(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】停止指示システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230926BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2020161094
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕治
(72)【発明者】
【氏名】土井 隆行
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020156(JP,A)
【文献】特開2016-089389(JP,A)
【文献】特開平10-088628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に近づく運搬車を停止させるための指示を行う停止指示システムであって、
前記作業機械に対する前記運搬車の距離を検出する距離検出部と、
前記運搬車を停止させる指示である停止指示を出力する停止指示出力部と、
コントローラと、
を備え、
前記距離検出部は、前記作業機械に関連付けられた特定の基準位置から前記運搬車の荷台の運搬車後側の部分までの距離である第1距離と、前記基準位置から前記荷台の運搬車前側の部分までの距離である第2距離と、を検出し、
前記コントローラには、前記第1距離に関する閾値である第1閾値と、前記第2距離に関する閾値である第2閾値と、が設定され、
前記コントローラは、前記第1距離が前記第1閾値よりも大きい値から前記第1閾値以下になった場合、および、前記第2距離が前記第2閾値よりも大きい値から前記第2閾値以下になった場合、の少なくともいずれかの場合に、前記停止指示出力部に停止指示を出力させる、
停止指示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の停止指示システムであって、
前記第1距離が前記第1閾値と等しいときに前記荷台の運搬車後側の部分と前記作業機械との間に間隔があけられるように、前記第1閾値が設定される、
停止指示システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の停止指示システムであって、
前記第2距離が前記第2閾値と等しいときに前記荷台の運搬車前側の部分に前記作業機械のアタッチメントが届くことが可能となるように、前記第2閾値が設定される、
停止指示システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の停止指示システムであって、
前記作業機械に対する前記運搬車の速度の大きさを検出する運搬車速度検出部を備え、
前記コントローラは、前記運搬車速度検出部に検出された速度の大きさに基づいて、前記第1閾値および前記第2閾値を変化させる、
停止指示システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の停止指示システムであって、
前記運搬車に対する前記作業機械の下部走行体の姿勢を検出する下部走行体姿勢検出部を備え、
前記コントローラは、前記下部走行体の寸法および形状の情報と、前記下部走行体姿勢検出部に検出された姿勢と、に基づいて前記第1閾値を変化させる、
停止指示システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の停止指示システムであって、
前記作業機械のアタッチメントの姿勢を検出するアタッチメント姿勢検出部を備え、
前記コントローラは、前記アタッチメントの寸法および形状の情報と、前記アタッチメント姿勢検出部に検出された姿勢と、に基づいて前記第1閾値を変化させる、
停止指示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に近づく運搬車を停止させるための指示を行う停止指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、運搬車を目標停止位置に停止させる技術が記載されている。同文献に記載の技術では、運搬車の参照点の位置が、目標停止位置に到達した場合に、運転車両が停止させられる(同文献の段落0054および
