(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】漏電遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20230926BHJP
H02H 3/34 20060101ALI20230926BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01H83/02 E
H01H83/02 H
H02H3/34 M
H02H3/16 B
(21)【出願番号】P 2020086823
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晋
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】細岡 洋平
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-094161(JP,A)
【文献】特開2017-096644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 83/02
H02H 3/34
H02H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏電電流を検出するための漏電電流検出回路と、サージ電流を検出するためのサージ電流検出回路とを備える漏電遮断器であって、
前記漏電電流検出回路は、
主回路導体線路を囲む第1の磁気コアに巻回された第1の励磁コイルに、前記第1の磁気コアが飽和状態になるように励磁電流を供給し、該励磁電流に応答して、所定のしきい値に従った電圧パルスを出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される電圧パルスのデューティ比の変化を電圧の変化として出力する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路から出力される電圧と第1の基準電圧との比較に基づく第1の比較結果信号を出力する第1の比較回路と、を備え、
前記サージ電流検出回路は、
前記主回路導体線路を囲む第2の磁気コアに巻回された第2の励磁コイルに流れる信号を検出する第1の信号検出回路と、
前記第1の信号検出回路から出力される信号の電圧と第2の基準電圧との比較に基づく第2の比較結果信号を出力する第2の比較回路と、
前記第2の比較回路から出力される前記第2の比較結果信号が所定のしきい値を超えている間、前記第2の比較結果信号を反転した反転信号を出力する反転回路と、を備え、
前記漏電遮断器は更に、
前記第1の比較回路から出力される第1の比較結果信号と前記反転回路から出力される反転信号とに基づいて第1の出力信号を決定し、出力する第1の出力制御回路と、
前記第1の出力制御回路から出力される第1の出力信号に基づいて、前記主回路導体線路を遮断するための遮断スイッチを制御する遮断スイッチ制御回路と、を備える、
漏電遮断器。
【請求項2】
前記電圧変換回路から出力される電圧の絶対値を出力する絶対値回路を更に備え、
前記第1の比較回路は、前記絶対値回路から出力される前記電圧の絶対値と前記第1の基準電圧とを比較して、前記電圧の絶対値が前記第1の基準電圧を超える場合に前記第1の比較結果信号を出力する、
請求項1に記載の漏電遮断器。
【請求項3】
前記第1の信号検出回路は、前記第2の励磁コイルの両端の電圧に基づく信号を検出するように構成された差動増幅回路である、
請求項1又は2に記載の漏電遮断器。
【請求項4】
前記第2の比較回路は、前記第1の信号検出回路から出力される信号の電圧を、前記第2の基準電圧として正側と負側との両方に設定された所定のしきい値と比較して、前記第1の信号検出回路から出力される信号の電圧が該正側のしきい値を超える場合又は該負側のしきい値を下回る場合に前記第2の比較結果信号を出力する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の漏電遮断器。
【請求項5】
前記第2の比較回路から出力される前記第2の比較結果信号の値を、所定の時間の間、一定の値以上になるように維持する出力維持回路を更に備え、
前記反転回路は、前記出力維持回路から出力される前記第2の比較結果信号に対して反転した前記反転信号を出力する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の漏電遮断器。
【請求項6】
前記第1の出力制御回路は、前記第1の比較回路から出力される前記第1の比較結果信号と前記反転回路から出力される前記反転信号との論理積の結果を前記第1の出力信号として出力する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の漏電遮断器。
【請求項7】
前記漏電電流検出回路は、前記主回路導体線路を流れる漏電電流の交流成分を検出する交流成分検出回路を更に含む、
請求項1に記載の漏電遮断器。
【請求項8】
前記交流成分検出回路は、
前記第2の励磁コイルの両端の電圧に基づく信号を検出する第2の信号検出回路と、
前記第2の信号検出回路により検出された信号に基づく電圧と第3の基準電圧との比較に基づく第3の比較結果信号を出力する第3の比較回路を備え、
