(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/20 535
(21)【出願番号】P 2020013465
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】古澤 尉訓
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128507(JP,A)
【文献】特開2016-156951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の定着部材を有し、加圧状態において、第1の付勢部材の付勢力によって第1、第2の定着部材により媒体が挟持され、媒体上の現像剤像が定着させられ、リリース状態において、第1、第2の定着部材が離間させられる定着装置において、
(a)前記第1の定着部材は、前記第2の定着部材と対向させて走行自在に配設された無端の定着ベルト、及び該定着ベルト内に配設され、定着ベルトを加熱する加熱ユニットを備え、
(b)該加熱ユニットは、加熱部材、該加熱部材と定着ベルトとの間に配設され、加熱部材によって発生させられた熱を拡散する熱拡散部材、前記加熱部材と熱拡散部材との間に配設され、熱の伝達を促進させる熱伝達促進剤、及び前記リリース状態において、付勢力によって熱拡散部材を加熱部材に向けて付勢する第2の付勢部材を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
(a)前記加熱ユニットはフレームを備え、
(b)前記第2の付勢部材によってフレームと熱拡散部材とが連結される請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
(a)前記加熱ユニットは前記フレームに取り付けられたホルダを備え、
(b)前記第2の付勢部材の付勢力によって、加熱部材及び熱拡散部材がホルダに押し付けられる請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2の付勢部材は、前記加熱ユニットの長手方向における一端に配設される請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱ユニットの長手方向における他端において、前記熱拡散部材は熱伝達促進剤の粘着力によって保持される請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱ユニットの長手方向における他端において、前記熱拡散部材とホルダとが係止させられる請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第2の付勢部材は、前記加熱ユニットの長手方向における両端に配設される請求項3に記載の定着装置。
【請求項8】
前記第1の付勢部材は、前記加熱ユニットを下方に向けて付勢し、第2の定着部材に押し付ける請求項2~7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記加熱ユニットの長手方向における他端に、加熱部材に電流を供給するコネクタが配設される請求項4~7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記請求項1~9のいずれか1項に記載の定着装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、電子写真式のプリンタにおいては、プリンタの本体、すなわち、装置本体に、画像形成ユニット、LEDヘッド、転写ユニット、定着装置としての定着器等が配設され、前記画像形成ユニットに、感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、供給ローラ、トナーカートリッジ等が配設される。
【0003】
そして、前記画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面がLEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、現像ローラによって静電潜像にトナーが付着させられてトナー像が形成され、該トナー像が、転写ユニットによって媒体としての用紙に転写され、定着器において定着させられて画像が形成され、印刷が行われる。
【0004】
ところで、定着器として、定着ベルト内にヒータが配設され、該ヒータによって定着ベルトが加熱され、定着ベルトとバックアップローラとの間に形成されたニップ部においてトナー像が加熱され、加圧されて用紙に定着させられるベルト加熱方式の定着器が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の定着器においては、定着ベルトが均一に加熱されず、用紙にトナー像を良好に定着させることができず、その結果、画像品位が低下してしまう。
【0007】
図2は従来の加圧状態に置かれているときの定着器を示す概念図、
図3は従来のリリース状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【0008】
図において、18はベルト加熱方式の定着器、21はベルトユニット、22はバックアップローラ、51は無端の定着ベルト、53は該定着ベルト51内に配設されたヒータユニットである。
【0009】
