(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システム、および、ワイヤロープ検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G01N27/82
(21)【出願番号】P 2020069147
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】高見 芳夫
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-102465(JP,U)
【文献】国際公開第2019/171667(WO,A1)
【文献】実公昭49-013352(JP,Y1)
【文献】特開2014-077764(JP,A)
【文献】特開2001-305108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
B66B 5/12
B66B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープに対して磁束を印加する励磁部と、
前記ワイヤロープに対応して設けられ、前記励磁部により磁束が印加される前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら前記ワイヤロープの磁束を検知する検知コイルと、を備え、
前記検知コイルは、前記ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、前記ワイヤロープの振動幅が相対的に小さい第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記Z方向と直交する面内において、前記ワイヤロープの振動幅が相対的に大きい第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応する前記ワイヤロープを前記第1部分および前記第2部分により囲むように構成されており、
前記検知コイルの前記第1部分は、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている、ワイヤロープ検査装置。
【請求項2】
前記第2部分は、前記ワイヤロープと離間する方向に突出する湾曲形状を有し、前記Y方向において前記ワイヤロープを挟むように一対ずつ配置されている、請求項1に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項3】
前記検知コイルは、前記第1部分と前記第2部分とを含む第1コイルと、前記第1部分と前記第2部分とを含む第2コイルとを含み、前記第1コイルと前記第2コイルとが環状に配置されている、請求項2に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項4】
前記第1部分は、間隔を隔てて平行に配置された一対の直線部分を含み、
前記第2部分は、一対の前記直線部分の一方端部同士を接続する前記湾曲形状の弧状部分を含み、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記直線部分と、前記弧状部分とを含む前記Z方向から見てU字形状を有するコイルであり、
前記Z方向から見て、前記Y方向における前記弧状部分と前記直線部分および前記弧状部分により囲まれた前記ワイヤロープの中心軸との間の距離は、前記X方向における前記直線部分の他方端部と前記直線部分および前記弧状部分により囲まれた前記ワイヤロープの中心軸との間の距離よりも長い、請求項3に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項5】
前記検知コイルは、複数の前記ワイヤロープの各々に対応して設けられており、
複数の前記検知コイルの各々は、対応する複数の前記ワイヤロープの各々を前記第1部分および前記第2部分により囲むように構成されており、
複数の前記検知コイルの各々の前記第1部分は、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項6】
複数の前記検知コイルのうちの隣接する前記検知コイル同士は、前記Z方向において互いにずらされた位置に配置されており、前記Z方向から見て、互いに隣り合う複数の前記検知コイルの前記第1部分同士がオーバラップするように構成されている、請求項5に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項7】
複数の前記ワイヤロープが延びる前記Z方向と直交する
前記X方向における複数の前記ワイヤロープの位置、または、前記X方向における複数の前記検知コイルと複数の前記ワイヤロープとの間隔に基づいて、前記X方向において、複数の前記ワイヤロープの振動に対応するように複数の前記ワイヤロープに対する複数の前記検知コイルの位置を調整する位置調整機構をさらに備える、請求項5または6に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項8】
複数の前記ワイヤロープの前記X方向における位置を検知する位置検知部をさらに備え、
前記位置調整機構は、前記位置検知部の検知結果に基づいて、前記X方向において、複数の前記ワイヤロープの振動に対応して、複数の前記ワイヤロープに対する複数の前記検知コイルの位置を調整するように構成されている、請求項7に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項9】
前記X方向は、複数の前記ワイヤロープ同士が互いに隣り合う方向であり、
前記位置調整機構は、前記X方向において、複数の前記ワイヤロープの振動に対応して、複数の前記ワイヤロープに対する複数の前記検知コイルの位置を調整可能に構成されている、請求項7または8に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項10】
前記検知コイルは、フレキシブルプリント基板に形成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項11】
ワイヤロープに対応して設けられ、前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら前記ワイヤロープの磁束を検知する検知コイルを含むワイヤロープ検査装置と、
前記検知コイルの検知信号を取得する処理装置と、を備え、
前記検知コイルは、前記ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、前記ワイヤロープの振動幅が相対的に小さい第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記Z方向と直交する面内において、前記ワイヤロープの振動幅が相対的に大きい第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応する前記ワイヤロープを前記第1部分および前記第2部分により囲むように構成されており、
前記検知コイルの前記第1部分は、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されており、
前記処理装置は、前記検知信号に基づいて、前記ワイヤロープの異常の有無を判定するように構成されている、ワイヤロープ検査システム。
【請求項12】
ワイヤロープに対応して設けられ、前記ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、前記ワイヤロープの振動幅が相対的に小さい第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記Z方向と直交する面内において、前記ワイヤロープの振動幅が相対的に大きい第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応する前記ワイヤロープを前記第1部分および前記第2部分により囲む検知コイルを、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短い状態で、前記ワイヤロープに対して相対的に移動させながら前記ワイヤロープの磁束を検知するステップと、
前記検知コイルにより検知された前記ワイヤロープの磁束の変化に基づいて、前記ワイヤロープの異常の有無を判定するステップとを含む、ワイヤロープ検査方法。
【請求項13】
前記ワイヤロープが延びる前記Z方向と直交する前記X方向において、前記検知コイルに対する前記ワイヤロープの位置を取得するステップと、
取得した前記検知コイルに対する前記ワイヤロープの位置に基づいて、前記X方向において、前記ワイヤロープの振動に対応するように前記検知コイルの位置を調整するステップと、をさらに含む、請求項12に記載のワイヤロープ検査方法。
【請求項14】
ワイヤロープに対して磁束を印加する励磁部と、
前記ワイヤロープに対応して設けられ、前記励磁部により磁束が印加される前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら前記ワイヤロープの磁束を検知する検知コイルと、
前記ワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向にお
ける前記ワイヤロープの位置、または、前記第2方向における前記検知コイルと前記ワイヤロープとの間隔に基づいて、前記第2方向において、前記ワイヤロープの振動に対応するように前記ワイヤロープに対する前記検知コイルの位置を調整する位置調整機構と、を備え、
前記検知コイルは、前記第1方向としてのZ方向と直交する面内において、前記第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記Z方向と直交する面内において、前記第2方向に直交する第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応する前記ワイヤロープを前記第1部分および前記第2部分により囲むように構成されており、
前記位置調整機構により調整される前記X方向側に設けられた前記検知コイルの前記第1部分は、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている、ワイヤロープ検査装置。
【請求項15】
ワイヤロープに対応して設けられ、前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら前記ワイヤロープの磁束を検知する検知コイルと、前記ワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向にお
ける前記ワイヤロープの位置、または、前記第2方向における前記検知コイルと前記ワイヤロープとの間隔に基づいて、前記第2方向において、前記ワイヤロープの振動に対応して、前記ワイヤロープに対する前記検知コイルの位置を調整する位置調整機構とを含むワイヤロープ検査装置と、
前記検知コイルの検知信号を取得する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、前記検知信号に基づいて、前記ワイヤロープの異常の有無を判定するように構成されており、
前記検知コイルは、前記第1方向としてのZ方向と直交する面内において、前記第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記Z方向と直交する面内において、前記第2方向に直交する第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応する前記ワイヤロープを前記第1部分および前記第2部分により囲むように構成されており、
前記位置調整機構により調整される前記X方向側に設けられた前記検知コイルの前記第1部分は、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている、ワイヤロープ検査システム。
【請求項16】
ワイヤロープに対応して設けられ、前記ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、前記第1方向と直交する第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記Z方向と直交する面内において、前記第2方向と直交する第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応する前記ワイヤロープを前記第1部分および前記第2部分により囲む検知コイルを、前記X方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第1部分との間の距離が、前記Y方向における前記ワイヤロープの中心軸と前記第2部分との間の距離よりも短い状態で、前記ワイヤロープに対して相対的に移動させながら前記ワイヤロープの磁束を検知するステップと、
前記第2方向において、前記検知コイルに対する前記ワイヤロープの位置
、または、前記検知コイルと前記ワイヤロープとの間隔を取得するステップと、
取得した前記検知コイルに対する前記ワイヤロープの位置
