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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/30 20060101AFI20230926BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20230926BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
D21H27/30 B
B32B29/00
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020132937
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029589
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】田中 三代子
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 正啓
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 友史
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-299730(JP,A)
【文献】特開平10-168800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00 - 27/42
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の紙基材と、第2の紙基材とを積層してなるガスバリア性積層体であって、
前記第1の紙基材の坪量が20g/m以上200g/m以下であり、
前記第2の紙基材の坪量が20g/m以上40g/m以下であり、かつ、第2の紙基材の全光線透過率が70%以上であ
再離解後のパルプの回収率が98%以上である、
ガスバリア性積層体。
【請求項2】
第2の紙基材の王研式透気度が30,000秒以上である、請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
第2の紙基材がグラシン紙である、請求項1または2に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
第2の紙基材の全光線透過率が80%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
第1の紙基材と、第2の紙基材とを、接着剤にて貼り合わせてなる、請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
23℃、85%RH条件下での酸素透過度が、100mL/(m・24h・atm)以下である、請求項1~5のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材にガスバリア性を付与するために、紙基材上に、ガスバリア層を備えて構成されるバリア性積層体が知られている。
特許文献1には、有機化合物成分を吸着しにくくした、すなわち非吸着性に優れ、かつ、良好なガスバリア性とヒートシール性を有する包装材料を提供することを目的として、少なくとも、紙基材層、バリア層、該バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層された中間層、および該中間層上に隣接して積層されたシーラント層を有する、液体用紙容器に用いる包装材料が記載されている。また、該バリア層は、PETフィルムと、ドライラミネート用接着剤と、アルミニウム箔とが積層してなるバリアフィルムであることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、紙支持体上に、水蒸気バリア層およびガスバリア層をこの順に有するガスバリア性積層体が記載されており、該水蒸気バリア層およびガスバリア層は、塗工により形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-249069号公報
【文献】特許第6668576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された包装材料は、バリアフィルムと紙とを貼り合わせて作製されており、高いバリア性能がある一方、合成樹脂フィルムを使用しているため、リサイクル性に劣り、また、環境への負荷が高いという問題がある。
また、特許文献2に記載のガスバリア性積層体は、良好なバリア性を有する一方、上記のとおり塗工によりバリア層を形成しており、大掛かりなコーター設備を必要とするため、製造プロセスの面では改善の余地があった。
さらに、従来、変性ポリビニルアルコール(たとえば、エチレン-ビニルアルコール共重合体)等をコーティングすることによりガスバリア性を付与することが試みられてきたが、高湿度環境下においては、バリア性能が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、紙基材同士を積層すること、すなわち、ガスバリア層を塗工することなく、ドライプロセスにより積層可能であり、リサイクル性に優れ、かつ、高湿度環境下においても高いガスバリア性が得られるバスバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、坪量が20g/m以上1,000g/m以下の第1の紙基材に、坪量が20g/m以上40g/m以下であり、全光透過率が70%以上である第2の紙基材を積層することにより、ガスバリア性に優れるガスバリア性積層体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<6>に関する。
<1> 第1の紙基材と、第2の紙基材とを積層してなるガスバリア性積層体であって、前記第1の紙基材の坪量が20g/m以上1,000g/m以下であり、前記第2の紙基材の坪量が20g/m以上40g/m以下であり、かつ、第2の紙基材の全光線透過率が70%以上である、ガスバリア性積層体。
<2> 第2の紙基材の王研式透気度が30,000秒以上である、<1>に記載のガスバリア性積層体。
<3> 第2の紙基材がグラシン紙である、<1>または<2>に記載のガスバリア性積層体。
<4> 第2の紙基材の全光線透過率が80%以上である、<1>~<3>のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
