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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/032 20060101AFI20230926BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230926BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230926BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20230926BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230926BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20230926BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G03F7/032
G03F7/004 501
G03F7/027 515
G03F7/004 512
H05K3/28 F
H05K3/28 D
H05K3/46 T
C08G59/17
C08G59/68
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020141675
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037501
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-05-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】唐川 成弘
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170958(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/022068(WO,A1)
【文献】特開2020-047654(JP,A)
【文献】特開2019-196444(JP,A)
【文献】特開2018-165799(JP,A)
【文献】特開2018-053215(JP,A)
【文献】特開2017-116652(JP,A)
【文献】特開2016-167066(JP,A)
【文献】特開2015-064612(JP,A)
【文献】特開2014-074924(JP,A)
【文献】特開2013-232665(JP,A)
【文献】特開2013-029781(JP,A)
【文献】特開2005-115151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
H05K 3/28
H05K 3/46
C08G 59/17
C08G 59/68
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂であって、ナフタレン骨格含有樹脂
(B)無機充填材、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂、及び
(E)(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂である高分子量成分、を含有する感光性樹脂組成物であって、
(E)成分のガラス転移温度が65℃以下であり、重量平均分子量が1000以上10000未満である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂であって、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、
(B)無機充填材、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂、及び
(E)(メタ)アクリル樹脂、ポエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂である高分子量成分、を含有する感光性樹脂組成物であって、
(E)成分のガラス転移温度が65℃以下であり、重量平均分子量が1000以上10000未満である、感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上85質量%以下である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)成分が、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、及び(メタ)アクリロイル基から選択される1種以上を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(E)成分が、カルボキシル基、及び、水酸基から選択される1種以上を有する、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分が、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかを少なくとも含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分が、シリカを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
【請求項11】
絶縁層が、ソルダーレジストである、請求項10に記載のプリント配線板。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。さらには、当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板では、はんだが不要な部分へはんだが付着するのを抑制するとともに、回路基板が腐食するのを抑制するための永久保護膜として、ソルダーレジストを設けることがある。ソルダーレジストとしては、例えば特許文献1に記載されているような感光性樹脂組成物を使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-115672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感光性樹脂組成物は、一般的に現像時の解像性等が要求されている。また、近年、感光性樹脂組成物は、絶縁層又は封止層の材料として用いることが試みられているので、解像性(現像性)に加えて、導体層との間のピール強度にも優れることが求められている。また、感光性樹脂組成物を含む感光性フィルムの作業性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物の柔軟性を高めることも求められている。
【0005】
本発明者らは、感光性樹脂組成物を光硬化させると感光性樹脂組成物の成分が相分離し、相分離が起こることでピール強度が向上することを見出した。
【0006】
しかし、相分離の度合いが大きいと特定の成分の凝集物が発生することがある。感光性樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理するとその凝集物が脱落し、粗化処理後の硬化物表面に凝集物由来の凹みが生じる。この凹みが生じることで、本来ソルダーレジスト、封止層、又は絶縁層において必要とされる表面の均一性及び絶縁性が低下しやすくなることがある。また、感光性樹脂組成物を含む感光性フィルムの取扱い作業性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物の柔軟性を高めることも求められる。
【0007】
本発明の課題は、上記した課題を鑑みてなされたものであり、粗化処理後の硬化物表面に凝集物由来の凹みの発生が抑制され、ピール強度が高い硬化物を得ることができる、柔軟性に優れる感光性樹脂組成物;当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、ガラス転移温度が65℃以下であり、重量平均分子量が1000以上10000未満である高分子量成分を感光性樹脂組成物に含有させ、さらに、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、(B)無機充填材、(C)光重合開始剤、及び(D)エポキシ樹脂を組み合わせて含有する感光性樹脂組成物を用いることにより、粗化処理後の硬化物表面に凝集物由来の凹みの発生が抑制され、ピール強度が高い硬化物を得ることができ、柔軟性に優れるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、
(B)無機充填材、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂、及び
(E)高分子量成分、を含有する感光性樹脂組成物であって、
(E)成分のガラス転移温度が65℃以下であり、重量平均分子量が1000以上10000未満である、感光性樹脂組成物。
[2] (B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上85質量%以下である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] (E)成分が、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、及び(メタ)アクリロイル基から選択される1種以上を有する、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] (A)成分が、ナフタレン骨格を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5] (A)成分が、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートである、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6] (D)成分が、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかを少なくとも含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7] (B)成分が、シリカを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
[9] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
[10] [1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
[11] 絶縁層が、ソルダーレジストである、[10]に記載のプリント配線板。
[12] [10]又は[11]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粗化処理後の硬化物表面に凝集物由来の凹みの発生が抑制され、ピール強度が高い硬化物を得ることができる、柔軟性に優れる感光性樹脂組成物;当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0012】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、(B)無機充填材、(C)光重合開始剤、(D)エポキシ樹脂、及び(E)高分子量成分、を含有する感光性樹脂組成物であって、(E)成分のガラス転移温度が65℃以下であり、重量平均分子量が1000以上10000未満である。このような感光性樹脂組成物によれば、柔軟性に優れ、粗化処理後の硬化物表面に凝集物由来の凹みの発生が抑制され、ピール強度が高い硬化物を得ることができるようになる。また、この感光性樹脂組成物は、通常は現像性に優れる。
【0013】
