(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/20 20110101AFI20230926BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20230926BHJP
B60R 21/0136 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B60R21/20
B60R21/207
B60R21/0136 310
(21)【出願番号】P 2021030775
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 豪軌
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0315303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0017058(US,A1)
【文献】特開2008-114713(JP,A)
【文献】特開2007-245799(JP,A)
【文献】特開2020-189575(JP,A)
【文献】特開2007-127537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259772(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018107796(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019210001(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられたテーブルと、
シートクッションとシートバックとを有し、前記シートクッションを間に置いて前記テーブルの反対側に前記シートバックが位置するように前記テーブルの周りに配置された複数のシートと、
前記シートの両側に設けられ、予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、前記シートの側方に展開するサイドエアバッグと、
互いに隣り合う前記シートから互いに隣り合って展開する前記サイドエアバッグの間に展開し、慣性移動する乗員の慣性力を一方の前記サイドエアバッグから他方の前記サイドエアバッグへ伝達するスペースエアバッグと、
前記加速度による前記乗員の慣性移動方向と交差する方向に向かって該乗員が着座している第1の前記シートから、前記慣性移動方向側に第1の前記サイドエアバッグを展開させ、前記第1のシートの前記慣性移動方向側に隣り合う第2の前記シートから、前記第1のサイドエアバッグに隣り合う第2の前記サイドエアバッグを展開させ、前記第1のサイドエアバッグと前記第2のサイドエアバッグの間に前記スペースエアバッグを展開させる制御部と、
を備える乗員拘束装置。
【請求項2】
前記スペースエアバッグは、前記テーブルから展開する請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記スペースエアバッグは、前記車室の床部から展開する請求項1に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両の車室内には、テーブルが設けられており、このテーブルを囲むように複数のシートが配置されている。シートベルト等の拘束装置は設けられておらず、シートに着座する乗員は非拘束となっている。車両の衝突時には、テーブルからエアバッグが展開し、テーブルの周囲の上方のみに広がるように膨出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来例によれば、車両の衝突時等、車両に急激な加速度が生じたときに、乗員の慣性移動方向にエアバッグが存在する場合には、エアバッグによる乗員の頭部や胸部の拘束は可能であるように見える。しかしながら、エアバッグの展開領域がテーブルの周囲の上方に限られているため、乗員の慣性移動方向にエアバッグが存在しない場合、具体的には、乗員が、衝突時の慣性移動方向と交差する方向に向かって非拘束で着座している場合、当該乗員をエアバッグで拘束することは困難であると考えられる。
【0005】
