(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】歩行補助装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20230926BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61H3/00 B
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020144147
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岡野 花奈子
(72)【発明者】
【氏名】池田 富夫
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5316708(JP,B2)
【文献】特開2016-106955(JP,A)
【文献】特開2019-55016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの脚部に装着される歩行補助装置であって、
前記脚部の膝関節の屈曲方向に抵抗力を与えるダンパと、
前記ユーザの歩行サイクルにおける切替タイミングを検出するセンサと、
第1モードと前記第1モードよりも抵抗力が強くなる第2モードとが交互に繰り返されるように切替タイミングに応じてダンパのモードを切り替える制御部と、
を備え、
前記ダンパは、所定の膝角度以内の場合に作動する第1ダンパ部と、
前記所定の膝角度よりも大きい膝角度で作動する第2ダンパ部と、
を含む、
歩行補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置に関し、例えば、ユーザの脚部に装着される歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザに装着される歩行補助装置が記載されている。特許文献1の歩行補助装置は、大腿リンク及び下腿リンク、並びに、センサ、モータ及びコントローラを備え、下腿リンクの膝屈曲方向の回転に対して抵抗力を発生するダンパを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歩行補助装置を装着した歩行時に用いられるダンパの効果範囲を広くして、歩行時の補助だけでなく、着座までをダンパで補助することができる歩行補助装置を実現したいという課題がある。
【0005】
本発明は、そのような課題を解決するためになされたものであり、歩行だけでなく、着座の補助も可能とする歩行補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る歩行補助装置は、ユーザの脚部に装着される歩行補助装置であって、前記脚部の膝関節の屈曲方向に抵抗力を与えるダンパと、前記ユーザの歩行サイクルにおける切替タイミングを検出するセンサと、第1モードと前記第1モードよりも抵抗力が強くなる第2モードとが交互に繰り返されるように切替タイミングに応じてダンパのモードを切り替える制御部と、を備え、前記ダンパは、所定の膝角度以内の場合に作動する第1ダンパ部と、前記所定の膝角度よりも大きい膝角度で作動する第2ダンパ部と、を含む。このような構成により、歩行だけでなく、着座の補助も可能とする歩行補助装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、歩行だけでなく、着座の補助も可能とする歩行補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る歩行補助装置を例示した正面図である。
【
図2】実施形態に係る歩行補助装置を例示した側面図である。
【
図3】(a)~(c)は、実施形態に係る歩行補助装置において、ダンパを例示した図である。
【
図4】実施形態に係る歩行補助装置において、ダンパを例示した斜視図である。
【
図5】実施形態に係る歩行補助装置の制御系を例示したブロック図である。
【
図6】実施形態に係る歩行補助装置を用いた歩行サイクルにおいて、歩行動作及びモード切替のタイミングを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
(実施形態)
