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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20230926BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 25/04 20230101ALI20230926BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230926BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L23/12 J
H01L23/14 S
H01L25/04 Z
H01L23/36 M
H01L23/40 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020043471
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021145068
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】中田 義弘
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-222596(JP,A)
【文献】特開2006-073664(JP,A)
【文献】特開2017-059707(JP,A)
【文献】特開2001-244636(JP,A)
【文献】特開2015-076567(JP,A)
【文献】特開2017-216398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/14
H01L 25/04
H01L 23/373
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の第1の面に設けられた電極パッドと、
前記電極パッドに電気的に接続された再配線と、
前記半導体基板の前記第1の面とは反対側の第2の面から前記半導体基板を貫通して前記電極パッドに達する貫通孔と、
前記貫通孔の内壁を覆い、前記電極パッドに電気的に接続された導電膜と、
前記半導体基板の第2の面の側に設けられ、前記導電膜を介して前記電極パッドに電気的に接続された導電性接着剤と、
前記導電性接着剤によって前記半導体基板の第2の面に接合された放熱部材と、
前記貫通孔に充填され、前記導電性接着剤よりも熱膨張率が小さい充填部材と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記充填部材は、フィラー含有樹脂を含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーの含有率が85%以上である
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーは、直径0.5μm以上10μm以下の球形である
請求項2または請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板とは別の第2の半導体基板と、
前記半導体基板及び前記第2の半導体基板を一体的に封止する封止部材と、を更に含み、
前記半導体基板及び前記第2の半導体基板は、前記再配線を介して互いに電気的に接続されている
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に形成された貫通孔に充填部材が充填された構造に関する技術として、以下の技術が知られている。
【0003】
例えば、発光素子と、発光素子を支持し、発光素子の設置箇所に貫通孔を有する基板と、貫通孔に充填されたフィラーを含む充填部材と、基板の裏面側に、充填部材に密着させるようにして設置されたヒートシンクと、を含むLEDパッケージが知られている。
【0004】
また、基板に設けられた貫通孔内に充填された無機粒子を含む貫通電極基板が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-147744号公報
【文献】特開2018-85412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファンアウトウェハレベルパッケージ(FOWLP)は、複数の半導体チップを近距離配置したパッケージであり、帯域幅の拡大及び伝送信号ロスを低減可能である。近年、ミリ波帯を利用した通信用装置向けに、パワーデバイスを搭載したFOWLPのニーズが高まりつつある。
【0007】
パワーデバイスを搭載したFOWLPは、例えば、以下の構成を有する。パワーデバイスを構成する半導体基板の第1の面には電極パッドが設けられ、第1の面とは反対側の第2の面には、放熱部材が接合される。放熱部材は、半導体基板を貫通する貫通ビアを介して電極パッドに電気的に接続される。放熱部材は、貫通孔を充填するとともに半導体基板の第2の面を覆うAgペースト等の導電性接着剤によって第2の面に接合される。パワーデバイスは、電極パッドに電気的に接続された再配線によって、コントロールデバイスに電気的に接合される。パワーデバイス及びコントロールデバイスは、モールド樹脂等の封止部材によって一体的に封止される。
【0008】
