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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230926BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20230926BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20230926BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20230926BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20230926BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230926BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04694
H01M8/04313
H01M8/10 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020169717
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061654
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤松 一志
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-331877(JP,A)
【文献】特開2007-018816(JP,A)
【文献】特開2007-305563(JP,A)
【文献】特開2006-155997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックからのアノードガスの排出をするアノードガス排出系と、前記燃料電池スタックへのカソードガスの供給および前記燃料電池スタックからのカソードガスの排出をするカソードガス給排系と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、
前記複数の燃料電池ユニットの前記アノードガス排出系および前記カソードガス給排系から排出されたガスを混合して排出する混合ガス排出系と、
前記複数の燃料電池ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記燃料電池システムの始動時において、前記各カソードガス給排系を制御して、一部の前記カソードガス給排系に他のカソードガス給排系と異なるタイミングで前記燃料電池スタックにカソードガスを供給させ、前記燃料電池スタック内から気体を排出させ、前記各燃料電池ユニットから排出されるガスが前記混合ガス排出系にて合流するタイミングをずらす、燃料電池システム。
【請求項2】
燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムは、
燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックからのアノードガスの排出をするアノードガス排出系と、前記燃料電池スタックへのカソードガスの供給および前記燃料電池スタックからのカソードガスの排出をするカソードガス給排系と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、
前記複数の燃料電池ユニットの前記アノードガス排出系および前記カソードガス給排系から排出されたガスを混合して排出する混合ガス排出系と、を備え、
前記燃料電池システムの始動時において、前記各カソードガス給排系を制御して、一部の前記カソードガス給排系に他のカソードガス給排系と異なるタイミングで前記燃料電池スタックにカソードガスを供給させ、前記燃料電池スタック内から気体を排出させ、前記各燃料電池ユニットから排出されるガスが前記混合ガス排出系にて合流するタイミングをずらす、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにおいて、複数の燃料電池スタックを備えるものが知られている。特許文献1には、複数の燃料電池スタックから排出されたガスを統合して排出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-207802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池スタックから排出されるガスには未反応の水素ガスが含まれる場合がある。未反応の水素ガスを希釈するため、燃料電池スタックのカソードオフガスとアノードオフガスは混合されて排出される。燃料電池システムの発電時において、アノードオフガスは間欠的に排出され、カソードオフガスは常時排出される。そのため、複数の燃料電池スタックから排出されるガスを合流させることで、複数の燃料電池スタックからのカソードオフガスにより、各燃料電池スタックから特定のタイミングで排出されるアノードオフガス中の未反応水素ガスをより希釈できる。しかし、複数の燃料電池スタックからガスが排出されるタイミングが重なる場合、統合して排出されるガスの水素濃度が高くなるおそれがある。そのため、排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。燃料電池システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックからのアノードガスの排出をするアノードガス排出系と、前記燃料電池スタックへのカソードガスの供給および前記燃料電池スタックからのカソードガスの排出をするカソードガス給排系と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、前記複数の燃料電池ユニットの前記アノードガス排出系および前記カソードガス給排系から排出されたガスを混合して排出する混合ガス排出系と、前記複数の燃料電池ユニットを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池システムの始動時において、前記各カソードガス給排系を制御して、一部の前記カソードガス給排系に他のカソードガス給排系と異なるタイミングで前記燃料電池スタックにカソードガスを供給させ、前記燃料電池スタック内から気体を排出させ、前記各燃料電池ユニットから排出されるガスが前記混合ガス排出系にて合流するタイミングをずらす。