、または、前記検知コイルと前記ワイヤロープとの間隔に基づいて、前記第2方向において、前記ワイヤロープの振動に対応するように前記検知コイルの位置を調整するステップと、
前記検知コイルにより検知された前記ワイヤロープの磁束の変化に基づいて、前記ワイヤロープの異常の有無を判定するステップとを含む、ワイヤロープ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システム、および、ワイヤロープ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の検知コイルにより複数のワイヤロープの各々の磁束の変化を検知するワイヤロープ検査装置が知られている。(たとえば、特許文献1参照)
【0003】
上記特許文献1には、複数のワイヤロープ(磁性体)に対して設けられた励磁部と、複数のワイヤロープの磁束(磁界)を検知する複数の検知コイルとを備えるワイヤロープ検査装置(磁性体検査装置)が開示されている。上記特許文献1に記載のワイヤロープ検査装置では、励磁部により磁束が印加されることにより生じる複数のワイヤロープの各々の磁束の変化を複数の検知コイルにより検知するように構成されている。また、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載されたような従来のワイヤロープ検査装置では、複数のワイヤロープの振動により複数の検知コイルに対して複数のワイヤロープが接触するのを防止するために、複数の検知コイルと複数のワイヤロープとの間の距離は、複数のワイヤロープの最大振動幅よりも大きくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のワイヤロープ検査装置では、複数の検知コイルと複数のワイヤロープとの間の距離が比較的大きい場合には、複数のワイヤロープに対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)が低下し、複数のワイヤロープの異常を精度よく検査できない場合がある。そのため、複数のワイヤロープが複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数のワイヤロープの異常を精度よく検査するワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システム、および、ワイヤロープ検査方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ワイヤロープが検知コイルに接触するのを防止しながら、ワイヤロープの異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システム、および、ワイヤロープ検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面におけるワイヤロープ検査装置は、ワイヤロープに対して磁束を印加する励磁部と、ワイヤロープに対応して設けられ、励磁部により磁束が印加されるワイヤロープに対して相対的に移動しながらワイヤロープの磁束を検知する検知コイルと、を備え、検知コイルは、ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、ワイヤロープの振動幅が相対的に小さい第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、第1部分と接続されるとともに、Z方向と直交する面内において、ワイヤロープの振動幅が相対的に大きい第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応するワイヤロープを第1部分および第2部分により囲むように構成されており、検知コイルの第1部分は、X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている。
この発明の第2の局面におけるワイヤロープ検査システムは、ワイヤロープに対応して設けられ、ワイヤロープに対して相対的に移動しながらワイヤロープの磁束を検知する検知コイルを含むワイヤロープ検査装置と、検知コイルの検知信号を取得する処理装置と、を備え、検知コイルは、ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、ワイヤロープの振動幅が相対的に小さい第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、第1部分と接続されるとともに、Z方向と直交する面内において、ワイヤロープの振動幅が相対的に大きい第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応するワイヤロープを第1部分および第2部分により囲むように構成されており、検知コイルの第1部分は、X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されており、処理装置は、検知信号に基づいて、ワイヤロープの異常の有無を判定するように構成されている。
この発明の第3の局面におけるワイヤロープ検査方法は、ワイヤロープに対応して設けられ、ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、ワイヤロープの振動幅が相対的に小さい第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、第1部分と接続されるとともに、Z方向と直交する面内において、ワイヤロープの振動幅が相対的に大きい第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応するワイヤロープを第1部分および第2部分により囲む検知コイルを、X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短い状態で、ワイヤロープに対して相対的に移動させながらワイヤロープの磁束を検知するステップと、検知コイルにより検知されたワイヤロープの磁束の変化に基づいて、ワイヤロープの異常の有無を判定するステップとを含む。
この発明の第4の局面におけるワイヤロープ検査装置は、ワイヤロープに対して磁束を印加する励磁部と、ワイヤロープに対応して設けられ、励磁部により磁束が印加されるワイヤロープに対して相対的に移動しながらワイヤロープの磁束を検知する検知コイルと、ワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向におけるワイヤロープの位置、または、第2方向における検知コイルとワイヤロープとの間隔に基づいて、第2方向において、ワイヤロープの振動に対応するようにワイヤロープに対する検知コイルの位置を調整する位置調整機構と、を備え、検知コイルは、第1方向としてのZ方向と直交する面内において、第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、第1部分と接続されるとともに、Z方向と直交する面内において、第2方向に直交する第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応するワイヤロープを第1部分および第2部分により囲むように構成されており、位置調整機構により調整されるX方向側に設けられた検知コイルの第1部分は、X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている。
【0008】
この発明の第5の局面におけるワイヤロープ検査システムは、ワイヤロープに対応して設けられ、ワイヤロープに対して相対的に移動しながらワイヤロープの磁束を検知する検知コイルと、ワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向におけるワイヤロープの位置、または、第2方向における検知コイルとワイヤロープとの間隔に基づいて、第2方向において、ワイヤロープの振動に対応して、ワイヤロープに対する検知コイルの位置を調整する位置調整機構とを含むワイヤロープ検査装置と、検知コイルの検知信号を取得する処理装置と、を備え、処理装置は、検知信号に基づいて、ワイヤロープの異常の有無を判定するように構成されており、検知コイルは、第1方向としてのZ方向と直交する面内において、第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、第1部分と接続されるとともに、Z方向と直交する面内において、第2方向に直交する第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応するワイヤロープを第1部分および第2部分により囲むように構成されており、位置調整機構により調整されるX方向側に設けられた検知コイルの第1部分は、X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている。
【0009】
この発明の第6の局面におけるワイヤロープ検査方法は、ワイヤロープに対応して設けられ、ワイヤロープが延びる第1方向としてのZ方向と直交する面内において、第1方向と直交する第2方向としてのX方向側に設けられた第1部分と、第1部分と接続されるとともに、Z方向と直交する面内において、第2方向と直交する第3方向としてのY方向側に設けられた第2部分とを含み、対応するワイヤロープを第1部分および第2部分により囲む検知コイルを、X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短い状態で、ワイヤロープに対して相対的に移動させながらワイヤロープの磁束を検知するステップと、第2方向において、検知コイルに対するワイヤロープの位置、または、検知コイルとワイヤロープとの間隔を取得するステップと、取得した検知コイルに対するワイヤロープの位置、または、検知コイルとワイヤロープとの間隔に基づいて、第2方向において、ワイヤロープの振動に対応するように検知コイルの位置を調整するステップと、検知コイルにより検知されたワイヤロープの磁束の変化に基づいて、ワイヤロープの異常の有無を判定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の局面におけるワイヤロープ検査装置、第2の局面におけるワイヤロープ検査システム、および、第3の局面におけるワイヤロープ検査方法では、上記のように、検知コイルの第1部分は、上記X方向におけるワイヤロープの中心軸と第1部分との間の距離が、上記Y方向におけるワイヤロープの中心軸と第2部分との間の距離よりも短くなるように配置されている。これにより、ワイヤロープの振動幅の大きい上記Y方向におけるワイヤロープの中心軸と検知コイルとの間の距離を長く、ワイヤロープの振動幅の小さい上記X方向におけるワイヤロープの中心軸と検知コイルとの間の距離を短くすることができる。その結果、上記X方向および上記Y方向の各々におけるワイヤロープの中心軸と検知コイルとの間の距離を、ワイヤロープの振動幅の大きい上記Y方向のワイヤロープの振動幅より長くする場合と異なり、ワイヤロープの振動幅の大きい上記Y方向において、ワイヤロープが検知コイルに接触するのを防止しつつ、ワイヤロープの振動幅の小さい上記X方向におけるワイヤロープの中心軸と検知コイルとの間の距離を短くすることができる。これにより、ワイヤロープの振動幅の小さい上記X方向において、検知コイルとワイヤロープとの間の距離を上記Y方向におけるワイヤロープの振動幅よりも小さくする(近づける)ことができる。その結果、ワイヤロープの振動幅の小さい上記X方向において、ワイヤロープに対する検知コイルの検出感度(検出精度)を向上させることができる。これにより、ワイヤロープが検知コイルに接触するのを防止しながら、ワイヤロープの異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システム、ワイヤロープ検査方法を提供することができる。
また、本発明の第4の局面におけるワイヤロープ検査装置、第5の局面におけるワイヤロープ検査システム、および、第6の局面におけるワイヤロープ検査方法では、上記のように、ワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向におけるワイヤロープの位置、または、第2方向における検知コイルとワイヤロープとの間隔に基づいて、第2方向において、ワイヤロープの振動に対応するようにワイヤロープに対する検知コイルの位置が調整される。これにより、ワイヤロープの振動に対応して、ワイヤロープに対する検知コイルの位置を調整することができるので、ワイヤロープと検知コイルとの間の距離を一定に保つことができる。その結果、ワイヤロープが検知コイルに接触するのを防止しながら、検知コイルとワイヤロープとの間の距離をワイヤロープの最大振動幅よりも小さくすることができる。これにより、ワイヤロープと検知コイルとの間の距離を小さくすることができるので、ワイヤロープに対する検知コイルの検出感度(検出精度)を向上させることができる。これらの結果、ワイヤロープが検知コイルに接触するのを防止しながら、ワイヤロープの異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システム、ワイヤロープ検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態によるワイヤロープ検査システムの全体構成を示した模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるワイヤロープ検査システムの全体構成を示したブロック図である。