該ヒータユニット53は、フレームFr1、該フレームFr1内に配設され、定着ベルト51を加熱するヒータHt1、該ヒータHt1と定着ベルト51との間に配設され、ヒータHt1によって発生させられた熱を拡散し、定着ベルト51を加熱する熱拡散部材55、前記ヒータHt1及び熱拡散部材55をフレームFr1に対して保持するホルダFd1等を有する。前記ヒータHt1の熱を熱拡散部材55に効率良く伝達するために、熱拡散部材55の表面にグリスが塗布される。
【0010】
定着が行われる定着器18の加圧状態においては、フレームFr1の両端に配設されたスプリングsp1、sp2の付勢力によってフレームFr1が下方に移動させられ、ヒータユニット53が定着ベルト51を介してバックアップローラ22に押し付けられ、コネクタ57を介してヒータHt1に電流が供給されると、定着ベルト51とバックアップローラ22との間に形成されたニップ部において、用紙上のトナー像が加熱され、加圧されて用紙に定着させられる。
【0011】
一方、定着が行われない定着器18のリリース状態においては、図示されないカム等の機構によってスプリングsp1、sp2の付勢力に抗してフレームFr1が上方に移動させられる。このとき、ホルダFd1と熱拡散部材55との係止部En1、En2の製造誤差等によって、ヒータHt1と熱拡散部材55との間のクリアランスCLにばらつきが生じると、グリスの塗布状態にむらが発生してしまう。
【0012】
その結果、定着器18が加圧状態に置かれ、ヒータHt1に電流が供給されたときに、定着ベルト51が均一に加熱されず、用紙にトナー像を良好に定着させることができず、画像品位が低下してしまう。
【0013】
本発明は、前記従来の定着器18の問題点を解決して、媒体に現像剤像を良好に定着させることができ、画像品位を向上させることができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために、本発明の定着装置においては、第1、第2の定着部材を有し、加圧状態において、第1の付勢部材の付勢力によって第1、第2の定着部材により媒体が挟持され、媒体上の現像剤像が定着させられ、リリース状態において、第1、第2の定着部材が離間させられるようになっている。
【0015】
そして、前記第1の定着部材は、前記第2の定着部材と対向させて走行自在に配設された無端の定着ベルト、及び該定着ベルト内に配設され、定着ベルトを加熱する加熱ユニットを備える。
【0016】
また、該加熱ユニットは、加熱部材、該加熱部材と定着ベルトとの間に配設され、加熱部材によって発生させられた熱を拡散する熱拡散部材、前記加熱部材と熱拡散部材との間に配設され、熱の伝達を促進させる熱伝達促進剤、及び前記リリース状態において、付勢力によって熱拡散部材を加熱部材に向けて付勢する第2の付勢部材を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、定着装置においては、第1、第2の定着部材を有し、加圧状態において、第1の付勢部材の付勢力によって第1、第2の定着部材により媒体が挟持され、媒体上の現像剤像が定着させられ、リリース状態において、第1、第2の定着部材が離間させられるようになっている。
【0018】
そして、前記第1の定着部材は、前記第2の定着部材と対向させて走行自在に配設された無端の定着ベルト、及び該定着ベルト内に配設され、定着ベルトを加熱する加熱ユニットを備える。
【0019】
また、該加熱ユニットは、加熱部材、該加熱部材と定着ベルトとの間に配設され、加熱部材によって発生させられた熱を拡散する熱拡散部材、前記加熱部材と熱拡散部材との間に配設され、熱の伝達を促進させる熱伝達促進剤、及び前記リリース状態において、付勢力によって熱拡散部材を加熱部材に向けて付勢する第2の付勢部材を有する。
【0020】
この場合、定着装置のリリース状態において、第2の付勢部材の付勢力によって熱拡散部材が加熱部材に向けて付勢され、密着させられるので、加熱部材と熱拡散部材との間に配設された熱伝達促進剤の塗布状態にむらが発生するのを防止することができる。
【0021】
したがって、定着装置が加圧状態に置かれ、加熱部材に電流が供給されたときに、定着ベルトを均一に加熱することができるので、媒体に現像剤像を良好に定着させることができ、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【
図2】従来の加圧状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【
図3】従来のリリース状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態における定着器の斜視図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す横断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す要部斜視図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す第1の要部拡大図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す第2の要部拡大図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す横断面図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す縦断面図である。
