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特許7355024多層レジストプロセス用下層膜形成組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】多層レジストプロセス用下層膜形成組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20230926BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/26 511
H01L21/30 573
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020549302
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037643
(87)【国際公開番号】W WO2020067183
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018184146
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 信也
(72)【発明者】
【氏名】片切 崇
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝史
(72)【発明者】
【氏名】西野 晃太
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕也
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-200796(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013344(WO,A1)
【文献】特開2009-128369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸エステルに由来する1種又は2種以上の第1構造単位を有する重合体と、
溶媒と
を含有し、
上記重合体を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が65モル%以上であり、
上記重合体の重量平均分子量が30,000以上であり、
固形分濃度が10質量%以上であり、
上記第1構造単位が下記式(1)で表される多層レジストプロセス用下層膜形成組成物。
【化1】
(式(1)中、R は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基又は炭素数2~6のアルコキシアルキル基である。)
【請求項2】
上記重合体が2種以上の上記第1構造単位を有し、
上記第1構造単位のうち少なくとも1種が、上記式(1)におけるRが炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基又は炭素数2~6のアルコキシアルキル基である構造単位である請求項に記載の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物。
【請求項3】
熱酸発生剤をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物。
【請求項4】
架橋剤をさらに含有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物。
【請求項5】
基板に直接又は間接に請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物を塗工する工程と、
上記多層レジストプロセス用下層膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程と、
上記ケイ素含有膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備えパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層レジストプロセス用下層膜形成組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造にあたっては、基板にレジスト下層膜形成用組成物により、レジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜に、レジスト膜形成用組成物等を用いてレジストパターンを形成する方法が用いられている。このレジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクとしてさらに基板をエッチングすることができる。
【0003】
このようなレジスト下層膜形成用組成物に用いられる材料について、種々の検討が行われている(特開2013-83833号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-83833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、レジスト下層膜上に中間層としてケイ素含有膜を形成する多層レジストプロセスが検討されている。このような多層レジストプロセスにおいては、レジスト下層膜はケイ素含有膜におけるクラックの発生を抑制できることや基板の反りを低減できることが求められる。加えて最近では、レジスト下層膜には、塗工時の不具合等により欠陥が発生した場合などにおいて、水素系プラズマエッチング等により除去して容易にリワークできることが求められている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減でき、かつ除去性に優れるレジスト下層膜を形成することができる多層レジストプロセス用下層膜形成組成物及びパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、アクリル酸エステルに由来する1種又は2種以上の第1構造単位を有する重合体と、溶媒とを含有し、上記重合体を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が65モル%以上である多層レジストプロセス用下層膜形成組成物である。
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接に多層レジストプロセス用下層膜形成組成物を塗工する工程と、上記多層レジストプロセス用下層膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程と、上記ケイ素含有膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する工程と、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備え、上記多層レジストプロセス用下層膜形成組成物が、アクリル酸エステルに由来する1種又は2種以上の第1構造単位を有する重合体と、溶媒とを含有し、上記重合体を構成する全構造単位に対する上記第1構造単位の含有割合が65モル%以上であるパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物によれば、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減できる。さらに、本発明の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物によれば、除去性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のパターン形成方法によれば、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減することができ、ひいては良好なパターンを形成することができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<多層レジストプロセス用下層膜形成組成物>
当該多層レジストプロセス用下層膜形成組成物(以下、単に「下層膜形成組成物」ともいう)は、アクリル酸エステルに由来する1種又は2種以上の第1構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)とを含有し、上記[A]重合体を構成する全構造単位に対する上記構造単位(I)の含有割合が65モル%以上である。