感光性樹脂組成物は、更に必要に応じて、(F)反応性希釈剤、(G)溶剤、及び(H)その他の添加剤などの任意の成分を含んでいてもよい。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂>
感光性樹脂組成物は、(A)成分として、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂を含有する。(A)成分を感光性樹脂組成物に含有させることにより解像性を向上させることができる。
【0015】
エチレン性不飽和基は、炭素-炭素二重結合を有し、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基、アクリロイル基及びこれらの組み合わせを包含する。(A)成分は、エチレン性不飽和基を含むため、光ラジカル重合が可能である。(A)成分の1分子当たりのエチレン性不飽和基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。また、(A)成分が1分子当たり2個以上のエチレン性不飽和基を含む場合、それらのエチレン性不飽和基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0016】
また、(A)成分はカルボキシル基を含むため、当該(A)成分を含有する感光性樹脂組成物は、アルカリ溶液(例えば、アルカリ性現像液としての1質量%の炭酸ナトリウム水溶液)に対し溶解性を示す。(A)成分の1分子当たりのカルボキシル基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0017】
(A)成分としては、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有している樹脂であればよい。(A)成分としては、
(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂、及び
(A-2)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、
の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0018】
((A-1)ナフタレン骨格含有樹脂)
(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂は、(A)成分に属する樹脂であるため、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂である。このため、(A-1)成分は、光ラジカル重合が可能であり、かつ、(A-1)成分を含有する感光性樹脂組成物は、いずれも、アルカリ溶液に対し溶解性を示す。
【0019】
(A-1)成分は、1分子中に、複数個のエチレン性不飽和基を持つことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高めることができる。また、(A-1)成分は、ナフタレン骨格1個につき、2個以下のエチレン性不飽和基を持つことが好ましい。これにより、架橋位置(架橋点)を調整できるので、感光性樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性をコントロールすることができる。より好ましくは、エチレン性不飽和基は、ナフタレン骨格が有する置換基に含まれている。エチレン性不飽和基をナフタレン骨格の置換基に含ませるためには、第1の前駆体として、例えば、ナフトールのOH基のH原子が、エポキシ基を含有する置換基(例えば、エポキシ基、グリシジル基)で置換された化合物を用意し、第1の前駆体に対して、エチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸)を付加させることで得ることができる。これにより、ナフタレン骨格が有する置換基に、エチレン性不飽和基を導入することができる。
【0020】
(A-1)成分は、1分子中に、複数個のカルボキシル基を持つことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対する溶解性を高めることができる。(A-1)成分は、ナフタレン骨格1個につき、2個以下のカルボキシル基を持つことが好ましい。これにより、溶解性の制御ができる。より好ましくは、カルボキシル基は、ナフタレン骨格が有する置換基に含まれている。カルボキシル基をナフタレン骨格の置換基に含ませるためには、第1の前駆体として、例えば、ナフトールのOH基のH原子が、エポキシ基を含有する置換基で置換された化合物を用意し、第1の前駆体に対して、エチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸)を付加させ、これによって第2級水酸基を有する第2の前駆体を得て、第2の前駆体に対して、カルボン酸無水物(例えばテトラヒドロフタル酸)を付加させることで得ることができる。これにより、ナフタレン骨格が有する置換基に、エチレン性不飽和基と、カルボキシル基の双方を導入することができる。
【0021】
また、(A-1)成分は、ナフタレン骨格含有樹脂である。ナフタレン骨格含有樹脂とは、1分子中に1個以上のナフタレン骨格を含有する化合物をいう。また、(A-1)成分は、アルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対して適切な範囲の溶解速度で溶解できる。また、(A-1)成分を含む感光性樹脂組成物をアルカリ性現像液で現像した場合に、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が感光性樹脂組成物中に局所的に発生することを抑制できる。即ちBP(ブレイクポイント)を向上させることが可能となる。したがって、感光性樹脂組成物の現像性を改善することができる。
【0022】
また、(A-1)成分として、ナフタレン骨格含有樹脂を用いると、通常は、分子の剛性が高くなるので感光性樹脂組成物中の分子の動きが抑制され、その結果、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度がより高くなる。さらに、(A-1)成分の作用により、通常は、熱膨張又は熱収縮によって生じる内部応力に対する耐性が向上するので、感光性フィルムの可撓性を向上することができる。
【0023】
(A-1)成分は、1分子中に、1つのナフタレン骨格を含んでいてもよく、2個以上のナフタレン骨格を含んでいてもよい。
【0024】
(A-1)成分は、例えば、下記式(1)に示す構造を含有する樹脂である。(A-1)成分は、下記式(1)に示す構造を複数個(例えば1~10個、好ましくは1~6個)有していてもよく、下記式(1)に示す構造を複数個有する場合、(A-1)成分は、それら複数個の下記式(1)に示す構造を構造単位(繰り返し単位)として含んでいてもよい。また、下記式(1)中、Rと結合した結合手は、ナフタレン骨格が有する炭素原子のうち結合可能な炭素原子のいずれに結合していてもよい。よって、Rが結合した結合手は、末端結合手と、同じベンゼン環の炭素原子と結合していてもよく、異なるベンゼン環の炭素原子と結合していてもよい。前記の末端結合手は、ナフタレン環に結合する結合手のうち、Rに結合した結合手及びOR’に結合した結合手以外の結合手を表し、具体的には、式(1)の左端に描かれた結合手を表す。例えば、ナフタレン骨格における末端結合手と、Rと結合した結合手との位置の組み合わせは、1,2位、1,3位、1,4位、1,5位、1,6位、1,7位、1,8位、2,3位、2,6位、2,7位であってもよい。
【0025】
【化1】
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。Rの炭素原子数は、通常1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。また、アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、等が挙げられる。
【0026】
及びRが有しうる置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられる。
【0027】
上記式(1)中、Xは、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Xの炭素原子数は、通常6~30、好ましくは6~20、より好ましくは6~10である。アリーレン基は、例えば、フェニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ビフェニレン基である。
【0028】
Xが有しうる置換基は、例えば、R及びRが有しうる置換基と同じ例が挙げられる。
【0029】
上記式(1)において、aは、0又は1を表す。ここで、aは、基Xの数である。
【0030】
上記式(1)において、sは、0又は1を表す。ここで、s及びtは、それぞれ、基R及び基Rの数である。また、上記式(1)において、tは、0又は1を表す。ただし、s及びtは、s+tが0にはならない。中でも、a=1の場合、s及びtがいずれも1であることが好ましい。a=0の場合、s及びtの一方が0であることが好ましい。
【0031】
上記式(1)中、OR’は、ナフタレン骨格上の置換基である。上記式(1)中、R’は、それぞれ独立してエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む有機基を表す。
【0032】
R’は、好ましくは、下記式(2)に示す基を表す。
【化2】
上記式(2)中、Rは、3価の基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい3価の炭化水素基(ただし、炭素-炭素結合(C-C結合)の間にヘテロ原子が介在していてもよい)を表し、中でも、置換基を有していてもよい3価の脂肪族炭化水素基が好ましい。このRは、置換基を有していてもよいエポキシ基含有置換基の3価の残基であってもよい。Rが有しうる置換基は、例えば、R及びRが有しうる置換基と同じ例が挙げられる。
【0033】
上記式(2)中、Rは、エチレン性不飽和基を含む有機基を表す。エチレン性不飽和基を含む有機基の好ましい例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基及びそれらの組み合わせを包含する。
【0034】
上記式(2)中、Rは、カルボキシル基を含む有機基である。カルボキシル基を含む有機基の例は、-OCO-R-COOHである。ここで、Rは、2価の基を表す。Rとしては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましい。Rの炭素原子数は、通常1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状若しくは分岐鎖状の非環式アルキレン基;飽和若しくは不飽和の2価の脂環式炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等が挙げられる。中でも、2価の脂環式炭化水素基及びアリーレン基が好ましく、4-シクロヘキセニレン基及びフェニレン基が特に好ましい。また、Rが有しうる置換基は、例えば、R及びRが有しうる置換基と同じ例が挙げられる。-OCO-R-COOH中の-CO-R-COOHは、通常、カルボン酸無水物の残基である。カルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物である。
【0035】
上記式(1)中、cは、通常1~6、好ましくは1~3、より好ましくは1~2の整数を表す。ここで、cは、基OR’の数である。
【0036】
-(A-1)成分の第1の例(a=1)-
(A-1)成分の好ましい例は、ナフトールアラルキル型樹脂である。「ナフトールアラルキル型樹脂」とは、ナフトールアラルキレン基からOH基のH原子を除いた構造の基を含有する樹脂である。
【0037】
