(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】経口投与用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/54 20060101AFI20230926BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230926BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230926BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230926BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230926BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K31/54
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/38
A61P21/00
A61P25/04
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/28
A61P25/30
(21)【出願番号】P 2020539609
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034051
(87)【国際公開番号】W WO2020045607
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018163234
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100117846
【氏名又は名称】鈴木 ▲頼▼子
(74)【代理人】
【識別番号】100137464
【氏名又は名称】濱井 康丞
(74)【代理人】
【識別番号】100177482
【氏名又は名称】川濱 周弥
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 竜
(72)【発明者】
【氏名】坂井 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】東 亮太
(72)【発明者】
【氏名】田中 茉里奈
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056771(WO,A1)
【文献】特表2016-538256(JP,A)
【文献】TAGAWA Maya et al.,Effect of various Disintegrants on Drug ReleaseBehavior from Tablets,薬剤学,2003年08月11日,Vol.63,PP.238-248、Issue4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/54
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 47/38
A61P 21/00
A61P 25/04
A61P 25/08
A61P 25/18
A61P 25/22
A61P 25/28
A61P 25/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ
6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩、及び水膨潤性物質を含有し、前記水膨潤性物質が
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
水膨潤性物質が、6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ
6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩の重量に対して20重量%以上6000重量%以下である、請求項
1に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項3】
経口投与用医薬組成物が、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及び散剤からなる群より選択される、請求項
1又は2に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項4】
経口投与用医薬組成物が、錠剤である、請求項1又は2に記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の経口投与用医薬組成物を70℃で9日間保存し、保存する前と後の前記経口投与用医薬組成物を、第十七改正日本薬局方溶出試験法のパドル法において、0.1mol/L塩酸900mLの溶出試験液(液温度は37±1℃)を用いてパドル50回転/分の条件でそれぞれ溶出試験を実施したときの、試験開始15分後の6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ
6
-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジンの溶出率が、保存前と保存後のいずれにおいても、75%以上である経口投与用医薬組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の経口投与用医薬組成物を密閉容器に入れ、40℃相対湿度75%で1箇月保存し、保存する前と後の前記経口投与用医薬組成物を、第十七改正日本薬局方溶出試験法のパドル法において、0.1mol/L塩酸900mLの溶出試験液(液温度は37±1℃)を用いてパドル50回転/分の条件でそれぞれ溶出試験を実施したときの、試験開始15分後の6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ
6
-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジンの溶出率が、保存前と保存後のいずれにおいても、75%以上である経口投与用医薬組成物。
【請求項7】
6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ
6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩を含有する安定な経口投与用医薬組成物の製造のための、低置換度ヒドロキシプロピルセルロー
スの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩を含み、速やかな薬物溶出性を示す安定な経口投与用医薬組成物に関する。