【0011】
当該下層膜形成組成物は、[A]重合体及び[B]溶媒以外に、熱酸発生剤(以下、「[C]熱酸発生剤」ともいう)及び/又は架橋剤(以下、「[D]架橋剤」ともいう)を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0012】
当該下層膜形成組成物は、1種又は2種以上の構造単位(I)を有する[A]重合体を含有し、この構造単位(I)の含有割合を上記特定値以上とすることで、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減でき、かつ除去性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0013】
以下、当該下層膜形成組成物が含有する各成分について説明する。
【0014】
<[A]重合体>
[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(I)を有する重合体である。[A]重合体は、構造単位(I)以外にビニル芳香族化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)を有していてもよい。[A]重合体は、構造単位(I)及び構造単位(II)以外のその他の構造単位を有していてもよい。
【0015】
以下、[A]重合体が有する各構造単位について説明する。
【0016】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位である。[A]重合体は、1種の構造単位(I)を有していてもよいし、2種以上の構造単位(I)を有していてもよい。なお、本明細書において、「1種又は2種以上」の構造単位(I)とは、[A]重合体が有する構造単位(I)の種類の数を意味するものであって、[A]重合体を構成する構造単位(I)の重合数(すなわち、重合度)を意味するものではない。
【0017】
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシエチル等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル等のアクリル酸アリールエステル、アクリル酸オキサシクロペンチルメチル、アクリル酸オキサシクロヘキシルメチル等のアクリル酸オキサシクロアルキルアルキルエステル、アクリル酸オキソシクロペンチルメチル、アクリル酸オキサシクロヘキシルメチル等のアクリル酸オキソシクロアルキルアルキルエステル、アクリル酸ジオキソブトキシエチル等のアクリル酸ジオキソアルコキシアルキルエステル、アクリル酸エテニルカルボニルオキシエチル等のアクリル酸アルケニルカルボニルオキシアルキルエステルなどが挙げられる。
【0018】
構造単位(I)としては、例えば下記式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1)」ともいう)等が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
上記式(1)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
【0021】
「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(以下、「基(α)」ともいう)、上記炭化水素基又は上記基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0022】
「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
【0023】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の橋かけ環炭化水素基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0024】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-CO-、-CS-、-NH-、-O-、-S-、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0025】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0026】
としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~18のシクロアルキル基の炭素-炭素間に-CO-若しくは-O-を含む基、又は炭素数1~18のアルキル基の炭素-炭素間に-CO-及び-O-の少なくとも一方を含む基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数3~8のシクロアルキル基の炭素-炭素間に-CO-若しくは-O-を含む基、又は炭素数1~8のアルキル基の炭素-炭素間に-CO-及び-O-の少なくとも一方を含む基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基又は炭素数2~6のアルコキシアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルコキシアルキル基が特に好ましい。Rを上記基とすることで、ケイ素含有膜のクラックの発生をより抑制でき、基板の反りをより低減でき、かつレジスト下層膜の除去性をより向上させることができる。
【0027】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」とは、アルキル基の1個の水素原子をヒドロキシ基で置換した基を意味し、「アルコキシアルキル基」とは、アルキル基の1個の水素原子をアルコキシ基で置換した基を意味する。
【0028】
[A]重合体が1種の構造単位(I)を有する場合、構造単位(I)としては、上記式(1)におけるRが炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基又は炭素数2~6のアルコキシアルキル基である構造単位(以下、「構造単位(I’)ともいう」)が好ましい。[A]重合体が構造単位(I’)を有することで、ケイ素含有膜のクラックの発生をより抑制でき、基板の反りをより低減でき、かつレジスト下層膜の除去性をより向上させることができる。
【0029】
[A]重合体が2種以上の構造単位(I)を有する場合、構造単位(I)のうち少なくとも1種が、上記式(1)におけるRが炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基又は炭素数2~6のアルコキシアルキル基である構造単位(構造単位(I’))であることが好ましい。少なくとも1種の構造単位(I)を構造単位(I’)とすることで、ケイ素含有膜のクラックの発生をより抑制でき、基板の反りをより低減でき、かつレジスト下層膜の除去性をより向上させることができる。
【0030】
構造単位(I)としては、例えば下記式(1-1)~(1-9)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1-1)~(I-1-9)」ともいう)等が挙げられる。
【0031】
【化2】
【0032】
これらの中で、構造単位(I-1-1)、構造単位(I-1-2)、構造単位(I-1-4)、構造単位(I-1-5)、構造単位(I-1-6)、構造単位(I-1-7)、構造単位(I-1-8)又は構造単位(I-1-9)が好ましい。
【0033】
構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、65モル%であり、70モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましく、90モル%が特に好ましい。構造単位(I)の含有割合は、100モル%であってもよい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、ケイ素含有膜のクラックの発生をより抑制でき、基板の反りをより低減でき、かつレジスト下層膜の除去性をより向上させることができる。
【0034】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位である。「ビニル芳香族化合物」とは、ビニル基が結合した芳香族炭素環を有する化合物をいう。
【0035】
