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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
E04H1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021022974
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125397
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 寛典
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224417(JP,A)
【文献】特開2013-057172(JP,A)
【文献】特開2019-023390(JP,A)
【文献】特開2020-103050(JP,A)
【文献】特開2004-044126(JP,A)
【文献】特開2012-102575(JP,A)
【文献】特開2001-132248(JP,A)
【文献】特開2002-276168(JP,A)
【文献】特開2013-253475(JP,A)
【文献】特開平11-148238(JP,A)
【文献】特開2014-051778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04B 2/74
E04F 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階とを接続し、蹴込み板が設けられないシースルー形式の直階段と、
前記直階段に隣接して形成される壁体と、
前記直階段の下方の前記下階の床面を掘り下げて形成される床下げ部と、
を備えた建築物であって、
前記壁体は、前記直階段の下端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第一側壁部と、
前記直階段の上端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第二側壁部と、
前記第一側壁部と前記第二側壁部との間に架設され、植物を植えこみ可能な、複数の棚部と、を有し、
前記棚部は、前記植物が前記直階段側及び前記直階段と反対側に露出するように形成され、
前記床下げ部は、上縁が前記下階の床面と面一となる防水性を有する槽状に形成されており、
当該床下げ部に、地面を形成して植栽が配置され、
前記直階段は、踏板の下面に前記植栽に光を照射する発光部が形成されることを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記直階段は、踏板の下面に植栽に水を供給する自動潅水部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
下階と上階とを接続し、蹴込み板が設けられないシースルー形式の直階段と、
前記直階段に隣接して形成される壁体と、
前記直階段の下方の前記下階の床面を掘り下げて形成される床下げ部と、
を備えた建築物であって、
前記壁体は、前記直階段の下端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第一側壁部と、
前記直階段の上端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第二側壁部と、
前記第一側壁部と前記第二側壁部との間に架設され、植物を植えこみ可能な、複数の棚部と、を有し、
前記棚部は、前記植物が前記直階段側及び前記直階段と反対側に露出するように形成され、
前記床下げ部は、上縁が前記下階の床面と面一となる防水性を有する槽状に形成されており、
当該床下げ部に、地面を形成して植栽が配置され、
前記直階段は、踏板の下面に植栽に水を供給する自動潅水部が形成されることを特徴とする建築物。
【請求項4】
前記壁体は、前記棚部に水を供給する壁体自動潅水部と、当該棚部から排水された水を前記壁体の床下に形成された排水管に導く排水路と、を有し、
前記床下げ部は、排水口が形成されて、当該排水口は、前記排水管に接続されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
前記壁体は、前記第一側壁部及び前記第二側壁部が、前記上階の腰高さまで延びて立設されており、
前記棚部は、前記下階の床面から前記第一側壁部及び前記第二側壁部の上端まで等間隔に形成され、
前記壁体の前記直階段と反対側の前記上階には、通路が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の建築物。
【請求項6】
前記直階段の上には、当該直階段と平行に形成され、前記上階と、当該上階の上の階とを接続する第二直階段をさらに備え、
