(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤、硬化膜、及び積層フィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20230926BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230926BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230926BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230926BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/61
C09D7/65
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2020142182
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019155269
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中橋 和之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁宣
(72)【発明者】
【氏名】大江 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩壽
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-082613(JP,A)
【文献】特開2014-162889(JP,A)
【文献】特開平09-048934(JP,A)
【文献】特表2019-502163(JP,A)
【文献】特表2019-501148(JP,A)
【文献】特開2007-063566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
C09D 7/61
C09D 7/65
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(A)、シルセスキオキサン(B)、親水性シリカ粒子(C)及び有機粒子(D)を含む活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤であり、
(B)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(D)成分])は40/60~80/20であ
り、
有機粒子(D)にはシルセスキオキサン(B)を含まない、
活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤。
【請求項2】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤の硬化膜。
【請求項3】
基材と請求項2に記載の硬化膜を有する積層フィルム。
【請求項4】
JIS Z 8741(1997)に準拠して測定される、入射角60度における光沢度が50%以下である請求項3に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤、硬化膜、及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品やディスプレイ等の分野において、映り込みを低減し視認性を向上させることが求められている。そのような需要に対して、光学部品やディスプレイ等に特定の機能を有するフィルムを設けることによって、視認性を向上させる取り組みがなされている。
【0003】
視認性の向上したフィルムを得るための具体的手法として、防眩処理と反射防止処理が例示される。防眩処理はディスプレイ等の表層に数ミクロン程度の凹凸を有するフィルムを形成する処理である。このような凹凸により入射光を散乱させ、乱反射により網膜に映る像の鮮明度を低下させ、視認性を向上させている。一方で、反射防止処理では100nm程度の膜厚であり光学特性を有するフィルムを2~4層程度形成し、入射光と反射光との干渉効果を利用して、入射光と反射光を打ち消し合わせることによって反射率を低減させることで視認性を向上させている。
【0004】
防眩処理を受けた凹凸を有するフィルムは通常ディスプレイ等の表層に設けられる。一般的にフィルムに設ける凹凸が大きい程優れた防眩性を奏する一方で、凹凸が大きいために耐擦傷性が不良となることが多かった。これは、大きな凹凸をスチールウール等でこすることで、凸部分が削られて、フィルムが欠損することに原因があるものと考えられている。
【0005】
特許文献1では、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び有機樹脂で被覆したオルガノシリカゾルを含有した紫外線硬化型ハードコート材組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のように有機樹脂で被覆したオルガノシリカゾルを用いた場合、防眩性の点で改善の余地がある。
【0008】
本開示で解決しようとする課題は、防眩性及び耐擦傷性の良好な活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤、硬化膜、及び積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、所定の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤によって、上記課題が解決されることを見出した。
【0010】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(A)、シルセスキオキサン(B)、親水性シリカ粒子(C)及び有機粒子(D)を含む活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤。
(項目2)
項目1に記載の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤の硬化膜。
(項目3)
基材と項目2に記載の硬化膜を有する積層フィルム。
(項目4)
