利用可能にするものである。プレ空調モードとは、ユーザの乗車前に車両用空調装置100を作動させて車室内を予め空調するためのものである。マイルームモードおよびプレ空調モード時には、電池121の冷却が禁止される。
【0087】
アイドルモードでは、内燃機関110が運転され、ヒートポンプシステム1が停止されている。そして、内燃機関110の運転時にはその排熱を利用して車室内を暖房可能であることから、アイドルモード時には電池121の冷却が許可される。
【0088】
[電池冷却可否判定フロー]
次に、
図9~
図11を参照して、本実施形態のエアコンECU2による電池冷却可否判定について説明する。なお、以下の各ステップは、エアコンECU2によって実行される。
【0089】
まず、
図9のステップS1において、車両用空調装置100が異常であるか否かが判断される。そして、車両用空調装置100が異常であると判断された場合には、ステップS7に移る。その一方、車両用空調装置100が異常ではないと判断された場合(車両用空調装置100が正常である場合)には、車両用空調装置100の作動/非作動状態にかかわらず、ステップS2に移る。
【0090】
次に、ステップS2において、電池冷却要求レベルが「0」であるか否かが判断される。電池冷却要求レベルは電池ECU6から入力され、電池ECU6は電池冷却要求レベルを電池121の温度に応じて決定する。そして、電池冷却要求レベルが「0」であると判断された場合には、ステップS7に移る。その一方、電池冷却要求レベルが「0」ではないと判断された場合(電池冷却要求レベルが「1」~「7」の場合)には、ステップS3に移る。
【0091】
次に、ステップS3において、空調要件が判定される。この空調要件の判定については後述するが、判定結果として許可または禁止が出力される。
【0092】
次に、ステップS4において、空調要件の判定結果が禁止であるか否かが判断される。そして、空調要件の判定結果が禁止であると判断された場合には、ステップS7に移る。その一方、空調要件の判定結果が禁止ではないと判断された場合(空調要件の判定結果が許可である場合)には、ステップS5に移る。
【0093】
次に、ステップS5において、オイル回収中であるか否かが判断される。このオイル回収とは、圧縮機11の潤滑不足を解消するために、圧縮機11の回転速度を一時的に高くして冷凍機油を圧縮機11に戻すことである。そして、オイル回収中であると判断された場合には、ステップS7に移る。その一方、オイル回収中ではないと判断された場合には、ステップS6に移る。
【0094】
そして、ステップS6では、電池121の冷却が許可される。そして、たとえばヒートポンプシステム1の運転モードが電池単独冷却モードまたは冷房電池冷却モードに切り替えられ、電池121の冷却が行われる。
【0095】
また、ステップS7では、電池121の冷却が禁止される。そして、たとえばヒートポンプシステム1の運転モードが電池単独冷却モードおよび冷房電池冷却モードに切り替えられることがなく、電池121の冷却が行われない。
【0096】
[空調要件判定]
空調要件判定では、まず、
図10のステップS11において、ヒートポンプシステム1の運転モードが冷房モードであるか否かが判断される。そして、冷房モードであると判断された場合には、ステップS15において、冷房モード時判定が行われる。この冷房モード時判定については後述する。その一方、冷房モードではないと判断された場合には、ステップS12に移る。
【0097】
次に、ステップS12において、ヒートポンプシステム1の運転モードが暖房モード、直列除湿暖房モードまたは並列除湿暖房モードであるか否かが判断される。そして、暖房モード、直列除湿暖房モードまたは並列除湿暖房モードであると判断された場合には、ステップS16に移る。その一方、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードではないと判断された場合には、ステップS13に移る。
【0098】
次に、ステップS16では、電池冷却要求レベルが「6」以上であるか否かが判断される。そして、電池冷却要求レベルが「6」以上であると判断された場合には、ステップS17において、判定結果として許可が出力される。その一方、電池冷却要求レベルが「6」以上ではないと判断された場合(電池冷却要求レベルが「5」以下の場合)には、ステップS18において、判定結果として禁止が出力される。すなわち、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードのいずれかである場合には、電池冷却要求レベルが「6」以上のときに、空調要件で電池冷却が許可され、電池冷却要求レベルが「5」以下のときに、空調要件で電池冷却が禁止される。