好ましいナフトールアラルキル型樹脂は、上記式(1)においてa=1の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(3)に示す構造を含有する樹脂である。
【化3】
【0038】
上記式(3)中、R、R、X、s、t、R’及びcは、前述と同じである。s及びtがいずれも1であることが好ましい。
【0039】
ナフトールアラルキル型樹脂のより好ましい樹脂は、上記式(3)において、c=1、s=1、かつ、t=1の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(4)又は(5)に示す構造の2価の基を含有するナフトールアラルキル型樹脂である。
【0040】
【化4】
【化5】
【0041】
上記式(4)又は(5)中、R、R、X、R’及びcは、前述と同じである。上記式(4)又は(5)に示されるナフトールアラルキル型樹脂は、後述する合成例1で用いたナフトールアラルキル型エポキシ樹脂を材料として合成可能な樹脂である。ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂は、例えば、新日鉄住金化学株式会社製「ESN-475V」(エポキシ当量325g/eq.)として入手可能である。
【0042】
-(A-1)成分の第2の例(a=0)-
(A-1)成分のうち、ナフトールアラルキル型樹脂以外(a=0)の好ましい例は、上記式(1)において、c=2、s=1、かつ、t=0の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(6)に示す構造の2価の基を含有するナフタレン骨格含有樹脂である。
【化6】
上記式(6)中、R、R及びR’は、前述と同じである。上記式(6)に示されるナフタレン骨格含有樹脂は、1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタンを材料として合成可能な樹脂である。このようなナフタレン骨格含有エポキシ樹脂は、例えば、大日本インキ化学工業社製「EXA-4700」として入手可能である。
【0043】
(A-1)成分の重量平均分子量としては、成膜性の観点から、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましく、2000以上であることがよりさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、7500以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0044】
-(A-1)成分の製造方法-
(A-1)成分は、ナフタレン骨格、エチレン性不飽和基、及びカルボキシル基を含有する樹脂を有する化合物であれば、上述した例に限られることはなく、特に制限はないが、その一態様としては、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン骨格含有エポキシ化合物)に不飽和カルボン酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂等が挙げられる。酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂の製造方法について説明する。まず、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得、次いで、不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂とカルボン酸無水物とを反応させる。このようにして酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得ることができる。
【0045】
ナフタレン骨格含有エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物であれば使用可能であり、例えば、モノヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロオキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂等の、分子中にナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
モノヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1-グリシジルオキシナフタレン、2-グリシジルオキシナフタレンが挙げられる。ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,3-ジグリシジルオキシナフタレン、1,4-ジグリシジルオキシナフタレン、1,5-ジグリシジルオキシナフタレン、1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,3-ジグリシジルオキシナフタレン、2,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。
【0047】
ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビ-(2-グリシジルオキシ)ナフチル、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチル等が挙げられる。
【0048】
ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-ビス(2-グリシジルオキシナフチル)メタンが挙げられる。
【0049】
これらのなかでも1分子中にナフタレン骨格を2個以上有する、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、特に1分子中にエポキシ基を3個以上有する1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチルが平均線熱膨張率に加えて耐熱性に優れる点で好ましい。
【0050】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が感光性樹脂組成物の光硬化性を向上させる観点から好ましい。なお、本明細書において、上記のナフタレン型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるナフタレン型エポキシ化合物エステル樹脂を「ナフタレン型エポキシ化合物(メタ)アクリレート」と記載する場合があり、ここでナフタレン型エポキシ化合物のエポキシ基は、通常、(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート、アクリレート及びその組み合わせを包含する。アクリル酸とメタクリル酸とをまとめて「(メタ)アクリル酸」ということがある。
【0051】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が硬化物の現像性及び絶縁信頼性向上の点から好ましい。
【0052】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、触媒存在下で不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とを反応させ不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得た後、不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂とカルボン酸無水物とを反応させてもよい。
【0053】
この際に用いる触媒の量は、不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とカルボン酸無水物との合計質量に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%~1質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.5質量%の範囲である。触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の各種アミン化合物類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のホスホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するホスホニウム塩類;トリメチルスルホニウム塩、ベンジルテトラメチレンスルホニウム塩、フェニルベンジルメチルスルホニウム塩またはフェニルジメチルスルホニウム塩等のスルホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するスルホニウム塩類;燐酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸のような酸性化合物類等が挙げられる。反応は、50℃~150℃の範囲で行うことができ、80℃~120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0054】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、有機溶剤を使用してもよく、有機溶剤としては、後述する(G)溶剤と同様の溶剤を使用することができる。
【0055】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、ハイドロキノン等の重合阻害剤を使用してもよい。この際に用いる重合阻害剤の量は、不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とカルボン酸無水物との合計質量に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%~1質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.5質量%の範囲である。
【0056】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂としては、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートとは、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物を使用し、不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸を使用して得られる酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を指す。
【0057】
(A-1)成分の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エチレン性不飽和基及びナフタレン骨格含有エポキシ化合物を反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性ナフタレン骨格含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基にカルボン酸無水物を反応させることも可能である。カルボン酸無水物としては上記した酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0058】
((A-2)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)
(A-2)成分としての酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ化合物の(メタ)アクリレートにカルボキシル基が導入された構造を有する化合物である。ただし、この(A-2)成分には、前記(A-1)成分は含まれない。
【0059】
