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  • 特許-樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/34 20060101AFI20230926BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230926BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C08F212/34
C08F2/44 A
B32B27/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020117010
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2021014577
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019130692
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
(72)【発明者】
【氏名】野崎 浩平
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194504(JP,A)
【文献】特表2010-540746(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220996(WO,A1)
【文献】特開2011-231161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物
(B)ラジカル重合性化合物(但し、(A)成分に該当するものを除く。)及び
(C)無機充填剤を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分が、下記一般式(A-1)で表される化合物、及び下記一般式(A-2)で表される化合物のいずれかであり、
(A)成分の重量平均分子量が、150以上3000以下であり、
(B)成分が、マレイミド基を含有するマレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル基を含有するビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、及びベンゾシクロブテン系ラジカル重合性化合物の少なくともいずれかであり、
該(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物が、下記式(x)で表される2価の環状基を有し、
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上30質量%以下であり、
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上40質量%以下であり、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、樹脂組成物。
【化1】
(一般式(A-1)中、Ar 11 は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar 12 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar 13 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【化2】
(一般式(A-2)中、Ar 21 は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、Ar 22 は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。mは、2又は3の整数を表す。)
【化3】
【請求項2】
さらに、(D)熱可塑性樹脂を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)熱硬化性樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、マレイミド基を含有するマレイミド系ラジカル重合性化合物、及びビニルフェニル基を含有するビニルフェニル系ラジカル重合性化合物のいずれかを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
絶縁層形成用である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
導体層を形成するための絶縁層形成用である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項9】
請求項に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。
【0003】
このような絶縁層に用いられるプリント配線板の絶縁材料として、例えば、特許文献1に樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-6869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、絶縁層の誘電率及び誘電正接等の誘電特性のさらなる向上、並びにメッキで形成された導体層との間のピール強度のさらなる向上が求められている。また、凹凸がある基板上に樹脂シートをラミネートして絶縁層を形成すると、絶縁層の基板とは反対側の表面が基板の凹凸に追従して絶縁層の平坦性が低下し、硬化基板にムラ(絶縁層表面のムラ)が生じることがある。硬化基板にムラがあると絶縁層の組成が不均一となるので、配線形成性が劣ってしまうことがある。
【0006】
本発明の課題は、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、及びピール強度に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、所定量の(A)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物、及び(B)ラジカル重合性化合物を含有させることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物、及び
(B)ラジカル重合性化合物、を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上30質量%以下である、樹脂組成物。
[2] (A)成分が、下記一般式(A-1)で表される化合物、及び下記一般式(A-2)で表される化合物のいずれかである、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(A-1)中、Ar11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【化2】
(一般式(A-2)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。mは、2又は3の整数を表す。)
[3] さらに、(C)無機充填材を含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、[3]に記載の樹脂組成物。
[5] さらに、(D)熱可塑性樹脂を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] さらに、(E)熱硬化性樹脂を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (B)成分が、マレイミド基を含有するマレイミド系ラジカル重合性化合物、及びビニルフェニル基を含有するビニルフェニル系ラジカル重合性化合物のいずれかを含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 絶縁層形成用である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 導体層を形成するための絶縁層形成用である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[11] [1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[12] [11]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、ピール強度、及び破断点伸度に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、熱硬化性樹脂の液状、半固形状、及び固形状の判定に用いた2本の試験管の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物、及び(B)ラジカル重合性化合物、を含有する樹脂組成物であって、(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上30質量%以下である。本発明では、所定量の(A)成分を含有させ、さらに(B)成分を含有させることで、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、及びピール強度に優れる硬化物を得ることができる。また、通常は、破断点伸度も優れる硬化物を得ることができる。
【0013】
樹脂組成物は、(A)~(B)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(C)無機充填材、(D)熱可塑性樹脂、(E)熱硬化性樹脂、(F)硬化促進剤、及び(G)その他の添加剤等が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物>
樹脂組成物は、(A)成分として(A)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有する。(A)成分を樹脂組成物に含有させることで、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる。(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(A)成分の含有量としては、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下であり、好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0016】
(A)成分は、芳香族エステル骨格を有する。芳香族エステル骨格は、エステル結合と、そのエステル結合の一端又は両端に結合した芳香環とを有する骨格を表す。中でも、エステル結合の両端に芳香環を有するものが好ましい。このような骨格を有する基としては、例えば、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリーレンカルボニルオキシ基、アリーレンオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシアリーレン基、アリールオキシカルボニルアリーレン基、アリーレンカルボニルオキシアリーレン基、アリーレンオキシカルボニルアリーレン基等が挙げられる。また、このような骨格を有する基の炭素原子数は好ましくは7~20、より好ましくは7~15、さらに好ましくは7~11である。アリール基及びアリーレン基等の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0017】
アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリル基、フタラジニル基、プテリジニル基、クマリニル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、アクリジニル基等の縮合環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;等が挙げられる。
【0018】
アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基(-C-C-)等が挙げられる。
【0019】
(A)成分は、不飽和結合を含有する。この不飽和結合は、好ましくは、炭素-炭素不飽和結合である。不飽和結合としては、不飽和結合を少なくとも1つ有する置換基として有することが好ましい。不飽和結合しては、例えば、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数2~30のアルキニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられる。不飽和結合は、末端の芳香族炭化水素基の置換基として有することが好ましく、両末端の芳香族炭化水素基の置換基として有することがより好ましい。
【0020】
炭素原子数2~30のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、1-ウンデセニル基、1-ペンタデセニル基、3-ペンタデセニル基、7-ペンタデセニル基、1-オクタデセニル基、2-オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3-ブタジエニル基、1,4-ブタジエニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ペンタデカ-4,7-ジエニル基、ヘキサ-1,3,5-トリエニル基、ペンタデカ-1,4,7-トリエニル基等が挙げられる。
【0021】
炭素原子数2~30のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1,3-ブタジイニル基等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、不飽和結合としては、炭素原子数2~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数2~10のアルケニル基であることがより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニル基であることがさらに好ましく、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基であることがさらにより好ましく、アリル基であることが特に好ましい。
【0023】
(A)成分は、芳香族エステル骨格に加えて、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、及びこれらの組み合わせからなる基のいずれかを有していてもよい。用語「芳香族炭化水素基」とは、芳香環を含む炭化水素基を意味し、芳香環は単環、多環、複素環のいずれであってもよい。
【0024】
芳香族炭化水素基としては、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリーレン基、アラルキレン基がより好ましく、アリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素原子数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素原子数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。これらの中でも、フェニレン基が好ましい。
【0025】
脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0026】
シクロアルキレン基としては、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、3~15のシクロアルキレン基がより好ましく、5~10のシクロアルキレン基がさらに好ましい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基、下記式(a)~(d)で表されるシクロアルキレン基等が挙げられる。式(a)~(d)中、「*」は結合手を表す。
【化3】
【0027】
芳香族エステル骨格、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、及び不飽和炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、不飽和炭化水素基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基は、単独で含んでいても、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0028】
炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基が挙げられる。
【0029】
炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。不飽和炭化水素基は、上記したとおりである。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0031】
(A)成分は、下記一般式(A-1)で表される化合物、及び下記一般式(A-2)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【化4】
(一般式(A-1)中、Ar11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【化5】
(一般式(A-2)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。mは、2又は3の整数を表す。)
【0032】