図1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械に対して運搬車を適切な位置に停止させることが重要である。そのため、運搬車両を適切な位置に停止させるように指示を行うことが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、作業機械に対する運搬車の位置が適切な位置になったタイミングで、運搬車を停止させるための停止指示を行うことができる、停止指示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
停止指示システムは、作業機械に近づく運搬車を停止させるための指示を行うものである。停止指示システムは、距離検出部と、停止指示出力部と、コントローラと、を備える。前記距離検出部は、前記作業機械に対する前記運搬車の距離を検出する。前記停止指示出力部は、前記運搬車を停止させる指示である停止指示を出力する。前記距離検出部は、第1距離と、第2距離と、を検出する。前記第1距離は、前記作業機械に関連付けられた特定の基準位置から前記運搬車の荷台の運搬車後側の部分までの距離である。前記第2距離は、前記基準位置から前記荷台の運搬車前側の部分までの距離である。前記コントローラには、前記第1距離に関する閾値である第1閾値と、前記第2距離に関する閾値である第2閾値と、が設定される。前記コントローラは、前記第1距離が前記第1閾値よりも大きい値から前記第1閾値以下になった場合、および、前記第2距離が前記第2閾値よりも大きい値から前記第2閾値以下になった場合、の少なくともいずれかの場合に、前記停止指示出力部に停止指示を出力させる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、作業機械に対する運搬車の位置が適切な位置になったタイミングで、運搬車を停止させるための停止指示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】停止指示システム30などを示す図であり、運搬車10および作業機械20を横から見た図である。
【
図2】
図1に示す停止指示システム30のブロック図である。
【
図3】
図1に示すコントローラ50の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示す運搬車10の速度の大きさと、
図3に示す第1閾値T1および第2閾値T2と、の関係を示すグラフである。
【
図5】
図1に示す運搬車10および作業機械20を上から見た図である。
【
図6】
図3に示す閾値算出(S101)の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図6を参照して、
図1に示す運搬車10、作業機械20、および停止指示システム30について説明する。
【0010】
運搬車10は、荷台13を備える車両である。運搬車10は、作業機械20によって積み込まれた運搬物を輸送するための車両である。運搬車10は、ダンプカーでもよく、トラックでもよい。運搬車10は、運搬車本体部11と、荷台13と、を備える。運搬車本体部11は、走行可能であり、荷台13を支持する。運搬車本体部11は、運搬車運転室11aを備える。
【0011】
荷台13は、運搬物を収容する。荷台13に収容される運搬物は、例えば土砂でもよく、石でもよく、廃棄物などでもよい。荷台13から運搬車運転室11aに向かう側を運搬車前後方向Uの運搬車前側U1とし、運搬車運転室11aから荷台13に向かう側を運搬車前後方向Uの運搬車後側U2とする。荷台13は、運搬車本体部11に対して可動でもよく、運搬車本体部11に固定されてもよい。荷台13は、荷台床部13aと、荷台後部13bと、荷台前部13dと、を備える。
【0012】
荷台床部13aは、荷台13の底を構成する部分である。荷台後部13bは、荷台13の運搬車後側U2の部分(例えば端部)である。荷台後部13bは、荷台床部13aの運搬車後側U2の部分から上に突出し、例えば板状(あおり板)である。荷台後部13bは、運搬車前後方向Uに直交する方向または略直交する方向に延びる、平面または略平面を有する(荷台前部13dも同様)。荷台前部13dは、荷台13の運搬車前側U1の部分である。荷台前部13dは、荷台床部13aの運搬車前側U1の部分から上に突出し、例えば板状(鳥居部)である。荷台前部13dは、荷台後部13bよりも上に突出する。
【0013】
作業機械20は、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルなどである。作業機械20は、運搬物の捕捉(例えば土砂の掘削)、および、捕捉した運搬物の運搬車10への積み込み(例えば排土)を行う。作業機械20は、下部走行体21と、上部旋回体23と、アタッチメント25と、を備える。
【0014】