前記漏電遮断器は、
前記第3の比較回路から出力される前記第3の比較結果信号と前記反転回路から出力される前記反転信号とに基づいて第2の出力信号を決定し、出力する第2の出力制御回路と、を更に備え、
前記遮断スイッチ制御回路は、前記第1の出力制御回路から出力される第1の出力信号又は前記第2の出力制御回路から出力される第2の出力信号のいずれかに基づいて、前記主回路導体線路を遮断するための遮断スイッチを制御する、
請求項7に記載の漏電遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
漏電遮断器は、漏電等の異常時に、導体線路を遮断して、意図しない電流から人体を保護する回路である。一般には、漏電遮断器は、過負荷や短絡による過電流から回路を保護する過電流遮断機能を併せ持つ。漏電遮断器には、漏電等の検出のために例えば零相変流器が組み込まれている。零相変流器は、地絡故障時に流れる零相電流を検出する変流器である。具体的には、平常時、導体線路を流れる三相電流のベクトル和は0になるが、地絡すると、グランドを電路として電流が流れるため、ベクトル和が0にならない性質を用いて、漏電遮断器は地絡故障や漏電を検出し得る。
【0003】
漏電遮断器の一例として、下記特許文献1がある。特許文献1の漏電遮断器は、導体を囲む磁気コア及びこの磁気コアに巻回した二次巻線を有する変流器と、二次巻線aに励磁電流を供給する励磁回路と、この励磁電流から導体における漏電電流を含む測定信号を検出する測定信号検出回路と、測定信号を直流成分と交流成分とに分離する分離回路と、直流用定格感度設定部と交流用定格感度設定部と、導体を遮断可能な遮断器と、遮断制御部とを備える。遮断制御部は、分離回路で分離された測定信号の直流/交流成分が直流/交流用の定格感度設定部で設定された直流/交流の定格感度電流値を超える場合に、導体を遮断器で遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された漏電遮断器では、導体線路に雷サージ電流のような大電流が流れた場合、直流/交流成分の値が定格感度電流値を超えてしまい、これにより、漏電が実際には生じていないにも拘わらず、意図しない遮断動作をしてしまうという課題があった。
そこで、本発明は、漏電に対する人体保護を確保しつつ、導体線路に雷サージ電流のような大電流が流れた場合であっても、不要な遮断動作を回避し得る漏電遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
ある観点に従う本発明は、漏電電流を検出するための漏電電流検出回路と、サージ電流を検出するためのサージ電流検出回路とを備える漏電遮断器である。前記漏電電流検出回路は、主回路導体線路を囲む第1の磁気コアに巻回された第1の励磁コイルに、前記第1の磁気コアが飽和状態になるように励磁電流を供給し、該励磁電流に応答して、所定のしきい値に従った電圧パルスを出力する発振回路と、前記発振回路から出力される電圧パルスのデューティ比の変化を電圧の変化として出力する電圧変換回路と、前記電圧変換回路から出力される電圧と第1の基準電圧との比較に基づく第1の比較結果信号を出力する第1の比較回路とを備える。また、前記サージ電流検出回路は、前記主回路導体線路を囲む第2の磁気コアに巻回された第2の励磁コイルに流れる信号を検出する第1の信号検出回路と、前記第1の信号検出回路から出力される信号の電圧と第2の基準電圧との比較に基づく第2の比較結果信号を出力する第2の比較回路と、前記第2の比較回路から出力される前記第2の比較結果信号が所定のしきい値を超えている間、前記第2の比較結果信号を反転した反転信号を出力する反転回路とを備える。また、前記漏電遮断器は、前記第1の比較回路から出力される第1の比較結果信号と前記反転回路から出力される反転信号とに基づいて出力信号を決定し、出力する第1の出力制御回路と、前記第1の出力制御回路から出力される第1の出力信号に基づいて、前記主回路導体線路を遮断するための遮断スイッチを制御する遮断スイッチ制御回路とを備える。
【0007】
前記漏電遮断器では、前記主回路導体線路にサージ電流が流れた場合であっても、前記反転回路から信号が出力されない(例えば信号が「L」を示す)ため、不要な遮断動作は行われない。また、サージ電流が検出されない状態では、前記反転回路から信号が出力され(例えば信号が「H」を示す)、前記漏電電流検出回路により異常電流が検出された場合には、前記第1の比較回路から信号が出力されるため、前記第1の出力制御回路119は、出力信号を出力し、これにより、遮断スイッチ制御回路は、遮断動作を行う。
【0008】
また、前記漏電遮断器は、前記電圧変換回路から出力される電圧の絶対値を出力する絶対値回路を更に備え得る。前記第1の比較回路は、前記絶対値回路から出力される前記電圧の絶対値と前記第1の基準電圧とを比較して、前記電圧の絶対値が前記第1の基準電圧を超える場合に前記第1の比較結果信号を出力し得る。
前記第1の信号検出回路は、前記第2の励磁コイルの両端の電圧に基づく信号を検出するように構成された差動増幅回路であり得る。
【0009】