【
図13】本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す第1の要部拡大図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す第2の要部拡大図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【
図16】本発明の第2の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【
図17】本発明の第3の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、定着装置としての定着器及び画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0024】
なお、各図において、x軸正方向は用紙Pの搬送方向に対して逆方向、x軸負方向は用紙Pの搬送方向、y軸正方向は用紙Pの搬送方向における上流側から見たときの右方向、y軸負方向は用紙Pの搬送方向における上流側から見たときの左方向、z軸正方向はプリンタ10の高さ方向である。
【0025】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるにおけるプリンタの概念図である。
【0026】
図において、10はプリンタ、Bdは該プリンタ10の本体、すなわち、装置本体、Csはプリンタ10の筐体であり、該筐体Csの下部に媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11に媒体としての用紙Pが積載される。前記給紙カセット11の前端に隣接させて給紙機構12が配設される。
【0027】
該給紙機構12は、用紙カセット11内の最も上の用紙Pを繰り出す図示されないホッピングローラ、繰り出された用紙Pを媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に給紙する給紙ローラ13、及び該給紙ローラ13と対向させて配設され、用紙Pの重送を防止する分離部材14から成る。
【0028】
前記用紙搬送路Rt1における給紙機構12より下流側にレジストローラ対m1が配設され、該レジストローラ対m1より下流側に画像形成部Q1が配設される。
【0029】
該画像形成部Q1は、装置本体Bdに対してそれぞれ着脱自在に配設されたブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16C、該各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの下方に配設された転写ユニットu1、並びに露光装置としての図示されないLEDヘッドから成る。
【0030】
前記各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cは、像担持体としての感光体ドラム31、帯電装置としての帯電ローラ32、現像器33、現像剤収容部としてのトナーカートリッジ34、クリーニング部材としてのクリーニングブレード35等を備え、トナーカートリッジ34に現像剤としてのトナーが収容される。また、各感光体ドラム31の上方に、前記LEDヘッドが感光体ドラム31と対向させて配設される。
【0031】
前記転写ユニットu1は、第1の回転ローラとしての駆動ローラr1、第2の回転ローラとしての従動ローラr2、駆動ローラr1と従動ローラr2との間に走行自在に張設されたベルト部材としての転写ベルト17、及び該転写ベルト17を挟んで前記各感光体ドラム31と対向させて回転自在に配設され、感光体ドラム31との間に転写部を形成する転写部材としての図示されない転写ローラを備える。
【0032】
前記用紙搬送路Rt1における画像形成部Q1より下流側に定着器18が配設される。本実施の形態において、該定着器18は、ベルト加熱方式の定着器であり、ハウジングHs内に、第1の定着部材としてのベルトユニット21、及び第2の定着部材としてのバックアップローラ22を備える。加圧状態において、ベルトユニット21及びバックアップローラ22によって用紙Pが挟持され、ベルトユニット21とバックアップローラ22との間にニップ部が形成され、リリース状態において、ベルトユニット21とバックアップローラ22とが離間させられる。
【0033】
前記用紙搬送路Rt1における定着器18より下流側に搬送ローラ37が配設され、該搬送ローラ37より下流側に排出ローラ38が配設される。
【0034】
なお、本実施の形態においては、像担持体として、感光体ドラム31が使用されるが、ベルト状の感光体を使用することができる。
【0035】
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
【0036】
上位装置としての図示されないホストコンピュータからプリンタ10に印刷命令が送られると、用紙カセット11内の最も上の用紙Pは、前記ホッピングローラによって繰り出され、給紙機構12によって1枚ずつ分離させられて用紙搬送路Rt1に給紙され、レジストローラ対m1によって搬送され、画像形成部Q1に供給される。
【0037】