【0099】
また、ステップS13において、ヒートポンプシステム1の運転モードが除霜モード、マイルームモードまたはプレ空調モードであるか否かが判断される。そして、除霜モード、マイルームモードまたはプレ空調モードであると判断された場合には、ステップS18において、判定結果として禁止が出力される。その一方、除霜モード、マイルームモードおよびプレ空調モードではないと判断された場合には、ステップS14に移る。
【0100】
次に、ステップS14において、ヒートポンプシステム1の運転モードがアイドルモードであるか否かが判断される。そして、アイドルモードであると判断された場合には、ステップS17において、判定結果として許可が出力される。その一方、アイドルモードではないと判断された場合には、ステップS11に戻る。
【0101】
[冷房モード時判定]
冷房モード時判定では、まず、
図11のステップS21において、吹出口39aが開状態であるか否かが判断される。たとえば、吹出口モードがデフロスタモードまたはフットデフロスタモードの場合に、吹出口39aが開状態であると判断される。そして、吹出口39aが開状態であると判断された場合には、ステップS27に移る。その一方、吹出口39aが開状態ではないと判断された場合(吹出口39aが閉状態である場合)には、ステップS22に移る。
【0102】
次に、ステップS22において、冷房負荷が高いか否かが判断される。この冷房負荷判断の詳細については後述する。そして、冷房負荷が高いと判断された場合には、ステップS23に移る。その一方、冷房負荷が高くないと判断された場合(冷房負荷が低い場合)には、ステップS26に移る。
【0103】
次に、ステップS23において、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎたか否かが判断される。この冷房優先時間経過判断の詳細については後述する。そして、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎたと判断された場合には、ステップS29において、判定結果として許可が出力される。その一方、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎていないと判断された場合(車両始動からの経過時間が冷房優先時間内である場合)には、ステップS24に移る。
【0104】
次に、ステップS24において、内気温が高いか否かが判断される。この内気温判断の詳細については後述する。そして、内気温が高いと判断された場合には、ステップS25に移る。その一方、内気温が高くないと判断された場合(内気温が低い場合)には、ステップS29において、判定結果として許可が出力される。
【0105】
次に、ステップS25において、室内熱交換器14の温度が高いか否かが判断される。この蒸発器温度判断の詳細については後述する。そして、室内熱交換器14の温度が高いと判断された場合には、ステップS30において、判定結果として禁止が出力される。その一方、室内熱交換器14の温度が高くないと判断された場合(室内熱交換器14の温度が低い場合)には、ステップS29において、判定結果として許可が出力される。
【0106】
また、ステップS26において、フロントガラスの曇り易さが判断される。この曇り易さ判断の詳細については後述する。そして、フロントガラスが曇り易いと判断された場合には、ステップS27に移る。その一方、フロントガラスが曇り易くないと判断された場合(フロントガラスが曇りにくい場合)には、ステップS28に移る。
【0107】
次に、ステップS27において、曇り易いときの除湿能力が判断される。この曇り易いときの除湿能力判断の詳細については後述する。そして、除湿能力が不足すると判断された場合には、ステップS30において、判定結果として禁止が出力される。その一方、除湿能力が不足しないと判断された場合(除湿能力が十分な場合)には、ステップS29において、判定結果として許可が出力される。
【0108】
また、ステップS28において、曇りにくいときの除湿能力が判断される。この曇りにくいときの除湿能力判断の詳細については後述する。そして、除湿能力が不足すると判断された場合には、ステップS30において、判定結果として禁止が出力される。その一方、除湿能力が不足しないと判断された場合(除湿能力が十分な場合)には、ステップS29において、判定結果として許可が出力される。
【0109】
(冷房負荷判断)
冷房負荷は、目標吹出温度TAOに基づいて判断される。目標吹出温度TAOは、車室内に供給される空調風の目標温度であり、車両用空調装置100に要求される冷房負荷に相当する。目標吹出温度TAOは以下の式(1)を用いて算出される。