一般式(A-1)中、Ar11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリル基、フタラジニル基、プテリジニル基、クマリニル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、アクリジニル基等の縮合環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;等が挙げられ、中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、フェニル基が好ましい。Ar11が表す1価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。中でも、Ar11の置換基は、不飽和結合を含有することが好ましい。
【0033】
一般式(A-1)中、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられ、アリーレン基が好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素原子数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素原子数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。これらの中でも、フェニレン基が好ましい。
【0034】
Ar12が表す2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0035】
一般式(A-1)中、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、これらの組み合わせからなる2価の基が好ましい。2価の芳香族炭化水素基としては、Ar12が表す2価の芳香族炭化水素基と同様である。
【0036】
2価の脂肪族炭化水素基としては、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
【0037】
アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0038】
シクロアルキレン基としては、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、3~15のシクロアルキレン基がより好ましく、5~10のシクロアルキレン基がさらに好ましい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基、上記式(a)~(d)で表されるシクロアルキレン基等が挙げられ、式(c)で表されるシクロアルキレン基が好ましい。
【0039】
これらの組み合わせからなる2価の基としては、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及び置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を組み合わせた2価の基が好ましく、複数の、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及び複数の、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を交互に組み合わせた2価の基がより好ましい。前記の2価の基の具体例としては、以下の(A1)~(A8)の2価の基を挙げることができる。式中、a1~a8は、0~10の整数を表し、好ましくは0~5の整数を表す。「*」は、結合手を表し、波線は、(A)成分を合成する際に用いる芳香族化合物、芳香族化合物の酸ハロゲン化物、又は芳香族化合物のエステル化物が反応して得られる構造を表す。
【化6】
【化7】
【0040】
Ar13が表す2価の芳香族炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0041】
一般式(A-1)中、nは、0~10の整数を表し、0~5の整数を表すことが好ましく、0~3の整数を表すことがより好ましい。なお、一般式(A-1)で表される化合物がオリゴマー又はポリマーである場合、nはその平均値を表す。
【0042】
一般式(A-2)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表す。m価の芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6~30のm価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素原子数が6~20のm価の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素原子数が6~10のm価の芳香族炭化水素基がさらに好ましい。Ar21が表すm価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0043】
一般式(A-2)中、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。Ar22は、一般式(A-1)中のAr11が表す芳香族炭化水素基と同様である。Ar22が表す1価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0044】
一般式(A-2)中、mは、2又は3の整数を表し、2が好ましい。
【0045】
(A)成分の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。また、(A)成分の具体例としては、国際公開第2018/235424号に記載の段落0068~0071、及び国際公開第2018/235425号に記載の段落0113~0115に記載の化合物が挙げられる。但し、(A)成分はこれら具体例に限定されるものではない。式中、sは0又は1以上の整数を表しrは1~10の整数を表す。
【化8】
【0046】
(A)成分は、公知の方法により合成したものを使用してよい。(A)成分の合成は、例えば、国際公開第2018/235424号、又は国際公開第2018/235425号に記載の方法によって行うことができる。
【0047】
(A)成分の重量平均分子量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは150以上、より好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上であり、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1500以下である。(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0048】
(A)成分の不飽和結合当量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは150g/eq.であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、さらに好ましくは500g/eq.以下である。不飽和結合当量は、1当量の不飽和結合を含む(A)成分の質量である。
【0049】
<(B)ラジカル重合性化合物>
樹脂組成物は、(B)成分として(B)ラジカル重合性化合物を含む。但し、(B)成分には、(A)成分に該当するものは除かれる。(B)成分を樹脂組成物に含有させることにより、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、及びピール強度に優れる硬化物を得ることが可能となる。(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
(B)成分としては、熱又は光によりラジカルが発生し、(A)成分を硬化させる機能を有する化合物、即ちラジカル重合性不飽和基の少なくともいずれかを有する化合物を用いることができる。このような化合物としては、マレイミド基を含有するマレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル基を含有するビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、アリル系ラジカル重合性化合物、ブタジエン系ラジカル重合性化合物、及びベンゾシクロブテン系ラジカル重合性化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、マレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、及びベンゾシクロブテン系ラジカル重合性化合物の少なくともいずれかであることがより好ましく、マレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、及びベンゾシクロブテン系ラジカル重合性化合物のいずれかであることがより好ましい。
【0051】
(B)成分は、ラジカル重合性不飽和基を有していてもよい。ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、活性エネルギー線の照射により硬化性を示すエチレン性二重結合を有する基が挙げられる。このような基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基、マレイミド基、フマロイル基、マレオイル基が挙げられ、アリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
(B)成分としては、ラジカル重合性不飽和基を1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましい。上限については特に制限はないが、10個以下等とし得る。
【0053】
マレイミド系ラジカル重合性化合物は、下記式(B-1)で表されるマレイミド基を分子中に含有する化合物である。マレイミド系ラジカル重合性化合物は、固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物、及び液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物がある。
【化9】
【0054】
ここで、液状、半固形状、及び固形状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。具体的な判定方法は、下記のとおりである。
【0055】
(1)装置
恒温水槽:
攪拌機、ヒーター、温度計、自動温度調節器(±0.1℃で温度制御が可能なもの)を備えたもので深さ150mm以上のものを用いる。
なお、液状、半固形状、及び固形状の判定では、いずれもヤマト科学社製の低温恒温水槽(型式BU300)と投入式恒温装置サーモメイト(型式BF500)の組み合わせを用い、水道水約22リットルを低温恒温水槽(型式BU300)に入れ、これに組み付けられたサーモメイト(型式BF500)の電源を入れて設定温度(20℃又は60℃)に設定し、水温を設定温度±0.1℃にサーモメイト(型式BF500)で微調整しうるが、同様の調整が可能な装置であればいずれも使用できる。
【0056】
試験管:
試験管としては、図1に示すように、内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製のもので、管底から55mmおよび85mmの高さのところにそれぞれ標線11A、12Bが付され、試験管の口をゴム栓13aで密閉した液状判定用試験管10aと、同じサイズで同様に標線が付され、中央に温度計を挿入・支持するための孔があけられたゴム栓13bで試験管の口を密閉し、ゴム栓13bに温度計14を挿入した温度測定用試験管10bを用いる。以下、管底から55mmの高さの標線を「A線」、管底から85mmの高さの標線を「B線」という。
温度計14としては、JIS B7410(1982)「石油類試験用ガラス製温度計」に規定する凝固点測定用のもの(SOP-58目盛範囲0~100℃)を用いるが、0~100℃の温度範囲が測定できるものであればよい。
【0057】
(2)試験の実施手順
温度60±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料を、図1(a)に示す液状判定用試験管10aと図1(b)に示す温度測定用試験管10bにそれぞれ11A線まで入れる。2本の試験管10a、10bを低温恒温水槽に12B線が水面下になるように直立させて静置する。温度計は、その下端が11A線よりも30mm下となるようにする。
試料温度が設定温度±0.1℃に達してから10分間そのままの状態を保持する。10分後、液状判断用試験管10aを低温恒温水槽から取り出し、直ちに水平な試験台の上に水平に倒し、試験管内の液面の先端が11A線から12B線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。
【0058】
同様に、温度20±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料についても、温度60±5℃の大気圧下で24時間以上放置した場合と同様に試験を実施し、試験管内の液面の先端が11A線から12B線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。
【0059】
20℃において、測定された時間が90秒以内のものを液状と判定する。
20℃において、測定された時間が90秒を超え、60℃において、測定された時間が90秒以内のものを半固形状と判定する。
60℃において、測定された時間が90秒を超えるものを固体状と判定する。
【0060】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上で、さらに好ましくは3個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。
【0061】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを有することが好ましく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を有することがより好ましい。
【0062】
脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0063】
芳香族炭化水素基としては、1価及び2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基及びアリーレン基がより好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、フェニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、フェニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基がより好ましい。アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0064】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物において、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、マレイミド基の窒素原子は、1価又は2価の芳香族炭化水素基と直接結合していることが好ましい。ここで、「直接」とは、マレイミド基の窒素原子と芳香族炭化水素基との間に他の基がないことをいう。
【0065】
固形状のマレイミド化合物は、例えば、下記式(B-a)により表される構造であることが好ましい。
【化10】
【0066】
[式中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示し;Xは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-(好ましくは単結合又はアルキレン基)を示し;Zは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非芳香環、又は置換基を有していてもよい芳香環(好ましくは置換基を有していてもよい芳香環、特に好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環)を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;tは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;uは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。]で表されるマレイミド化合物であり、特に好ましくは、式(B-a-1)~(B-a-4):
【0067】
【化11】
【0068】
[式中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;Xc1及びXc2は、それぞれ独立して、単結合又はアルキレン基を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;t’は、1~5の整数を示し;u1、u2及びu3は、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。]で表されるマレイミド化合物である。なお、s単位、t単位、t’単位、u単位、u1単位、u2単位及びu3単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
また、他の実施形態として、固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、例えば下記式(B-2)により表される構造であることが好ましい。
【化12】
式(B-2)中、R31及びR36はマレイミド基を表し、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Dはそれぞれ独立に2価の芳香族基を表す。m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、aは1~100の整数を表す。
【0070】
式(B-2)中のR32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。