下部走行体21は、作業機械20を走行させる。下部走行体21は、例えば左右のクローラ21c・21c(
図5参照)を備える。上部旋回体23は、下部走行体21に旋回可能に搭載される。
【0015】
アタッチメント25は、上部旋回体23に起伏可能に取り付けられる。アタッチメント25は、ブーム25aと、アーム25bと、先端アタッチメント25cと、を備える。ブーム25aは、上部旋回体23に起伏可能(上下に回転可能)に取り付けられる。アーム25bは、ブーム25aに回転可能(押し引き可能)に取り付けられる。先端アタッチメント25cは、アタッチメント25の先端部に設けられ、アーム25bに回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント25cは、運搬物(例えば土砂など)をすくうバケットでもよく、運搬物を挟んで掴む装置(グラップルなど)でもよい。
【0016】
(作業機械20に関する方向など)
下部走行体21に対する上部旋回体23の旋回の回転軸が延びる方向を、作業機械20の上下方向とする。作業機械20の上下方向に直交する方向であって、上部旋回体23に対してアタッチメント25が突出する側を作業機械前後方向Xの作業機械前側X1とし、その逆側を作業機械前後方向Xの作業機械後側X2とする。
【0017】
停止指示システム30は、作業機械20に近づく運搬車10を停止させるための停止指示を自動的に行うシステム(例えば自動ホーン吹鳴システム)である。
図2に示すように、停止指示システム30は、距離検出部41と、運搬車速度検出部42と、下部走行体姿勢検出部43と、アタッチメント姿勢検出部44と、停止指示出力部47と、コントローラ50と、を備える。
【0018】
距離検出部41は、
図1に示す作業機械20に対する運搬車10の距離を検出する。距離検出部41は、第1距離L1および第2距離L2を検出する。第1距離L1は、作業機械20に関連付けられた特定の基準位置20aから、運搬車10の荷台後部13bまでの距離(例えば最短距離)である。基準位置20aは、例えば上部旋回体23の位置から一意に決まる位置であり、例えばブーム25aの基端部(上部旋回体23側の端部)でもよく、下部走行体21に対する上部旋回体23の旋回の中心軸上の特定の点でもよい。第2距離L2は、基準位置20aから荷台前部13dまでの距離(例えば最短距離)である。
【0019】
この距離検出部41(位置検出部)は、作業機械20に対する運搬車10の位置を検出できてもよい。さらに詳しくは、距離検出部41は、運搬車10の三次元の位置情報を検出し、運搬車10の三次元の形状情報を検出してもよい。この場合、距離検出部41は、距離の情報(奥行きの情報)を有する画像(距離画像)を取得する。距離検出部41は、三次元の情報と二次元の情報(画像)とに基づいて、運搬車10の位置を検出してもよい。
【0020】
この距離検出部41は、運搬車10の一部のみの位置(三次元の位置情報)を検出してもよく、例えば運搬車10のうち荷台13のみの位置を検出してもよい。距離検出部41は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。距離検出部41は、作業機械20に搭載されてもよく、作業機械20の外部(例えば作業現場)に配置されてもよい。距離検出部41が作業機械20の外部に配置される場合は、距離検出部41が作業機械20のみに搭載された場合には検出できない位置(例えばアタッチメント25の陰になる部分など)を検出できる場合がある。また、距離検出部41が作業機械20の外部に配置される場合は、作業機械20が距離検出部41を備えていなくても、本実施形態の停止指示システム30を適用することができる。
【0021】
この距離検出部41は、非接触で距離を検出可能なセンサである。距離検出部41は、レーザー光を用いて三次元の情報を検出する装置を備えてもよく、例えばLiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)を備えてもよく、TOF(Time Of Flight)センサを備えてもよい。距離検出部41は、電波を用いて三次元の情報を検出する装置(例えばミリ波レーダなど)を備えてもよい。距離検出部41は、ステレオカメラを備えてもよい。距離検出部41が三次元の情報と二次元の情報とに基づいて運搬車10の三次元の位置および形状を検出する場合などには、距離検出部41は、二次元の画像を検出可能なカメラを備えてもよい。
【0022】
運搬車速度検出部42(
図2参照)は、運搬車10の速度を検出する。運搬車速度検出部42は、作業機械20に搭載されてもよく、作業機械20の外部に配置されてもよい(