本発明は、シートベルト等の拘束装置がなく、車内に設けられたテーブルを囲んで乗員が着座できるように複数のシートが設けられている車両において、車両に急激な加速度が生じたときに自身の慣性移動方向と交差する方向に向かって着座している乗員に対する拘束性能を向上させることを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る乗員拘束装置は、車室内に設けられたテーブルと、シートクッションとシートバックとを有し、前記シートクッションを間に置いて前記テーブルの反対側に前記シートバックが位置するように前記テーブルの周りに配置された複数のシートと、前記シートの両側に設けられ、予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、前記シートの側方に展開するサイドエアバッグと、互いに隣り合う前記シートから互いに隣り合って展開する前記サイドエアバッグの間に展開し、慣性移動する乗員の慣性力を一方の前記サイドエアバッグから他方の前記サイドエアバッグへ伝達するスペースエアバッグと、前記加速度による前記乗員の慣性移動方向と交差する方向に向かって該乗員が着座している第1の前記シートから、前記慣性移動方向側に第1の前記サイドエアバッグを展開させ、前記第1のシートの前記慣性移動方向側に隣り合う第2の前記シートから、前記第1のサイドエアバッグに隣り合う第2の前記サイドエアバッグを展開させ、前記第1のサイドエアバッグと前記第2のサイドエアバッグの間に前記スペースエアバッグを展開させる制御部と、を備える。
【0007】
この乗員拘束装置では、予め決められた以上の加速度が車両に作用すると、制御部が、サイドエアバッグとスペースエアバッグを展開させる。具体的には、制御部は、上記加速度による乗員の慣性移動方向と交差する方向に向かって該乗員が着座している第1のシートから、慣性移動方向側に第1のサイドエアバッグを展開させる。また、制御部は、第1のシートの慣性移動方向側に隣り合う第2のシートから、第1のサイドエアバッグに隣り合う第2のサイドエアバッグを展開させる。更に、制御部は、第1のサイドエアバッグと第2のサイドエアバッグの間にスペースエアバッグを展開させる。したがって、シートベルト等の拘束装置がなく、第1のシートに着座した乗員が拘束されていない場合であっても、第1のサイドエアバッグ、スペースエアバッグ及び第2のサイドエアバッグが相互に接触、干渉することで、乗員の慣性力を受け止めることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る乗員拘束装置において、前記スペースエアバッグが、前記テーブルから展開する。
【0009】
この乗員拘束装置では、スペースエアバッグがテーブルから展開するので、スペースエアバッグを比較的小容量としつつ、第1のサイドエアバッグ及び第2のサイドエアバッグと相互に接触させることができる。
第3の態様は、第1の態様に係る乗員拘束装置において、前記スペースエアバッグが、前記車室の床部から展開する。
【0010】
この乗員拘束装置では、スペースエアバッグが車室の床部から展開するので、スペースエアバッグを比較的大容量として、第1のサイドエアバッグ及び第2のサイドエアバッグと共に、乗員が慣性移動する空間を埋めることができる。このため、乗員拘束性能を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
シートベルト等の拘束装置がなく、車内に設けられたテーブルを囲んで乗員が着座できるように複数のシートが設けられている車両において、車両に急激な加速度が生じたときに自身の慣性移動方向と交差する方向に向かって着座している乗員に対する拘束性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る乗員拘束装置が採用された車両を示した斜視図である。
【
図2】テーブルを囲むように、乗員がシートに着座した状態を示す、車両側方から見た部分破断側面図である。
【
図3】テーブルの底面側に設けられたスペースエアバッグの収納状態を示した断面図である。
【
図4】
図3のスペースエアバッグの収納状態及び展開状態を示す断面図である。
【
図5】車室の床に設けられたスペースエアバッグの収納状態及び展開状態を示す断面図である。
【
図7】車両後方から車両前方へ急激な加速度が作用した場合における乗員拘束装置の作動状態を示す平面図である。
【
図8】車両前方から車両後方へ急激な加速度が作用した場合における乗員拘束装置の作動状態を示す平面図である。
【
図9】乗員拘束装置が作動する角度範囲において、乗員の慣性移動方向が乗員の着座の向きに最も近い場合における慣性力の伝達状態を示す平面図である。
【
図10】乗員拘束装置が作動する角度範囲において、乗員の慣性移動方向が乗員の着座の向きから最も遠い場合における慣性力の伝達状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態に係る乗員拘束装置10を採用した車両100の一例について
図1~
図10を用いて説明する。なお、図中に示す矢印Hは車両上下方向であって鉛直方向を示し、矢印Lは車両の進行方向である車両前後方向であって水平方向を示し、矢印Wは車両幅方向であって水平方向を示す。