JIS Z 8741(1997)に準拠して測定される、入射角60度における光沢度が50%以下である項目3に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本開示で提供する硬化膜及び積層フィルムは、防眩性及び耐擦傷性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限がA1、A2、A3等が例示され、数値αの下限がB1、B2、B3等が例示される場合、数値αの範囲は、A1以下、A2以下、A3以下、B1以上、B2以上、B3以上、A1~B1、A1~B2、A1~B3、A2~B1、A2~B2、A2~B3、A3~B1、A3~B2、A3~B3等が例示される。なお、本開示において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基のことである。(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートのことである。(メタ)アクリロイル基は、下記一般式(1)で表される。
【0014】
一般式(1)
【化1】
(式中、
R
1は水素原子、又はメチル基である。)
【0015】
(A)成分の(メタ)アクリロイル基の数は、3個以上である。(A)成分の(メタ)アクリロイル基の数の上限は、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、6、5個等が例示され、下限は18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、6、5、4、3個等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の(メタ)アクリロイル基の数は、3個~20個程度が好ましい。
【0016】
(A)成分は、(メタ)アクリロイル基以外の1個以上の官能基や特定の結合をさらに有していてもよい。(メタ)アクリロイル基以外の官能基や特定の結合として、ウレタン結合、水酸基等が例示される。
【0017】
ウレタン結合を有し、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、下記3個以上の(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と各種公知の多官能イソシアネートとの反応物であってもよい。本開示において、多官能イソシアネートとは、イソシアネート基(-N=C=O)を2個以上有するものを指す。
【0018】
(A)成分として、鎖状構造であり、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、脂環構造を有し、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、芳香環構造を有し、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート等が例示される。
【0019】
鎖状構造であり、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、鎖状構造であり、3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、鎖状構造であり、4個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、鎖状構造であり、5個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、鎖状構造であり、6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが例示される。
【0020】
鎖状構造であり、3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0021】
鎖状構造であり、4個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0022】
鎖状構造であり、5個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0023】
鎖状構造であり、6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0024】
脂環構造を有し、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、脂環構造を有し、3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、脂環構造を有し、4個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、脂環構造を有し、5個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、脂環構造を有し、6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート等が例示される。
【0025】
芳香環構造を有し、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとして、芳香環構造を有し、3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、芳香環構造を有し、4個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、芳香環構造を有し、5個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、芳香環構造を有し、6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート等が例示される。
【0026】
3個の(メタ)アクリロイル基を有するその他の化合物として、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0027】
(A)成分として例示されたもの及び(A)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
(A)成分の炭素数の上限は、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、10、9、8、7、6個等が例示され、下限は、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5個等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の炭素数は5個以上100個以下程度が好ましい。
【0029】
(A)成分は、好ましくは3個以上の(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましくはジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート及び/又はペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートであり、さらにより好ましくはジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートである。