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックからのアノードガスの排出をするアノードガス排出系と、前記燃料電池スタックへのカソードガスの供給および前記燃料電池スタックからのカソードガスの排出をするカソードガス給排系と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、前記複数の燃料電池ユニットの前記アノードガス排出系および前記カソードガス給排系から排出されたガスを混合して排出する混合ガス排出系と、前記複数の燃料電池ユニットを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記各燃料電池ユニットの前記アノードガス排出系と前記カソードガス給排系とのうち少なくとも一方を制御し、前記各燃料電池ユニットから排出されるガスが前記混合ガス排出系にて合流するタイミングをずらす。
このような態様とすれば、タイミングが重なることによって混合ガス排出系から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0007】
(2)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記複数の燃料電池ユニットの前記アノードガス排出系のそれぞれは、前記燃料電池スタックから排出されたガスの排気を行う排気排水弁と、前記排気排水弁と前記混合ガス排出系とを接続する排気管を有し、前記複数の燃料電池ユニットの前記排気管のうち一部の排気管が他の排気管の容積と異なる容積を有してもよい。
このような態様とすれば、混合ガス排出系から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。そのため、容易な制御で、タイミングが重なることによって混合ガス排出系から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0008】
(3)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記各アノードガス排出系が有する前記燃料電池スタックから排出されたガスの排気を行う排気排水弁を制御して、一部の前記排気排水弁を他の排気排水弁と異なるタイミングで開いて、前記アノードガス排出系から前記混合ガス排出系に気体を排出させてもよい。
このような態様とすれば、排気管の容積が同じであっても混合ガス排出系にてガスが合流するタイミングをずらすことができる。そのため、混合ガス排出系から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0009】
(4)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池システムの始動時において、前記各カソードガス給排系を制御して、一部の前記カソードガス給排系に他のカソードガス給排系と異なるタイミングで前記燃料電池スタックにカソードガスを供給させ、前記燃料電池スタック内から気体を排出させてもよい。
始動時にカソードガス給排系から排出されるガスには、燃料電池システム停止時に、燃料電池スタックにおいてアノードからカソードに移動した水素が含まれる。始動時にカソードガス給排系を制御して、各燃料電池スタックから気体を排出させるタイミングをずらすため、排気管の容積が同じであっても混合ガス排出系にてガスが合流するタイミングをずらすことができる。そのため、混合ガス排出系から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0010】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システムを備える発電装置、燃料電池システムを備える車両、燃料電池システムの制御方法を実行する制御装置等の態様で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】燃料電池システムの概略構成を示す図である。
図2】ガスを排出するタイミングと水素濃度との関係を示す参考図である。
図3】ガスを排出するタイミングと水素濃度との関係を示す図である。
図4】排出処理の手順の一例を表すフローチャートである。
図5】第2実施形態におけるガスを排出するタイミングと水素濃度との関係を示す図である。
図6】タイミングチャートの一例を示す説明図である。
図7】他の実施形態における燃料電池システムの説明図である。
図8】他の実施形態における排出処理の手順の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の一実施形態における燃料電池システム500の概略構成を示す図である。燃料電池システム500は、第1燃料電池ユニット100Aと第2燃料電池ユニット100Bと混合ガス排出系110と制御部120とを備える。本実施形態において、燃料電池システム500は、定置設置型であるが、これに限らず、燃料電池車両に搭載されてもよい。
【0013】
第1燃料電池ユニット100Aの構成と第2燃料電池ユニット100Bの構成とは同一である。従って、以下においては、第1燃料電池ユニット100Aの構成について主に説明し、第2燃料電池ユニット100Bの構成については適宜説明を省略する。図1に示すように、第1燃料電池ユニット100Aの構成要素と第2燃料電池ユニット100Bの構成要素には各構成要素の符号の「A」を「B」に置き換えた符号を付している。なお、第1燃料電池ユニット100Aと第2燃料電池ユニット100Bの各構成要素を区別する際には、例えば、「第1燃料電池スタック10A」、「第2燃料電池スタック10B」のように、接頭語として「第1」、「第2」を付す場合もある。