【0014】
(車両100)
車両100は、
図1に示されるように、車室100a内に、乗員80を車両100の衝突時に拘束する乗員拘束装置10を備えている。
【0015】
乗員拘束装置10は、テーブル12と、複数のシート16と、サイドエアバッグ18と、スペースエアバッグ28と、制御部30と、を備えている。さらに、乗員拘束装置10は、スペースエアバッグ装置50を支持する支持ユニット36を備えている。
【0016】
〔テーブル12〕
テーブル12は、車室100a内に設けられ、車両上方から見て円形状とされている(
図7、
図8参照)。このテーブル12は、テーブル板12aと、上下方向に延びて先端がテーブル板12aの裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられた円柱状の支柱12bとを備えている。
【0017】
図2に示されるように、フロアパネル110の下方を向いた面には、車両幅方向に延びると共にフロアパネル110を補強するクロスメンバ114が複数配置されている。そして、支柱12bの基端は、フロアパネル110のうちクロスメンバ114によって補強されている部分に取り付けられている。
【0018】
ここで、「フロアパネル110のうちクロスメンバ114によって補強されている部分」とは、車両上方から見て、フロアパネル110のうちクロスメンバ114と重なっている部分である。
【0019】
〔シート16〕
図1に示されるように、複数のシート16は、シートクッション42とシートバック44とを有し、シートクッション42を間に置いてテーブル12の反対側にシートバック44が位置するようにテーブル12の周りに配置されている。シートクッション42は、シート16に着座した乗員80の大腿部を支持する部位である。シートバック44は、着座した乗員80の背部を支持する部位である。
【0020】
また、シート16は、支柱46により支持されている。支柱46は、例えば円柱状で、車両上下方向に延びて先端がシートクッション42の裏面に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられている。具体的には、支柱46の基端は、フロアパネル110のうちクロスメンバ114で補強されている部分に取り付けられている。
【0021】
この構成において、車両100の走行時及び停車時に、シート16に着座した乗員80は、テーブル12を囲んで対話することができる。
【0022】
〔支持ユニット36〕
図2に示されるように、テーブル板12aの下には、例えばスペースエアバッグ装置50を支持するための支持ユニット36が設けられている。支持ユニット36は、金属材料を用いて形成された環状部材38と、金属材料を用いて形成され、環状部材38を支持する4個の支柱40とを備えている。
【0023】
環状部材38は、テーブル板12aの下方に配置されており、テーブル12の支柱12bを囲むように配置されている。また、環状部材38は、車両上方から見て円形状とされている。環状部材38の外径は、テーブル板12aの外径と比して小さくされている。
【0024】
4個の支柱40は、環状部材38の周方向に同様の間隔で配置されている。支柱40は、車両上下方向に延びて先端が環状部材38に取り付けられ、基端が車両100のフロアパネル110に取り付けられている。具体的には、支柱46の基端は、クロスメンバ114で補強されている部分のフロアパネル110に取り付けられている。
【0025】
〔サイドエアバッグ装置19〕
サイドエアバッグ装置19は、
図1に示されるように、例えばシート16の両側、例えばシートバック44の両方の側部にそれぞれ設けられている。このサイドエアバッグ装置19は、折り畳まれた状態のサイドエアバッグ18と、インフレータ22(
図6)とを、モジュールケース(図示せず)に収容して構成されている。サイドエアバッグ18は、予め決められた以上の加速度が車両100に作用すると、シート16の側方に展開する袋体である(
図7から
図10参照)。
〔スペースエアバッグ装置50〕
スペースエアバッグ装置50は、
図1から
図3に示されるように、テーブル12に備えられたテーブル板12aの上方を向いた上面14aに対して下方に配置され、夫々のシート16に対応して夫々個別に備えられている。具体的には、スペースエアバッグ装置50は、
図7、
図8に示されるように、例えば、車両上方から見て、隣り合うシート16の間となる角度位置に夫々配置されている。
【0026】
また、スペースエアバッグ装置50は、
図3に示されるように、エアバッグ本体52と、支持ユニット36の環状部材38にエアバッグ本体52を取り付けるためのブラケット56と、エアバッグ本体52を覆う被覆部材70とを備えている。
【0027】
