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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】エアバッグ装置の支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20230926BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021002094
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107255
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】永田 松雄
(72)【発明者】
【氏名】野々山 裕貴
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/042850(WO,A1)
【文献】特開2016-030552(JP,A)
【文献】特開2017-052433(JP,A)
【文献】特開2015-189284(JP,A)
【文献】特開2015-160438(JP,A)
【文献】特開2017-178094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00- 1/28
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の前部にバッグホルダを有し、かつダイナミックダンパのダンパマスとして機能するエアバッグ装置と、
前記バッグホルダに挿通された状態で前後方向に延びる軸部を有し、前記軸部の前端部においてステアリングホイールの芯金に取付けられるとともに、前記軸部の後端部に鍔部が形成された支持部材と、
前記軸部に前後方向へスライド可能に被せられたスライダと、
前後方向における前記スライダの一部を覆った状態で前記エアバッグ装置に取付けられた環状のダンパホルダと、
前記スライダ及び前記ダンパホルダの間に配置されてダイナミックダンパのばねとして機能する環状の弾性部材とを備えるエアバッグ装置の支持構造であって、
前記弾性部材は、同弾性部材から後方へ突出して前記鍔部に接触することで、前記弾性部材と前記鍔部との間の空隙部の一部を埋める突部を有し、前記突部は前記弾性部材の周方向における複数箇所に設けられ、複数の前記突部は、前記支持部材の軸線を中心として放射状に延びており、
各突部は、自身の後端部が押し潰された状態で前記鍔部に接触しており、
各突部の後面は、後方へ膨らむように湾曲する湾曲面により構成されているエアバッグ装置の支持構造。
【請求項2】
自身の前部にバッグホルダを有し、かつダイナミックダンパのダンパマスとして機能するエアバッグ装置と、
前記バッグホルダに挿通された状態で前後方向に延びる軸部を有し、前記軸部の前端部においてステアリングホイールの芯金に取付けられるとともに、前記軸部の後端部に鍔部が形成された支持部材と、
前記軸部に前後方向へスライド可能に被せられたスライダと、
前後方向における前記スライダの一部を覆った状態で前記エアバッグ装置に取付けられた環状のダンパホルダと、
前記スライダ及び前記ダンパホルダの間に配置されてダイナミックダンパのばねとして機能する環状の弾性部材とを備えるエアバッグ装置の支持構造であって、
前記弾性部材は、同弾性部材から後方へ突出して前記鍔部に接触することで、前記弾性部材と前記鍔部との間の空隙部の一部を埋める突部を有し、前記突部は前記弾性部材の周方向における複数箇所に設けられ、複数の前記突部は、前記支持部材の軸線を中心として放射状に延びており、
前記弾性部材は、後方へ突出して前記鍔部に接触することで、前記空隙部の一部を埋め、かつ前記軸線を中心として放射状に延びない補助突部を、隣り合う前記突部の間に有しているエアバッグ装置の支持構造。
【請求項3】
前記弾性部材と前記鍔部との間の空隙部を後空隙部とし、前記後空隙部の一部を埋める前記突部を後突部とした場合、
前記弾性部材は、同弾性部材から前記軸部の径方向における外方へ突出して前記ダンパホルダに接触することで、前記弾性部材と前記ダンパホルダとの間の前空隙部の一部を埋める前突部を有し、前記前突部は前記周方向における複数箇所に設けられている請求項1又は2に記載のエアバッグ装置の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物におけるステアリングホイールの芯金にエアバッグ装置を支持するエアバッグ装置の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、図20に示すように、エアバッグ装置45をダイナミックダンパのダンパマスとして利用して、これをステアリングホイール50の芯金51に支持する構造が記載されている。この支持構造は、支持部材53、スライダ54、ダンパホルダ55及び弾性部材56を備えている。エアバッグ装置45は、自身の前部にバッグホルダ46を有している。
【0003】
支持部材53は、バッグホルダ46に挿通された状態で前後方向に延びる軸部53aを有している。支持部材53は、軸部53aの前端部において芯金51に取付けられる。軸部53aは、後端部に鍔部53bを有している。
【0004】
スライダ54は、軸部53aに前後方向へスライド可能に被せられている。
ダンパホルダ55は、前後方向におけるスライダ54の一部を覆った状態でエアバッグ装置45に取付けられている。
【0005】
弾性部材56は、スライダ54及びダンパホルダ55の間に配置されている。さらに、弾性部材56は、同弾性部材56の外周部とダンパホルダ55との間の空隙部G3の一部を埋める突部56aを有している。突部56aは、弾性部材56の周方向における複数箇所に設けられている。弾性部材56は、同弾性部材56の固有振動数が、ステアリングホイール50の振動を抑制(制振)するために要求される周波数と同一又は近い値となるように形成されている。
【0006】
上記構成の支持構造では、エアバッグ装置45がダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、弾性部材56がダイナミックダンパのばねとして機能する。そのため、ステアリングホイール50が上下方向や左右方向へ振動すると、その振動を抑制するために要求される周波数と同一又は近い固有振動数で弾性部材56が弾性変形しながら、エアバッグ装置45を伴って振動し、ステアリングホイール50の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイール50の振動が抑制(制振)される。
【0007】
