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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ガラス製品の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/09 20060101AFI20230926BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C03B23/09
A61J1/06 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020533861
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047206
(87)【国際公開番号】W WO2019124542
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】102017011991.0
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ドレスラー
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/060052(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0267250(US,A1)
【文献】中国実用新案第201501826(CN,U)
【文献】特開2002-121043(JP,A)
【文献】特開2008-150225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアルの製造方法であって、
中間ガラス製品を提供すること、
中間ガラス製品の一部を所定の温度に加熱すること、
ツールを中間ガラス製品の加熱部分と接触させること、および
ツールが加熱部分に接触する状態で、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させること
を含み、加熱部分に接触するツールの一部分はガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素で形成され、
ツールは、キャリア、およびキャリアに組み合わされ、加熱部分の外面を押すように構成されたリングを有して成り、
リングはガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から形成され、キャリアは鋼部分またはグラファイト部分を有して成り、
リングは、同心円状に積み重ねられる第1サブリング、第2サブリングおよび第3サブリングを有して成り、第2サブリングは、第1サブリングと第3サブリングとの間に配置され、第2サブリングの直径は、第1サブリングの直径および第3サブリングの直径よりも大きい、製造方法。
【請求項2】
加熱部分が中間ガラス製品の開口端部に位置する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加熱部分がバイアルのネックに対応する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ツールの側面が加熱部分の外面を押す請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
バイアルの製造方法であって、
中間ガラス製品を提供すること、
中間ガラス製品の一部を所定の温度に加熱すること、
ツールを中間ガラス製品の加熱部分と接触させること、および
ツールが加熱部分に接触する状態で、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させること
を含み、加熱部分に接触するツールの一部分はガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素で形成され、
中間ガラス製品は、端部に第1直径を有するガラス管であり、加熱部分はガラス管の端部に位置し、
ツールは、テーパー端部を有するピンを有して成り、テーパー端部の側面は、ガラス管の端部の一部分を押すように構成され、
ツールが加熱部分を押した状態で、ガラス管の端部の直径が第1直径から第2直径に増えるように加熱部分を変形する、製造方法
【請求項6】
バイアルの製造方法であって、
中間ガラス製品を提供すること、
中間ガラス製品の一部を所定の温度に加熱すること、
ツールを中間ガラス製品の加熱部分と接触させること、および
ツールが加熱部分に接触する状態で、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させること
を含み、加熱部分に接触するツールの一部分はガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素で形成され、
ツールが、中間ガラス製品の少なくとも一部分を収容するように構成された金型を有して成り、
中間ガラス製品は、端部に第1直径の開口部を有するガラス管であり、加熱部分はガラス管の端部に位置し、
ツールは、収容空間を画定する底面および側面を有し、底面はガラス管の端部を押すように構成され、
ツールが加熱部分を押す状態で、加熱部分が変形して、開口部の直径が第1直径から第2直径に減少し、第2直径はゼロまたはそれより大きい、製造方法
【請求項7】
加熱部分と接触することになるツールの表面上に微細なテクスチャーが形成されている請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ツールおよび/またはバイアルが100回転/分~500回転/分の相対回転速度で回転する請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
バイアルの製造方法で使用するツールであって、請求項1~8のいずれかに記載のバイアルの製造方法で使用するツール。
【請求項10】
バイアルを製造するための装置であって、請求項1~8のいずれかに記載のバイアルの製造方法において、中間ガラス製品の加熱された部分と接触させる、請求項9に記載のツール、および
ツールを中間ガラス製品の加熱部分と接触させ、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させてツールおよび中間ガラス製品を相対的に回転させる手段