該画像形成部Q1において、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの感光体ドラム31の表面が、帯電ローラ32によって一様に帯電させられ、LEDヘッドによって露光され、感光体ドラム31の表面に潜像としての静電潜像が形成され、該静電潜像が現像器33によって現像されて、現像剤像としてのトナー像が形成される。
【0038】
画像形成部Q1に供給された用紙Pは、転写ベルト17が走行させられるのに伴って搬送され、各感光体ドラム31と各転写ローラとの間を通過し、このとき、該各転写ローラによって、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて各感光体ドラム31上に形成された各色のトナー像が用紙Pに順次重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。各感光体ドラム31においてトナー像が転写された後に残留したトナーはクリーニングブレード35によって掻き取られ、トナーが掻き取られた後の感光ドラム31は、帯電ローラ32によって再び帯電させられる。
【0039】
カラーのトナー像が形成された用紙Pは定着器18に送られる。このとき、定着器18は加圧状態に置かれ、ニップ部において用紙P上のカラーのトナー像が加熱され、加圧されて用紙Pに定着させられ、用紙Pにカラーの画像が形成される。
【0040】
定着器18から排出された用紙Pは、搬送ローラ37によって搬送された後、排出ローラ38によって装置本体Bd外に排出され、スタッカSt1に積載される。
【0041】
次に、定着器18について説明する。
【0042】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す概念図、
図5は本発明の第1の実施の形態における定着器の斜視図、
図6は本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す横断面図、
図7は本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す縦断面図、
図8は本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す要部斜視図、
図9は本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す第1の要部拡大図、
図10は本発明の第1の実施の形態における加圧状態に置かれているときの定着器を示す第2の要部拡大図、
図11は本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す縦断面図、
図12は本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す縦断面図、
図13は本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す第1の要部拡大図、
図14は本発明の第1の実施の形態におけるリリース状態に置かれているときの定着器を示す第2の要部拡大図である。
【0043】
なお、
図9は加圧状態における
図7の領域Ar1の拡大図、
図10は加圧状態における
図7の領域Ar2の拡大図、
図13はリリース状態における
図12の領域Ar1の拡大図、
図14はリリース状態における
図12の領域Ar2の拡大図である。
【0044】
図において、18は定着器、21はベルトユニット、22はバックアップローラであり、前記ベルトユニット21は、前記ハウジングHs(
図4)内において上下方向に移動自在に配設され、前記バックアップローラ22と対向させて走行自在に配設された無端の定着ベルト51、及び該定着ベルト51内に配設され、定着ベルト51を加熱する加熱ユニットとしてのヒータユニット61を備える。
【0045】
前記バックアップローラ22は、両端のシャフトsh1を中心にしてハウジングHsに対して回転自在に支持され、定着用の駆動部としての図示されない定着モータからの回転を受けて回転させられる。
【0046】
前記定着ベルト51は、バックアップローラ22の回転に伴って走行させられ、バッファ金属層又は樹脂層から成る基材、該基材を包囲して形成された、シリコーンゴムから成る弾性層、該弾性層を包囲して形成された表層としてのPFAチューブ等を有する。PFAチューブは、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体から成る樹脂によって形成される。
【0047】
前記ヒータユニット61は、
図1及び3に示されるように、前記ハウジングHsによって上下方向に移動自在に支持されたフレームFr1、該フレームFr1内に配設され、抵抗発熱体から成り、定着ベルト51を加熱する加熱部材としてのヒータHt1、該ヒータHt1と定着ベルト51との間において、定着ベルト51の内周面と当接させて配設された熱拡散部材55、前記フレームFr1に取り付けられ、前記ヒータHt1及び熱拡散部材55を保持するホルダFd2、前記フレームFr1の上に配設され、所定の付勢力によってヒータユニット61を下方に向けて付勢し、定着ベルト51を介してバックアップローラ22に押し付ける第1の付勢部材としてのスプリングsp11、sp12、フレームFr1と熱拡散部材55とを連結し、所定の付勢力によってヒータHt1及び熱拡散部材55をホルダFd2に押し付ける第2の付勢部材としてのスプリングsp13等を備える。