前記壁体は、前記第一側壁部及び前記第二側壁部が、前記上階の上の階の腰高さ以上の高さまで延びて立設されており、
前記棚部は、前記下階の床面から前記第一側壁部及び前記第二側壁部の上端まで等間隔に形成され、
前記壁体の前記直階段と反対側の前記上階、及び当該上階の上の階には、それぞれ通路が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の建築物。
【請求項7】
前記壁体の前記直階段と反対側の下階には、キッチンを含む空間が形成され、
前記直階段の前記壁体と反対側の下階には、リビングを含む空間が形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑豊かな屋内空間を備える建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内部に植物を配置するものとして、居住者や建物利用者のストレスの解消や癒しを目的として、当該屋内空間を緑豊かにすることが知られている(例えば特許文献1参照)。また、都市部におけるヒートアイランド現象に対して屋内空間を快適なものとするために、開口部などに植物を配置して屋内空間へ涼やかな風を送り込むことが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1では、多段の棚を設けたパーテーションの当該棚に植物を配置することで、空間を間仕切るパーテーションでありつつ、複数の植物を高さ方向に並べて配置でき、空間の利用効率が高く、ストレスの少ない屋内空間を形成することができている。また、特許文献2では、植物を栽培する栽培槽を上下2段になるように架台にのせて、水耕栽培を行うとともに、架台上方に張設されたネットにつる性植物を巻き付かせて、カーテン状の緑化装置を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-102575号公報
【文献】特開2015-112100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、植物は、例えば葉の埃の除去や果実等の収穫などの様々なメンテナンスを必要とするものであり、上述の植物を配置したパーテーションや緑化装置などの人の背丈以上の高さまで立設される装置は、自動的に潅水できる機能は備わっているものの、上のほうに配置されている植物のメンテナンス作業は困難なものとなりやすい。
【0006】
そこで、本発明は、屋内空間に配置された植物のメンテナンスが容易な建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建築物は、下階と上階とを接続し、蹴込み板が設けられないシースルー形式の直階段と、前記直階段に隣接して形成される壁体と、前記直階段の下方の前記下階の床面を掘り下げて形成される床下げ部と、を備えた建築物であって、前記壁体は、前記直階段の下端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第一側壁部と、前記直階段の上端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第二側壁部と、前記第一側壁部と前記第二側壁部との間に架設され、植物を植えこみ可能な、複数の棚部と、を有し、前記棚部は、前記植物が前記直階段側及び前記直階段と反対側に露出するように形成され、前記床下げ部は、上縁が前記下階の床面と面一となる防水性を有する槽状に形成されており、当該床下げ部に、地面を形成して植栽が配置され、前記直階段は、踏板の下面に前記植栽に光を照射する発光部が形成されることを特徴としている。
【0008】
本発明の建築物は、前記直階段は、踏板の下面に植栽に水を供給する自動潅水部が形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の建築物は、下階と上階とを接続し、蹴込み板が設けられないシースルー形式の直階段と、前記直階段に隣接して形成される壁体と、前記直階段の下方の前記下階の床面を掘り下げて形成される床下げ部と、を備えた建築物であって、前記壁体は、前記直階段の下端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第一側壁部と、前記直階段の上端に隣接して、前記下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される第二側壁部と、前記第一側壁部と前記第二側壁部との間に架設され、植物を植えこみ可能な、複数の棚部と、を有し、前記棚部は、前記植物が前記直階段側及び前記直階段と反対側に露出するように形成され、前記床下げ部は、上縁が前記下階の床面と面一となる防水性を有する槽状に形成されており、当該床下げ部に、地面を形成して植栽が配置され、前記直階段は、踏板の下面に植栽に水を供給する自動潅水部が形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の建築物は、前記壁体は、前記棚部に水を供給する壁体自動潅水部と、当該棚部から排水された水を前記壁体の床下に形成された排水管に導く排水路と、を有し、前記床下げ部は、排水口が形成されて、当該排水口は、前記排水管に接続されることを特徴としている。