(A-2)成分の一態様としては、クレゾールノボラックA型エポキシ化合物、クレゾールノボラックF型エポキシ化合物等のクレゾールノボラック型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。詳細は、クレゾールノボラック型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートを得、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物とを反応させることで酸変性クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0060】
(A-2)成分の別態様としては、上述したクレゾールノボラック型エポキシ化合物以外のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなエポキシ化合物としては、例えば、ビフェニル型エポキシ化合物;ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;パーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0061】
このような酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは市販品を用いることができ、具体例としては、日本化薬社製の「CCR-1179」(クレゾールノボラックF型エポキシアクリレート)、「ZAR-2000」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)、「ZFR-1491H」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)、「ZFR-1533H」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水テトラヒドロフタル酸の反応物)、「ZCR-1569H」(酸変性ビフェニル型エポキシアクリレート:ビフェニル型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)、昭和電工社製の「PR-300CP」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(A-2)成分の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エポキシ化合物の(メタ)アクリレートを反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。エポキシ化合物の(メタ)アクリレートは、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基にカルボン酸無水物を反応させることも可能である。カルボン酸無水物としては上記したカルボン酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0063】
このような不飽和変性(メタ)アクリル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、昭和電工社製の「SPC-1000」、「SPC-3000」、ダイセル・オルネクス社製「サイクロマーP(ACA)Z-250」、「サイクロマーP(ACA)Z-251」、「サイクロマーP(ACA)Z-254」、「サイクロマーP(ACA)Z-300」、「サイクロマーP(ACA)Z-320」等が挙げられる。
【0064】
(A-2)成分の重量平均分子量としては、成膜性の観点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、20000以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましく、14000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0065】
(A)成分は、上述した(A-1)成分及び(A-2)成分以外の(A-3)成分であってもよい。この成分には、(A-1)成分及び(A-2)成分は含まない。
【0066】
(A-3)成分の重量平均分子量及び酸価は、任意であるが、上述した(A-2)成分の重量平均分子量及び酸価と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、(A-2)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。
【0067】
(A)成分の酸価としては、感光性樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を向上させるという観点から、0.1mgKOH/g以上、0.5mgKOH/g以上又は1mgKOH/g以上であることが好ましい。他方で、硬化物の微細パターンがアルカリ溶液に溶け出す事を抑制するという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(A)成分に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1Nのエタノール性KOH溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式(1)により酸価を算出する。
式:A=Vf×5.611/(Wp×I) ・・・(1)
【0068】
なお、上記式(1)中、Aは酸価[mgKOH/g]を表し、VfはKOH溶液の滴定量[mL]を表し、Wpは測定樹脂溶液質量[g]を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発成分の割合[質量%]を表す。
【0069】
(A)成分の含有量としては、感光性樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を調整するという観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
なお、本発明において、感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0070】
<(B)無機充填材>
感光性樹脂組成物は、(B)成分として(B)無機充填材を含有する。(B)成分を含有させることで、絶縁性に優れる硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物を提供可能となる。
【0071】
(B)無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。(B)無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
(B)無機充填材の平均粒径は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。
【0073】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0074】
(B)無機充填材の比表面積は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは3m/g以上、特に好ましくは5m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0075】
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。
【0076】
(B)無機充填材は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アドマテックス社製「SC2050」、「SC4050」、「アドマファイン」、電気化学工業社製「SFPシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製「SP(H)シリーズ」、堺化学工業社製「Sciqasシリーズ」、日本触媒社製「シーホスターシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製の「AZシリーズ」、「AXシリーズ」、堺化学工業社製の「Bシリーズ」、「BFシリーズ」等が挙げられる。
【0077】
(B)無機充填材の含有量は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上が好ましく、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。上限は、露光時の光反射を抑制して優れた現像性を得る観点から、例えば、85質量%以下、70質量%以下、65質量%以下である。
【0078】
<(C)光重合開始剤>
感光性樹脂組成物は、(C)成分として、光重合開始剤を含有する。(C)光重合開始剤を感光性樹脂組成物に含有させることにより、感光性樹脂組成物を効率的に光硬化させることができる。
【0079】
(C)光重合開始剤は、任意の化合物を使用でき、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン、1-4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が挙げられ、スルホニウム塩系光重合開始剤も使用することができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より効率的に感光性樹脂組成物を光硬化させる観点から、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤のいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤がより好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
(B)光重合開始剤の具体例としては、IGM Resins社製の「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad379」、「Omnirad819」、「OmniradTPO」、BASF社製の「IrgacureOXE-01」、「IrgacureOXE-02」、「IrgacureTPO」、「Irgacure819」、ADEKA社製の「N-1919」等が挙げられる。
【0081】
(C)光重合開始剤の含有量としては、感光性樹脂組成物を十分に光硬化させ、絶縁信頼性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。一方、感度過多による現像性の低下を抑制するという観点から、上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0082】
さらに、感光性樹脂組成物は、(C)成分と組み合わせて、光重合開始助剤として、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン類を含んでいてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を含んでいてもよい。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0083】
<(D)エポキシ樹脂>
感光性樹脂組成物は、(D)成分としてエポキシ樹脂を含有する。(D)成分を含有させることにより、絶縁信頼性を向上させることができる。但し、ここでいう(D)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有するエポキシ樹脂は含めない。また、(D)成分には、(E)成分に該当するものは含めない。
【0084】
(D)成分としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも(D)成分としては、ビフェニル型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかであることが好ましい。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