また、エアバッグ装置45が支持部材53に対して、図20において矢印Aで示す方向へ揺動しようとした場合、突部56aは、空隙部G3が原因で弾性部材56が弾性変形するのを規制する。この規制により、支持部材53に対するエアバッグ装置45の上記揺動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-52433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、弾性部材56の後端部と鍔部53bとの間には空隙部G4があり、この空隙部G4の分、弾性部材56が弾性変形し得る。そのため、エアバッグ装置45の上記揺動を抑制するうえで改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するエアバッグ装置の支持構造は、自身の前部にバッグホルダを有し、かつダイナミックダンパのダンパマスとして機能するエアバッグ装置と、前記バッグホルダに挿通された状態で前後方向に延びる軸部を有し、前記軸部の前端部においてステアリングホイールの芯金に取付けられるとともに、前記軸部の後端部に鍔部が形成された支持部材と、前記軸部に前後方向へスライド可能に被せられたスライダと、前後方向における前記スライダの一部を覆った状態で前記エアバッグ装置に取付けられた環状のダンパホルダと、前記スライダ及び前記ダンパホルダの間に配置されてダイナミックダンパのばねとして機能する環状の弾性部材とを備えるエアバッグ装置の支持構造であって、前記弾性部材は、同弾性部材から後方へ突出して前記鍔部に接触することで、前記弾性部材と前記鍔部との間の空隙部の一部を埋める突部を有し、前記突部は前記弾性部材の周方向における複数箇所に設けられ、複数の前記突部は、前記支持部材の軸線を中心として放射状に延びている。
【0011】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が支持部材に対して揺動しようとした場合、突部は、空隙部が原因で弾性部材が弾性変形するのを規制する。この規制により、支持部材に対するエアバッグ装置の揺動が抑制される。
【0012】
さらに、支持部材の軸線を中心として放射状に延びる複数の突部の中には、エアバッグ装置の揺動方向と同方向、又は近い方向に延びるものが存在する。突部は、エアバッグ装置が揺動を続けようとした場合、鍔部に対し接触し続ける。そのため、突部が弾性部材の弾性変形を規制する効果は、突部が放射状に延びない場合よりも大きく、結果として、エアバッグ装置がより一層揺動しにくくなる。
【0013】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各突部は、自身の後端部が押し潰された状態で前記鍔部に接触していることが好ましい。
上記の構成によるように、各突部が、後端部を押し潰された状態で鍔部に接触させられることで、弾性部材の形状、大きさ等がばらついていても、弾性部材の弾性変形が規制される。
【0014】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各突部の後面は、前記鍔部の前面に対し平行であり、かつ前記周方向に延びる平面により構成されていることが好ましい。
ここで、突部が、空隙部に起因する弾性部材の弾性変形を規制する度合いは、鍔部との干渉により突部が押し潰される部分の体積が少ない場合に小さく、同体積が多くなるに従い大きくなる。弾性変形を規制する度合いが大きくなるに従い、弾性部材の固有振動数が高くなる。
【0015】
この点、上記の構成によるように、各突部の後面が、鍔部の前面に対し平行であり、かつ弾性部材の周方向に延びる平面により構成されている場合には、同突部のうち、鍔部との干渉により押し潰される部分の体積が、後面が湾曲面によって形成されている場合に比べ多くなる。従って、空隙部に起因する弾性部材の弾性変形を多く規制して、すなわち、弾性変形しにくくして、弾性部材の固有振動数を高くしたい場合に有効である。
【0016】
上記エアバッグ装置の支持構造において、各突部の後面は、後方へ膨らむように湾曲する湾曲面により構成されていることが好ましい。
上記の構成によるように、各突部の後面が、後方へ膨らむように湾曲する湾曲面により構成されている場合には、同突部のうち、鍔部との干渉により押し潰される部分の体積が、後面が平面によって形成されている場合に比べ少なくなる。従って、空隙部に起因する弾性部材の弾性変形を少なく規制して、すなわち、弾性変形しやすくして、弾性部材の固有振動数を低くしたい場合に有効である。
【0017】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記弾性部材は、後方へ突出して前記鍔部に接触することで、前記空隙部の一部を埋め、かつ前記軸線を中心として放射状に延びない補助突部を、隣り合う前記突部の間に有していることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が支持部材に対して揺動しようとした場合、補助突部は、突部とともに、空隙部に起因する弾性部材の弾性変形を規制する。そのため、弾性部材の弾性変形を規制する度合いを微調整することが可能となる。
【0019】
上記エアバッグ装置の支持構造において、前記弾性部材と前記鍔部との間の空隙部を後空隙部とし、前記後空隙部の一部を埋める前記突部を後突部とした場合、前記弾性部材は、同弾性部材から前記軸部の径方向における外方へ突出して前記ダンパホルダに接触することで、前記弾性部材と前記ダンパホルダとの間の前空隙部の一部を埋める前突部を有し、前記前突部は前記周方向における複数箇所に設けられていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が支持部材に対して揺動しようとした場合、後突部は、後空隙部に起因する弾性部材の弾性変形を規制する。これに加え、前突部は、前空隙部に起因する弾性部材の弾性変形を規制する。このように、後突部及び前突部が弾性部材の弾性変形を規制することで、エアバッグ装置の上記揺動がより一層抑制される。
【発明の効果】
【0021】
上記エアバッグ装置の支持構造によれば、エアバッグ装置の揺動を抑制する性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態におけるエアバッグ装置付きステアリングホイールの側面図。
図2】同じく、一実施形態におけるエアバッグ装置付きステアリングホイールの正面図。
図3】一実施形態のエアバッグ装置を斜め前方から見た斜視図。
図4】一実施形態におけるホーンスイッチ機構を斜め後方から見た斜視図。
図5】一実施形態におけるホーンスイッチ機構を斜め前方から見た斜視図。
図6】一実施形態のエアバッグ装置付きステアリングホイールの部分縦断面図。
図7】一実施形態におけるエアバッグ装置の構成部品を示す分解斜視図。
図8】一実施形態におけるホーンスイッチ機構の構成部品をバッグホルダとともに示す分解斜視図。
図9】一実施形態における弾性部材を斜め後方から見た斜視図。
図10】一実施形態における弾性部材の背面図。
図11】一実施形態におけるホーンスイッチ機構及びその周辺部分の断面構造を示す部分縦断面図。
図12】同じく、一実施形態におけるホーンスイッチ機構及びその周辺部分について、図11とは異なる断面での断面構造を示す部分縦断面図。
図13】一実施形態における弾性部材の側面図。
図14図13のC部を拡大して示す部分側面図。
図15図11のB部を拡大して示す部分縦断面図。
図16】一実施形態における弾性部材の縦断面図。
図17図16における17-17線断面図。
図18図12の状態からエアバッグ装置が押下げられたときのホーンスイッチ機構及びその周辺部分の断面構造の一部を示す部分縦断面図。
図19図9に対応する図であり、変形例の弾性部材を斜め後方から見た斜視図。