実施形態に係る歩行補助装置を説明する。本実施形態の歩行補助装置は、例えば、歩行訓練を行う訓練者の膝関節を含む脚部に装着される。ユーザである訓練者が歩行補助装置を脚部に装着した状態で歩行訓練を行う。まず、本実施形態の歩行補助装置の構成を説明する。その後、歩行補助装置の動作を説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る歩行補助装置を例示した正面図である。
図2は、実施形態に係る歩行補助装置を例示した側面図である。
図3(a)~(c)は、実施形態に係る歩行補助装置において、ダンパを例示した図である。
図4は、実施形態に係る歩行補助装置において、ダンパを例示した斜視図である。
図5は、実施形態に係る歩行補助装置の制御系を例示したブロック図である。
【0012】
図1~
図5に示すように、歩行補助装置1は、上腿サポータ11、下腿サポータ12、上腿フレーム13、下腿フレーム14、ダンパ15、センサ17、及び、制御部18を備えている。ダンパ15は、第1ダンパ部15aと、第2ダンパ部15bと、を含んでいる。歩行補助装置1の下側には、短下肢装具が取り付けられてもよい。歩行補助装置1は、ユーザの脚部に装着される。以下で、歩行補助装置1の各構成を説明する。
【0013】
<上腿サポータ及び下腿サポータ>
上腿サポータ11は、ユーザの脚部の上腿に巻き付けるように装着され、下腿サポータ12は、ユーザの脚部の下腿に巻き付けるように装着される。よって、上腿サポータ11及び下腿サポータ12は、膝関節の周辺、具体的には、上腿及び下腿に渡って配置されている。なお、上腿は股関節から膝関節までの部分を示し、下腿は、膝関節から足首関節までの部分を示す。下腿は、すねを含む。足首関節から下側、つまり、脚部の先端側の部分を足平とする。
【0014】
上腿サポータ11及び下腿サポータ12は、樹脂材料や繊維材料などの伸縮可能な材料により形成されている。上腿サポータ11及び下腿サポータ12は、それぞれ、上腿及び下腿に巻き付けて歩行補助装置1を装着させる。上腿サポータ11及び下腿サポータ12は、上腿及び下腿に装着するための面ファスナ11a及び12aを有してもよい。ユーザは、上腿サポータ11及び下腿サポータ12を、脚部の周りに巻き回して、面ファスナ11a及び12aで固定する。
【0015】
面ファスナ11aは、上腿の前側に設けられている。面ファスナ12aは、下腿の前側に設けられている。面ファスナ11a及び12aを用いることで、ユーザは、歩行補助装置1を容易に脱着することができる。さらに、歩行補助装置1がユーザの膝関節からずれるのを防止できる。面ファスナ11a及び12aにより、ユーザは、圧迫度合いを調整することができる。さらに、面ファスナ11a及び12aが外れたり、上腿サポータ11及び下腿サポータ12がずれたりするのを防止するために、固定バンドを設けてもよい。
【0016】
なお、歩行補助装置1の脚部への固定は、面ファスナ11a及び12aに限られるものではない。例えば、ベルト、ボタン、ピン、バンドなどの固定手段を用いて、歩行補助装置1を、上腿及び下腿に固定してもよい。このような固定手段を用いても、ユーザが歩行補助装置1を装着することができる。
【0017】
<上腿フレーム及び下腿フレーム>
上腿サポータ11の側部には上腿フレーム13が取り付けられている。上腿フレーム13は、上腿に沿って配置されている。下腿サポータ12の側部には下腿フレーム14が取り付けられている。下腿フレーム14は、下腿に沿って配置されている。上腿フレーム13と下腿フレーム14とが、ダンパ15を介して連結されている。具体的には、ダンパ15の回転軸Axが膝関節の軸とほぼ一致するように、膝関節の高さにダンパ15が配置される。上腿フレーム13及び下腿フレーム14は、ダンパ15の回転軸Ax周りに回転可能なリンク機構を構成している。
【0018】
<ダンパ>
第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bを含むダンパ15は、ユーザの脚部における膝関節の屈曲方向に抵抗力を与える。屈曲方向は、膝関節の回転方向において、膝関節が屈曲する向きである。第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bは、膝関節の側部に位置する。第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bは、例えば、オイル等の流体の粘性抵抗、バネ等の弾性抵抗、ディスク等の摩擦抵抗等を利用して、膝関節の屈曲方向の回転を減速させる。第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bの少なくともいずれかは、有線または無線の通信回線により制御部18に接続されている。