樹脂組成物は、(D)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(D)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0086】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(D)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。
【0087】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0088】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0089】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0091】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂がより好ましい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0092】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM-434L」、(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM-434VL」、(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3980S」(2官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社の「EP-3950L」(3官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日産化学社製の「TEPIC-VL」(イソシアヌル環型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM-100H」(N-[2-メチル-4-(オキシラニルメトキシ)フェニル]-N-(オキシラニルメチル)オキシランメタンアミン)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
(D)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.1~1:10、特に好ましくは1:0.5~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0094】
(D)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0095】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは250~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0096】
(D)成分の含有量は、良好な機械強度、及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0097】
<(E)高分子量成分>
感光性樹脂組成物は、(E)成分として、(E)高分子量成分を含む。(E)成分は、ガラス転移温度が65℃以下であり、重量平均分子量が1000以上10000未満である。但し、(E)成分は(A)成分に該当するものは除かれる。(E)成分を感光性樹脂組成物に含有させることで、粗化処理後の硬化物表面にめっきによって導体層を形成した場合に、高いピール強度を得ることができる。また、(E)成分によれば、粗化処理後の硬化物表面における凝集物由来の凹みの発生が抑制されるので、当該硬化物表面に微細な配線を形成できる。さらに、通常は、(E)成分により、柔軟性、及び解像性を向上させることができる。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
(E)高分子量成分の重量平均分子量は、粗化処理後の硬化物表面における凝集物由来の凹みの発生を抑制する観点から、1000以上であり、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上、3000以上である。上限は10000未満であり、好ましくは8000以下、より好ましくは5000以下である。
(E)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0099】
(E)成分のガラス転移温度(Tg)は、粗化処理後に海島構造を発現し、導体層を形成した際に高いピール強度を得る観点から、65℃以下であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-35℃以下、-40℃以下である。下限は好ましくは-100℃以上、より好ましくは-80℃以上、さらに好ましくは-75℃以上である。
【0100】
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に基づき、昇温速度5℃/分で示差走査熱量測定を行って測定できる。
【0101】
上述した重量平均分子量とガラス転移温度との組み合わせを含む(E)成分を用いることにより、前記の優れた効果が得られる仕組みを、本発明者は下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みによっては制限されない。
感光性樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、通常、(E)成分を島、(E)成分以外の樹脂成分を海とする海島構造を形成しうる。ここで「樹脂成分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分をいう。そして、感光性樹脂組成物の硬化物に粗化処理が施される場合、海と島との界面に処理液が浸入し易いので、粗化処理の後には、海の寸法に相関した大きさの窪みが形成されうる。ここで、上述した重量平均分子量とガラス転移温度との組み合わせを含む(E)成分は、1分子あたりの大きさが小さく、また分子が高い柔軟性を有するので、感光性樹脂組成物中において良好に分散できる。よって、海島構造に含まれる(E)成分の島は、小さいものでありうる。したがって、粗化処理後の硬化物表面は、小さい窪みを多数有することができるので、その表面積が充分に大きくなることができ、よって、高いアンカー効果が得られる。さらに、(E)成分が高い柔軟性を有するので、感光性樹脂組成物の硬化物の靱性が向上して高い機械的強度を有することができるので、硬化物の破壊を伴う剥離を抑制できる。したがって、ピール強度の向上を達成できる。また、(E)成分が感光性樹脂組成物において良好に分散できるので、硬化物において(E)成分の凝集物が生じ難い。よって、その凝集物の脱落による大きな凹みの形成を抑制できるので、硬化物表面の凹みの発生を抑制できる。また、通常は、(E)成分が柔軟性に優れるので硬化物が高い柔軟性を獲得できる。
【0102】
(E)成分としては、ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記した範囲内であるものを使用することができる。このような成分としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂が挙げられる。「(メタ)アクリル樹脂」とは、アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらの組み合わせを包含する。
【0103】
また、(E)成分としては、(E)成分が樹脂組成物中で良好に分散し、発現する海島構造がより緻密になることで本発明の効果を顕著に得る観点から、(D)成分と反応し得る官能基を有することが好ましい。官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。中でも、官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、及び(メタ)アクリロイル基から選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、カルボキシル基及び水酸基のいずれかの官能基を有することがより好ましく、水酸基がさらに好ましい。
【0104】
官能基は、(E)成分の末端に有していてもよく、繰り返し単位中に有していてもよい。中でも、官能基としては、繰り返し単位中に有することが好ましい。(E)成分の1分子当たりの官能基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。また、(E)成分が1分子当たり2個以上の官能基を含む場合、それらの官能基は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0105】
(E)成分の好適な実施形態としては、(メタ)アクリル樹脂である。(メタ)アクリル樹脂としては、カルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、エポキシ基含有(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリロイル基含有(メタ)アクリル樹脂等が挙げられ、中でも、カルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0106】
(メタ)アクリル樹脂の主骨格(繰り返し単位)としては、メチルアクリレート由来の構造単位(MA)、エチルアクリレート由来の構造単位(EA)、ブチルアクリレート由来の構造単位(BA)、2-エチルヘキシルアクリレート由来の構造単位(2EHA)、メチルメタクリレート由来の構造単位(MMA)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル樹脂の主骨格としては、ブチル(メタ)アクリレート由来の構造単位、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位のいずれかが好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位がより好ましい。
【0107】
(メタ)アクリル樹脂は、市販品を用いることができる。(メタ)アクリル樹脂の市販品としては、綜研化学社製の「CB-3060」、「CB-3098」、「CBB-3098」、「UT-1001」;根上工業社製の「BPX-003」等が挙げられる。
【0108】
(E)成分の他の好適な実施形態としては、ポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂としては、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、(メタ)アクリロイル基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0109】
ポリエステル樹脂としては、脂肪酸の自己縮合体、ポリグリセリン等のアルコール類と脂肪酸との重縮合体である脂肪酸エステル等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂としては脂肪酸の自己縮合体であることが好ましい。脂肪酸の自己縮合体は、脂肪酸を加熱することにより合成することができる。
【0110】
脂肪酸は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~3のアルキル基等の置換基を有していてもよい。脂肪酸としては、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、モンタン酸、パルミチン酸等が挙げられ、本発明の効果を顕著に得る観点から、12-ヒドロキシステアリン酸が好ましい。