【0014】
第1燃料電池ユニット100Aは、燃料電池スタック10Aと、ユニット制御部20Aと、カソードガス給排系30Aと、アノードガス給排系50Aと、を備える。
【0015】
燃料電池スタック10Aは、反応ガスとしてアノードガス、例えば、水素ガスとカソードガス、例えば、空気との供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。燃料電池スタック10Aは、複数の単セル11Aが積層されて構成されている。各単セル11Aは、電解質膜(図示せず)の両面にアノード(図示せず)とカソード(図示せず)とを配置した膜電極接合体(図示せず)と、膜電極接合体を挟持する1組のセパレータ(図示せず)とを有する。
【0016】
ユニット制御部20Aは、CPUとメモリと、後述する各部品が接続されるインタフェース回路とを備えたコンピュータとして構成されている。ユニット制御部20Aは、制御部120の指示に応じて、燃料電池スタック10A内の各機器の起動および停止を制御するための信号を出力する。ユニット制御部20Aは、メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、燃料電池システム500による発電の制御を行うと共に、カソードガス給排系30Aやアノードガス給排系50Aが備えるアノードガス排出系60Aから混合ガス排出系110にガスを排出させる制御を行う。なお、ユニット制御部20Aにおいては、これらの制御の一部又は全部をハードウェア回路として実現されてもよい。
【0017】
カソードガス給排系30Aは、燃料電池スタック10Aへのカソードガスの供給および燃料電池スタック10Aからのカソードガスの排出を行う。カソードガス給排系30Aは、カソードガス配管31Aと、エアフローメータ32Aと、コンプレッサ33Aと、入口弁34Aと、バイパス配管35Aと、バイパス弁36Aと、カソードオフガス配管41Aと、カソードガスレギュレータ42Aと、を備える。カソードガス配管31Aは、燃料電池スタック10Aに接続され、外部から取り込んだ空気を燃料電池スタック10Aに供給する。
【0018】
エアフローメータ32Aは、カソードガス配管31Aに設けられており、取り込んだ空気の供給量を測定する。コンプレッサ33Aは、エアフローメータ32Aと入口弁34Aとの間に設けられている。コンプレッサ33Aは、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて、外部から取り入れた空気を圧縮し、カソードガスとして燃料電池スタック10Aに供給する。コンプレッサ33Aは、電力を消費して駆動する。入口弁34Aは、コンプレッサ33Aと燃料電池スタック10Aとの間に設けられている。入口弁34Aは、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて開閉する電磁弁や電動弁によって構成される。入口弁34Aは、ユニット制御部20Aの制御により開度が調整されることで、燃料電池スタック10Aに供給されるカソードガスの流量を調整する。
【0019】
バイパス配管35Aは、燃料電池スタック10Aを経由することなく、カソードガス配管31Aとカソードオフガス配管41Aとを接続する。バイパス配管35Aには、バイパス弁36Aが設けられている。バイパス弁36Aは、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて開閉する電磁弁や電動弁によって構成される。バイパス弁36Aが開かれている場合には、カソードガス配管31Aを流れる空気の一部は、バイパス配管35Aを通じて、カソードオフガス配管41Aへと流入する。
【0020】
カソードオフガス配管41Aは、燃料電池スタック10Aから排出されたカソードオフガスおよびバイパス配管35Aから流出したカソードガスを混合ガス排出系110へと排出する。カソードオフガス配管41Aにはカソードガスレギュレータ42Aが設けられている。カソードガスレギュレータ42Aは、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて、燃料電池スタック10Aのカソードガス出口の圧力を調整する。
【0021】
アノードガス給排系50Aは、燃料電池スタック10Aへのアノードガスの供給および燃料電池スタック10Aからのアノードガスの排出を行う。アノードガス給排系50Aは、アノードガス配管51Aと、アノードガスタンク52Aと、主止弁53Aと、アノードガスレギュレータ54Aと、インジェクタ55Aと、アノードオフガス配管61Aと、気液分離器62Aと、排気排水弁63Aと、循環配管64Aと、アノードガスポンプ65Aと、を備える。本実施形態において、アノードオフガス配管61Aと気液分離器62Aと排気排水弁63Aとで構成される流路のことを、アノードガス排出系60Aともいう。アノードガス排出系60Aは、燃料電池スタック10Aからアノードガスの排出を行う。また、以下では、アノードガス配管51Aのインジェクタ55Aよりも下流側の部分と、燃料電池スタック10A内のアノードガスの流路と、アノードオフガス配管61Aと、気液分離器62Aと、循環配管64Aと、アノードガスポンプ65Aと、で構成される流路のことを、循環流路66Aともいう。循環流路66Aは、燃料電池スタック10Aのアノードオフガスを燃料電池スタック10Aに循環させるための流路である。
【0022】
アノードガスタンク52Aは、アノードガス配管51Aを介して燃料電池スタック10Aのアノードガス入口と接続されており、アノードガスを燃料電池スタック10Aに供給する。主止弁53A、アノードガスレギュレータ54Aおよびインジェクタ55Aは、アノードガス配管51Aに、この順序で上流側、つまりアノードガスタンク52Aに近い側から設けられている。
【0023】
