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特許7354983支援装置、支援方法、及び、支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法、及び、支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/00 20060101AFI20230926BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20230926BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20230926BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20230926BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20230926BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230926BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20230926BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20230926BHJP
【FI】
B01D65/00
B01D65/02
B01D65/06
B01D61/12
B01D61/22
C02F1/44 A
C02F1/44 D
G16Y10/35
G16Y40/35
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020173200
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064517
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】松井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103979(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0136681(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00-71/82
C02F1/44
G16Y10/00-40/60
G06Q50/06
G01N20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援装置であって、
被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、並びに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を示すデータを取得する取得部と、
前記取得部で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得部で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、並びに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を示すデータから、現在の透過流束の省エネルギー及び膜閉塞の観点からの最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、将来前記膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び前記膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を出力する出力部と、
を備える、支援装置。
【請求項2】
さらに、前記取得部で得られたデータを用いて前記学習処理を行って前記判定モデルを得る学習部を備える、請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記洗浄条件は、前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄する際の洗浄水の供給圧力を含む、請求項1又は2に記載の支援装置。
【請求項4】
ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援方法であって、
被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、並びに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を示すデータを取得する取得工程と、
前記取得工程で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得工程で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、並びに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を示すデータから、現在の透過流束の省エネルギー及び膜閉塞の観点からの最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、将来前記膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び前記膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を出力する出力工程と、
を有する、支援方法。
【請求項5】
ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援装置のコンピュータに、
被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、並びに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を示すデータを取得する取得手順と、
前記取得手順で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得手順で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、及び、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、並びに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を示すデータから、現在の透過流束の省エネルギー及び膜閉塞の観点からの最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、将来前記膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び前記膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の種類、薬品の組み合わせ、及び、薬品の濃度を出力する出力手順と、
を実行させるための支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援装置、支援方法、及び、支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水処理システムにおいて、とりわけ膜ろ過装置を用いた水処理システムの重要性が高まっている。膜ろ過装置を用いたシステムは、処理水質の安定性が高いことや水処理時の薬品の使用量が少量である又は薬品が不要であるというメリットを有する。
【0003】
膜ろ過装置を用いた水処理システムおいては、水に含まれる不純物(例えば、粒子などの固形物、藻類や水中生物及び同由来の代謝物質、有機性やシリカやカルシウムなどの無機性溶存物質)が膜表面に析出し、膜詰まりが発生する場合がある。このような膜詰まりが発生してしまうと処理水を確保するために過大なエネルギーを必要とするか、過大な圧力によりシステムの破損を招き正常な水の処理ができなくなる。そのため、水を処理するろ過モードから膜詰まり等を解消するために膜の洗浄を行う洗浄モードに運転モードが切り替わり、定期的に膜の洗浄が行われる。