<5> 第1の紙基材と、第2の紙基材とを、接着剤にて貼り合わせてなる、<1>~<4>のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
<6> 23℃、85%RH条件下での酸素透過度が、100mL/(m・24h・atm)以下である、<1>~<5>のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紙基材同士を積層すること、すなわち、ガスバリア層を塗工することなく、ドライプロセスにより積層可能であり、リサイクル性に優れ、かつ、高湿度環境下においても高いガスバリア性が得られるバスバリア性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ガスバリア性積層体]
本発明のガスバリア性積層体(以下、単に「ガスバリア性積層体」ともいう)は、第1の紙基材と、第2の紙基材とを積層してなるガスバリア性積層体であって、前記第1の紙基材の坪量が20g/m以上1,000g/m以下であり、前記第2の紙基材の坪量が20g/m以上40g/m以下であり、かつ、第2の紙基材の全光線透過率が70%以上である。
なお、本発明において、ガスバリア性とは、主に酸素に対するバリア性を意味し、他のガスに対してもバリア性を有していてもよい。
【0010】
本発明のバリア性積層体によれば、紙基材同士を積層すること、すなわち、ガスバリア層を塗工することなく、ドライプロセスにより積層可能であり、リサイクル性に優れ、かつ、高湿度環境下においても高いガスバリア性が得られるガスバリア性積層体を提供することができる。なお、「ドライプロセスにより積層可能である」とは、ガスバリア層を塗工により形成せずに、ガスバリア性積層体が得られることを意味するものである。
上記の効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。第1の紙基材の坪量を20g/m以上1,000g/m以下とすることにより、バリア性積層体として必要な剛性等の物性が確保されたものと考えられる。また、第2の紙基材として、坪量が20g/m以上40g/m以下であり、かつ、全光線透過率が70%以上である紙基材を用いることにより、驚くべきことに、高いガスバリア性が得られ、さらに、高湿度環境下においても高いバリア性(酸素バリア性)が得られた。従来、紙基材が高いガスバリア性を有することは知られていなかったが、全光線透過率が70%以上であり、かつ、坪量の低い特定の紙基材を使用することによりガスバリア性が付与されることを見出したものである。なお、第1の紙基材と第2の紙基材は、ドライプロセスにより積層可能であり、かつ、紙基材同士を積層していることから、リサイクル性に優れたガスバリア性積層体が得られたと考えられる。
【0011】
本発明のガスバリア性積層体は、第1の紙基材の少なくとも一方の面上に、第2の紙基材が積層されていればよく、他方の面上にも、第2の紙基材が積層されていてもよい。また、第1の紙基材において、第2の紙基材が積層されている面とは反対側に、他の層を有することを排除するものではない。
【0012】
<第1の紙基材>
本発明のガスバリア性積層体に用いられる第1の紙基材は、植物由来のパルプを主成分として一般的に用いられている紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。また、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙等が挙げられ、これらの中でも晒または未晒クラフト紙、上質紙、片艶紙が好ましい。
【0013】
(坪量)
第1の紙基材の坪量は、ガスバリア性積層体としての適度な強度(剛性)を得る観点、成形加工性の観点、および入手容易性の観点から、20g/m以上、好ましくは30g/m以上、より好ましくは40g/m以上であり、そして、1,000g/m以下であり、好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下、さらに好ましくは300g/m以下、よりさらに好ましくは200g/m以下、よりさらに好ましくは150g/m以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0014】
(厚さ)
第1の紙基材の厚さは、ガスバリア性積層体としての適度な強度(剛性)を得る観点、成形加工性の観点、および入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、そして、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは600μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0015】
(密度)
第1の紙基材の密度は、ガスバリア性積層体としての適度な強度(剛性)を得る観点、成形加工性の観点、および入手容易性の観点から、好ましくは0.5g/cm以上、より好ましくは0.6g/cm以上であり、そして、好ましくは1.2g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下である。
紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
【0016】
第1の紙基材には、内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加していてもよい。内添剤としては、たとえば二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、顔料等が挙げられる。
【0017】
第1の紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機(たとえば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機)を適宜選択して使用することができる。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0018】
また、上述のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0019】
<第2の紙基材>
本発明のガスバリア性積層体に用いられる第2の紙基材は、坪量が20g/m以上40g/m以下であり、かつ、全光線透過率が70%以上である。
第2の紙基材は、全光線透過率を70%以上とするため、高度に叩解されたパルプを使用する。また、高度に叩解されたパルプを使用するため、抄紙工程での脱水が困難であり、坪量を40g/m超とすることが困難である。
【0020】
(坪量)