主止弁53Aは、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて開閉する電磁弁や電動弁によって構成される。燃料電池システム500の停止時には主止弁53Aは閉じられる。アノードガスレギュレータ54Aは、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて、インジェクタ55Aの上流側におけるアノードガス圧力を調整する。インジェクタ55Aは、ユニット制御部20Aによって設定された駆動周期や開弁時間に応じて、弁体が電磁的に駆動する電磁駆動式の開閉弁である。ユニット制御部20Aは、インジェクタ55Aの駆動周期や開弁時間を制御することによって、燃料電池スタック10Aに供給されるアノードガスの供給量を制御する。
【0024】
アノードオフガス配管61Aは、燃料電池スタック10Aのアノードガス出口と気液分離器62Aとを接続する配管である。アノードオフガス配管61Aは、発電反応に用いられることのなかった水素ガスや窒素ガスなどを含むアノードオフガスを気液分離器62Aへと誘導する。
【0025】
気液分離器62Aは、循環流路66Aのアノードオフガス配管61Aと循環配管64Aとの間に接続されている。気液分離器62Aは、燃料電池スタック10Aから排出されるガスから、ガスに含まれる液水のうちの少なくとも一部を分離する。より具体的には、気液分離器62Aは、循環流路66A内のアノードオフガスから不純物としての水を分離して貯水する。
【0026】
排気排水弁63Aは、気液分離器62Aの下部に設けられている。排気排水弁63Aは、燃料電池スタック10Aから排出されたガスの排気を行う。より具体的には、排気排水弁63Aは、気液分離器62Aに貯水された水の排水と、気液分離器62A内の不要なガス、主に窒素ガスの排気と、を行う。燃料電池システム500の運転中は、通常、排気排水弁63Aは閉じられており、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて開閉する。本実施形態では、排気排水弁63Aは、カソードオフガス配管41Aに接続されており、排気排水弁63Aによって排出された水および不要なガスは、カソードオフガス配管41Aを通じて混合ガス排出系110へ排出される。排気排水弁63Aの下流から混合ガス排出系110までの配管を排気管70Aともいう。本実施形態において、第1排気管70Aと第2排気管70Bとは同じ容積を有する。
【0027】
循環配管64Aは、アノードガス配管51Aのうちのインジェクタ55Aより下流の部分に接続されている。循環配管64Aには、ユニット制御部20Aからの制御信号に応じて駆動されるアノードガスポンプ65Aが設けられている。気液分離器62Aによって水が分離されたアノードオフガスが、アノードガスポンプ65Aによって、アノードガス配管51Aへと送り出される。この燃料電池システム500では、水素を含むアノードオフガスを循環させて、再び燃料電池スタック10Aに供給することにより、アノードガスの利用効率を向上させている。
【0028】
混合ガス排出系110は、カソードガス給排系30A、30Bおよびアノードガス排出系60A、60Bから排出されたガスを混合して排出する。より具体的には、混合ガス排出系110は、燃料電池ユニット100A、100Bが収納されている筐体(図示しない)の外部に連通しており、燃料電池スタック10A、10Bからカソードオフガス配管41A、41Bを介して排出されたガスをまとめて筐体の外部の大気に排出する。
【0029】
制御部120は、ユニット制御部20A、20Bに指示を与えることで、第1燃料電池ユニット100A、100Bをそれぞれ制御する。より具体的には、制御部120は、ユニット制御部20A、20Bを介して、アノードガス排出系60A、60Bとカソードガス給排系30A、30Bとを制御し、燃料電池ユニット100A、100Bから排出されるガスが混合ガス排出系110にて合流するタイミングをずらす。制御部120は、燃料電池ユニット100A、100Bから排出されるガス流量や水素濃度、排気管70A、70Bの容積を考慮して制御を行う。これにより、制御部120は、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が予め定めた値より大きくなることを抑制できる。
【0030】
図2は、燃料電池ユニット100A、100Bがガスを排出するタイミングと水素濃度との関係を示す参考図である。上段のグラフG1aは、第1燃料電池ユニット100Aから排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG1aは、第1排気管70Aと混合ガス排出系110とが接続される箇所の直前の第1排気管70Aにおける位置P1(図1)におけるガスの水素濃度を示している。また、上段のグラフG2aは、第2燃料電池ユニット100Bから排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG2aは、第2排気管70Bと混合ガス排出系110とが接続される箇所の直前の第2排気管70Bにおける位置P2(図1)におけるガスの水素濃度を示している。なお、説明の便宜上、グラフG2aを下方向にずらして記載しているが、実際は、グラフG1aと重なっている。下段のグラフG3aは、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG3aは、外部に排出される直前の混合ガス排出系110における位置P3(図1)におけるガスの水素濃度を示している。
【0031】
図2に示すように、第1燃料電池ユニット100Aが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミングと、第2燃料電池ユニット100Bが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミングとは、同じタイミングである。そのため、各燃料電池ユニット100A、100Bから排出されるガスの位置P1、P2における水素濃度が最も高くなるタイミングも同じタイミングt1となる。燃料電池ユニット100A、100Bが排出するガスの水素濃度のピークは第1濃度Dh1である。第1濃度Dh1は、例えば、8%である。そのため、混合ガス排出系110のガスの水素濃度は、第1濃度Dh1まで上昇する。
【0032】