図2に示す下部走行体姿勢検出部43、アタッチメント姿勢検出部44、停止指示出力部47およびコントローラ50も同様)。運搬車速度検出部42は、距離検出部41と兼用されてもよく、兼用されなくてもよい(
図2に示す下部走行体姿勢検出部43、およびアタッチメント姿勢検出部44も同様)。例えば、運搬車速度検出部42は、
図1に示す作業機械20から運搬車10までの単位時間当たりの距離の変化から、運搬車10の速度を検出(算出)してもよい。例えば、運搬車速度検出部42(
図2参照)は、運搬車10の三次元の位置情報に基づいて、運搬車10の速度を算出してもよい。例えば、運搬車速度検出部42は、運搬車10に設けられた速度センサでもよい。
【0023】
下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)は、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢(例えば角度)を検出する。例えば、下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)は、上部旋回体23に対する運搬車10の姿勢と、下部走行体21に対する上部旋回体23の姿勢(旋回角度)と、に基づいて、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢を算出してもよい。例えば、下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)は、運搬車10および下部走行体21の距離画像(三次元の位置および形状の情報)に基づいて、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢を検出してもよい。
【0024】
アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)は、アタッチメント25の姿勢を検出する。例えば、アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)は、作業機械20に搭載された角度センサでもよい。この場合、アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)は、上部旋回体23に対するブーム25aの角度と、ブーム25aに対するアーム25bの角度と、アーム25bに対する先端アタッチメント25cの角度と、を検出する。例えば、アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)は、アタッチメント25の距離画像に基づいて、アタッチメント25の姿勢を検出してもよい。
【0025】
停止指示出力部47(
図2参照)は、停止指示を出力する。この「停止指示」は、運搬車10の運搬車運転室11a内の運転手が知覚可能な指示でもよい。この場合、「停止指示」は、例えば音、光、および振動の少なくともいずれかの指示でもよい。「停止指示」は、運搬車10を自動的に停止させるための電気信号でもよい。停止指示出力部47は、ホーン(例えば作業機械20に搭載されたホーンなど)でもよく、スピーカでもよく、ライトでもよく、表示装置(モニタなど)でもよい。
【0026】
コントローラ50は、信号の入出力、判定や算出などの演算、情報の記憶などを行うコンピュータである。コントローラ50には、閾値T(第1閾値T1、第2閾値T2(
図3参照))、が設定される。以下、第1閾値T1および第2閾値T2については、主に
図3を参照して説明する。
【0027】
第1閾値T1は、
図1に示す第1距離L1に関する閾値である。第1距離L1が第1閾値T1と等しいときに、荷台後部13bと作業機械20との間に所定の間隔があけられるように、第1閾値T1が設定される。上記「所定の間隔」は、荷台後部13bと作業機械20とが接触しないような間隔である。
【0028】
第2閾値T2は、第2距離L2に関する閾値である。第2距離L2が第2閾値T2と等しいとき、アタッチメント25が荷台前部13dに届くことが可能となるように、第2閾値T2が設定される。上記「届くことが可能」は、アタッチメント25が荷台前部13dに接触可能な状態であってもよい。上記「届くことが可能」は、アタッチメント25が荷台前部13dにほぼ接触可能な状態でもよく、アタッチメント25と荷台前部13dとにわずかな隙間ができる程度にアタッチメント25を荷台前部13dに近づけることが可能な状態でもよい。
【0029】
(作動)
停止指示システム30などの作動の概要は、次の通りである。コントローラ50は、次の条件αおよび条件βの少なくともいずれかを満たした場合に、停止指示出力部47(