【0110】
TAO=kset×Tset-kr×Tr-kam×Tam-ks×Ts+E ・・・(1)
式(1)において、Tsetは、温度設定スイッチ(図示省略)によって設定された車室内設定温度であり、Trは、内気温センサ51によって検出される内気温であり、Tamは、外気温センサ52によって検出される外気温であり、Tsは、日射センサ53によって検出される日射量である。kset、kr、kamおよびksは、各パラメータのゲインであり、Eは、補正用の定数である。
【0111】
そして、たとえば、目標吹出温度TAOが所定値未満の場合に冷房負荷が高いと判断され、目標吹出温度TAOが所定値以上の場合に冷房負荷が低いと判断される。冷房負荷が高いと判断された場合には、車室内の快適性に関する判断に移行され、冷房負荷が低いと判断された場合には、除湿能力に関する判断に移行される。この所定値は、冷房負荷の高低を判断するために予め設定された値である。なお、判断結果のハンチングを抑制するためにヒステリシスが設定されていてもよい。
【0112】
(冷房優先時間経過判断)
冷房優先時間Tpは、車両始動から車室内の冷房が優先して行われる時間(除湿許容時間)であり、電池冷却要求レベルが高い場合に短く設定されるとともに、車両停車中の場合に比べて車両走行中の場合に短く設定されている。これは、電池冷却要求レベルが低い場合に車室内の冷房を優先することが可能であり、車両走行中は車両停車中に比べて電池121の負荷が高いためである。たとえば、冷房優先時間Tpは以下の表1を用いて設定される。
【0113】
【0114】
表1において、t1~t3は予め設定された時間であり、t1<t2<t3である。停車時および走行時は、たとえば車速に基づいて判断される。すなわち、車速が所定値以上の場合に車両走行中と判断され、車速が所定値未満の場合に車両停車中と判断される。
【0115】
たとえば、電池冷却要求レベルが「1」であり、車両停車中の場合には、冷房優先時間Tpとしてt3が設定される。また、電池冷却要求レベルが「1」であり、車両走行中の場合には、冷房優先時間Tpとしてt3よりも短いt2が設定される。また、電池冷却要求レベルが「5」であり、車両停車中の場合には、冷房優先時間Tpとしてt3よりも短いt1が設定される。
【0116】
すなわち、電池冷却要求レベルと走行状態(停車または走行)とに基づいて冷房優先時間Tpが設定され、その設定された冷房優先時間Tpを経過したか否かが判断される。そして、車両始動からの経過時間が冷房優先時間Tpを過ぎた場合には、空調要件が許可となり、電池121の冷却が優先される。
【0117】
ここで、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、冷房優先時間Tpとして「0」が設定されることから、冷房優先時間Tpを経過したと判断されるので、空調要件が許可になる。すなわち、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、車両始動からの経過時間にかかわらず、電池121の冷却が優先される。
【0118】
(内気温判断)
内気温判断は、内気温を補正した判断用内気温Tsjに基づいて行われる。判断用内気温Tsjは以下の式(2)を用いて算出される。
【0119】
Tsj=Tr-A ・・・(2)
式(2)において、Trは、内気温センサ51によって検出される内気温であり、Aは、補正値であり、電池冷却要求レベルと走行状態とに基づいて設定される。たとえば、補正値Aは以下の表2を用いて設定される。
【0120】
【0121】
表2において、a1~a5は予め設定された値であり、a1<<a2<a3<a4<a5である。a1は絶対値が大きい負値であり、a2はゼロであり、a3~a5は正値である。走行状態は、たとえば上記と同様にして判断される。たとえば、電池冷却要求レベルが「1」であり、車両停車中の場合には、補正値Aとしてa1が設定される。
【0122】
そして、たとえば、判断用内気温Tsjが所定値未満の場合に内気温が低いと判断され、判断用内気温Tsjが所定値以上の場合に内気温が高いと判断される。内気温が高い場合は、車室内のクールダウンを行いたい場合である。内気温が低い場合は、車室内の温度が定常状態であり、クールダウンする必要がないので、空調要件が許可となり、電池121の冷却が許容される。この所定値は、内気温の高低を判断するために予め設定された値である。なお、判断結果のハンチングを抑制するためにヒステリシスが設定されていてもよい。
【0123】