を有して成る装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス製品に関し、より具体的には、バイアル、アンプル等の医療用ガラス製品を製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第2,935,819号は、ガラス管からアンプル等の小さなガラス瓶を製造するための機械を開示する。更に、米国特許第3,222,157号は、ガラス管の閉鎖端部をプレート(シェーパー、shaper)に押し付け、ガラス管を回転させてそれにより底部の形状を整えることにより、アンプルの底部を形成する方法を開示する。
【0003】
これらの従来の方法では、ガラス容器の特定の部分を成形するために使用するツール(例えば、プレート)は、一般に、金属またはセラミックによって構成される。ガラス容器の底部の加工には金属プレートが適しているが、金属がガラスに付着しないように離型剤として油をプレートに塗る必要がある。そのため、油を除去する工程が必要であり、その結果、製造方法が複雑である。また、微細なガラス物質がプレートに付着することがあり、その結果、プレートの接触面に凹凸が発生しやすくなる場合がある。このような状態にあるプレートを用いてガラス管の閉口端部を擦ると、プレートの凹凸により形成される底部の外面が粗くなり、結果として好ましい光反射率を有する底部の外面を得ることができない。従って、この手法では、顧客は底側から検査できない。セラミックプレートを使用した場合、ガラス容器との接触のためプレートによる擦れによってプレートの破片がガラス容器の底部に付着することがある。そのため、破片を除去する工程が必要となり、製造が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第2,935,819号
【文献】米国特許第3,222,157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ガラス容器をより簡単に製造することを可能にする製造方法を提供することである。また、製品としてのガラス容器は、より良好な光反射率を有する底面を有することが望ましい。更に、製造に用いるツール(tool、道具または用具)は耐摩耗性であることが望ましく、潤滑剤および/または離型剤を用いずに使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの要旨において、ガラス製品を製造する方法を提供する。この方法は、中間ガラス製品を提供する工程、中間ガラス製品の一部分を所定の温度に加熱する工程、中間ガラス製品の加熱部分とツールを接触させる工程、ならびにツールが加熱部に接触した状態でツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させ、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するようにする工程を含み、加熱部分に接触するツールの一部分は、ガラス状炭素部分を含むか、またはガラス状炭素でできている。
【0007】
以下において、ガラス製品に言及する場合、それは中間ガラス製品にも言及するものとする。
【0008】
幾つかの態様では、加熱部分は中間ガラス製品の閉鎖端部に位置し、ツールはプレートであり、ツールと中間ガラス製品の閉鎖端部とは互いに押し合うように構成されている。
【0009】
幾つかの態様では、加熱部分はガラス管の開口端部に位置する。
【0010】
幾つかの態様では、ガラス製品はガラス容器であり、加熱部分はガラス容器のネックに対応する。
【0011】
幾つかの態様では、ツールは、第1形成要素および第2形成要素を有して成る。第1形成要素は、中間ガラス製品の端面と接触するように構成され、その端面を形成する。第2形成要素は、第1形成要素から突出するピンとして構成される。ツールが加熱部分に接触した状態で、第2形成要素の側面は加熱部分の内面に接触し、第1形成要素の上面は中間ガラス製品の開口端部面に接触する。
【0012】
幾つかの実施形態では、ツールの側面が加熱部分の外面を押し付ける。
【0013】
幾つかの態様では、ツールは、キャリアおよびそれに組み合わされて加熱部分の外面に対して押し付けるように構成られたリングを含み、リングはガラス状炭素部分を含むか、またはガラス状炭素でできており、キャリアは鋼またはグラファイトを含む。
【0014】
幾つかの態様では、リングは、同心円状に一体に積み重ねられた第1サブリング、第2サブリングおよび第3サブリングを含み、第2サブリングは、第1サブリングと第3サブリングとの間に配置される。第2サブリングの直径は、第1サブリングの直径および第3サブリングの直径より大きい。
【0015】
幾つかの態様では、中間ガラス製品は、端部に第1直径を有するガラス管であり、加熱部分はガラス管の端部に位置する。ツールは、先細り(テーパー状)の端部を有するピンを含み、先細りの端部の側面は、ガラス管の端部の一部分を押し付けるように構成されている。ツールが加熱部分を押し付けた状態で、加熱部分が変形し、端部におけるガラス管の直径が第1直径から第2直径に増加するようになっている。
【0016】
幾つかの態様では、ツールは、中間ガラス製品を収容するように構成された型を含む。
【0017】
幾つかの態様では、ツールは、シリンジヘッドを形成するように構成されている。ツールは、互いに組み合わせてシリンジヘッドの外形に対応する金型キャビティを形成するように構成された第1金型および第2金型を含み、第1溝が第1金型に形成され、第2溝が第2金型に形成され、第1型と第2型が互いに組み合わされると、第1溝と第2溝が互いに組み合わされて、金型キャビティに連通する貫通孔を形成する。ツールは、貫通孔を介して金型キャビティに挿入されるように構成されたピンを更に含む。
【0018】
幾つかの態様では、中間ガラス製品は、端部に第1直径の開口部を有するガラス管であり、加熱部分はガラス管の端部に位置する。ツールは、収容空間を画定する底面および側面を有し、底面は、ガラス管の端部を押し付けるように構成されている。ツールが加熱部分を押している状態で、加熱部分が変形して、開口部の直径が第1直径から第2直径に減少し、第2の直径はゼロまたはそれより大きい。
【0019】
幾つかの態様では、加熱部分と接触することになるツールの表面に微細なテクスチャーが形成されている。
【0020】
幾つかの態様では、ツールまたは中間ガラス製品を100回/分~500回/分の相対回転速度またはそれに相当する線速度で回転させる。
【0021】
もう1つの要旨では、ガラス製品を製造する方法で使用するツールを提供する。この方法は、中間ガラス製品を提供する工程、中間ガラス製品の一部分を所定温度に加熱する工程、ツールを中間ガラス製品の加熱部分に接触させる工程、ならびに、ツールが加熱部に接触した状態で、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させる工程を含み、加熱部分に接触するツールの一部分は、ガラス状炭素部分を含むか、またはガラス状炭素からできている。