【0019】
図3(a)に示すように、上腿と下腿とが直線状に伸びて膝関節が伸展した状態から、下腿が屈曲した屈曲角度を膝角度θと呼ぶ。第1ダンパ部15aは、所定の膝角度θ1以内の場合に作動する。一方、第2ダンパ部15bは、所定の膝角度θ1よりも大きい膝角度で作動する。
【0020】
第1ダンパ部15aは、例えば、ストロークダンパであり、アブソーバを含んでもよい。
図3(a)~(c)及び
図4に示すように、例えば、第1ダンパ部15aは、筒体TUと、筒体TUの内部を直線状に移動するシャフトSHと、筒体TUから突出したシャフトSHの先端に当接するストッパSTと、を有する。筒体TUを、シャフトSHを介してストッパSTに押し当てることにより、シャフトSHを、筒体TUの内部に移動させる。第1ダンパ部15aは、シャフトSHが筒体TUの内部に移動する際に抵抗力を発生させる。第1ダンパ部15aは、シャフトSHが筒体TUの内部に移動できる限界まで、ダンパとして作動する。
【0021】
図3(a)及び(b)に示すように、膝角度θが大きくなるほど、シャフトSHが筒体TUの内部に移動する量を大きくする。シャフトSHが筒体TUの内部に移動できる限界での膝角度θを、所定の膝角度θ1に設定する。そして、ユーザの歩行時において、膝角度θは、所定の膝角度θ1以内となるようにする。そうすると、第1ダンパ部15aは、所定の膝角度θ1以内の歩行時にダンパとして作動する。しかしながら、その場合には、第1ダンパ部15aは、所定の膝角度θ1よりも大きい膝角度θ>θ1となる着座時にダンパとして作動することはできない。
【0022】
本実施形態において、第1ダンパ部15aは、ダンパの効果を発揮する膝角度θの範囲が、第2ダンパ部15bよりも狭い。第1ダンパ部15aがストロークダンパの場合には、第1ダンパ部15aは、直線状に移動するシャフトSHを用いた単純な構造を有する。よって、第1ダンパ部15aは、第2ダンパ部15bよりも耐久性が高く、使用可能回数は大きい。
【0023】
第2ダンパ部15bは、例えば、ロータリーダンパである。例えば、第2ダンパ部15bは、ロータリーダンパの作用点にストッパSTを固定させている。すなわち、ストッパSTがロータリーダンパを回転させることにより、第2ダンパ部15bは、ダンパとして作動する。第2ダンパ部15bは、所定の膝角度θ1以内の歩行時にダンパとして作動しない。第1ダンパ部15aがストッパSTを押す力を吸収するからである。しかしながら、シャフトSHが筒体TUの内部に移動できる限界まで移動すると、筒体TU及びシャフトSHは一体化して、ストッパSTを押す。これにより、ストッパSTは、ロータリーダンパを回転させる。よって、第2ダンパ部15bは、所定の膝角度θ1よりも大きい膝角度θ>θ1となる着座時にダンパとして作動する。
【0024】
このように、第1ダンパ部15aは、所定の膝角度θ1で、一体化した筒体TU及びシャフトSHが、第2ダンパ部15bに固定されたストッパSTを押し始める。そして、第1ダンパ部15aがストッパSTを押すことにより、第2ダンパ部15bが作動する。なお、第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bは、回転方向に直結させた直列に配置されているが、これに限らず、第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bを回転軸Axに並べて並列に配置させてもよい。
【0025】
本実施形態において、第2ダンパ部15bは、第1ダンパ部15aよりも、ダンパの効果を発揮する膝角度θの範囲が広い。一方、第2ダンパ部15bは、ロータリーダンパを含む場合には、ゴム等のパッキンを含む容器内にオイルを充填させ、オイル等の流体の粘性抵抗によりダンパとして作動させる。第2ダンパ部15bは、パッキンを交換する頻度が高いので、第1ダンパ部15aよりも耐久性が低下し、使用可能回数は小さい。
【0026】
<センサ>
図5に示すように、センサ17は、有線または無線の通信回線により制御部18に接続されている。センサ17は、ユーザの歩行動作におけるタイミングを検出する。具体的には、センサ17は、歩行サイクル(歩行周期)における切替タイミングを検出するために設けられている。例えば、センサ17は、膝角度θ、または、地面と下腿との角度を検出し、検出した角度を検出結果として制御部18に出力する。制御部18は、センサ17での検出結果に基づいて、ダンパ15のモードを切替える。
【0027】