図3は、本実施形態における、燃料電池ユニット100A、100Bがガスを排出するタイミングと水素濃度との関係を示す図である。上段のグラフG1bは、第1燃料電池ユニット100Aから排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG1bは、第1排気管70Aと混合ガス排出系110とが接続される箇所の直前の第1排気管70Aにおける位置P1におけるガスの水素濃度を示している。また、上段のグラフG2bは、第2燃料電池ユニット100Bから排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG2bは、第2排気管70Bと混合ガス排出系110とが接続される箇所の直前の第2排気管70Bにおける位置P2におけるガスの水素濃度を示している。なお、説明の便宜上、グラフG2bを下方向にずらして記載しているが、実際は、グラフG1bと一部が重なっている。下段のグラフG3bは、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG3bは、外部に排出される直前の混合ガス排出系110における位置P3におけるガスの水素濃度を示している。
【0033】
図3に示すように、第1燃料電池ユニット100Aから排出されるガスの位置P1における水素濃度が最も高くなるタイミングはタイミングt1である。第2燃料電池ユニット100Bは、第1燃料電池ユニット100Aよりも遅いタイミングで混合ガス排出系110にガスを排出する。そのため、第2燃料電池ユニット100Bから排出されるガスの位置P2における水素濃度が最も高くなるタイミングは、タイミングt1よりも遅いタイミングt2である。すなわち、タイミングt1において、第1燃料電池ユニット100Aから混合ガス排出系110に排出される第1濃度Dh1のガスは、第2燃料電池ユニット100Bから排出される水素濃度が第1濃度Dh1未満のガスによって希釈される。また、タイミングt2において、第2燃料電池ユニット100Bから混合ガス排出系110に排出される第1濃度Dh1のガスは、第1燃料電池ユニット100Aから排出される水素濃度が第1濃度Dh1未満のガスによって希釈される。従って、混合ガス排出系110におけるガスの水素濃度のピークは、第1濃度Dh1よりも低い第2濃度Dh2である。第2濃度Dh2は、例えば、4%である。
【0034】
図4は、本実施形態における、排出処理の手順の一例を表すフローチャートである。排出処理は、各燃料電池ユニット100A、100Bから混合ガス排出系110にガスを排出するために、カソードガス給排系30A、30Bおよびアノードガス排出系60A、60Bのうち少なくとも一方を制御する処理である。この処理は、燃料電池システム500の動作中、制御部120から排出処理の開始の指示を受信した各ユニット制御部20A、20Bにより実行される処理である。排出処理の開始の指示は、例えば、燃料電池システム500の始動直後に、燃料電池システム500の停止中に燃料電池スタック10A内のアノード側からカソード側に透過した水素を排出するために行われる。以下では、第1ユニット制御部20Aを例として説明する。
【0035】
ステップS100において、ユニット制御部20Aは、排気処理を開始する。例えば、ユニット制御部20Aは、エアフローメータ32Aやコンプレッサ33A、入口弁34Aを制御して、燃料電池スタック10Aにカソードガスを送出する。これにより、燃料電池システム500の停止中に燃料電池スタック10A内のアノード側からカソード側に透過した水素を燃料電池スタック10A外に排出することができる。また、ユニット制御部20Aは、主止弁53Aやアノードガスレギュレータ54A、インジェクタ55A、アノードガスポンプ65Aを制御して、燃料電池スタック10Aにアノードガスを送出する。
【0036】
ステップS110において、ユニット制御部20Aは、制御部120に排気処理を開始したことを送信する。
【0037】
ステップS120において、ユニット制御部20Aは、ステップS110の処理が完了してからの待機時間が予め定められた閾値時間よりも長いか否かを判定する。すなわち、閾値時間よりも長い時間待機したか否かを判定する。閾値時間は、燃料電池ユニットごとに予め定められた時間であり、本実施形態において、第1燃料電池ユニット100Aの閾値時間は、第2燃料電池ユニット100Bの閾値時間よりも短い。第1燃料電池ユニット100Aの閾値時間と第2燃料電池ユニット100Bの閾値時間との差は、例えば、一つの燃料電池ユニットからガスを排出した場合の水素濃度の時間変化から基準値以上の水素濃度になる時間を予めシミュレーションや実験を行うことにより定めることができる。待機時間は、制御部120によって、各ユニット制御部20A、20Bに指示される。以下、この指示を「バルブ制御指示」ともいう。本実施形態において、制御部120は、ステップS110においてユニット制御部20Aが送信した排気処理を開始の信号の受信を契機に、バルブ制御指示を行う。制御部120は、排出処理の開始の指示と共にバルブ制御指示を行ってもよい。待機時間が閾値時間よりも長い場合、ユニット制御部20Aは、ステップS130の処理に進む。一方、待機時間が閾値時間以下の場合、ユニット制御部20Aは、ステップS120の処理に戻る。つまり、閾値時間経過するまでステップS120を繰り返す。
【0038】
ステップS130において、ユニット制御部20Aは、バルブ制御を行う。例えば、ユニット制御部20Aは、バイパス弁36Aやカソードガスレギュレータ42A、排気排水弁63Aを開く制御を行う。これにより、ガスがカソードオフガス配管41Aに排出される。すなわち、カソードガス給排系30Aやアノードガス排出系60Aから混合ガス排出系110にガスが排出される。
【0039】
以上で説明した本実施形態の燃料電池システム500によれば、制御部120によって、混合ガス排出系110にて燃料電池ユニット100A、100Bから排出されるガスが合流するタイミングをずらすことができる。そのため、タイミングが重なることによって混合ガス排出系から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0040】