【0022】
更にもう1つの要旨では、ガラス製品を製造するための装置を提供する。この装置は、ガラス製品の加熱部分に接触するツール、ならびにツールを加熱部分に接触させ、ツールおよびガラス製品の少なくとも一方を回転させてツールとガラス製品とを相対的に回転させる手段を含み、加熱部分と接触するツールの一部分は、ガラス状炭素部分を含むか、またはガラス状炭素でできている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、例えばより良好な光反射率を有する、ガラス容器の底部またはネックの表面をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下、本発明の態様を、図面を参照して説明する。
【0025】
図1図1は、本発明の第1の態様に基づいてガラス製品の閉鎖端部を押し付けるように構成されているツールの概略図である。
図2図2は、第1の態様のツールの空気入口および複数の空気出口を示す模式図である。
図3A図3Aは、ガラス管の閉鎖端部と接触している第1の態様のツールの概略図である。
図3B図3Bは、ガラス管の閉鎖端部と接触している第1の態様のツールの概略断面図である。
図4図4は、本発明の第2の態様に基づいてガラス製品の開口端部と接触するように構成されているツールの分解図である。
図5図5は、第2の態様のツールの概略図である。
図6図6は、ガラス製品の開口端部と接触している第2の態様のツールの概略図である。
図7図7は、第2の態様のツールの別の例を示す。
図8A図8Aは、第2の態様のツールの別の例を示す。
図8B図8Bは、第2の態様のツールの別の例を示す
図8C図8Cは、第2の態様のツールの別の例を示す。
図9A図9Aは、第2の態様のツールの別の例を示す
図9B図9Bは、第2の態様のツールの別の例を示す。
図10A図10Aは、本発明の第3の態様に基づいてガラス製品の開口端部に接触しているツールの概略図である。
図10B図10Bは、図10Aのツールを示す。
図10C図10Cは、図10Aのツールを示す。
図10D図10Dは、第3の態様のツールの別の例を示す。
図10E図10Eは、第3の態様のツールの別の例を示す。
図10F図10Fは、第3の態様のツールの更に別の例を示す。
図11図11は、本発明の第4の態様に基づいてガラス製品と接触しているツールの概略図である。
図12図12は、本発明の第5の態様に基づいてガラス製品を収容して成形するためのツールの分解図である。
図13A図13Aは、本発明の第6の態様に基づいてガラス製品を製造する方法の概略図である。
図13B図13Bは、本発明の第6の態様に基づいてガラス製品を製造する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付図面に示す、本発明を限定するものではない、幾つかの好ましい本発明の態様を詳細に説明する。
【0027】
本発明は、ガラス製品の製造方法を提供し、その方法は、少なくとも(A)ガラス製品、特に中間ガラス製品を提供する工程、(B)ガラス製品の一部分を所定温度に加熱する工程、(C)ツールをガラス製品の加熱部分と接触させる工程、ならびに(D)ツールが加熱部分に接触した状態で、ツールおよびガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよびガラス製品の少なくとも一方を回転させる工程を含み、加熱部分に接触するツールの一部分は、ガラス状炭素部分を含むか、またはガラス状炭素でできている。ガラス製品を製造するこの方法は、(E)ツールを冷却する工程を任意選択で含むことができる。より具体的には、ガラス管の加熱部分と接触しているツールの表面を、例えば、空気で冷却することができる。これらの工程を、以下、詳細に説明する。
【0028】
幾つかの態様では、最終的なガラス製品は、例えば液体または固体を封入するための医療用容器であり得る。前記固体は、薬剤等の粉末状の医療用組成物を含み得る。これらのガラス製品の具体例には、バイアル、アンプル等が含まれる。
【0029】
幾つかの態様では、工程(A)で提供するガラス製品または中間ガラス製品は、ガラス管であってよく、また、ガラス製品の底部を形成する閉鎖端部を有してよい。別の態様では、ガラス製品または中間ガラス製品は、開口端部を有するガラス管であってもよく、ガラス容器の「ネック」が開口端部の近くに形成される。ガラス製品または中間ガラス製品は、ホウケイ酸ガラス部分を含み得るか、またはホウケイ酸ガラスから形成されたものであってよい。好ましくは、ガラス製品または中間ガラス製品は、タイプ1ガラス(Type 1 glass)から作られたものであってよい。そのような材料は、以下で説明するように、本発明でツールに使用される炭素材料と良好な適合性を有し、従って、所望の反射率を備えた外面を有するガラス製品を製造することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、本発明による方法の工程(B)は、バーナーによって実行してもよい。工程(B)における所定の温度は、900℃~1400℃の範囲であり得る。好ましくは、ガラス製品または中間ガラス製品、例えばガラス管は、ガラス材料の変態温度より高い温度に加熱されてもよい。ガラス製品または中間ガラス製品がこの範囲内の温度に加熱され、続いて工程(C)および(D)の処理に付されると、ガラス製品の結果として得られる表面は、好ましい反射率、特に従来技術の製造技術で達成できるより均質な反射率を有する。
【0031】
幾つかの態様では、ツールおよびガラス製品または中間ガラス製品のひとつのみを工程(D)で回転する。別の態様では、ツールとガラス製品または中間ガラス製品を同時に、同じ方向または反対方向に回転させてもよい。ツールおよびガラス製品または中間ガラス製品の少なくとも1つが回転するとき、相対回転速度(頻度)は、100回転/分~500回転/分であってよい。
【0032】