具体的には、制御部18は、膝角度下、または、地面と下腿との角度に基づいて、ダンパ15のモードを切替える。つまり、制御部18は、センサ17から出力されるタイミング信号に基づいて、ダンパ15のモードを切替える。これにより、歩行サイクルにおける一定のタイミングで、制御部18は、ダンパ15のモードの切替を行う。センサ17及び制御部18には、歩行補助装置1に搭載されたバッテリ(不図示)により電源が供給されている。
【0028】
センサ17としては、種々のタイプのセンサを用いることができる。以下、センサ17の具体例について説明する。
【0029】
センサ17は、例えば、地面に対する下腿(すね)の角度を検出するジャイロセンサでもよい。また、センサ17は、脚部の角度、すなわち、膝関節を挟んだ上腿と下腿との間の角度を検出する角度センサでもよい。さらに、センサ17は、上腿と下腿とが直線状に伸びて膝関節が伸展した状態から、下腿が屈曲した膝角度θを検出する角度センサでもよい。センサ17は、下腿の角度、脚部の角度及び膝角度θの角速度を検出する角速度センサでもよい。
【0030】
センサ17は、脚部の所定の位置と地面との間の距離を検出する測距センサでもよい。脚部の所定の位置は、例えば、靴、足平、足裏等である。例えば、靴、足平またはその近傍に取り付けられた測距センサをセンサ17として用いることができる。歩行動作に応じて、靴、足平、足裏等から地面までの距離が変わるため、歩行サイクルに応じた波形を検出することができる。なお、測距センサとしては、光学式のセンサを用いることができる。また、地面は、床面を含む。
【0031】
センサ17は、検出した角度、角速度、距離等から、歩行サイクルに応じた波形を検出する。つまり、検出した角度、角速度、距離等は、歩行サイクルに応じて周期的に変化する。センサ17は、検出した角度、角速度、距離等に基づいて、歩行タイミングを検出する。
【0032】
例えば、制御部18は、センサ17の出力値と閾値とを比較して、その比較結果に応じて、ダンパ15のモードを切替えればよい。例えば、制御部18は、センサ17の出力値が閾値を超えたタイミング、または、閾値を下回ったタイミングを示すタイミング信号に応じて、モード切替を行う。
【0033】
なお、ダンパ15において、第1モードから第2モードに切り替わる切替タイミングを検出するための第1閾値(例えば、下腿の第1角度)と、第2モードから第1モードに切り替わる切替タイミングを検出するための第2閾値(例えば、下腿の第2角度)が設定されていてもよい。
【0034】
また、センサ17は、足裏の接地タイミングを検出する接地タイミングセンサでもよい。センサ17は、検出した接地タイミングに基づいて、歩行タイミングを検出することができる。例えば、接地タイミングから各モード切替のタイミングまでの時間を予め加算または減算することにより、センサ17は、切替タイミングを検出する。
【0035】
さらに、センサ17は、脚部を撮像する撮像センサでもよい。その場合には、センサ17は、歩行補助装置1の外部から脚部の状態を撮像する。撮像した脚部の状態から、歩行タイミングを検出することができる。なお、センサ17が外部に配置されている場合には、歩行補助装置1が、外部のセンサ17から切替タイミングを示す信号を受信する受信部を備えていればよい。
【0036】
また、複数のセンサ17を組み合わせて、切替タイミングを検出してもよい。例えば、センサ17は、下腿の角度を検出するために設けられた第1センサと、足裏から床面までの距離を検出するために設けられた第2センサの両方を備えていてもよい。もちろん、センサ17の具体例は上記の例に限られるものではない。センサ17は、歩行補助装置1に実装されていることが好ましい。あるいは、センサ17は、歩行補助装置1の外部に実装されていてもよい。
【0037】
<制御部>
制御部18は、有線または無線の通信回線により、ダンパ15及びセンサ17に接続されている。制御部18は、センサ17から出力された切替タイミングに基づいて、ダンパ15を制御する。制御部18は、ダンパ15のモードを切替える。
【0038】
制御部18は、第1モードと第2モードとが交互に繰り返されるように、切替タイミングに応じてダンパ15のモードを切替える。例えば、第1モードでは、ダンパ15がオフして、屈曲方向に抵抗力を与えないフリーモードとなる。第2モードでは、ダンパ15がオンして、屈曲方向に抵抗力を与えるダンパモードとなる。あるいは、例えば、第1モードでは、ダンパ15は、小さい抵抗力を与えるように切替えられ、第2モードでは、ダンパ15は、大きい抵抗力を与えるように切替えられる。ダンパ15に含まれた第1ダンパ部15a及び第2ダンパ部15bは、膝角度θに応じてダンパとして作動する。歩行サイクルにおいては、ダンパ15のうち、第1ダンパ部15aが主に作動する。