また、燃料電池システム500は、混合ガス排出系110によって、燃料電池ユニット100A、第2燃料電池ユニット100Bから排出されるガスを混合して排出している。そのため、第1燃料電池ユニット100Aと第2燃料電池ユニット100Bとからそれぞれ個別にガスを排出する場合に比べて、配管を減らすことができる。また、例えば、第1アノードガス排出系60Aから排出されるガスの水素濃度が、カソードガス給排系30Aから排出されるガスだけでなく第2カソードガス給排系30Bから排出されるガスによっても希釈されるため、第1カソードガス給排系30Aに供給するカソードガス流量を増やすことなく希釈できる。
【0041】
B.第2実施形態:
第2実施形態における燃料電池システムの構成は、第1排気管70Aの容積と第2排気管70Bの容積とは異なる点が第1実施形態における燃料電池システムの構成と異なり、他の構成は第1実施形態と同じであるため、燃料電池システムの構成の説明は省略する。
【0042】
図5は、本実施形態における、燃料電池ユニット100A、100Bがガスを排出するタイミングと水素濃度との関係を示す図である。この図は、図3にグラフG11bとグラフG22bとを新たに示した図である。上段のグラフG11bは、第1アノードガス排出系60Aから第1排気管70Aに排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG11bは、第1アノードガス排出系60Aと第1排気管70Aとが接続される箇所の直後の第1排気管70Aにおける位置P11(図1)におけるガスの水素濃度を示している。また、上段のグラフG22bは、第2アノードガス排出系60Bから第2排気管70Bに排出されるガスの水素濃度を示している。より具体的には、グラフG22bは、第2アノードガス排出系60Bと第2排気管70Bとが接続される箇所の直後の第2排気管70Bにおける位置P22(図1)におけるガスの水素濃度を示している。なお、説明の便宜上、グラフG22bを下方向にずらして記載しているが、実際は、グラフG11bと一部が重なっている。
【0043】
第1排気管70Aの容積と第2排気管70Bの容積とが等しい場合、第1アノードガス排出系60Aから第1排気管70Aにガスが排出されるタイミングと第2アノードガス排出系60Bから第2排気管70Bにガスが排出されるタイミングが同じであると、図2に示したように、第1燃料電池ユニット100Aが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミング、つまり、第1排気管70Aが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミングと、第2燃料電池ユニット100Bが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミング、つまり、第2排気管70Bが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミングとは、同じタイミングとなる。
【0044】
本実施形態において、第2排気管70Bの容積は、第1排気管70Aの容積よりも大きい。より具体的には、第1排気管70Aの直径と第2排気管70Bの直径とは同じであり、第2排気管70Bのガスの流通方向における距離は、第1排気管70Aのガスの流通方向における距離よりも長い。そのため、図5の上段に示すように、第1アノードガス排出系60Aから第1排気管70Aにガスが排出されるタイミングと第2アノードガス排出系60Bから第2排気管70Bにガスが排出されるタイミングが同じタイミングt0であっても、図5の中段に示すように、第1燃料電池ユニット100Aが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミングは、第2燃料電池ユニット100Bが混合ガス排出系110にガスを排出するタイミングよりも遅くなる。従って、第2燃料電池ユニット100Bから排出されるガスの位置P2における水素濃度が最も高くなるタイミングは、第1燃料電池ユニット100Aから排出されるガスの位置P1における水素濃度が最も高くなるタイミングはタイミングt1よりも遅いタイミングt2である。
【0045】
以上で説明した第2実施形態の燃料電池システム500によれば、排気管の容積差は、カソードガス給排系30A、30Bおよびアノードガス排出系60A、60Bからガスが排出されるタイミングが同時であっても、混合ガス排出系110でガスが合流するタイミングが同時にならないような容積差に設計されている。すなわち、排気管の容積差によって、カソードガス給排系30A、30Bおよびアノードガス排出系60A、60Bからガスが排出されるタイミングが同時であっても、混合ガス排出系110でガスが合流するタイミングをずらすことができる。そのため、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。従って、容易な制御で、タイミングが重なることによって混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0046】
C.第3実施形態:
第3実施形態における排出処理は、燃料電池システム500の発電中に行われる処理である。第3実施形態における燃料電池システムの構成は、第1実施形態における燃料電池システムの構成と同一であるため、燃料電池システムの構成の説明は省略する。
【0047】
第3実施形態において、制御部120は、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が予め定められた値より小さくなるように、第1排気排水弁63Aと第2排気排水弁63Bとを異なるタイミングで開くように制御する。例えば、制御部120は、各燃料電池スタック10A、10Bの発電量から求められるアノードガスとカソードガスとの反応比や、各アノードオフガス配管61A、61Bに設けられた圧力計が計測した気圧の減少を用いて、各排気排水弁63A、63Bから排出される水素量を求める。制御部120は、求めた水素量やカソードガス給排系30A、第2カソードガス給排系30Bから排出されるカソードガス流量等を用いて、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度を予測でき、その予測に基づいて第1排気排水弁63Aと第2排気排水弁63Bとを開くタイミングを制御する。