幾つかの態様では、工程(C)および(D)で使用するツールは、特定の炭素材料を含む。具体的には、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分に接触することになるツールの少なくとも一部分は、ガラス状炭素(glassy carbon)でできている。ツール全体がそのような材料でできていてもよい。上記の材料でコーティングされた基材(例えば、グラファイト基材)または上記の材料が設けられた支持体等の他の構造物もツールとして使用できる。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ガラス状炭素」は、非常に無秩序な構造を有する炭素の形態を示す。「ガラス様炭素(glassy-like carbon)」または「ガラス質炭素(vitreous carbon)」としても知られ、「難黒鉛化性炭素(non-graphitizing carbon)」または「非黒鉛化炭素(non-graphitizable carbon)」と呼ばれることもある。ガラス状炭素の正確な原子構造は完全には理解されていないが、sp2結合炭素原子から本質的に成り、フラーレン関連構造を持ち得ると知られている。ガラス状炭素は、例えば、HTW Hochtemperatur-Werkstoffe GmbH(ドイツ、ティールハウプテン(Thierhaupten))から商標名SIGRADUR (登録商標)で市販されている。幾つかの他の態様では、本発明で使用するツールは、ダイヤモンド状炭素(diamond-like carbon、DLC)等の他のアモルファス炭素材料部分を有して成るか、またはそれからできていてよい。
【0034】
本発明によれば、ガラス製品の製造にガラス状炭素部分を有して成るか、またはそれからできているツールを使用することにより、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分とツールとの間の潤滑性が改善される。その結果、離型剤として使用するオイルの量を減らすことができる。特に好ましい場合には、油または他の潤滑剤を使用する必要は全くない。これにより、従来の方法で行っていた油を除去する工程を省略でき、それによって、製造方法を簡略化できる。
【0035】
また、ガラス状炭素は他のカーボン素材(例えばグラファイト)に比べて高い耐摩耗性を有する。ガラス製品(例えばバイアル)の従来の製造では、ガラス管等のガラス製品の加熱部分の表面にツールを接触させ(または押し付け)、ツールおよびガラス管を相対的に回転させて加熱部分を成形する。この処理の間、加熱部分の表面との摩擦によりツールが摩耗する。時間の経過と共に、ガラス管の加熱部分と接触するツールの表面は粗面化される。その結果、ツールのトポロジーおよび寸法の変化により、底部表面の光反射率の均一性が損なわれるため、ツールを新しいものと交換する必要がある。他方、本発明に基づいてガラス状炭素のツールを使用する場合、ツールの使用開始後、交換が必要になるまでに製造できるガラス製品の数は、他の炭素材料(例えばグラファイト)で作られたツールを使用する場合に製造されるガラス製品の数よりも多い。同時に、製造されたガラス製品の品質は優れている。換言すれば、ツールの交換頻度が少なくなり、または、ツールの交換間隔が長くなる。これにより、ツールを頻繁に交換する必要がなくなり、ツール交換の手間を軽減または省略できる。
【0036】
ガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から形成されたツールを使用する場合、そのビッカース硬度(HV)は、180HV~400HV、好ましくは200HV~360HV、より好ましくは220HV~340HV、最も好ましくは230HV~250HVである。ビッカース硬度は、ダイヤモンドピラミッドインデンター(ダイヤモンド圧子、diamond pyramid indenter)を所定の荷重で試料材料に押し込んで残ったくぼみの対角線の長さを測定することによって計算される。使用する荷重は、9.8mN(1gf)~980N(100kgf)の範囲である。ビッカース試験は、すべての固体材料を試験するために使用でき、幅広い用途に適する。参照できる適用可能な規格は、たとえば、ASTM E384(マイクロレンジおよびマクロレンジ用)、ISO 6507(マイクロレンジおよびマクロレンジ用)およびJIS Z 2244である。
【0037】
幾つかの態様では、冷却工程(E)は、図2および図3Bを参照して以下に例示的に説明するように、ツールに少なくとも1つの空気導管を配置することによって達成できる。
【0038】
幾つかの態様では、ツールは、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分と接触することになる表面に形成された微細なテクスチャーを更に備えている。微細なテクスチャーは、通常の研磨ペーパーと同様の構造であってよい。微細なテクスチャーの表面粗さRzは、0.4~1.8μmの範囲内であってよく、ここで、Rzは、一般に理解されている表面粗さの尺度であり、サンプリング長全体の5つの最高のピークと5つの最低の谷に基づいて算出する。微細なテクスチャーは、加熱されたガラスとツールとの間に空気がトラップされるのを防ぎ、それにより、ガラス容器の結果として得られる表面の良好な反射率をもたらすことができる。
【0039】
本発明で使用できるツールの幾つかの具体的な構成を以下で更に説明する。
【0040】
図1および図2は、それぞれ、本発明の第1の態様に基づくツールの異なる斜視図を示す。図3Aは、ガラス容器(例えばバイアル)等のガラス製品または中間ガラス製品の閉鎖端部と接触している、本発明の態様のツールの概略図である。図3Bは、図3Aと同じ状態のツールおよびガラス製品または中間ガラス製品の断面図である。第1の態様のツールは、ガラス容器の底部を形成するために使用する。
【0041】
図1図2図3Aおよび図3Bを参照すると、ツール10は、キャリア11と、キャリア11を取り囲むカップリングナット14と、ナット14内でキャリア11上に配置されたプレート状インサート12とを含む。図3Bに示すプレート状インサート12は、実質的に平坦な表面を有するディスク形状のプレートである。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。プレート状インサートは、他の態様では、凸部(例えば図3Aを参照)、凹部、または他のいずれかのトポロジカル面を有してもよい。キャリア11とナット14との間の境界面は図3Bでは滑らかな面(直線)として図示しているが、対応するねじ山をそれぞれナット14の内側面およびキャリア11の外側面に形成することも考えられ、それらが互いに係合できるようにしてもよい。空気入口24および複数の空気出口26がキャリア11に形成され、空気入口24は空気出口26と流体連通している。この態様では、空気入口24はキャリア11の中心位置に形成され、空気出口26は空気入口24を包囲している。冷却流体(例えば空気)がプレート状インサート12に適切に到達できる限り、他の構成も可能である。
【0042】
図3Aまたは図3Bに示すように、本態様では、ガラス製品または中間ガラス製品18は、ガラス容器の底部を形成することになる閉鎖端部20を有する。ガラス容器の製造において、少なくとも閉鎖端部20は所定の温度に加熱され、閉鎖端部20はプレート状インサート12に押し付けられる。この点に関して、ツール10およびガラス製品18の少なくとも一方は、これら2つの要素を接触させることができる機構(例えばチャック、図示せず)によって保持される。