-エアバッグ本体52-
エアバッグ本体52は、金属製の筐体52aと、筐体52aの内部に配置されたインフレータ52bと、筐体52aの内部に配置された袋状のスペースエアバッグ28とを有している。
【0028】
筐体52aは、シート16側が開口された断面U字状で、インフレータ52bは、筐体52aの内部の底側(開口側とは反対側)に配置されている。さらに、スペースエアバッグ28は、折り畳まれた状態で、筐体52aの内部に収納されている。
【0029】
この構成において、インフレータ52bの点火装置が作動することでインフレータ52bから噴出されるガスが、スペースエアバッグ28の内部に放出される。これにより、折り畳まれたスペースエアバッグ28が膨張する。このスペースエアバッグ28は、互いに隣り合うシート16から互いに隣り合って展開するサイドエアバッグ18の間に展開し、慣性移動する乗員80の慣性力を一方のサイドエアバッグ18から他方のサイドエアバッグ18へ伝達する袋体である。
図1から
図4に示される例では、スペースエアバッグ28は、テーブル12の下側から展開するように構成されている。
【0030】
-被覆部材70-
被覆部材70は、樹脂材料を用いて形成されており、
図3に示されるように、筐体52aの開口をシート16側から覆う蓋部72と、蓋部72の下端に連結されると共に筐体52aの下面を下方から覆う底板74を有している。さらに、被覆部材70は、底板74から立ち上がると共に筐体52aの側面を側方から覆う側板76(
図2参照)を有している。なお、側板76と蓋部72とは、連結されていない。
【0031】
また、側板76の上端及び蓋部72の上端は、テーブル板12aの下方を向いた下面14bに取り付けられている。さらに、蓋部72は、板状とされている。蓋部72の下方側の部分には、他の部位と比して薄肉とされた薄肉部72aが形成されており、薄肉部72aは、この水平方向に延びている。
【0032】
この構成において、インフレータ52bから噴出されるガスが、スペースエアバッグ28の内部に放出されることで、折り畳まれたスペースエアバッグ28が膨張する。そして、蓋部72がスペースエアバッグ28によって押され、薄肉部72aが破断する。さらに、蓋部72が蓋部72の上端を軸として回転し、
図4に示されるように、スペースエアバッグ28が膨出する。ここで、「膨出」とは、膨らんで、出ることである。
【0033】
-ブラケット56-
ブラケット56は、
図3に示されるように、環状部材38とエアバッグ本体52との間に配置されており、環状部材38に溶接によって取り付けられた金属製の取付具58と、筐体52aに溶接によって取り付けられた金属製の取付具60とを備えている。さらに、ブラケット56は、取付具58と取付具60とを連結させる連結ボルト62を備えている。
【0034】
取付具58は、環状部材38の外周面に沿った基部58aと、L字状の連結部58bとを有している。また、L字状の連結部58bには、連結ボルト62が通る図示せぬ貫通孔が形成され、連結ボルト62が締め込まれる溶接ナット58cが取り付けられている。
【0035】
取付具60は、金属板を用いて形成されており、筐体52aの外表面に沿った基部60aと、L字状の連結部60bとを有している。L字状の連結部60bには、連結ボルト62が通る図示せぬ貫通孔が形成されている。
【0036】
この構成において、連結ボルト62を、取付具60の連結部60bの貫通孔、及び取付具58の連結部58bの貫通孔を通し、溶接ナット58cに締め込む。これにより、エアバッグ本体52が、支持ユニット36の環状部材38に取り付けられる。
【0037】
〔スペースエアバッグ装置50の変形例〕
なお、
図5に示されるように、スペースエアバッグ28は、車両100のフロアパネル110(床部)から車室100a内に展開するものであってもよい。この例では、スペースエアバッグ装置50がフロアパネル110に埋め込まれている。スペースエアバッグ装置50は、例えば、モジュールケース54内に、折り畳まれたスペースエアバッグ28と、インフレータ56とを収納して構成されている。モジュールケース54の蓋部72には、薄肉部72aが形成されている。
【0038】
この構成において、インフレータ56から噴出されるガスが、スペースエアバッグ28の内部に放出されることで、折り畳まれたスペースエアバッグ28が膨張する。そして、蓋部72がスペースエアバッグ28によって押され、薄肉部72aが破断する。さらに、蓋部72が蓋部72の端部を軸として回転し、スペースエアバッグ28が車室100a内に向けて車両上方へ膨出して展開する。
【0039】
この他、スペースエアバッグ28は、車両100の天井部(図示せず)から車室100a内に向けて車両下方へ膨出して展開するものであってもよい。
【0040】
〔加速度センサ20、着座センサ26〕