詳細には、本発明は、6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩、及び水膨潤性物質を含有してなる経口投与用医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン(以下、化合物Aと称することもある。また「1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル」は、「1,1-ジオキシドチオモルホリン-4-イル」とも称される。)は、以下の化学構造式で示される化合物である。化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、GABABポジティブアロステリックモジュレート剤として、例えば、統合失調症、統合失調症に伴う認知障害(CIAS)、認知機能障害、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム症候群、痙縮、不安障害、物質依存症、疼痛、線維筋痛症、又はシャルコー・マリー・トゥース病等の予防、及び/又は、治療剤として有用であることが報告されている(特許文献1)。しかし、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含み、速やかな薬物溶出性を示す安定な経口投与用医薬組成物に関する開示はない。
【0003】
【0004】
化合物Aを製剤化するにあたり、化合物Aの溶解性を第十七改正日本薬局方の溶出試験法に基づき確認したところ、酸性pH領域と中性pH領域で大きな差があった。すなわち、化合物Aの溶解度は酸性pH領域(第十七改正日本薬局方の溶出試験第1液)においては約41μg/mLであるのに対し、中性pH領域(第十七改正日本薬局方の溶出試験第2液)においては約1.2μg/mLと、約30倍の差異があった。
【0005】
薬物を製剤化する際は、目的とする薬理効果を発現させるために、速やかな薬物溶出性を示すことが望ましい。また、患者の安全性の観点から、製剤の製造中及び保存中に安定であることが望ましい。すなわち、製剤の製造中及び保存中に、類縁物質の生成は抑制されることが望ましく、製剤の保存前後で、薬物溶出性の変化は小さいことが望ましい。製剤を服用した際、製剤からの薬物溶出が遅延すると、消化管粘膜からの薬物吸収量が劣り、有効性や速効性に影響を与えることが問題となるからである。
【0006】
速やかな薬物溶出性を示す製剤を提供するには、薬物を胃内で速やかに溶解させる必要がある。特許文献2には、塩基性薬物であるシンナリジンが経口投与された場合、薬物の溶解度が個人の胃内pH値の変動により影響を受けることから、酸性物質を添加してなる医薬組成物が開示され、胃内pHが変動しても薬物の溶解度が安定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/056771号
【文献】特開昭58-134033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩を速やかに溶出させるため、化合物Aの近傍に酸性物質である無水クエン酸を配置した結果、速やかな薬物溶出性を示した。ところが、無水クエン酸と化合物Aの物理混合物における化合物Aの保存安定性を確認した結果、化合物Aの総類縁物質量が顕著に増加した(試験例1)ことから、無水クエン酸の使用は困難であった。また、無水クエン酸以外にも化合物Aは多くの医薬品添加物と化学反応する知見を得た。そのため、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する、経口投与用医薬組成物の開発にあたっては、速やかな溶出性の達成に加えて、化合物Aの安定性を考慮する必要があった。
本発明の課題は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する経口投与用医薬組成物において、速やかな薬物溶出性を示す安定な経口投与用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる状況下、本発明者らは、特に、化合物Aの溶出性、及び化合物Aの安定性に着目して鋭意検討を行った結果、水膨潤性物質を含む経口投与用医薬組成物が速やかな薬物溶出性を維持しつつ、かつ化合物Aの安定性が良好であることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩、及び水膨潤性物質を含有し、前記水膨潤性物質が、β-グルコースが縮合重合した高分子化合物、α-グルコースが縮合重合した高分子化合物、及びピロリドン官能基を有する高分子化合物からなる群より選択される1種又は2種以上である、経口投与用医薬組成物、
[2]水膨潤性物質が、
i)β-グルコースが縮合重合した高分子化合物である、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、
ii)α-グルコースが縮合重合した高分子化合物である、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、及びアルファー化デンプン、並びに
iii)ピロリドン官能基を有する高分子化合物である、クロスポビドン、
からなる群より選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質である、[1]の経口投与用医薬組成物、
[3]水膨潤性物質がβ-グルコースが縮合重合した高分子化合物であり、β-グルコースが縮合重合した高分子化合物が、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上である、[2]の経口投与用医薬組成物、
[4]β-グルコースが縮合重合した高分子化合物が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、[3]の経口投与用医薬組成物、
[5]水膨潤性物質がα-グルコースが縮合重合した高分子化合物であり、α-グルコースが縮合重合した高分子化合物が、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、及びアルファー化デンプンからなる群より選択される1種又は2種以上である、[2]の経口投与用医薬組成物、
[6]水膨潤性物質がピロリドン官能基を有する高分子化合物であり、ピロリドン官能基を有する高分子化合物が、クロスポビドンである、[2]の経口投与用医薬組成物、
[7]水膨潤性物質が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及びクロスポビドンからなる群より選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質である、[2]の経口投与用医薬組成物、
[8]水膨潤性物質が、6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩の重量に対して20重量%以上6000重量%以下である、[1]~[7]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[9]経口投与用医薬組成物が錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及び散剤からなる群より選択される、[1]~[8]のいずれかの経口投与用医薬組成物、