図20】従来のエアバッグ装置の支持構造を示す部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、車両用のエアバッグ装置の支持構造に具体化した一実施形態について、図1図18を参照して説明する。
図1に示すように、車両には、車両後方ほど高くなるように傾斜した軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)14が設けられている。ステアリングシャフト14の後端部には、ステアリングホイール10が取付けられている。
【0024】
本実施形態では、ステアリングホイール10の各部について説明する際には、ステアリングシャフト14の軸線L1を基準とする。この軸線L1に沿う方向をステアリングホイール10の「前後方向」といい、軸線L1に直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール10の起立する方向を「上下方向」というものとする。従って、ステアリングホイール10の前後方向及び上下方向は、車両の前後方向(水平方向)及び上下方向(鉛直方向)に対し若干傾いていることとなる。
【0025】
なお、図2図18では、便宜上、ステアリングホイール10の前後方向が水平方向に合致し、同ステアリングホイール10の上下方向が鉛直方向に合致した状態で図示されている。変形例を示す図19、及び従来技術を示す図20についても同様である。
【0026】
図2に示すように、ステアリングホイール10は、中央部分にエアバッグ装置(エアバッグモジュール)20を備えている。図6に示すように、ステアリングホイール10の骨格部分は芯金12によって構成されている。芯金12は、鉄、アルミニウム、マグネシウム又はそれらの合金等によって形成されている。芯金12は、その中心部分に位置するボス部12aにおいてステアリングシャフト14(図1参照)に取付けられており、同ステアリングシャフト14と一体となって回転する。芯金12は、グランドGND(車体アース)に接続されている。
【0027】
芯金12において、ボス部12aの周囲の複数箇所には、それぞれ貫通孔12cを有する保持部12bが設けられている。各貫通孔12cの内壁面は、後側ほど拡径するテーパ状をなしている。
【0028】
図11に示すように、各保持部12bの前側には、クリップ13が配置されている。クリップ13は、導電性を有するばね鋼等の金属からなる線材を所定形状に屈曲させることによって形成されており、その一部において芯金12に接触している。各クリップ13の一部は、貫通孔12cの前方に位置している。
【0029】
車両にはホーン装置40が設けられており、このホーン装置40を作動させるための複数(例えば、3つ)のホーンスイッチ機構30(図3図7等参照)が、各保持部12bにおいて、スナップフィット構造にて芯金12に取付けられている。各ホーンスイッチ機構30は互いに同一の構成を有している。そして、これらのホーンスイッチ機構30を介してエアバッグ装置20が芯金12に支持されている。このように、各ホーンスイッチ機構30は、エアバッグ装置20を支持する機能とホーン装置40のスイッチ機能とを兼ね備えている。
【0030】
エアバッグ装置20は、自身の前部にバッグホルダ21を有している。さらに、バッグホルダ21と各ホーンスイッチ機構30との間にダンパホルダ41及び弾性部材42が介在されている。そして、芯金12、エアバッグ装置20、ホーンスイッチ機構30、ダンパホルダ41、弾性部材42等によって、ステアリングホイール10の振動を抑制、すなわち、制振するための制振構造が構成されている。次に、上記制振構造を構成する各部について説明する。
【0031】
<エアバッグ装置20>
図3図6及び図7に示すように、エアバッグ装置20は、パッド部24、リングリテーナ25、エアバッグ(図示略)及びインフレータ23を、バッグホルダ21に組付けることによって構成されている。
【0032】
パッド部24は、表面(後面)が意匠面をなす外皮部24aと、その外皮部24aの裏面側(前側)に立設された略四角環状の収容壁部24bとを有している。外皮部24aと収容壁部24bとバッグホルダ21とによって囲まれる空間は、主としてエアバッグ(図示略)を収容するためのバッグ収容空間xを構成している。外皮部24aのバッグ収容空間xを形成する部位には、エアバッグが展開及び膨張するときに押し破られる薄肉部24cが形成されている。
【0033】
収容壁部24bの前端部には、それぞれ矩形板状をなす複数の係止爪24dが一体に形成されている。各係止爪24dの前端部には、バッグ収容空間xから遠ざかる側へ突出する係止突起24eが形成されている。
【0034】
パッド部24の複数箇所には、ホーンスイッチ機構30を支持するためのスイッチ支持部24fがそれぞれ形成されている。各スイッチ支持部24fは、パッド部24の外皮部24aから裏面側(前側)へ延びるように、収容壁部24bと一体に形成されている。
【0035】
図3図7及び図8に示すように、バッグホルダ21は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。これに代えて、バッグホルダ21は、導電性を有する金属材料を用い、ダイカスト成形等を行なうことにより形成されてもよい。バッグホルダ21の周縁部は、パッド部24を固定するための略四角環状の周縁固定部21aとして構成されている。
【0036】
周縁固定部21aにおいて、上記各係止爪24dの前方となる箇所には、それぞれスリット状の爪係止孔21bが形成されている。各爪係止孔21bには、各係止爪24dの前端部が挿通されており、同係止爪24dが係止突起24eによって周縁固定部21aに係止されている。
【0037】
上記周縁固定部21aの内側部分は台座部21cを構成している。台座部21cの中心部には、円形状の開口部21dが形成されている。台座部21cであって、開口部21dの周縁部近傍の複数箇所には、それぞれねじ挿通孔21eが形成されている。台座部21cには、インフレータ23の一部が開口部21dに挿通された状態で取付けられている。
【0038】
より詳しくは、インフレータ23は低円柱状の本体23aを有しており、その本体23aの外周面にはフランジ部23bが形成されている。フランジ部23bには、複数の取付片23cが本体23aの径方向における外方へ延出されている。各取付片23cにおいて、バッグホルダ21の上記ねじ挿通孔21eの前方となる箇所には、それぞれねじ挿通孔23dが形成されている。インフレータ23において、フランジ部23bよりも後方側となる部分は、膨張用ガスを噴出するガス噴出部23eとして構成されている。そして、インフレータ23のガス噴出部23eがバッグ収容空間x側に突出するように、前側からバッグホルダ21の開口部21dに挿通されている。さらに、フランジ部23bが開口部21dの周縁部に接触させられ、この状態で、インフレータ23はリングリテーナ25とともにバッグホルダ21に取付けられている。
【0039】
より詳しくは、リングリテーナ25は、バッグホルダ21の開口部21dと同等の円形状の開口部25aを有している。また、リングリテーナ25は、バッグホルダ21の各ねじ挿通孔21eの後方となる複数箇所に取付ねじ25bを有している。リングリテーナ25とバッグホルダ21との間には、展開及び膨張可能に折り畳まれた状態のエアバッグ(図示略)の開口部が配置されている。リングリテーナ25の複数の取付ねじ25bは、エアバッグの開口部の周縁部分に設けられたねじ挿通孔(図示略)と、バッグホルダ21及びインフレータ23の各ねじ挿通孔21e,23dとに対し、後側から挿通されている。さらに、挿通状態の各取付ねじ25bに前側からナット26が締付けられることにより、エアバッグがリングリテーナ25を介してバッグホルダ21に固定されるとともに、インフレータ23がバッグホルダ21に固定されている。
