(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2020017735
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】川島 章裕
(72)【発明者】
【氏名】増田 朋也
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-291038(JP,A)
【文献】実開昭62-049451(JP,U)
【文献】特開2016-016684(JP,A)
【文献】特開2001-105991(JP,A)
【文献】特開平09-104295(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートの側方に配される乗物用内装材であって、
乗物室側を向く表面において、前記乗物用シートを構成するシートクッションの側面に接触する、あるいは、略隙間なく近接するシート接面部と、
前後方向に延びるとともに前記シート接面部から前記シートクッションの側面に向かって突出して形成された突条と、
を備え、
前記突条が、前記シートクッションの側面を弾性変形させてその側面に食い込んだ状態で配され
、
前記シート接面部は、当該乗物用内装材の下側の外縁を含んでおり、
前記外縁が、車両前後方向に延びる前後方向延伸部と、前記前後方向延伸部の前端から下方に向かって延びる上下方向延伸部と、を有し、
前記突条は、前記前後方向延伸部および前記上下方向延伸部に沿って筋状に形成されている乗物用内装材。
【請求項2】
当該乗物用内装材は、乗物の側壁を形成する本体部と、前記シートクッションの側面形状に倣って前記本体部から前記シートクッションに向かって膨出した膨出部と、を有し、
前記膨出部は、膨出側に形成された壁面部が、前記シート接面部とされ、前記シート接面部の外縁を前記本体部に連結する部分である連結部が、前記シートクッションの側方において上面側から前方側にわたって延びている形状とされている請求項
1に記載の乗物用内装材。
【請求項3】
前記膨出部は、前方下端側に、前記壁面部からさらに乗物室内側に向かって突出するとともに、上側を向く面を形成する突出部を有し、
前記突条の前記上下方向延伸部に形成された部分は、下端側が前記突出部まで延びている請求項2に記載の乗物用内装材。
【請求項4】
前記前後方向延伸部は、上面が、乗物前方に向かうほど下降する傾斜形状とされた請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の乗物において、下記特許文献1に記載のように、室内側の側壁部を構成する乗物用内装材と乗物用シートとが近接する状態で配される構成のものが存在する。より詳しく言えば、乗物用シートのシートクッションと乗物用内装材とが、接する状態、あるいは、略隙間なく近接している状態で配される構成とされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、上記のような構成の乗物においては、シートクッションと乗物用内装材との間からコイン等の小物が入り込んで、下方に落下してしまう場合がある。床面の形状等によっては、その落下したものを回収することが困難な場合や、回収することが不可能な場合がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、隣接する乗物用シートとの間に小物が入り込んでしまった場合であっても容易に回収可能な乗物用内装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の乗物用内装材は、
乗物用シートの側方に配される乗物用内装材であって、
前記乗物用シートを構成するシートクッションの側面に接触する、あるいは、略隙間なく近接するシート接面部と、
前後方向に延びるとともに前記シート接面部から前記シートクッションの側面に向かって突出して形成された突条と、
を備え、
前記突条が、前記シートクッションの側面を弾性変形させてその側面に食い込んだ状態で配されることを特徴とする。
【0007】
この構成の乗物用内装材によれば、自身とシートクッションとの間に小物が入り込んでしまった場合であっても、突条によって、下方への落下を防止することができるため、その小物を、上方あるいは前方から容易に回収することができる。この構成の乗物用内装材は、例えば、車両の後部座席の側方にドアが存在しない自動車におけるその後部座席の側方に配されたパネル(トリム)等のように、本乗物用内装材と乗物用シートとが互いに隣接して設けられてそれらの位置関係を変更不能な構成のものに好適である。なお、この構成の乗物用内装材において、突条は、その高さ位置が特に限定されないが、乗物用シートに座っている乗員からは視認できず、上方あるいは前方からの回収のし易さ等を考慮して、乗物用シートの外縁からの位置を定めるようにすることができる。