【0111】
ポリエステル樹脂は、市販品を用いることができる。ポリエステル樹脂の市販品としては、ユニチカ社製の「UE-3980」、ユニチカ社製の「XA-0653」、味の素ファインテクノ社製の「PA-111」等が挙げられる。
【0112】
(E)成分の他の好適な実施形態としては、ポリウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂としては、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0113】
ポリウレタン樹脂は、市販品を用いることができる。ポリウレタン樹脂の市販品としては、根上工業社製の「AGKN-026」等が挙げられる。
【0114】
(E)成分がカルボキシル基を含有する場合、(E)成分の酸価としては、解像性を向上させる観点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上、さらに好ましくは30mgKOH/g以上であり、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは120mgKOH/g以下、さらに好ましくは100mgKOH/g以下である。酸価は、(A)成分における酸価と同様の方法により算出することができる。
【0115】
(E)成分が水酸基を含有する場合、(E)成分の水酸基価としては、解像性を向上させる観点から、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、さらに好ましくは40mgKOH/g以上であり、好ましくは450mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、さらに好ましくは150mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、又は100mgKOH/g以下である。水酸基価は下記の方法により算出することができる。
まず樹脂2gを精秤し、アセチル化試薬(無水酢酸25gにピリジンを加えて100mLとした溶液)を5ml加えて95~100℃のオイルバスで1時間加温する。その後、水1mLを加えてさらに10分間95~100℃で加温した後、エタノール5mLを加える。フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し,指示薬のうすい紅色が約30秒間続いたときを終点とする。同様の方法で空試験を行い、下記(2)式により水酸基価を算出する。
式:B={(a-b)×28.05/(Wp×I)}+酸価A ・・・(2)
なお、上記式(2)中、Bは水酸基価[mgKOH/g]を表し、aは空試験におけるKOH溶液の滴定量[mL]を表し、bは試料を用いたときのKOH溶液の滴定量[mL]を表し、Wpは測定樹脂溶液質量[g]を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発成分の割合[質量%]を表す。酸価Aは、(A)成分における酸価と同様の方法により算出した(E)成分の酸価である。
【0116】
(E)成分の含有量は、粗化処理後の硬化物表面に凝集物由来の凹みの発生が抑制され、ピール強度、柔軟性、及び解像性を向上させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0117】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの(A)成分の含有量をaとし、(E)成分の含有量をeとしたとき、a/eとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは10以下である。
【0118】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの(D)成分の含有量をdとし、(E)成分の含有量をeとしたとき、d/eとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0119】
<(F)反応性希釈剤>
感光性樹脂組成物は、任意の成分として、更に(F)反応性希釈剤を含有していてもよい。ただし、(A)成分~(E)成分に該当する成分は、(F)成分には含めない。(F)成分を含有させることにより、光反応性を向上させることができる。(F)成分としては、例えば、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する室温で液体、固体又は半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。室温とは、25℃程度を表す。
【0120】
代表的な感光性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノまたはジアクリレート類、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはε-カプロラクトンの付加物の多価アクリレート類、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等フェノール類、あるいはそのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルから誘導されるエポキシアクリレート類、メラミンアクリレート類、及び/又は上記のアクリレートに対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらのなかでも、多価アクリレート類または多価メタクリレート類が好ましく、例えば、3価のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N,N',N'-テトラキス(β-ヒドロキシエチル)エチルジアミンの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、3価以上のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ホスフェート、ジ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等のリン酸トリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これら感光性(メタ)アクリレート化合物はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0121】
(F)成分を配合する場合の含有量は、光硬化を促進させ、かつ硬化物としたときにべたつきを抑制するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0122】
<(G)溶剤>
感光性樹脂組成物は、任意の成分として、更に(G)溶剤を含有していてもよい。(G)溶剤を含有させることによりワニス粘度を調整できる。(G)溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。
【0123】
(G)溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート(EDGAc)、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。溶剤を用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0124】
<(H)その他の添加剤>
感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない程度に、(H)その他の添加剤を更に含有してもよい。(H)その他の添加剤としては、例えば、有機充填材、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
【0125】
感光性樹脂組成物は、必須成分として上記(A)~(E)成分を混合し、任意成分として上記(F)~(H)成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより製造することができる。
【0126】
<感光性樹脂組成物の物性、用途>
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は、通常、解像性(現像性)に優れるという特性を示す。このため、未露光部における残渣の形成を抑制できる。また、ビアの形状が逆テーパーにならず亀裂等もない。未露光部の残渣の評価及びビアの形状の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って評価することができる。
【0127】
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は、通常、解像性に優れるという特性を示す。このため、残渣がない最小ビア径を形成することができる。最小ビア径としては、好ましくは60μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。下限は特に限定されないが、1μm以上等としうる。最小ビア径の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0128】
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物はめっきによって形成された導体層との間のピール強度を高くすることができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、導体層との間のピール強度が高い絶縁層を得ることができる。ピール強度は、好ましくは0.15kgf/cm以上、より好ましくは0.20kgf/cm以上、特に好ましくは0.3kgf/cm以上でありうる。ピール強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、10.0kgf/cm以下でありうる。ピール強度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0129】
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は粗化処理(デスミア処理)後の硬化物表面に発生する凝集物由来の凹みを抑制することができる。よって、表面に発生する凝集物由来の凹みの発生が抑制された絶縁層又はソルダーレジストを得ることができる。具体的には、前記の凹みは、幅が2μm以上、深さが1μm以上の凹みの発生を抑制することができる。前記の凹みの評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0130】
感光性樹脂組成物は、通常、柔軟性に優れるという特性を示す。このため、感光性樹脂組成物は、応力が加えられた場合であっても樹脂の飛散とクラックの発生を抑制できる。
【0131】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、感光性樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、プリント配線板の絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたプリント配線板)、層間絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層としたプリント配線板)、メッキ形成用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成されたプリント配線板)、及びソルダーレジスト用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物をソルダーレジストとしたプリント配線板)として好適に使用することができる。
【0132】
[感光性フィルム]
感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を有する。