上記のように、貫通孔にAgペースト等の導電性接着剤を充填した場合には、以下の問題が生じるおそれがある。Agペースト等の導電性接着剤は、熱膨張率が半導体基板の熱膨張率よりも大きい。従って、貫通孔に充填された導電性接着剤が温度変化によって収縮すると、貫通孔に接続された電極パッドが、導電性接着剤が収縮する方向に引っ張られる。これにより、電極パッドと再配線との接続が破壊されるおそれがある。このように、貫通孔を充填する充填部材として、放熱部材を半導体基板に接合するための導電性接着剤を用いた場合には、電極パッドと再配線とが断線し、製品の信頼性が低下する。
【0009】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、貫通孔に充填される充填部材の熱収縮を抑制することにより、電極パッドと再配線との断線を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の第1の面に設けられた電極パッドと、前記電極パッドに電気的に接続された再配線とを含む。半導体装置は、前記半導体基板の前記第1の面とは反対側の第2の面から前記半導体基板を貫通して前記電極パッドに達する貫通孔と、前記貫通孔の内壁を覆い、前記電極パッドに電気的に接続された導電膜とを含む。半導体装置は、前記半導体基板の第2の面の側に設けられ、前記導電膜を介して前記電極パッドに電気的に接続された導電性接着剤と、前記導電性接着剤によって前記半導体基板の第2の面に接合された放熱部材とを含む。半導体装置は、前記貫通孔に充填され、前記導電性接着剤よりも熱膨張率が小さい充填部材を含む。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、1つの側面として、貫通孔に充填される充填部材の熱収縮が抑制され、電極パッドと再配線との断線が抑制されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図2】開示の技術の実施形態に係る貫通孔に充填された充填部材の詳細な構成を示す断面図である。
図3A】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3B】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3C】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3D】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3E】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3F】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3G】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3H】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3I】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3J】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3K】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図4】比較例に係る半導体装置の部分的な構成の一例を示す断面図である。
図5A】比較例に係る半導体装置における電極パッドの平面視の写真である。
図5B】開示の技術の実施形態に係る半導体装置における電極パッドの平面視の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、開示の技術の実施形態に係る半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。なお、図1には、半導体装置1が搭載される実装基板70が半導体装置1とともに示されている。半導体装置1は、第1の半導体チップ10、第2の半導体チップ20、再配線31を備えたパッケージ基板30、及び放熱部材60を含む。半導体装置1は、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を混載したFOWLPの形態を有する。
【0015】
第1の半導体チップ10は、パワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等のパワーデバイスであってもよく、第2の半導体チップ20は、第1の半導体チップ10の駆動を制御するコントロールデバイスであってもよい。
【0016】
第1の半導体チップ10は、例えばGaN等の化合物半導体を含む半導体基板11を有する。半導体基板11の第1の面S1には、電極パッド12が設けられている。半導体基板11は、第1の面S1とは反対側の第2の面から半導体基板11を貫通し電極パッド12に達する貫通孔13を有する。貫通孔13の内壁には、例えばNi-Auを含む導電膜14が設けられている。貫通孔13の内壁に導電膜14が設けられることで貫通ビアが構成される。導電膜14は、貫通孔13の底面において露出している電極パッド12に電気的に接続されている。導電膜14は、半導体基板11の第2の面S2の全体を覆っている。なお、半導体基板11の第2の面S2の一部が導電膜14に覆われていてもよい。また、導電膜14は、Ni-Au以外の導電体を含んでいてもよい。