【0030】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(A)成分の含有量(固形分換算)の上限は、75、74、73、72、71、70、65、60、55、50、45質量%等が例示され、下限は、73、72、71、70、65、60、55、50、45、40質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(A)成分の含有量(固形分換算)は、好ましくは40~75質量%程度であり、より好ましくは45質量%以上75質量%以下であり、さらにより好ましくは45質量%以上73質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以上72質量%以下である。
【0031】
<(B)成分>
(B)成分は、シルセスキオキサンである。シルセスキオキサンとして、三官能性有機アルコキシシランの加水分解及び縮合反応(ゾルゲル反応)により合成されるポリマー等が例示される。(B)成分は、例えば、下記一般式(2)で表される構成単位を有する。ポリマーの構造として、かご型、ラダー型、ランダム型が例示される。本開示の(B)成分は、かご型、ラダー型、及びランダム型から選択される1種以上を含むことが好ましく、かご型、ラダー型、及びランダム型から選択される2種以上を含むことがより好ましく、かご型、ラダー型、及びランダム型を含むことがさらにより好ましい。本開示の(B)成分は、T構造を有していてもよく、Q構造を有していてもよい。T構造として、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12、T13、T14等が例示される。Q構造として、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13、Q14等が例示される。
【0032】
一般式(2)
【化2】
(式中、
R
2は炭素数1以上20以下のアルキレン基を有していてもよい基を表す。)
【0033】
一般式(2)のR2の炭素数1以上20以下のアルキレン基を有していてもよい基として、親水性基、疎水性基が例示される。上記親水性基として、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等が例示される。上記疎水性基として、炭素数1以上20以下のアルキル基、フェニル基、重合性二重結合を有する官能基、環状エーテル構造を有する官能基、ニトリル基等が例示される。重合性二重結合を有する官能基として、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が例示される。環状エーテル構造を有する官能基として、オキセタニル基、エポキシ基が例示される。
【0034】
一般式(2)のR2が有していてもよい炭素数1以上20以下のアルキレン基の炭素数の上限は、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3個等が例示され、下限は18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個等が例示される。1つの実施形態において、一般式(2)のR2が有していてもよい炭素数1以上20以下のアルキレン基の炭素数は、1以上20以下程度が好ましい。
【0035】
(B)成分として、エポキシ基含有シルセスキオキサン(製品名「Glycidyl polysilsesquioxane cage mixture」、コンストゥルーケミカル(株)製)、(メタ)アクリロイル基含有シルセスキオキサン(製品名「AC-SQ TA-100」「AC-SQ SI-20」「MAC-SQ SI-20」「MAC-SQ HDM」「MAC-SQ TM-100」、東亞合成(株)製)(製品名「Methacryl polysilsesquioxane cage mixture」、コンストゥルーケミカル(株)製)(製品名「methacryl-POSS」(シグマアルドリッチジャパン社製)、オキセタニル基含有シルセスキオキサン(製品名「OX-SQ TX-100」「OX-SQ SI-20」「OX-SQ HDM」、東亞合成(株)製)、アミノ基含有シルセスキオキサン(製品名「Aminopropylisobutyl polysilsesquioxane」、コンストゥルーケミカル(株)製)等が例示される。
【0036】
(B)成分として例示されたもの及び(B)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
(B)成分は、本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤の硬化性を考慮すると、重合性二重結合を有する官能基、環状エーテル構造を有する官能基、及びチオール基から選択される1種以上を有することが好ましい。本開示では、他成分との反応性に優れることから、(B)成分が重合性二重結合を有する官能基を有することがより好ましい。重合性二重結合を有する官能基が(B)成分にあることで、ラジカル硬化を行うことが可能となる。環状エーテル構造を有する官能基が(B)成分にあることで、カチオン硬化を行うことが可能となる。チオール基が(B)成分にあることで、エン-チオール硬化を行うことが可能となる。(B)成分が重合性二重結合を有する官能基、環状エーテル構造を有する官能基、及びチオール基から選択される1種以上を有する場合、官能基当量(g/eq)の上限は、1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100等が例示され、下限は、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50等が例示される。1つの実施形態において、官能基当量(g/eq)は50以上1,000以下程度が好ましい。
【0038】
(B)成分の重量平均分子量の上限は、20,000、19,000、18,000、17,000、16,000、15,000、14,000、13,000、12,000、11,000、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,000等が例示され、下限は、18,000、17,000、16,000、15,000、14,000、13,000、12,000、11,000、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、500、100等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分の重量平均分子量は100以上20,000以下程度が好ましい。本開示において、重量平均分子量の測定はGPCによるポリスチレン換算で求められる。