【0133】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0134】
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm~50μmの範囲であることが好ましく、10μm~25μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを50μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0135】
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS K6714で規格化されているヘーズ)が0.1~5であるものが好ましい。さらに感光性樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0136】
感光性フィルムの感光性樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、感光性樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0137】
感光性樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは28μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
【0138】
感光性フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。有機溶剤としては、上記した(G)成分と同様のものを用いることができる。
【0139】
樹脂ワニスの塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0140】
樹脂ワニスは、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0141】
乾燥温度は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の(G)成分の量によっても異なるが、80℃~120℃で行うことができる。但し、乾燥の最高温度は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上である。最高温度の下限は特に限定されないが、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0142】
乾燥時間は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の(G)成分の量によっても異なるが、好ましくは6分間以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下である。ここで、乾燥時間とは、乾燥温度が80℃に達した時からの時間を指す。
【0143】
感光性樹脂組成物層中の(G)成分の残存量は、感光性樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0144】
感光性フィルムは、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を含むので、可撓性に優れるという特性を示す。例えば、感光性フィルムを3インチのコア芯に巻き付け、ローラーカッターにて感光性フィルムを裁断する。このとき、感光性フィルムに割れの発生を抑制できる。
【0145】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。該絶縁層は、ソルダーレジスト又は層間絶縁層として使用することが好ましい。
【0146】
詳細には、本発明のプリント配線板は、上述の感光性フィルムを用いて製造することができる。以下、絶縁層がソルダーレジストである場合の一例について説明する。
【0147】
<塗布及び乾燥工程>
感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを直接的に回路基板上に塗布する場合、(G)成分を乾燥、揮発させることにより、回路基板上に感光性樹脂組成物層を形成する。
【0148】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような支持基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0149】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性組成物層が形成される。
【0150】
<ラミネート工程>
一方、感光性フィルムを用いる場合には、感光性樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、感光性樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0151】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm~11kgf/cm(9.8×10N/m~107.9×10N/m)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0152】
<露光工程>
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性樹脂組成物層が設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0153】
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、現像性に優れる。このため、マスクパターンにおける露光パターンとしては、例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が100μm/100μm以下(すなわち、配線ピッチ200μm以下)、L/S=80μm/80μm以下(配線ピッチ160μm以下)、L/S=70μm/70μm以下(配線ピッチ140μm以下)、L/S=60μm/60μm以下(配線ピッチ120μm以下)のパターンが使用可能である。なお、ピッチは、回路基板の全体にわたって同一である必要はない。
【0154】
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、現像性に優れる。このため、ビア径としては、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下とすることが可能となる。下限は特に限定されないが、1μm以上、10μm以上等とし得る。
【0155】
<現像工程>
露光工程後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0156】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0157】
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
【0158】
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を現像液に添加することができる。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8~12の範囲であることが好ましく、9~11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、20℃~50℃とすることが好ましい。
【0159】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0160】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0161】
パターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0162】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記現像工程終了後、熱硬化(ポストベーク)工程を行い、ソルダーレジストを形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm~10J/cm程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~200℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
【0163】
<その他の工程>
プリント配線板は、ソルダーレジストを形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0164】
ソルダーレジストを形成した後、所望により、回路基板上に形成されたソルダーレジストに穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0165】
デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0166】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0167】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0168】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0169】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0170】
絶縁層を層間絶縁層として使用する場合も、ソルダーレジストの場合と同様に行うことができ、熱硬化工程後に、穴あけ工程、デスミア工程、及びメッキ工程を行ってもよい。
【0171】
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0172】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、プリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0173】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0174】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0175】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例
【0176】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0177】
-(E)成分の重量平均分子量の測定-
各(E)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量を(E)成分の重量平均分子量とした。
【0178】
-(E)成分のガラス転移温度(Tg)の測定-
各(E)成分のガラス転移温度は、JIS K 7121に基づき、昇温速度5℃/分で示差走査熱量測定を行って測定した。
【0179】
(合成例1:樹脂(A-1)の合成)
エポキシ当量が162g/eq.の1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン(「EXA-4700」、大日本インキ化学工業社製)162部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価が90mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%)を得た。
【0180】
(合成例2:樹脂(E-1)の合成)