第2の紙基材の坪量は、製造や加工の容易性および強度や寸法安定性の観点、並びにガスバリア性の観点から、坪量が20g/m以上であり、好ましくは25g/m以上、より好ましくは28g/m以上であり、そして、40g/m以下、好ましくは38g/m以下、より好ましくは36g/m以下であり、さらに好ましくは34g/m以下であり、特に好ましくは32g/m以下である。
【0021】
(厚さ)
また、第2の紙基材の厚さは、製造や加工の容易性および強度や寸法安定性の観点、並びにガスバリア性の観点から、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上、よりさらに好ましくは28μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、よりさらに好ましくは35μm以下である。
【0022】
(密度)
第2の紙基材の密度(緊度ともいう)は、ガスバリア性および製造容易性の観点から、好ましくは0.80g/cm以上、より好ましくは0.90g/cm以上、さらに好ましくは0.95g/cm以上であり、そして、好ましくは1.40g/cm以下、より好ましくは1.30g/cm以下、さらに好ましくは1.20g/cm以下である。
紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
【0023】
(全光線透過率)
第2の紙基材の全光線透過率は、優れたガスバリア性を得る観点から、70%以上であり、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上であり、そして、100%であってもよく、入手容易性の観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
紙基材の全光線透過率は、JIS K 7375:2008に準拠して測定される。
【0024】
(変則フリーネス)
本実施形態の第2の紙基材は、透明性を向上させる観点から、第2の紙基材を構成するパルプの変則フリーネスが100mL以上600mL以下であることが好ましい。ここで、変則フリーネスとは、JIS P 8121:2012に規定のカナダ標準ろ水度法において、パルプ採取量を3gから0.3gに変更し、JIS規格スクリーンプレートを80メッシュワイヤーに変更して測定したフリーネス(濾水度)である。第2の紙基材を構成するパルプの変則フリーネスが前記下限値以上であると、第2の紙基材の寸法安定性が高くなり、ボコツキが生じにくく、前記上限値以下であると、第2の紙基材の透明性を維持できるので好ましい。
第2の紙基材を構成するパルプ繊維の変則フリーネスは、150mL以上500mL以下であることがより好ましく、200mL以上400mL以下であることがさらに好ましい。変則フリーネスを調製するために、パルプを叩解する方法については、公知の方法を使用することができる。
第2の紙基材を構成するパルプの変則フリーネスは、JIS P 8220-1:2012に準拠して離解したパルプを試料として、上述の方法により測定すればよい。
【0025】
(透気度)
第2の紙基材の透気度は、ガスバリア性を向上させる観点から、好ましくは30,000秒以上、より好ましくは50,000秒以上、さらに好ましくは99,999秒以上である。
第2の紙基材の透気度は、JIS P 8117:2009に準じて、王研式により測定された値である。
【0026】
第2の紙基材としては、上述した坪量および全光線透過率を有していれば特に限定されないが、グラシン紙が好ましい。なお、グラシン紙の中で、特に高叩解で高い全光線透過率を示すグラシン紙は、グラファン紙とも呼ばれており、グラファン紙を使用することがより好ましい。
一般にグラシン紙は、パルプ原料として針葉樹ケミカルパルプを主成分として有し、高叩解して酸性乃至中性にて抄紙し、スーパーカレンダー等により圧縮処理して仕上げられる。
パルプの具体例としては、たとえば、スプルースやヘムロック等の針葉樹材からなるケミカルパルプが最適であるが、それ以外に広葉樹材からなるケミカルパルプや、メカニカルパルプ、古紙、合成パルプ等を混合配合してもよい。
【0027】
<ガスバリア性積層体>
ガスバリア性積層体は、第1の紙基材と、第2の紙基材とを積層してなり、いずれの方法により積層されていてもよいが、第1の紙基材と、第2の紙基材とを接着剤を用いて貼り合わせてなることが好ましい。
使用する接着剤としては特に限定されず、無溶剤型、有機溶剤型、水系型などのいずれでもよいが、第2の紙基材の形状安定性を確保する観点から、有機溶剤型の接着剤、または無溶剤型の接着剤を使用することが好ましい。
接着剤を構成する主成分としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、カゼイン、澱粉等が例示される。これらの中でも、入手容易性および良好な接着性が得られる観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0028】
なお、第1の紙基材に接着剤を塗布後に、第1の紙基材と第2の紙基材とを積層してもよく、第2の紙基材に接着剤を塗布後に、第1の紙基材と第2の紙基材とを積層してもよく、また、第1の紙基材と第2の紙基材との両方に接着剤を塗布後に、第1の紙基材と第2の紙基材とを積層してもよく、特に限定されないが、形状安定性の観点から、第1の紙基材に接着剤を塗布後に、第2の紙基材を積層することが好ましい。
接着剤の塗布方法としては、従来公知の方法の中から適宜選択すればよく、特に限定されないが、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、スプレーコーターなどが例示される。
【0029】
接着剤の付与量は特に限定されないが、乾燥後の付与量(塗工量)は、紙基材同士の密着性を高める観点から、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは4g/m以上であり、そして、好ましくは40g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下である。
【0030】
[ガスバリア性積層体の物性等]
(酸素透過度)
ガスバリア性積層体の酸素透過度は、低いほど酸素が透過されず好ましく、特に本発明において、高湿度環境下におけるガスバリア性に優れることが好ましい。23℃85%RHの条件における酸素透過度は、好ましくは100mL/(m・24h・atm)以下、より好ましくは90mL/(m・24h・atm)以下、さらに好ましくは75mL/(m・24h・atm)以下、よりさらに好ましくは60mL/(m・24h・atm)以下である。