【0039】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(B)成分の含有量(固形分換算)の上限は、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6質量%等が例示され、下限は40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(B)成分の含有量(固形分換算)は、好ましくは5~50質量%程度であり、より好ましくは10質量%以上45質量%以下であり、さらにより好ましくは13質量%以上40質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。上記範囲内に(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(B)成分の含有量(固形分換算)がある場合、ヘーズ値が優れることから好ましい。
【0040】
(A)成分と(B)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(B)成分])の上限は、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35等が例示され、下限は、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(B)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(B)成分])は、好ましくは60/40~90/10程度であり、より好ましくは60/40~88/12であり、さらにより好ましくは62/38~88/12であり、特に好ましくは62/38~84/16である。
【0041】
<(C)成分>
(C)成分は、親水性シリカ粒子である。親水性シリカ粒子とは、親水性基を有するシリカ粒子のことである。そのような親水性基として、水酸基等が例示される。
【0042】
(C)成分は、分散体であってもよく、粉体であってもよい。
【0043】
(C)成分の分散体の分散媒は、各種公知のものであってもよい。(C)成分の分散媒は、水又は有機溶媒等が例示される。
【0044】
有機溶媒は、各種公知のものであってもよい。有機溶媒として、ケトン溶媒、芳香族溶媒、アルコール溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエーテル溶媒、エステル溶媒、石油系溶媒、ハロアルカン溶媒、アミド溶媒等が例示される。
【0045】
ケトン溶媒として、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が例示される。
【0046】
芳香族溶媒として、トルエン、キシレン等が例示される。
【0047】
アルコール溶媒として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が例示される。
【0048】
グリコール系溶媒として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。
【0049】
グリコールエーテル溶媒として、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が例示される。
【0050】
エステル溶媒として、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等が例示される。
【0051】
石油系溶媒として、ソルベッソ#100(エクソン社製)、ソルベッソ#150(エクソン社製)等が例示される。
【0052】
ハロアルカン溶媒として、クロロホルム等が例示される。
【0053】
アミド溶媒として、ジメチルホルムアミド等が例示される。
【0054】
有機溶媒として例示されたもの及び有機溶媒として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
(C)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、イソプロパノール分散のシリカ粒子(製品名「OSCAL1432」、日揮触媒化成(株)製、平均粒子径10~20nm)、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散のシリカ粒子(製品名「Optisol LSG」、Ranco製、平均粒子径10~15nm)(製品名「PGM-ST」、日産化学(株)製、平均粒子径10nm~15nm)、エチレングリコールエチルエーテル分散のシリカ粒子(製品名「Optisol LSR」、Ranco製、平均粒子径10~15nm)、水分散のシリカ粒子(製品名「スノーテックス ST-CXS」、日産化学(株)製、平均粒子径5nm)(製品名「スノーテックス ST-C」、日産化学(株)製、平均粒子径12nm)、粉体のシリカ粒子(製品名「アドマナノ10nm」、(株)アドマテックス製、平均粒子径10nm)(製品名「アドマナノ50nm」、(株)アドマテックス製、平均粒子径50nm)等が例示される。
【0056】
(C)成分として例示されたもの及び(C)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
(C)成分の平均粒子径の上限は、30、25、20、15、10nm等が例示され、下限は、25、20、15、10、5nm等が例示される。1つの実施形態において、(C)成分の平均粒子径は、5~30nm程度が好ましい。
【0058】
平均粒子径の測定は、JIS Z 8828(2013)に準拠し、市販の測定機(製品名「Microtrac MT3000II」、MicrotracBEL(株)製)を用いたレーザー回折・散乱法による粒度分布測定によって行う。
【0059】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(C)成分の含有量(固形分換算)の上限は、20、15、10、5、3質量%等が例示され、下限は、15、10、5、3、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(C)成分の含有量(固形分換算)は、好ましくは1~20質量%程度であり、より好ましくは3質量%以上20質量%以下であり、さらにより好ましくは3質量%以上15質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
【0060】