【0040】
バッグホルダ21の周縁固定部21aの複数箇所には、ホーンスイッチ機構30を取付けるための取付部21fが、円形の開口部21dの径方向における外方へそれぞれ突出形成されている。各取付部21fは、上述したパッド部24のスイッチ支持部24fの前方となる箇所に位置している。各取付部21fには取付孔21g(図11図12参照)が形成されている。バッグホルダ21における各取付孔21gの周辺部には、それぞれ後方へ延びる複数の挟持部21h(図12参照)が一体に形成されている。本実施形態では、バッグホルダ21において各取付孔21gを挟んで相対向する箇所を後方へ折り曲げることにより、各挟持部21hが形成されている。各挟持部21hの上記折り曲げ形成により、取付孔21gの径方向における各挟持部21hの外方、すなわち、各挟持部21hを挟んで取付孔21gとは反対側には孔21i(図12参照)が形成されている。
【0041】
バッグホルダ21において、各取付孔21gの周りであって、互いに周方向に離間し、かつ上記挟持部21hから離間した複数箇所には伝達孔21jが貫通されている。本実施形態では、取付孔21g毎に2つの伝達孔21j(図11参照)が、各取付孔21gの軸線(図示略)を挟んで相対向する箇所に形成されている。
【0042】
<ホーンスイッチ機構30>
図4図5及び図8に示すように、各ホーンスイッチ機構30は、支持部材としてのスナップピン31、スライダとしてのピンホルダ32、コンタクトホルダ33、接点端子34、ばね受け35及びコイルばね36を備えている。次に、ホーンスイッチ機構30の各構成部材について説明する。
【0043】
<スナップピン31(支持部材)>
図8図11及び図15に示すように、スナップピン31は、導電性を有する金属材料によって形成されている。このスナップピン31の芯金12に対する支持構造については、後述する。スナップピン31の主要部は、長尺状の軸部31aによって構成されている。軸部31aは、上記ステアリングシャフト14の軸線L1に対し平行の関係にある軸線L2に沿って前後方向に延びている。軸部31aは、バッグホルダ21の取付孔21gの内径よりも小径に形成されている。スナップピン31は、この軸部31aにおいて取付孔21gに挿通されている。軸部31aにおける前端部31cの後側には、環状の係止溝31bが形成されている。軸部31aの後端外周部には、同軸部31aの他の部分よりも大径状をなす鍔部31dが形成されている。鍔部31dの外径は、上記取付孔21gの内径よりも大きく設定されている。鍔部31dの前面31eのうち、軸部31aとの境界部分を除く大部分は、上記軸線L2に対し直交している。
【0044】
<ピンホルダ32(スライダ)>
ピンホルダ32は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。ピンホルダ32の主要部は、前後両端が開放された筒状部32aによって構成されている。筒状部32aは、スナップピン31の軸部31aの外側に被せられている。ピンホルダ32は、ホーンスイッチ機構30の作動に際し、軸部31aに沿って前後方向へスライドするスライダとして用いられている。
【0045】
筒状部32aの外周部であって前後方向の中間部には、同筒状部32aの径方向における外方へ突出する円環状の受け部32bが形成されている。受け部32bは、コイルばね36の後端部を受け止める機能を有している。また、受け部32bは、筒状部32aの外周部であって、後述する伝達部41dの直前となる箇所に形成されている。さらに、受け部32bの外径は、単に、コイルばね36の後端部を受け止めるために必要な寸法よりも大きく設定されている。受け部32bのこうした形成位置及び外径に関する設定により、受け部32bは、ダンパホルダ41の前方への動きが伝達部41dを通じて伝達される被伝達部も兼ねている。
【0046】
なお、ピンホルダ32の筒状部32aにおける被伝達部は、受け部32bとは別の箇所に設けられてもよい。また、被伝達部は、筒状部32aに一体に形成されてもよいが、別体で形成されてもよい。
【0047】
<コンタクトホルダ33>
図8及び図12に示すように、コンタクトホルダ33は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。コンタクトホルダ33は、略円板状をなす天板部33aと、その天板部33aの外周縁から前方に延びる円筒状の周壁部33bとを備えている。コンタクトホルダ33は、ピンホルダ32における筒状部32aの後端部から後方へ離間した状態で、スナップピン31の少なくとも鍔部31dと、ピンホルダ32の筒状部32aの少なくとも後端部とを覆っている。周壁部33bの周方向に互いに離間した複数箇所には、フック部33cが径方向へ弾性変形可能に形成されている。
【0048】
周壁部33bの前後方向の中間部であって、周方向に互いに離間した複数箇所には、爪係合孔33d(図4図5参照)が形成されている。また、周壁部33bの前端部であって、互いに周方向に離間した複数箇所には円弧状の切欠き33e(図4図5図15参照)が形成されている。
【0049】
なお、コンタクトホルダ33は、スナップピン31及びピンホルダ32の各後端部に加え、それよりも前側の部分を覆うものであってもよい。
<接点端子34>
接点端子34は、導電性を有する帯状の金属板をプレス加工することにより形成されている。接点端子34は、コンタクトホルダ33の径方向に延びる本体部34aと、同本体部34aの両端から前方へ延びる一対の側部34bとを備えている。
【0050】
本体部34aの長さ方向における複数箇所には、前側へ突出する複数の接触突部34cがそれぞれ形成されている。本体部34aの後面であって、接触突部34cを除く部分の多くは、コンタクトホルダ33の天板部33aの前面に接触している。
【0051】
各側部34bは、コンタクトホルダ33の周壁部33bの内壁面に対し、係合した状態で接触している。この係合により、接点端子34はコンタクトホルダ33に位置決めされた状態で装着されている。
【0052】
<ばね受け35>
図4図5及び図12に示すように、ばね受け35は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。ばね受け35の一部は、円環板状をなす受け部35aによって構成されている。受け部35aの外径は、コイルばね36の外径、及び貫通孔12cの内壁面における後端部の外径、すなわち、テーパ状の内壁面における最大径と同程度に設定されている。
【0053】
受け部35aの周方向に互いに離間した複数箇所からは、前方へ向けて係止片35bがそれぞれ延びている。各係止片35bの前端部には、爪部35cが径方向における内方へ突設されている。また、受け部35aにおいて、周方向に隣り合う係止片35bの間からは、前方へ向けて複数の係合片35d(図11参照)が延びている。各係合片35dの外側面の少なくとも一部は、後側ほど拡径するテーパ面の一部を構成している。
【0054】