[10]6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩を含有する安定な経口投与用医薬組成物の製造のための、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及びクロスポビドンからなる群より選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質の使用、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含み、速やかな薬物溶出性を示す安定な経口投与用医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「安定な」とは、経口投与用医薬組成物の保存安定性が高いこと、及び/又は経口投与用医薬組成物の溶出安定性が高いことを意味する。ここに、「保存安定性」とは、経口投与用医薬組成物をある保存条件で保存した場合の経口投与用医薬組成物中の化合物A又はその製薬学的に許容される塩の安定性を意味し、化合物Aの分解等に由来する類縁物質の総量又は特定の類縁物質の量の変化により評価することができる。即ち、当該化合物Aの類縁物質が著しく増加しないことが、経口投与用医薬組成物の保存安定性が高いことを意味する。一方、経口投与用医薬組成物をある保存条件で保存した場合、経口投与用医薬組成物からの化合物Aの溶出率が著しく変化しないこと、特には、著しく低下しないことが、経口投与用医薬組成物の「溶出安定性」が高いことを意味する。
ここに、これらの安定性を評価するための保存条件は、目的に応じて、例えば、熱、光、温度、及び/又は湿度を変えて、あるいは保存期間を変えて、適宜設定することができる。具体的には、例えば、経口投与用医薬組成物を封がされていない容器、密封容器、気密容器、又は密閉容器に入れて、70℃で9日間、40℃相対湿度75%(以下、「相対湿度X%」を「X%RH」と略記することもある)で6箇月、40℃75%RHで3箇月、40℃75%RHで2箇月、40℃75%RHで1箇月、25℃60%RHで12箇月、25℃60%RHで6箇月、25℃60%RHで3箇月、25℃60%RHで1箇月、ISO10977に規定されているD65ランプ(1000Lux)照射下で50日間、前記D65ランプ(1000Lux)照射下で25日間、D65の放射基準に類似の出力を示すように設計されたキセノンランプ照射下で24時間、等の所望の条件で保存することができる。化合物Aの類縁物質の量、及び組成物からの化合物Aの溶出率を測定することによって両安定性を評価できる。
【0013】
本明細書において、経口投与用医薬組成物が「速やかな薬物溶出性を示す」とは、ある態様として、第十七改正日本薬局方溶出試験法のパドル法において、0.1mol/L塩酸900mLの溶出試験液(液温度は37±1℃)を用いてパドル50回転/分の条件で溶出試験(以後、溶出試験又は溶出率の測定は全て前記条件とする)を実施したときの、試験開始30分後及び/又は15分後の化合物Aの溶出率が高いことを意味する。
ここに、速やかな薬物溶出性を示す本発明の経口投与用医薬組成物は、ある態様として、試験開始30分後の化合物Aの溶出率が、75%以上、80%以上、又は、85%以上である経口投与用医薬組成物である。また、ある態様として、15分後の化合物Aの溶出率が、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、又は、75%以上である組成物である。更に、ある態様として、化合物Aの溶出率が、試験開始30分後に75%以上及び15分後に55%以上である経口投与用医薬組成物であり、試験開始30分後に80%以上及び15分後に65%以上である経口投与用医薬組成物であり、又は、試験開始30分後に83%以上及び15分後に70%以上である経口投与用医薬組成物である。
【0014】
本発明の溶出安定性が高い経口投与用医薬組成物は、ある態様として、経口投与用医薬組成物を70℃で9日間保存する前と後で溶出率を測定したとき、試験開始30分後の化合物Aの溶出率が、保存前と保存後のいずれにおいても、75%以上、80%以上、83%以上、又は、85%以上である経口投与用医薬組成物、又は、試験開始15分後の化合物Aの溶出率が、保存前と保存後のいずれにおいても、55%以上、60%以上、67%以上、又は75%以上である経口投与用医薬組成物である。更に、ある態様として、化合物Aの溶出率が、保存前と保存後のいずれにおいても、試験開始30分後に75%以上及び15分後に55%以上、試験開始30分後に80%以上及び15分後に65%以上、又は、試験開始30分後に83%以上及び15分後に70%以上である経口投与用医薬組成物である。
また、別の態様として、経口投与用医薬組成物をアルミニウム袋等の密閉容器に入れ、40℃75%RHで1箇月保存する前と後で溶出率を測定したとき、溶出試験開始30分後の化合物Aの溶出率が、保存前及び保存後のいずれにおいても、78%以上、81%以上、83%以上、又は85%以上である経口投与用医薬組成物、又は、試験開始15分後の化合物Aの溶出率が、保存前及び保存後のいずれにおいても、65%以上、67%以上、71%以上、又は75%以上である経口投与用医薬組成物である。
更に、ある態様として、経口投与用医薬組成物をアルミニウム袋等の密閉容器等に入れ、40℃75%RHで1箇月保存する前と後で溶出率を測定したとき、化合物Aの溶出率が、保存前と保存後のいずれにおいても、試験開始30分後に78%以上及び15分後に65%以上、試験開始30分後に81%以上及び15分後に67%以上、又は、試験開始30分後に83%以上及び15分後に70%以上である経口投与用医薬組成物である。
【0015】
本明細書における保存安定性は、経口投与用医薬組成物を一定の保存条件で保存したときの化合物Aに由来する類縁物質量の変化を測定することにより評価できる。例えば、経口投与用医薬組成物を一定条件下に保存後、経口投与用医薬組成物中に含まれる化合物Aの総類縁物質量又は特定の化合物Aの類縁物質を測定する。測定は、例えば、後記試験例1に示すように、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)により化合物Aのピーク面積と、化合物Aに対し相対保持時間が約1.8である類縁物質(以下、類縁物質Aと称することもある)を含むすべての類縁物質のピーク面積を測定することにより行うことができる。そして、化合物Aのピーク面積を含む全ピーク面積の合計に対する類縁物質の総ピーク面積の百分率(%)を算出し、これを保存前の値と比較しその変化量(増加量)(%)を算出する。或いは、後記試験例3に示すように、同様にして得た全ピーク面積の合計に対する類縁物質Aのピーク面積の百分率(%)を算出し、類縁物質Aの経時的な変化をもって保存安定性を評価することもできる。例えば、経口投与用医薬組成物を70℃で9日間、40℃75%RHで6箇月、40℃75%RHで3箇月、40℃75%RHで2箇月、40℃75%RHで1箇月等の前記各種保存条件を採用して、経口投与用医薬組成物の保存安定性を評価できる。