【0039】
<動作>
次に、歩行補助装置1の動作を説明する。まず、歩行サイクルでの動作を説明する。その後、着座の動作を説明する。
【0040】
図6は、実施形態に係る歩行補助装置1を用いた歩行サイクルにおいて、歩行動作及びモード切替のタイミングを例示した図である。まず、
図6を参照して、遊脚期及び立脚期を含む1歩行サイクルを説明する。次に、歩行動作及びモード切替のタイミングを説明する。
【0041】
<1歩行サイクル>
図6に示すように、1歩行サイクルは、左脚の一歩と右脚の一歩との合計2歩を含んでいる。
図6では、1歩行サイクルが(a)~(m)の順番で示されている。(m)のタイミングの後に、(a)のタイミングに戻り、次の歩行サイクルとなる。
図6では、(a)~(g)のタイミングで遊脚期となり、(h)~(m)のタイミングで立脚期となる。
【0042】
遊脚期は、歩行補助装置1が装着された脚部の足裏が離地した状態であり、立脚期は、歩行補助装置1が装着された脚部の足裏が接地した状態である。(g)のタイミングと(h)の間で、足裏が着地しており、(m)から(a)に戻るタイミングで足裏が離地している。(a)~(c)のタイミングは膝関節の屈曲角度が大きくなる屈曲期となり、(d)~(g)のタイミングは、膝関節の屈曲角度が小さくなる伸展期となっている。なお、遊脚期、立脚期、屈曲期、及び、伸展期は、歩行補助装置1を装着した患脚を基準としている。
【0043】
<屈曲方向>
次に、上記1歩行サイクルにおける歩行動作及びモード切替のタイミングを説明する。まず、膝関節の屈曲方向に抵抗力を与えるダンパ15の動作を説明する。歩行サイクルにおいて、膝角度θが所定の膝角度θ1以内の場合には、第1ダンパ部15aが作動する。伸展期において、具体的には、(f)のタイミングにおいて、第1モードから第2モードに切り替わっている。また、立脚期から遊脚期に変わるタイミング、具体的には、(m)のタイミングと(a)のタイミングとの間で、第2モードから第1モードに切り替わっている。
【0044】
第1モードは、膝関節の屈曲方向に抵抗力を与えないフリーモード、または、第2モードよりも小さい抵抗力を与えるモードを含む。第2モードは、膝関節の屈曲方向に抵抗力を与えるダンパモード、または、第1モードよりも大きい抵抗力を与えるモードを含む。
【0045】
遊脚期においては、患脚は、ユーザの体重を支える必要がない。このため、遊脚期においては、ダンパ15によって膝関節に対する抵抗力を発生する必要が無いか、発生させたとしても小さい抵抗力でよい。よって、遊脚期のほぼ全体において、制御部18は、屈曲方向に対して、フリーモードを含む第1モードにすることができる。一方、立脚期の全体において、制御部18は、第2モードにし、ダンパ15に対して屈曲方向に抵抗力を発生させる。
【0046】
さらに、1歩行サイクルにおいて、第1モード及び第2モードのみが設けられており、歩行動作中に制御部18が第1モードと第2モードとを交互に切替えている。つまり、制御部18がタイミング信号に基づいて、ダンパ15を制御している。例えば、フリーモードとダンパモードとをオンオフ制御している。このようにすることで、簡便な構成により、適切な制御を行うことができる。例えば、歩行サイクル毎に歩行動作がばらついた場合には、センサ17で検出される切替タイミングがばらつくおそれがある。このような場合でも遊脚期から立脚期に切り替わる前のタイミング、つまり、伸展期における任意のタイミングにおいて、ダンパ15が第1モードから第2モードへと切り替わっていればよい。
【0047】
具体的には、(d)~(g)の間の所定のタイミングにおいて、制御部18がモードを切替えていればよい。センサ17で検出される切替タイミングの誤差に対するマージンを広くすることができるため、適切に制御することができる。また、伸展期においては、膝関節が屈曲している状態から徐々に伸展方向に回転していく。このため、ダンパ15が第2モードとなっていたとしても、抵抗力が発生しない。よって、ダンパ15がユーザの歩行動作を妨げることなく、モード切替を行うことができる。
【0048】