【0004】
以下の特許文献1には、従来の膜ろ過システムの一例が開示されている。具体的には、膜ろ過システムの膜モジュールを物理的に洗浄する大域的曝気システムを備え、該大域的曝気システムの動作を流量センサの信号によって制御する膜ろ過システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2012-528717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した水処理システムの運転モードに対応したバルブの開閉動作や電動機の稼働停止及びこれら動作制御のトリガー条件(時間、圧力)は、水処理システムが導入される前に設計者が設定する。設計者は、水処理システムが許容できる被処理水の最大水量や水質を考慮して設計を行う。許容できる被処理水の最大水量や水質は、年間の水質変動の中で、膜ろ過装置の稼働が可能な負荷の高い水質を想定して設計する。
【0007】
しかしながら、このような負荷の高い水質の原水を処理する年間頻度は低い。膜ろ過装置に負荷の高い水質とは、例えば、悪天候時の不純物を含有した水の混入、水域に発生する藻類等の代謝、流域下水道に予期せぬ事故や不法な投棄等でよってもたらされる。このような高負荷な原水水質、発生頻度及び安全係数を考慮して、水処理システムが受入可能な水質許容上限値が設定されている。従って、各運転モードのそれぞれのバルブ・電動機の動作やシーケンス及びこれら運転モードの制御シーケンスは、年間の大半を占める安定した原水の水質条件にとっては過剰に安全で保守的な運転となり、省エネルギーの観点から非効率的な制御思想となっている。
【0008】
また、水処理システムが導入された際の前提条件が、導入後に変化してくることも多々ある。人口推移、気象条件及び被処理水の水質と密接に関係する外部環境因子が経年経時変化し、必ずしも水処理システムの導入時の最適運転条件がそれ以降の運用において最適でなくなることが想定される。このように、従来の水処理システムは、被処理水の水質変動が大きく最適な水処理が行われているとは言い難い状況であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、最適な水処理の制御が行えるように運転管理者を支援する支援装置、支援方法、及び、支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様による支援装置は、ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援装置であって、被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件を示すデータを取得する取得部と、前記取得部で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得部で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、及び、前記ろ過膜における膜間差圧を示すデータから、現在の透過流束の最適値、並びに、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件を出力する出力部とを備える。
【0011】
本発明の一態様による支援装置において、前記取得部は、さらに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報を示すデータ取得し、前記判定モデルは、さらに、前記ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、前記ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報を示すデータを用いて学習処理を行うことによって得られるものであり、前記出力部は、さらに、将来前記膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び前記膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の情報を出力してもよい。
【0012】
本発明の一態様による支援装置において、さらに、前記取得部で得られたデータを用いて前記学習処理を行って前記判定モデルを得る学習部を備えていてもよい。
【0013】
本発明の一態様による支援装置において、前記洗浄条件は、前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄する際の洗浄水の供給水量及び圧力を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の一態様による支援方法は、ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援方法であって、被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件を示すデータを取得する取得工程と、前記取得工程で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得工程で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、及び、前記ろ過膜における膜間差圧を示すデータから、現在の透過流束の最適値、並びに、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件を出力する出力工程と、を有する。
【0015】
本発明の一態様による支援プログラムは、ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援装置のコンピュータに、被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件を示すデータを取得する取得手順と、前記取得手順で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得手順で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、及び、前記ろ過膜における膜間差圧を示すデータから、現在の透過流束の最適値、並びに、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件を出力する出力手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、最適な水処理の制御が行えるように運転管理者を支援することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】水処理システムの一構成例を示す模式図である。
図2】ろ過モードを説明するための模式図である。
図3】逆洗モードを説明するための模式図である。
図4】薬品を用いた洗浄モードを説明するための模式図である。
図5】運転準備モードを説明するための模式図である。
図6】支援装置の要部構成を示すブロック図である。
図7】実験計画法に基づいた判定モデルの生成方法の一例である。
図8】表示部に表示される支援情報の一例である。
図9】学習時のフローチャートである。
図10】運用時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[概要]
近年、人口増加、生活水準の向上に伴い、上水使用量が増加して、水資源が不足している。また、河川や排水の水質劣化が進行して、その対策が世界各地で急務となっている。例えば、水資源の持続的な使用を目的として、再生水を利用するための事業が検討されている。
【0019】
水処理は、一般的に、1次処理、2次処理、3次処理に分かれる。
1次処理では、大きなごみ(SS:浮遊物質;具体的には、ふん尿が混合した汚水中の固形物)を除去する処理である。