【0017】
貫通孔13には充填部材15が充填されている。充填部材15は、後述する導電性接着剤50よりも熱膨張率が小さい。図2は、貫通孔13に充填された充填部材15の詳細な構成を示す断面図である。図2に示すように、充填部材15には、バインダーとして機能する樹脂16にフィラー17を含有させたフィラー含有樹脂を好適に用いることができる。樹脂16は、例えばエポキシ系樹脂またはポリイミドであってもよい。フィラー17は、熱膨膨張率が導電性接着剤50よりも十分に小さい材料を含んでいることが好ましく、例えば、酸化シリコン、アルミナ、銅等の金属を含んでいてもよい。
【0018】
フィラー含有樹脂におけるフィラー17は、電極パッド12が、充填部材15が熱収縮する方向に引っ張られて再配線31から剥離して断線しないように含有率を決めることが好ましい。例えば、フィラー17の含有率は、85%以上であることが好ましい。これにより、充填部材15の熱膨張率を、導電性接着剤50に対して十分に小さくすることが可能である。
【0019】
また、フィラー17の直径は、例えば、貫通ビアの上部口の直径を50μm、底部口の直径を30μm、高さを30μmとすると、直径0.5μm以上10μm以下の球形であることが好ましい。これにより、フィラー含有樹脂におけるフィラー17の含有率を高めることが可能となり、充填部材15の熱膨張率を小さくすることが可能となる。例えば、フィラー17に酸化シリコンやアルミナや銅等を用い、樹脂16にエポキシ系樹脂やポリイミド樹脂を用いることができる。また、フィラー17の直径は、上記の範囲内において不均一であることが好ましい。これにより、フィラー含有樹脂におけるフィラー17の含有率を更に高めることが可能となる。
【0020】
半導体基板11の第1の面S1の側には、複数の再配線31が積層されたパッケージ基板30が設けられている。パッケージ基板30上には、第2の半導体チップ20が、第1の半導体チップ10に隣接して搭載されている。第2の半導体チップ20は、第1の半導体チップ10を構成する半導体基板11とは別の半導体基板21を含む。再配線31は、第1の半導体チップ10の電極パッド12に電気的に接続されている。第1の半導体チップ10(半導体基板11)は、再配線31を介して第2の半導体チップ20(半導体基板21)に電気的に接続されている。
【0021】
パッケージ基板30の、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20が搭載された側とは反対側の面には、複数の端子32が設けられている。複数の端子32の各々は、再配線31に電気的に接続されている。複数の端子32の各々は、例えば半田ボールの形態を有していてもよい。複数の端子32の各々は、実装基板70の表面に形成された配線(図示せず)に接続される。
【0022】
第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20は、封止部材40によって一体的に封止されている。封止部材40として、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性成形材料を好適に用いることが可能である。
【0023】
第1の半導体チップ10の第2の面S2を覆う導電膜14、第2の半導体チップ20の上面、及び封止部材40の上面は、同一の面内に延在しており、これらの面は、導電性接着剤50によって覆われている。導電性接着剤50は、半導体基板11の第2の面S2の側に設けられ、導電膜14を介して電極パッド12に電気的に接続されている。導電性接着剤50は、導電性を有し且つ熱伝導率が比較的高い材料を含んでいることが好ましい。導電性接着剤50として、例えばAgペースト等の熱硬化性樹脂に導電体粒子を含有させたものを好適に用いることができる。
【0024】
放熱部材60は、導電性接着剤50によって第1の半導体チップ10を構成する半導体基板11の第2の面S2に接合されるとともに、第2の半導体チップ20を構成する半導体基板21の上面に接合される。放熱部材60は、パワーデバイスである第1の半導体チップ10から発せられる熱を大気中に放散する。放熱部材60は、導電性及び熱伝導性が高い材料によって構成されていることが好ましく、放熱部材60の材料として、例えば銅及びアルミニウム等の金属を用いること可能である。放熱部材60は、第1の半導体チップ10に熱的に接続されるとともに、導電性接着剤50及び導電膜14を介して電極パッド12に電気的に接続される。放熱部材60と電極パッド12とを電気的に接続することで、放熱部材60の電位を所望の電位に固定することが可能となる。本実施形態において、放熱部材60は、第1の半導体チップ10、第2の半導体チップ20及びパッケージ基板30を収容する収容空間を有するキャップ状の形態を有する。これにより、放熱部材60を電磁シールドとして機能させることが可能となる。
【0025】
以下において、半導体装置1の製造方法について説明する。図3A図3Kは、半導体装置1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0026】
第1の半導体チップ10を構成する半導体基板11に、イオン注入法により拡散層(図示せず)を形成し、その後、半導体基板11の第1の面S1に電極パッド12を形成する(図3A)。