図2参照)に停止指示を出力させる。条件αは、第1距離L1が第1閾値T1よりも大きい値から第1閾値T1以下になったことである。条件βは、第2距離L2が第2閾値T2よりも大きい値から第2閾値T2以下になったことである。停止指示システム30などの作動の詳細を、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0030】
この例では、
図1に示すコントローラ50の処理の開始時には、運搬車10が作業機械20から十分離れており、第1距離L1は第1閾値T1よりも大きい値であり、第2距離L2は第2閾値T2よりも大きい値である。この状態で、運搬車10が、作業機械20に向かって移動し、第1距離L1および第2距離L2が徐々に小さくなる。運搬車10は、第1距離L1が第2距離L2よりも小さくなるような向きで(後進で)、作業機械20に向かって移動する。例えば、運搬車10の運搬車後側U2の向きと、作業機械20の作業機械前側X1の向きとが、互いに反対向きになるように、運搬車10が作業機械20に向かって移動する。作業機械前後方向Xと運搬車前後方向Uとは、互いに傾いてもよい。
【0031】
コントローラ50は、第1閾値T1および第2閾値T2を算出する(
図3に示すステップS101)。この算出については後述する。なお、第1閾値T1および第2閾値T2は、予め定められた一定値でもよい。
【0032】
コントローラ50は、距離検出部41が検出した第1距離L1が第1閾値T1以下か否か(L1≦T1か否か)を判定する(
図3に示すステップS11)。L1≦T1の場合、フローはステップS15(
図3参照)に進む。L1≦T1でない場合(L1>T1の場合)、フローはステップS12(
図3参照)に進む。
【0033】
コントローラ50は、距離検出部41が検出した第2距離L2が第2閾値T2以下か否か(L2≦T2か否か)を判定する(
図3に示すステップS12)。L2≦T2の場合、フローはステップS15(
図3参照)に進む。L2≦T2でない場合(L1>T1かつL2>T2の場合)、フローはステップS11(
図3参照)に戻る。
【0034】
L1≦T1およびL2≦T2の少なくともいずれかの条件が満たされた場合、コントローラ50は、停止指示出力部47(
図2参照)に停止指示を出力させる。具体的には例えば、コントローラ50は、停止指示出力部47(
図2参照)であるホーンを所定時間だけ鳴らす(吹鳴させる)。運搬車10の運転手は、停止指示を知覚し(例えばホーンの音を聞き)、運搬車10を停止させる。また例えば、停止指示出力部47(
図2参照)は、運搬車10を自動的に停止させるための信号を出力することで、運搬車10を停止させてもよい。停止指示出力部47(
図2参照)が出力する停止指示の内容は、L1≦T1が満たされた場合とL2≦T2が満たされた場合とで、共通してもよく、相違してもよい。
【0035】
(閾値Tの算出)
コントローラ50は、閾値T(第1閾値T1および第2閾値T2)を、様々な条件に基づいて算出(変更)する(
図3に示すステップS101、
図6参照)。
【0036】
(運搬車10の速さに基づく閾値Tの算出)
停止指示出力部47(
図2参照)が停止指示を出力した時(
図3に示すステップS15参照)から、運搬車10が実際に停止する時までに、タイムラグが生じる。停止指示が出力された時の運搬車10の速度が大きいほど、タイムラグが長くなり、運搬車10が適切な位置に停止しない場合が想定される。そこで、コントローラ50は、作業機械20に対する運搬車10の速度の大きさに基づいて、閾値Tを変化させる(停止指示を出力するタイミングを変える)。作業機械20に対する運搬車10の速度は、運搬車速度検出部42(
図2参照)に検出される。コントローラ50は、運搬車10の速度がより大きい場合に、より早いタイミングで停止指示が出力されるように、閾値T(さらに詳しくは第1閾値T1および第2閾値T2のそれぞれ)をより大きく設定する(
図4参照)。コントローラ50は、運搬車10の速さに対して、閾値Tを、段階的に変えてもよく(
図4参照)、連続的に変えてもよい。
【0037】
(作業機械20の姿勢に基づく第1閾値T1の算出)
作業機械20の姿勢によって、運搬車10が作業機械20にどこまで接近できるか(接触せずに接近できるか)が変わる。そこで、コントローラ50は、作業機械20の姿勢に応じて第1閾値T1を変化させる。
【0038】
(下部走行体21の姿勢に基づく第1閾値T1の算出)