【0008】
上記の構成において、前記突条は、その上面が、乗物前方に向かうほど下降する傾斜形状とされた構成とすることができる。
【0009】
この構成の乗物用内装材によれば、シートクッションとの隙間に入り込んでしまった小物を乗物前方側に誘導しやすい。特に円形状のコイン等であれば、突条の上を前方側に転動させることができ、より容易に小物を回収することができる。
【0010】
また、上記の構成において、前記シート接面部は、当該乗物用内装材の下側の外縁を含んでおり、前記突条は、前記シート接面部の下縁に沿って形成されている構成とすることができる。
【0011】
この構成の乗物用内装材は、シート接触面部の外縁に沿って形成されたリブ(フランジ)が突条として機能するような構成となっている。例えば、この構成の乗物用内装材を、金型に樹脂等の材料を流入させて成形するような場合に、突条がシート接触面部の外縁に沿って形成されているため、金型内の突条を成形する部分に材料が充填されやすくなっている。
【0012】
また、上記構成において、当該乗物用内装材は、乗物の側壁を形成する本体部と、前記シートクッションの側面形状に倣って前記本体部から前記シートクッションに向かって膨出した膨出部と、を有し、前記膨出部は、膨出側に形成された壁面部が、前記シート接面部とされ、前記シート接面部の外縁を前記本体部に連結する部分である連結部が、前記シートクッションの側方において上面側から前方側にわたって延びている形状とされている構成とすることができる。
【0013】
この構成の乗物用内装材を採用した乗物は、乗物用シート下の前方側が本乗物用内装材の膨出部によって塞がれているため、本乗物用内装材とシートクッションとの隙間に物が落下した場合、乗物用シートの前方側から落下物を拾うのは困難である。特に、床面に台座が設けられてその上にシートクッションが敷設されているような場合には、乗物用シート下の前方側が完全に塞がれてしまうことになる。したがって、この構成の乗物用内装材には、上述の突条が特に有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、隣接する乗物用シートとの間に小物が入り込んでしまった場合であっても容易に回収可能な乗物用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例である乗物用内装材を搭載した車両の車室内の斜視図
【
図2】本実施例の乗物用内装材を搭載した車両の断面図
【
図3】本実施例の乗物用内装材であるクォータパネルの斜視図
【
図4】
図3に示すクォータパネルの一部を拡大して示す正面図(車室内から視た図)
【
図5】
図3に示すクォータパネルの一部を拡大して示す断面図(
図5におけるA-A断面)
【
図6】
図3に示すクォータパネルの一部を拡大して示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0017】
本発明の実施例の乗物用内装材を
図1から
図6を参照しつつ説明する。本実施例の乗物用内装材は、車両に搭載されるクォータパネル10である。本実施例のクォータパネル10が搭載される車両は、運転席側,助手席側,車両後方側にドアを有する3ドアタイプのものであり、後部座席11の左右に本実施例のクォータパネル10が配されている。なお、以下の説明においては、左右両側のクォータパネル10のうち運転席側(車両右側)のクォータパネル10を代表して説明することとする。また、また、図面の一部において、車両前方および後方をFおよびBの矢印でそれぞれ示し、上方および下方をUおよびDの矢印でそれぞれ示し、車幅方向における左方および右方をLおよびRの矢印でそれぞれ示す。
【0018】
後部座席(乗物用シート)11は、右側のクォータパネル10から左側のクォータパネル10まで車幅方向に延びるシートクッション12と、左右一対のシートバック(
図1には、右側のみ示している)13と、を含んで構成される。なお、車両の床面を構成するフロアボディ14には、車幅方向に延びる台座部15が形成されており、その台座部15上に、シートクッション12が固定されている。そのような構成により、シートクッション12の下側は、台座部15によって塞がれた状態となっている。
【0019】
また、後部座席11は、左右両側面の各々が、本クォータパネル10に接する状態で配されている。詳しく言えば、まず、本クォータパネル10は、
図1および
図3に示すように、車室内の側壁(意匠面)を形成する本体部20と、シートクッション12の側面形状に倣って本体部20からシートクッション12に向かって膨出したシートクッション側膨出部21と、シートバック13の側面形状に倣って本体部20からシートバック13に向かって膨出したシートバック側膨出部22と、を含んで構成される。そして、