(A)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(C)成分])の上限は、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、82/18等が例示され、下限は、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、82/18、80/20等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(C)成分])は、80/20~98/2程度が好ましい。
【0061】
(B)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(C)成分])の上限は、90/10、88/12、85/15、80/20、75/25、72/28、70/30、65/35等が例示され、下限は、88/12、85/15、80/20、75/25、72/28、70/30、65/35、60/40等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(C)成分])は、好ましくは60/40~90/10程度であり、より好ましくは65/35~90/10であり、さらにより好ましくは70/30~90/10であり、特に好ましくは72/28~88/12である。
【0062】
<(D)成分>
(D)成分は、有機粒子である。(D)成分として、メラミン系粒子、アクリル系粒子、アクリル-スチレン系粒子、カーボネート系粒子、エチレン系粒子、スチレン系粒子、ベンゾグアナミン系粒子、アクリロニトリル系粒子が例示される。なお、上記「・・・系粒子」とは、「・・・」を原料に含む粒子のことを指す。
【0063】
(D)成分は、モノマー配合比による屈折率の調整が容易なことから、好ましくはアクリル-スチレン系粒子である。
【0064】
(D)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、アクリル系粒子(製品名「エポスターMA1004」、(株)日本触媒製、平均粒子径4μm)(製品名「エポスターMA1006」、(株)日本触媒製、平均粒子径6μm)(製品名「タフチックFH-S005」、日本エクスラン工業(株)製、平均粒子径5μm)(製品名「ケミスノーMRシリーズ」、綜研化学(株)製、平均粒子径1~10μm)(製品名「テクポリマー MBX-5」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径5μm)(製品名「テクポリマー MBX-8」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径8μm)、アクリル-スチレン系粒子(製品名「エポスターMA2003」、(株)日本触媒製、平均粒子径3μm)(製品名「テクポリマー MSX」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径5μm)(製品名「テクポリマー SMX」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径5μm)、スチレン系粒子(製品名「テクポリマー SBX-4」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径4μm)、アクリロニトリル系粒子(製品名「タフチックASF」、日本エクスラン工業(株)製、平均粒子径7μm)が例示される。
【0065】
(D)成分は、合成して得てもよい。(D)成分の合成方法として、(1)モノマー液滴を均一に制御して重合する方法、(2)反応により生成した重合体の核を成長させて粒子化する方法が例示される。上記(1)の方法の具体的手段として、ノズル振動法、SPG膜乳化法、マイクロチャンネル法、ミニエマルジョン重合法が例示される。上記(2)の方法の具体的手段として、ソープフリー乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法、シード乳化重合法が例示される。
【0066】
(D)成分として例示されたもの及び(D)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
(D)成分の平均粒子径の上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2μm等が例示され、下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5μm等が例示される。1つの実施形態において、(D)成分の平均粒子径は、0.5~10μm程度が好ましい。(D)成分の平均粒子径が上記上限以下であることで、レンズ効果によるギラツキを抑えることに特に優れている。一方で、(D)成分の平均粒子径が上記下限以上であることで、本開示における硬化膜や積層フィルムが特に防眩性を奏することができる。
【0068】
(D)成分の屈折率の上限は、1.70、1.65、1.60、1.55、1.54、1.53、1.52、1.51、1.50、1.45等が例示され、下限は、1.65、1.60、1.55、1.54、1.53、1.52、1.51、1.50、1.45、1.40等が例示される。1つの実施形態において、(D)成分の屈折率は、1.40~1.70程度が好ましい。
【0069】
本開示において、(D)成分の屈折率の測定は、JIS K 7142(1996)に準拠した方法によって行う。
【0070】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(D)成分の含有量(固形分換算)の上限は、30、25、20、15、10、5質量%等が例示され、下限は、25、20、15、10、5、3質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する(D)成分の含有量(固形分換算)は、好ましくは3~30質量%程度であり、より好ましくは3質量%以上25質量%以下であり、さらにより好ましくは3質量%以上20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0071】
(A)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(D)成分])の上限は、95/5、90/10、89/11、88/12、87/13、86/14、85/15、80/20、75/25、70/30等が例示され、下限は、90/10、89/11、88/12、87/13、86/14、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(D)成分])は、好ましくは65/35~95/5程度であり、より好ましくは70/30~95/5であり、さらにより好ましくは70/30~90/10であり、特に好ましくは75/25~90/10である。