コントローラ50は、下部走行体21の寸法および形状の情報と、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢(例えば角度)と、に基づいて第1閾値T1を変化させる。運搬車10に対する下部走行体21の姿勢は、下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)に検出される(検出の詳細は上記の通り)。下部走行体21の寸法および形状の情報(諸元情報)は、コントローラ50に設定される。下部走行体21の寸法および形状の情報は、通信によりコントローラ50に入力されてもよく、例えば作業機械20の製造時などにコントローラ50に記憶されてもよい。下部走行体21の寸法および形状の情報は、二次元画像や距離画像に基づいて算出されてもよい。この場合、画像や距離画像を取得するものは、距離検出部41でもよく、下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)でもよく、これらとは別のセンサでもよい。
【0039】
具体的には例えば、
図5に示すように、上から見たときの、作業機械20の基準位置20aと、運搬車10の特定位置10a(例えば基準位置20aから最も近い位置)と、を結ぶ直線を直線A1とする。下部走行体21の中心軸を下部走行体中心軸21aとする。下部走行体中心軸21aは、クローラ21cが延びる方向に延びる直線であって、左右のクローラ21c・21cの中央を通る直線である。このとき、直線A1と下部走行体中心軸21aとがなす角度θによって、下部走行体21と運搬車10との距離が変わり、運搬車10が作業機械20にどこまで接近できるか(接触せずに接近できるか)が変わる。例えば、コントローラ50(
図1参照)は、角度θが0°と90°との間の角度(45°など)の場合に比べ、角度θが0°や90°などの場合に、第1閾値T1を小さく設定する。例えば、下部走行体21の前後方向長さ(下部走行体中心軸21aが延びる方向の長さ)が、下部走行体21の幅方向長さ(左右のクローラ21c・21cが対向する方向の長さ)よりも長い場合がある。この場合は、コントローラ50(
図1参照)は、角度θが0°の場合に比べ、角度θが90°である場合に、第1閾値T1を小さく設定する。なお、この第1閾値T1の設定方法は一例であり、第1閾値T1は様々に設定され得る(下記の設定方法の例も同様)。
【0040】
(アタッチメント25の姿勢に基づく第1閾値T1の算出)
図1に示すコントローラ50は、アタッチメント25の寸法および形状の情報と、アタッチメント25の姿勢と、に基づいて第1閾値T1を変化させる。アタッチメント25の姿勢は、アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)に検出される(検出の詳細は上記の通り)。アタッチメント25の寸法および形状の情報は、下部走行体21の寸法および形状の情報と同様に、コントローラ50に設定される。コントローラ50は、さらに運搬車10の情報(例えば三次元の形状情報など)に基づいて第1閾値T1を変化させてもよい。運搬車10の情報は、二次元画像や距離画像に基づいて算出されてもよい。この場合、画像や距離画像を取得するセンサは、距離検出部41でもよく、距離検出部41とは別のセンサでもよい。
【0041】
具体的には例えば、コントローラ50は、アタッチメント25(例えば先端アタッチメント25c)の地面からの高さと、運搬車10の荷台13の地面からの高さと、に基づいて第1閾値T1を変化させてもよい。例えば、コントローラ50は、荷台13の高さから決まる所定高さHよりも先端アタッチメント25cが上側にのみある場合は、先端アタッチメント25cが所定高さHよりも下側にある場合に比べ、第1閾値T1を小さく設定する。例えば、コントローラ50は、アタッチメント25の三次元の位置および形状の情報と、運搬車10の三次元の位置および形状と、を比較して、運搬車10が作業機械20との間に所定の間隔をあけて停止できるように、第1閾値T1を設定してもよい。
【0042】
(閾値T算出の具体例)
コントローラ50による閾値Tの算出処理の具体例を、
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図1に示すコントローラ50は、運搬車速度検出部42(
図2参照)に検出された運搬車10の速度の大きさを取得する(
図6に示すステップS201)。コントローラ50は、アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)に検出されたアタッチメント25の姿勢、および下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)に検出された下部走行体21の姿勢を取得する(