前記第2の比較回路は、前記第1の信号検出回路から出力される信号の電圧を、前記第2の基準電圧として正側と負側との両方に設定された所定のしきい値と比較して、前記第1の信号検出回路から出力される信号の電圧が該正側のしきい値を超える場合又は該負側のしきい値を下回る場合に前記第2の比較結果信号を出力し得る。
また、前記漏電遮断器は、前記第2の比較回路から出力される前記第2の比較結果信号の値を、所定の時間の間、一定の値以上になるように維持する出力維持回路を更に備え得る。そして、前記反転回路は、前記出力維持回路から出力される前記第2の比較結果信号に対して反転した前記反転信号を出力し得る。
【0010】
前記第1の出力制御回路は、前記第1の比較回路から出力される前記第1の比較結果信号と前記反転回路から出力される前記反転信号との論理積の結果を前記出力信号として出力し得る。
前記漏電電流検出回路は、前記主回路導体線路を流れる漏電電流の交流成分を検出する交流成分検出回路を更に含み得る。
前記交流成分検出回路は、前記第2の励磁コイルの両端の電圧に基づく信号を検出する第2の信号検出回路と、前記第2の信号検出回路により検出された信号に基づく電圧と第3の基準電圧との比較に基づく第3の比較結果信号を出力する第3の比較回路を備え得る。前記漏電遮断器は、前記第3の比較回路から出力される前記第3の比較結果信号と前記反転回路から出力される前記反転信号とに基づいて出力信号を決定し、出力する第2の出力制御回路とを更に備え得る。そして、前記遮断スイッチ制御回路は、前記第1の出力制御回路から出力される第1の出力信号又は前記第2の出力制御回路から出力される第2の出力信号のいずれかに基づいて、前記主回路導体線路を遮断するための遮断スイッチを制御し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導体線路に雷サージ電流のような大電流が流れた場合であっても、不要な遮断動作を回避し得るので、漏電に対する人体保護を確保することができる。
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の電圧変換回路の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の発振回路から供給される励磁電圧の変化及び電圧変換回路から出力されるパルス波の電圧の変化の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の差動増幅回路の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の第2の比較回路の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の出力維持回路の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の反転回路の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の出力制御回路の構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器によりサージ電流を検出した際の各回路の出力を説明するための図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る漏電遮断器の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、漏電遮断器1は、例えば2本の導線からなる主回路導体線路101に電磁的に結合されるように設けられる。主回路導体線路101は、1本の導線でも良いし、また、三相対応の3本の導線であっても良い。漏電遮断器1は、後述するように、電流の異常状態を検出した場合に、主回路導体線路101を遮断(開極)する遮断スイッチ102を備える。
【0015】
本開示の漏電遮断器1は、漏電を検出するための回路と、サージ電流を検出するための回路とを含み構成される。すなわち、漏電遮断器1は、漏電電流検出回路として、第1の磁気コア103と、第1の励磁コイル104と、発振回路105と、電圧変換回路106と、第1の増幅回路107と、絶対値回路108と、第1の比較回路109とを含み構成される。また、漏電遮断器1は、サージ電流検出回路として、第2の磁気コア113と、第2の励磁コイル114と、差動増幅回路115と、第2の比較回路116と、出力維持回路117と、反転回路118とを含み構成される。更に、漏電遮断器1は、漏電電流検出回路及びサージ電流検出回路からの出力をそれぞれ制御する第1の出力制御回路119と、判定回路120と、遮断スイッチ102を駆動する信号を出力する駆動信号出力回路121とを含み構成される。
【0016】
第1の磁気コア103は、例えば円環状に形成された磁性体であり、該円環内を主回路導体線路101が挿通している。第1の励磁コイル104は、第1の磁気コア103の少なくとも一部分に、所定巻回数で巻回され設けられている。第1の磁気コア103と第1の励磁コイル104は、主回路導体線路101に流れる電流に応じた信号を生成する第1の変流器を構成する。
【0017】
発振回路105は、第1の磁気コア103を飽和させる励磁電流を第1の励磁コイル104に供給する回路である。すなわち、発振回路105は、第1の磁気コア103が飽和する状態に合わせて設定された所定のしきい値に従って極性を反転させた励磁電流を第1の励磁コイル104に供給する。発振回路105は、第1の励磁コイル104に供給した励磁電流に応答して第1の励磁コイル104の両端部の電圧に応じたパルス波(矩形波)を電圧変換回路に出力する。