【0048】
なお、ヒータHt1に電流が供給されて発熱するのに伴って、ホルダFd2、ヒータHt1及び熱拡散部材55が、それぞれの材料に応じた熱膨張率で膨張する。このとき、前記ホルダFd2、前記ヒータHt1及び熱拡散部材55がねじ等の固定部材によって連結されていると、ヒータユニット61が変形してしまう。そこで、本実施の形態においては、ホルダFd2、ヒータHt1及び熱拡散部材55が、互いに独立に熱収縮することができるように、スプリングsp13の付勢力によって連結される。
【0049】
該スプリングsp13は、ヒータユニット61の長手方向における所定の箇所、本実施の形態においては、ヒータユニット61の一端(y軸負方向の端部)に配設される。
【0050】
また、前記ヒータHt1の長手方向における所定の箇所、本実施の形態においては、ヒータHt1の他端(y軸正方向の端部)にコネクタ57が取り付けられ、図示されない電源装置からの電流がコネクタ57を介してヒータHt1に供給される。前記コネクタ57は、ヒータHt1を挟持する第1、第2のコネクタ部65、66、及び該第1、第2のコネクタ部65、66を保持するコネクタホルダ68から成る。
【0051】
前記ホルダFd2は、液晶ポリマー等の樹脂によって形成され、ヒータHt1と対向する面に凹部63(
図6)が形成され、該凹部63に温度検出部としての温度センサ64が配設される。
【0052】
電源装置からヒータHt1に電流が供給されてヒータHt1がオン状態になると、定着ベルト51が加熱され、温度センサ64によって検出された定着ベルト51の温度が設定された定着温度に到達すると、用紙Pが定着器18に送られる。
【0053】
前記熱拡散部材55は、ヒータHt1によって発生させられた熱を拡散し、定着ベルト51を均一に加熱する。そのために、熱拡散部材55は、熱伝導性の高い材料、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料、本実施の形態においては、アルミニウムによって形成される。
【0054】
前記ヒータHt1の熱を熱拡散部材55に効率良く伝達するために、前記ヒータHt1と熱拡散部材55との間、本実施の形態においては、熱拡散部材55の表面に、熱の伝達を促進する熱伝達促進剤としてのグリスgr(
図6)が塗布される。
【0055】
前記スプリングsp11、sp12は、フレームFr1の所定の箇所、本実施の形態においては、フレームFr1の両端に当接させて配設され、スプリングsp13は、ヒータユニット61の長手方向における一端(y軸負方向の端部)において、フレームFr1と熱拡散部材55とを連結して配設される。
【0056】
前記ベルトユニット21を前記ハウジングHs内において上下方向に移動させるために、フレームFr1に図示されない昇降機構が配設される。該昇降機構は、フレームFr1の下部に回転自在に配設されたカム、及び該カムを回転させる昇降用の駆動部としての昇降モータを備え、該昇降モータを駆動し、カムを回転させると、カム面の形状に応じてフレームFr1が前記スプリングsp11、sp12の付勢力に抗して上方に押され、ベルトユニット21が上方に移動させられたり、フレームFr1が前記スプリングsp11、sp12の付勢力によって下方に押され、ベルトユニット21が下方に移動させられたりする。
【0057】
なお、前記カムに代えて、フレームFr1に配設されたナット、及び昇降モータの出力軸に連結され、ナットと螺合させられたねじによって昇降機構を形成することもできる。その場合、昇降モータが正方向及び逆方向に回転させられることによって、ベルトユニット21が上下方向に移動させられる。
【0058】
前記定着器18の加圧状態においては、フレームFr1の両端に配設されたスプリングsp11、sp12の付勢力によってフレームFr1が下方に押され、ヒータユニット61が下降させられ、定着ベルト51を介してバックアップローラ22に押し付けられ、これにより、
図9及び10に示されるように、熱拡散部材55はヒータHt1に密着させられる。
【0059】
そして、コネクタ57を介してヒータHt1に電流が供給され、定着ベルト51とバックアップローラ22との間に形成されたニップ部において、用紙P上のトナー像が加熱され、加圧されて用紙Pに定着させられる。
【0060】
一方、定着器18のリリース状態においては、前記昇降機構によってスプリングsp11、sp12の付勢力に抗してフレームFr1が上方に押され、ヒータユニット61が上昇させられ、バックアップローラ22から離間させられる。これにより、ニップ部において、定着ベルト51は丸みを帯びた形状になる。
【0061】
このとき、ヒータHt1は、ヒータユニット61の長手方向における他端(y軸正方向の端部)において、第1、第2のコネクタ部65、66によって挟持され、ヒータユニット61の長手方向における一端(y軸負方向の端部)において、スプリングsp13の付勢力によって熱拡散部材55と共にホルダFd2に押し付けられる。
【0062】
したがって、熱拡散部材55は、ヒータユニット61の長手方向における他端においてグリスgrの粘着力によって保持され、ヒータユニット61の長手方向における一端においてスプリングsp13の付勢力によって上方に向けて付勢され、全域においてヒータHt1に密着させられる。すなわち、
図13及び14に示されるように、熱拡散部材55はヒータHt1に密着させられる。