ビニル芳香族化合物としては、例えば置換又は非置換のスチレン、置換又は非置換のビニルナフタレン、置換又は非置換のビニルアントラセン、置換又は非置換のビニルピレン等が挙げられる。芳香環における置換基としては、メチル基、t-ブチル基等のアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0036】
構造単位(II)としては、例えば下記式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(II-1)」ともいう)等が挙げられる。
【0037】
【化3】
【0038】
上記式(2)中、Arは、環員数6~20のアレーンから(n+1)個の水素原子を除いた基である。Rは、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。nは、0~11の整数である。nが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。
【0039】
Arを与える環員数6~20のアレーンとしては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、テトラセン等が挙げられる。これらの中で、ベンゼン又はナフタレンが好ましい。
【0040】
で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(1)におけるRとして例示した炭素数1~20の1価の有機基と同様の基等が挙げられる。
【0041】
としては、1価の有機基が好ましく、ヒドロキシアルキル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基がさらに好ましい。
【0042】
nとしては、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0043】
[A]重合体が構造単位(II)を有する場合、構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、35モル%がさらに好ましい。
【0044】
[その他の構造単位]
その他の構造単位としては、メタクリル酸エステルに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、アセナフチレン化合物に由来する構造単位等が挙げられる。
【0045】
[A]重合体がその他の構造単位を有する場合、その他の構造単位の含有割合の上限としては、20モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。[A]重合体におけるその他の構造単位の含有割合は0モル%であってもよい。
【0046】
[A]重合体は、架橋性官能基を有することができる。[A]重合体が架橋性官能基を有する場合、後述する[C]熱酸発生剤及び/又は[D]架橋剤を共に用いることにより、[A]重合体の架橋が促進され、その結果、レジスト下層膜の溶媒耐性をより向上させることができる。架橋性官能基としては、例えばヒドロキシアルキル基、エポキシ基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシアルキル基が好ましい。[A]重合体は架橋性官能基を、構造単位(I)中に有していてもよく、構造単位(I)以外の構造単位中に有していてもよい。
【0047】
[A]重合体における酸素原子の含有率の下限としては、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、23質量%が特に好ましい。[A]重合体における酸素原子の含有率の上限としては、80質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。[A]重合体における酸素原子の含有率を上記範囲とすることで、ケイ素含有膜のクラックの発生をより抑制でき、基板の反りをより低減でき、かつレジスト下層膜の除去性をより向上させることができる。
【0048】
[A]重合体の重量平均分子量(Mw)の下限としては、2,000が好ましく、10,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、30,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、300,000が好ましく、200,000がより好ましく、100,000がさらに好ましく、70,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、レジスト下層膜の溶媒耐性をより向上させることができる。
【0049】
[A]重合体のMwの数平均分子量(Mn)に対する比の上限としては、5が好ましく
3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0050】
本明細書において、重合体のMw及びMnは、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本及び「G3000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した値である。
【0051】
[A]重合体の含有割合の下限としては、当該下層膜形成組成物の固形分に対して、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限は、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。「固形分」とは当該下層膜形成組成物における[B]溶媒以外の全成分をいう。
【0052】
[[A]重合体の合成方法]
[A]重合体は、構造単位(I)を与えるアクリル酸エステルと、必要に応じて構造単位(I)以外の構造単位を与える化合物とを、それぞれ所定の含有割合になるような使用量で用い、公知の方法により重合させることによって合成することができる。
【0053】
<[B]溶媒>
[B]溶媒は、[A]重合体及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。
【0054】
[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。[B]溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0056】
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒などが挙げられる。
【0057】
エーテル系溶媒としては、例えばn-ブチルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル系溶媒などの多価アルコールエーテル系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0058】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸モノエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒などが挙げられる。
【0059】
含窒素系溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状含窒素系溶媒、N-メチルピロリドン等の環状含窒素系溶媒などが挙げられる。
【0060】
[B]溶媒としては、エステル系溶媒及び/又はケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒及び/又は環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び/又はシクロヘキサノンがさらに好ましい。
【0061】
[[C]熱酸発生剤]
[C]熱酸発生剤は、熱の作用により酸を発生し、[A]重合体の架橋を促進する成分である。当該下層膜形成組成物が[C]熱酸発生剤を含有すると、[A]重合体の架橋反応が促進され、形成されるレジスト下層膜の溶媒耐性をより向上させることができる。
【0062】
[C]熱酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0063】