受け部35aからは、一対の装着部35e(図8参照)が後方へ向けて延びている。各装着部35eは、スナップピン31の軸部31aの外形形状に対応して、受け部35aの径方向における外方へ膨らむように湾曲形成されている。
【0055】
ばね受け35は、受け部35a及び両装着部35eにおいてスナップピン31の軸部31aに嵌合され、かつ各爪部35cが係止溝31bに入り込むことにより、同スナップピン31に脱落不能に装着されている。上記のように、ばね受け35では、複数の係合片35dが係止片35bを挟んで、周方向に間欠的に配置されている。こうした構成により、ばね受け35は、全体として、後側ほど拡径するテーパ状の外周面を有するものと同様な形態を有している。
【0056】
<コイルばね36>
コイルばね36は、スナップピン31の軸部31a、ピンホルダ32の筒状部32a、及びばね受け35の両装着部35eのそれぞれの周りに巻回されている。コイルばね36は、ピンホルダ32の受け部32bとばね受け35の受け部35aとの間に、圧縮させられた状態で配置されており、ピンホルダ32を後方へ付勢している。
【0057】
なお、ピンホルダ32を後方へ付勢するものであることを条件として、コイルばねとは異なる種類のばねや、ばねとは異なる弾性部材が用いられてもよい。
このようにして、複数の単体部品、すなわち、スナップピン31、ピンホルダ32、コンタクトホルダ33、接点端子34、ばね受け35及びコイルばね36がユニット化されて、アセンブリとされたホーンスイッチ機構30が構成されている。そのため、ホーンスイッチ機構30の取付けや交換の際に、ユニット化されたホーンスイッチ機構30を1つの集合体として扱うことが可能である。
【0058】
<ダンパホルダ41>
ダンパホルダ41は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。図8図11及び図15に示すように、ダンパホルダ41の主要部は、周壁部41aと、同周壁部41aの前端部に形成されて同ダンパホルダ41の底部をなす底壁部41bとによって構成されている。
【0059】
周壁部41aは円環状をなし、コンタクトホルダ33内において、ピンホルダ32における筒状部32aの軸方向の領域の一部を覆っている。周壁部41aの周方向に互いに離間した複数箇所には、係合爪41cが形成されている(図4図5図8参照)。これらの係合爪41cが、コンタクトホルダ33の対応する爪係合孔33dに内側から係合されることで、ダンパホルダ41がコンタクトホルダ33に取付けられている(図4図5参照)。
【0060】
底壁部41bは、スナップピン31の軸線L2を自身の軸線とする円環板状をなしており、その内周部は、上述した受け部32b(被伝達部)の後方に位置している。底壁部41bの内周部からは、その内周部に沿って円環状をなす伝達部41dが、前方へ向けて突出している。伝達部41dは、底壁部41bの上記内周部とともにダンパホルダ41の最小径部を構成している。伝達部41dは、バッグホルダ21の取付孔21gに挿通され、ピンホルダ32の上記受け部32bの直後に位置している。
【0061】
図4図5及び図15に示すように、底壁部41bの外周部において、互いに周方向に離間した複数箇所には、それぞれ前方へ向けて突出する伝達突部41eが形成されている。各伝達突部41eは、バッグホルダ21の対応する伝達孔21j(図8参照)に係合されている。
【0062】
周壁部41aの前端外周部であって、互いに周方向に離間し、かつ上記係合爪41cから周方向に離間した複数箇所には係合突部41fが形成されている(図8参照)。これらの係合突部41fがコンタクトホルダ33の対応する切欠き33eに係合されている。この係合により、ダンパホルダ41のコンタクトホルダ33に対する周方向の位置決めがなされている。また、各係合突部41fの切欠き33eに対する係合と、各係合爪41cの爪係合孔33dに対する係合とによって、周壁部33bが前後両方向から挟み込まれ、ダンパホルダ41のコンタクトホルダ33に対する前後方向(軸方向)の位置決めがなされている。
【0063】
なお、伝達部41dは、必ずしも円環状をなしていなくてもよく、スナップピン31の軸線L2を中心とする円上の複数箇所において、その円に沿った円弧状に形成されてもよい。
【0064】
<弾性部材42>
図9図11及び図13に示すように、弾性部材42は、弾性本体部42a、弾性筒状部42b及び弾性板状部42cを備えており、ピンホルダ32とダンパホルダ41との間に配置されている。弾性部材42の全体は、ゴム(例えば、EPDM、シリコンゴム等)、エラストマー等の弾性材料によって形成されている。
【0065】
弾性本体部42aは、上記スナップピン31の軸線L2を自身の軸線とする円環状をなしており、弾性部材42の後部の主要部を構成している。弾性本体部42aは、同弾性本体部42aの前側に位置する部材であるダンパホルダ41の底壁部41bから後方へ離間している。また、弾性本体部42aは、同弾性本体部42aの後側に位置する部材である、スナップピン31の鍔部31dから前方へ離間している。
【0066】
また、弾性本体部42aの後端外周部には、径方向における外方へ突出する環状突部42dが設けられている。環状突部42dは、コンタクトホルダ33の周壁部33bから径方向における内方へ離間している。
【0067】
弾性筒状部42bは、ダンパホルダ41の上記最小径部(底壁部41bの内周部及び伝達部41d)よりも小径の円筒状をなしており、弾性本体部42aの内周部から前方へ延びている。
【0068】
弾性筒状部42bとダンパホルダ41の上記最小径部との間には、周方向に延びる環状の前空隙部G1が形成されている。前空隙部G1は、弾性本体部42aに対し、隣接した箇所に設けられているが、前方に離間した箇所に設けられてもよい。
【0069】
図15図17に示すように、弾性部材42は、弾性筒状部42bから軸部31aの径方向における外方へ突出する前突部42fを有している。前突部42fは、弾性筒状部42bに一体に形成されている。前突部42fは、弾性筒状部42bの周方向における複数箇所に等角度毎に形成されている。各前突部42fは、軸線L2に平行に延びている。各前突部42fの後端部は弾性本体部42aに繋がっている。各前突部42fは、ダンパホルダ41の伝達部41dに接触することで、上記前空隙部G1の一部を埋めている。接触の形態は、面接触、線接触、点接触のいずれでもよい。これらの前突部42fは、前空隙部G1に起因する弾性部材42の弾性変形を規制する機能を担っている。
【0070】
なお、複数の前突部42fは非等角度毎に形成されてもよい。また、前突部42fの外周部は押し潰された状態で、ダンパホルダ41の上記最小径部に接触してもよい。
弾性板状部42cは、弾性筒状部42bの前端外周部から径方向における外方へ突出している。弾性板状部42cの外径は、上記受け部32b(被伝達部)の外径と同程度に設定されている。弾性板状部42cの厚み(軸線L2に沿う方向の寸法)は、同弾性板状部42cの弾性筒状部42bからの突出長さよりも小さく設定されている。弾性板状部42cは、ダンパホルダ41の伝達部41dと、ピンホルダ32の受け部32bとの間に入り込んでいる。弾性板状部42cの前面は受け部32bに接触し、同弾性板状部42cの後面は伝達部41dに接触している。従って、伝達部41dは、弾性板状部42cを介して受け部32bに間接に接触していることになる。