【0043】
ガラス容器の製造において、図3Aおよび図3Bに概略的に示すように、閉鎖端部20の外面22がプレート状インサート12の接触面16に押し付けられた状態で、ツール10およびガラス製品18の少なくとも一方をX軸の回りで回転させ、ツール10およびガラス製品18が相対的に回転するようにする。これに関して、ツール10およびガラス製品18の少なくとも一方は、X軸の周りで回転運動を作動させることができる機構(図示せず)によって保持される。ツール10とガラス製品18の両方が回転する状況では、それらは反対方向に回転させることができる(図3Bの矢印Aおよび矢印Bを参照)。また、インサート12とナット14との間の空間の中心に、空気入口24から空気を注入し、空気出口26から空気を排出してもよい。そのように空気を供給して排出することにより、プレート状インサート12が冷却され、それによって、ガラス製品18の加熱部分(例えば閉鎖端部20)がインサート12に付着するのを防止できる。
【0044】
本態様では、接触面16を形成するプレート状インサート12の少なくとも一部分は、ガラス状炭素で構成されている。場合によっては、プレート状インサート12の全体がガラス状炭素で形成されてもよく、他の場合では、接触面16を形成するプレート状インサート12の一部分のみがガラス状炭素で形成されている。このような場合、プレート状インサート12は、基材上にコーティングされたガラス状炭素の層を有することによって形成されてもよい。具体的には、グラファイト基材上にガラス状炭素の被覆を形成することにより、プレート状インサートを形成することができる。
【0045】
ガラス状炭素を使用する場合、ガラス製品または中間ガラス製品18の加熱部分は、プレート状インサート12に付着する傾向がより少ない。その結果、ガラス容器の底部の形成後、プレート状インサート12は底部から簡単に外すことができる。加えて、ガラスの細かい物質(例えばフレークまたは粒状物)は、プレート状インサート12に付着しにくい。これらの細かい物質がプレート状インサートに付着すると、プレート状インサートの表面が粗面化され、そのように粗面化されたプレート状インサートに閉鎖端部20が接触すると、得られる底部表面の光反射率に悪影響を与えることになる。従って、ガラス状炭素を使用することにより、プレート状インサート12への微細物質の付着が抑制される。その結果、このようなプレート状インサートを使用する場合、ガラス容器の底部表面の好ましいより均一な反射率を達成できる。
【0046】
図4図6は、ガラス製品または中間ガラス製品、例えばガラスバイアルの開口端部に接触するように構成された、本発明の第2の態様によるツールを示す。図4は、ツールの要素の分解図である。図5は、一体に組み立てたツールの斜視図である。図6は、ガラス製品または中間ガラス製品の開口端部と接触しているツールの概略図である。
【0047】
図4図6を参照すると、ツール40は、キャリア41、キャリア41に取り付けられる第1形成要素42、および第1形成要素42に取り付けられ、そこから突出するピン(またはマンドレル)44として構成される第2形成要素を含む。キャリア41、第1形成要素42およびピン44は、図4および図5に示すように、ねじ45等の一般に知られている手段によって組み合わせることができる。
【0048】
本態様のツール40は、ガラス容器の「口」部分を形成するために使用される。図6に示すように、ガラス容器の製造において、開口端部50に近いガラス製品または中間ガラス製品48の一部分52を所定温度に加熱し、次に、中間ガラス製品48の開口端部50をツール40の第1形成要素42と接触させる。ガラス製品または中間ガラス製品48の加熱部分52は、ガラス容器のネックを形成する部分である。上述の第1態様と同様に、ツール40およびガラス製品または中間ガラス製品48の少なくとも一方を、これらの2つの対象物を接触させることができる機構によって保持する。
【0049】
ツール40がガラス製品または中間ガラス製品48の加熱部分52に接触すると、ピン44の側面が加熱部分52の内面に接触し、第1形成要素42の上面43がガラス製品または中間ガラス製品48の開口端部50に接触する。加熱部分52の内面は、加熱部分52に加えられる横方向の力によってピン44の側面45と接触させてもよい(例えば図10Aを参照)。また、第1の態様と同様に、そのような状態でツール40およびガラス製品または中間ガラス製品48の少なくとも一方を回転させる。
【0050】
本態様では、ピン44の全体および第1形成要素42の全体がガラス状炭素で作られている。但し、本発明はこれに限定されるものではない。加熱部分52に接触するピン44および第1形成要素42の一部分のみがガラス状炭素で作られていることも可能である(例えば図9Aおよび図9B参照)。
【0051】
幾つかの態様では、第1形成要素42は、その上面43の一部分のみがガラス製品または中間ガラス製品48の開口端部50に接触するように形成されていてもよい。例えば、この場合、図4に示すように、2つの対向して位置する凹部49が第1形成要素42に形成されている。その結果、ツール40がガラス製品または中間ガラス製品48の開口端部50に接触すると、ガラス製品または中間ガラス製品48上に適切な平面端面を形成できる。
【0052】
幾つかの態様では、ピン44は、その側面の一部分のみが加熱部分52の内面に接触するように形成されている。例えば、この場合、ピン44の実質的に垂直な側面に幾つかの傾斜面を形成し(図4および図5を参照)、その結果、加熱部分52へのピン44の付着を抑制し、また、ガラス製品または中間ガラス製品48上に適切な内側面を形成できることが確実になる。
【0053】
図7は、第2の態様に基づくツールの別の例の分解図および斜視図を示す。図7を参照すると、ツール60は、キャリア61、第1形成要素62、およびピン64の形態の第2形成要素を含む。第1形成要素62は、2つの別個の構成要素62aおよび62bから構成され、それぞれにステップ63が設けられ、ツール60を使用する時、第1形成要素62の上面の一部分のみがガラス製品または中間ガラス製品の開口端部に接触するようになっている。図7から分かるように、キャリア61には、第1形成要素62およびピン64を収容するための凹部および貫通孔がそれぞれ形成され、第1形成要素62の構成要素62aおよび62bにはピン64を収容するように対応する凹部が形成されている。この構成により、キャリア61、第1形成要素62およびピン64は、一体に組み合わせて、固着要素、例えばロックスクリュー66で締結できる。
【0054】