図6に示すステップS202)。コントローラ50は、ステップS201およびステップS201(
図6参照)で取得した情報から、第1閾値T1および第2閾値T2の算出に必要な値を算出する。具体的には例えば、コントローラ50は、運搬車10が作業機械20に接触することなく作業機械20に運搬車10が接近できるような、基準位置20aから荷台後部13bまでの距離(第1閾値T1を算出するのに必要な距離)を算出する。また、コントローラ50は、アタッチメント25が荷台前部13dに届くような、基準位置20aから荷台前部13dまでの距離(第2閾値T2を算出するのに必要な距離)を算出する。そして、コントローラ50は、これらの値から、第1閾値T1および第2閾値T2を決定(算出)する(
図6に示すステップS204)。
【0043】
(第1の発明の効果)
図1に示す停止指示システム30による効果は、次の通りである。停止指示システム30は、作業機械20に近づく運搬車10を停止させるための指示を行うものである。停止指示システム30は、距離検出部41と、停止指示出力部47(
図2参照)と、コントローラ50と、を備える。距離検出部41は、作業機械20に対する運搬車10の距離を検出する。停止指示出力部47(
図2参照)は、運搬車10を停止させる指示である停止指示を出力する。
【0044】
[構成1-1]距離検出部41は、第1距離L1と、第2距離L2と、を検出する。第1距離L1は、作業機械20に関連付けられた特定の基準位置20aから、運搬車10の荷台13の運搬車後側U2の部分(荷台後部13b)までの距離である。
【0045】
[構成1-2]第2距離L2は、基準位置20aから荷台13の運搬車前側U1の部分(荷台前部13d)までの距離である。コントローラ50には、第1距離L1に関する閾値である第1閾値T1(
図3参照)と、第2距離L2に関する閾値である第2閾値T2(
図3参照)と、が設定される。
【0046】
[構成1-3]コントローラ50は、第1距離L1が第1閾値T1よりも大きい値から第1閾値T1以下になった場合、および、第2距離L2が第2閾値T2よりも大きい値から第2閾値T2以下になった場合、の少なくともいずれかの場合に、停止指示出力部47(
図2参照)に停止指示を出力させる。
【0047】
上記[構成1-1]および[構成1-3]では、作業機械20の基準位置20aから荷台後部13bまでの第1距離L1が、第1閾値T1よりも大きい値から第1閾値T1以下になった場合に、停止指示出力部47(
図2参照)が停止指示を出力する。よって、第1閾値T1が適切に設定された場合、作業機械20に対する荷台後部13bの距離が適切な距離になったタイミングで、停止指示を行うことができる。上記[構成1-2]および[構成1-3]では、作業機械20の基準位置20aから荷台前部13dまでの第2距離L2が、第2閾値T2よりも大きい値から第2閾値T2以下になった場合に、停止指示出力部47(
図2参照)が停止指示を出力する。よって、第2閾値T2が適切に設定された場合、作業機械20に対する荷台前部13dの距離が適切な距離になったタイミングで、停止指示を行うことができる。したがって、作業機械20に対する荷台後部13bまでの距離、および作業機械20に対する荷台前部13dまでの距離、の少なくともいずれかが適切な距離になったタイミングで、運搬車10を停止させるための停止指示を行うことができる。よって、作業機械20に対する運搬車10の位置が適切な位置になったタイミングで、運搬車10を停止させるための停止指示を行うことができる。
【0048】
(第2の発明の効果)
[構成2]第1距離L1が第1閾値T1と等しいときに荷台13の運搬車後側U2の部分(荷台後部13b)と作業機械20との間に間隔があけられるように、第1閾値T1が設定される。
【0049】
上記[構成2]により、荷台後部13bと作業機械20との間に間隔があくようなタイミング、すなわち荷台後部13bと作業機械20とが接触しないタイミングで、停止指示を行うことができる。
【0050】
(第3の発明の効果)
[構成3]第2距離L2が第2閾値T2と等しいときに荷台13の運搬車前側U1の部分(荷台前部13d)にアタッチメント25が届くことが可能となるように、第2閾値T2が設定される。
【0051】
上記[構成3]により、荷台前部13dにアタッチメント25が届くことが可能となるようなタイミングで、停止指示を行うことができる。
【0052】
(第4の発明の効果)
[構成4]停止指示システム30は、作業機械20に対する運搬車10の速度を検出する運搬車速度検出部42(