【0071】
アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0072】
アリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0073】
アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0074】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0075】
式(B-2)中のDは2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、ビフェニレン基がより好ましい。2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、式(B-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0076】
m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2であり、1がよりさらに好ましい。
【0077】
aは1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0078】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物としては、式(B-3)で表される樹脂が好ましい。
【化13】
式(B-3)中、R37及びR38はマレイミド基を表す。a1は1~100の整数を表す。
【0079】
a1は、式(B-2)中のaと同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0080】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~5000、より好ましくは300~2500である。
【0081】
マレイミド系ラジカル重合性化合物のマレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。
【0082】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」;ケイアイ化成社製「BMI-50P」;大和化成工業社製の「BMI-1000」、「BMI-1000H」、「BMI-1100」、「BMI-1100H」、「BMI-4000」、「BMI-5100」;ケイアイ化成社製「BMI-4,4’-BPE」、「BMI-70」、ケイアイ化成社製「BMI-80」等が挙げられる。
【0083】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、マレイミド基を分子中に少なくとも1つ有する化合物である。
【0084】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、炭素原子数が5以上のアルキル基、炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び炭素原子数が5以上のアルキニレン基の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0085】
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基として有していてもよい。
【0086】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
炭素原子数が5以上のアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキニレン基とは、環状のアルキニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキニレン基と環状のアルキニレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0087】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、本発明の効果を顕著に得る観点から、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の両方を含むことが好ましい。
【0088】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0089】
炭素原子数が5以上のアルキル基、炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び炭素原子数が5以上のアルキニレン基は、置換基を有していないことが好ましいが、置換基を有していてもよい。置換基としては、(A)成分における芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0090】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物において、炭素原子数が5以上のアルキル基、炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び炭素原子数が5以上のアルキニレン基は、マレイミド基の窒素原子に直接結合していることが好ましい。
【0091】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、1個でもよいが、好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。1分子当たり2個以上のマレイミド基を有する液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物を用いることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0092】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、下記一般式(B-4)で表されることが好ましい。
【化14】
一般式(B-4)中、Mは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0093】
Mは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表す。Mの2価の脂肪族基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び炭素原子数が5以上のアルキニレン基等が挙げられ、炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び炭素原子数が5以上のアルキニレン基については上記したとおりである。Mの置換基としては、(A)成分における芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様であり、置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0094】
Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(Rは水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(B-5)で表される基である。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(B-6)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化15】
【0095】
Lのおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0096】
Lにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~20のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0097】
Lにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~20のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0098】
Lにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0099】
Lにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、(A)成分における芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0100】
Lにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;アルケニレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルケニレン基の組み合わせからなる2価の基;アルケニレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0101】
中でも、一般式(B-4)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0102】
一般式(B-4)で表される液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、一般式(B-7)で表されることが好ましい。
【化16】
一般式(B-7)中、Mはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表し、Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。tは1~10の整数を表す。
【0103】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表す。Mは、一般式(B-4)中のMと同様である。
【0104】
Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Zにおけるアルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0105】
Zが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(B-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0106】
Zが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、(A)成分における芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0107】
Zが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化17】
【化18】
【0108】
一般式(B-4)で表されるマレイミド系ラジカル重合性化合物は、一般式(B-8)で表される液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物、及び一般式(B-9)で表される液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物のいずれかであることが好ましい。
【化19】
一般式(B-8)中、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表し、R40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。t1は1~10の整数を表す。
一般式(B-9)中、M、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表し、Mはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、u1及びu2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0109】
及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表す。M及びMは、一般式(B-4)中のMが表す炭素原子数が5以上の脂肪族基と同様であり、ヘキサトリアコンチレン基、ヘキサトリアコンチニレン基が好ましい。
【0110】
40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(B-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。R40としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0111】
40における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化20】
【0112】
、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表す。M、M及びMは、一般式(B-4)中のMが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基が好ましく、オクチニレン基がより好ましい。
【0113】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Mは、一般式(B-7)中のZが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(B-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0114】
が表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化21】
【0115】
41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R41及びR42は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0116】
u1及びu2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0117】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の具体例としては、以下の(B1)~(B3)の化合物を挙げることができる。但し、液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物はこれら具体例に限定されるものではない。式中、vは1~10の整数を表す。
【化22】
【化23】
【0118】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の具体例としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI1500」(式(B1)の化合物)、「BMI1700」(式(B2)の化合物)、「BMI689」(式(B3)の化合物)、等が挙げられる。
【0119】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物のマレイミド基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含む液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の質量である。
【0120】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、ビニルフェニル基を有するラジカル重合性化合物である。ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、液状又は半固形状であることが好ましい。液状又は半固形状の判定は、上記したとおりである。ビニルフェニル基とは、以下に示す構造を有する基である。
【化24】
(*は結合手を表す。)
【0121】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、1分子あたり2個以上のビニルフェニル基を有することが好ましい。
【0122】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、2価の環状基は、複数有していてもよい。
【0123】
2価の環状基は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0124】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0125】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(xii)又は(xiii)が挙げられる。
【化25】
(2価の基(xii)、(xiii)中、R51、R52、R55、R56、R57、R61、及びR62は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R53、R54、R58、R59、及びR60は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0126】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素原子数が6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。R51、R52、R55、R56、R57、R61、及びR62としては、メチル基を表すことが好ましい。R53、R54、R58、R59、及びR60は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0127】