また、電池冷却要求レベルが高くなるほど、補正値Aが大きくなるので、内気温が低いと判断されやすくなる。すなわち、この内気温判断では、電池冷却要求レベルが高くなるほど、空調要件が許可となりやすくなる。また、電池冷却要求レベルが「1」であり、車両停車中の場合には、補正値Aとしてa1が設定され、a1が絶対値が大きい負値であることから、内気温が高いと判断されるようになっている。すなわち、電池冷却要求レベルが「1」であり、車両停車中の場合には、車室内のクールダウンが優先されるようになっている。
【0124】
(蒸発器温度判断)
蒸発器温度判断は、判断用蒸発器温度Tejに基づいて行われる。判断用蒸発器温度Tejは以下の式(3)を用いて算出される。
【0125】
Tej=TE-(TEO+B) ・・・(3)
式(3)において、TEは、温度センサ44によって検出される室内熱交換器14の温度(蒸発器温度)である。TEOは、目標蒸発器温度であり、たとえば目標吹出温度TAOに基づいて設定される。Bは、補正値であり、電池冷却要求レベルに基づいて設定される。すなわち、判断用蒸発器温度Tejは、実際の蒸発器温度と目標蒸発器温度との偏差を電池冷却要求レベルに応じて補正したものである。たとえば、補正値Bは以下の表3を用いて設定される。
【0126】
【0127】
表3において、b1~b3は予め設定された値であり、b1<b2<<b3である。b3はb2に比べて非常に大きい値である。たとえば、電池冷却要求レベルが「1」である場合には、補正値Bとしてb1が設定される。
【0128】
そして、たとえば、判断用蒸発器温度Tejが所定値以上の場合に室内熱交換器14の温度が高いと判断され、判断用蒸発器温度Tejが所定値未満の場合に室内熱交換器14の温度が低いと判断される。室内熱交換器14の温度が高い場合(実際の蒸発器温度と目標蒸発器温度との偏差が大きい場合)には、空調要件が禁止となり、車室内のクールダウンが優先され、室内熱交換器14の温度が低い場合(実際の蒸発器温度と目標蒸発器温度との偏差が小さい場合)には、空調要件が許可となり、電池121の冷却が許容される。この所定値は、蒸発器温度の高低を判断するために予め設定された値である。なお、判断結果のハンチングを抑制するためにヒステリシスが設定されていてもよい。
【0129】
また、電池冷却要求レベルが高くなり、補正値Bが大きくなると、室内熱交換器14の温度が低いと判断されやすくなる。すなわち、この蒸発器温度判断では、電池冷却要求レベルが高い場合には、電池冷却要求レベルが低い場合に比べて、空調要件が許可となりやすくなる。また、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、補正値Bとしてb3が設定され、b3が非常に大きい値であることから、室内熱交換器14の温度が低いと判断されるようになっている。
【0130】
(曇り易さ判断)
曇り易さは、フロントガラス近傍の車室内の空気の相対湿度(以下、「ガラス表面相対湿度」という)RHWに基づいて判断される。ガラス表面相対湿度RHWは、フロントガラスの曇る可能性を表す指標であり、窓表面湿度センサ54の検出結果に基づいて算出される。
【0131】
そして、たとえば、ガラス表面相対湿度RHWが所定値以上の場合に曇り易いと判断され、ガラス表面相対湿度RHWが所定値未満の場合に曇りにくいと判断される。この所定値は、曇る可能性の高低を判断するために予め設定された値である。なお、判断結果のハンチングを抑制するためにヒステリシスが設定されていてもよい。
【0132】
(曇り易いときの除湿能力判断)
曇り易いときの除湿能力判断は、除湿能力Paに基づいて行われる。除湿能力Paは以下の式(4)を用いて算出される。
【0133】
Pa=TE-(TEO+C) ・・・(4)
式(4)において、TEおよびTEOは、上記式(3)のTEおよびTEOと同じである。すなわち、除湿能力Paは、実際の蒸発器温度と目標蒸発器温度との偏差を用いて算出される。Cは、補正値であり、電池冷却要求レベルに基づいて設定される。
【0134】
また、
図12に示すように、除湿能力判断用の下側閾値Thlaおよび上側閾値Thuaが設定されている。下側閾値Thlaは、上側閾値Thuaよりも小さい予め設定された値である。上側閾値Thuaは、電池冷却要求レベルに基づいて設定される。
【0135】
たとえば、補正値Cおよび上側閾値Thuaは以下の表4を用いて設定される。
【0136】
【0137】
表4において、c1~c3は予め設定された値であり、c1<c2<<c3である。c3はc2に比べて非常に大きい値である。たとえば、電池冷却要求レベルが「1」である場合には、補正値Cとしてc1が設定される。ct1およびct2は予め設定された値であり、ct1<ct2である。たとえば、電池冷却要求レベルが「1」である場合には、上側閾値Thuaとしてct1が設定される。