図2参照)を備える。コントローラ50は、運搬車速度検出部42に検出された速度の大きさに基づいて、第1閾値T1および第2閾値T2を変化させる(
図4参照)。
【0053】
上記[構成4]により、次の効果が得られる。停止指示出力部47(
図2参照)が停止指示を出力してから、運搬車10が実際に停止するまでに、タイムラグが生じる。このタイムラグは、停止指示出力部47(
図2参照)が停止指示を出力したときの運搬車10の速度の大きさによって変わる。そこで、上記[構成4]では、コントローラ50は、運搬車速度検出部42(
図2参照)に検出された速度の大きさに基づいて、第1閾値T1および第2閾値T2を変化させる(
図4参照)。よって、より適切なタイミングで、停止指示を行うことができる。
【0054】
(第5の発明の効果)
[構成5]停止指示システム30は、運搬車10に対する作業機械20の下部走行体21の姿勢を検出する下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)を備える。コントローラ50は、下部走行体21の寸法および形状の情報と、下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)に検出された姿勢と、に基づいて第1閾値T1を変化させる。
【0055】
上記[構成5]により、次の効果が得られる。下部走行体21の寸法および形状、ならびに、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢(例えば角度)によって、運搬車10が作業機械20に接触せずにどこまで接近できるかが変わる(
図5参照)。そのため、運搬車10が作業機械20にどこまで接近したときに、停止指示出力部47(
図2参照)に停止指示を出力させるべきかが変わる。そこで、上記[構成5]では、コントローラ50は、下部走行体21の寸法および形状の情報と、下部走行体姿勢検出部43(
図2参照)に検出された姿勢と、に基づいて第1閾値T1を変化させる。よって、より適切なタイミングで、停止指示を行うことができる。
【0056】
(第6の発明の効果)
[構成6]停止指示システム30は、作業機械20のアタッチメント25の姿勢を検出するアタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)を備える。コントローラ50は、アタッチメント25の寸法および形状の情報と、アタッチメント姿勢検出部44に検出された姿勢と、に基づいて第1閾値T1を変化させる。
【0057】
上記[構成6]により、次の効果が得られる。アタッチメント25の寸法および形状、ならびに、アタッチメント25の姿勢によって、運搬車10が作業機械20に接触せずにどこまで接近できるかが変わる。そのため、運搬車10が作業機械20にどこまで接近したときに、停止指示出力部47(
図2参照)に停止指示を出力させるべきかが変わる。そこで、上記[構成6]では、コントローラ50は、アタッチメント25の寸法および形状の情報と、アタッチメント姿勢検出部44(
図2参照)に検出された姿勢と、に基づいて第1閾値T1を変化させる。よって、より適切なタイミングで、停止指示を行うことができる。
【0058】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置、形状、接続などが変更されてもよい。例えば、
図3および
図6に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、互いに異なる複数の部分として説明したものが、一つの部分とされてもよい。例えば、一つの部分として説明したものが、互いに異なる複数の部分に分けて設けられてもよい。例えば、
図2に示すコントローラ50は、1つの装置でもよく、複数の装置でもよい。例えば、
図1に示す所定高さHなどの閾値や範囲などは、一定でもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じて自動的に変えられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 運搬車
13 荷台
13b 荷台後部(荷台の運搬車後側の部分)
13d 荷台前部(荷台の運搬車前側の部分)
20 作業機械
20a 基準位置
30 停止指示システム
41 距離検出部
42 運搬車速度検出部
43 下部走行体姿勢検出部
44 アタッチメント姿勢検出部
47 停止指示出力部
50 コントローラ
L1 第1距離
L2 第2距離
T1 第1閾値
T2 第2閾値
U1 運搬車前側
U2 運搬車後側