本明細書における「保存安定性が高い」(或いは「類縁物質が著しく増加しない」ともいう)とは、経口投与用医薬組成物を前記のいずれかの保存条件において保存したときの総類縁物質量の増加量が、2.0%以下であることを意味する。一方、増加量が、2.0%を超える場合を「類縁物質が著しく増加した」と言う。
本発明の保存安定性が高い経口投与用医薬組成物は、ある態様として、40℃75%RHで3箇月保存した場合の総類縁物質量の増加量が1.0%以下、0.50%以下、0.20%以下、又は、0.10%以下である経口投与用医薬組成物である。また、別の態様としては、40℃75%RHで3箇月保存した場合の総類縁物質量の増加量が、0.50%以下、0.20%以下、又は、0.10%以下である経口投与用医薬組成物である。
また、本発明の保存安定性が高い経口投与用医薬組成物は、ある態様として、40℃75%RHで3箇月保存した場合の類縁物質Aの量が0.20%以下、0.15%以下、又は、0.10%以下である経口投与用医薬組成物である。また、別の態様としては、40℃75%RHで3箇月保存した場合の総類縁物質量の増加量が、0.20%以下、0.15%以下、又は、0.10%以下である経口投与用医薬組成物である。
【0016】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、特許文献1に記載された製法により、或いはそれに準じた製法により、容易に入手可能である。
【0017】
化合物Aの製薬学的に許容される塩において、化合物Aは、酸との酸付加塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸との酸付加塩や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩等が挙げられる。
【0018】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、統合失調症、統合失調症に伴う認知障害(CIAS)、認知機能障害、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム症候群、痙縮、不安障害、物質依存症、疼痛、線維筋痛症、又はシャルコー・マリー・トゥース病等の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0019】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩の投与量は、例えば、疾患の症状、投与対象の年齢、人種、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定することができる。
1日の投与量は、体重当たり例えば、0.001mg/kg~100mg/kg、ある態様として、0.1mg/kg~30mg/kg、ある態様として、0.1mg/kg~10mg/kgであり、これを1回或いは2乃至4回に分けて投与する。
【0020】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩の配合割合は、経口投与用医薬組成物の全重量に対して、例えば、0.01重量%~50重量%である。
【0021】
本発明に用いられる「水膨潤性物質」としては、水と接触したときに膨潤するものであり、化合物A又はその製薬学的に許容される塩とともに経口投与用医薬組成物とした場合に、化合物Aの安定性に影響せず、化合物Aの速やかな溶出を達成し、かつ溶出安定性を付与するものであれば特に制限されないが、このような水膨潤性物質として、β-グルコースが縮合重合した高分子化合物、α-グルコースが縮合重合した高分子化合物、及びピロリドン官能基を有する高分子化合物から選択される1種又は2種以上が挙げられる。ある態様として、水膨潤性物質は、i)β-グルコースが縮合重合した高分子化合物である、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ii)α-グルコースが縮合重合した高分子化合物である、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン及びアルファー化デンプン、並びに、iii)ピロリドン官能基を有する高分子化合物であるクロスポビドン、からなる群から選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質である。ある態様として、水膨潤性物質は、i)β-グルコースが縮合重合した高分子化合物である、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ii)α-グルコースが縮合重合した高分子化合物である、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン及びアルファー化デンプン、並びに、iii)ピロリドン官能基を有する高分子化合物であるクロスポビドン、からなる群から選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質である。ある態様として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン及びクロスポビドンから選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質である。水膨潤性物質は、ある態様として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
これらの水膨潤性物質は、1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記水膨潤性物質の別の態様として、カルボキシ基(-COOH)を有さない高分子化合物が挙げられる。ここに、カルボキシ基を有さない高分子化合物とは、具体的には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、又はクロスポビドンである。また、上記水膨潤性物質の別の態様として、非イオン性の高分子化合物が挙げられる。ここに、非イオン性の高分子化合物とは、具体的には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、又はクロスポビドンである。
これらの水膨潤性物質は、1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明に水膨潤性物質として用いられる「β-グルコースが縮合重合した高分子化合物」としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。水膨潤性物質として用いられる「β-グルコースが縮合重合した高分子化合物」は、ある態様として、クロスカルメロースナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。また、ある態様として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