【
図3】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置の構成を示した第1図である。
【
図4】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置の構成を示した第2図である。
【
図5】第1実施形態による検知コイルの形状を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態による検知コイルの構成を説明するための第1図である。
【
図7】第1実施形態による検知コイルの構成を説明するための第2図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるワイヤロープ検査システムのワイヤロープ検査処理の一例を示したフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態によるワイヤロープ検査装置の構成を示した第1図である。
【
図10】第2実施形態によるワイヤロープ検査装置の構成を示した第2図である。
【
図11】第2実施形態による検知コイルの配置を説明するための図である。
【
図12】本発明の第1実施形態および第2実施形態の第1変形例によるワイヤロープ検査装置の構成を説明するための図である。
【
図13】本発明の第1実施形態および第2実施形態の第2変形例によるワイヤロープ検査装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1~
図7を参照して、本発明の第1実施形態によるワイヤロープ検査システム100の構成について説明する。なお、以下の説明において、「直交」とは、90度および90度近傍の角度をなして交差することを意味する。また、「平行」とは、平行および略平行を含む。
【0014】
(ワイヤロープ検査システムの構成)
図1に示すように、ワイヤロープ検査システム100は、ワイヤロープ検査装置200と、処理装置300と、を備える。
【0015】
ワイヤロープ検査システム100は、検査対象物であり磁性体であるワイヤロープ401の異常(素線断線など)を検査するためのシステムである。ワイヤロープ検査システム100は、ワイヤロープ401の磁束を計測するワイヤロープ検査装置200と、ワイヤロープ検査装置200によるワイヤロープ401の磁束の計測結果の表示、および、ワイヤロープ検査装置200によるワイヤロープ401の磁束の計測結果に基づく解析などを行う処理装置300とを備えている。ワイヤロープ検査システム100は、ワイヤロープ401の異常の有無を判定することにより、目視により確認しにくいワイヤロープ401の異常を確認可能なシステムである。
【0016】
ワイヤロープ401は、磁性を有する素線材料が編みこまれる(たとえば、ストランド編みされる)ことにより形成されており、Z方向に延びる長尺材からなる磁性体である。ワイヤロープ401は、劣化による切断が生じることを未然に防ぐために、ワイヤロープ検査装置200により状態(傷等の有無)を検査されている。ワイヤロープ401の磁束の計測の結果、劣化の程度が決められた基準を超えたと判断されるワイヤロープ401は、作業者により交換される。
【0017】
図1では、ワイヤロープ検査装置200が、エレベータ400のかご402の移動に用いられるワイヤロープ401を検査する例を示している。エレベータ400は、かご402と、ワイヤロープ401を駆動するための巻き上げ機403とを備えている。エレベータ400は、巻き上げ機403によりワイヤロープ401を移動させることにより、かご402を上下方向(Z方向)に移動させるように構成されている。ワイヤロープ検査装置200は、ワイヤロープ401に対して移動しないように固定された状態で、巻き上げ機403により移動されるワイヤロープ401の傷みを検査する。
【0018】
ワイヤロープ401は、ワイヤロープ検査装置200の位置において、Z方向に移動するように配置されている。ワイヤロープ検査装置200は、ワイヤロープ401の表面全周に沿って、ワイヤロープ401に対して相対的にZ方向に移動しながら、ワイヤロープ401の磁束を計測する。エレベータ400に使用されるワイヤロープ401のように、ワイヤロープ401自体が移動する場合には、ワイヤロープ401をZ方向に移動させながら、ワイヤロープ検査装置200によるワイヤロープ401の磁束の計測が行われる。これにより、ワイヤロープ401のZ方向の各位置における磁束を計測することができるので、ワイヤロープ401のZ方向の各位置における傷みを検査可能である。
【0019】
(ワイヤロープ検査装置の構成)
図2に示すように、ワイヤロープ検査装置200は、励磁部10と、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50と、位置調整機構60と、を備える。また、ワイヤロープ検査装置200は、位置検知部70と、電子回路部80とを備える。
【0020】
励磁部10は、複数のワイヤロープ401に対して磁束(磁界)を印加するように複数のワイヤロープ401を周回するコイル形状に構成されている。また、励磁部10は、複数のワイヤロープ401の磁化の状態を励振する。励磁部10は、励振交流電流が流れることにより、複数のワイヤロープ401が延びる方向(Z方向)に沿った磁束(磁界)を内部(コイルの内側)に発生させる。そして、励磁部10は、発生させた磁束(磁界)を複数のワイヤロープ401に印加する。なお、励磁部10の詳細な説明は、後述する。
【0021】
第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50は、励磁部10により磁束が印加された複数のワイヤロープ401に対して相対的に移動しながらワイヤロープ401の磁束を検知(計測)する。第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50は、検知したワイヤロープ401の磁束に応じた検知信号(差動信号)を送信する。なお、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50の詳細な説明は、後述する。
【0022】
位置調整機構60は、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置を調整するように構成されている。また、位置検知部70は、複数のワイヤロープ401の位置を検知するように構成されている。
【0023】
電子回路部80は、制御部81と、励振I/F82と、受信I/F83と、電源回路84と、記憶部85と、通信部86とを含む電子回路が形成されている。
【0024】
制御部81は、ワイヤロープ検査装置200の各部を制御するように構成されている。制御部81は、CPU(中央処理装置)などのプロセッサ、メモリ、AD変換器などを含んでいる。制御部81は、位置検知部70の検知信号に基づいて、位置調整機構60のモータ61を制御する。
【0025】
励振I/F82は、制御部81からの制御信号を受信する。励振I/F82は、受信した制御信号に基づいて、励磁部10に対する電力の供給を制御する。
【0026】
受信I/F83は、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50の検知信号(差動信号)を受信(取得)して、制御部81に送信する。受信I/F83は、増幅器を含んでいる。受信I/F83は、増幅器により第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50の検知信号を増幅して、制御部81に送信する。
【0027】
電源回路84は、外部から電力を受け取って、励磁部10などのワイヤロープ検査装置200の各部に電力を供給する。記憶部85は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、ワイヤロープ401の計測結果(計測データ)などの情報を記憶(保存)する。
【0028】
通信部86は、通信用のインターフェースであり、ワイヤロープ検査装置200と処理装置300とを通信可能に接続する。ワイヤロープ検査装置200と処理装置300との接続は、有線接続でもよいし、無線接続でもよい。
【0029】
(処理装置の構成)
処理装置300は、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の検知信号を取得する。そして、処理装置300は、検知信号に基づいて、複数のワイヤロープ401の異常の有無を判定するように構成されている。処理装置300は、たとえばパーソナルコンピュータである。処理装置300は、ワイヤロープ検査装置200が配置される空間とは異なる空間に配置されている。
【0030】
図2に示すように、処理装置300は、通信部301と、処理部302と、記憶部303と、表示部304とを備えている。通信部301は、通信用のインターフェースであり、ワイヤロープ検査装置200と処理装置300とを通信可能に接続する。処理装置300は、通信部301を介して、ワイヤロープ検査装置200によるワイヤロープ401の計測結果(計測データ)を受信する。
【0031】
処理部302は、処理装置300の各部を制御する。処理部302は、CPUなどのプロセッサ、メモリなどを含んでいる。処理部302は、通信部301を介して受信したワイヤロープ401の計測結果に基づいて、素線断線などのワイヤロープ401の傷みを解析する。
【0032】
記憶部303は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、ワイヤロープ401の計測結果、処理部302によるワイヤロープ401の計測結果を解析した結果などの情報を記憶(保存)する。表示部304は、たとえば液晶モニタであり、ワイヤロープ401の計測結果、処理部302によるワイヤロープ401の計測結果を解析した結果などの情報を表示する。
【0033】
(ワイヤロープ検査装置内における各部の配置)
第1実施形態では、
図3に示すように、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の各々に対応して設けられている。なお、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50は、特許請求の範囲の「複数の検知コイル」の一例である。また、ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401dは、特許請求の範囲の「複数のワイヤロープ」の一例である。
【0034】
また、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)のうちの隣接する検知コイル同士は、Z方向において互いにずらされた位置に配置されている。具体的には、複数の検知コイルは、X方向において、X1方向から順に、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、第4検知コイル50の順に配置されている。第1検知コイル20および第3検知コイル40は、X方向から見て重なるように配置されている。また、第2検知コイル30および第4検知コイル50は、X方向から見て重なるように配置されている。そして、第1検知コイル20および第3検知コイル40は、第2検知コイル30および第4検知コイル50よりもZ1方向側に配置されている。すなわち、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、第4検知コイル50は、Y方向から見て、ジグザグ状(千鳥状)に配置されている。
【0035】
第1実施形態では、X方向は、複数のワイヤロープ401同士が互いに隣り合う方向であり、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の振動幅が相対的に小さい方向である。また、第1実施形態では、Y方向は、複数のワイヤロープ401の振動幅が相対的に大きい方向である。
【0036】
また、第1実施形態において、Z方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例であり、X方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。また、第1実施形態において、Y方向は、特許請求の範囲の「第3方向」の一例である。
【0037】
図3に示すように、励磁部10のZ方向における外側には、位置検知部70が配置されている。位置検知部70は、