温度計、攪拌機、窒素導入口、還流管、水分離器及び減圧口を備えた反応フラスコ中に、12-ヒドロキシステアリン酸(商品名:12-ヒドロ酸(小倉合成工業社製))100部を仕込み、窒素雰囲気下150℃で3時間反応後、さらに減圧下200℃で6時間加熱した。次いで室温まで冷却した。このようにして酸価が32mgKOH/g、重量平均分子量が6000、Tgが-58℃の樹脂(E-1)を得た。
【0181】
<実施例1~14、比較例1~4>
下記表に示す配合割合で各成分を配合し、高速回転ミキサーを用いて樹脂ワニスを調製した。
【0182】
次に、支持体としてアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製、「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製、「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。調整した樹脂ワニスをかかる離型PETに乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが20μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃で5分間乾燥することにより、離型PET上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムを得た。
【0183】
<柔軟性の評価>
実施例及び比較例で作製した感光性フィルムの感光性樹脂組成物層を三か所においてカッターナイフで直線状に5cm切り出した時の樹脂の飛散とクラックの発生を目視で評価した。さらに、三か所において180°折り曲げをした際のクラックの発生状況を目視で確認した。
〇:三か所において、感光性樹脂組成物の飛散やクラックが全く見受けられない。
△:三か所の内、いずれかの箇所で感光性樹脂組成物の飛散、クラックのいずれかが見受けられる。
×:三か所のいずれにおいても、感光性樹脂組成物の飛散もしくはクラックが見受けられる。
【0184】
<解像性の評価>
(評価用積層体Aの形成)
厚さ18μmの銅層をパターニングした回路が形成されているガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による処理にて粗化を施した。次に実施例、比較例により得られた感光性フィルムの感光性樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製、VP160)を用いて積層し、前記銅張積層板と、前記感光性樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度80℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。該積層体を室温30分以上静置し、該積層体の支持体上から、丸穴パターンを用いパターン形成装置を用いて、紫外線で露光を行った。露光パターンは開口:30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmの丸穴、1cm×2cmの四角形を描画させる石英ガラスマスクを使用した。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。該積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、1J/cmの紫外線照射を行い、さらに180℃、30分間の加熱処理を行い、開口部を有する絶縁層を該積層体上に形成した。これを評価用積層体Aとした。
【0185】
(解像性の評価)
評価用積層体Aの1cm×2cmの部分の未露光部を目視で観察した。かかる未露光部に樹脂が残っていない場合は〇とし、樹脂が目視で確認できる場合は×とした。次に、形成したビアをSEMで観察(倍率1000倍)し、残渣が無い最小開口ビア径を測定した。また、ビアの形状については下記の基準で評価した。
○:ビアが逆テーパーにならず、亀裂等も無い。
×:ビアが逆テーパーになっている、またはビア壁面等に亀裂がある。
【0186】
<デスミア処理後の凹みの評価、及びピール強度の測定>
(評価用積層体C、Dの形成)
厚さ18μmの銅層のガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による処理にて粗化を施した。次に実施例、比較例により得られた感光性フィルムの感光性樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製、VP160)を用いて積層し、前記銅張積層板と、前記感光性樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度80℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。
【0187】
該積層体を室温30分以上静置し、該積層体の支持体上から、100mJ/cmの紫外線照射を行い、室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。該積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、1J/cmの紫外線照射を行い、さらに180℃、30分間の加熱処理を行い、絶縁層を該積層体上に形成した。これを評価用積層体Bとした。
【0188】
評価用積層体Bの絶縁層の粗化処理として下記の通りデスミア処理を行った。
膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で2分間、次いで酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で3分間、最後に中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間、浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。得られた基板を評価用積層体Cと称する。
【0189】
導体層の形成セミアディティブ法に従って、絶縁層の粗化面に導体層を形成した。すなわち、粗化処理後の基板を、PdCl2を含む無電解メッキ液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、硫酸銅電解メッキを行い、厚さ30μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。得られた基板を評価用積層体Dと称する。
【0190】
(デスミア処理後の凹み評価)
デスミア処理後の評価用基板積層体Cの絶縁層の粗化面をSEM(倍率1000倍)で観察し、下記の基準で評価した。
○:幅2μm以上、深さが1μm以上の凹みが見られない。
×:幅2μm以上、深さが1μm以上の凹みが1つ以上みられる。
【0191】
(ピール強度の測定)
メッキ導体層のピール強度の測定絶縁層と導体層のピール強度の測定は、評価用積層体Dについて、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価用積層体Cの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、剥離強度を求めた。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。また、ピール強度は下記の基準により評価した。
◎:ピール強度が0.30kgf/cm以上
〇:ピール強度が0.20kgf/cm以上0.30kgf/cm未満
△:ピール強度が0.15kgf/cm以上0.20kgf/cm未満
×:ピール強度が0.15kgf/cm未満
【0192】
【表1】
【0193】
表中の略語等は以下のとおりである。
(A)成分
・合成例1:合成例1で合成した樹脂(A-1)
・ZFR-1491H:ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、固形分濃度約70%)
・ZAR-2000:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、固形分濃度約70%)
(B)成分
・SC2050:溶融シリカ(アドマテックス社製、平均粒径0.5μm)100質量部に対して、アミノシラン(信越化学社製、「KBM573」)0.5質量部で表面処理したもの
(C)成分
・Omnirad TPO:ジフェニル(2,4,6,-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、IGM Resins社製)
(D)成分
・NC3000L:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量約271g/eq.)
・ELM-434VL:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(住友化学社製、エポキシ当量約115g/eq.)
(E)成分
・CB-3060:多官能カルボキシル基含有アクリルポリマー(綜研化学社製、2EHA骨格、重量平均分子量3000、酸価60mgKOH/g、Tg:-70℃)
・CB-3098:多官能カルボキシル基含有アクリルポリマー(綜研化学社製、2EHA骨格、重量平均分子量3000、酸価98mgKOH/g、Tg:-70℃)
・CBB-3098:多官能カルボキシル基含有アクリルポリマー(綜研化学社製、BA骨格、重量平均分子量3000、酸価98mgKOH/g、Tg:-54℃)
・UT-1001:水酸基含有アクリルポリマー(綜研化学社製、2EHA骨格、重量平均分子量3000、水酸基価57mgKOH/g、Tg:-70℃)
・UE-3980:ポリエステル(ユニチカ社製、重量平均分子量8000、Tg:58℃)
・XA-0653:ポリエステル(ユニチカ社製、重量平均分子量5000、酸価20mgKOH/g、Tg:56℃)
・合成例2:合成例2で合成した(E-1)成分
・AGKN-026:ポリウレタン(根上工業社製、重量平均分子量3000、Tg:-40℃)
・BPX-003:水酸基含有アクリルポリマー(根上工業社製、重量平均分子量3000、水酸基価48mgKOH/g、Tg:-63℃)
(F)成分
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、アクリル当量約96)
(G)成分
・EDGAc:エチルジグリコールアセテート
・MEK:メチルエチルケトン
(H)成分
・AB-6:片末端メタクリロイル基含有ポリブチルアクリレート(東亞合成社製、重量平均分子量13000、Tg:-55℃)
・UN-7600:ポリウレタン(根上工業社製、重量平均分子量11500、Tg:-41℃)
・US-1071:カルボキシル基含有アクリルポリマー(星光PMC社製、重量平均分子量9500、酸価75mgKOH/g、Tg:104℃)
(B)成分の含有量:感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合の(B)成分の含有量
(E)成分の含有量:感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合の(E)成分の含有量
【0194】
上記表の結果から、実施例1~14では柔軟性、解像性を有し、さらに高いメッキ密着性を有しながら、デスミア後の凝集物や凹みが無いことがわかった。
【0195】
一方、(E)成分を含有しない比較例1は、実施例1~14と比較してメッキピール強度が低いことがわかった。また、重量平均分子量が10000以上であるポリマーを用いた比較例2、比較例3は、メッキピール強度は高いが、デスミア後に凝集物や凹みが生じていることがわかった。また、Tgが65℃より高いポリマー成分を用いた比較例4は、めっきピール強度が低く、デスミア後に凝集物や凹みが生じていることがわかった。
【0196】
各実施例において、(F)~(G)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。