β-グルコースが縮合重合した高分子化合物を水膨潤性物質として用いる場合は、1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、第十七改正日本薬局方に記載の通り、セルロースの低置換度ヒドロキシプロピルエーテルである。本品を乾燥したものを定量するとき、5.0~16.0%のヒドロキシプロポキシ基(-OC3H6OH)を含むものをいう。例えば、L-HPC LH21(信越化学工業社製)等を挙げることができる。
【0025】
前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、平均粒子径又は90%積算粒子径が異なるシリーズを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明に水膨潤性物質として用いられる「α-グルコースが縮合重合した高分子化合物」としては、例えば、ある態様として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、又はアルファー化デンプンである。また、ある態様として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、又はアルファー化デンプンである。また、ある態様として、トウモロコシデンプンである。
α-グルコースが縮合重合した高分子化合物を水膨潤性物質として用いる場合は、1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明に水膨潤性物質として用いられる「ピロリドン官能基を有する高分子化合物」としては、例えば、クロスポビドン等である。
【0028】
水膨潤性物質は、本明細書に記載の所望の効果が達成される範囲において、任意の方法で配合させ本発明の経口投与用医薬組成物を製造することができる。具体的には、例えば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩と水膨潤性物質とを単に混合してもよいし、化合物A又はその製薬学的に許容される塩と水膨潤性物質とを造粒してもよい。
【0029】
水膨潤性物質の配合量としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含む経口投与用医薬組成物が安定であり、かつ速やかな薬物溶出性を示す割合であれば特に制限されない。例えば、水膨潤性物質の配合割合は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の重量に対して、20重量%以上10000重量%以下、ある様態として、20重量%以上6000重量%以下、ある様態として、50重量%以上3000重量%以下、ある様態として、70重量%以上1000重量%以下、ある様態として、100重量%以上700重量%以下、ある様態として、100重量%以上200重量%以下、ある様態として、130重量%以上200重量%以下である。また、前記水膨潤性物質の配合割合は、経口投与用医薬組成物全体の重量に対して、ある様態として、1重量%以上80重量%以下、ある様態として、5重量%以上50重量%以下、ある様態として、10重量%以上45重量%以下、ある態様として、10重量%以上30重量%以下である。なお、水膨潤性物質の配合割合の上限と下限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0030】
経口投与用医薬組成物中における、水膨潤性物質の状態としては、ある態様として、均一に分散している状態であり、ある態様として、一様に存在している状態である。前記水膨潤性物質が経口投与用医薬組成物中に均一に分散、或いは一様に存在することにより、経口投与用医薬組成物に水が浸透し易くなり、経口投与用医薬組成物に速やかな薬物溶出性を付与することができる。
【0031】
本発明の経口投与用医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等いずれの製剤であってもよいが、好ましくは錠剤である。
【0032】
本発明の経口投与用医薬組成物は、本明細書に記載の所望の効果を達成できる範囲において、所望により、更に各種医薬品添加物が適宜使用され、製剤化される。かかる医薬品添加物としては、製薬学的に許容され、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に制限されない。例えば、賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、抗酸化剤、界面活性剤、及び流動化剤等を使用することができる。
【0033】
ここに、賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、D-ソルビトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール類、デンプン、乳糖、白糖、デキストラン(例えばデキストラン40)、ブドウ糖等の糖類、その他、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0034】
結合剤としては、例えば、アラビアゴム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0035】
酸味剤としては、例えば、酒石酸、リンゴ酸等を挙げることができる。
【0036】
発泡剤としては、例えば、重曹等を挙げることができる。
【0037】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等を挙げることができる。
【0038】
香料としては、例えば、レモン、オレンジ、メントール等を挙げることができる。
【0039】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク等を挙げることができる。
【0040】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、黒色酸化鉄等を挙げることができる。
【0041】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等を挙げることができる。
【0042】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を挙げることができる。
【0043】
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸等を挙げることができる。
【0044】
これらの医薬品添加物は、1種又は2種以上組合せて、適宜適量を添加することができる。
【0045】