【0012】
本発明の建築物は、前記壁体は、前記第一側壁部及び前記第二側壁部が、前記上階の腰高さまで延びて立設されており、前記棚部は、前記下階の床面から前記第一側壁部及び前記第二側壁部の上端まで等間隔に形成され、前記壁体の前記直階段と反対側の前記上階には、通路が形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の建築物は、前記直階段の上には、当該直階段と平行に形成され、前記上階と、当該上階の上の階とを接続する第二直階段をさらに備え、前記壁体は、前記第一側壁部及び前記第二側壁部が、前記上階の上の階の腰高さ以上の高さまで延びて立設されており、前記棚部は、前記下階の床面から前記第一側壁部及び前記第二側壁部の上端まで等間隔に形成され、前記壁体の前記直階段と反対側の前記上階、及び当該上階の上の階には、それぞれ通路が形成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の建築物は、前記壁体の前記直階段と反対側の下階には、キッチンを含む空間が形成され、前記直階段の前記壁体と反対側の下階には、リビングを含む空間が形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築物によると、下階の床面から天井面以上の高さまで延びて立設される壁体に植物を植えこみ可能な複数の棚部が形成されており、当該壁体が直階段に隣接して形成されているので、下階の床面からでは届かない高い位置に設けられた植物の世話をする場合であっても、直階段を上りながら作業することができ、別途脚立などを使用するよりも、容易に且つ安全に植物のメンテナンス作業を行うことができる。特に直階段が蹴込み板が設けられていないシースルー形式の直階段であることで、踏板の間の隙間から階段下に手を伸ばして植物を世話することができるので、階段下の高い位置に配置された植物も安全かつ容易に世話することができる。棚部の植物は、直階段側及び直階段と反対側の両側に露出しているので、屋内空間をより緑豊かな空間とすることができる。
【0016】
本発明の建築物によると、下階の床面を掘り下げて形成される床下げ部が、上縁が下階の床面と面一となる槽状に形成されており、当該床下げ部に土を入れて地面を形成し植栽を配置するので、下階の床面とほぼ面一な地面に植栽を植えることができ、緑豊かな屋内空間とすることができる。そして、床下げ部が形成されるのは、直階段の下方であるので、階段下のスペースを利用して屋内に植栽を配置することができるとともに、直階段を利用して当該植栽のメンテナンスを安全且つ容易に行うことができる。
【0017】
本発明の建築物によると、直階段は、踏板の下面に植栽に光を照射する発光部が形成されているので、植栽に必要な光を適切に照射することができる。また、例えば植栽を照らすことで、下階の直階段の周辺を木漏れ日のある空間にするなど、屋内空間を所望の雰囲気に演出することができる。さらに、直階段には蹴込み板が設けられていないことから、発光部の光の一部は発光部の下方に形成される踏板の上面に反射することができ、間接照明として直階段を照らすことができる。
【0018】
本発明の建築物によると、直階段の踏板の下面から階段下の植栽に高い位置から自動的に水をやることができる。直階段を用いて自動潅水部を形成するので、自動潅水部を支持する構造を別途設ける必要がなく、簡単に省スペースで自動潅水部を形成することができる。
【0019】
本発明の建築物によると、壁体の棚部に水を供給する壁体自動潅水部から、棚部を通って排水される水が、排水路を通って壁体の床下に形成された排水管に導かれるとともに、自動潅水部から植栽に供給された水が、植栽が配置された地面を通して床下げ部の排水口から排水管に導かれるので、壁体の棚に配置された植物、及び、階段下の床下げ部に配置された植栽に供給された水を、排水管を通して、確実に排水させることができる。
【0020】
本発明の建築物によると、壁体の第一側壁部及び第二側壁部が上階の腰高さまで延びて立設されており、壁体の直階段と反対側の上階に通路が形成されているので、壁体の上部は、直階段が形成された上階の下階を見下ろす吹き抜けと、通路と、を隔てる手すり壁のように配置されることとなる。これにより、上階でも緑を楽しむことができるとともに、壁体の上部に配置されてる植物のメンテナンスは通路側から行うことができるので、壁体の上部の直階段から手が届きにくい箇所の植物のメンテナンスを容易且つ安全に行うことができる。