【0071】
なお、弾性板状部42cは必ずしも円環状をなさなくてもよい。
図9図10及び図15に示すように、弾性本体部42a及び環状突部42dと、スナップピン31の鍔部31dとの間であって軸部31aの周りには、環状の後空隙部G2が形成されている。
【0072】
弾性部材42は、弾性本体部42a及び環状突部42dの少なくとも一方から後方へ突出する後突部42gを有している。本実施形態では、後突部42gは、弾性本体部42a及び環状突部42dの両方から突出している。後突部42gは、特許請求の範囲における「突部」に該当する。
【0073】
後突部42gは、弾性部材42の一部を構成するものであり、弾性本体部42a及び環状突部42dに対し一体に形成されている。後突部42gは、軸線L2の周りの複数箇所に等角度毎に形成されている。複数の後突部42gは、軸線L2を中心として放射状に延びている(図10参照)。図13図15に示すように、各後突部42gは、周方向における寸法が前端で最大となり、後端で最小となるように形成されている。各後突部42gの後面42hは、鍔部31dの前面31eに対し平行であり、かつ上記周方向に延びる平面によって構成されている(図14参照)。
【0074】
なお、複数の後突部42gは非等角度毎に形成されてもよい。
各後突部42gは、鍔部31dに接触することで、上記後空隙部G2の一部を埋めている。各後突部42gの鍔部31dに対する接触は、同後突部42gの後端部42iが押し潰された状態でなされている。後端部42iは、後突部42gのうち、図14において二点鎖線よりも後方に位置する部分である。これらの後突部42gは、後空隙部G2に起因する弾性部材42の弾性変形を規制する機能を担っている。
【0075】
図11及び図12に示すように、弾性部材42は、エアバッグ装置20とともにダイナミックダンパを構成している。本実施形態では、弾性部材42をダイナミックダンパのばねとして機能させ、エアバッグ装置20をダンパマスとして機能させるようにしている。
【0076】
ここで、弾性部材42の各部の形状、大きさ等をチューニングすることで、同弾性部材42の固有振動数が、ステアリングホイール10の上下方向や左右方向の振動を抑制(制振)するために要求される周波数と同一又は近い値に設定されている。
【0077】
各ホーンスイッチ機構30が、上記のように、弾性部材42及びダンパホルダ41を介してバッグホルダ21に取付けられた状態では、ピンホルダ32が、スナップピン31とバッグホルダ21との接触を防ぎつつ、すなわち絶縁状態にしつつ、バッグホルダ21をスナップピン31に対し前後動可能に支持する。ピンホルダ32は、スナップピン31の軸部31aと接点端子34の側部34bとの間に介在して、それら軸部31a及び側部34bを絶縁状態にする。また、ピンホルダ32が、コイルばね36の後ろ向きの付勢力をスナップピン31の鍔部31dに伝達する。
【0078】
また、一対の挟持部21hが、ダンパホルダ41と接点端子34の側部34bとの間に入り込む。コンタクトホルダ33の各フック部33cにより、側部34bが挟持部21hの外面に接触させられる。この接触により、バッグホルダ21と接点端子34とが導通された状態となる。
【0079】
さらに、フック部33cによって付勢された側部34bの前端部が、挟持部21hに係止される。この側部34bにより、コンタクトホルダ33、ひいてはホーンスイッチ機構30がバッグホルダ21から後方へ移動することを規制される。
【0080】
次に、上記のように構成された複数のホーンスイッチ機構30を介してエアバッグ装置20を芯金12に組付ける作業について説明する。
この作業に際しては、ホーンスイッチ機構30毎のスナップピン31が芯金12において対応する保持部12bの貫通孔12cに後方から挿入される。この挿入に伴い、ばね受け35の受け部35aが保持部12bに接近し、係合片35d(図5図11等参照)が貫通孔12cの内壁面に接近する。また、スナップピン31における軸部31aの前端部31cがクリップ13に接触する。さらに、クリップ13の付勢力に抗してスナップピン31等が前方へ移動されると、クリップ13がスナップピン31の径方向における外方へ弾性変形させられる。そして、係止溝31bがクリップ13に対向する箇所までスナップピン31が移動されると、クリップ13が自身の弾性復元力により係止溝31bに入り込もうとする。
【0081】
一方、係止溝31b内には、コイルばね36によって前方へ付勢されたばね受け35の爪部35c(図12参照)が入り込んでいる。そのため、クリップ13は、係止溝31b内に入り込む過程で、コイルばね36を後方へ圧縮させながら、爪部35cと前端部31cとの間に入り込む。この入り込みにより、係止溝31b内では、爪部35cがクリップ13の後側に位置する。クリップ13において、貫通孔12cの前方に位置する部分は、コイルばね36によって前方へ付勢された爪部35cと前端部31cとによって前後から挟み込まれる。このようにして、スナップピン31がクリップ13によって芯金12に係止されることで、各ホーンスイッチ機構30の芯金12に対する締結と、エアバッグ装置20の芯金12に対する装着とが行なわれる。スナップピン31が、貫通孔12cへの挿通に伴いクリップ13の弾性によって芯金12に係止される構造は、スナップフィット構造とも呼ばれる。
【0082】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
車両に対し、前面衝突等による前方からの衝撃が加わらない通常時には、エアバッグ装置20では、インフレータ23のガス噴出部23e(図7参照)から膨張用ガスが噴出されず、エアバッグが折り畳まれた状態に維持される。
【0083】
上記通常時において、エアバッグ装置20が押下げられない場合には、図11及び図12に示すように、接点端子34の接触突部34cが、スナップピン31の後端部から後方へ離間する。接点端子34及びスナップピン31が導通を遮断された状態となり、ホーン装置40が作動しない。このときには、クリップ13により芯金12に係止されたスナップピン31の鍔部31dに対し、コイルばね36の後ろ向きの付勢力がピンホルダ32を介して加わる。
【0084】
また、コイルばね36の前向きの付勢力が、受け部35aを通じてばね受け35に加わり、同ばね受け35においてスナップピン31の係止溝31b内に入り込んだ爪部35cが、同係止溝31b内のクリップ13を前方へ押圧する。この押圧により、クリップ13は、前端部31cと爪部35cとによって前後から挟み込まれ、動きを規制される。
【0085】
このとき、エアバッグ装置20の荷重は、主としてコンタクトホルダ33、ダンパホルダ41及び弾性部材42を介してピンホルダ32に伝わる。
ここで、ピンホルダ32における筒状部32aの後端部が、コンタクトホルダ33の天板部33aから前方へ離間している。このことから、エアバッグ装置20の荷重がコンタクトホルダ33を介して直接ピンホルダ32に伝わることはない。
【0086】
そのため、上記通常時であって、車両の高速走行中や車載エンジンのアイドリング中に、ステアリングホイール10に対し、上下方向や左右方向の振動が伝わると、この振動は、芯金12及び各ホーンスイッチ機構30を介してエアバッグ装置20に伝わる。より具体的には、上記振動は、スナップピン31、ピンホルダ32、弾性部材42及びダンパホルダ41を介して、コンタクトホルダ33及びバッグホルダ21に伝達される。ダンパホルダ41とバッグホルダ21との間での振動の伝達は、上述した伝達突部41e及び伝達孔21jを通じて行なわれる(図15参照)。