また、ダンパ15は、伸展方向に抵抗力を発生させないフリーとしている。このため、ユーザは、膝関節を自由に伸展させることができる。また、ダンパモードを含む第2モードと、フリーモードを含む第1モードとの間に、ダンパ15がロックするロックモードがないため、ダンパ15が歩行動作の妨げとなることを防ぐことができる。ロックモードを介さずに第2モードから第1モードに移行するため、容易に適切な制御を行うことができる。
【0049】
センサ17の出力により、遊脚期と立脚期との切替タイミングを検出して、遊脚期を第1モード、立脚期を第2モードとしてもよい。つまり、遊脚期から立脚期に変わるタイミングと、立脚期から遊脚期に切り替わるタイミングとを、ダンパ15のモードの切替タイミングとしてもよい。
【0050】
また、第1モードと第2モードとの切替えは、急峻でもなめらかでもよい。すなわち、第2モードは、第1モードの抵抗力から徐々に抵抗力が増加する期間を含んでもよいし、第1モードの抵抗力まで徐々に抵抗力が減少する期間を含んでもよい。
【0051】
<伸展方向>
次に、膝関節の伸展方向の動作を説明する。本実施形態において、伸展方向の動作は、歩行サイクルの全体において、例えば、フリーモードである。なお、歩行サイクルの所定の期間において、伸展方向にダンパを作動させてもよい。
【0052】
<着座>
次に、着座時の動作を説明する。
図3(a)に示すように、着座動作の開始前において、膝角度θは、所定の膝角度θ1以内である。ユーザは、着座動作を始めると、膝角度θが大きくなる。その際に、膝角度θが所定の膝角度θ1までは、第1ダンパ部15aは、屈曲方向に抵抗力を与え、ユーザの着座の動作を補助する。
【0053】
そして、
図3(b)に示すように、膝角度θが所定の膝角度θ1になると、シャフトSHは、筒体TUの内部に移動できる限界まで移動する。これにより、第1ダンパ部15aは、屈曲方向に抵抗力を与えず、ダンパとして作動しなくなる。一方、ストッパSTには、筒体TUから押す力が加わるようになる。これにより、第2ダンパ部15bは、屈曲方向に抵抗力を与え、ダンパとして作動する。
【0054】
図3(c)に示すように、膝角度θが所定の膝角度θ1よりも大きい場合には、第2ダンパ部15bは屈曲方向に抵抗力を与え、ユーザの着座の動作を補助する。このようにして、歩行補助装置1を装着したユーザは、歩行補助装置1に補助されて着座することができる。
【0055】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の歩行補助装置1において、ダンパ15は、所定の膝角度θ1以内の歩行時に作動する第1ダンパ部15aと、所定の膝角度θ1よりも大きい膝角度θの着座時に作動する第2ダンパ部15bと、を含む。よって、歩行補助装置1は、ユーザの歩行動作だけでなく、ユーザの着座動作の補助も可能である。
【0056】
また、第1ダンパ部15aが作動する角度範囲は狭いので、第1ダンパ部15aだけで着座動作も補助しようとすると、複数の第1ダンパ部15aを必要とする。一方、第2ダンパ部15bが作動する角度範囲は広いので、第2ダンパ部15bだけで、歩行動作の補助及び着座動作の補助をすることはできる。しかしながら、第2ダンパ部15bの耐久性は、第1ダンパ部15aの耐久性よりも低いので、第2ダンパ部15bだけでは、頻繁に交換する必要がある。
【0057】
本実施形態の歩行補助装置1では、作動する角度範囲は狭いが耐久性は高い第1ダンパ部15aと、作動する角度範囲は広いが耐久性は低い第2ダンパ部15bと、を組み合わせている。そして、使用回数が大きい歩行時には、第1ダンパ部15aを作動させ、使用回数が歩行時よりは小さい着座時には、第2ダンパ部15bを作動させる。これにより、ダンパの個数を抑えつつ、耐久性を向上させることができる。また、軽量化することができ、健常に近い形で歩行訓練することができる。
【0058】
さらに、所定の膝角度θ1を、階段の昇降等、深く膝関節を曲げる動作に対応するように設定すれば、着座動作だけでなく、階段の昇降動作にも適用することができる。
【0059】
第1ダンパ部15aの抵抗力、第2ダンパ部15bの抵抗力、所定の膝角度θ1は、ユーザに合わせて設定してもよい。よって、ユーザの症状に合った歩行訓練をすることができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 歩行補助装置
11 上腿サポータ
11a、12a 面ファスナ
12 下腿サポータ
13 上腿フレーム
14 下腿フレーム
15 ダンパ
15a 第1ダンパ部
15b 第2ダンパ部
17 センサ
18 制御部
Ax 回転軸
TU 筒体
SH シャフト
ST ストッパ