図1に示されるように、例えば車両100のフロアパネル110の下面には、加速度センサ20が取り付けられている。そして、加速度センサ20は、車両100に作用する加速度と、加速度が車両100に作用した方向とを検出するようになっている。
【0041】
図2に示されるように、夫々のシート16のシートクッション42には、着座センサ26が取り付けられている。そして、夫々の着座センサ26は、シート16に乗員80が着座したか否かを、シートクッション42に作用した押圧力によって検出するようになっている。
【0042】
〔制御部30〕
制御部30は、
図1、
図6に示されるように、加速度センサ20と、着座センサ26と、処理装置32とを備えている。制御部30は、加速度センサ20の検出結果、及び着座センサ26の検出結果に基づいて、サイドエアバッグ18用のインフレータ22と、スペースエアバッグ28用のインフレータ52bの点火装置の作動、不作動を制御する。具体的な制御については後述する。
【0043】
(作用)
次に、本実施形態に係る乗員拘束装置10の作用について説明する。制御部30は、シート16に乗員80が着座したか否かの着座情報を、着座センサ26からシート16毎に取得する。また、車両100が走行している状態で、衝突対象物に衝突した場合、又は車両100が停車している状態で、衝突対象物によって追突された場合には、車両100に加速度が作用する。制御部30は、加速度センサ20から、車両100に作用した加速度と、加速度が作用した方向とを検出する。
【0044】
制御部30は、加速度が予め決められた値以上の場合に、加速度が作用した方向に応じて、サイドエアバッグ18及びスペースエアバッグ28を展開させる。サイドエアバッグ18は、シート16に着座した乗員80の側方に展開する。また、スペースエアバッグ28は、隣り合うシート16間において、隣り合う2つのサイドエアバッグ18の間に展開する。
【0045】
ここで、説明の便宜上、
図7、
図8において、テーブル12を中心として、シート16aの位置から時計回りに角度θを取る。また、4個のシート16の中で最も車幅方向の一方側(図中上側)に配置されているシート16をシート16aとし、最も車両後方側(図中右側)に配置されているシート16をシート16bとし、最も車幅方向の他方側(図中下側)に配置されているシート16をシート16cとし、最も車両前方側(図中左側)に配置されているシート16をシート16dとする。
【0046】
また、シート16aの右側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18aRとし、シート16aの左側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18aLとする。
シート16bの右側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18bRとし、シート16bの左側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18bLとする。
シート16cの右側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18cRとし、シート16cの左側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18cLとする。
シート16dの右側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18dRとし、シート16dの左側部に設けられたサイドエアバッグ18をサイドエアバッグ18dLとする。
【0047】
更に、シート16a,16bの間に展開するスペースエアバッグ28をスペースエアバッグ28aとする。
シート16b,16cの間に展開するスペースエアバッグ28をスペースエアバッグ28bとする。
シート16c,16dの間に展開するスペースエアバッグ28をスペースエアバッグ28cとする。
シート16d,16aの間に展開するスペースエアバッグ28をスペースエアバッグ28dとする。
【0048】
図7において、車両後方からの追突のように、加速度Aが45°<θ<135°の方向から作用する場合には、例えばサイドエアバッグ18aL,18bR及びスペースエアバッグ28a、並びにサイドエアバッグ18bL,18cR及びスペースエアバッグ28bを展開させる。また、
図8において、車両の前面衝突のように、加速度Aが-135°<θ<-45°の方向から作用する場合には、例えばサイドエアバッグ18cL,18dR及びスペースエアバッグ28c、並びにサイドエアバッグ18dL,18aR及びスペースエアバッグ28dを展開させる。サイドエアバッグ18の展開開始とスペースエアバッグ28の展開開始は、同時でもよく、また同時でなくてもよい。