【0087】
上記のように振動が伝わると、その振動に応じて、エアバッグ装置20がダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、弾性部材42がダイナミックダンパのばねとして機能する。ばねの機能は、弾性部材42のうち、主として弾性本体部42aによって発揮される。
【0088】
従って、弾性部材42、主として弾性本体部42aは、ステアリングホイール10の振動を抑制するために要求される周波数と同一又は近い固有振動数で弾性変形しながら、エアバッグ装置20を伴って上下方向、左右方向へ振動する。この振動により、ステアリングホイール10の振動エネルギーが吸収され、ステアリングホイール10の上下方向及び左右方向の各振動が抑制(制振)される。
【0089】
ところで、ステアリングホイール10では、エアバッグ装置20が、芯金12に取付けられたスナップピン31に対して、図11において矢印Aで示す方向へ揺動しようとする場合がある。
【0090】
本実施形態では、図15に示すように、弾性筒状部42bと、ダンパホルダ41における底壁部41bの内周部及び伝達部41dとの間には環状の前空隙部G1があり、この前空隙部G1が原因で弾性部材42が弾性変形し得る。
【0091】
しかし、弾性部材42には、弾性筒状部42bから径方向における外方へ突出する前突部42fが形成されている。各前突部42fにより前空隙部G1の一部が埋められている。
【0092】
各前突部42fは、前空隙部G1に起因する弾性部材42の弾性変形を規制する。この規制により、スナップピン31に対するエアバッグ装置20の上記揺動を抑制することができる。
【0093】
また、弾性部材42の後端部と鍔部31dとの間には後空隙部G2があり、この後空隙部G2が原因で弾性部材42が弾性変形し得る。
しかし、弾性部材42には、弾性本体部42a及び環状突部42dの両者から後方へ突出する後突部42gが形成されている。後突部42gの後端部42iが鍔部31dに接触している。各後突部42gにより後空隙部G2の一部が埋められている。
【0094】
各後突部42gは、後空隙部G2に起因する弾性部材42の弾性変形を規制する。この規制により、スナップピン31に対するエアバッグ装置20の上記揺動をより一層抑制することができる。
【0095】
また、各後突部42gが押し潰された状態で鍔部31dに接触させられているため、弾性部材42の形状、大きさ等がばらついていても、弾性部材42の弾性変形を後突部42gによって規制できる。
【0096】
ここで、後突部42gが、弾性部材42の弾性変形を規制する度合いは、鍔部31dとの干渉により後突部42gが押し潰される部分の体積が少ない場合に小さく、同体積が多くなるに従い大きくなる。弾性変形を規制する度合いが大きくなる(弾性変形しにくくなる)に従い、弾性部材42の固有振動数が高くなる。
【0097】
上記度合いは、後突部42gが弾性部材42の全周にわたって形成された場合に最大となる。ただし、この場合には、弾性部材42の固有振動数を、ステアリングホイール10を制振するために要求される周波数と同一又は近い値に近付けることが難しくなる。
【0098】
この点、本実施形態では、後突部42gが弾性部材42の周方向に互いに離間した複数箇所に形成されるにとどまる。そのため、後突部42gが弾性部材42の全周にわたって形成された場合に比べ、後突部42gが弾性部材42の弾性変形を規制する度合いを小さくし、弾性部材42の固有振動数を、上記値に近付けることが容易となる。
【0099】
また、本実施形態では、図13図15に示すように、各後突部42gの後面42hが、鍔部31dの前面31eに対し平行であり、かつ弾性部材42の周方向に延びる平面により構成されている。そのため、同後突部42gの後端部42iのうち、鍔部31dとの干渉により押し潰される部分の体積が、後面42hが曲面である場合よりも多くなる。従って、後空隙部G2に起因する弾性部材42の弾性変形を多く規制して、すなわち、弾性変形しにくくして、弾性部材42の固有振動数を高くしたい場合に有効である。
【0100】
さらに、本実施形態では、複数の後突部42gが、図10に示すように、スナップピン31の軸線L2を中心として放射状に延びている。複数の後突部42gの中には、エアバッグ装置20の揺動方向と同方向、又は近い方向に延びるものが存在する。該当する後突部42gは、エアバッグ装置20が揺動を続けようとした場合、その揺動の角度に拘わらず鍔部31dに対し接触し続ける。そのため、後突部42gが弾性部材42の弾性変形を規制する効果は、後突部42gが放射状に延びない場合よりも大きくなる。結果として、スナップピン31に対するエアバッグ装置20の揺動をより一層抑制できる。
【0101】
なお、図15に示すように、各前突部42fの一部は、上下方向や左右方向へ圧縮されて弾性変形したとき、前方に膨出するように弾性変形しようとする。ここで、仮に、各前突部42fが、その前突部42fの前側に位置する弾性板状部42cに接触していると、この弾性板状部42cが、各前突部42fの前方への弾性変形を妨げようとする。また、上記接触に伴い、各前突部42fと弾性板状部42cとの間に摩擦力が発生し、各前突部42fが前方へ一層弾性変形しにくくなる。
【0102】
この点、本実施形態では、各前突部42fが、弾性板状部42cから後方へ離間している。各前突部42fと弾性板状部42cとの間の隙間は、同前突部42fが前側へ弾性変形するのを許容する。各前突部42fが弾性板状部42cに接触しにくく、接触に伴う摩擦力の発生が起こりにくい。
【0103】
一方、上記通常時において、ホーン装置40の作動のためにエアバッグ装置20が押下げられると、同エアバッグ装置20に加えられた力が、少なくとも1つのホーンスイッチ機構30におけるコンタクトホルダ33を介して接点端子34及びダンパホルダ41に伝達される。この力により、ダンパホルダ41が前方へ移動させられる。ダンパホルダ41の動きは、ピンホルダ32の受け部32b(被伝達部)に伝達される。すなわち、伝達部41dが前方へ移動するが、その動きは、受け部32bに対し、弾性部材42の弾性板状部42cを介して間接に伝達される。受け部32bは、コイルばね36の後ろ向きの付勢力を受ける機能に加え、被伝達部としても機能し、ダンパホルダ41(伝達部41d)から伝達される前方へ向かう力を受ける。
【0104】
この力の伝達により、ピンホルダ32がコイルばね36に抗して、軸部31aに沿って前方へスライドさせられる。また、コンタクトホルダ33と一緒に接点端子34が前方へ移動する。
【0105】
そして、図18に示すように、接点端子34の複数の接触突部34cの少なくとも1つが、スナップピン31の後端面に接触すると、グランドGND(車体アース)に接続された芯金12とバッグホルダ21とが、クリップ13(図12参照)、スナップピン31及び接点端子34を介して導通される。この導通により、ホーンスイッチ機構30が閉成し、バッグホルダ21に電気的に接続されたホーン装置40が作動する。
【0106】