【0138】
そして、
図12に示すように、除湿能力Paが上側閾値Thua以上になってから下側閾値Thla以下になるまでの間は、除湿能力が不足すると判断され、除湿能力Paが下側閾値Thla以下になってから上側閾値Thua以上になるまでの間は、除湿能力が不足しないと判断される。除湿能力が不足する場合には、空調要件が禁止となり、除湿能力の確保が優先され、除湿能力が不足しない場合には、空調要件が許可となり、電池121の冷却が許容される。
【0139】
また、電池冷却要求レベルが高くなり、補正値Cが大きくなると、除湿能力が不足しないと判断されやすくなる。すなわち、この除湿能力判断では、電池冷却要求レベルが高い場合には、電池冷却要求レベルが低い場合に比べて、空調要件が許可となりやすくなる。また、電池冷却要求レベルが高い場合には、上側閾値Thuaが大きいので、除湿可から除湿不可に遷移しにくくなっている。すなわち、電池冷却要求レベルが高い場合には、電池冷却要求レベルが低い場合に比べて、空調要件が許可から禁止に変化しにくくなっている。また、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、補正値Cとしてc3が設定され、c3が非常に大きい値であることから、除湿能力が不足しないと判断されるようになっている。つまり、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、実際の除湿能力にかかわらず、強制的に除湿能力が不足しないと判断され、空調要件が許可となり、電池121の冷却が優先される。
【0140】
(曇りにくいときの除湿能力判断)
曇りにくいときの除湿能力判断は、除湿能力Pbに基づいて行われる。除湿能力Pbは以下の式(5)を用いて算出される。
【0141】
Pb=TE-(TEO+D) ・・・(5)
式(5)において、TEおよびTEOは、上記式(3)のTEおよびTEOと同じである。すなわち、除湿能力Pbは、実際の蒸発器温度と目標蒸発器温度との偏差を用いて算出される。Dは、補正値であり、電池冷却要求レベルに基づいて設定される。
【0142】
また、
図13に示すように、除湿能力判断用の下側閾値Thlbおよび上側閾値Thubが設定されている。下側閾値Thlbは、上側閾値Thubよりも小さい予め設定された値である。上側閾値Thubは、電池冷却要求レベルに基づいて設定される。
【0143】
たとえば、補正値Dおよび上側閾値Thubは以下の表5を用いて設定される。
【0144】
【0145】
表5において、d1~d3は予め設定された値であり、d1<d2<<d3である。d3はd2に比べて非常に大きい値である。また、d1>c1であり、d2>c2であり、d3=c3である。たとえば、電池冷却要求レベルが「1」である場合には、補正値Dとしてd1が設定される。dt1およびdt2は予め設定された値であり、dt1<dt2である。また、dt1>ct1であり、dt2>ct2である。たとえば、電池冷却要求レベルが「1」である場合には、上側閾値Thubとしてdt1が設定される。
【0146】
そして、
図13に示すように、除湿能力Pbが上側閾値Thub以上になってから下側閾値Thlb以下になるまでの間は、除湿能力が不足すると判断され、除湿能力Pbが下側閾値Thlb以下になってから上側閾値Thub以上になるまでの間は、除湿能力が不足しないと判断される。除湿能力が不足する場合には、空調要件が禁止となり、除湿能力の確保が優先され、除湿能力が不足しない場合には、空調要件が許可となり、電池121の冷却が許容される。
【0147】
また、電池冷却要求レベルが高くなり、補正値Dが大きくなると、除湿能力が不足しないと判断されやすくなる。すなわち、この除湿能力判断では、電池冷却要求レベルが高い場合には、電池冷却要求レベルが低い場合に比べて、空調要件が許可となりやすくなる。また、電池冷却要求レベルが高い場合には、上側閾値Thubが大きいので、除湿可から除湿不可に遷移しにくくなっている。すなわち、電池冷却要求レベルが高い場合には、電池冷却要求レベルが低い場合に比べて、空調要件が許可から禁止に変化しにくくなっている。また、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、補正値Dとしてd3が設定され、d3が非常に大きい値であることから、除湿能力が不足しないと判断されるようになっている。つまり、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、実際の除湿能力にかかわらず、強制的に除湿能力が不足しないと判断され、空調要件が許可となり、電池121の冷却が優先される。