2次処理では、1次処理で取り除けなかった汚水中の有機物を微生物の働きによって除去する処理である。栄養塩の窒素、リン、難分解性物質等を化学的、物理的、生物学的方法で除去も含む。具体的には、簡易曝気処理、活性汚泥処理、硝化脱窒反応処理等を行う。
3次処理では、2次処理で排除できない浮遊性固形分を除去するため、ろ過砂やアンスラサイト等のろ過材を用いて固液分離及び濁度管理を行う。
上記、2次処理及び3次処理に化学的処理が導入される場合もある。凝集剤などを用いた汚濁物質分離、オゾンなどの酸化剤により汚濁物質分解等が挙げられる。
同様に2次処理及び3次処理に物理的処理が導入される場合もあり、膜処理による分離がある。
該膜処理による分離に用いられる膜としては、逆浸透膜(RO膜;Reverse osmosis membrane)、限外ろ過膜(UF膜;Ultrafiltration membrane)、精密ろ過膜(MF膜;Microfiltration membrane)等が利用されている。
【0020】
上記膜を有する膜ろ過装置を用いた水処理システムおいては、被処理水に含まれる不純物(例えば、微生物や有機物、シリカ、カルシウム、鉄やマンガンといった無機物)が膜表面に析出し、膜詰まりが発生する場合がある。このような膜詰まりが発生してしまうと正常な水の処理ができなくなる。そのため、被処理水を処理するろ過モードから膜詰まり等を解消するために膜の洗浄を行う洗浄モードに運転モードが切り替わり、定期的に膜の洗浄が行われる。
【0021】
膜の洗浄方法として、具体的には、膜を物理的なせん断力で洗浄する物理洗浄が挙げられる。物理洗浄として、具体的には、加圧水と膜の接触によって生じる水撃的なせん断力により洗浄する方法が挙げられる。また該方法において、洗浄の効果を高めるため、圧縮空気を膜の供給水側において曝露させ、膜を振動又は空気泡によるせん断作用により洗浄することもある。
【0022】
一方で、膜の洗浄における条件や頻度は、被処理水の水質等によって、最適な条件が変わる。しかしながら、設計者が初期設定した膜の洗浄における条件や頻度を、エンドユーザが変更することは一般的でない。
【0023】
上述した特許文献1に記載されている水処理システムは、水処理における流量センサや圧力センサから得られる信号を用いて、大域的曝気システムを用いた物理洗浄の制御を行っている。しかしながら、最適な物理洗浄を行うための要素は多種多様であり、流量や圧力のみで最適化することは困難である。また、水処理システムの最適化において、物理洗浄の制御だけでは十分でない。
【0024】
本実施形態の支援装置は、ろ過膜を備える膜ろ過装置を有する水処理装置の運転管理者を支援する支援装置であって、被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、前記ろ過膜における膜間差圧、前記ろ過膜における透過流束、前記ろ過膜を洗浄水で洗浄する頻度及び洗浄条件を示すデータを取得する取得部と、前記取得部で得られたデータを用いて学習処理を行うことによって得られる学習済みの判定モデルを用いて、前記取得部で得られた前記被処理水の水質情報、前記被処理水を前記膜ろ過装置に供給する圧力、及び、前記ろ過膜における膜間差圧を示すデータから、現在の透過流束の最適値、並びに、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件を出力する出力部とを備える。本実施形態の支援装置によれば、最適な水処理の制御が行えるように運転管理者を支援することができる。
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態による支援装置、支援方法、及び、支援プログラムについて説明する。
【0026】
<水処理システム>
まず、本実施形態に係る水処理システムの一構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る水処理システム1の一構成例を示す模式図である。
【0027】
水処理システム1は、水処理装置100と、コントローラ200と、支援装置300とを含んで構成される。
水処理装置100と、コントローラ200とはネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークは、例えば、構内通信網(LAN:Local Area Network)若しくは専用線又はこれらの組み合わせにより構成される。また、ネットワークは、無線であっても、有線であってもよい。
【0028】
後述する水処理装置100を構成する各装置から得られるプロセスデータをコントローラ200が受信し、該プロセスデータに基づいて、コントローラ200により水処理装置100を構成する各装置が制御される。
【0029】
コントローラ200と、支援装置300とはネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークは、インターネット、公衆通信網、構内通信網(LAN)、専用線のいずれか又は組み合わせにより構成される。また、ネットワークは、無線であっても、有線であってもよい。
【0030】
コントローラ200が受信するプロセスデータを支援装置300が解析し、支援装置300が最適な運転条件を出力する。支援装置300の構成及び動作の詳細は後述する。
【0031】
≪水処理装置≫
図1を用いて、水処理装置100の各構成の詳細を説明する。
水処理装置100は、フィードタンク10と、ストレーナー12と、膜ろ過装置14と、フィルトレートタンク16と、薬液タンク18と、酸成分タンク20と、塩基成分タンク22と、次亜塩素酸ナトリウムタンク24と、還元剤タンク26、廃液タンク28とを備える。
【0032】
フィードタンク10は、レベルセンサL1と水質センサS1とを備える。レベルセンサL1は、フィードタンク10内の被処理水の水位を計測するセンサである。
水質センサS1は、フィードタンク10内の水の水質を計測するセンサである。
水質としては、濁度、pH、電気伝導率、水温、波長254nmの紫外線に対する透過率(UV254)、残留塩素(遊離塩素又は結合塩素)、全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)、藻類、藍藻類、プランクトン、原虫等の種及び濃度情報等が挙げられる。
【0033】
水質センサS1として、具体的には、濁度計、pH計/ORP計、電気伝導率計、分光光度計、残留塩素計、全有機炭素濃度計等が挙げられる。
濁度計として、より具体的には、透過散乱形濁度計(TB700G、横河電機社製)、表面散乱形濁度計(TB400G、横河電機社製)等が挙げられる。
pH計/ORP計として、より具体的には、pH/ORP液分析計(FLXA402又はFLXA202、横河電機社製)等が挙げられる。
電気伝導率計として、より具体的には、電磁導電率液分析計(FLXA402又はFLXA202、横河電機社製)等が挙げられる。なお、該電磁導電率液分析計は、水温を計測することもできる。
分光光度計として、より具体的には、紫外可視検出器(UV-254 LA、日本分析工業社製)等が挙げられる。
残留塩素計として、より具体的には、遊離塩素計(FC400G、横河電機社製)、残留塩素計(RC400G、横河電機製)等が挙げられる。
全有機炭素濃度計として、より具体的には、オンラインTOC分析計(TOC-4200、島津製作所社製)等が挙げられる。
藻類、藍藻類、原虫といった水中微生物の計測装置として、1μm以上の水中微生物を光学的かつ画像認識技術を駆使して生物種を同定(FlowCam Cyano、Yokogawa Fluid Imaging Technologies製)等が挙げられる。
【0034】
フィードタンク10と、ストレーナー12と、膜ろ過装置14とは、上流からこの順に配管t2により接続されている。配管t2において、フィードタンク10とストレーナー12との間にフィードポンプp1を備え、ストレーナー12と膜ろ過装置14との間に、上流から流量計M1、バルブv1、及び供給水圧計PS1を備える。
【0035】
また、フィードタンク10と、膜ろ過装置14とは、配管t6により接続されている。配管t6は、バルブv3及び流量計M3を備える。