また、2価の環状基は、複数の2価の環状基を組み合わせてもよい。2価の環状基を組み合わせた場合の具体例としては、下記の式(B4)で表される2価の環状基(2価の基(a)が挙げられる。
【化26】
(式(B4)中、R71、R72、R75、R76、R77、R81、R82、R85及びR86は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R73、R74、R78、R79、R80、R83及びR84は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。d1及びd2は、0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。)
【0128】
71、R72、R85及びR86は、式(xii)中のR51と同じである。R73、R74、R83及びR84は、式(xii)中のR53と同じである。R75、R76、R77、R81、及びR82は、式(xiii)中のR55と同じである。R78、R79、及びR80は、式(xiii)中のR58と同じである。
【0129】
d1及びd2は0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。d1及びd2としては、1~100の整数を表すことが好ましく、1~50の整数を表すことがより好ましく、1~10の整数を表すことがさらに好ましい。d1及びd2は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0130】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0131】
ビニルフェニル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基が好ましい。
【0132】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、下記式(B-10)で表されることが好ましい。
【化27】
(式(B-10)中、R91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環B1は、2価の環状基を表す。)
【0133】
91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記の2価の連結基と同様である。
【0134】
環B1は、2価の環状基を表す。環Bとしては、上記の2価の環状基と同様である。
【0135】
環B1は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0136】
他の実施形態において、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、式(B-11)で表される繰り返し単位(繰り返し単位数は好ましくは2~200)を有する化合物であることが好ましい。当該化合物は、さらに、スチレン単位、エチルスチレン単位等のその他のスチレン骨格単位を有する共重合体であってもよい。その他のスチレン骨格単位を有する場合、式(B-11)の繰り返し単位の割合は、全スチレン骨格単位に対して5~70モル%であることが好ましい。
【化28】
【0137】
[式中、Re5、Re6及びRe7は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基(好ましくは水素原子)を示す。]
【0138】
以下、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化29】
(q1は、式(B4)中のd1と同じであり、q2は、式(B4)中のd2と同じである。)
【0139】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル);日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「ODV-XET-X03」、「ODV-XET-X04」、「ODV-XET-X05」(ジビニルベンゼン重合体)等が挙げられる。ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物の数平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、1500以下である。下限は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、1000以上である。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0141】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、アクリロイル基及びメタクリロイル基並びにそれらの組み合わせを包含する化合物である。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、1分子あたり2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。用語「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基並びにそれらの組み合わせを包含する。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、液状又は半固形状であることが好ましい。液状又は半固形状の判定は、上記したとおりである。
【0142】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、脂環式構造を含む環状基であることが好ましい。
【0143】
2価の環状基は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0144】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0145】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(i)~(xi)が挙げられる。中でも、2価の環状基としては、(x)又は(xi)が好ましい。
【化30】
【0146】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0147】
(メタ)アクリロイル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。
【0148】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、下記式(B-11)で表されることが好ましい。
【化31】
(式(B-11)中、R101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、R102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環B2は、2価の環状基を表す。)
【0149】
101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、アクリロイル基が好ましい。
【0150】
102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、(メタ)アクリロイル基が結合していてもよい2価の連結基と同様である。
【0151】
環B2は、2価の環状基を表す。環B2としては、上記の2価の環状基と同様である。環B2は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0152】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化32】
【0153】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」、日本化薬社製「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」、新中村化学工業社製の「NKエステルDCP」等が挙げられる。
【0154】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の(メタ)アクリロイル基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは30g/eq.~400g/eq.、より好ましくは50g/eq.~300g/eq.、さらに好ましくは75g/eq.~200g/eq.である。(メタ)アクリロイル基当量は、1当量の(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の質量である。
【0155】
アリル系ラジカル重合性化合物とは、アリル基を分子中に少なくとも1つ有する化合物である。アリル系ラジカル重合性化合物は、液状又は半固形状であることが好ましい。液状又は半固形状の判定は、上記したとおりである。アリル系ラジカル重合性化合物は、1分子あたり1個以上のアリル基を有することが好ましく、2個以上のアリル基を有することがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下とし得る。
【0156】
また、アリル系ラジカル重合性化合物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、アリル基に加えて、ベンゾオキサジン環、フェノール環、イソシアヌル環、エポキシ基、及び環状構造を有するカルボン酸誘導体のいずれかを有することが好ましい。
【0157】
ベンゾオキサジン環を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、ベンゾオキサジン環の窒素原子及びベンゼン環のいずれかと結合していることが好ましく、窒素原子と結合していることがより好ましい。
【0158】
フェノール環を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、アリル基を含むクレゾール樹脂、アリル基を含むノボラック型フェノール樹脂、アリル基を含むクレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0159】
イソシアヌル構造を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、イソシアヌル構造の窒素原子とアリル基とが直接結合していることが好ましい。イソシアヌル構造を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
【0160】
エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、エポキシ基を1分子中に2個以上含むことが好ましい。また、エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、芳香族構造を有することが好ましく、エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物を2種以上用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、ビスフェノール構造を有することが好ましく、ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAF型等が挙げられる。
【0161】
環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、環状構造を有するカルボン酸アリルが好ましい。環状構造としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、環状基は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0162】
環状構造を有するカルボン酸としては、例えば、イソシアヌル酸、ジフェン酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジフェン酸ジアリル、ジフェン酸アリル、オルトジアリルフタレート、メタジアリルフタレート、パラジアリルフタレート、シクロヘキサンジカルボン酸アリル、シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。
【0163】
アリル系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、明和化成社製「MEH-8000H」、「MEH-8005」(フェノール環を有するアリル系ラジカル重合性化合物);日本化薬社製「RE-810NM」(エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物);四国化成工業社製「ALP-d」(ベンゾオキサジン環を有するアリル系ラジカル重合性化合物);四国化成工業社製「L-DAIC」(イソシアヌル環を有するアリル系ラジカル重合性化合物);日本化成社製「TAIC」(イソシアヌル環を有するアリル系ラジカル重合性化合物(トリアリルイソシアヌレート));大阪ソーダ社製「MDAC」(シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を有するアリル系ラジカル重合性化合物);日触テクノファインケミカル社製「DAD」(ジフェン酸ジアリル);大阪ソーダ社製「ダイソーダップモノマー」(オルトジアリルフタレート)等が挙げられる。
【0164】
アリル系ラジカル重合性化合物のアリル基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。アリル基当量は、1当量のアリル基を含むアリル系ラジカル重合性化合物の質量である。
【0165】
ブタジエン系ラジカル重合性化合物とは、ブタジエン骨格を分子中に少なくとも1つ有する化合物である。ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ブタジエン系ラジカル重合性化合物としては、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ブタジエン樹脂、酸無水物基含有ブタジエン樹脂、エポキシ基含有ブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ブタジエン樹脂及びウレタン基含有ブタジエン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂がより好ましい。
【0166】
ブタジエン系ラジカル重合性化合物の具体例としては、日本曹達社製の「JP-100」、CRAY VALLEY社製の「Ricon100」、「Ricon150」、「Ricon130MA8」、「Ricon130MA13」、「Ricon130MA20」、「Ricon131MA5」、「Ricon131MA10」、「Ricon131MA17」、「Ricon131MA20」、「Ricon 184MA6」等が挙げられる。
【0167】
ブタジエン系ラジカル重合性化合物は、液状又は半固形状であることが好ましい。液状又は半固形状の判定は、上記したとおりである。
【0168】
ベンゾシクロブテン系ラジカル重合性化合物は、ベンゾシクロブテン環を有する化合物である。ベンゾシクロブテン環は主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。ベンゾシクロブテン系ラジカル重合性化合物の具体例としては、ダウ・ケミカル社製の「CYCLOTENE 3022」等が挙げられる。
【0169】
(B)成分の含有量としては、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、ピール強度、及び破断点伸度に優れる硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0170】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量をaとし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量をbとしたとき、a/bが、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下である。a/bを斯かる範囲内となるように調整することにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能となる。
【0171】
<(C)無機充填材>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(C)成分として無機充填材を含有していてもよい。
【0172】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0173】
(C)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0174】
(C)成分の比表面積としては、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0175】
(C)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0176】
(C)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(C)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0177】
(C)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0178】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0179】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0180】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0181】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0182】