本発明の経口投与用医薬組成物の重量は特に制限されないが、ある態様として10~960mg、ある態様として55~650mg、ある態様として85~600mg、ある様態として110~300mgである。
【0046】
本発明の経口投与用医薬組成物は、例えば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の粉砕、造粒、乾燥、混合、成形(打錠)等の工程を含む公知の方法により製造することが可能である。
【0047】
以下に本発明の経口投与用医薬組成物の製造法を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0048】
粉砕工程
粉砕する方法としては、通常製薬学的に粉砕できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、ピンミルであり、ある様態としてピンミルである。
【0049】
造粒工程
造粒する方法としては、通常製薬学的に造粒できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、流動層造粒機、高速攪拌造粒機、押出造粒機、転動流動層造粒機、乾式造粒機、二軸エクストルーダー等を挙げることができ、ある態様として流動層造粒機である。
造粒品は少なくとも化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び所望により賦形剤を混合後、結合剤を用いて造粒したものを意味する。また、造粒品は更に前記水膨潤性物質を含んでいてもよい。
【0050】
乾燥工程
乾燥する方法としては、通常製薬学的に乾燥できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、通風乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機等を挙げることができる。所望により、乾燥後に篩、コーミル等で篩過、整粒することができる。
【0051】
混合工程
混合する方法としては、通常製薬学的に各成分を均一に混合できる方法であれば、特に制限されない。装置を用いない方法としては、ポリ袋を用いた振とうによる袋混合、乳鉢乳棒を用いた攪拌混合を挙げることができる。装置としては、例えば、V型混合機、リボン型混合機、コンテナミキサー、高速攪拌混合機等を挙げることができる。混合条件は適宜選択されれば特に制限されない。
【0052】
成形(打錠)工程
成形する方法としては、通常製薬学的に成形できる方法であれば、特に制限されない。装置としては、例えば、ロータリー式打錠機、単発打錠機、オイルプレス等を挙げることができる。
成形工程では、例えば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する造粒品、又は造粒品に滑沢剤等の各種医薬品添加物を混合した混合品(形成前混合品、特には打錠前混合品)を成形して、錠剤とする打錠法であり、この場合、水膨潤性物質は、造粒品又は形成前混合品に配合され、あるいは、化合物A又はその製薬学的に許容される塩、水膨潤性物質及び所望により適当な医薬品添加物を混合後に成形して、錠剤とする直接打錠法等を用いることができる。
【0053】
本発明には、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する安定な経口投与用医薬組成物の製造のための、水膨潤性物質、特には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及びクロスポビドンからなる群より選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質の使用が含まれる。
本発明の「使用」で用いられる「化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する経口投与用医薬組成物」、「水膨潤性物質」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」、「トウモロコシデンプン」、「クロスポビドン」等については、本発明の経口投与用医薬組成物における当該説明をそのまま適用することができる。
本発明の「使用」では、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する経口投与用医薬組成物を提供するにあたり、安定であり、かつ速やかな薬物溶出性を示すことができる。
本発明の「使用」における各成分の配合量、配合方法等については、本発明の経口投与用医薬組成物における当該説明をそのまま適用することができる。
【0054】
本発明には、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する経口投与用医薬組成物において、水膨潤性物質、特には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及びクロスポビドンからなる群から選択される1種又は2種以上の水膨潤性物質を使用することによる経口投与用医薬組成物の安定化方法が含まれる。
本発明の「安定化」で用いられる「化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する経口投与用医薬組成物」、「水膨潤性物質」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」、「トウモロコシデンプン」、「クロスポビドン」等については、本発明の経口投与用医薬組成物における当該説明をそのまま適用することができる。
ここに、「安定化」とは、経口投与用医薬組成物中における化合物A又はその製薬学的に許容される塩の安定化、並びに/若しくは経口投与用医薬組成物の溶出性の安定化の作用を意味する。
本発明の「安定化」における各成分の配合量、配合方法等については、本発明の経口投与用医薬組成物における当該説明をそのまま適用することができる。
【実施例】
【0055】
化合物Aは国際公開第2015/056771号に記載の製法に準じて製造されたものを用いた。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定解釈されるものではない。
【0056】
以下の実施例において、乳糖水和物はダイラクトーズS(フロイント産業製)、D-マンニトールはPEARLITOL 50C(ROQUETTE製)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)はHPC-L(日本曹達製)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)はL-HPC LH-21(信越化学工業製)、クロスカルメロースナトリウムはキッコレート ND-2HS(ニチリン化学工業製)、無水クエン酸は日本薬局方 無水クエン酸(小松屋製)、軽質無水ケイ酸はサイリシア 320TP(富士シリシア産業製)、フマル酸ステアリルナトリウムはPRUV(JRS Pharma社製)、ステアリン酸マグネシウムはParteck LUB MST(Merck KGaA製)、結晶セルロースはセオラス UF-711(旭化成製)又はセオラス PH-102(旭化成製)、デンプングリコール酸ナトリウムはGLYCOLYS(ROQUETTE製)、クロスポビドンはPolyplasdone XL(Ashland製)、トウモロコシデンプンは局方コーンスターチ ホワイト JPCS-W(日本コーンスターチ製)、部分アルファー化デンプンはスターチ1500G(カラコン製)、をそれぞれ用いた。