電圧変換回路106は、発振回路105から出力される電圧パルスに基づいて電圧の変化を取り出すための回路である。すなわち、電圧変換回路106は、発振回路105から出力される電圧パルスのデューティ比の変化を、電圧の変化を示す信号として取り出す。例えば積分回路は、電圧変換回路106の一態様である。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の電圧変換回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本例の電圧変換回路106は、抵抗201及び202と、コンデンサ203及び204と、オペアンプ205とを含む積分回路として構成されている。本例の積分回路は、2次ローパスフィルタとして構成されているが、これに限られない。電圧変換回路106は、2次ローパスフィルタの作用により、検出される電流信号のノイズを平滑化し得る。
【0019】
上述した発振回路105と電圧変換回路106との動作は、以下のとおりである。すなわち、発振回路105が第1の励磁コイル104に励磁電流を供給すると、最初に、第1の磁気コア103のインダクタンスで決まる電流が流れ、第1の磁気コア103が飽和すると、これに伴い、第1の磁気コア103のインダクタンスが消失し、第1の励磁コイル104の抵抗に依存する電流が急激に流れる。この時、励磁電圧は、
図3に示すように変化し、この励磁電圧が所定のしきい値を超えることで極性が反転し、これにより、発振回路105は、逆方向の励磁電流を供給し始める。発振回路105は、このような動作を繰り返すことで、
図3に示すようなパルス波を電圧変換回路106に出力する。
【0020】
このような状態において、第1の磁気コア103に挿通された主回路導体線路101に任意の電流が流れると、該電流に応じたインダクタンスが消失するタイミングの変化に伴って、励磁電流もまたインダクタンスが消失するタイミングで急激に変化し、これにより、第1の励磁コイル104を流れる電流のデューティ比に変化が現れる。電圧変換回路106は、このようなディーティ比の変化を積分回路(電圧変換回路106)により電圧差として取り出して、主回路導体線路101に流れる電流の信号を検出する。
【0021】
図1に戻り、第1の増幅回路107は、電圧変換回路106から出力される信号の電圧を増幅する回路である。図示していないが、第1の増幅回路107は、例えば、抵抗とオペアンプとを含み構成される。第1の増幅回路107は、増幅した信号を絶対値回路108に出力する。
絶対値回路108は、第1の増幅回路107から出力される信号を全波整流する回路である。図示していないが、絶対値回路108は、例えば、抵抗と、ダイオードと、オペアンプとを含み構成される。絶対値回路108は、全波整流した信号を第1の比較回路109に出力する。
【0022】
第1の比較回路109は、絶対値回路108から出力される信号の電圧を、所定の基準電圧(第1の基準電圧)と比較する回路である。図示していないが、第1の比較回路109は、例えば、抵抗とオペアンプとを含み構成される。なお、オペアンプに代え、コンパレータが用いられても良い。第1の比較回路は、絶対値回路108から出力される信号の電圧と所定の基準電圧(第1の基準電圧)とを比較した結果を示す信号(例えば「H」又は「L」を示す信号)を第1の出力制御回路119に出力する。
【0023】
サージ電流を検出するために設けられた第2の磁気コア113もまた、例えば円環状に形成された磁性体であり、該円環内を主回路導体線路101が挿通している。第2の励磁コイル114は、第2の磁気コア113の少なくとも一部分に、所定巻回数で巻回されて設けられている。第2の磁気コア113と第2の励磁コイル114は、主回路導体線路101に流れる電流に応じた信号を生成する第2の変流器を構成する。
差動増幅回路115は、第2の磁気コア113に巻回された第2の励磁コイル114から差動信号を取り出す信号検出回路である。
図4は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の差動増幅回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本例の差動増幅回路115は、抵抗401~404と、オペアンプ405とを含み構成される。差動増幅回路115は、抵抗401を介して検出される信号と抵抗402を介して検出される信号とをオペアンプ405により所定の差動利得で増幅し、増幅した差動信号を第2の比較回路116に出力する。
【0024】
図1に戻り、第2の比較回路116は、差動増幅回路115から出力される差動信号の電圧を、所定の基準電圧(第2の基準電圧)と比較する回路である。第2の基準電圧は、平常時に主回路導体線路101に流れる電流から得られる差動信号の電圧よりも高い値に設定される。したがって、第2の比較回路116は、主回路導体線路101にサージ電流が流れた場合に、差動信号の電圧が第2の基準電圧を超え、検出信号を出力する。
【0025】