(C)成分の含有量は、誘電特性を低くする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは53質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0183】
<(D)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(D)成分として熱可塑性樹脂を含有していてもよい。但し、(B)成分に該当するものは除かれる。(D)成分を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の応力が緩和され、その結果、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる。(D)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0184】
(D)成分の重量平均分子量(Mn)は、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、特に好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、特に好ましくは50000以下である。(D)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0185】
(D)成分としては、重量平均分子量が高分子量であるものを使用することができる。このような成分としては、例えばポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ビスフェノールエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、(D)成分としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、及びビスフェノールエーテル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0186】
ポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得られるものを含む。
【0187】
ポリイミド樹脂を調製するためのジアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物を挙げることができる。
【0188】
脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン等の直鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等の分岐鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン化合物;ダイマー酸型ジアミン(以下「ダイマージアミン」ともいう)等が挙げられる。ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、アミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されて得られるジアミン化合物を意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数11~22のもの、特に好ましくは炭素数18のもの)を二量化することにより得られる既知の化合物であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されている。
【0189】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン化合物、ナフタレンジアミン化合物、ジアニリン化合物等が挙げられる。
【0190】
フェニレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するベンゼン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここにおける置換基は、特に限定されない。フェニレンジアミン化合物としては、具体的に、1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノビフェニル、2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0191】
ナフタレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するナフタレン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここにおける置換基は、特に限定されない。ナフタレンジアミン化合物としては、具体的に、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0192】
ジアニリン化合物とは、分子内に2個のアニリン構造を含む化合物を意味し、さらに、2個のアニリン構造中の2個のベンゼン環は、それぞれ、さらに任意で1~3個の置換基を有し得る。ここにおける置換基は、特に限定されない。ジアニリン化合物における2個のアニリン構造は、直接結合、並びに/或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する1又は2個のリンカー構造を介して結合し得る。ジアニリン化合物には、2個のアニリン構造が2個の結合により結合しているものも含まれる。
【0193】
ジアニリン化合物における「リンカー構造」としては、具体的に、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、-COO-、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-CH=CH-、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-NH-、-Ph-、-Ph-Ph-、-C(CH-Ph-C(CH-、-O-Ph-O-、-O-Ph-Ph-O-、-O-Ph-SO-Ph-O-、-O-Ph-C(CH-Ph-O-、-C(CH-Ph-C(CH-、
【0194】
【化33】
【0195】
等が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。
【0196】
一実施形態において、ジアニリン化合物としては、具体的に、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジトリフルオロメチル-1,1’-ビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,4-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、9,9’-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン等が挙げられる。
【0197】
ジアミン化合物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。ジアミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0198】
ポリイミド樹脂を調製するための酸無水物は、特に限定されるものではないが、好適な実施形態においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、アントラセンテトラカルボン酸二無水物、ジフタル酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、ジフタル酸二無水物である。
【0199】
ベンゼンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するベンゼンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X330-R330(下記式(1D)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ベンゼンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0200】
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するナフタレンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X330-R330(下記式(1D)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0201】
アントラセンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するアントラセンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるアントラセン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X330-R330(下記式(1D)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。アントラセンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0202】
ジフタル酸二無水物とは、分子内に2個の無水フタル酸を含む化合物を意味し、さらに、2個の無水フタル酸中の2個のベンゼン環は、それぞれ、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X330-R330(下記式(1D)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ジフタル酸二無水物における2個の無水フタル酸は、直接結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を介して結合し得る。
【0203】
ジフタル酸二無水物としては、例えば、式(1D):
【0204】
【化34】
【0205】
[式中、
201及びR202は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は-X330-R330を示し、
330は、それぞれ独立して、単結合、-NR330’-、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-NR330’CO-、-CONR330’-、-OCO-、又は-COO-を示し、
330は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
330’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
は、単結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を示し、
n10及びn11は、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。]
で表される化合物が挙げられる。
【0206】
は、好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造である。n10及びn11は、好ましくは、0である。
【0207】
における「リンカー構造」は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する。「リンカー構造」は、好ましくは、-[A1-Ph]a10-A1-[Ph-A1]b10-〔式中、A1は、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、a10及びb10は、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは、0又は1)を示す。〕で表される二価の基である。
【0208】
における「リンカー構造」は、具体的に、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-O-、-CO-、-SO-、-Ph-、-O-Ph-O-、-O-Ph-SO-Ph-O-、-O-Ph-C(CH-Ph-O-等が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。
【0209】
ジフタル酸二無水物としては、具体的に、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0210】
酸無水物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法又はこれに準ずる方法により合成したものを使用してもよい。酸無水物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0211】
ポリイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0212】
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート構造を有する樹脂である。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
【0213】
カーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0214】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が30,000以上のフェノキシ樹脂が好ましい。
【0215】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0216】
ポリアミドイミド樹脂は、アミドイミド構造を有する樹脂である。ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中に脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂、特開平05-112760号公報に記載のシロキサン構造を有するポリアミドイミド樹脂、嵩高い分岐鎖構造を有するポリアミドイミド樹脂、非対称モノマーを原料とするポリアミドイミド樹脂、多分岐構造を有するポリアミドイミド樹脂等を用いることが好ましい。
【0217】
中でも、ポリアミドイミド樹脂は、イソシアヌル環構造を有することで、樹脂ワニスの相溶性、及び分散性が向上する観点から、(i)分子構造中にイソシアヌル環構造を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)(ii)分子構造中にイソシアヌル環構造と脂環式構造とを有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)、(iii)イソシアヌル環構造と脂環式構造とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂)がより好ましい。
【0218】
前記(i)~(iii)のポリアミドイミド樹脂の好適な一実施形態としては、(1)脂環式構造ジイソシアネートから誘導されるイソシアヌル環含有ポリイソシアネート化合物と3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の酸無水物とを反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型ポリアミドイミド(以下、当該化合物を「(化合物D-1)」ということがある。)、(2)化合物(D-1)に1個のエポキシ基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(D-2)」ということがある。)、或いは、(3)化合物(D-1)の合成過程で残イソシアネート基に1個の水酸基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(D-3)」ということがある。)等が挙げられる。
【0219】
化合物(D-1)としては、具体的に下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物中の繰り返し単位を繰り返し単位(I-1)とする。
【化35】
(式中、wは0~15を表す。)
【0220】
化合物(D-2)としては、一般式(I)中の繰り返し単位(I-1)の任意の一部のカルボキシル基及び/又は末端カルボキシル基にGMA(グリシジルメタクリレート)が付加した構造(I-2)を有する化合物(II)が挙げられる。
【化36】
(式中、R40は式(I)中の残基を表す。)
【0221】
カルボキシル基のGMA変性の割合は化合物(D-1)のカルボキシル基のモル数に対して、GMAを付加する範囲が好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、さらに好ましくは0.7mol%以上、又は0.9mol%以上である。上限は、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、又は20mol%以下である。
【0222】
化合物(D-3)としては、上記式(I)において繰り返し単位(I-1)の任意の一部及び/又は末端イミド基がイソシアネート残基であり、これらにペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基が付加した構造(I-3)を有する化合物(III)が挙げられる。
【化37】
(式中、R’は式(I)中の残基を表す。)
【0223】
ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは40mol%以下、より好ましくは38mol%以下、さらに好ましくは35mol%以下である。一方、ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、付加することによる効果を十分に得るという観点から、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは3mol%以上、さらに好ましくは5mol%以上である。
【0224】
ポリアミドイミド樹脂は、公知の種々の方法で合成することができる。ポリアミドイミド樹脂の合成方法としては、例えば国際公開第2010/074197号の段落0020~0030の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0225】
ポリアミドイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC社製の「ユニディックV-8000」、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0226】
ポリスチレン樹脂としては、スチレンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(スチレン単位)を含む任意のエラストマーを用いることができる。また、ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。
【0227】
任意の繰り返し単位としては、例えば、共役ジエンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(共役ジエン単位)、それを水素化して得られる構造を有する繰り返し単位(水添共役ジエン単位)等が挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエン;クロロプレン等のハロゲン化脂肪族共役ジエン等が挙げられる。共役ジエンとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から脂肪族共役ジエンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。共役ジエンは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリスチレン樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0228】
ポリスチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロックコポリマー、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水添スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、ポリスチレン樹脂としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体が好ましい。
【0229】
ポリスチレン樹脂の具体例としては、CRAY VALLEY社製の「EF-40」、旭化成社製の「H1043」等が挙げられる。
【0230】
ポリエステル樹脂は、樹脂組成物中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中にフルオレン構造を有することが好ましく、フルオレン構造に加えて、ジオール由来の構造単位と、ジカルボン酸由来の構造単位とを有することが好ましい。
【0231】
ポリエステル樹脂の具体例としては、大阪ガスケミカル社製の「OKP4HT」等が挙げられる。
【0232】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0233】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0234】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0235】
ビスフェノールエーテル樹脂は、ビスフェノールエーテル構造を有する樹脂である。ビスフェノールエーテル樹脂は、本発明の効果を顕著に得る観点から、下記式(D-a)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化38】
【0236】
[式中、環Aは、置換基を有していてもよい含窒素芳香環を示し;環B及び環Cは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;Xは、単結合又は2価の非芳香族炭化水素基を示す。]
【0237】
環Aは、置換基を有していてもよい含窒素芳香環を示す。芳香環とは、環上のπ電子系に含まれる電子数が4n+2個(nは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味する。環Aで表される含窒素芳香環は、環構成原子として、炭素原子に加えて、1個以上(好ましくは2個以上、特に好ましくは2個)の窒素原子を有し、且つさらに、酸素原子、硫黄原子等の窒素原子以外のヘテロ原子を有していてもよい。環Aで表される含窒素芳香環は、5~14員の含窒素芳香環が好ましく、5~10員の含窒素芳香環がより好ましく、5又は6員の含窒素芳香環がさらに好ましく、6員の含窒素芳香環が特に好ましい。環Aで表される含窒素芳香環には、単環式の芳香環、及び2個以上の単環式の芳香環が縮合した縮合環のみならず、1個以上の単環式の芳香環に1個以上の単環式の非芳香環が縮合した縮合環も含まれる。
【0238】
環Aで表される含窒素芳香環の好適な具体例としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,3-トリアジン環、1,2,4-トリアジン環、1,3,5-トリアジン環等の単環式の含窒素芳香環;インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾトリアゾール環、キノキサリン環、シンノリン環、キナゾリン環、フタラジン環等の単環式の含窒素芳香環とベンゼン環との縮合環;プテリジン環、プリン環、4-アザインドール環、5-アザインドール環、6-アザインドール環、7-アザインドール環、7-アザインダゾール環、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン環、1,8-ナフチリジン環、ピリド[3,2-d]ピリミジン環、ピリド[4,3-d]ピリミジン環、ピリド[3,4-b]ピラジン環、ピリド[2,3-b]ピラジン環等の単環式の含窒素芳香環同士の縮合環等が挙げられ、好ましくは、単環式の含窒素芳香環であり、より好ましくは、6員の単環式の含窒素芳香環であり、さらに好ましくは、ピリミジン環又はピリダジン環であり、特に好ましくは、ピリミジン環である。
【0239】
含窒素芳香環は置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキル-アリール基(1個以上のアルキル基で置換されたアリール基)、アリール-アリール基(1個以上のアリール基で置換されたアリール基)、アリール-アルキル基(1個以上のアリール基で置換されたアルキル基)、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アルキル-カルボニル基、アルケニル-カルボニル基、アリール-カルボニル基、アルキル-オキシ-カルボニル基、アルケニル-オキシ-カルボニル基、アリール-オキシ-カルボニル基、アルキル-カルボニル-オキシ基、アルケニル-カルボニル-オキシ基、アリール-カルボニル-オキシ基等の1価の置換基が挙げられ、置換可能であれば、オキソ基(=O)等の2価の置換基も含み得る。
【0240】
アルキル(基)とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基をいう。アルキル(基)は、好ましくは炭素原子数1~14、より好ましくは炭素原子数1~10、さらに好ましくは炭素原子数1~6又は4~10である。アルケニル(基)とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族不飽和炭化水素基をいう。アルケニル(基)は、好ましくは炭素原子数2~14、より好ましくは炭素原子数2~10、さらに好ましくは炭素原子数2~6又は4~10である。アリール(基)とは、1価の芳香族炭化水素基をいう。アリール(基)は、炭素原子数6~14のアリール(基)が好ましい。
【0241】
環B及び環Cは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示す。環B又は環Cで表される芳香環は、炭素原子を環構成原子とする炭素環、又は環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する複素環であり得るが、一実施形態において、炭素環であることが好ましい。環B又は環Cで表される芳香環は、5~14員の芳香環が好ましく、5~10員の芳香環がより好ましく、5又は6員の芳香環がさらに好ましく、6員の芳香環が特に好ましい。環B又は環Cで表される芳香環には、単環式の芳香環、及び2個以上の単環式の芳香環が縮合した縮合環のみならず、1個以上の単環式の芳香環に1個以上の単環式の非芳香環が縮合した縮合環も含まれる。
【0242】
環B又は環Cで表される芳香環の好適な具体例としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式の芳香環;ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式の芳香環が縮合した縮合環;インダン環、フルオレン環、テトラリン環等の1個以上の単環式の芳香環に1個以上の単環式の非芳香環が縮合した縮合環等が挙げられ、好ましくは、単環式の芳香環であり、より好ましくは、6員の単環式の芳香環であり、特に好ましくは、ベンゼン環である。
【0243】
Xは、単結合又は2価の非芳香族炭化水素基である。Xで表される2価の非芳香族炭化水素基は、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖及び/又は環状の2価の非芳香族炭化水素基である。Xで表される2価の非芳香族炭化水素基は、例えば、炭素原子数が1~100、好ましくは1~50、より好ましくは1~30、さらに好ましくは1~20の2価の非芳香族炭化水素基である。
【0244】
Xは、好ましくは、2価の非芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、式(X1):
【0245】
【化39】
【0246】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を示すか、或いはR及びRが一緒になって互いに結合し、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよいシクロアルカン環、又はアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよいシクロアルケン環を形成し;*は、結合部位を示す。]で表される2価の基であり、さらに好ましくは、式(X2-1)~(X2-3):
【0247】
【化40】
【0248】
[式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、アルキル基を示し;xは、0~5(好ましくは1~5、より好ましくは2~4)の整数を示し;*は、結合部位を示す。]
の何れかで表される2価の基であり、特に好ましくは、式(X2-1)で表される2価の基である。
【0249】
シクロアルカン環とは、環状の脂肪族飽和炭化水素環をいう。シクロアルカン環は、炭素原子数3~8のシクロアルカン環が好ましく、炭素原子数5又は6のシクロアルカン環がより好ましい。シクロアルカン環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。シクロアルケン環とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する環状の脂肪族不飽和炭化水素環をいう。シクロアルケン環は、炭素原子数4~8のシクロアルケン環が好ましく、炭素原子数5又は6のシクロアルケン環がより好ましい。シクロアルケン環としては、例えば、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環等が挙げられる。
【0250】
式(D-a)で表される繰り返し単位を含む化合物は、好ましくは、式(1A)又は(1B):
【0251】
【化41】
【0252】
[式中、X、X、X及びXは、それぞれ独立して、N、CH又はCR(好ましくはN又はCH)を示し且つX、X、X及びXのうち少なくとも1個(好ましくは少なくとも2個、特に好ましくは2個)がNであり;R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基(好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキル-アリール基、アリール-アリール基、又はアリール-アルキル基、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基、特に好ましくはアリール基)を示し;b及びcは、それぞれ独立して、0~3の整数(好ましくは0)を示し;その他の記号は、式(X1)と同様である。]
で表される繰り返し単位を含む化合物であり、より好ましくは、式(1A-1)~(1B-3):
【0253】
【化42】
【0254】
[式中、aは、0~2の整数(好ましくは0)を示し;その他の記号は、式(1A)、式(1B)及び式(X2-1)~(X2-3)と同様である。]
の何れかで表される繰り返し単位を含む化合物であり、特に好ましくは、式(1A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物である。
【0255】
式(D-a)で表される繰り返し単位を含む化合物は、一実施形態において、フェノール性水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基等の反応性基を有し得、好ましくは、フェノール性水酸基を有し得る。一実施形態において、反応性基は、1分子中に2個以上有することが好ましい。
【0256】
式(D-a)で表される繰り返し単位を含む化合物において、繰り返し単位数は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは50以上である。繰り返し単位数の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、10000以下、5000以下、3000以下、2000以下、1000以下等であり得る。
【0257】
式(D-a)で表される繰り返し単位を含む化合物のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されるものではないが、好ましくは100~300℃、より好ましくは150~250℃であり得る。
【0258】
式(D-a)で表される繰り返し単位を含む化合物は、例えば、WO2019/054335、又はWO2020/021827に記載されている方法又はそれに準ずる方法を用いて合成することができる。
【0259】
(D)成分の含有量としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0260】
<(E)熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)成分として熱硬化性樹脂を含有していてもよい。但し、(A)成分及び(B)成分に該当するものは除く。(E)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる樹脂を、まとめて「硬化剤」ということがある。
【0261】
(E)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0262】
樹脂組成物は、(E)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(E)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0263】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(E)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0264】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0265】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0266】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0267】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0268】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0269】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0270】
(E)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:15、特に好ましくは1:0.5~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、接着フィルムの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0271】
(E)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分な硬化体をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0272】