【0021】
本発明の建築物によると、下階と上階とを接続する直階段の上に、当該直階段と平行に、上階と、上階の上の階と、を接続する第二直階段が形成されており、壁体が上階の上の階の腰高さ以上の高さまで延びて立設されており、壁体の直階段と反対側の上階、及び上階の上の階に通路が形成されているので、壁体の直階段及び第二直階段から手が届きにくい箇所の植物のメンテナンスを容易且つ安全に行うことができる。
【0022】
本発明の建築物によると、壁体の直階段と反対側の下階にキッチンを含む空間が形成されているので、例えば壁体の棚部に野菜などの植物を植えてキッチンで楽しみながら収穫することができ、また、直階段の壁体と反対側の下階にはリビングを含む空間が形成されることで、壁体を挟んで両側から緑を楽しむことができるとともに、壁体の植物を挟むことで、リビング及びキッチンを適度に隔たれつつ、適度に繋がった空間とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】建築物の直階段及び壁体の周辺の下階及び上階を示す斜視図。
図2】直階段の全体構成を示す断面図。
図3】(A)は直階段の踏板の下面に形成された自動潅水部の構成を説明する一部拡大断面図であり、(B)は直階段の踏板の下面に形成された発光体の構成を説明する一部拡大断面図。
図4】壁体及び床下げ部の全体構成を示す正面から見た断面図。
図5】壁体の全体構成を示す側方から見た断面図。
図6】壁体自動潅水部の構成を説明する図5のα部分拡大図。
図7】棚部から排水された水を排水管に導く排水路、及び、床下げ部に形成されて排水管に接続される排水口を説明する図4の右下部分拡大図。
図8】建築物の下階のリビング、ダイニング、及びキッチンを含む空間の間取りを示す断面図。
図9】変形例の建築物の直階段及び壁体の全体構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明に係る建築物の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の建築物1は例えば2階建ての戸建住宅である。本発明の建築物1は、少なくとも上階3及び下階2を有する2階建て以上の建築物1であるが、2階建てに限定されるものではなく、3階建て以上の建築物1であってもよい。また、戸建住宅に限られず、集合住宅であってもよい。また、居住性の建築物1に限定されるものではなく、例えば公共施設、商業施設、宿泊施設、保育・教育施設、介護施設などの様々な用途の建築物1であってもよい。
【0025】
建築物1は、図1に示すように、下階2と上階3とを接続する直階段4と、直階段4に隣接して形成され、植物7が配置される壁体5と、直階段4の下方の下階2の床面21を掘り下げて形成され、植栽8が配置される床下げ部6と、を備えている。
【0026】
直階段4は、上階3及び下階2を連通する吹き抜けに形成されるものであり、下階2の床面21と上階3の床面31との間に斜めに架設される2本の側桁40と、側桁40の間に架設される多数の水平な平板状の踏板41とを備えており、壁体5に沿って直線状に形成されている。直階段4は、蹴込み板が設けられていないシースルー形式に形成されており、直階段4の上から階段下の床下げ部6に配置された植栽8の手入れを行うことができる。直階段4の各踏板41の下面には、図2及び図3(A)に示すように、自動潅水部42が形成されている。自動潅水部42は、植栽8の上方から水を散水するスプリンクラー43と、当該スプリンクラー43に水を供給する給水路44と、を備えている。給水路44は、側桁40の内部に配置される構成とすれば、下階2の床下22の図示しない水道管からスプリンクラー43が設けられている踏板41までの経路を簡単に形成することができる。
【0027】
また、直階段4の各踏板41の下面には、図2及び図3(B)に示すように、植栽8に光を照射する発光部45が形成される。発光部45は例えばLED素子を線状に並べて形成されたLEDライン照明であり、直階段4の幅方向に沿って踏板41の下面に配置されている。直階段4の側桁40には発光部45に接続される電気配線46が設けられている。このように直階段4の踏板41の下面に発光部45が形成されることで、階段下に設けられる植栽8に必要な光を適切に照射することができる。また、例えば植栽8を照らすことで、下階2における直階段4の周辺を木漏れ日のある空間にするなど、自然にくつろげる空間とすることができる。そして、直階段4には蹴込み板が設けられていないことから、発光部45の光の一部は発光部45の下方に形成される踏板41の上面に反射することができ、間接照明として直階段4を照らすこともできる。
【0028】