図3に示すように、磁気センサ71、72、73、74、75、76、77、および、78を含む。位置検知部70は、磁気センサ71~78によって、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のX方向における位置を検知するように構成されている。磁気センサ71~78は、磁性体のヨークと、ワイヤロープ401を挟むように配置された一対の巻線コイルとにより構成されている。磁気センサ71~78は、巻線コイルのインダクタンスの変化による一対の巻線コイルの電圧の差から、巻線コイルとワイヤロープ401との間の距離の変化を、検知するように構成されている。これにより、位置検知部70によって、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)に対する複数のワイヤロープ401のX方向における位置を検知可能である。
【0038】
具体的には、磁気センサ71および磁気センサ75は、Z方向において、第1検知コイル20と離間した状態で第1検知コイル20を挟むように配置されている。磁気センサ71および磁気センサ75は、ワイヤロープ401aのX方向における位置を検知するように構成されている。また、磁気センサ72および磁気センサ76は、Z方向において、第2検知コイル30と離間した状態で第2検知コイル30を挟むように配置されている。磁気センサ72および磁気センサ76は、ワイヤロープ401bのX方向における位置を検知するように構成されている。そして、磁気センサ73および磁気センサ77は、Z方向において、第3検知コイル40と離間した状態で第3検知コイル40を挟むように配置されている。磁気センサ73および磁気センサ77は、ワイヤロープ401cのX方向における位置を検知するように構成されている。さらに、磁気センサ74および磁気センサ78は、Z方向において、第4検知コイル50と離間した状態で第4検知コイル50を挟むように配置されている。磁気センサ74および磁気センサ78は、ワイヤロープ401dのX方向における位置を検知するように構成されている。
【0039】
また、励磁部10のZ1方向には、
図3に示すように、整磁部90が配置されている。整磁部90は、
図4に示すように、Y方向において複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)を挟むように配置された整磁磁石91および92を含む。整磁部90は、整磁磁石91および92によって、複数のワイヤロープ401の磁化状態を調整するように構成されている。
【0040】
また、
図3および
図4に示すように、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)同士が互いに隣り合う方向(X方向)において、X1方向側の最も外側に配置された第1検知コイル20よりも外側(X1方向側)に位置調整機構60が配置されている。位置調整機構60は、前述したようにモータ61を含む。
【0041】
また、
図4に示すように、励磁部10の内部には、コイル固定部材23、33、43、および、53が配置されている。コイル固定部材23は第1検知コイル20を、コイル固定部材33は第2検知コイル30を、コイル固定部材43は第3検知コイル40を、コイル固定部材53は第4検知コイル50を、それぞれ固定するための部材である。
【0042】
(位置調整機構の構成)
第1実施形態では、位置調整機構60は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)が延びるZ方向と直交するX方向において、複数のワイヤロープ401の振動に対応するように複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置を調整するように構成されている。具体的には、位置調整機構60は、モータ61の駆動により、コイル固定部材23、33、43、および、53(
図4参照)をX方向(X1方向およびX2方向)に移動させることにより、複数の検知コイルのX方向における位置を複数のワイヤロープ401の振動に対応するように調整可能に構成されている。
【0043】
(励振部の構成)
図4に示すように、ワイヤロープ検査装置200には、励振コイル基板11と励振コイル基板12とが設けられている。励振コイル基板11および励振コイル基板12は、複数のワイヤロープ401同士が互いに隣り合う方向に平行な面(XZ平面)に沿って形成されている。そして、励振コイル基板11および励振コイル基板12は、コイルが導体パターンとして形成されたプリント基板である。
【0044】
励振コイル基板11には、コネクタ11aおよび11bが設けられている。コネクタ11aおよび11bは、励振コイル基板11に導体パターンとして形成されたコイルと電気的に接続されている。また、励振コイル基板12には、コネクタ12aおよび12bが設けられている。コネクタ12aおよび12bは、励振コイル基板12に導体パターンとして形成されたコイルと電気的に接続されている。
【0045】
そして、X1方向側において、励振コイル基板11に導体パターンとして形成されたコイルと電気的に接続されたコネクタ11aは、コネクタ12aを介して、励振コイル基板12に導体パターンとして形成されたコイルと電気的に接続されている。また、X2方向側において、励振コイル基板11に導体パターンとして形成されたコイルと電気的に接続されたコネクタ11bは、コネクタ12bを介して、励振コイル基板12に導体パターンとして形成されたコイルと電気的に接続されている。
【0046】
励磁部10は、励振コイル基板11に導体パターンとして形成されたコイルと、励振コイル基板12に導体パターンとして形成されたコイルとをコネクタ11a、11b、12a、および、12bによって接続することにより構成された励振コイルである。励振コイル基板11に形成された導体パターンとして形成されたコイルと励振コイル基板12に導体パターンとして形成されたコイルとが、コネクタ11a、11b、12a、および、12bによって、電気的に接続されることにより、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および401d)を囲うようにコイルループ(励磁部10)を形成する。励磁部10は、発生させた磁束(磁界)を形成したコイルループ内部に配置された複数のワイヤロープ401に印加するように構成されている。
【0047】
なお、励振コイル基板11に導体パターンとして形成されたコイルおよび励振コイル基板12に導体パターンとして形成されたコイルは、巻線(基板に平行な方向)と垂直な方向に複数層積層してもよい。
【0048】
(検知コイルの構成)
第1検知コイル20は、コイル21とコイル22とが差動接続された差動コイルとなるように構成されている。また、第2検知コイル30は、コイル31とコイル32とが差動接続された差動コイルとなるように構成されている。そして、第3検知コイル40は、コイル41とコイル42とが差動接続された差動コイルとなるように構成されている。さらに、第4検知コイル50は、コイル51とコイル52とが差動接続された差動コイルとなるように構成されている。なお、コイル21、31、41、および、51は、特許請求の範囲の「第1コイル」の一例であり、コイル22、32、42、および、52は、特許請求の範囲の「第2コイル」の一例である。
【0049】
第1実施形態では、第1検知コイル20(コイル21および22)、第2検知コイル30(コイル31および32)、第3検知コイル40(コイル41および42)、および、第4検知コイル50(コイル51および52)は、フレキシブルプリント基板に形成されている。具体的には、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50は、フレキシブルプリント基板に導体パターンとして形成されている。なお、各コイル(コイル21、22、31、32、41、42、51、および、52)は、巻線(フレキシブルプリント基板に平行な方向)と垂直な方向に複数層積層してもよい。
【0050】
(検知コイルの形状)
図4および
図5に示すように、第1実施形態では、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の各々は、Z方向から見て、直線部分と、弧状部分とによって形成される長穴形状(トラック形状)を有する。第1実施形態では、複数の検知コイルの各々の直線部分(
図5参照)は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のXY面内(Z方向と直交する面内)におけるX方向側に設けられている。そして、第1実施形態では、複数の検知コイルの各々の弧状部分(
図5参照)は、直線部分と接続されるとともに、複数のワイヤロープ401のXY面内におけるY方向側に設けられている。なお、Y方向は、X方向に対して交差する方向である。
【0051】
具体的には、第1検知コイル20は、
図5に示すように、Z方向から見てコイル21とコイル22とが環状に配置されている。また、コイル21およびコイル22は、Z方向から見てU字形状を有するコイルである。なお、環状とは、Z方向から見て輪状であることであり、コイル21とコイル22との間は、接していてもよいし、隙間が設けられていてもよい。これは、第2検知コイル30(コイル31および32)、第3検知コイル40(コイル41および42)、および、第4検知コイル50(コイル51および52)でも同様である。
【0052】
コイル21は、間隔を隔てて平行に配置された一対の直線部分である直線部分21aおよび21bを有する。そして、コイル21は、一対の直線部分(直線部分21aおよび21b)の一方端部(Y2方向側の端部)同士を接続する弧状部分21cを有する。弧状部分21cは、Y2方向(ワイヤロープ401aと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。
【0053】
また、コイル22は、間隔を隔てて平行に配置された一対の直線部分である直線部分22aおよび22bを有する。そして、コイル22は、一対の直線部分(直線部分22aおよび22b)の一方端部(Y1方向側の端部)同士を接続する弧状部分22cを有する。弧状部分22cは、Y1方向(ワイヤロープ401aと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。
【0054】
そして、弧状部分21cおよび22cは、Y方向においてワイヤロープ401aを挟むように配置されている。すなわち、ワイヤロープ401aは、Y方向において一対の弧状部分(弧状部分21cおよび22c)によって挟まれる。
【0055】
なお、直線部分21a、21b、22a、および、22bは、特許請求の範囲の「第1部分」の一例である。また、弧状部分21cおよび22cは、特許請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0056】
また、第2検知コイル30は、
図5に示すように、Z方向から見てコイル31とコイル32とが環状に配置されている。コイル31およびコイル32は、Z方向から見てU字形状を有するコイルである。また、コイル31は、直線部分31a、直線部分31b、および、弧状部分31cを有する。弧状部分31cは、Y2方向(ワイヤロープ401bと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。また、コイル32は、直線部分32a、直線部分32b、および、弧状部分32cを有する。弧状部分32cは、Y1方向(ワイヤロープ401bと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。そして、弧状部分31cおよび32cは、Y方向においてワイヤロープ401bを挟むように配置されている。すなわち、ワイヤロープ401bは、Y方向において一対の弧状部分(弧状部分31cおよび32c)によって挟まれる。
【0057】
なお、直線部分31a、31b、32a、および、32bは、特許請求の範囲の「第1部分」の一例である。また、弧状部分31cおよび32cは、特許請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0058】
第3検知コイル40は、
図5に示すように、Z方向から見てコイル41とコイル42とが環状に配置されている。コイル41およびコイル42は、Z方向から見てU字形状を有するコイルである。また、コイル41は、直線部分41a、直線部分41b、および、弧状部分41cを有する。弧状部分41cは、Y2方向(ワイヤロープ401cと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。また、コイル42は、直線部分42a、直線部分42b、および、弧状部分42cを有する。弧状部分42cは、Y1方向(ワイヤロープ401cと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。そして、弧状部分41cおよび42cは、Y方向においてワイヤロープ401cを挟むように配置されている。すなわち、ワイヤロープ401cは、Y方向において一対の弧状部分(弧状部分41cおよび42c)によって挟まれる。
【0059】
なお、直線部分41a、41b、42a、および、42bは、特許請求の範囲の「第1部分」の一例である。また、弧状部分41cおよび42cは、特許請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0060】