(E)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0273】
(E)成分としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0274】
(E)成分としての活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0275】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0276】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0277】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0278】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB-8150-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);「EXB-8500-65T」(DIC社製);等が挙げられる。
【0279】
(E)成分としてのフェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0280】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0281】
(b)成分としてのベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0282】
(E)成分としてのシアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」、「PT30S」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0283】
(E)成分としてのカルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:216)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0284】
(E)成分としてのアミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0285】
(E)成分としての酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0286】
(E)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(E)成分として、エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、柔軟性に優れる硬化体を得ることができる。
【0287】
(E)成分としての硬化剤の含有量は、柔軟性に優れる硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0288】
(E)成分の含有量は、柔軟性に優れる硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0289】
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(F)成分として硬化促進剤を含有していてもよい。(F)成分を含有させることで、熱による重合をより促進させることが可能となる。
【0290】
(F)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等のエポキシ樹脂硬化促進剤;過酸化物系硬化促進剤等の熱重合硬化促進剤等が挙げられる。(F)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0291】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0292】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0293】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0294】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0295】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0296】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0297】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、ジt-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0298】
過酸化物系硬化促進剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーヘキシルD」、「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0299】
(F)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0300】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0301】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0302】
<樹脂組成物の物性、用途>
樹脂組成物は、所定量の(A)成分、及び(B)成分を含む。これにより、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、ピール強度、及び破断点伸度に優れる硬化物を得ることができる。通常、無機充填材の含有量を多くすると、硬化基板に生じるムラが発生しやすくなる傾向にある。しかし、所定量の(A)成分及び(B)成分を組み合わせて含有させることで、無機充填材の含有量が多くても、硬化基板に生じるムラの発生を抑制することが可能となる。さらに、誘電特性、ピール強度、及び破断点伸度に優れる硬化物を得ることが可能となる。
【0303】
樹脂組成物は、硬化基板に生じるムラを抑制できるという特性を示す。具体的には、銅箔の厚さが18μmのガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に樹脂シートの樹脂組成物層をラミネート後、130℃で30分間、その後170℃で30分間熱硬化させて絶縁層を形成する。樹脂シートがラミネートされた部分の絶縁層を目視し、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板とは反対側の表面の表面均一性を観察する。このとき、通常は樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmの部分より内側の部分は均一な表面である。好ましくは、絶縁層の積層板とは反対側の表面の全体が均一な表面である。硬化基板のムラの評価の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0304】
樹脂組成物を130℃で30分間、その後170℃で30分間熱硬化させた硬化物は、メッキで形成された導体層(メッキ導体層)との間のピール強度に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、メッキ導体層との間のピール強度に優れる絶縁層をもたらす。ピール強度は、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.35kgf/cm以上、さらに好ましくは0.4kgf/cm以上である。ピール強度の上限値は、10kgf/cm以下等とし得る。メッキ導体層のピール強度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0305】
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電率が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、誘電率が低い絶縁層をもたらす。誘電率は、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3以下である。誘電率の下限値は、0.001以上等とし得る。誘電率の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0306】
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、誘電正接が低い絶縁層をもたらす。誘電正接は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.004以下、さらに好ましくは0.003以下である。誘電正接の下限値は、0.0001以上等とし得る。誘電正接の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0307】
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、靱性が大きいので破断点伸度が大きいという特性を示す。よって、前記の硬化物は、破断点伸度が大きい絶縁層をもたらす。破断点伸度としては、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは1%以上である。一方、破断点伸度の上限値は特に限定されないが、10%以下等とし得る。前記の破断点伸度の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0308】
本発明の樹脂組成物は、硬化基板に生じるムラを抑制でき、誘電特性、ピール強度、及び破断点伸度に優れる絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0309】
また、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0310】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0311】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
【0312】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
【0313】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0314】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0315】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0316】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0317】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0318】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0319】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0320】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0321】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0322】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0323】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0324】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0325】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0326】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0327】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0328】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0329】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0330】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0331】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0332】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0333】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0334】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0335】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0336】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0337】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」、「スウェリングディップ・セキュリガントP」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0338】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0339】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0340】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0341】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0342】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0343】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0344】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0345】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0346】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0347】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例
【0348】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0349】
[合成例1:芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物A(化合物A)の合成]
反応容器にオルトアリルフェノール89質量部、ジシクロペンタジエン・フェノール共重合樹脂(軟化点85℃、水酸基当量約165g/eq.)110質量部、トルエン1000質量部を仕込み、容器内を減圧窒素置換させながら溶解させた。続いて、イソフタル酸クロライド135質量部を仕込み溶解させた。次いでテトラブチルアンモニウムブロミド0.5gを添加し、容器内を窒素パージしながら20%水酸化ナトリウム水溶液309gを3時間かけ滴下した。その際、系内の温度は60℃以下に制御した。その後、1時間攪拌させ反応させた。反応終了後、反応物を分液し水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、加熱減圧条件でトルエン等を留去させ、芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物Aを得た。得られた芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物Aの不飽和結合当量は仕込み比から算出すると428g/eq.であった。化合物Aは下記式で表され、sは0又は1以上の整数を表し、仕込み比から算出されたrの平均値は1である。また、波線は、イソフタル酸クロリド、並びにフェノールの重付加反応樹脂及び/又はオルトアリルフェノールが反応して得られる構造である。
【化43】
【0350】
[合成例2:芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物B(化合物B)の合成]
反応容器にオルトアリルフェノール201質量部、トルエン1000質量部を仕込み、容器内を減圧窒素置換させながら溶解させた。続いて、イソフタル酸クロライド152質量部を仕込み溶解させた。容器内を窒素パージしながら20%水酸化ナトリウム水溶液309gを3時間かけ滴下した。その際、系内の温度は60℃以下に制御した。その後、1時間攪拌させ反応させた。反応終了後、反応物を分液し水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、加熱減圧条件でトルエン等を留去させ、芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物Bを得た。得られた芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物Bの不飽和結合当量は仕込み比から算出すると199g/eq.であった。化合物Bは下記式で表される構造である。