図5は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の第2の比較回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本例の第2の比較回路116は、例えば、抵抗501~503とオペアンプ504及び505とを含み構成され、所定の基準電圧(第2の基準電圧)として、正側と負側との両方にしきい値を設定できるように構成される。なお、オペアンプに代え、コンパレータが用いられても良い。
【0026】
出力維持回路117は、入力される信号の値を、所定の時間の間、一定の値以上に維持するための回路である。
図6は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の出力維持回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本例の出力維持回路117は、ダイオード601及び602と、コンデンサ603と、抵抗604とを含み構成される。出力維持回路117は、コンデンサ603により信号振幅のピーク電圧を検出し、所定の時間の間、所定のしきい値(反転回路118のしきい値)が下回らないように、保持し得る。所定の時間は、コンデンサ603と抵抗604とに依存する。ピークホールド回路は、出力維持回路117の一態様である。出力維持回路117は、検出したピーク電圧を反転回路118に出力する。
【0027】
反転回路118は、出力維持回路117から出力される信号のピーク電圧の値が所定のしきい値を超えている間、該信号を反転した反転信号を出力する回路である。
図7は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の反転回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本例の反転回路118は、抵抗701及び702と、オペアンプ703とを含み論理否定回路(NOT回路)として構成される。反転回路118は、論理否定した結果を示す信号(例えば「H」又は「L」を示す2値で示される。)を第1の出力制御回路119に出力する。
【0028】
第1の出力制御回路119は、第1の比較回路109から出力される比較結果信号と、反転回路118から出力される論理否定結果信号とに基づいて出力信号を決定し、出力する回路である。第1の出力制御回路119は、サージ電流が検出された場合に、漏電の検出に関する第1の比較回路109からの出力による不要な遮断動作を抑制するための信号を出力する。
【0029】
図8は、本発明の一実施形態に係る漏電遮断器の出力制御回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本例の第1の出力制御回路119は、抵抗801と、ダイオード802及び803とを含み論理積回路(AND回路)として構成される。第1の出力制御回路119は、比較結果信号と論理否定結果信号とに基づく論理積の結果を示す信号(例えば「H」又は「L」を示す信号)を判定回路120に出力する。
【0030】
判定回路120は、第1の出力制御回路119から出力される信号が所定の値(例えば「H」)であるか否かを判定する回路である。すなわち、判定回路120は、第1の出力制御回路119から出力される論理積結果信号の値が「H」を示す場合に、駆動指示信号を駆動信号出力回路121に出力する。これを受けて、駆動信号出力回路121は、駆動信号を遮断スイッチ102に出力し、遮断スイッチ102は開極動作する。判定回路120と駆動信号出力回路121とは、遮断スイッチ制御回路を構成する。
【0031】
次に、上記のように構成された漏電遮断器1による雷等によるサージ電流を検出した際の動作を、
図9を用いて説明する。
図9は、発明の一実施形態に係る漏電遮断器の動作による各回路の出力の一例を示すグラフである。
主回路導体線路101にサージ電流が流れると、第2の励磁コイル114の両端に電圧の変化が生じ、差動増幅回路115により該電圧が増幅されて、第2の比較回路116に第2の基準電圧(本例では正側のしきい値)を超える信号として入力される(
図9(a))。これにより、第2の比較回路116は、
図9(b)に示すように、第2の基準電圧を超える間、比較結果信号を出力する。第2の比較回路116から出力される比較結果信号は、出力維持回路117に入力される。なお、同図は、一例として、サージ電流が正方向に出力された場合を示しているが、負方向に出力された場合には、負側のしきい値を下回ることで、第2の比較回路116は検出信号を出力する。
【0032】
出力維持回路117は、第2の比較回路116からの出力を受けて、コンデンサ603及び抵抗604により設定された所定の時間の間、該出力を維持する(
図9(c))。出力維持回路117からの出力は、反転回路118に入力される。
反転回路118は、出力維持回路117からの入力が所定のしきい値を下回るまでは出力を抑制し(“L”を示す値を出力し)、出力維持回路117からの入力が所定のしきい値を下回ると出力を開始する(“H”を示す値を出力する)(
図9(d))。
【0033】
一方、このサージ電流が流れたタイミングで、漏電電流検出回路としての発振回路105乃至第1の比較回路109は、平常状態の電流検出の動作と変わらない。このため、第1の比較回路109は、