【0048】
制御部120は、例えば、バルブ制御指示として、各燃料電池ユニット100A、100Bから排出されるガスの水素濃度がピークから通常の濃度に下がるまでにかかる時間間隔の差を付けて、各ユニット制御部20A、20Bに待機時間(図4、ステップS120)を送信する。
【0049】
以上で説明した本実施形態の燃料電池システム500によれば、制御部120は、各排気排水弁63A、63Bを制御して、異なるタイミングで開いて、アノードガス排出系60A、60Bから混合ガス排出系110に気体を排出させる。第1排気管70Aと第2排気管70Bとの容積が同じであっても混合ガス排出系110にてガスが合流するタイミングをずらすことができる。そのため、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0050】
D.第4実施形態:
第4実施形態における排出処理は、燃料電池システム500の始動後に行われる処理である。第4実施形態における燃料電池システムの構成は、第1実施形態における燃料電池システムの構成と同一であるため、燃料電池システムの構成の説明は省略する。
【0051】
第4実施形態において、混合ガス排出系110は、第1カソードガス給排系30Aと第2カソードガス給排系30Bとが異なるタイミングで混合ガス排出系110に気体を排出するよう制御する。より具体的には、混合ガス排出系110は、第1入口弁34Aと第2入口弁34Bとを異なるタイミングで開くように制御して、第1カソードガス給排系30Aと第2カソードガス給排系30Bとが異なるタイミングで混合ガス排出系110に気体を排出するよう制御する。これにより、燃料電池システム500の停止時に、燃料電池スタック10A、10Bにおいてアノードからカソードに移動した水素が含まれるカソードガス給排系30A、30Bから排出されるガスが混合ガス排出系110にて合流するタイミングをずらすことができる。
【0052】
図6は、起動要求信号のON/OFFと、各入口弁34A、34Bの開指令、各燃料電池ユニット100A、100Bにおけるカソードガス供給流量を示すタイミングチャートの一例を示す説明図である。図6において、起動要求信号についての「ON」は、起動要求がされたことを意味し、「OFF」は起動要求がされていないことを意味する。図6における水素濃度は、第1排気管70Aと混合ガス排出系110とが接続される箇所の直前の第1排気管70Aにおけるガスの水素濃度と、第2排気管70Bと混合ガス排出系110とが接続される箇所の直前の第2排気管70Bにおけるガスの水素濃度を示している。なお、排気排水弁63A、63Bが閉じている場合を例として説明する。すなわち、アノードガス排出系60A、60Bからは混合ガス排出系110にガスが排出されない場合を例として説明する。
【0053】
図6に示すように、第1燃料電池ユニット100Aは、起動要求信号がONになった後、タイミングt4で入口弁34Aを開く指令を受け、第1入口弁34Aを開く。そのため、第1燃料電池ユニット100Aにおけるカソードガス供給流量はタイミングt4から上昇し、流量Q1となる。第1燃料電池ユニット100Aにおける排出ガスの水素濃度はタイミングt4から上昇し、タイミングt4よりも遅いタイミングt5で最も高い濃度Dh3に到達し、下降する。第2燃料電池ユニット100Bはタイミングt4よりも遅いタイミングt6で第2入口弁34Bを開く指令を受け、第2入口弁34Bを開く。タイミングt6は、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が予め定められた値より小さくなるように、予めシミュレーションや実験を行うことにより定めることができる。そのため、第2燃料電池ユニット100Bにおけるカソードガス供給流量はタイミングt6から上昇、流量Q1となる。第2燃料電池ユニット100Bにおける排出ガスの水素濃度はタイミングt6から上昇し、タイミングt6よりも遅いタイミングt7で最も高い濃度Dh3に到達し、下降する。そのため、混合ガス排出系110において、カソードガス給排系30Aから排出された濃度Dh3のガスと第2カソードガス給排系30Bから排出された濃度Dh3のガスとが合流するタイミングをずらすことができる。
【0054】
以上で説明した本実施形態の燃料電池システム500によれば、制御部120は、燃料電池システム500の始動時において、各カソードガス給排系30A、30Bを制御して、第1カソードガス給排系30Aに第2カソードガス給排系30Bと異なるタイミングで燃料電池スタック10Aにカソードガスを供給させ、燃料電池スタック10A内から気体を排出させる。始動時にカソードガス給排系30A、30Bから排出されるガスには、燃料電池システム500の停止時に、燃料電池スタック10A、10Bにおいてアノードからカソードに移動した水素が含まれる。始動時にカソードガス給排系30Aを制御して、各燃料電池スタック10A、10Bから気体を排出させるタイミングをずらすため、第1排気管70Aと第2排気管70Bとの容積が同じであっても混合ガス排出系110にてガスが合流するタイミングをずらすことができる。そのため、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度が高くなることを抑制できる。
【0055】
E.他の実施形態:
(E1)図7は、他の実施形態における燃料電池システム501の説明図である。上述した実施形態において、燃料電池ユニット100Aは、カソードガス給排系30Aから排出されるガスと、アノードガス排出系60Aから排出されるガスとがカソードオフガス配管41Aで混合されて排出される。この代わりに、図7に示すように、カソードガス給排系30Aから排出されるガスとアノードガス排出系60Aから排出されるガスとが混合されずに、直接、混合ガス排出系111に排出されてもよい。
【0056】