【化44】
【0351】
[合成例3:ポリイミド樹脂の合成]
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、及び攪拌器を備えた、500mLのセパラブルフラスコを用意した。このフラスコに、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)20.3g、γ-ブチロラクトン200g、トルエン20g、及び、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン29.6gを加えて、窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して反応を行った。次いで、この反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び、水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却して、1,1,3-トリメチルインダン骨格を有するポリイミド樹脂を含むポリイミド溶液(不揮発分20質量%)を得た。得られたポリイミド樹脂は、下記式(X1)で表される繰り返し単位及び下記式(X2)で示す繰り返し単位を有していた。また、前記のポリイミド樹脂の重量平均分子量は、12,000であった。
【0352】
【化45】
【0353】
【化46】
【0354】
[合成例4:ビスフェノールエーテル樹脂の合成]
4つ口フラスコに、894.96mmolのジクロロピリミジン、900.00mmolの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1.2molの炭酸カリウム、N-メチル-2-ピロリドン(450g)を入れた。フラスコ内を窒素置換した後、フラスコの内容物を130℃で6時間加熱し、加熱の際に生成する水をDean-Stark管から随時取り除いた。フラスコの内容物を室温に冷却後、析出した固形物を濾別し、濾液にメタノールを加え、析出した固形物をメタノールで洗浄し、これらの固形物を乾燥し、ビスフェノールエーテル樹脂(重量平均分子量(Mw);87000(ポリスチレン換算値))を得た。得られたビスフェノールエーテル樹脂を13C-NMRで測定し、生成物を確認した。ビスフェノールエーテル樹脂は下記式で表される構造である。
【化47】
【0355】
[合成例5:マレイミド樹脂の合成]
発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の合成例1に記載の方法で合成されたマレイミド化合物のMEK溶液(不揮発成分70質量%)を用意した。このマレイミド化合物は、下記式で表される構造を有する。
【化48】
【0356】
マレイミド化合物のFD-MSスペクトルを測定すると、M=560、718及び876のピークが確認された。これらのピークは、それぞれ、n1が0、1及び2の場合に相当する。また、マレイミド化合物をGPCによって分析して、インダン骨格部分の繰り返し単位数n1の値を数平均分子量に基づいて求めると、n1=1.47であり、分子量分布(Mw/Mn)=1.81である。さらに、マレイミド化合物の全量100面積%中、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の含有割合は、26.5面積%であった。
【0357】
[実施例1.樹脂組成物1の調製]
合成例1にて得た化合物A 10部をトルエン10部、MEK10部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)80部、合成例3にて得たポリイミド樹脂20質量%含むワニス15部、硬化促進剤(日油社製「パーヘキシルD」)1部、無機充填材(アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm))130部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物1を得た。
【0358】
[実施例2.樹脂組成物2の調製]
実施例1において、
1)化合物Aの量を10部から50部に変え、
2)ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)の量を80部から70部に変え、
3)液状ビスマレイミド(デザイナーモレキュールズ社製「BMI689」、マレイミド基当量345g/eq.)7部を用い、
4)合成例3にて得たポリイミド樹脂20質量%含むワニス15部を、ポリアミドイミド樹脂(DIC社製「ユニディックV-8000」、重量平均分子量11000、不揮発成分40質量%のエチルジグリコールアセテート溶液)12.5部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物2を調製した。
【0359】
[実施例3.樹脂組成物3の調製]
実施例1において、
1)化合物Aの量を10部から20部に変え、
2)ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)80部を、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」、不揮発分65%のトルエン溶液)60部に変え、
3)2官能アクリレート((メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)5部を用い、
4)合成例3にて得たポリイミド樹脂20質量%含むワニス15部を、ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、重量平均分子量30000)5部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物3を調製した。
【0360】
[実施例4.樹脂組成物4の調製]
実施例1において、
1)ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)の量を80部から40部に変え、
2)合成例3にて得たポリイミド樹脂20質量%含むワニス15部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、重量平均分子量35000、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部に変え、
3)ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、「HP4032SS」)10部、カルボジイミド系樹脂(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)10部、活性エステル系樹脂(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223、固形分65質量%のトルエン溶液)20部、及び硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分10質量%のMEK溶液)1部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物4を調製した。
【0361】
[実施例5.樹脂組成物5の調製]
実施例1において、合成例1にて得た化合物A 10部を、合成例2にて得た化合物B 10部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物5を調製した。
【0362】
[実施例6.樹脂組成物6の調製]
実施例3において、合成例1にて得た化合物A 20部を、合成例2にて得た化合物B 20部に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂組成物6を調製した。
【0363】
[実施例7.樹脂組成物7の調製]
実施例3において、合成例1にて得た化合物A 20部を、合成例2にて得た化合物B 50部に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂組成物7を調製した。
【0364】
[実施例8.樹脂組成物8の調製]
実施例4において、
1)合成例1にて得た化合物A 10部を、合成例2にて得た化合物B 20部に変え、
2)ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)40部を、オリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂(三菱ガス化学社製「OPE-2St 1200」、不揮発分65%のトルエン溶液)30部に変えた。
以上の事項以外は実施例4と同様にして樹脂組成物8を調製した。
【0365】
[比較例1.比較用樹脂組成物1の調製]
実施例1において、合成例1にて得た化合物A 10部を用いなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして比較用樹脂組成物1を調製した。
【0366】
[比較例2.比較用樹脂組成物2の調製]
実施例1において、合成例1にて得た化合物Aの量を10部から85部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして比較用樹脂組成物2を調製した。
【0367】
[比較例3.比較用樹脂組成物3の調製]
実施例6において、合成例2にて得た化合物Bの量を20部から85部に変えた。以上の事項以外は実施例6と同様にして比較用樹脂組成物3を調製した。
【0368】
[実施例9.樹脂組成物9の調製]
実施例1において、合成例3のポリイミド樹脂15部を合成例4のビスフェノールエーテル樹脂の不揮発分20%のシクロヘキサノン溶液15部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物9を調製した。
【0369】
[実施例10.樹脂組成物10の調製]
実施例1において、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)80部を、合成例5のマレイミド樹脂(不揮発成分70質量%のMEK溶液)80部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物10を調製した。
【0370】
[実施例11.樹脂組成物11の調製]
実施例3において、合成例1にて得た化合物Aの量を20部から50部に変え、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」、不揮発分65%のトルエン溶液)60部を、日鉄ケミカル&マテリアル社製「ODV-XET-X04」(重量平均分子量3110、65質量%溶液)67.7部に変え、2官能アクリレート((メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)を用いなかった。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂組成物11を調製した。
【0371】
[実施例12.樹脂組成物12の調製]
実施例3において、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」、不揮発分65%のトルエン溶液)60部を、ベンゾシクロブテン樹脂(ダウ・ケミカル社製「CYCLOTENE 3022」)44部に変え、ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、重量平均分子量30000)5部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、重量平均分子量35000、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)16.7部に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂組成物12を調製した。
【0372】
[実施例13.樹脂組成物13の調製]
実施例9において、合成例1にて得た化合物A 10部を、合成例2にて得た化合物B 10部に変えた。以上の事項以外は実施例9と同様にして樹脂組成物13を調製した。
【0373】
[実施例14.樹脂組成物14の調製]
実施例10において、合成例1にて得た化合物A 10部を、合成例2にて得た化合物B 10部に変えた。以上の事項以外は実施例10と同様にして樹脂組成物14を調製した。
【0374】
[実施例15.樹脂組成物15の調製]
実施例11において、合成例1にて得た化合物A 50部を、合成例2にて得た化合物B 20部に変えた。以上の事項以外は実施例11と同様にして樹脂組成物15を調製した。
【0375】
[実施例16.樹脂組成物16の調製]
実施例12において、合成例1にて得た化合物A 20部を、合成例2にて得た化合物B 50部に変えた。以上の事項以外は実施例12と同様にして樹脂組成物16を調製した。
【0376】
[樹脂シートの作製]
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。
【0377】
樹脂組成物1~16、比較用樹脂組成物1~3をそれぞれ支持体上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から95℃で4分間乾燥することにより、支持体上に樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を貼り合わせた。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムをこの順に有する樹脂シートを得た。
【0378】
[硬化基板のムラの評価、メッキ導体層のピール強度の測定]
(1)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0379】
(2)樹脂シートのラミネート
樹脂シートから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0380】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
その後、樹脂シートがラミネートされた内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層基板及び絶縁層をこの順に有する硬化基板Aを得た。
【0381】
<硬化基板のムラの評価>
硬化基板Aの両面について、樹脂シートがラミネートされた部分(積層板とは反対側の表面)の表面均一性の観察を目視にて行い、下記のように評価した。
◎:ムラが全く観察されず、完全に均一な表面である。
〇:樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmの部分のみにムラが観察され、それより内側の部分は完全に均一な表面である。
×:樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmより内側の部分に、不均一な部分が観察される。
【0382】
(4)粗化処理
硬化基板Aに、粗化処理としてのデスミア処理を行った。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
(湿式デスミア処理)
硬化基板Aを、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で15分間浸漬し、次いで、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。
【0383】
(5)導体層の形成
セミアディティブ法に従って、絶縁層の粗化面に導体層を形成した。すなわち、粗化処理後の基板を、PdClを含む無電解メッキ液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解メッキを行い、厚さ30μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。得られた基板を「評価基板B」と称する。
【0384】
<メッキ導体層のピール強度の測定>
絶縁層と導体層のピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価基板Bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、剥離強度を求めた。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0385】
[誘電特性(誘電率、誘電正接)の測定]
実施例及び比較例で作製した樹脂シートから保護フィルムを剥がして、200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離した。得られた硬化物を「評価用硬化物C」と称する。評価用硬化物Cを、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電率、誘電正接を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0386】
[破断点伸度の測定]
評価用硬化物Cについて、日本工業規格(JIS K7127)に準拠して、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製「RTC-1250A」)により引っ張り試験を行い、破断点伸度(%)を測定した。
【0387】
【表1】
【表2】
*表中、「(A)成分の含有量」は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量を表し、「(C)成分の含有量」は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量を表す。
【0388】
実施例1~16において、(C)成分~(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
図1