図9(e)に示すように、不要な遮断動作に起因する意図しない信号が出力される。
この状態で、第1の出力制御回路119は、第1の比較回路109からの出力と反転回路118との出力の論理積を行い、その結果を判定回路120に出力する。つまり、第1の出力制御回路119は、第1の比較回路109と反転回路118との両方から出力される信号が「H」である場合に限り、「H」を示す信号を出力する。これにより、主回路導体線路101にサージ電流が流れた場合であっても、反転回路118から出力される信号が「L」となるため、不要な遮断動作は行われない。また、サージ電流が検出されない状態では、反転回路118から出力される信号は「H」であり、漏電電流検出回路により異常電流が検出された場合には、第1の比較回路から出力される信号が「H」となるため、第1の出力制御回路119は、「H」の信号を出力し、これにより、遮断動作が行われることになる。
以上のように、本実施形態によれば、雷サージ電流のような過渡的な大電流を検出した場合であっても、反転回路118により信号が「L」となるため、不要な遮断動作を抑制することができる
【0034】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の他の実施形態に係る漏電遮断器の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。本実施形態の漏電遮断器1は、漏電電流検出回路が直流成分検出回路と交流成分検出回路とを含み構成されている。直流成分検出回路は、上述した第1の実施形態と同じである。一方、交流成分検出回路は、抵抗125と、フィルタ回路126と、第2の増幅回路127と、第3の比較回路128と、第2の出力制御回路129とを含み構成されている。また、漏電遮断器1は、第1の出力制御回路119の出力と第2の出力制御回路129の出力との論理和を判定回路120に出力する論理和回路130とを含む。なお、反転回路118から出力される反転信号は、第1の出力制御回路119及び第2の出力制御回路129の両方に出力される。
【0035】
抵抗125は、第2の磁気コア113に巻回された第2の励磁コイル114に誘起される電流信号を電圧信号に変換する。本開示では、抵抗125は、第2の励磁コイル114の両端に接続されているが、これに限られず、第1の励磁コイル104の両端に接続されても良い。フィルタ回路126は、主回路導体線路101上を流れる漏電電流の交流成分を検出する。フィルタ回路126は、例えばローパルスフィルタ回路であり、インパルス性のノイズや高周波電流を吸収し得る。
【0036】
第2の増幅回路127は、フィルタ回路126から出力される信号の電圧を増幅する回路である。第2の増幅回路127は、例えば、抵抗とオペアンプとを含み構成される。第2の増幅回路127は、増幅した信号を第3の比較回路128に出力する。
第3の比較回路は、第2の増幅回路127により増幅された信号の電圧を、所定の基準値(第3の基準電圧)と比較して、その比較した結果を示す信号(例えば「H」又は「L」を示す信号)を第2の出力制御回路129に出力する。
【0037】
第2の出力制御回路129は、反転回路118から出力される論理否定結果信号と、第3の比較回路128から出力される比較結果信号と、信号の出力を制御する回路である。第2の出力制御回路129は、第1の出力制御回路119と同様に、論理積回路(AND回路)として構成される。第2の出力制御回路129は、比較結果信号と論理否定結果信号とに基づく論理積の結果を示す信号を論理和回路130に出力する。
論理和回路130は、第1の出力制御回路119から出力される信号と第2の出力制御回路129から出力される信号との論理和の結果を示す信号を出力する。つまり、本実施形態では、直流成分又は交流成分のいずれかが検出されれば、判定回路120に信号が出力されることになる。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、上記第1の実施形態が奏する利点に加え、直流成分又は交流成分のどちらか一方で漏電電流を検出した場合であっても、適切な遮断動作が行われる。とりわけ、直流成分と交流成分とでは、人体に対する影響が異なるため、直流成分及び交流成分のそれぞれに応じたしきい値で漏電電流を検出することにより、効率的に遮断動作を行うことができるようになる。
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0039】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…漏電遮断器
101…主回路導体線路
102…遮断スイッチ
103…第1の磁気コア
104…第1の励磁コイル
105…発振回路
106…電圧変換回路
107…第1の増幅回路
108…絶対値回路
109…第1の比較回路
113…第2の磁気コア
114…第2の励磁コイル
115…差動増幅回路
116…第2の比較回路
117…出力維持回路
118…反転回路
119…第1の出力制御回路
120…判定回路
121…駆動信号出力回路
125…抵抗
126…フィルタ回路
127…第2の増幅回路
128…第3の比較回路
129…第2の出力制御回路
130…論理和回路