図8Aは、第2の態様のツールの別の例の分解図および斜視図を示す。図8Aを参照すると、ツール70は、キャリア71、第1形成要素72、およびピン74として形成された第2形成要素を含む。ツール70を使用する時、第1形成要素72の上面の一部分のみが、ガラス製品または中間ガラス製品の開口端部に接触するように、第1形成要素72にはスロープ73が設けられている。図8Aのピン74は、図7に示すピン64のように完全に円筒形(または円柱形)ではない。ピン74の側面の一部分は、湾曲しているのではなく平坦である。言い換えると、ピン74の中心軸からその側面の特定の点までの距離が円周方向で変化するので、ツール70の使用時に、ピン74の側面の一部分のみがガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分の内面に接触する。
【0055】
図8Aを参照すると、ステップ75の形態の回転止めが、第1形成要素72の底部に形成され、第1形成要素72の円周の一部分に沿って延びる。ステップ75に対応する構造部76(対応する回転止め)がキャリア71の上部に形成されているため、第1形成要素72がキャリア71に結合(係合)されると、ステップ75のそれぞれの端部にある垂直壁が構造部76のそれぞれの端部にある垂直壁に接触し、キャリア71および第1形成要素72が相対的に回転するのを防止する。
【0056】
図8Bおよび図8Cはそれぞれ、第2の態様に基づくツールの別の例の分解図および斜視図を示す。ツール170は、キャリア171、第1形成要素172、ピン174の形態の第2形成要素およびこれらの構成要素を組み合わせるためのねじ175を含む。図8Bおよび図8Cに示すツール170は、図7および図8Aに示すものと類似するが、第1形成要素172がスロープ173およびステップ175を備える点で大きく異なり、その結果、ツール170を使用する時、第1形成要素172の上面の一部分のみが、ガラス製品または中間ガラス製品の開口端部に接触する。
【0057】
図9Aおよび図9Bは、第2の態様に基づくツールの別の例の分解図および斜視図を示す。図9Aおよび図9Bを参照すると、ツール80は、ベース82と、ベース82上に取り付けることができるヘッド(インサート)84とを含む。具体的には、ヘッド84は、ガラス製品または中間ガラス製品の内面に接触するように構成された上方部84a、ガラス製品または中間ガラス製品の開口端部に接触するように構成された中間部分84b、およびベース82に形成された挿入ポケット86に挿入されるように構成された下方部84cを含む。対応するねじ穴82dおよび84dをベース82およびヘッド84の下方部84cにそれぞれ形成して、ヘッド84およびベース82を、ねじ穴82dおよび84dを介して例えばねじ(図示せず)によって組み合わせることができる。図9Aおよび図9Bに示すように、ベース82およびヘッド84は、それぞれ2つの別個の同じ要素から構成される。このような場合、ベース要素82のそれぞれにねじ穴82aを形成して、これらの別個の要素を、ねじ穴82aを介して例えばねじ(図示せず)によって組み合わせることができる。更に、ガラス製品の内面を成形するために、ヘッド84の上方部84aの側面に特徴部が形成されてもよい。例えば、図8および図9では、ヘッド84の上方部84aの側面に突起89が形成されており、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分がヘッド84に押し付けられると、突起89がガラス製品または中間ガラス製品の内面に溝または凹部を形成する。凹部は、ガラス容器用の蓋によるより良好な封止(シール)を提供することができ、蓋の係合機能がガラス製品または中間ガラス製品の溝または凹部によって提供されるアンダーカットに係合できる。
【0058】
ヘッド84はガラス状炭素で作られているが、ベース82は必ずしもガラス状炭素部分を有する必要はない。ベース82およびヘッド84は共に、図4図8Cに示す先の例の「ピン(第2形成要素)」および「第1形成要素」の対応する部分を形成する。しかしながら、本態様では、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分に接触する「ピン」および「第1形成要素」の一部分のみがガラス状炭素で形成されている。
【0059】
図10Aは、本発明の第3の態様に基づくガラス製品または中間ガラス製品の開口端部と接触しているツールの斜視図である。本態様のツールは、ガラス容器の「口」部分を形成するためにも使用され、図4図9Bに示すツールと協働して使用できる。ツール90はローラーであってもよい。使用時、ツール90の側面は、ガラス製品または中間ガラス製品98の加熱部分92の外面に接触し、ツール90およびガラス管98の少なくとも一方を回転させる。ツール90とガラス管98の両方を回転させる場合、それらの回転軸は互いに実質的に平行であってもよい。これに関して、ツール90および中間ガラス製品98の少なくとも一方は、これらの2つの対象物を接触させるように構成された機構によって保持され、ツール90およびガラス製品または中間ガラス製品98の少なくとも一方は、回転運動を作動させるように構成された機構によって保持される。例えば、ツール90は、それを回転させ、その回転軸に対して垂直な方向に移動するように構成されたキャリアに取り付けることができる。図10Aに示すように、ガラス製品を製造するための装置は、ガラス製品または中間ガラス製品98の加熱部分92に対向する側から接近し、それに押し付けるように構成された一対のツール90を含み得る。
【0060】
図10Bおよび図10Cは、それぞれ、第3の態様に基づくツールの分解図および斜視図を示す。双方の図を参照すると、ツール90は、キャリア91、キャリア91に結合され、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分の外面を押し付けるように構成されたリング92ならびに他の構造要素93、94および95を含み、これらの全てはねじ96によって組み合わせることができる。リング92は、ガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から作られる。ツール90の他の構成要素は、ガラス状炭素を含んでも、あるいは含まなくてもよい。キャリア91は、例えば鋼またはグラファイトで形成されていてもよい。
【0061】