オニウム塩化合物としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-(アダマンタン-1-イルカルボニルオキシ)-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロパン-1-スルホネート、トリフェニルスルホニウムノルボルナンスルトン-2-イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムピペリジン-1-イルスルホニル-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン-1-スルホネート、トリフェニルスルホニウムアダマンタン-1-イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート等のスルホニウム塩、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタン-1-スルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等のテトラヒドロチオフェニウム塩、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のヨードニウム塩などが挙げられる。
【0064】
N-スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0065】
[C]熱酸発生剤としては、オニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩がより好ましく、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートがさらに好ましい。
【0066】
当該下層膜形成組成物が[C]熱酸発生剤を含有する場合、[C]熱酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、2質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、8質量部が特に好ましい。[C]熱酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、レジスト下層膜の溶媒耐性をさらに向上させることができる。
【0067】
[[D]架橋剤]
[D]架橋剤は、熱や酸の作用により、当該下層膜形成組成物中の[A]重合体等の成分同士の架橋結合を形成するか、又は自らが架橋構造を形成する成分である。当該下層膜形成組成物が[D]架橋剤を含有すると、形成されるレジスト下層膜の溶媒耐性をより向上させることができる。
【0068】
架橋剤としては、例えば多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。
【0069】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
エポキシ化合物としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0071】
ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物としては、例えば2-ヒドロキシメチル-4,6-ジメチルフェノール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、3,5-ジヒドロキシメチル-4-メトキシトルエン[2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール]等が挙げられる。
【0072】
アルコキシアルキル基含有フェノール化合物としては、例えばメトキシメチル基含有フェノール化合物、エトキシメチル基含有フェノール化合物等が挙げられる。
【0073】
上記アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えば(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレア等の一分子内に複数個の活性メチロール基を有する含窒素化合物であって、そのメチロール基の水酸基の水素原子の少なくとも一つが、メチル基やブチル基等のアルキル基によって置換された化合物等が挙げられる。なお、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物は、複数の置換化合物を混合した混合物でもよく、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含むものであってもよい。
【0074】
[D]架橋剤としては、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物が好ましく、(ポリ)メチロール化グリコールウリルがより好ましく、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリルがさらに好ましい。
【0075】
当該下層膜形成組成物が[D]架橋剤を含有する場合、[D]架橋剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましく、5質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、500質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましく、15質量部が特に好ましい。[D]架橋剤の含有量を上記範囲とすることで、レジスト下層膜の溶媒耐性をさらに向上させることができる。
【0076】
[その他の任意成分]
その他の任意成分としては、例えば界面活性剤、密着助剤等が挙げられる。
【0077】
<下層膜形成組成物の調製方法>
当該下層膜形成組成物は、例えば[A]重合体、[B]溶媒、及び必要に応じて使用される任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合溶液を孔径0.2μm以下のフィルターでろ過することにより調製することができる。
【0078】
当該下層膜形成組成物の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。上記固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、20質量%が特に好ましい。「固形分濃度」とは、当該下層膜形成組成物における[B]溶媒以外の全成分の濃度(質量%)を意味する。
【0079】
<パターン形成方法>
当該パターン形成方法は、基板に直接又は間接に多層レジストプロセス用下層膜形成組成物を塗工する工程(以下、「多層レジストプロセス用下層膜形成組成物塗工工程」ともいう)と、上記多層レジストプロセス用下層膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」ともいう)と、上記ケイ素含有膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「レジスト膜形成用組成物塗工工程」ともいう)と、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。当該パターン形成方法は、上記多層レジストプロセス用下層膜形成組成物として、上述の当該下層膜形成組成物を用いる。
【0080】
当該パターン形成方法は、上記現像工程後に、上記現像工程により形成されたレジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)をさらに備えることができる。
【0081】
当該パターン形成方法によれば、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減することができ、ひいては良好なパターンを形成することができる。
【0082】
以下、当該パターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0083】
[多層レジストプロセス用下層膜形成組成物塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に当該下層膜形成組成物を塗工する。
【0084】
基板としては、例えばシリコンウエハ、アルミニウムで被覆したウエハ等が挙げられる。また、当該下層膜形成組成物の塗工方法は特に限定されず、例えば回転塗工、流延塗工、ロール塗工等の適宜の方法で実施することができ、これにより塗工膜を形成することができる。
【0085】