【0148】
さらに、d1>c1であり、d2>c2であることから、曇りにくい場合には曇り易い場合に比べて、除湿能力が不足しないと判断されやすい。また、dt1>ct1であり、dt2>ct2であることから、曇りにくい場合には曇り易い場合に比べて、除湿可から除湿不可に遷移しにくい。
【0149】
-効果-
本実施形態では、上記のように、ヒートポンプシステム1の運転モードに応じて電池121の冷却を許可する条件を設定することによって、各運転モードに応じた適切なタイミングで電池121の冷却が許可されることにより、電池121の劣化を抑制しながら、車室内の空調快適性の向上を図ることができる。
【0150】
具体的には、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードの場合には、電池冷却の可否が電池冷却要求レベルに基づいて判断される。そして、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合に電池冷却が許可され、電池冷却要求レベルが「5」以下の場合に電池冷却が禁止される。すなわち、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードの場合には、電池冷却要求レベルが、電池121の冷却が即時に必要なレベル(「6」以上)の場合に、電池冷却が許可される。これにより、電池121の冷却が即時に必要とされるまで、車室内が暖房または除湿暖房されるので、車室内の空調快適性の向上を図ることができる。なお、電池121の冷却が即時に必要とされた場合には、電池冷却が許可されるので、電池121の劣化を抑制することができる。
【0151】
また、冷房モードの場合には、吹出口39aの開閉状態、冷房負荷、車両始動からの冷房優先時間、内気温、室内熱交換器14の温度、フロントガラスの曇り易さ、および、除湿能力に基づいて、電池冷却の可否が判断される。
【0152】
たとえば、冷房モード時に、吹出口39aが開状態である場合には、除湿能力が不足しないときに電池冷却が許可され、除湿能力が不足するときに電池冷却が禁止される。また、冷房モード時に、吹出口39aが閉状態であり、冷房負荷が低い場合には、除湿能力が不足しないときに電池冷却が許可され、除湿能力が不足するときに電池冷却が禁止される。これにより、除湿可能な場合に電池冷却を許容するとともに、除湿不可の場合に電池冷却を禁止して除湿能力の確保を優先することができる。また、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、実際の除湿能力にかかわらず、強制的に除湿能力が不足しないと判断されるようにすることによって、電池冷却が許可されるので、電池冷却を優先して行うことができる。なお、曇り易さに応じて除湿能力を判断することによって、除湿能力の判断精度の向上を図ることができる。
【0153】
また、冷房モード時に、吹出口39aが閉状態であり、冷房負荷が高く、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎている場合には、電池冷却が許可されるので、電池冷却を優先して行うことができる。また、冷房優先時間は、電池冷却要求レベルが高い場合に短く設定されるとともに、車両停車中の場合に比べて車両走行中の場合に短く設定されている。これにより、電池121の温度および負荷に応じて適切な冷房優先時間を設定することができる。また、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には、冷房優先時間として「0」が設定されることにより、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎていると判断されることによって、電池冷却が許可されるので、電池冷却を優先して行うことができる。
【0154】
また、冷房モード時に、吹出口39aが閉状態であり、冷房負荷が高く、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎておらず、内気温が低い場合(内気温が定常状態であり、クールダウンする必要がない場合)には、電池冷却が許可される。すなわち、内気温が低い場合には、車室内の快適性が十分であることから、電池冷却を許容することができる。
【0155】
また、冷房モード時に、吹出口39aが閉状態であり、冷房負荷が高く、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎておらず、内気温が高く、室内熱交換器14の温度が低い場合(実際の蒸発器温度と目標蒸発器温度との偏差が小さい場合)には、電池冷却が許可される。すなわち、室内熱交換器14の温度が低い場合には、冷房能力が十分であることから、電池冷却を許容することができる。