【0036】
ストレーナー12は、被処理水から固形成分を取り除くために用いる網状の部材である。
【0037】
膜ろ過装置14が備えるろ過膜として、具体的には、逆浸透膜(RO膜)、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)等が挙げられるが、その中でも、頻繁にろ過モードと洗浄モードに切り替わり、機械装置の動作が複雑なUF膜又はMF膜であることが好ましい。
【0038】
UF膜及びMF膜の膜素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、酢酸セルロース(CA)等の有機性素材;セラミック、金属等の無機素材を挙げることができる。
UF膜及びMF膜の形態としては、中空糸、チューブラ、平膜等が挙げられる。
【0039】
膜ろ過装置14は、配管t5により、ブロアp3と接続されている。配管t5は、圧力計PS4及びバルブv7を備える。
【0040】
膜ろ過装置14とフィルトレートタンク16とは配管t3により接続されている。配管t3において、膜ろ過装置14側から、ろ過水圧計PS2、バルブv2、及び流量計M2を備える。
上述した供給水圧計PS1により計側される値とろ過水圧計PS2により計側される値との差分値は、膜間差圧(TMP)としてモニタリングされる。
また、上述した流量計M1により計側される値と流量計M2により計側される値とから、水の単位時間当たりの膜面積当たりの流量(透過流束)がモニタリングされる。
【0041】
フィルトレートタンク16は、レベルセンサL2と水質センサS2とを備える。
レベルセンサL2は、フィルトレートタンク16内のろ過水の水位を計測するセンサである。
水質センサS2としては、上述した水質センサS1と同様のものが挙げられる。
【0042】
フィルトレートタンク16と、薬液タンク18とは、配管t7により接続されている。
【0043】
薬液タンク18と酸成分タンク20とは、配管t8により接続されている。また、配管t8は、酸成分供給ポンプp4を備える。
酸成分タンク20は、レベルセンサL4を備える。レベルセンサL4は、酸成分タンク20内の酸成分の水位を計測するセンサである。なお、酸成分としては、例えば、硫酸、塩酸、クエン酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0044】
薬液タンク18と塩基成分タンク22とは、配管t9により接続されている。また、配管t9は、塩基成分供給ポンプp5を備える。
塩基成分タンク22は、レベルセンサL5を備える。レベルセンサL5は、塩基成分タンク22内の塩基成分の水位を計測するセンサである。なお、塩基成分としては、例えば、水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム水溶液)等が挙げられる。
【0045】
薬液タンク18と次亜塩素酸ナトリウムタンク24とは、配管t10により接続されている。また、配管t10は、次亜塩素酸ナトリウム供給ポンプp6を備える。
次亜塩素酸ナトリウムタンク24は、レベルセンサL6を備える。レベルセンサL6は、次亜塩素酸ナトリウムタンク24内の次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)の水位を計測するセンサである。
【0046】
薬液タンク18は、レベルセンサL3と水質センサS3とを備える。
レベルセンサL3は、薬液タンク18内のろ過水;酸成分、塩基成分、又は次亜塩素酸ナトリウムを含有するろ過水の水位を計測するセンサである。
水質センサS3としては、上述した水質センサS1と同様のものが挙げられる。
【0047】
薬液タンク18と膜ろ過装置14とは配管t11及び配管t3により接続されている。薬液タンク18は配管t11と接続されており、配管t11は、洗浄用水供給ポンプp2及び洗浄用水圧計PS3を備える。また、配管t11は、配管t3側末端にバルブv4を備える。
薬注タンク18及び洗浄用水供給ポンプp2を有せずに、配管t8、t9、t10がt11に直結する場合もある。
【0048】
廃液タンク28と、膜ろ過装置14とは配管t13及び配管t6により接続されている。廃液タンク28と接続している配管t13は、配管t6側末端にバルブv5を備える。
また、廃液タンク28と、膜ろ過装置14とは配管t12及び配管t13により接続されている。膜ろ過装置14と接続している配管t12は、バルブv6を備える。
【0049】
廃液タンク28と還元剤タンク26とは、配管t14により接続されている。また、配管t14は、還元剤供給ポンプp7を備える。
還元剤タンク26は、レベルセンサL7を備える。レベルセンサL7は、還元剤タンク26内の還元剤の水位を計測するセンサである。
【0050】
廃液タンク28は、レベルセンサL4と水質センサS4とを備える。
レベルセンサL4は、廃液タンク28内の廃液の水位を計測するセンサである。
水質センサS4としては、上述した水質センサS1と同様のものが挙げられる。
【0051】
次に、水処理装置100の動作について説明する。
水処理装置100の運動モードとしては、ろ過モード(Filtration mode)と、逆洗モード(Backwash mode)と、薬品を用いた洗浄モード(Maintenance Cleaning Mode)と、運転準備モード(Preparation Mode)が挙げられる。
【0052】
[ろ過モード]
図2は、ろ過モードを説明するための模式図である。
ろ過モードは、ろ過膜を備える膜ろ過装置14を用いて水をろ過する工程である。
ろ過モードでは、まず被処理水は、配管t1を通ってフィードタンク10に貯蔵される。
【0053】
ここで、被処理水とは、地下水、雨水、河川水、湖沼水といった一般環境水に加え、下水や下水の再利用水、し尿、産業廃水やゴミの埋め立て地の浸出水等が挙げられる。また、塩類濃度が高い海水や汽水等が挙げられる。これらの被処理水は、一般的に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、シリカ(イオン状シリカ、コロイド状シリカ)、塩化物イオン、炭酸イオン等の溶存物質や不溶解性不純物を含んでいる。
【0054】
次いで、被処理水は、フィードポンプp1により、配管t2を通って、ストレーナー12で固形成分を除去された後、膜ろ過装置14に供給される。膜ろ過装置14に供給された被処理水は、ろ過膜によりろ過され、ろ過水として膜ろ過装置14から排出される。
【0055】
被処理水を膜ろ過装置14に供給する際の水圧は、供給水圧計PS1により計側される。また、ろ過水を膜ろ過装置14から排出する際の水圧は、ろ過水圧計PS2により計側される。
また、被処理水を膜ろ過装置14に供給する際の流量は、流量計M1により計側される。また、ろ過水を膜ろ過装置14から排出する際の流量は、流量計M2により計側される。
これらの流量の値から、被処理水の単位時間当たりの膜面積当たりの流量(透過流束)が一定値となるようにフィードポンプp1の回転数が制御される。
【0056】
膜ろ過装置14から排出されたろ過水は、配管t3を通ってフィルトレートタンク16に貯蔵される。フィルトレートタンク16に貯蔵されたろ過水は、配管t4を通って装置外に排出される。また、フィルトレートタンク16に貯蔵されたろ過水の一部は、必要に応じて薬液タンク18に貯蔵される。
【0057】
[逆洗モード]
図3は、逆洗モードを説明するための模式図である。
逆洗モードは、フィルトレートタンク16に貯蔵されたろ過水を洗浄用水供給ポンプp2により加圧して、膜ろ過装置14が備えるろ過膜に供給することにより、該ろ過膜を物理的なせん断力で洗浄するモードである。
逆洗モードでは、薬品は用いずに、加圧したろ過水によって膜ろ過装置14が備えるろ過膜を洗浄する。
逆洗モードでは、ろ過水を膜ろ過装置14が備えるろ過膜の透過側から及び/又は供給側から供給することにより、上述したろ過モードで進行したろ過膜の閉塞を解消又は軽減することができる。
【0058】
例えば、ろ過モードの経過時間(ろ過時間)、フィードポンプp1の回転数、TMPの上昇をトリガーとして、ろ過モードから逆洗モードに切り替わる。
【0059】