第4検知コイル50は、
図5に示すように、Z方向から見てコイル51とコイル52とが環状に配置されている。コイル51およびコイル52は、Z方向から見てU字形状を有するコイルである。また、コイル51は、直線部分51a、直線部分51b、および、弧状部分51cを有する。弧状部分51cは、Y2方向(ワイヤロープ401dと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。また、コイル52は、直線部分52a、直線部分52b、および、弧状部分52cを有する。弧状部分52cは、Y1方向(ワイヤロープ401dと離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。そして、弧状部分51cおよび52cは、Y方向においてワイヤロープ401dを挟むように配置されている。すなわち、ワイヤロープ401dは、Y方向において一対の弧状部分(弧状部分51cおよび52c)によって挟まれる。
【0061】
なお、直線部分51a、51b、52a、および、52bは、特許請求の範囲の「第1部分」の一例である。また、弧状部分51cおよび52cは、特許請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0062】
(ワイヤロープに対する検知コイルの構成)
図5に示すように、第1実施形態では、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の各々は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の各々を直線部分および弧状部分により囲むように構成されている。
【0063】
具体的には、第1検知コイル20は、ワイヤロープ401aをコイル21(直線部分21a、直線部分21b、および、弧状部分21c)により囲むように構成されている。そして、第1検知コイル20は、ワイヤロープ401aをコイル22(直線部分22a、直線部分22b、および、弧状部分22c)により囲むように構成されている。また、第2検知コイル30は、ワイヤロープ401bをコイル31(直線部分31a、直線部分31b、および、弧状部分31c)により囲むように構成されている。そして、第2検知コイル30は、ワイヤロープ401bをコイル32(直線部分32a、直線部分32b、および、弧状部分32c)により囲むように構成されている。
【0064】
第3検知コイル40は、ワイヤロープ401cをコイル41(直線部分41a、直線部分41b、および、弧状部分41c)により囲むように構成されている。そして、第3検知コイル40は、ワイヤロープ401cをコイル42(直線部分42a、直線部分42b、および、弧状部分42c)により囲むように構成されている。また、第4検知コイル50は、ワイヤロープ401dをコイル51(直線部分51a、直線部分51b、および、弧状部分51c)により囲むように構成されている。そして、第4検知コイル50は、ワイヤロープ401dをコイル52(直線部分52a、直線部分52b、および、弧状部分52c)により囲むように構成されている。
【0065】
そして、第1実施形態では、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の各々は、Z方向から見て、Y方向(第3方向)における弧状部分と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離は、X方向(第2方向)における直線部分の他方端部と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離よりも長くなるように構成されている。
【0066】
具体的には、
図5に示すように、第4検知コイル50のコイル51において、直線部分51a、直線部分51b、および、弧状部分51cにより囲まれたワイヤロープ401dの中心軸と、Y方向における弧状部分51cとの間の距離D1は、直線部分51a、直線部分51b、および、弧状部分51cにより囲まれたワイヤロープ401dの中心軸と、X方向における直線部分51aの他方端部51eとの間の距離D2よりも長い。また、距離D1は、直線部分51a、直線部分51b、および、弧状部分51cにより囲まれたワイヤロープ401dの中心軸と、X方向における直線部分51bの他方端部51fとの間の距離D3よりも長い。なお、距離D1は、複数のワイヤロープ401の最大振動幅よりも長い。たとえば、距離D1は、ワイヤロープ401の直径の1.5倍よりも長い距離である。距離D2と距離D3は、等しい距離である。
【0067】
なお、距離D1は、特許請求の範囲の「第1方向から見て、第3方向における第2部分と第1部分および第2部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離」および「第1方向から見て、第3方向における弧状部分と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離」の一例である。また、距離D2と距離D3は、「第2方向における第1部分と第1部分および第2部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離」および「第2方向における直線部分の他方端部と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離」の一例である。
【0068】
Y方向において、弧状部分21cとワイヤロープ401aの中心軸との間の距離、弧状部分31cとワイヤロープ401bの中心軸との間の距離、および、弧状部分41cとワイヤロープ401cの中心軸との間の距離は、距離D1と等しい長さを有する。また、Y方向において、弧状部分22cとワイヤロープ401aの中心軸との間の距離、弧状部分32cとワイヤロープ401bの中心軸との間の距離、弧状部分42cとワイヤロープ401cの中心軸との間の距離、および、弧状部分52cとワイヤロープ401dの中心軸との間の距離、は、距離D1と等しい長さを有する。
【0069】
X方向において、直線部分21aの他方端部21eとワイヤロープ401aの中心軸との間の距離、直線部分31aの他方端部31eとワイヤロープ401bの中心軸との間の距離、および、直線部分41aの他方端部41eとワイヤロープ401cの中心軸との間の距離は、距離D2およびD3と等しい長さを有する。また、X方向において、直線部分22aの他方端部22eとワイヤロープ401aの中心軸との間の距離、直線部分32aの他方端部32eとワイヤロープ401bの中心軸との間の距離、直線部分42aの他方端部42eとワイヤロープ401cの中心軸との間の距離、および、直線部分52aの他方端部52eとワイヤロープ401dの中心軸との間の距離、は、距離D2およびD3と等しい長さを有する。
【0070】
X方向において、直線部分21bの他方端部21fとワイヤロープ401aの中心軸との間の距離、直線部分31bの他方端部31fとワイヤロープ401bの中心軸との間の距離、および、直線部分41bの他方端部41fとワイヤロープ401cの中心軸との間の距離は、距離D2およびD3と等しい長さを有する。また、X方向において、直線部分22bの他方端部22fとワイヤロープ401aの中心軸との間の距離、直線部分32bの他方端部32fとワイヤロープ401bの中心軸との間の距離、直線部分42bの他方端部42fとワイヤロープ401cの中心軸との間の距離、および、直線部分52bの他方端部52fとワイヤロープ401dの中心軸との間の距離は、距離D2およびD3と等しい長さを有する。
【0071】
また、コイル固定部材23、33、43、および、53のY方向の内径は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のY方向における最大振動幅よりも長い。
【0072】
(検知コイルの位置調整)
位置調整機構60は、位置検知部70の検知結果に基づいて、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)のX方向における位置を調整するように構成されている。また、位置調整機構60は、X方向(複数のワイヤロープ401が延びる方向と直交する方向)において、複数のワイヤロープ401の振動に対応して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を調整するように構成されている。
【0073】
具体的には、ワイヤロープ検査装置200は、位置検知部70によって、検知した複数のワイヤロープ401のX方向における位置に基づいて、位置調整機構60のモータ61を制御して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)のX方向における距離が一定になる(複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルの中心に位置する)ように、複数のワイヤロープ401の振動に対応して複数の検知コイルの位置を調整する。
【0074】
なお、第1実施形態では、X方向(複数のワイヤロープ401の振動幅の小さい方向)における複数の検知コイルの位置(ワイヤロープ401の中心軸と複数の検知コイルとの間の距離)のみを位置調整機構60により調整している。そして、Y方向(複数のワイヤロープ401の振動幅の大きい方向)においては、Y方向における弧状部分と直線部分および弧状部により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離(距離D1)を複数のワイヤロープ401の最大振動幅よりも長くすることにより、複数の検知コイルの位置(ワイヤロープ401の中心軸と複数の検知コイルとの間の距離)を位置調整機構60により調整しなくとも、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止可能に構成されている。
【0075】
(検知コイルの分割)
また、
図6および
図7に示すように、コイル固定部材23、33、43、および、53は、分割可能に構成されている。具体的には、コイル固定部材23は、コイル21を固定する固定部23aと、コイル22を固定する固定部23bとをY方向において分割可能に構成されている。また、コイル固定部材33は、コイル31を固定する固定部33aと、コイル32を固定する固定部33bとをY方向において分割可能に構成されている。そして、コイル固定部材43は、コイル41を固定する固定部43aと、コイル42を固定する固定部43bとをY方向において分割可能に構成されている。さらに、コイル固定部材53は、コイル51を固定する固定部53aと、コイル52を固定する固定部53bとをY方向において分割可能に構成されている。
【0076】
また、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50は、コイル固定部材23、33、43、および、53のそれぞれの環状部分に固定されることにより、第1検知コイル20(コイル21および22)、第2検知コイル30(コイル31および32)、第3検知コイル40(コイル41および42)、および、第4検知コイル50(コイル51および52)がZ方向から見て、環状に配置される。
【0077】
(ワイヤロープ検査処理)
次に、
図8を参照して、本実施形態のワイヤロープ検査処理をフローチャートに基づいて説明する。
【0078】
ステップ101において、ワイヤロープ検査システム100(ワイヤロープ検査装置200)は、複数のワイヤロープ401の磁束の検知を開始する。ステップ101において、ワイヤロープ検査システム100は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の各々に対応して設けられた複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)を、複数のワイヤロープ401に対して相対的に移動させながら複数のワイヤロープ401の各々の磁束を検知する。複数の検知コイルによる複数のワイヤロープ401の磁束の検知の開始後、処理ステップは、ステップ102へ移行する。
【0079】
ステップ102において、ワイヤロープ検査システム100(ワイヤロープ検査装置200)は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の位置を取得する。ステップ102において、ワイヤロープ検査システム100は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)が延びるZ方向(第1方向)と直交するX方向(第2方向)において、複数の検知コイルに対する複数のワイヤロープ401の位置を取得する。複数のワイヤロープ401の位置を取得後、処理ステップは、ステップ103へ移行する。
【0080】
ステップ103において、ワイヤロープ検査システム100(ワイヤロープ検査装置200)は、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置を調整する。ステップ103において、ワイヤロープ検査システム100は、取得した複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)に対する複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の位置に基づいて、X方向において、複数のワイヤロープ401の振動に対応するように複数の検知コイルの位置を調整する。複数の検知コイルの位置の調整完了後、処理ステップは、ステップ104へ移行する。