【0057】
《実施例1》
化合物A1重量部、及びL-HPC99重量部をガラス瓶に入れ、蓋をした後、手で強く振とうさせることにより物理混合品を作製した。
【0058】
《比較例1》
化合物A1重量部、及び無水クエン酸99重量部をガラス瓶に入れ、蓋をした後、手で強く振とうさせることにより物理混合品を作製した。
【0059】
《試験例1》
実施例1及び比較例1で得られた物理混合品を、ガラス瓶に入れて蓋をし、40℃75%RHで1箇月間保存し、後述の方法により保存前後の総類縁物質量を測定した。保存前後の総類縁物質量の差分を総類縁物質量の保存による増加量として算出し、保存安定性を評価した。比較として、化合物A単独(表中、化合物Aと表示)を、上記と同じ条件で保存し、総類縁物質の増加量を算出した。総類縁物質量の測定は、以下の条件によるHPLC法で行った。総類縁物質量(%)は、化合物A並びに類縁物質Aを含む全ての類縁物質の総ピーク面積で、各類縁物質のピーク面積の和を除することにより算出した。総類縁物質の増加量(%)は、保存後の総類縁物質量(%)から、保存前の総類縁物質量(%)を減じることによりした。結果を表1に示す。
HPLC法
・測定波長 :214nm
・カラム :YMC-Triart C8(4.6mm×150mm、3μm)
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相 :リン酸塩緩衝液及びアセトニトリルと2-プロパノールの混液
・流速 :約1.2mL/min
・注入量 :10μL
【0060】
【0061】
上記結果の通り、実施例1における総類縁物質の増加量は0.06%であったが、比較例1の総類縁物質の増加量は2.63%であり、類縁物質が著しく増加した。なお、比較として実施した、化合物A単独では、総類縁物質は増加しなかった。
更に、化合物Aとラウリル硫酸ナトリウムの混合物、又は化合物Aとリン酸水素カルシウムの混合物においても、類縁物質の増加が見られた。
【0062】
《実施例2》
表2の処方に従い、粉砕した化合物A1.00重量部、乳糖水和物69.20重量部、結晶セルロース(UF-711)27.00重量部、L-HPC27.00重量部、軽質無水ケイ酸2.70重量部、フマル酸ステアリルナトリウム6.75重量部、及びステアリン酸マグネシウム1.35重量部を、混合機を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量135.00mg、直径7mmの円形の錠剤を得た。
【0063】
《実施例3》
表2の処方に従い、粉砕した化合物A25.00重量部、乳糖水和物326.00重量部、結晶セルロース(UF-711)135.00重量部、L-HPC135.00重量部、軽質無水ケイ酸13.50重量部、フマル酸ステアリルナトリウム33.75重量部、及びステアリン酸マグネシウム6.75重量部を、混合機を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量675.00mg、長径16mm×短径8mmの楕円形の錠剤を得た。
【0064】
《実施例4》
表2の処方に従い、粉砕した化合物A30.00重量部、D-マンニトール150.90重量部、結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、L-HPC54.00重量部、軽質無水ケイ酸5.40重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を、乳鉢乳棒を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0065】
【0066】
《実施例5》
表3の処方に従い錠剤化を行った。まず、粉砕した化合物A30.00重量部及びD-マンニトール148.20重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物186.30重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、L-HPC54.00重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0067】
《実施例6》
表3の処方に従い錠剤化を行った。まず、粉砕した化合物A 5.00重量部及びD-マンニトール90.85重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC4.05重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物99.90重量部に結晶セルロース(PH-102)13.50重量部、L-HPC20.25重量部、及びステアリン酸マグネシウム1.35重量部を加え、混合機を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量135.00mg、直径7mmの円形の錠剤を得た。
【0068】
《実施例7》
表3の処方に従い錠剤化を行った。まず、粉砕した化合物A30.00重量部及びD-マンニトール161.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、L-HPC40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、混合機を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0069】
《実施例8》
表3の処方に従い錠剤化を行った。まず、粉砕した化合物A30.00重量部及びD-マンニトール148.20重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物186.30重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、クロスカルメロースナトリウム54.00重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0070】
【0071】
《試験例2》
実施例2~8で得られた錠剤の溶出試験を、第十七改正日本薬局方溶出試験法のパドル法に従い、以下の条件で行った。結果を表4に示す。
・パドル回転速度:50回転/分
・試験液:0.1mol/L塩酸 900mL
・試験液温度:37±0.5℃
・サンプリングタイム:15分、30分
・測定法:紫外分光法(UV法(測定波長:245nm))
【0072】
【0073】