【0049】
図7において、例えば車両100の停車時に、θ=90°の方向、つまり車両後方から追突され、加速度Aが車両前方に作用した場合、加速度Aによる乗員80の慣性移動方向Bは、加速度Aと逆の車両後方である。このとき、慣性移動方向Bと交差する方向に向かって着座している乗員は、乗員80a,80cである。
【0050】
したがって、乗員80aが着座しているシート16aから、慣性移動方向B側に第1のサイドエアバッグ18aLを展開させ、第1のシート16aの慣性移動方向B側に隣り合う第2のシート16bから、第1のサイドエアバッグ18aLに隣り合う第2のサイドエアバッグ18bRを展開させる。更に、第1のサイドエアバッグ18aLと第2のサイドエアバッグ18bRの間にスペースエアバッグ28aを展開させる。
【0051】
また、乗員80cが着座しているシート16cから、慣性移動方向B側に第1のサイドエアバッグ18cRを展開させ、第1のシート16cの慣性移動方向B側に隣り合う第2のシート16bから、第1のサイドエアバッグ18cRに隣り合う第2のサイドエアバッグ18bLを展開させる。更に、第1のサイドエアバッグ18cRと第2のサイドエアバッグ18bLの間にスペースエアバッグ28bを展開させる。
【0052】
したがって、シートベルト等の拘束装置がなく、第1のシート16aに着座した乗員80aが拘束されていない場合であっても、第1のサイドエアバッグ18aL、スペースエアバッグ28a及び第2のサイドエアバッグ18bRが相互に接触、干渉することで、乗員80aの慣性力を受け止めることができる。スペースエアバッグ28aはテーブル12から展開するので、スペースエアバッグ28aを比較的小容量としつつ、第1のサイドエアバッグ18aL及び第2のサイドエアバッグ18bRと相互に接触させることができる。
【0053】
また、第1のシート16cに着座した乗員80cが拘束されていない場合であっても、第1のサイドエアバッグ18cR、スペースエアバッグ28b及び第2のサイドエアバッグ18bLが相互に接触、干渉することで、乗員80cの慣性力を受け止めることができる。スペースエアバッグ28bはテーブル12から展開するので、スペースエアバッグ28bを比較的小容量としつつ、第1のサイドエアバッグ18cR及び第2のサイドエアバッグ18bLと相互に接触させることができる。
図7において、車両後方からの追突のように、加速度Aが45°<θ<135°の方向から作用する場合には、例えばサイドエアバッグ18aL,18bR及びスペースエアバッグ28a、並びにサイドエアバッグ18bL,18cR及びスペースエアバッグ28bを展開させる。また、
図8において、車両の前面衝突のように、加速度Aが-135°<θ<-45°の方向から作用する場合には、例えばサイドエアバッグ18cL,18dR及びスペースエアバッグ28c、並びにサイドエアバッグ18dL,18aR及びスペースエアバッグ28dを展開させる。
【0054】
図7において、乗員80dの慣性移動は、図示しない他のエアバッグにより拘束され、乗員80bの慣性移動は、シート16cのシートバック44により拘束されるものとする。
【0055】
図9は、乗員80cの慣性移動方向Bが乗員80cの着座の向きに最も近い場合、換言すれば、
図7においてθが45°よりわずかに大きい方向から加速度Aが作用する場合における慣性力の伝達状態を示している。一方、
図10は、乗員80cの慣性移動方向Bが乗員80cの着座の向きから最も遠い場合、換言すれば、
図7においてθが135°よりわずかに小さい方向から加速度Aが作用する場合における慣性力の伝達状態を示している。
【0056】
両図中、黒丸印は各エアバッグが拘束されている部分を示し、白丸印はエアバッグ同士が接触する部分を示している。この場合、乗員80cの慣性力を各エアバッグの拘束部分で受け止めるため、拘束部分と接触部分を略直線上に配置することが望ましい。
【0057】
次に、
図8において、例えば車両100の停車時に、θ=-90°の方向、つまり車両100が前面衝突し、加速度Aが車両後方に作用した場合、加速度Aによる乗員80の慣性移動方向Bは、加速度Aと逆の車両前方である。このとき、慣性移動方向Bと交差する方向に向かって着座している乗員は、乗員80a,80cである。
【0058】
したがって、乗員80aが着座しているシート16aから、慣性移動方向B側に第1のサイドエアバッグ18aRを展開させ、第1のシート16aの慣性移動方向B側に隣り合う第2のシート16dから、第1のサイドエアバッグ18aRに隣り合う第2のサイドエアバッグ18dLを展開させる。更に、第1のサイドエアバッグ18aRと第2のサイドエアバッグ18dLの間にスペースエアバッグ28dを展開させる。