【0081】
ステップ104において、ワイヤロープ検査システム100は、複数の検知コイルを、複数のワイヤロープ401に対して相対的に移動させながらの磁束の検知が終了したか否かを判定する。ワイヤロープ検査システム100が磁束の検知が終了したと判定した場合には、処理ステップは、ステップ105へ移行する。ワイヤロープ検査システム100が磁束の検知が終了していないと判定した場合には、処理ステップは、ステップ102に戻る。
【0082】
ステップ105において、ワイヤロープ検査システム100は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の異常を判定する。ステップ105において、ワイヤロープ検査システム100は、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)により検知された複数のワイヤロープ401の磁束の変化に基づいて、複数のワイヤロープ401の異常の有無を判定する。ワイヤロープ検査システム100は、ワイヤロープ401の異常の有無を判定の終了後、ワイヤロープ検査処理を終了する。
【0083】
(第1実施形態のワイヤロープ検査装置200の効果)
第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、上記のように、複数のワイヤロープ401が移動する(延びる)Z方向(第1方向)と直交するX方向(第2方向)において、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の振動に対応するように複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置が位置調整機構60によって調整される。これにより、複数のワイヤロープ401の振動に対応して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を調整することができるので、複数のワイヤロープ401と複数の検知コイルとの間の距離を一定に保つことができる。その結果、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数の検知コイルと複数のワイヤロープ401との間の距離を複数のワイヤロープ401の最大振動幅よりも小さくすることができる。これにより、複数のワイヤロープ401と複数の検知コイルとの間の距離を小さくすることができるので、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)を向上させることができる。これらの結果、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数のワイヤロープ401の異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査装置200を提供することができる。
【0085】
また、上記第1実施形態によるワイヤロープ検査装置200では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0086】
また、第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、位置検知部70は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のX方向(第2方向)における位置を検知するように構成されている。そして、位置調整機構60は、位置検知部70の検知結果に基づいて、X方向において、複数のワイヤロープ401の振動に対応して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、位置検知部70の検知結果に基づいて、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を調整することができるので、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置をより容易に調整することができる。
【0087】
第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の各々は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の各々を複数のワイヤロープ401の各々のX方向(第2方向)側に設けられた直線部分および複数のワイヤロープ401の各々のY方向(第3方向)側に設けられた弧状部分により囲むように構成されている。このように構成すれば、複数のワイヤロープ401の各々のX方向側、または、Y方向側のみに複数の検知コイルを設けて、複数のワイヤロープ401の各々の磁束を検知する場合(複数のワイヤロープ401の各々をX方向側の直線部分およびY方向側の弧状部分により囲まない場合)に比べて、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)を向上させることができる。
【0088】
また、第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の各々は、Z方向(第1方向)から見て、Y方向(第3方向)における弧状部分と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離は、X方向(第2方向)における直線部分の他方端部と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離よりも長くなるように構成されている。このように構成すれば、Z方向(ワイヤロープ401が延びる方向)に直交するXY方向の各々において複数のワイヤロープ401の振動幅が異なる場合において、複数のワイヤロープ401の振動幅の大きい方向(Y方向)のワイヤロープ401の中心軸と複数の検知コイルとの間の距離を長く、複数のワイヤロープ401の振動幅の小さい方向(X方向)のワイヤロープ401の中心軸と複数の検知コイルとの間の距離を短くすることができる。その結果、XY方向の各々におけるワイヤロープ401の中心軸と複数の検知コイルとの間の距離を複数のワイヤロープ401の振動幅の大きい方向(Y方向)の最大振動幅より長くする場合に比べて、複数のワイヤロープ401の振動幅の小さい方向(X方向)のワイヤロープ401の中心軸と複数の検知コイルとの間の距離をより短くすることができる。その結果、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)をより向上させることができる。また、コイル21、22、31、32、41、42、51、および、52は、各々、Z方向から見て、直線部分と弧状部分とを含むU字形状を有する。このように構成すれば、直線部分のみにより、コイル21、22、31、32、41、42、51、および、52を形成する場合と異なり、複数のワイヤロープ401の外径形状に沿うようにコイル21、22、31、32、41、42、51、および、52を形成することができる。その結果、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの距離をより近づけることができるので、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)をより向上させることができる。
【0089】
また、第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、位置調整機構60は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)同士が互いに隣り合う複数のワイヤロープ401の振動幅が相対的に小さいX方向(第2方向)において、複数のワイヤロープ401の振動に対応して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、位置調整機構60による複数の検知コイルの位置調整を行う幅が小さくなるので、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を容易に調整することができる。
【0090】
また、第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、コイル21、31、41、および、51は、Y2方向(ワイヤロープ401から離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。また、コイル22、32、42、および、52は、Y1方向(ワイヤロープ401から離間する方向)に突出する湾曲形状を有する。そして、コイル21とコイル22、コイル31とコイル32、コイル41とコイル42、および、コイル51とコイル52は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のそれぞれを挟むように配置されている。このように構成すれば、Y1方向およびY2方向の両方向において、複数のワイヤロープ401の外形に沿うように、ワイヤロープ401から離間する方向に突出する湾曲形状を有する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)を形成することができる。その結果、Y方向に振動する複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの距離をより近づけることができるので、Y方向に振動する複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)をより向上させることができる。
【0091】
また、第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、第1検知コイル20はコイル21および22を、第2検知コイル30はコイル31および32を、第3検知コイル40はコイル41および42を、第4検知コイル50はコイル51および52をそれぞれ含む。このように構成すれば、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50は、各々、分割することができるので、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50を複数のワイヤロープ401に対して、容易に取り付けることができる。また、Z方向(第1方向)から見て、コイル21とコイル22、コイル31とコイル32、コイル41とコイル42、および、コイル51とコイル52のそれぞれが環状に配置されている。このように構成すれば、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50のそれぞれを円形のワイヤロープ401の外径形状に沿って形成することができる。
【0092】
また、第1実施形態のワイヤロープ検査装置200では、第1検知コイル20(コイル21および22)、第2検知コイル30(コイル31および32)、第3検知コイル40(コイル41および42)、および、第4検知コイル50(コイル51および52)は、フレキシブルプリント基板に導体パターンとして形成されている。このように構成すれば、第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50を容易に湾曲させることができる。
【0093】
(第1実施形態のワイヤロープ検査システム100の効果)
第1実施形態のワイヤロープ検査システム100では、以下のような効果を得ることができる。
【0094】
第1実施形態のワイヤロープ検査システム100では、複数のワイヤロープ401が延びるZ方向(第1方向)と直交するX方向(第2方向)おいて、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の振動に対応するように複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置が位置調整機構60によって調整される。これにより、複数のワイヤロープ401の振動に対応して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を調整することができるので、複数のワイヤロープ401と複数の検知コイルとの間の距離を一定に保つことができる。その結果、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数の検知コイルと複数のワイヤロープ401との間の距離を複数のワイヤロープ401の最大振動幅よりも小さくすることができる。これにより、複数のワイヤロープ401と複数の検知コイルとの間の距離を小さくすることができるので、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)を向上させることができる。これらの結果、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数のワイヤロープ401の異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査システム100を提供することができる。