図2に示すように、一対のクォータパネル10の各々のシートクッション側膨出部21の車幅方向における間隔は、シートクッション12の車幅方向の長さより僅かに小さくされている。そのため、シートクッション12は、側面12Aが弾性変形させられた状態でシートクッション側膨出部21に接した状態となっているのである。
【0020】
本クォータパネル10について、より詳しく説明する。本クォータパネル10のシートクッション側膨出部21は、
図3に示すように、膨出側(車室内側)が上下方向および車両前後方向に拡がる壁面状をなしてシートクッション12の側面12Aに接するシート接面部である壁面部30と、その壁面部30を本体部20に連結する連結部31と、からなる。その連結部31は、
図1に示すように、シートクッション12を車幅方向に延伸するような形状となっている。つまり、連結部31は、シートクッション12の形状に倣った形状で、シートクッション12の上面側から前方側にわたって延びるものとなっている。そして、壁面部30は、本クォータパネル10の下側の外縁を含んでおり、その側の外縁が、
図4に示すように、概して車両前後方向に延びる前後方向延伸部30Aと、その前後方向延伸部30Aの前端から下方に向かって延びる上下方向延伸部30Bと、を有している。なお、シートクッション側膨出部21には、その前方下端側に、壁面部30からさらに車室内側に向かって突出した突出部32が形成されている。この突出部32は、
図1に示すように、フロアボディ14の台座部15に重なるようになっている。
【0021】
また、壁面部30の下縁は、詳しく言えば、上記の前後方向延伸部30Aと上下方向延伸部30Bとには、
図5に示すように、外縁に沿って延びてシートクッション12の側面12Aに向かって突出する突条40が形成されている。上述したように、一対のクォータパネル10の各々のシートクッション側膨出部21の車幅方向における間隔は、シートクッション12の車幅方向の長さより僅かに小さくされているため、クォータパネル10の壁面部30は、ほぼ面全体でシートクッション12の側面12Aに接触するようになっている。つまり、その壁面部30の下縁からシートクッション12側に突出した突条40は、
図5に示すように、シートクッション12の側面12を弾性変形させて、その側面12Aに食い込んだ状態となるのである。
【0022】
以上のように、本クォータパネル10を搭載した車両においては、クォータパネル10とシートクッション12との間に小物が入り込んでしまった場合であっても、突条40によって、下方への落下を防止することができるため、その小物を、上方あるいは前方から容易に回収することができるようになっている。特に、本車両は、シークッション12の下側が、フロアパネル14の台座部15と、本クォータパネル10のシートクッション側膨出部21(詳しく言えば、連結部31)とによって塞がれているため、突条40がなく
図2に示したフロアボディ14上まで小物が落下してしまうと、その落下物を拾うのは困難である。したがって、本実施例のクォータパネル10は、シートクッション12の下側が完全に塞がれた本車両に好適である。
【0023】
また、
図4に示したように、本クォータパネル10は、突条10の上面が、車両前方に向かうほど下降する傾斜形状とされている。そのため、本クォータパネル10とシートクッション12との隙間に入り込んでしまった小物を車両前方側に誘導しやすい。特に円形状のコイン等であれば、突条40の上を前方側に転動するため、より容易に小物を回収することができる。
【0024】
本クォータパネル10は、シート接面部である壁面部30が、本クォータパネル10の下側の外縁を含んでおり、突条40が、壁面部30の下縁に沿って形成された構成となっている。本クォータパネル10は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料あるいは木質系材料と合成樹脂材料を混合したものから、金型を用いて成形されたものとされており、その成形時において、突条40が壁面部30の外縁に沿って形成されているため、金型内の突条40を成形する部分にも材料が充填されやすくなっている。
【0025】
上記実施形態で例示した乗物用内装材は、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記乗物用内装材を適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10…クォータパネル〔乗物用内装材〕、11…後部座席〔乗物用シート〕、12…シートクッション、12A…側面、20…本体部、21…シートクッション側膨出部〔膨出部〕、30…壁面部〔シート接面部〕、31…連結部、32…突出部、40…突条