逆洗モードでは、物理洗浄の効果を高めるため、ブロアp3により、膜ろ過装置14が備えるろ過膜に圧縮空気を曝露させ、膜の振動作用及び空気泡によるせん断作用による洗浄を行ってもよい。
【0060】
[薬品を用いた洗浄モード]
図4は、薬品を用いた洗浄モードを説明するための模式図である。
薬品を用いた洗浄モードは、ろ過モードと逆洗モードとの繰り返し運転の中で、慢性的に進行した膜ろ過装置14が備えるろ過膜表面又はろ過膜細孔部に固着した閉塞物質を排除するモードである。
【0061】
該薬品としては、酸成分、塩基成分、及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液が挙げられ、洗浄目的によって使用薬品が選定される。
例えば、微生物由来の物質による汚染を洗浄する場合は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いることが有効である。
また、微生物由来の物質及び有機物質による汚染がより深刻に進行している場合は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に、さらに塩基成分を用いることが有効である。
また、無機物質による汚染、例えば硬度成分の沈殿や金属イオンの結晶による汚染を洗浄する場合は、酸成分を用いることが有効である。
【0062】
塩基成分としては、例えば、水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム水溶液)等が挙げられる。酸成分としては、例えば、硫酸、塩酸、クエン酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0063】
薬品を用いた洗浄モードでは、まず薬液タンク18に、酸成分、塩基成分、及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液からなる群から選択される1種以上の薬液を添加し、薬液を含有するろ過水を調製する。次いで、薬液を含有するろ過水を洗浄用水供給ポンプp2により、膜ろ過装置14が備えるろ過膜に供給し、該ろ過膜を浸漬洗浄する。
【0064】
ろ過膜の洗浄に用いた廃液は、廃液タンク28に貯蔵される。廃液タンク28に貯蔵された廃液に、還元剤ポンプ26に貯蔵された還元剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の水溶液)が還元剤供給ポンプp7により添加され、該廃液は中和される。中和された廃液は廃棄される。
【0065】
例えば、ろ過モードと逆洗モードとを一定回数行った後に、薬品を用いた洗浄モードに切り替わる。
【0066】
[運転準備モード]
図5は、運転準備モードを説明するための模式図である。
運転準備モードは、逆洗モード又は薬品を用いた洗浄モードを行った後に、被処理水を膜ろ過装置14内で循環させ、膜ろ過装置14内の空気を抜き、被処理水にかかる圧力を均一にするモードである。
【0067】
運転準備モードでは、フィードポンプp1により、被処理水をフィードタンク10と、膜ろ過装置14との間で循環させる。循環する被処理水は、膜ろ過装置14が備えるろ過膜は透過せず、ろ過膜の表面を流れる。
【0068】
運転準備モードは、物理洗浄の効果も有することから、上記逆洗モードの運転シーケンスの一部として組み込まれることもある。
【0069】
水処理装置100の上記運動モードに対応したバルブの開閉(o:開、c:閉)及びポンプの稼働停止(o:稼働、c:停止、c/o:必要に応じて稼働)を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
記運動モードに対応したバルブの開閉及びポンプの稼働停止は、コントローラ200により制御される。
【0072】
≪コントローラ≫
コントローラ200は、上述した水処理装置100を構成する各装置から得られるプロセスデータを受信し、該プロセスデータに基づいて、水処理装置100を構成する各装置制御する。コントローラ200には、バルブの開閉及びポンプの稼働停止、それぞれの動作に関わるトリガー情報、及び制御フローに関わるプログラム等が格納されている。
コントローラ200は、監視装置(図示せず)を備える。監視装置は、例えば、エンジニアがプロセスの運転状態の監視や、その運転状態を制御するための各種の設定値を設定するためのHMI(Human Machine Interface)である。監視装置は、ネットワークに接続され、水処理装置100の各プロセスの状態を示す測定値である出力値を、水処理装置100を構成する各装置から所定時間(例えば、1分)毎に受信する。監視装置は、例えば、各時点における測定値を表示する表示部(図示せず)を備える。監視装置は、操作に応じて制御目標とするプロセスの目標値を設定する操作入力部(図示せず)を備える。
【0073】
≪支援装置≫
以下、図面を参照し、本実施形態の支援装置の詳細について説明する。
【0074】
図6は、支援装置300の要部構成を示すブロック図である。
図6に示す通り、支援装置300は、操作部311、表示部312、通信部313、格納部314、及び演算部315を備える。このような支援装置300は、コントローラ200との間で通信を行って水処理装置100の各種情報を取得し、水処理装置100を運転する運転管理者を支援するための支援情報を提示する。
【0075】
操作部311は、例えばキーボードやポインティングデバイス等の入力装置を備えており、入力装置に対する操作に応じた入力信号を演算部315に出力する。表示部312は、例えば液晶表示装置等の表示装置を備えており、演算部315から出力される各種情報(例えば、支援情報等)を表示する。尚、操作部311及び表示部312は、例えば表示機能と操作機能とを兼ね備えるタッチパネル式の液晶表示装置のように一体化されていても良い。
【0076】
通信部313は、コントローラ200との間で通信を行って水処理装置100の各種情報を取得する。
通信部313で取得される各種情報として、具体的には、水質センサS1により計測される被処理水の水質情報、供給水圧計PS1により計測される被処理水を膜ろ過装置14に供給する圧力、供給水圧計PS1及びろ過水圧計PS2の計測値から算出されるろ過膜における膜間差圧、流量計M1又は流量計M2の計測値とろ過膜の有効面積から算出されるろ過膜における透過流束(gallon/ft/日、Liter/m/時、又はm/m/日)、ろ過膜を洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度(逆洗モードの頻度)、洗浄用水圧計PS3により計測される洗浄水(ろ過水)の供給圧力、洗浄用水供給ポンプp2より逆洗モード時に膜ろ過装置14へ供給される水量、ろ過モード時、逆洗モード時、又はその両方で稼働するブロアp2の圧縮空気量、圧力計PS4により計測される圧縮空気の空気圧、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度(薬品を用いた洗浄モードの頻度)、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報(薬品の種類、濃度等)等が挙げられる。
【0077】
被処理水の水質情報として、より具体的には、濁度、pH、電気伝導率、水温、波長254nmの紫外線に対する透過率(UV254)、残留塩素(遊離塩素及び/又は結合塩素)、全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)、並びに、藻類、藍藻類、プランクトン、及び原虫等の種類及び濃度情報等が挙げられる。
【0078】
格納部314は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等の補助記憶装置を備えており、各種データを格納する。格納部314は、例えば、通信部313で取得された各種情報、及び後述する学習部315aで生成された判定モデル(詳細は、後述する)を格納する。
【0079】