図10Dおよび図10Eは、それぞれ、第3の態様に基づくツールの別の例の分解図および斜視図を示す。ツール100は、キャリア101、リング102およびナット103を含む。リング102は、ガラス状炭素で形成され、キャリア101に組み合わせて、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分の外面を押すように構成されている。図10Dから分かるように、リング102は、互いに同心円状に積み重ねられる第1サブリング102a、第2サブリング102bおよび第3サブリング102cから構成され得る。第2サブリング102bは、第1サブリング102aと第3サブリング102cとの間に配置され、第2サブリング102bの最外径は、第1サブリング102aおよび第3サブリングの最外径よりも大きい。即ち、リング102の側面は平坦ではなく、例えばガラス容器のネック部分に所望のプロファイルを一体で提供する幾つかのセグメントから構成される。
【0062】
図10Fは、第3の態様に基づくツールの更に別の例の概略図を示す。ツール109は、キャリア104、ナット105およびリング106を含む。リング106は、ガラス状炭素から形成され、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分の外面を押し付けるように構成される。ツール109の他の構成要素は、必ずしもガラス状炭素を含む必要はない。例えば、キャリア104は鋼で形成されてもよく、他方、ナット105はグラファイトで形成されていてもよい。
【0063】
図11は、本発明の第4の態様に基づく、ガラス製品または中間ガラス製品と接触しているツールの概略図を示す。図11に示すように、この場合、製造されるガラス製品はシリンジであってよく、その中間ガラス製品はガラス管であってよい。ツール110と接触する前に、中間ガラス製品(ガラス管)118は、シリンジヘッド119がガラス管118の一端にて既に形成されていてよいことを除いて、その長さに沿って直径D1を有してよい。
【0064】
ツール110は、先細りの端部114を有するピン112を含む。ピン112は、ガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から形成され、例えばベアリング116によって保持される。ピン112の先細りの端部114の側面は、ガラス管118の加熱部分117を押し付けるように構成されている。加熱部分117におけるガラス管118の元の直径はD1であるが、加熱部分117は、ピン112が押し付けられると変形して、加熱部分117におけるガラス管118の直径がD1から直径D2に増加し、それにより、シリンジの他方の端部が形成される。
【0065】
幾つかの態様では、本発明で使用するツールは、ガラス製品または中間ガラス製品を収容するように構成された金型であってよい。
【0066】
例えば、図12は、本発明の第5の態様に基づく、ガラス製品または中間ガラス製品を収容および成形するためのツール(すなわち金型)の分解図を示す。この場合、ツール120は、シリンジヘッドを形成するように構成される。ツール120は、互いに組み合わされてシリンジヘッドの外形に対応するモールドキャビティ121を形成するように構成された第1モールド122および第2モールド124を含む。第1モールド122および第2モールド124は、互いに同じであってもよい。従って、第2モールド124の隠れている側の構造は、相手方としての第1モールド122を観察することで理解できる。第1の部分開口部123が第1モールド122に形成され、第2の部分開口部(図示せず)が第2モールド124に形成され、第1モールド122と第2モールド124が互いに組み合わされると、第1部分開口部123および第2部分的開口部は互いに組み合わされて、モールドキャビティ121に連通する貫通穴を形成する。ツール120は、貫通穴123を介してモールドキャビティ121に挿入されるように構成されたピン128を更に含み、それによってシリンジヘッドの前端部にて穴を形成する。第1モールド122、第2モールド124およびピン128のそれぞれは、ガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から形成され得る。
【0067】
図13Aおよび図13Bは、第6の態様に基づいてガラス製品を製造する方法の概略図を示す。本態様では、ツール130は、ガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素でできた型であり、ガラス製品または中間ガラス製品は、ガラス管138である。ガラス管138は、ツールと接触することになる端部に開口部を有する。図13Aに示すように、開口部は直径D1を有する。ガラス製品の製造中、ガラス管138は開口端部にて加熱され、ツール130の底面131と接触する。力がツール130またはガラス管138のいずれかに加えられ、ツール130の底面131は、ガラス管138を押し付けて変形させ、ガラス管138の加熱部分のガラス材料を底面131上に溜め、開口部の直径をD1から図13Bに示すようにD2に減少させる。このプロセスは、続行してよく、開口部を完全に閉じることができる、即ち、D2をゼロにできる。
【0068】
また、態様、例または図面を参照して先に具体的に説明したいずれの特徴も、特に断らない限り、他の箇所で説明した特徴と組み合わせることができると考えられる。例えば、ステップ63(図7)またはスロープ73(図8A)は、第1形成要素42(図4図5)上に形成することができる。第1の態様の空気導管(図2および図3B)は、第2の態様のツールに設けてもよい。
【0069】
本発明の他の要旨では、ガラス容器およびガラス製品を製造するためのツールならびに装置も考えられる。具体的には、本発明は、ガラス製品を製造する方法に使用できるツールも提供し、その方法は、ガラス製品または中間ガラス製品を提供すること、ガラス製品または中間ガラス製品の一部分を所定の温度に加熱すること、ツールとガラス製品または中間ガラス製品とを接触させること、ならびにツールが加熱部分に接触する状態で、ツールとガラス製品または中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させて、ツールおよびガラス製品または中間ガラス製品とを相対的に回転させることを含み、加熱部分に接触する、このツールの一部分はガラス状炭素製で形成されている。ツールは、例えば、図1図13Bを参照して説明したツールのいずれであってもよい。本発明は、また、ガラス製品を製造するための装置を提供する。装置は、ガラス製品または中間ガラス製品の加熱部分が接触するツールと、ツールを加熱部分と接触させ、ツールおよびガラス製品または中間ガラスの少なくとも一方を回転させて、ツールとガラス製品または中間ガラス製品を相対的に回転させる手段を含み、加熱部分に接触する、ツールの一部分がガラス状炭素により形成されている。また、本発明は、上述の方法により製造されるガラス製品を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、例えばより良好な光反射率を有する、ガラス容器の底部またはネックのいずれかの表面をもたらすことができる。