(E2)上述した実施形態において、燃料電池システム500は、燃料電池ユニットを2つ備えている。これに限らず、燃料電池システム500は、燃料電池ユニットを複数備えていればよく、3つ以上の燃料電池ユニットを備えていてもよい。この場合、制御部120は、一部の燃料電池ユニットから排出されるガスが、他の燃料電池ユニットから排出されるガスと異なるタイミングで混合ガス排出系110にて合流するように制御を行う。例えば、燃料電池システム500が3つの燃料電池ユニットを備える場合、1つの燃料電池ユニットから排出されるガスが、他の2つの燃料電池ユニットから排出されるガスと異なるタイミングで混合ガス排出系110にて合流すればよく、他の2つの燃料電池ユニットから排出されるガスは、それぞれ同じタイミングで混合ガス排出系110にて合流してもよい。
【0057】
(E3)上述した実施形態において、制御部120は、ユニット制御部20A、20Bを介して、アノードガス排出系60A、60Bとカソードガス給排系30A、30Bとを制御している。この代わりに、制御部120は、ユニット制御部20A、20Bを介して、アノードガス排出系60A、60Bとカソードガス給排系30A、30Bとのうちどちらか一方のみを制御少なくとも一方を制御し、燃料電池スタック10A、10Bから排出されるガスが混合ガス排出系110にて合流するタイミングをずらす。
のうち少なくとも一方を制御し、燃料電池スタック10A、10Bから排出されるガスが混合ガス排出系110にて合流するタイミングをずらす。
【0058】
(E4)上述した実施形態において、制御部120は、更に、混合ガス排出系110に接続され、水素を含むガスを排出するバルブを制御してもよい。例えば、制御部120は、各燃料電池ユニット100A、100Bが備える、燃料電池スタック10Aの冷却システムにおいて、冷却システムが故障した場合にリザーブタンクから排出される水素を含むガスをカソードオフガス配管41Aに流出する配管に設けられた調節弁を制御できる。また、制御部120は、各燃料電池スタック10A、10Bを収納する筐体から排出される水素を含むガスをカソードオフガス配管41Aに流出する配管に設けられた調節弁を制御できる。
【0059】
(E5)上述した実施形態において、制御部120は、各ユニット制御部20A、20Bから送信された排気処理の開始の信号の受信を契機として、各ユニット制御部20A、20Bにそれぞれの待機時間を指示するバルブ制御指示を行っている。この代わりに、制御部120は、第1ユニット制御部20Aがバルブ制御(図4、ステップS130)を行ったことを契機として、第2ユニット制御部20Bにバルブ制御指示を行ってもよい。制御部120は、例えば、第1燃料電池ユニット100Aが排出したガスと第2燃料電池ユニット100Bが排出したガスとが合流して、混合ガス排出系110が排出するガスの水素濃度が予め定められた値より小さくなるように、第2ユニット制御部20Bの待機時間を定める。
【0060】
(E6)図8は他の実施形態における排出処理の手順の一例を表すフローチャートである。上述した第1実施形態において、ユニット制御部20Aは、図4のステップS120において、待機時間が予め定められた閾値時間よりも長いか否かを判定している。図8に示すように、ユニット制御部20Aは、ステップS120の代わりにステップS125の処理を行ってもよい。ユニット制御部20Aは、ステップS125において、バルブ制御指示を受信したか否かを判定する。バルブ制御指示を受信した場合、ステップS130の処理に進み、バルブ制御を行う。一方、バルブ制御指示を受信していない場合ステップS125の処理に戻る。つまり、バルブ制御指示を受信するまでステップS125を繰り返す。
【0061】
すなわち、上述した第1実施形態において、制御部120は、第1ユニット制御部20Aおよび第2ユニット制御部20Bに一斉にバルブ制御指示を行い、各ユニット制御部20A、第2ユニット制御部20Bがそれぞれタイミングをずらしてバルブ制御を実行する。この代わりに、制御部120は、第1ユニット制御部20Aと第2ユニット制御部20Bとに、それぞれ異なるタイミングでバルブ制御指示を行うことで、異なるタイミングでバルブ制御を実行させてもよい。タイミングは、例えば、各燃料電池ユニット100Aにおける燃料電池スタック10Aのカソードの容積とその下流の配管の容積、燃料電池システム500の始動時のエア流量から、核燃料電池ユニットの排出するガスの水素濃度が最も高くなるタイミングが排気管のどの位置にあるかを予めシミュレーションや実験を行うことにより定めることができる。これにより、第1燃料電池ユニット100Aから排出されるガスの水素濃度が最も高くなるタイミングと、第2燃料電池ユニット100Bから排出されるガスの水素濃度が最も高くなるタイミングとをずらすことができる。
【0062】
(E7)上述した第3実施形態において、制御部120は、各燃料電池スタック10A、10Bの発電量等を用いて、混合ガス排出系110から排出されるガスの水素濃度を算出している。この代わりに、燃料電池システム500は、水素濃度センサを各配管に備えてもよく、制御部120は、これらの水素濃度センサが計測した水素濃度を取得してもよい。
【0063】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10A、10B…燃料電池スタック、11A、11B…単セル、20A、20B…ユニット制御部、30A、30B…カソードガス給排系、31A、31B…カソードガス配管、32A、32B…エアフローメータ、33A、33B…コンプレッサ、34A、34B…入口弁、35A、35B…バイパス配管、36A、36B…バイパス弁、41A、41B…カソードオフガス配管、42A、42B…カソードガスレギュレータ、50A、50B…アノードガス給排系、51A、51B…アノードガス配管、52A、52B…アノードガスタンク、53A、53B…主止弁、54A、54B…アノードガスレギュレータ、55A、55B…インジェクタ、60A、60B…アノードガス排出系、61A、61B…アノードオフガス配管、62A、62B…気液分離器、63A、63B…排気排水弁、64A、64B…循環配管、65A、65B…アノードガスポンプ、66A、66B…循環流路、70A、70B…排気管、100A、100B…燃料電池ユニット、110、111…混合ガス排出系、120…制御部、500、501…燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8