【0027】
次に、公知のエッチング法により、半導体基板11の第2の面S2から半導体基板11を貫通し電極パッド12に達する貫通孔13を形成する(図3B)。
【0028】
次に、公知のスパッタリング法により、貫通孔13の内壁および半導体基板11の第2の面S2を覆う、Ni-Auを含む導電膜14を形成する。導電膜14は貫通孔13の底面において露出している電極パッド12に電気的に接続される(図3C)。
【0029】
次に、貫通孔13に充填部材15を充填する。充填部材15として、フィラー含有樹脂を用いることができる。ペースト状のフィラー含有樹脂が、半導体基板11の第2の面S2に供給される。フィラー含有樹脂は、例えばスピンコート法により半導体基板11の第2の面S2の全域に行き渡り、貫通孔13の各々に充填される。その後、フィラー含有樹脂は、熱処理により硬化される。なお、導電膜14上に形成された充填部材15は、その後の研磨処理により除去される(図3D)。
【0030】
次に、公知のモールド成型法により、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を封止部材40によって一体的に封止する(図3E)。
【0031】
次に、半導体基板11の第1の面S1の側にパッケージ基板30を形成する。パッケージ基板30は、配線層及び絶縁体層を交互に積層する公知の多層配線プロセスを用いて形成される。再配線31は、電極パッド12に電気的に接続されるとともに、第2の半導体チップ20に電気的に接続される。第1の半導体チップ10(半導体基板11)及び第2の半導体チップ20(半導体基板21)は、再配線31を介して互いに電気的に接続される(図3F)。
【0032】
次に、封止部材40の上面を研磨することにより、第1の半導体チップ10に設けられた導電膜14及び第2の半導体チップ20の上面を露出させる(図3G)。
【0033】
次に、パッケージ基板30の、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20が搭載された側とは反対側の面に、再配線31に電気的に接続された端子32を形成する。端子32の各々は、例えば、半田ボールの形態を有していてもよい(図3H)。
【0034】
次に、リフロー処理により、端子32と、実装基板70の表面に形成された配線(図示せず)とを接続することで、パッケージ基板30、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を含む構造体を実装基板70上に実装する(図3I)。
【0035】
次に、導電膜14の表面、第2の半導体チップ20の上面、及び封止部材40の上面を含む平面上に、Agペースト等の熱硬化性樹脂に導電体粒子を含有させた導電性接着剤50を形成する(図3J)。
【0036】
次に、導電性接着剤50を介して第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20に放熱部材60を接合する。放熱部材60は、第1の半導体チップ10に熱的に接続されるとともに、導電性接着剤50及び導電膜14を介して電極パッド12に電気的に接続される(図3K)。
【0037】
なお、導電膜14を形成する前に、第1の半導体チップ10を構成する半導体基板11の第2の面S2及び第2の半導体チップ20を構成する半導体基板21の上面を粗面化する処理を施してもよい。これにより、アンカー効果が生じ、半導体基板11、21と導電膜14との接合強度及び導電膜14と導電性接着剤50との接合強度を高めることが可能となる。
【0038】
ここで、図4は、比較例に係る半導体装置1Xの部分的な構成の一例を示す断面図である。比較例に係る半導体装置1Xは、Agペースト等の導電性接着剤50によって貫通孔13が充填されている点が、開示の技術の実施形態に係る半導体装置1と異なる。すなわち、比較例に係る半導体装置1Xおいては、導電性接着剤50を、放熱部材60と半導体基板11とを熱的及び電気的に接合する接着剤として機能させるとともに、貫通孔13を充填する充填部材としても機能させている。
【0039】
このように、貫通孔13に導電性接着剤50を充填した場合には、以下の問題が生じるおそれがある。Agペースト等の導電性接着剤50は、熱膨張率が半導体基板11の熱膨張率よりも大きい。従って、貫通孔13に充填された導電性接着剤50が温度変化によって収縮すると、電極パッド12が、導電性接着剤50が収縮する方向に引っ張られる。これにより、図4に示すように、電極パッド12と再配線31との接続が破壊されるおそれがある。
【0040】
図5Aは、図4に示した比較例に係る半導体装置1Xにおける電極パッド12の平面視の写真である。図5Aには、貫通孔に充填された導電性接着剤が収縮する方向に電極パッド12が引っ張られ、電極パッド12に窪み100が形成されている様子が示されている。
【0041】
一方、開示の技術に係る半導体装置1によれば、貫通孔13を充填する充填部材15として、導電性接着剤50よりも熱膨張率が小さい材料が用いられている。すなわち、充填部材15は、導電性接着剤50とは異なる材料を含む。これにより、貫通孔13に充填される充填部材15の熱収縮を抑制することができ、電極パッド12と再配線31との断線を抑制することが可能となる。なお、導電性接着剤50は、厚さが薄く充填部材15と比較して体積が小さいので、導電性接着剤50が収縮したとしても充填部材15への影響は小さく、導電性接着剤50が充填部材15から剥がれることを抑制できる。