上記塗工膜を加熱してもよい。上記塗工膜の加熱は、通常、大気下で行われるが、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱における温度の下限としては、200℃が好ましく、250℃がより好ましく、280℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0086】
形成されるレジスト下層膜の平均厚みとの下限としては、30nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましく、500nmが特に好ましい。上記平均厚みの上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましく、3μmがさらに好ましく、2μmが特に好ましい。本明細書において「平均厚み」は、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した値である。
【0087】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、上記多層レジストプロセス用下層膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する。
【0088】
上記ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物を上記レジスト下層膜に直接又は間接に塗工して形成された塗膜を、通常、露光及び/又は加熱することにより硬化等させることにより形成される。上記ケイ素含有膜形成用組成物の市販品としては、例えば、JSR(株)の「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」等を用いることができる。
【0089】
上記露光に用いられる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線などが挙げられる。
【0090】
塗膜を加熱する際の温度の下限としては、90℃が好ましく、150℃がより好ましく、250℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、550℃が好ましく、450℃がより好ましく、350℃がさらに好ましい。
【0091】
形成されるケイ素含有膜の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、10nmがより好ましく、30nmがさらに好ましい。上記上限としては、20,000nmが好ましく、1,000nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。
【0092】
[レジスト膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、上記ケイ素含有膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する。
【0093】
本工程では、具体的には、得られるレジスト膜が所定の厚みとなるようにレジスト膜形成用組成物を塗工した後、加熱することによって塗膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。
【0094】
レジスト膜形成用組成物としては、例えば感放射線性酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とを含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
【0095】
レジスト膜形成用組成物の固形分濃度の下限としては、0.3質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。上記固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。また、レジスト膜形成用組成物は、一般に、例えば孔径0.2μm以下のフィルターでろ過して、レジスト膜の形成に供される。なお、本工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0096】
レジスト膜形成用組成物の塗工方法としては、例えば回転塗工法等が挙げられる。また、加熱の温度や時間等の条件としては、使用されるレジスト膜形成用組成物の種類等に応じて適宜調整することができる。加熱の温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。加熱の時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0097】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する。
【0098】
露光に用いられる放射線としては、レジスト膜形成用組成物に使用される感放射線性酸発生剤の種類に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線から適切に選択される。これらの中で、遠紫外線又は電子線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、極端紫外線(波長13.5nm等、EUV)又は電子線がより好ましい。
【0099】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため露光後加熱を行うことができる。この露光後加熱の温度としては、使用されるレジスト膜形成用組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、露光後加熱の温度の下限としては、50℃が好ましく、70℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。露光後加熱の時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0100】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等の塩基性水溶液が挙げられる。これらの塩基性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の当該下層膜形成組成物の[B]溶媒として例示した種々の溶媒等が挙げられる。
【0101】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0102】
[エッチング工程]
本工程では、上記現像工程により形成されたレジストパターンをマスクとしたエッチングを行う。これにより、基板にパターンが形成される。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよいが、より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、ケイ素含有膜、レジスト下層膜、基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、例えばドライエッチング、ウエットエッチング等が挙げられる。これらの中で、基板のパターンの形状をより良好なものとする観点から、ドライエッチングが好ましい。上記エッチングの後、所定のパターンを有するパターニングされた基板が得られる。
【0103】
ドライエッチングとしては、例えば公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、マスクパターン、エッチングされる膜の元素組成等により適宜選択することができ、例えばCHF、CF、C、C、SF等のフッ素系ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、O、O、HO等の酸素系ガス、H、NH、CO、CO、CH、C、C、C、C、C、C、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH、BCl等の還元性ガス、He、N、Ar等の不活性ガスなどが挙げられる。これらのガスは混合して用いることもできる。
【実施例
【0104】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0105】