また、23℃50%における酸素透過度は、好ましくは50mL/(m・24h・atm)以下、より好ましくは20mL/(m・24h・atm)以下、さらに好ましくは10mL/(m・24h・atm)以下であり、特に好ましくは5mL/(m・24h・atm)以下である。
バリア性積層体の酸素透過度は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、上記の条件にて測定される。
【0031】
(パルプ回収率)
本発明のガスバリア性積層体は、再離解によるパルプの回収率に優れており、再離解後のパルプの回収率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上が達成される。上限は特に限定されず、100%以下である。再離解後のパルプの回収率が上記範囲内であると、リサイクル性に優れ、環境負荷の低減性に優れる。
本発明のガスバリア性積層体は、紙基材同士の積層により形成されており、樹脂フィルムをラミネートした場合等に比べて、再離解後のパルプ回収率に格段に優れる。
再離解後のパルプの回収率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0032】
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア性、特に高湿度環境下におけるガスバリア性に優れ、たとえば、保香性を必要とする包装用紙(たとえば、牛乳用紙パック、ジュース用紙パック、食品包装等)として好適に用いられる。
【実施例
【0033】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0034】
[評価および分析]
実施例および比較例で使用した紙基材、および得られたバリア性積層体について、以下の評価および分析を行った。
(坪量)
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
(厚さ)
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0035】
(全光線透過率)
全光線透過率は、JIS K 7375:2008に準拠して測定した。
【0036】
(透気度)
透気度は、JIS P 8117:2009に準拠し、王研式試験機により測定した。
【0037】
(酸素透過度)
ガスバリア性積層体の酸素透過度は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、23℃、かつ50%RHおよび85%RHの条件にて測定した。
【0038】
(リサイクル性(再離解後のパルプ回収率)の評価)
絶乾質量30gのガスバリア性積層体を手で3~4cm角に破き、20℃の水道水に一晩浸漬した。ガスバリア性積層体の濃度を2.5%になるよう希釈後、TAPPI標準離解機(熊谷理機(株)製)を用いて3000rpmの回転数で20分間離解処理した。得られたパルプスラリーを6カット(スリット幅0.15mm)のスクリーンプレートをセットしたフラットスクリーン(熊谷理機(株)製)に供し、8.3L/minの水流中で精選処理した。スクリーンプレート上に残った未離解物を回収して105℃のオーブンで乾燥して質量を測定し、以下の計算式:
パルプ回収率(%)={試験に供したガスバリア性積層体の絶乾質量(g)-未離解物の絶乾質量(g)}/試験に供したガスバリア性積層体の絶乾質量×100
からパルプ回収率を算出した。
【0039】
実施例1
第1の紙基材として、板紙(坪量450g/m、厚さ500μm)を使用し、第2の紙基材としてグラシン紙(坪量30g/m、厚さ30μm、全光線透過率83.2%、王子エフテックス(株)製、グラファン、離解パルプの変則フリーネス250mL)を使用した。板紙の被塗工面に、変性ビニル共重合樹脂接着剤(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂接着剤、日栄加工(株)製、ライフボンドAV-425)を、塗工量(乾燥後)が5g/mとなるようにメイヤーバーを用いて塗布し、その後上記グラシン紙を貼り合わせて、ガスバリア性積層体を作製した。
【0040】
実施例2
板紙を未晒クラフト紙(坪量50g/m、厚さ65μm)としたこと以外、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を作製した。
【0041】
実施例3
板紙をライナー紙(坪量115g/m、厚さ150μm)としたこと以外、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を作製した。
【0042】
比較例1
第2の紙基材として、グラシン紙の代わりに未晒クラフト紙(坪量50g/m、厚さ65μm)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を作製した。
【0043】
比較例2
合成マイカ(アスペクト比:約1000、粒径:6.3μm、水分散液中の合成マイカの固形分量:6%)の水分散液19.7部に、撹拌しながら自己乳化型ポリオレフィン(ザイクセンAC、住友精化(株)製)34.3部を加え、撹拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂(SPI-203(50)H、田岡化学工業(株)製)1.7部を加え、撹拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.1部を加え、撹拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、オーバーコート層(ガスバリア層)用塗工液とした。
そして、水蒸気バリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が6g/mとなるように、晒クラフト紙(坪量50g/m、厚さ68μm)にメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、水蒸気バリア層を形成した。さらに、水蒸気バリア層上のオーバーコート層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、オーバーコート層(ガスバリア層)を形成し、バリア紙を作製した。
グラシン紙の代わりにバリア紙(65g/m、厚さ77μm)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から分かるように、本実施例のバリア性積層体によれば、リサイクル性に優れ、ドライプロセスにより積層可能であり、かつ、高湿度環境下においてもガスバリア性に優れるガスバリア性積層体が提供される。