ところで、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者が前傾しようとする。一方、エアバッグ装置20では、図7に示すように、上記衝撃に応じインフレータ23が作動させられ、ガス噴出部23eから膨張用ガスが噴出される。この膨張用ガスがエアバッグに供給されることで、同エアバッグが展開及び膨張する。このエアバッグにより、パッド部24の外皮部24aに加わる押圧力が増大していくと、同外皮部24aが薄肉部24cにおいて破断される。破断により生じた開口を通じてエアバッグが後方へ向けて引き続き展開及び膨張する。前面衝突の衝撃により前傾しようとする運転者の前方に、展開及び膨張したエアバッグが介在し、運転者の前傾を拘束し、運転者を衝撃から保護する。
【0107】
上記エアバッグの後方への膨張に際しては、バッグホルダ21に対し後方へ向かう力が加わる。この点、本実施形態では、ホーンスイッチ機構30毎のスナップピン31が芯金12(保持部12b)に支持されている。各スナップピン31の後端部に形成された鍔部31dはバッグホルダ21の取付孔21g(図12参照)よりも後方に位置している。しかも、鍔部31dは、取付孔21gの内径よりも大きな外径を有している。そのため、鍔部31dは、バッグホルダ21が後方へ動いた場合には、そのバッグホルダ21において取付孔21gの周辺部分に接触することでストッパとして機能する。そのため、バッグホルダ21ひいてはエアバッグ装置20が過度に後方へ動くことが、スナップピン31の鍔部31dによって規制される。
【0108】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
(1)仮に、後突部42gが形成されないと、後空隙部G2が原因で弾性部材42が弾性変形する。エアバッグ装置20がスナップピン31に対して、図11の矢印Aで示す方向へ揺動しようとすると、次の現象が起こるおそれがある。弾性部材42の後端部、すなわち、弾性本体部42aの後端部及び環状突部42dが鍔部31dに対し一旦接触し、その後に同鍔部31dから再び離れる。また、弾性筒状部42bがピンホルダ32の筒状部32aから一旦離れ、その後に、同筒状部32aに再び接触する。また、弾性板状部42cがピンホルダ32の受け部32bから一旦離れ、その後に同受け部32bに再び接触する。このように、弾性部材42が他の部材に接触したり離れたりする際に音が発生するおそれがある。
【0109】
エアバッグ装置20がスナップピン31に対し揺動しようとする力が大きいとき、例えば、車両が悪路を走行しているときには、上記接触が勢いよく行なわれる。そのため、上記音が、異音として乗員に聞こえるおそれがある。
【0110】
ドライサーフと呼ばれる潤滑剤を弾性部材42に塗布することで、上記音の発生を抑制可能である。反面、潤滑剤を塗布する工程が必要となり、その分、製造工数が増えてしまう。
【0111】
この点、本実施形態では、上述したように後突部42gが、後空隙部G2に起因する弾性部材42の弾性変形を規制する。この規制により、弾性部材42の後端部が鍔部31dから離れること、弾性筒状部42bが筒状部32aから離れること、及び弾性板状部42cが受け部32bから離れることが起こりにくくなる。弾性部材42の形状を工夫することで、弾性部材42が他の部材に対し、離れたり接触したりすることによる音の発生を未然に抑制することができる。
【0112】
弾性部材42に潤滑剤を塗布しなくてもすむため、塗布による製造工数の増加を回避できる。
(2)前突部42f及び後突部42gが、軸線L2の周りの複数箇所に、等角度毎に配置されている(図17図10参照)。
【0113】
そのため、前突部42fが弾性部材42の弾性変形を規制する効果と、後突部42gが弾性部材42の弾性変形を規制する効果とを、弾性部材42の周方向の組付け位置に拘わらず得ることができる。
【0114】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0115】
<弾性部材42について>
・後突部42gは、軸線L2を中心として放射状に延びることを条件に、弾性本体部42a及び環状突部42dの一方にのみ形成されてもよい。
【0116】
・後突部42gの形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
例えば、後突部42gの形状は、図13において二点鎖線で示すように後面42hが、上記実施形態よりも周方向に長くなる形状に変更されてもよい。
【0117】
また、図19は、上記実施形態とは異なる形状を有する後突部42gを示している。
この変形例では、各後突部42gの後面42hは、後方へ膨らむように湾曲する湾曲面により構成されている。このようにすると、後突部42gのうち、鍔部31dとの干渉により押し潰される部分の体積が少なくなる。従って、弾性部材42の弾性変形を少なく規制して、すなわち、弾性変形しやすくして、弾性部材42の固有振動数を低くしたい場合に有効である。
【0118】
・各後突部42gは、前突部42fに対し、上記周方向に同じ箇所に形成されてもよいし、異なる箇所に形成されてもよい。
同じ箇所に形成されることにより、弾性部材42を成形するための金型の型割りが容易になる。異なる箇所に形成されることにより、エアバッグ装置20の揺動方向と後突部42gの延びる方向とが異なっていた場合に、前突部42fによってエアバッグ装置20の揺動を抑制可能である。周方向における前突部42fの位置を変えることで、揺動を抑制する性能を調整できる。色々な方向の揺動に対しても対応することが可能となる。
【0119】
図19の上記変形例に示すように、弾性部材42は、後方へ突出して鍔部31dに接触することで、後空隙部G2の一部を埋め、かつ軸線L2を中心として放射状に延びない補助突部42jを、隣り合う後突部42gの間に有してもよい。
【0120】
このようにすると、エアバッグ装置20がスナップピン31に対して揺動しようとした場合、補助突部42jは、後突部42gとともに、弾性部材42が弾性変形するのを規制する。そのため、弾性部材42の弾性変形を規制する度合いを微調整することが可能となる。
【0121】
なお、図19では、補助突部42jが半球状をなしているが、他の形状に変更されてもよい。
図19の変形例における補助突部42jは、図9図10等に示す上記実施形態の弾性部材42において、隣り合う後突部42gの間に設けられてもよい。
【0122】
図19の変形例における補助突部42jは、適宜省略可能である。
・前突部42fが適宜省略されてもよい。この場合、エアバッグ装置20のスナップピン31に対する揺動は、後突部42gのみによって抑制される。
【0123】
<その他>
・上記エアバッグ装置の支持構造は、車両以外の乗物、例えば、航空機、船舶等におけるステアリングホイールに適用することもできる。
【符号の説明】
【0124】
10…ステアリングホイール
12…芯金
20…エアバッグ装置
21…バッグホルダ
31…スナップピン(支持部材)
31a…軸部
31d…鍔部
31e…前面
32…ピンホルダ(スライダ)
41…ダンパホルダ
42…弾性部材
42f…前突部
42g…後突部(突部)
42h…後面
42i…後端部
42j…補助突部
G1…前空隙部
G2…後空隙部(空隙部)
L2…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図20