演算部315は、格納部314に格納された情報を用いた各種演算を行う。演算部315は、学習部315a及び判定部315bを備える。学習部315aは、格納部314に格納された情報を用いて、被処理水の水質情報、被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力、膜間差圧、透過流束、洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度・洗浄条件、圧縮空気の空気圧、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報から選択される複数のデータの関係を学習し、省エネルギーの観点から水処理装置100の最適な運転条件を判定するための判定モデルMを生成する。学習部315aの学習アルゴリズムとしては、種々の回帰分析法や、決定木、k近傍法、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ディープラーニング等をはじめとする様々なアルゴリズムを用いることができる。例えば、学習部315aは、ニューラルネットワークを用いた学習を行い、入力層、中間層、及び出力層を有する判定モデルMを生成する。
【0080】
判定モデルMとして、より具体的には、被処理水の水質情報、被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力、膜間差圧、透過流束、洗浄水(ろ過水)で洗浄する(物理洗浄)頻度、及び、洗浄条件のそれぞれの関係を学習し、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧から、現在の透過流束の最適値、並びに、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件を判定するための判定モデルが挙げられる。
なお、膜ろ過装置を洗浄水で洗浄する際の洗浄条件、すなわち、膜ろ過装置14を逆洗モードで洗浄する際の物理洗浄条件とは、ろ過モード中に膜ろ過装置14によるろ過水量に対する洗浄水量(洗浄水量/ろ過水量)、洗浄水で洗浄する際の供給圧力、洗浄水の温度、洗浄時間等が挙げられる。また、逆洗モード中にブロアp2の使用の有無、ブロアp2を使用する場合は圧縮空気量及び圧縮空気の圧力等が挙げられる。
【0081】
上記判定モデルにより、現在の透過流束の最適値が判定されることにより、運転管理者は、現在の透過流束の値と透過流束の最適値との差を把握することができる。これにより、水処理の制御に精通していない運転管理者であっても、透過流束が最適値となるようにフィードポンプp1の回転数を制御することができる。
なお、透過流束の最適値とは、省エネルギー及び膜閉塞の観点からの最適値を意味する。透過流束が高流束ほど、ろ透過水の水量は増えるが、被処理水を膜ろ過装置に供給するためのフィードポンプの動力コストが増加する。また、透過流束は膜ろ過装置が備えるろ過膜の目詰まりの進行と関連し、物理洗浄や薬品を用いた洗浄頻度が増加するおそれがある。ろ過膜の閉塞の程度によっては、これら洗浄による膜閉塞の回復のしやすさが異なり単に透過流束が高流束ほど良いというものではない。
この膜閉塞が物理洗浄や薬品を用いた洗浄により回復を図りやすい場合は、可逆的な膜閉塞にとどまっており、ろ過の稼働率が高まる。一方で、薬品を用いた洗浄において、高濃度かつ長時間の薬品浸漬で回復を図らざるを得ない場合は、不可逆的な膜閉塞へと進行するため、ろ過の稼働率が低下する。
このような、不可逆的な膜閉塞は、透過水量あたりのエネルギーや薬品コストの増大、さらには高濃度薬品による膜の劣化を来すため、不経済な運転の原因となる。
【0082】
また、判定モデルMとしては、被処理水の水質情報、被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力、膜間差圧、透過流束、洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄水(ろ過水)の供給水量及び圧力、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報のそれぞれの関係を学習し、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧から、現在の透過流束の最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、将来膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び将来膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の情報を判定するための判定モデルであってもよい。なお、薬品の情報とは、薬品の種類、薬品の組み合わせ、薬品の濃度等が挙げられる。
【0083】
上記判定モデルにより、さらに、膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び将来膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の情報が判定されることにより、薬品の使用量を低減させることができ、水処理におけるコストを大幅に低減することができる。
【0084】
なお、膜ろ過装置を薬品で洗浄する操作としては、上述した薬品を用いた洗浄モードに限られず、上述した薬品を用いた洗浄モードよりも、頻度は低いが、より洗浄強度の高いオンライン薬品洗浄(Cleaning In Place:CIP)、該CIPよりもさらに洗浄強度の高いオフライン薬品洗浄等も含まれる。すなわち、判定モデルMとしては、被処理水の水質情報、被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力、膜間差圧、透過流束、洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄水(ろ過水)の供給水量及び圧力、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報のそれぞれの関係を学習し、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧から、現在の透過流束の最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、将来膜ろ過装置にCIP又はオフライン薬品洗浄を行うべき頻度及び膜ろ過装置にCIP又はオフライン薬品洗浄を行う際に使用すべき薬品の情報を判定するための判定モデルであってもよい。
【0085】
また、判定モデルMとしては、被処理水の水質情報、被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力、膜間差圧、透過流束、洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄水(ろ過水)の供給水量及び圧力、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報のそれぞれの関係を学習し、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧から、現在の透過流束の最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、膜ろ過装置のろ過膜を交換すべき時期を判定するための判定モデルであってもよい。
【0086】
判定モデルMを生成する際に実験計画法に基づいて、被処理水の水質情報、被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力、膜間差圧、透過流束、洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄水(ろ過水)の供給圧力、圧縮空気の空気圧、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報から選択される複数のデータの関係を学習することが好ましい。
【0087】
図7に実験計画法に基づいた判定モデルMの生成方法の一例を示す。