直階段4は、本実施形態においては、戸建住宅のリビング11を含む空間に配置される直階段4であるが、上に列挙した他の建築物1に配置される直階段4であってもよい。直階段4が集合住宅に設けられるものである場合には、当該直階段4は、共用階段であってもよく、又は、メゾネットタイプの住戸の専用階段であってもよい。
【0029】
壁体5は、図1及び図4に示すように、第一側壁部50と、第二側壁部51と、第一側壁部50及び第二側壁部51の間に架設される複数の棚部53と、棚部53に水を供給する壁体自動潅水部54と、棚部53から排水された水を壁体5の床下に形成された排水管14に導く排水路55と、を有している。第一側壁部50は、直階段4の下端に隣接して配置される。第一側壁部50は、図示しないが、床面に設けられた鋼製ランナーの上に立設される鋼製スタッドを下地にして石膏ボードが張り付けられ、当該石膏ボードの表面に化粧クロスを張り付けて形成されたものであり、第一側壁部50は、上端の高さが上階3の床面31から腰高さとなる位置まで延びて形成されている。第二側壁部51は、直階段4の上端に隣接して配置される。第二側壁部51は、第一側壁部50と同様に、図示しないが、床面に設けられた鋼製ランナーの上に立設される鋼製スタッドを下地にして石膏ボードが張り付けられ、当該石膏ボードの表面に化粧クロスを張り付けて形成されている。第二側壁部51は、上端の高さが上階3の床面31から腰高さとなる位置まで延びて形成されている。なお、第一側壁部50及び第二側壁部51は、本実施形態においては、上端が上階3の腰高さとなる位置まで延びて形成されているが、これに限定されるものではなく、少なくとも下階2の天井以上の高さまで延びるものであればよい。また、ここで「上階の腰高さ」は、例えば、上階3の床面31から1100mm以上である。壁体5の高さは、本実施形態においては、上階3から吹き抜けへの転落を防止できる高さであることが好ましいが、例えば手すりを設けるなどの転落防止の措置が取られれば、壁体5の高さは、1100mm以下であってもよい。
【0030】
棚部53は、第一側壁部50及び第二側壁部51の間に架設され、植物7を植えこみ可能に形成されている。棚部53は鉛直方向に例えば500mmの等間隔で7つ架設されている。棚部53の間隔及び個数はこれに限定されるものではないが、間隔が短すぎると植物7を植えこみや生育が困難となり、間隔が広すぎると壁体5の意匠性が悪くなる。棚部53は、当該棚部53に植え込まれた植物7が直階段4側及び直階段4と反対側に露出するように、両側に開かれて形成されている。棚部53は、平板状に形成されており、第一側壁部50側から第二側壁部51側に向かって下り勾配の排水溝56が形成された棚本体57と、棚本体57の上に載置され、上方に開口するとともに底に排水孔が形成されたプランタ58と、を有している。
【0031】
壁体自動潅水部54は、図5及び図6に示すように、各棚板の下面に形成された細かな孔が形成された管状で、それぞれの壁体自動潅水部54内を流れる水を例えば点滴のようにプランタ58に植わっている植物7に供給するものである。壁体自動潅水部54は、下階2の床下22の図示しない上水管に接続され、棚本体57を貫通しつつ鉛直に延びる鉛直管59に接続されて水が供給されている。壁体自動潅水部54の形状はこれに限定されるものではなく、プランタ58の内側に配管されるものであってもよい。
【0032】
棚本体57に形成された排水溝56は、第二側壁部51内に鉛直な管状に形成された排水路55に連通しており、図4及び図7に示すように、プランタ58の排水孔から棚本体57の排水溝56に流れ出た水は、排水路55に流れ込む。プランタ58には、土が入れられて植物7を植えこみ可能となっている。なお、棚部53の構成は上述のものに限定されるものではない。例えば、プランタ58に排水孔が設けられず、内部に液体肥料が混ぜられた水を貯留可能とすることで、水耕栽培を行うものであってもよい。第二側壁部51内に設けられた排水路55は、下階2の床下22に形成されている排水管14に連通しており、棚部53の排水溝56から流れ出た排水を排水管14に導く。
【0033】
棚部53に植え込まれる植物7は、上下に設置される棚部53の間で栽培可能な植物7であれば、どのようなものであってもよいが、例えば、野菜や果実であれば、収穫の喜びを得ることができる。
【0034】
上階3における壁体5の直階段4と反対側には、図1に示すように、通路15が形成されている。通路15は、直階段4と接続される上階3に設けられた階段ホール16に接続されるとともに、上階3に設けられた図示しない各部屋への動線となっている。直階段4が架設された吹き抜けと通路15との間に壁体5が設けられることで、壁体5は通路15から吹き抜けに転落することを防止する手すり壁として機能する。このような通路15が形成されることで、上階3でも緑を楽しむことができるとともに、壁体5の上部に配置されてる植物7のメンテナンスは通路15側から行うことができるので、壁体5の上部の直階段4から手が届きにくい箇所の植物7のメンテナンスを容易且つ安全に行うことができる。