【0156】
また、冷房モード時に、吹出口39aが閉状態であり、冷房負荷が高く、車両始動からの経過時間が冷房優先時間を過ぎておらず、内気温が高く、室内熱交換器14の温度が高い場合には、電池冷却が禁止されるので、車室内の快適性の改善を優先することができる。
【0157】
したがって、冷房モードの場合には、上記したように適切なタイミングで電池冷却が許可されることによって、電池121の劣化を抑制しながら、車室内の空調快適性の向上を図ることができる。なお、冷房モードでも、電池冷却要求レベルが「6」以上の場合には電池冷却が許可されるようになっている。
【0158】
また、除霜モードの場合には、電池冷却が禁止されることにより、ヒートポンプシステム1の能力回復を優先することができる。
【0159】
また、マイルームモードおよびプレ空調モードの場合には、電池冷却が禁止されることにより、車室内の快適性を優先することができる。
【0160】
なお、アイドルモードの場合には、内燃機関110の排熱を利用して車室内を暖房可能であることから、電池121の冷却が許可される。
【0161】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0162】
たとえば、上記実施形態では、車両走行用の駆動力源として内燃機関110および電動機(図示省略)を備えるプラグインハイブリッド車両に本発明の車両用空調装置が適用される例を示したが、これに限らず、車両走行用の駆動力源として電動機のみを備える電動車両に本発明の車両用空調装置が適用されていてもよい。
【0163】
また、上記実施形態では、中間熱交換器12が設けられ、その中間熱交換器12での凝縮熱が冷却水を介して送風空気に伝達される例を示したが、これに限らず、中間熱交換器に代えて、室内コンデンサが室内空調ユニットのケーシングに設けられ、室内コンデンサでの凝縮熱によって送風空気が暖められるようにしてもよい。この場合、室内コンデンサは、本発明の「暖房用熱交換器」の一例である。
【0164】
また、上記実施形態では、電池用熱交換器16での気化熱によって電池121が直接冷却される例を示したが、これに限らず、電池冷却用の冷却水回路が設けられ、その冷却水回路の冷却水を電池用熱交換器で冷やすようにしてもよい。すなわち、電池が冷却水を介して間接的に冷やされるようにしてもよい。
【0165】
また、上記実施形態では、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モード時に電池冷却を許可する条件が暖房モード時に電池冷却を許可する条件と同じである例を示したが、これに限らず、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モード時に電池冷却を許可する条件が異なっていてもよい。
【0166】
また、上記実施形態では、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードの場合に、電池冷却の可否が電池冷却要求レベルに基づいて判断される例を示したが、これに限らず、暖房モード、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードの場合に、電池冷却の可否が電池冷却要求レベル以外の条件に基づいて判断されるようにしてもよい。
【0167】
また、上記実施形態では、冷房モードの場合に、デフロスタ吹出口の開閉状態、冷房負荷、車両始動からの冷房優先時間、内気温、室内熱交換器14の温度、フロントガラスの曇り易さ、および、除湿能力に基づいて、電池冷却の可否が判断される例を示したが、これに限らず、冷房モードの場合に、デフロスタ吹出口の開閉状態、冷房負荷、車両始動からの冷房優先時間、内気温、室内熱交換器の温度、フロントガラスの曇り易さ、および、除湿能力のうちの少なくとも一つに基づいて、電池冷却の可否が判断されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、車両に搭載されたヒートポンプシステムと、ヒートポンプシステムを制御する制御装置とを備える車両用空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0169】
1 ヒートポンプシステム
2 エアコンECU(制御装置)
11 圧縮機
12 中間熱交換器(暖房用熱交換器)
13 室外熱交換器
14 室内熱交換器
16 電池用熱交換器
20 冷却水回路
23 ヒータコア
39a 吹出口(デフロスタ吹出口)
100 車両用空調装置
121 電池