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本及び「G3000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0106】
[平均厚み]
レジスト下層膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した。
【0107】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体の合成に用いた化合物を以下に示す。なお、以下の合成例においては特に断りのない限り、「質量部」の数値は重合体の合成に使用した化合物の合計質量を100質量部とした場合の値を意味する。
【0108】
【化4】
【0109】
[合成例1](重合体(A-1)の合成)
上記化合物(a-1)、化合物(a-2)及び化合物(a-7)をモル比率が30/40/30(モル%)となるよう2-ヘプタノン100質量部に溶解させ、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル2.1質量部を添加し、単量体溶液を調製した。反応容器に、窒素雰囲気下、2-ヘプタノン100質量部を入れ、80℃に加熱し、攪拌しながら、上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した後、30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をヘキサン2,000質量部中に投入し、析出した沈殿物を濾別した。濾別した沈殿物をヘキサンで洗浄した後、濾別し、乾燥させて重合体(A-1)を得た。
【0110】
[合成例2~13並びに比較合成例1及び3~5](重合体(A-2)~(A-13)並びに(CA-1)及び(CA-3)~(CA-5)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の化合物を用いた以外は合成例1と同様に操作して、重合体(A-2)~(A-13)並びに(CA-1)及び(CA-3)~(CA-5)を得た。
【0111】
[比較合成例2](重合体(CA-2)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、フェノール(上記化合物(a-13))120g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液103.5g及びメチルイソブチルケトン360gを加えて溶解させた。得られた溶液を40℃に加熱した後、パラトルエンスルホン酸2.2gを加え、80℃で4時間反応させた後、30℃以下に冷却し、この反応液をメタノール/水(50/50(質量比))の混合溶液に投入し、析出した沈殿物を濾別し、乾燥させて重合体(CA-2)を得た。
【0112】
【表1】
【0113】
<多層レジストプロセス用下層膜形成組成物の調製>
多層レジストプロセス用下層膜形成組成物の調製に用いた[B]溶媒、[C]熱酸発生剤及び[D]架橋剤について以下に示す。
【0114】
[[B]溶媒]
B-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
B-2:シクロヘキサノン
【0115】
[[C]熱酸発生剤]
C-1:ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(下記式(C-1)で表される化合物)
【0116】
【化5】
【0117】
[[D]架橋剤]
D-1:1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(下記式(D-1)で表される化合物)
【0118】
【化6】
【0119】
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)18質量部と、[B]溶媒としての(B-1)40質量部及び(B-2)39.3質量部と、[C]熱酸発生剤としての(C-1)0.9質量部と、[D]架橋剤としての(D-1)1.8質量部とを混合し、得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、多層レジストプロセス用下層膜形成組成物(J-1)を調製した。
【0120】
[実施例2~13及び比較例1~5]
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、多層レジストプロセス用下層膜形成組成物(J-2)~(J-13)及び(CJ-1)~(CJ-5)を調製した。
【0121】
<レジスト下層膜の形成>
[実施例1~13及び比較例1~5]
上記調製した多層レジストプロセス用下層膜形成組成物を、シリコンウエハ(基板)上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を用い、回転塗工法により塗工した。次に、大気雰囲気下にて、300℃で120秒間加熱(焼成)した後、23℃で60秒間冷却することにより、平均厚み1.0μmのレジスト下層膜を形成して、基板上にレジスト下層膜が形成されたレジスト下層膜付き基板を得た。
【0122】
<評価>
上記得られたレジスト下層膜付き基板を用い、ケイ素含有膜のクラックの発生、基板の反り及びレジスト下層膜の除去性について、下記方法により評価した。評価結果を下記表2に合わせて示す。
【0123】
[クラックの発生]
上記得られたレジスト下層膜付き基板におけるレジスト下層膜上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を用い、ケイ素含有膜形成用組成物(JSR(株)の「NFC SOG080」)を回転塗工法により塗工した後、大気雰囲気下、300℃で60秒間加熱(焼成)し、平均厚み50nmのケイ素含有膜を形成した。形成したケイ素含有膜の表面を光学顕微鏡で観察した。クラックの発生について、ケイ素含有膜のひび割れ又は剥がれが見られなかった場合は「A」(良好)と、ケイ素含有膜のひび割れ又は剥がれが見られた場合は「B」(不良)と評価した。
【0124】
[基板の反り]
薄膜ストレス測定装置(KLAテンコール社の「FLEX-2320型」)を用いて、上記得られたレジスト下層膜付き基板の膜応力を測定した。基板の反りについて、膜応力が30MPa未満の場合は「A」(良好)と、膜応力が30MPa以上の場合は「B」(不良)と評価した。
【0125】
[除去性]
上記得られたレジスト下層膜付き基板におけるレジスト下層膜を、エッチング装置(東京エレクトロン(株)の「TACTRAS」)を用いて、N/H=300/300sccm、PRESS.=15mT、HF RF(プラズマ生成用高周波電力)=300W、LF RF(バイアス用高周波電力)=0W、DCS=-0V、RDC(ガスセンタ流量比)=80%、30secの条件にて処理し、処理前後のレジスト下層膜の平均厚みから除去速度(nm/分)を算出した。除去性は、除去速度が100nm/分以上の場合は「A」(良好)と、100nm/分未満の場合は「B」(不良)と評価した。
【0126】
【表2】
【0127】
表2の結果から分かるように、実施例の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物によれば、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減できかつ除去性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。これに対し、比較例の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物では、ケイ素含有膜のクラックの発生を抑制できず、基板の反りを低減することができず、また、レジスト下層膜の除去性も不良のものがあった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の多層レジストプロセス用下層膜形成組成物によれば、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減できかつ除去性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のパターン形成方法によれば、多層レジストプロセスにおけるケイ素含有膜のクラックの発生を抑制でき、基板の反りを低減することができ、ひいては良好なパターンを形成することができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。