【0042】
図5Bは、開示の技術の実施形態に係る半導体装置1における電極パッド12の平面視の写真である。開示の技術に係る半導体装置1によれば、充填部材の熱収縮が抑制され、図5Aに示されたような窪み100は発生しなかった。
【0043】
なお、半導体装置1は開示の技術における半導体装置の一例である。半導体基板11は開示の技術における半導体基板の一例である。半導体基板21は開示の技術における第2の半導体基板の一例である。電極パッド12は開示の技術における電極パッドの一例である。再配線31は開示の技術における再配線の一例である。貫通孔13は開示の技術における貫通孔の一例である。導電膜14は開示の技術における導電膜の一例である。導電性接着剤50は開示の技術における導電性接着剤の一例である。放熱部材60は開示の技術における放熱部材の一例である。
【0044】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0045】
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板の第1の面に設けられた電極パッドと、
前記電極パッドに電気的に接続された再配線と、
前記半導体基板の前記第1の面とは反対側の第2の面から前記半導体基板を貫通して前記電極パッドに達する貫通孔と、
前記貫通孔の内壁を覆い、前記電極パッドに電気的に接続された導電膜と、
前記半導体基板の第2の面の側に設けられ、前記導電膜を介して前記電極パッドに電気的に接続された導電性接着剤と、
前記導電性接着剤によって前記半導体基板の第2の面に接合された放熱部材と、
前記貫通孔に充填され、前記導電性接着剤よりも熱膨張率が小さい充填部材と、
を含む半導体装置。
【0046】
(付記2)
前記充填部材は、フィラー含有樹脂を含む
付記1に記載の半導体装置。
【0047】
(付記3)
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーの含有率が85%以上である
付記2に記載の半導体装置。
【0048】
(付記4)
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーは、直径0.5μm以上10μm以下の球形である
付記2または付記3に記載の半導体装置。
【0049】
(付記5)
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーの直径は不均一である
付記4に記載の半導体装置。
【0050】
(付記6)
前記半導体基板とは別の第2の半導体基板と、
前記半導体基板及び前記第2の半導体基板を一体的に封止する封止部材と、を更に含み、
前記半導体基板及び前記第2の半導体基板は、前記再配線を介して互いに電気的に接続されている
付記1から付記5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0051】
(付記7)
第1の面に電極パッドを有する半導体基板の、前記第1の面とは反対側の第2の面から前記電極パッドに達する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の内壁を覆い、前記電極パッドに電気的に接続された導電膜を形成する工程と、
前記貫通孔に充填部材を充填する工程と、
前記電極パッドに電気的に接続された再配線を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第2の面に前記導電膜を介して前記電極パッドに電気的に接続された導電性接着剤を形成する工程と、
前記導電性接着剤によって前記半導体基板の前記第2の面に接合された放熱部材を形成する工程と、を含み、
前記充填部材は、前記導電性接着剤よりも熱膨張率が小さい
半導体装置の製造方法。
【0052】
(付記8)
前記充填部材は、フィラー含有樹脂を含む
付記7に記載の製造方法。
【0053】
(付記9)
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーの含有率が85%以上である
付記8に記載の製造方法。
【0054】
(付記10)
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーは、直径0.5μm以上10μm以下の球形である
付記8または付記9に記載の製造方法。
【0055】
(付記11)
前記フィラー含有樹脂に含まれるフィラーの直径は不均一である
付記10に記載の製造方法。
【0056】
(付記12)
前記半導体基板及び前記半導体基板とは別の第2の半導体基板を一体的に封止する工程を更に含み、
前記半導体基板及び前記第2の半導体基板は、前記再配線を介して互いに電気的に接続されている
付記7から付記11のいずれか1つに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体装置
10 第1の半導体チップ
11、21 半導体基板
12 電極パッド
13 貫通孔
14 導電膜
15 充填部材
17 フィラー
20 第2の半導体チップ
31 再配線
40 封止部材
50 導電性接着剤
60 放熱部材
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4
図5A
図5B