ろ過モードで適用する透過流束を、膜ろ過装置の技術的かつ経済的な妥当性を見いだせる範囲で高流束及び低流束を選定する。高流束でのろ過は、ろ透過水の水量を増やすが、ダルシー則により被処理水の膜ろ過装置に供給する圧力又はTMPを上昇させるためより高い駆動圧力を要し、かつ水質に応じては洗浄頻度を高める可能性があり経済性に劣る可能性がある。
逆洗モードで適用する物理逆洗の水量、加圧圧力、圧縮空気(ブロワ発動)の有無、圧縮空気の空気量、及び圧縮空気の圧力等の物理逆洗強度を、膜閉塞物質の効果的な排出、システムの耐圧性、経済的な妥当性を見いだせる範囲で高い物理逆洗強度及び低い物理逆洗強度に選定する。高い物理逆洗強度は洗浄の効果を高めるが、ろ過モードの稼働率を低下させ、またろ過水の回収率を低下させ、電動機の消費エネルギーを消耗する。
薬品を用いた洗浄モードで適用する洗浄頻度を、技術的な洗浄効果と薬品消費の経済性を見いだせる範囲で、高頻度及び低頻度を選定する。高頻度はより高い洗浄効果を期待できるが、薬品をより多く消耗する。また、ろ過膜素材及び薬品の選定によっては、ろ過膜素材の劣化を招く可能性がある。
【0088】
実験計画法に基づいて、ろ過モードで適用する透過流束が高流束又は低流束である、逆洗モードで適用する物理逆洗の加圧圧力が高圧又は低圧である、薬品を用いた洗浄モードで適用する洗浄頻度が高頻度又は低頻度であるという具合に変数を適宜変化させる。そして、上述した被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧の変化量との関係を学習し、判定モデルMを生成する。
【0089】
例えば、図7の「Test1」では、以下の通りに変数を設定して判定モデルMを生成している。
(1-1)ろ過モードで適用する透過流束が低流束である。ここで、低流束とは、例えば、ろ過膜メーカーがろ過膜のカタログに記載している透過流束の推奨値の下限値程度の値であればよい。
(1-2)逆洗モードで適用する物理逆洗強度が高い。なお、「物理逆洗強度」とは、具体的には、洗浄液の水量、洗浄液の加圧圧力、圧縮空気の空気量、及び圧縮空気の空気圧から選択される1種以上の物理条件により決定される逆洗モードで適用する物理逆洗の強さの度合いを意味する。「物理逆洗強度が高い」とは具体的には、洗浄液の水量が多い、洗浄液の加圧圧力が高い、圧縮空気の空気量が多い、又は圧縮空気の空気圧が高い等の条件を意味する。
(1-3)薬品を用いた洗浄モードで適用する洗浄頻度が高頻度である。例えば、不純物が多く負荷の高い水質の原水を処理する際に想定される回数に設定する。
図7の「Test2」では、以下の通りに変数を設定して判定モデルMを生成している。
(2-1)ろ過モードで適用する透過流束が高流束である。ここで、高流束とは、例えば、被処理水がろ過膜に負荷がかかり過ぎない上限の値である。また、ろ過膜メーカーがろ過膜のカタログに記載している透過流束の推奨値の上限値程度の値であってもよい。
(2-2)逆洗モードで適用する物理逆洗強度が高い。
(2-3)薬品を用いた洗浄モードで適用する洗浄頻度が高頻度である。
【0090】
図7の「Test3」では、以下の通りに変数を設定して判定モデルMを生成している。
(3-1)ろ過モードで適用する透過流束が高流束である。
(3-2)逆洗モードで適用する物理逆洗強度が低い。具体的には、洗浄液の水量が少ない、洗浄液の加圧圧力が低い、圧縮空気の空気量が少ない、又は圧縮空気の空気圧が低い等の条件を意味する。
(3-3)薬品を用いた洗浄モードで適用する洗浄頻度が高頻度である。
図7の「Test4」では、以下の通りに変数を設定して判定モデルMを生成している。
(4-1)ろ過モードで適用する透過流束が高流束である。
(4-2)逆洗モードで適用する物理逆洗強度が低い。
(4-3)薬品を用いた洗浄モードで適用する洗浄頻度が低頻度である。例えば、不純物が少なく負荷の低い水質の原水を処理する際に想定される回数に設定する。
【0091】
判定部315bは、格納部314に格納された判定モデルM(学習部315aで生成された判定モデルM)を用い、省エネルギーの観点から水処理装置100の最適な運転条件を判定する。
【0092】
図8は、表示部312に表示される支援情報の一例である。X軸にろ過日数、Y軸に膜間差圧(TMP)を示す。ろ過日数軸のフルスケール(X日)は、ろ過モード、逆洗モード、薬品を用いた洗浄モード、及び運転準備モードをオンラインで連続的に繰り返した数日から半年程度を示している。
表示部312に表示される支援情報としては、例えば、X日で連続運転を停止する際に、オンライン薬品洗浄(CIP)、該CIPよりもさらに洗浄強度の高いオフライン薬品洗浄、又は膜交換等の実施の必要性の情報が挙げられる。より具体的には、以下に示す通りである。
すなわち、図8の線aが表示された場合、逆洗モードと薬品を用いた洗浄モードで、TMPの収束値を見いだせ、TMPの可逆性を見いだせることが分かる。よって、X日で連続運転を停止する際は、CIPは膜の閉塞予防やシステム点検を重視して実施される。
線bが表示された場合、逆洗モードと薬品を用いた洗浄モードで一定の連続運転が可能性であることを見出しているが、TMPの収束値を見いだせていない。よって、X日で連続運転を停止する際は、洗浄条件(薬品の種類、濃度、浸漬時間等)に留意してCIPにより膜の回復効果を高める条件を見出してCIPを実施すべきことが分かる。
線cが表示された場合、現在の運転内容ではTMPの不可逆性は著しく、CIPによる膜の回復を見いだせない可能性があり、例えば、X日で連続運転を停止する際は、膜のオフライン洗浄や膜ろ過装置の交換すべきことが分かる。また、ろ過モード、逆洗モード、薬品を用いた洗浄モードの運転条件を再考する必要がある。
【0093】
また、表示部312に表示される支援情報としては、例えば、上述した現在の透過流束の最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、将来膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度及び将来膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の情報等が挙げられる。このような支援情報に基づいて、運転管理者が水処理装置の運転を行えば、上述した図8の線aのようなTMPの収束値を見いだせる水処理装置の運転を、長期間行うことができる。また、連続運転を停止して行う上述したCIP等の実施頻度を減らすことができる。
【0094】
このような支援装置300は、例えば、デスクトップ型、ノート型、又はタブレット型のコンピュータにより実現される。支援装置300がコンピュータにより実現される場合において支援装置300の機能(例えば、学習部315a、315b)は、各々の機能を実現するためのプログラムが、コンピュータに設けられたCPU(中央処理装置)で実行されることによって実現される。つまり、支援装置300は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0095】
ここで、支援装置300の機能を実現するプログラムは、例えばCD(登録商標)-ROM又はDVD(登録商標)-ROM等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されてもよく、インターネット等のネットワークを介して配布されてもよい。なお、支援装置300は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0096】
以上説明した支援装置300によれば、水質等の被処理水のデータと、透過流束等の現行のプロセスデータとから、水処理装置100の最適な運転条件を運転管理者に示すことができるため、最適な水処理の制御が行えるように運転管理者を支援することができる。
【0097】
また、支援装置300によれば、逆洗モード及び/又は薬品を用いた洗浄モードの最適化を行うことができるため、逆洗モードで用いる圧力ポンプの省エネルギー化、及び/又は、薬品を用いた洗浄モードにおける薬品の使用量を低減することができるため、安定した処理水の供給に加えて、水処理におけるコストを大幅に低減することができる。
【0098】