【0072】
(B)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(D)成分])の上限は、80/20、78/22、75/25、70/30、65/35、60/40、58/42、55/45、50/50、45/55等が例示され、下限は、78/22、75/25、70/30、65/35、60/40、58/42、55/45、50/50、45/55、40/60等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(D)成分])は、好ましくは40/60~80/20程度であり、より好ましくは45/55~80/20であり、さらにより好ましくは50/50~80/20であり、特に好ましくは58/42~78/22である。
【0073】
(C)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(C)成分/(D)成分])の上限は、45/55、40/60、35/65、34/66、33/67、32/68、31/69、30/70等が例示され、下限は、40/60、35/65、34/66、33/67、32/68、31/69、30/70、25/75等が例示される。1つの実施形態において、(C)成分と(D)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(C)成分/(D)成分])は、好ましくは25/75~45/55程度であり、より好ましくは25/75~40/60であり、さらにより好ましくは30/70~40/60であり、特に好ましくは30/70~35/65である。
【0074】
本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤を用いることで、所望の効果を奏する積層フィルムを得られることの推定されるメカニズムは以下のとおりである。親水性である(C)成分は、(A)成分及び(B)成分との相溶性が悪く、ハードコート膜内で凝集する傾向にある。このことが内部ヘーズの発現と、表面のマット感の発現に寄与する。また、(D)成分によってハードコート膜の表面に凹凸を付与し、(C)成分とともにマット感・防眩性を発現する。さらに、(B)成分が(D)成分周辺で凝集することにより、ハードコート膜の凹凸が軽減されている。このことにより、本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤を用いて形成される積層フィルムは耐擦傷性と防眩性が最適なバランスで発現しているものと考えられる。その結果、本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤中の各種粒子が積層フィルムより脱落しにくくなり、積層フィルムの透明化を抑制することが可能となる。その一方で、積層フィルムの凹凸はなだらかであるにもかかわらず、良好な防眩性を発現する。
【0075】
<その他配合可能な剤>
本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤は、さらに、必要に応じて開始剤、レベリング剤、光増感剤、表面調整剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、有機溶剤、消泡剤、湿潤剤、防錆剤及び安定化剤等の各種添加剤を配合することもできる。配合可能な有機溶剤として、上記した有機溶剤が例示される。(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する各種添加剤の含有量の上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1質量%等が例示され、下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対する各種添加剤の含有量は、0~10質量%程度が好ましい。
【0076】
<硬化膜>
本開示において、活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤に活性エネルギー線を照射することにより得られる硬化膜も提供する。
【0077】
活性エネルギー線照射により硬化させる方法として、150nm波長域以上450nm波長域以下の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ又はLED等を用いて、10mJ/cm2以上10,000mJ/cm2以下程度照射する方法が例示される。光量、光源、搬送速度等の条件は適宜調整すればよく、例えば高圧水銀灯を使用する場合には、光量が通常0.1~160W/cm2程度、搬送速度が通常5~50m/分程度である。活性エネルギー線照射前は、必要に応じて加熱を行って乾燥させてもよい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って完全に硬化させてもよい。
【0078】
<積層フィルム>
本開示において、基材と上記硬化膜とを含む積層フィルムも提供する。
【0079】
基材の表面には、基材と硬化膜との接着性や密着性を良好にする目的で、コロナ処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理等の各種表面処理を施してもよい。また、基材と硬化膜との接着性や密着性を良好にする目的で、別の層(例えば、易接着層、粘着層等)を基材と硬化膜との間に配置してもよい。
【0080】
本発明の積層フィルムの具体例として、下記の順番で各種層を有する積層フィルムが例示される。
(1)硬化膜/基材、
(2)硬化膜/易接着層又は粘着層/基材、
【0081】
本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤を基材上に塗工する方法として、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。なお、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.05~30g/m2になる範囲であり、好ましくは0.1~20g/m2になる範囲である。また、本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤の硬化膜の膜厚は通常1~10μm程度であり、好ましくは2~6μm程度である。
【0082】