【0059】
また、乗員80cが着座しているシート16cから、慣性移動方向B側に第1のサイドエアバッグ18cLを展開させ、第1のシート16cの慣性移動方向B側に隣り合う第2のシート16dから、第1のサイドエアバッグ18cLに隣り合う第2のサイドエアバッグ18dRを展開させる。更に、第1のサイドエアバッグ18cLと第2のサイドエアバッグ18bRの間にスペースエアバッグ28cを展開させる。
【0060】
したがって、シートベルト等の拘束装置がなく、第1のシート16aに着座した乗員80aが拘束されていない場合であっても、第1のサイドエアバッグ18aR、スペースエアバッグ28d及び第2のサイドエアバッグ18dLが相互に接触、干渉することで、乗員80aの慣性力を受け止めることができる。スペースエアバッグ28dはテーブル12から展開するので、スペースエアバッグ28dを比較的小容量としつつ、第1のサイドエアバッグ18aR及び第2のサイドエアバッグ18dLと相互に接触させることができる。
【0061】
また、第1のシート16cに着座した乗員80cが拘束されていない場合であっても、第1のサイドエアバッグ18cL、スペースエアバッグ28c及び第2のサイドエアバッグ18dRが相互に接触、干渉することで、乗員80cの慣性力を受け止めることができる。スペースエアバッグ28cはテーブル12から展開するので、スペースエアバッグ28cを比較的小容量としつつ、第1のサイドエアバッグ18cL及び第2のサイドエアバッグ18dRと相互に接触させることができる。
【0062】
なお、
図8において、乗員80dの慣性移動は、シート16dのシートバック44により拘束され、乗員80bの慣性移動は、図示しない他のエアバッグにより拘束されるものとする。
【0063】
図5に示されるように、スペースエアバッグ28が車室100aのフロアパネル110(床部)から展開する場合、スペースエアバッグ28を比較的大容量として、第1のサイドエアバッグ18及び第2のサイドエアバッグ18と共に、乗員80が慣性移動する空間を埋めることができる。このため、乗員拘束性能を更に向上させることができる。
【0064】
詳細な説明は省略するが、側面衝突時、具体的には、加速度Aが-45°≦θ≦45°の方向から作用する場合、又は加速度Aが135°≦θ≦225°の方向から作用する場合には、乗員80b,80dの慣性移動方向のエアバッグを適宜展開させることで、該乗員80b,80dを拘束することが可能である。
【0065】
[他の実施形態]
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
【0066】
図1から
図4において、スペースエアバッグ28がテーブル12の下側から展開するものとしたが、これに限られず、テーブル12の上側から展開する構造であってもよく、またテーブル12の端面から展開する構造であってもよい。
【0067】
テーブル12の平面視した場合の形状を円形状としたが、テーブル12は他の形状でもよく、例えば、楕円形状であったり、多角形状であったりしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、シート16の数は、4個であったが、3個であってもよく、4個より多くてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では特に説明しなかったが、車両100は、人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる自動運転車であってもよく、自動運転車でなくもよい。
【0070】
また、上記第1、第3実施形態では、特に説明しなかったが、スペースエアバッグ28がテーブル12の上面14aに対して下方からシート16のシートバック44に向かって膨出すればよく、例えば、スペースエアバッグ28がテーブル12の端面から膨出してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 乗員拘束装置
12 テーブル
16 シート
16a シート
16b シート
16c シート
16d シート
18 サイドエアバッグ
18bL サイドエアバッグ
18aR サイドエアバッグ
18bL サイドエアバッグ
18bR サイドエアバッグ
18cL サイドエアバッグ
18cR サイドエアバッグ
18dL サイドエアバッグ
18dR サイドエアバッグ
28 スペースエアバッグ
28a スペースエアバッグ
28b スペースエアバッグ
28c スペースエアバッグ
28d スペースエアバッグ
42 シートクッション
44 シートバック
30 制御部
80 乗員
80a 乗員
80b 乗員
80c 乗員
80d 乗員
100 車両
100a 車室
110 フロアパネル(床部)