尚、本願は、以下に示す態様をも包含する:

態様1
ガラス製品の製造方法であって、
中間ガラス製品を提供すること、
中間ガラス製品の一部を所定の温度に加熱すること、
ツールを中間ガラス製品の加熱部分と接触させること、および
ツールが加熱部分に接触する状態で、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させること
を含み、加熱部分に接触するツールの一部分はガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素で形成されている、製造方法。

態様2
加熱部分が中間ガラス製品の閉鎖端部に位置し、ツールがプレートであり、ツールおよび中間ガラス製品の閉鎖端部を相互に押し付ける態様1に記載の方法。

態様3
加熱部分が中間ガラス製品の開口端部に位置する態様1に記載の方法。
態様4
ガラス製品がガラス容器であり、加熱部分がガラス容器のネックに対応する態様1または3に記載の方法。

態様5
ツールが第1形成要素;および第2形成要素を有して成り、
第1形成要素は、中間ガラス製品と接触し、ガラス容器の端面を形成するように構成され、
第2形成要素は、第1形成要素から突出するピンとして構成され、
ツールが加熱部分に接触する状態で、第2形成要素の側面は加熱部分の内面に接触し、第1形成要素の上面は中間ガラス製品の開口端部に接触する態様4に記載の方法。

態様6
ツールの側面が加熱部分の外面を押す態様3または4に記載の方法。

態様7
ツールは、キャリア、およびキャリアに組み合わされ、加熱部分の外面を押すように構成されたリングを有して成り、
リングはガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から形成され、キャリアは鋼部分またはグラファイト部分を有して成る態様6に記載の方法。

態様8
リングは、同心円状に積み重ねられる第1サブリング、第2サブリングおよび第3サブリングを有して成り、第2サブリングは、第1サブリングと第3サブリングとの間に配置され、第2サブリングの直径は、第1サブリングの直径および第3サブリングの直径よりも大きい態様7に記載の方法。

態様9
中間ガラス製品は、端部に第1直径を有するガラス管であり、加熱部分はガラス管の端部に位置し、
ツールは、テーパー端部を有するピンを有して成り、テーパー端部の側面は、ガラス管の端部の一部分を押すように構成され、
ツールが加熱部分を押した状態で、ガラス管の端部の直径が第1直径から第2直径に増えるように加熱部分を変形する態様1に記載の方法。

態様10
ツールが、中間ガラス製品の少なくとも一部分を収容するように構成された金型を有して成る態様1に記載の方法。

態様11
ツールは、シリンジヘッドを形成するように構成され、
ツールは、互いに組み合わされてシリンジヘッドの外形に対応するモールドキャビティを形成するように構成された第1モールドおよび第2モールド、ならびに
モールドキャビティに貫通孔を介して挿入するピン
を有して成り、
第1モールドに第1部分開口部が形成され、第2モールドに第2部分開口部が形成され、第1モールドおよび第2モールドを相互に組み合わせると、第1部分開口部および第2部分開口部が相互に組み合わされてモールドキャビティにつながる貫通孔を形成するようになっている態様10に記載の方法。

態様12
中間ガラス製品は、端部に第1直径の開口部を有するガラス管であり、加熱部分はガラス管の端部に位置し、
ツールは、収容空間を画定する底面および側面を有し、底面はガラス管の端部を押すように構成され、
ツールが加熱部分を押す状態で、加熱部分が変形して、開口部の直径が第1直径から第2直径に減少し、第2直径はゼロまたはそれより大きい態様10に記載の方法。

態様13
加熱部分と接触することになるツールの表面上に微細なテクスチャーが形成されている態様1~12のいずれかに記載の方法。

態様14
ツールおよび/またはガラス製品が100回転/分~500回転/分の相対回転速度で回転する態様1~13のいずれかに記載の方法。

態様15
ガラス製品の製造方法で使用するツールであって、方法は、
中間ガラス製品を提供すること、
中間ガラス製品の一部分を所定の温度に加熱すること、
ツールを中間ガラス製品の加熱部分に接触させること、ならびに
ツールが加熱部分に接触している状態で、ツールおよび中間ガラス製品が相対的に回転するように、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させること
を含み、
加熱部分に接触するツールの一部分は、ガラス状炭素部分を有して成るか、またはガラス状炭素から成形されているツール。

態様16
ガラス製品を製造するための装置であって、
中間ガラス製品の加熱された部分と接触させるツール、および
ツールを中間ガラス製品の加熱部分と接触させ、ツールおよび中間ガラス製品の少なくとも一方を回転させてツールおよび中間ガラス製品を相対的に回転させる手段
を有して成り、加熱部分に接触するツールの一部分はガラス状炭素部分を有して成るか、ガラス状炭素で構成されている装置。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12
図13A
図13B