本開示の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤を塗工する基材として、木材、紙、スレート、金属、プラスチック、ガラス又はその他の樹脂等が例示される。金属として、鉄、アルミニウム、アルミめっき鋼板、ティンフリー鋼板(TFS)、ステンレス鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、亜鉛・亜鉛合金めっき鋼板(ボンデ鋼板)の処理鋼板等が例示される。プラスチックとして、熱可塑性プラスチック基材、熱硬化性プラスチック基材等が例示される。熱可塑性プラスチック基材として、汎用プラスチック基材、エンジニアリングプラスチック基材等が例示される。汎用プラスチック基材として、オレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、ポリスチレン系等が例示される。オレフィン系として、ポリエチレン、ポリプロピレン、脂環オレフィン系樹脂(ノルボルネン等)等が例示される。ポリエステル系として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が例示される。アクリル系として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が例示される。ビニル系として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等が例示される。ポリスチレン系として、ポリスチレン(PS)樹脂、スチレン・アクリロニトリル(AS)樹脂、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル(ABS)樹脂等が例示される。エンジニアリングプラスチック基材として、汎用エンプラ、スーパーエンプラ等が例示される。汎用エンプラとして、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等が例示される。スーパーエンプラとして、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が例示される。熱硬化性プラスチック基材として、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示される。その他のプラスチック基材として、トリアセチルセルロース樹脂等が例示される。これらの中でも透明性、積層フィルムとの密着性の観点より、ポリエステル系、トリアセチルセルロース樹脂、ポリカーボネート、アクリル系樹脂及び脂環オレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種が好ましい。また、基材フィルムの平均厚みは特に限定されないが、基材フィルムの平均厚みの上限は、1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50μm等が例示され、下限は、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、30μm等が例示される。1つの実施形態において、基材フィルムの平均厚みは、30~1,000μm程度が好ましく、30~200μmがより好ましく、50~100μmがさらにより好ましい。
【0083】
本開示の積層フィルムには、微細な凹凸構造が形成されている。そのため、表面反射による外景の映り込みを抑制でき、防眩性を高めることができる。防眩性は光沢度と関連があり、本開示の積層フィルムの光沢度は、下記のとおりである。本開示の積層フィルムの入射角60度における光沢度の上限は、50、48、46、44、42、40、38、36、34、32、30、28、26、24、22、20、18、16、14%等が例示され、下限は、48、46、44、42、40、38、36、34、32、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、10%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の積層フィルムの入射角60度における光沢度は、50%以下であってもよく、10~50%程度が好ましい。また、本開示の積層フィルムの入射角20度における光沢度の上限は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2%等が例示され、下限は、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の積層フィルムの入射角20度における光沢度は、1~15%程度が好ましい。光沢度が上記下限以上であると、表示される像のぼやけが軽減され見えやすくなる。また、光沢度が上記上限以下であると、防眩性に優れる。なお、本開示の積層フィルムの防眩性ハードコート層の入射角60度における光沢度及び入射角20度における光沢度は、JIS Z 8741(1997)に記載の方法で測定される。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を挙げて本開示の具体例を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中、部及び%は特記しない限り全て固形分質量基準である。
【0085】
<実施例1:活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤(1)の調製>
(A)成分としてジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(製品名「アロニックスM-402」、東亞合成(株)製)を65.5質量部、(B)成分としてシルセスキオキサン(製品名「MAC-SQ TM-100」、東亞合成(株)製)を20.0質量部、(C)成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテル分散のシリカ粒子(製品名「PGM-ST」、日産化学製)を5.0質量部、(D)成分として有機粒子(製品名「テクポリマーSSXシリーズ カスタマイズ品」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径:4μm、屈折率:1.535)を9.5質量部、開始剤として1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノンを2.0質量部及び2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンを2.0質量部、レベリング剤として製品名「BYK-350」(BYK Additives & Instruments製)を0.2質量部混合するとともに、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて希釈し、固形分30重量%の活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤を調製した。