【0035】
床下げ部6は、図4及び図7に示すように、直階段4の下方の下階2の床面21を掘り下げて形成されている。床下げ部6は、建築物1の地盤面に打設された土間コンクリート面17に立設される複数の束18に支持される防水性を有する槽形状である。床下げ部6の上縁は下階2の床面21と面一となるように形成されている。床下げ部6は底面に排水口60が設けられており、建築物1の外部に排水する排水管14に接続されている。床下げ部6の内側には、植栽8が植えられる地面62を形成する土が入れられた上方に開いた植栽容器61が配置されている。植栽容器61は、上縁が床下げ部6の内側面に隙間なく収まるとともに、植栽8を植えることができる深さを有している。植栽容器61を床下げ部6に収納し、植栽容器61内の土の上面で形成された地面62は、下階2の床面21と略面一であるか、又は僅かに低いことが好ましい。下階2の床面21よりも地面62が高ければ土が床面に散らばるおそれがある。植栽容器61は底面に複数の孔が設けられており、植栽容器61内の土にしみ込んだ余分な水を床下げ部6の底面に排出することができる。植栽容器61か排出された水は、床下げ部6の排水口60を通して、建築物1の下階2の床面21に配設された排水管14に流される。
【0036】
図8に示すように、下階2における壁体5の直階段4と反対側にはキッチン12が壁体5に隣接するように形成されている。壁体5の棚部53のプランタ58に野菜や果実を植えておけば、キッチン12で料理をしている際に、当該野菜や果実を収穫することができる。また、下階2における直階段4の壁体5と反対側の下階2には、直階段4に隣接してリビング11が形成されている。リビング11に隣接してダイニング13が設けられており、ダイニング13はキッチン12にも隣接している。リビング11、ダイニング13、及びキッチン12を有する空間は略中央に壁体5及び直階段4が形成されて、当該壁体5及び直階段4の周りにそれぞれリビング11、ダイニング13、及びキッチン12が配置されている。リビング11は直階段4及び直階段4に下に形成され植栽8が植えられた床下げ部6に隣接することとなり、豊かな緑を感じることができる。リビング11とキッチン12との間には植栽8及び壁体5の植物7が設けられることとなり、キッチン12とリビング11とを適度に隔たれた空間とすることができる。なお、建築物1の下階2の間取りは上述の構成に限定されるものではない。
【0037】
本実施形態においては、下階2の床面21から上階3の腰高さまでの壁体5が形成されるものであるが、壁体5の高さはこれに限定されるものではなく、3以上の階層に連続して壁体5が設けられるものであってもよい。この変形例においては、図9に示すように、建築物1は、下階2と上階3とを接続する直階段4と、直階段4の上に当該直階段4と平行に形成され、上階3と、上階3のさらに上の階9とを接続する第二直階段10と、直階段4及び第二直階段10に隣接して形成される壁体5と、直階段4の下方に形成され植栽8が配置される床下げ部6と、を備えるものであってもよい。この場合であっても直階段4、及び床下げ部6の構成は上述の実施形態のものと同様である。また、壁体5は、例えば、第一側壁部50及び第二側壁部51が、上階3のさらに上の階9の腰高さ以上の高さまで延びて立設されており、壁体5の棚部53は、下階2の床面21から第一側壁部50及び第二側壁部51の上端まで延長方向に例えば500mmの等間隔で13つ形成される。
【0038】
そして、壁体5の直階段4と反対側の上階3、及び当該上階3の上の階9には、それぞれ通路15が形成されている。このように上階3及び上階3の上の階9にそれぞれ通路15が壁体5に隣接して形成されることで、それぞれの通路15から壁体5の棚部53に配置された植物7のメンテナンスを行うことができるので、直階段4及び第二直階段10から手が届きにくい箇所の植物7のメンテナンスを容易且つ安全に行うことができる。
【0039】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る建築物1は、メンテナンス性に配慮しつつ、緑豊かな屋内空間を提供できる住宅などの建築物1として好適である。
【符号の説明】
【0041】
1 建築物
2 下階
3 上階
4 直階段
5 壁体
6 床下げ部
7 植物
8 植栽
9 上階の上の階
10 第二直階段
11 リビング
12 ダイニング
14 排水管
41 踏板
42 自動潅水部
45 発光部
50 第一側壁部
51 第二側壁部
53 棚部
54 壁体自動潅水部
55 排水路
60 排水口
62 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9