また、支援装置300によれば、人口推移、気象条件及び被処理水の水質と密接に関係する外部環境因子が経年経時変化した場合やゲリラ豪雨等で短時間で被処理水の水質が大きく変化してしまった場合でも、水処理装置の制御の最適化をリアルタイムで簡易に行うことができる。
【0099】
なお、支援装置300は、学習部315aを備えるものであるが、学習部は別の装置であってもよい。すなわち、学習処理はクラウドや他の学習専用の装置で行い、その学習結果のみを支援装置にダウンロードするような態様であってもよい。
【0100】
<支援方法>
図9及び図10を用いて、本実施形態の支援方法の詳細を説明する。
図9は、学習時のフローチャートである。
【0101】
本実施形態の支援方法において、学習時は、まず、学習用のデータを取得する学習用データ取得工程S11を行う。
学習用のデータとして、具体的には、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、ろ過膜における膜間差圧、ろ過膜における透過流束(gfd又はlmh)、ろ過膜を洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄水(ろ過水)の水量や供給圧力、ろ過膜を圧縮空気で洗浄する際の空気圧、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度(薬品を用いた洗浄モードの頻度)、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報(薬品の種類、濃度等)等が挙げられる。
【0102】
被処理水の水質情報として、より具体的には、濁度、pH、電気伝導率、水温、波長254nmの紫外線に対する透過率(UV254)、残留塩素(遊離塩素及び/又は結合塩素)、全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)、藻類、藍藻類、プランクトン、原虫等の種及び濃度情報等が挙げられる。
【0103】
次いで、学習用データ取得工程S11で取得したデータを学習処理する学習工程S12を行う。学習処理における学習アルゴリズムとしては、種々の回帰分析法や、決定木、k近傍法、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等をはじめとする様々なアルゴリズムを用いることができる。
【0104】
次いで、学習工程S12によって得られた判定モデルを格納する格納工程S13を行う。該判定モデルとしては、上述した判定モデルMと同一である。
【0105】
図10は、運用時のフローチャートである。
本実施形態の支援方法において、運用時は、まず、判定用のデータを取得する取得工程S21を行う。
判定用のデータとして、具体的には、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧が挙げられる。
【0106】
次いで、取得工程S21で取得したデータから判定モデルを用いて判定する判定工程S22を行う。
次いで、判定結果を出力する出力工程S23を行う。
【0107】
例えば、学習用データ取得工程S11において、学習用のデータとして、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、ろ過膜における膜間差圧、ろ過膜における透過流束(gfd又はlmh)、ろ過膜を洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、及び、洗浄条件を取得した場合、取得工程S21で処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧を取得すると、現在の透過流束の最適値、並びに、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件が出力される。
なお、膜ろ過装置を洗浄水で洗浄する際の洗浄条件とは、膜ろ過装置を洗浄水で洗浄する際の洗浄水の供給水量、供給圧力、洗浄水の温度、洗浄時間等、圧縮空気(ブロワ発動)の有無、圧縮空気量及び圧縮空気の圧力等が挙げられる。
【0108】
例えば、学習用データ取得工程S11において、学習用のデータとして、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、ろ過膜における膜間差圧、ろ過膜における透過流束(gfd又はlmh)、ろ過膜を洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄条件、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度(薬品を用いた洗浄モードの頻度)、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報を取得した場合、取得工程S21で処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧を取得すると、現在の透過流束の最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、将来膜ろ過装置を薬品で洗浄すべき頻度、並びに、将来膜ろ過装置を薬品で洗浄する際に使用すべき薬品の情報が出力される。
なお、薬品の情報とは、薬品の種類、薬品の組み合わせ、薬品の濃度等が挙げられる。
また、ろ過装置を薬品で洗浄とは、上述した薬品を用いた洗浄モードのみではなく、上述したCIP、及びオフライン薬品洗浄も含む。
【0109】
例えば、学習用データ取得工程S11において、学習用のデータとして、被処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、ろ過膜における膜間差圧、ろ過膜における透過流束(gfd又はlmh)、ろ過膜を洗浄水(ろ過水)で洗浄する頻度、洗浄条件、ろ過膜を薬品で洗浄する頻度(薬品を用いた洗浄モードの頻度)、及び、ろ過膜を薬品で洗浄する際に使用する薬品の情報を取得した場合、取得工程S21で処理水の水質情報、被処理水を膜ろ過装置に供給する圧力、及び、ろ過膜における膜間差圧を取得すると、現在の透過流束の最適値、将来前記膜ろ過装置を洗浄水で洗浄すべき頻度及び洗浄条件、並びに、膜ろ過装置のろ過膜を交換すべき時期の情報が出力される。
【0110】
以上説明した本実施形態の支援方法によれば、水質等の被処理水のデータと、透過流束等の現行のプロセスデータとから、水処理装置の最適な運転条件を運転管理者に示すことができるため、最適な水処理の制御が行えるように運転管理者を支援することができる。
【0111】
また、本実施形態の支援方法によれば、逆洗モード及び/又は薬品を用いた洗浄モードの最適化を行うことができるため、逆洗モードで用いる圧力ポンプの省エネルギー化、及び/又は、薬品を用いた洗浄モードにおける薬品の使用量を低減することができるため、安定した処理水の供給に加えて、水処理におけるコストを大幅に低減することができる。
【0112】
また、本実施形態の支援方法によれば、人口推移、気象条件及び被処理水の水質と密接に関係する外部環境因子が経年経時変化した場合やゲリラ豪雨等で短時間で被処理水の水質が大きく変化してしまった場合でも、水処理装置の制御の最適化をリアルタイムで簡易に行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
1・・・水処理システム
100・・・水処理装置、
10・・・フィードタンク
12・・・ストレーナー
14・・・膜ろ過装置
16・・・フィルトレートタンク
18・・・薬液タンク
20・・・酸成分タンク
22・・・塩基成分タンク
24・・・次亜塩素酸ナトリウムタンク
26・・・還元剤タンク
28・・・廃液タンク
200・・・コントローラ
300・・・支援装置
311・・・操作部
312・・・表示部
313・・・通信部
314・・・格納部
315・・・演算部
S11・・・学習用データ取得工程
S12・・・学習工程
S13・・・格納工程
S21・・・取得工程
S22・・・判定工程
S23・・・出力工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10