【0063】
このように、本実施の形態においては、定着器18のリリース状態において、スプリングsp13の付勢力によって熱拡散部材55がヒータHt1に密着させられるので、ヒータHt1と熱拡散部材55との間に塗布されたグリスgrにむらが発生するのを防止することができる。
【0064】
したがって、定着器18が加圧状態に置かれ、ヒータHt1に電流が供給されたときに、定着ベルト51を均一に加熱することができるので、用紙Pにトナー像を良好に定着させることができ、画像品位を向上させることができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0066】
図15は本発明の第2の実施の形態における定着器の加圧状態を示す概念図、
図16は本発明の第2の実施の形態における定着器のリリース状態を示す概念図である。
【0067】
図において、61は加熱ユニットとしてのヒータユニットであり、該ヒータユニット61は、ハウジングHs(
図4)によって上下方向に移動自在に支持されたフレームFr1、該フレームFr1内に配設され、抵抗発熱体から成り、定着ベルト51を加熱する加熱部材としてのヒータHt1、該ヒータHt1と定着ベルト51との間において、定着ベルト51の内周面と当接させて配設された熱拡散部材56、前記ヒータHt1及び熱拡散部材56をフレームFr1に対して上下方向に移動自在に保持するホルダFd3、前記フレームFr1の上に配設され、所定の付勢力によってヒータユニット61を下方に向けて付勢し、定着ベルト51を介して第2の定着部材としてのバックアップローラ22に押し付ける第1の付勢部材としてのスプリングsp11、sp12、フレームFr1と熱拡散部材56とを連結し、所定の付勢力によってヒータHt1及び熱拡散部材56をホルダFd3に押し付ける第2の付勢部材としてのスプリングsp13等を備える。
【0068】
該スプリングsp13は、ヒータユニット61の長手方向における所定の箇所、本実施の形態においては、一端(y軸負方向の端部)において、フレームFr1と熱拡散部材56とを連結して配設される。
【0069】
また、熱拡散部材56及びホルダFd3の長手方向における所定の箇所、本実施の形態においては、他端(y軸正方向の端部)に係止部En3が形成され、熱拡散部材56がホルダFd3によって保持される。そのために、熱拡散部材56に、係止部材としてのフック71が突出させて形成され、ホルダFd3に、被係止部材としての切欠き72が形成され、フック71と切欠き72とが係止させられる。
【0070】
この場合、熱拡散部材56は、ヒータユニット61の他端においてフック71と切欠き72との係止によって保持されるとともに、熱伝達促進剤としてのグリスgr(
図6)の粘着力によって保持され、ヒータユニット61の一端においてスプリングsp13の付勢力によって上方に向けて付勢され、全域においてヒータHt1に密着させられるので、定着器18が加圧状態に置かれ、ヒータHt1に電流が供給されたときに、定着ベルト51を均一に加熱することができる。
【0071】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0072】
図17は本発明の第3の実施の形態における定着器のリリース状態を示す概念図である。
【0073】
図において、61は加熱ユニットとしてのヒータユニットであり、該ヒータユニット61は、ハウジングHs(
図4)によって上下方向に移動自在に支持されたフレームFr1、該フレームFr1内に配設され、抵抗発熱体から成り、定着ベルト51を加熱する加熱部材としてのヒータHt1、該ヒータHt1と定着ベルト51との間において、定着ベルト51の内周面と当接させて配設された熱拡散部材55、前記ヒータHt1及び熱拡散部材55を保持するホルダFd2、前記フレームFr1の上に配設され、所定の付勢力によってヒータユニット61を下方に向けて付勢し、定着ベルト51を介して第2の定着部材としてのバックアップローラ22に押し付ける第1の付勢部材としてのスプリングsp11、sp12、フレームFr1と熱拡散部材55とを連結し、所定の付勢力によってヒータHt1及び熱拡散部材55をホルダFd2に押し付ける第2の付勢部材としてのスプリングsp14等を備える。
【0074】
該スプリングsp14は、ヒータユニット61の所定の箇所、本実施の形態においては、ヒータユニット61の両端において、フレームFr1と熱拡散部材55とを連結して配設される。
【0075】
この場合、熱拡散部材55は、熱伝達促進剤としてのグリスgr(
図6)の粘着力によって保持されるとともに、ヒータユニット61の両端においてスプリングsp14の付勢力によって上方に向けて付勢され、全域においてヒータHt1に密着させられるので、定着装置としての定着器18が加圧状態に置かれ、ヒータHt1に電流が供給されたときに、定着ベルト51を均一に加熱することができる。
【0076】
前記各実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0077】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0078】
18 定着器
21 ベルトユニット
22 バックアップローラ
51 定着ベルト
55、56 熱拡散部材
61 ヒータユニット
gr グリス
Ht1 ヒータ
P 用紙
sp11~sp14 スプリング