【0095】
(第1実施形態のワイヤロープ検査方法の効果)
第1実施形態のワイヤロープ検査方法では、以下のような効果を得ることができる。
【0096】
第1実施形態のワイヤロープ検査方法では、取得した複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の位置に基づいて、複数のワイヤロープ401が延びるZ方向(第1方向)と直交するX方向(第2方向)において、複数のワイヤロープ401の振動に対応するように複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置が調整される。これにより、複数のワイヤロープ401の振動に対応して、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの位置を調整することができるので、複数のワイヤロープ401と複数の検知コイルとの間の距離を一定に保つことができる。その結果、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数の検知コイルと複数のワイヤロープ401との間の距離を複数のワイヤロープ401の最大振動幅よりも小さくすることができる。これにより、複数のワイヤロープ401と複数の検知コイルとの間の距離を小さくすることができるので、複数のワイヤロープ401に対する複数の検知コイルの検出感度(検出精度)を向上させることができる。これらの結果、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数のワイヤロープ401の異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査方法を提供することができる。
【0097】
[第2実施形態]
次に、
図9~
図11を参照して、第2実施形態によるワイヤロープ検査装置500について説明する。この第2実施形態では、
図9に示すように、複数の検知コイル(第1検知コイル520、第2検知コイル530、第3検知コイル540、および、第4検知コイル550)のうちの隣接する検知コイル同士は、Z方向において互いにずらされた位置に配置されている。具体的には、複数の検知コイルは、X方向において、X1方向から順に、第1検知コイル520、第2検知コイル530、第3検知コイル540、第4検知コイル550の順に配置されている。第1検知コイル520および第3検知コイル540は、X方向から見て重なるように配置されている。また、第2検知コイル530および第4検知コイル550は、X方向から見て重なるように配置されている。そして、第1検知コイル520および第3検知コイル540は、第2検知コイル530および第4検知コイル550よりもZ1方向側に配置されている。すなわち、第1検知コイル520、第2検知コイル530、第3検知コイル540、第4検知コイル550は、Y方向から見て、ジグザグ状(千鳥状)に配置されている。
【0098】
第1検知コイル520は、直線部分521a、直線部分521b、および、弧状部分521cを有するコイル521と、直線部分522a、直線部分522b、および、弧状部分522cを有するコイル522とにより構成(
図10および
図11参照)されている。また、第2検知コイル530は、直線部分531a、直線部分531b、および、弧状部分531cを有するコイル531と、直線部分532a、直線部分532b、および、弧状部分532cを有するコイル532とにより構成(
図10および
図11参照)されている。そして、第3検知コイル540は、直線部分541a、直線部分541b、および、弧状部分541cを有するコイル541と、直線部分542a、直線部分542b、および、弧状部分542cを有するコイル542とにより構成(
図10および
図11参照)されている。さらに、第4検知コイル550は、直線部分551a、直線部分551b、および、弧状部分551cを有するコイル551と、直線部分552a、直線部分552b、および、弧状部分552cを有するコイル542とにより構成(
図10および
図11参照)されている。
【0099】
第2実施形態では、Z方向から見て、隣接する検知コイル同士が重ならないように配置されている第1実施形態とは異なり、Z方向から見て、互いに隣り合う複数の検知コイルの直線部分同士がオーバラップするように構成(
図11参照)されている。具体的には、Z方向から見て、コイル521の直線部分521bと、コイル531の直線部分531aとがオーバラップする(重なる)とともに、コイル522の直線部分522bと、コイル532の直線部分532aとがオーバラップするように構成されている。また、Z方向から見て、コイル531の直線部分531bと、コイル541の直線部分541aとがオーバラップするとともに、コイル532の直線部分532bと、コイル542の直線部分542aとがオーバラップするように構成されている。そして、Z方向から見て、コイル541の直線部分541bと、コイル551の直線部分551aとがオーバラップするとともに、コイル542の直線部分542bと、コイル552の直線部分552aとがオーバラップするように構成されている。
【0100】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0101】
(第2実施形態のワイヤロープ検査装置500の効果)
第2実施形態によるワイヤロープ検査装置500では、以下のような効果を得ることができる。
【0102】
第2実施形態のワイヤロープ検査装置500では、上記第1実施形態と同様に、複数のワイヤロープ401が複数の検知コイルに接触するのを防止しながら、複数のワイヤロープ401の異常を精度よく検査することが可能なワイヤロープ検査装置200、ワイヤロープ検査システム、および、ワイヤロープ検査方法を提供することができる。
【0103】
また、上記第2実施形態によるワイヤロープ検査装置200では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0104】
第2実施形態のワイヤロープ検査装置200は、複数の検知コイル(第1検知コイル520、第2検知コイル530、第3検知コイル540、および、第4検知コイル550)のうちの隣接する検知コイル同士は、Z方向(第1方向)において互いにずらされた位置に配置されている。そして、Z方向から見て、互いに隣り合う複数の検知コイルの直線部分同士がオーバラップするように構成されている。このように構成すれば、複数のワイヤロープ401同士の間隔が比較的狭い場合でも、複数のワイヤロープ401の各々に複数の検知コイルを取り付けることができる。
【0105】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0106】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0107】
たとえば、上記実施形態では、複数のワイヤロープ(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のX方向(第2方向)における位置を位置検知部70により検知する例を示したが、発明はこれに限られない。本発明では、磁気センサ、または、レーザ距離計(レーザ反射式の距離計)のようなセンサを、複数のワイヤロープが延びる第1方向において、複数の検知コイルに隣接するように配置して、複数の検知コイルと複数のワイヤロープとの第2方向における間隔を測定するように構成してもよい。
【0108】
たとえば、上記実施形態では、位置検知部70は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)のX方向(第2方向)における位置を検知するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置検知部は、複数のワイヤロープの第2方向における位置に加えて、複数のワイヤロープの第3方向における位置を検知するように構成してもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、位置検知部70は、磁気センサ71、72、73、74、75、76、77、および、78によって複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の位置を検知する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置検知部は、レーザ距離計(レーザ反射式の距離計)によって、レーザ距離計と複数のワイヤロープとの間の距離を計測して、複数のワイヤロープの位置を検知するように構成してもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、位置検知部70が複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の各々に設けられた複数の磁気センサ(磁気センサ71、72、73、74、75、76、77、および、78)により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のワイヤロープのうち、いずれかのワイヤロープに位置検知部を設けて、いずれかのワイヤロープに設けられた位置検知部の検知結果に基づいて、複数のワイヤロープに対する複数の検知コイルの位置を調整するように構成してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、位置調整機構60は、X方向(第2方向)において、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の位置を調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、
図12に示した第1変形例によるワイヤロープ検査装置600のように、位置調整機構660は、複数の検知コイル(第1検知コイル620、第2検知コイル630、第3検知コイル640、および、第4検知コイル650)のX方向(第2方向)における位置を調整するためのモータ661と、複数の検知コイルのY方向(第3方向)に位置を調整するためのモータ662とを含み、複数の検知コイルの位置をX方向(第2方向)およびY方向(第3方向)において、調整するようにしてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、複数の検知コイル(第1検知コイル20、第2検知コイル30、第3検知コイル40、および、第4検知コイル50)の各々は、複数のワイヤロープ401(ワイヤロープ401a、401b、401c、および、401d)の各々を複数のワイヤロープ401の各々のX方向側(第2方向)に設けられた直線部分および複数のワイヤロープ401の各々のY方向側(第3方向)に設けられた弧状部分により囲むように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の検知コイルの各々は、コイルが導体パターンとして形成された2枚の平面状のプリント基板からなる差動コイルで構成され、その配置が、各々のワイヤロープに対して、複数のワイヤロープのX方向側(第2方向)、または、Y方向側(第3方向)のいずれか一方のみに設けられるように構成してもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、Z方向(第1方向)から見て、Y方向(第3方向)における弧状部分(第2部分)と直線部分(第1部分)および弧状部分により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離は、X方向(第2方向)における直線部分の他方端部と直線部分および弧状部分により囲まれたワイヤロープ401の中心軸との間の距離よりも長くなるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1方向から見て、第3方向における第2部分と第1部分および第2部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離は、第2方向における第1部分の他方端部と第1部分および第2部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離と等しい距離でもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、複数のワイヤロープ401同士が互いに隣り合うX方向が複数のワイヤロープ401の振動幅が相対的に小さい方向(第2方向)である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のワイヤロープ同士が互いに隣り合う方向が複数のワイヤロープの振動幅が相対的に大きい方向(第3方向)であってもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、コイル21、31、41、および、51(第1コイル)は、Y1方向(複数のワイヤロープ401と離間する方向)に突出する湾曲形状を有するとともに、コイル22、32、42、および、52(第2コイル)は、Y2方向(複数のワイヤロープ401と離間する方向)に突出する湾曲形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1コイル、または、第2コイルのいずれかの一方のみが、複数のワイヤロープと離間する方向に突出する湾曲形状を有するように構成してもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、第1検知コイル20はコイル21および22を、第2検知コイル30はコイル31および32を、第3検知コイル40はコイル41および42を、第4検知コイル50はコイル51および52をそれぞれ含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の検知コイルの各々は、1つのコイルのみにより構成されてもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、また、コイル21、22、31、32、41、42、51、および、52は、各々、直線部分(第1部分)と弧状部分(第2部分)とを含むU字形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図12に示した第1変形例によるワイヤロープ検査装置600のように、複数の検知コイル(第1検知コイル620、第2検知コイル630、第3検知コイル640、および、第4検知コイル650)は、直線部分を含まずに弧状部分のみを含むコイル621、622、631、632、641、642、651、および、652によって構成されてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、また、コイル21、22、31、32、41、42、51、および、52は、各々、直線部分(第1部分)と弧状部分(第2部分)とを含むU字形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図13に示した第2変形例によるワイヤロープ検査装置700
のように、複数の検知コイル(第1検知コイル720、第2検知コイル730、第3検知コイル740、および、第4検知コイル750)は、第1部分および第2部分が、弧状部分を含まずに直線部分のみを含むコイル721、722、731、732、741、742、751、および、752によって構成されてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、複数の検知コイル(第1検知コイル520、第2検知コイル530、第3検知コイル540、および、第4検知コイル550)のうちの隣接する検知コイル同士は、Z方向(第1方向)において互いにずらされた位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、隣接する検知コイル同士を第1方向にずらさずに、第1方向と交差する方向(複数のワイヤロープ同士が互いに隣り合う方向)から見て、オーバラップ(重なる)ように構成してもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、コイル21、コイル31、コイル41、および、コイル51(第1コイル)と、コイル22、コイル32、コイル42、および、コイル52(第2コイル)とがフレキシブルプリント基板に導体パターンとして形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、プリント基板に形成された導体パターンにより第1コイルおよび第2コイルを構成してもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、本発明のワイヤロープ検査処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【0122】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0123】
(項目1)
複数のワイヤロープに対して磁束を印加する励磁部と、
複数のワイヤロープの各々に対応して設けられ、前記励磁部により磁束が印加される前記複数のワイヤロープに対して相対的に移動しながら前記複数のワイヤロープの各々の磁束を検知する複数の検知コイルと、
前記複数のワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応するように前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整する位置調整機構と、を備える、ワイヤロープ検査装置。
【0124】
(項目2)
前記複数のワイヤロープの前記第2方向における位置を検知する位置検知部をさらに備え、
前記位置調整機構は、前記位置検知部の検知結果に基づいて、前記第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応して、前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整するように構成されている、項目1に記載のワイヤロープ検査装置。
【0125】
(項目3)
前記複数の検知コイルの各々は、前記複数のワイヤロープの前記第1方向と直交する面内における前記第2方向側に設けられた第1部分と、前記第1部分と接続されるとともに、前記複数のワイヤロープの前記第1方向と直交する面内における前記第2方向に対して交差する第3方向側に設けられた第2部分とを含み、前記複数のワイヤロープの各々を前記第1部分および前記第2部分により囲むように構成されており、
前記位置調整機構は、前記第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応して、前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整するように構成されている、項目1または2に記載のワイヤロープ検査装置。
【0126】
(項目4)
前記複数の検知コイルの各々は、前記第1方向から見て、前記第3方向における前記第2部分と前記第1部分および前記第2部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離が、前記第2方向における前記第1部分と前記第1部分および前記第2部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離よりも長くなるように構成されており、
前記位置調整機構は、前記第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応して、前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整するように構成されている、項目3に記載のワイヤロープ検査装置。
【0127】
(項目5)
前記第2方向は、前記複数のワイヤロープの振動幅が相対的に小さい方向であり、
前記第3方向は、前記複数のワイヤロープの振動幅が相対的に大きい方向であり、
前記位置調整機構は、前記第2方向において、前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整可能に構成されている、項目3~4のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0128】
(項目6)
前記第2方向は、複数のワイヤロープ同士が互いに隣り合う方向であり、
前記位置調整機構は、前記第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応して、前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整可能に構成されている、項目3~5のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0129】
(項目7)
前記第2部分は、前記複数のワイヤロープと離間する方向に突出する湾曲形状を有し、前記第3方向において前記複数のワイヤロープの各々を挟むように一対ずつ配置されている、項目6に記載のワイヤロープ検査装置。
【0130】
(項目8)
前記複数の検知コイルの各々は、前記第1部分と前記第2部分とを含む第1コイルと、前記第1部分と前記第2部分とを含む第2コイルとを含み、前記第1コイルと前記第2コイルとが環状に配置されている、項目7に記載のワイヤロープ検査装置。
【0131】
(項目9)
前記第1部分は、間隔を隔てて平行に配置された一対の直線部分を含み、
前記第2部分は、一対の前記直線部分の一方端部同士を接続する前記湾曲形状の弧状部分を含み、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、各々、前記直線部分と、前記弧状部分とを含む前記第1方向から見てU字形状を有するコイルであり、
前記第1方向から見て、前記第3方向における前記弧状部分と前記直線部分および前記弧状部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離は、前記第2方向における前記直線部分の他方端部と前記直線部分および前記弧状部分により囲まれたワイヤロープの中心軸との間の距離よりも長い、項目8に記載のワイヤロープ検査装置。
【0132】
(項目10)
前記複数の検知コイルのうちの隣接する検知コイル同士は、前記第1方向において互いにずらされた位置に配置されており、前記第1方向から見て、互いに隣り合う前記複数の検知コイルの前記第1部分同士がオーバラップするように構成されている、項目3~9のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0133】
(項目11)
前記複数の検知コイルは、フレキシブルプリント基板に形成されている、項目1~10のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0134】
(項目12)
複数のワイヤロープの各々に対応して設けられ、前記複数のワイヤロープに対して相対的に移動しながら前記複数のワイヤロープの各々の磁束を検知する複数の検知コイルと、前記複数のワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応して、前記複数のワイヤロープに対する前記複数の検知コイルの位置を調整する位置調整機構とを含むワイヤロープ検査装置と、
前記複数の検知コイルの検知信号を取得する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、前記検知信号に基づいて、前記複数のワイヤロープの異常の有無を判定するように構成されている、ワイヤロープ検査システム。
【0135】
(項目13)
複数のワイヤロープの各々に対応して設けられた複数の検知コイルを、複数のワイヤロープに対して相対的に移動させながら複数のワイヤロープの各々の磁束を検知するステップと、
前記複数のワイヤロープが延びる第1方向と直交する第2方向において、前記複数の検知コイルに対する前記複数のワイヤロープの位置を取得するステップと、
取得した前記複数の検知コイルに対する前記複数のワイヤロープの位置に基づいて、前記第2方向において、前記複数のワイヤロープの振動に対応するように前記複数の検知コイルの位置を調整するステップと、
前記複数の検知コイルにより検知された前記複数のワイヤロープの磁束の変化に基づいて、前記複数のワイヤロープの異常の有無を判定するステップとを含む、ワイヤロープ検査方法。
【符号の説明】
【0136】
10 励磁部
20、520 第1検知コイル
21、31、41、51、521、531、541、551 コイル(第1コイル)
21a、21b、22a、22b、31a、31b、32a、32b、41a、41b、42a、42b、51a、51b、52a、52b、521a、521b、522a、522b、531a、531b、532a、532b、541a、541b、542a、542b、551a、551b、552a、552b 直線部分(第1部分)
21c、22c、31c、32c、41c、42c、51c、552c、521c、522c、531c、532c、541c、542c、551c、552c 弧状部分(第2部分)
21e、21f、22e、22f、31e、31f、32e、32f、41e、41f、42e、42f、51e、51f、52e、52f 他方端部
22、32、42、52、522、532、542、552 コイル(第2コイル)
30、530 第2検知コイル
40、540 第3検知コイル
50、550 第4検知コイル
60 位置調整機構
70 位置検知部
100 ワイヤロープ検査システム
200、500 ワイヤロープ検査装置
300 処理装置
400 エレベータ
401 (複数の)ワイヤロープ
401a、401b、401c、401d:ワイヤロープ
D1 距離
D2 距離
D3 距離