上記の結果に示される通り、実施例2~8の錠剤は、開始15分後に溶出率は75%以上であり、開始30分後に溶出率は85%以上であったことから、速やかな薬物溶出性を示した。
【0074】
《試験例3》
実施例6及び7で得られた錠剤を、アルミニウム-アルミニウムブリスターに入れて40℃75%RHで1箇月間、2箇月間、及び3箇月間保存した後、類縁物質Aを測定することにより、保存安定性を評価した。類縁物質の測定方法は注入量が20μLであることを除き試験例1と同じである。なお、類縁物質Aの量(%)は、経口投与用医薬組成物に含まれる化合物Aと各類縁物質のピーク面積をHPLC法により測定し、化合物A並びに類縁物質Aを含む全ての類縁物質の総ピーク面積で、類縁物質Aのピーク面積を除することにより算出した。結果を表5に示す。
【0075】
【0076】
上記の結果に示される通り、実施例6及び実施例7の錠剤は3箇月間類縁物質Aの増加が見られず、保存安定性が高いものであった。
【0077】
《実施例9》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、粉砕した化合物A30.00重量部及びD-マンニトール148.20重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物186.30重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、L-HPC40.50重量部、D-マンニトール13.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0078】
《実施例10》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、粉砕した化合物A30.00重量部及びD-マンニトール148.20重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物186.30重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、クロスカルメロースナトリウム27.00重量部、D-マンニトール27.00重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0079】
《実施例11》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、L-HPC40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0080】
《実施例12》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部に結晶セルロース(PH-102)27.00重量部、クロスカルメロースナトリウム40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0081】
《実施例13》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部にD-マンニトール27.00重量部、L-HPC40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0082】
《実施例14》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部にD-マンニトール27.00重量部、デンプングリコール酸ナトリウム40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0083】
《実施例15》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部にD-マンニトール27.00重量部、クロスポビドン40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0084】
《実施例16》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部にD-マンニトール27.00重量部、トウモロコシデンプン40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0085】
《実施例17》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部にD-マンニトール27.00重量部、部分アルファー化デンプン40.50重量部、及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0086】
《比較例2》
表6の処方に従い錠剤化を行った。まず、化合物A30.00重量部及びD-マンニトール30.00重量部を混合粉砕し、混合粉砕品を得た。混合粉砕品60.00重量部及びD-マンニトール131.70重量部を、流動層造粒機を用いて混合し、混合物を得た。HPC8.10重量部を水に溶解し固形分7重量%の結合剤液を調製した。混合物に結合剤液を噴霧して造粒を行った後、乾燥して造粒物を得た。
得られた造粒物199.80重量部にD-マンニトール67.50重量部及びステアリン酸マグネシウム2.70重量部を加え、ポリ袋を用いて混合し、打錠前混合品を得た。得られた打錠前混合品を、打錠機を用いて成形し、重量270.00mg、直径9mmの円形の錠剤を得た。
【0087】
【0088】
《試験例4》
実施例9~17及び比較例2で得られた錠剤を、アルミニウム袋に入れて、70℃で9日間、又は40℃75%RHで1箇月間保存した。試験例2の試験方法に従い保存前後の溶出率を測定し、溶出安定性を評価した。結果を表7に示す。
【0089】
【0090】
上記の結果に示される通り、70℃で9日間保存した実施例9~17の錠剤の溶出率は、保存前及び保存後のいずれにおいても、開始15分後に59%以上、かつ開始30分後に77%以上であり、速やかな薬物溶出性が維持されていた。また、40℃75%RHで1箇月間保存した実施例9~17の錠剤の溶出率は、保存前及び保存後のいずれにおいても、開始15分後に65%以上、かつ開始30分後に79%以上であった。これらの結果は、水膨潤性物質を含まない比較例2と比較して、本発明の水膨潤性物質を含む経口投与用医薬組成物が、速やかな薬物溶出性と、高い溶出安定性を有することを示した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、6-(4,4-ジメチルシクロヘキシル)-4-[(1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリン-4-イル)メチル]-2-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン又はその製薬学的に許容される塩を含み、速やかな薬物溶出性を示す安定な経口投与用医薬組成物を提供することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変法や改良は本発明の範囲に含まれる。