【0086】
<実施例2~5及び比較例1~5:活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤(2)~(5)及び(C1)~(C5)の調製>
実施例2~5及び比較例1~5は、表1に記載の組成に変更したことを除き、実施例1と同様の手法により行い、活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤(2)~(5)及び(C1)~(C5)を得た。
【0087】
<評価例1:積層フィルム(1)の作製>
活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤(1)を乾燥後の膜厚が3.6μmとなるように、トリアセチルセルロースフィルム(製品名「FT TD80ULM」、富士フィルム(株)製、膜厚:80μm)にメイヤーバー No.9を用いて塗布し、80℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で活性エネルギー線を照射し(紫外線照射:550mW/cm2、300mJ/cm2)、積層フィルム(1)を得た。
【0088】
<評価例2~5及び比較評価例1~5:積層フィルム(2)~(5)及び(C1)~(C5)の作製>
評価例2~5及び比較評価例1~5は、活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤(1)をそれぞれ活性エネルギー線硬化型防眩性ハードコート剤(2)~(5)又は(C1)~(C5)に変更したことを除き、評価例1と同様の手法により行い、積層フィルム(2)~(5)及び(C1)~(C5)を得た。
【0089】
<性能評価(1):τT(全光線透過率)>
JIS K 7361-1(1997)の規格に準拠し、ヘーズメーター(製品名「HZ-V3」、スガ試験機(株)製)を用いて、積層フィルム(1)~(5)及び(C1)~(C5)の全光線透過率を測定した。
【0090】
<性能評価(2):ヘーズ値>
JIS K 7136(2000)の規格に準拠し、ヘーズメーター(製品名「HZ-V3」、スガ試験機(株)製)を用いて、積層フィルム(1)~(5)及び(C1)~(C5)のヘーズ値を測定した。
【0091】
<性能評価(3):入射角20度における光沢度>
JIS Z 8741(1997)の規格に準拠し、グロスメーター(製品名「VG-7000」、日本電色工業(株)製)を用いて、積層フィルム(1)~(5)及び(C1)~(C5)の入射角20度における光沢度を測定した。
【0092】
<性能評価(4):入射角60度における光沢度>
JIS Z 8741(1997)の規格に準拠し、グロスメーター(製品名「VG-7000」、日本電色工業(株)製)を用いて、積層フィルム(1)~(5)及び(C1)~(C5)の入射角60度における光沢度を測定した。
【0093】
<性能評価(5):耐擦傷性>
積層フィルム(1)~(5)及び(C1)~(C5)の防眩性ハードコート層が上方を向くようにしてスチールウール試験機に設置し、#0000のスチールウールを用いて、500g/cm2の荷重で4cmの摺動距離にて10往復擦ることで試験を実施した。防眩性ハードコート層における外観変化(透明化)を、目視にて確認し、下記基準に沿って評価した。
○:透明化が発生しない。
△:わずかに透明化している。
×:完全に透明化している。
【0094】
【0095】
表1中の用語の意味は下記のとおりである。
DPPA:ジペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「アロニックスM-402」、東亞合成(株)製)
SQ:シルセスキオキサン(製品名「MAC-SQ TM-100」、東亞合成(株)製)
親水性シリカ:プロピレングリコールモノメチルエーテル分散のシリカ粒子(製品名「PGM-ST」、日産化学(株)製、平均粒子径12nm)
疎水性シリカ:下記製造例1及び2を経て得られたウレタン(メタ)アクリレート構造含有シランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子
有機粒子:ポリメタクリル酸メチルとスチレンとの共重合体(製品名「テクポリマーSSXシリーズ カスタマイズ品」、積水化成品工業(株)製、平均粒子径:4μm、屈折率:1.535)
【0096】
<製造例1:ウレタン(メタ)アクリレート構造含有シランカップリング剤の作製>
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び空気導入口を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート20質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物72質量部(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬(株)製)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン8質量部、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.02質量部、並びに触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.2質量部を混合し、反応を70℃5時間の条件で行った。反応終了後に、ウレタン(メタ)アクリレート構造含有トリメトキシシラン、ウレタン(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートをそれぞれ3分の1質量%ずつ含有する混合物が得られた。当該混合物をウレタン(メタ)アクリレート構造含有シランカップリング剤として用いた。
【0097】
<製造例2:ウレタン(メタ)アクリレート構造含有シランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子>
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び空気導入口を備えた反応容器に、固形分換算で9.4質量%のシリカ分散体(固形分:30%、溶液:メチルエチルケトン)と1.3質量%のウレタン(メタ)アクリレート構造含有シランカップリング剤を混合し、60℃4時間の条件で反応を行い、表面処理されたシリカ粒子を製造した。平均粒子径10nmであった。なお、表1中の疎水性シリカの数値は、表面処理されたシリカ粒子に加えて、上記ウレタン(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを含んだ数値である。