(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】信号発信機器及び信号送受信システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20230926BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20230926BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20230926BHJP
B60L 53/65 20190101ALI20230926BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20230926BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20230926BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230926BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230926BHJP
【FI】
H02J50/80
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L53/65
B60L53/66
B60M7/00 X
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2021101177
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛也
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】津下 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-083138(JP,A)
【文献】特開2014-225989(JP,A)
【文献】特表2015-531064(JP,A)
【文献】特開2012-249405(JP,A)
【文献】特開2014-050271(JP,A)
【文献】国際公開第2020/049825(WO,A1)
【文献】特表2013-546293(JP,A)
【文献】特表2019-503165(JP,A)
【文献】特開2017-143664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上側給電装置から非接触電力伝送される車両に設けられた信号発信機器であって、
無線で前記地上側給電装置へ向けて、前記車両に関する情報を含む信号を発信する信号発信装置と、
前記地上側給電装置の周辺における外部環境に関する情報を取得する外部環境取得部と、
前記信号発信装置を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記信号発信装置の無線による信号発信態様を変更し、
前記信号発信装置は、電波を利用せずに磁界を利用して前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する磁界信号発信装置と、電波を利用して前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する電波信号発信装置と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信するのに用いる装置を前記磁界信号発信装置と前記電波信号発信装置との間で切り替え、
前記外部環境取得部は、前記外部環境に関する情報として前記地上側給電装置の周辺における降水の有無に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記地上側給電装置の周辺において降水中である場合に前記磁界信号発信装置に前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる
、信号発信機器。
【請求項2】
地上側給電装置から非接触電力伝送される車両に設けられた信号発信機器であって、
無線で前記地上側給電装置へ向けて、前記車両に関する情報を含む信号を発信する信号発信装置と、
前記地上側給電装置の周辺における外部環境に関する情報を取得する外部環境取得部と、
前記信号発信装置を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記信号発信装置の無線による信号発信態様を変更し、
前記信号発信装置は、電波を利用せずに磁界を利用して前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する磁界信号発信装置と、電波を利用して前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する電波信号発信装置と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信するのに用いる装置を前記磁界信号発信装置と前記電波信号発信装置との間で切り替え、
前記外部環境取得部は、前記外部環境に関する情報として前記地上側給電装置の周辺の道路における水分量を取得し、
前記制御部は、前記水分量が所定の基準水分量以上である場合には、前記磁界信号発信装置に前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる
、信号発信機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記地上側給電装置へ送信すべき前記情報の量が基準情報量以上である場合には、前記外部環境にかかわらず、前記電波信号発信装置に前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる、請求項
1又は2に記載の信号発信機器。
【請求項4】
地上側給電装置から非接触電力伝送される車両に設けられた信号発信機器であって、
無線で前記地上側給電装置へ向けて、前記車両に関する情報を含む信号を発信する信号発信装置と、
前記地上側給電装置の周辺における外部環境に関する情報を取得する外部環境取得部と、
前記信号発信装置を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記信号発信装置の無線による信号発信態様を変更し、
前記信号発信装置は、異なる周波数の電波により無線で前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する電波信号発信装置を有し、
前記外部環境取得部は、前記外部環境に関する情報として前記地上側給電装置の周辺における降水の有無に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記地上側給電装置の周辺において降水中である場合には、降水中以外である場合に比べて、低い周波数の電波により前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる
、信号発信機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両の速度が相対的に遅い場合には、前記車両の速度が相対的に速い場合に比べて、前記情報の発信頻度を低くする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の信号発信機器。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の信号発信機器と、前記地上側給電装置に設けられた信号検出機器とを有する信号送受信システムであって、
前記信号検出機器は、前記信号発信装置から異なる信号発信態様で発信された前記信号を検出する、信号送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号発信機器及び信号送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁界結合(電磁誘導)、電界結合、磁界共振結合(磁界共鳴)及び電界共振結合(電界共鳴)のような伝送方式を用いて、地面に設けられた地上側給電装置から、走行中の車両へ電力を非接触で伝送する非接触給電システムが検討されている。このように地上側給電装置から車両へ非接触で電力を伝送するためには、車両から地上側給電装置に、車両に関する情報を送信し、この情報に基づいて地上側給電装置を制御することが必要である。このような非接触給電システムとして、車両走行中において、車両から給電要求が無線送信されると、地上側給電装置から走行中の車両に非接触で電力を伝送する非接触給電システムが検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両から地上側給電装置に車両に関する情報を送信するにあたって、地上側給電装置の周辺の外部環境によっては、地上側給電装置に情報を適切に送信することができない可能性がある。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、地上側給電装置の周辺の外部環境によらずに車両から地上側給電装置に情報を送信することができる信号発信機器等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)地上側給電装置から非接触電力伝送される車両に設けられた信号発信機器であって、
無線で前記地上側給電装置へ向けて、前記車両に関する情報を含む信号を発信する信号発信装置と、
前記地上側給電装置の周辺における外部環境に関する情報を取得する外部環境取得部と、
前記信号発信装置を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記信号発信装置の無線による信号発信態様を変更する、信号発信機器。
(2)前記信号発信装置は、電波を利用せずに磁界を利用して前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する磁界信号発信装置と、電波を利用して前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する電波信号発信装置と、を有し、
前記制御部は、前記外部環境に応じて、前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信するのに用いる装置を前記磁界信号発信装置と前記電波信号発信装置との間で切り替える、上記(1)に記載の信号発信機器。
(3)前記外部環境取得部は、前記外部環境に関する情報として前記地上側給電装置の周辺における降水の有無に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記地上側給電装置の周辺において降水中である場合に前記磁界信号発信装置に前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる、上記(2)に記載の信号発信機器。
(4)前記外部環境取得部は、前記外部環境に関する情報として前記地上側給電装置の周辺の道路における水分量を取得し、
前記制御部は、前記水分量が所定の基準水分量以上である場合には、前記磁界信号発信装置に前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる、上記(2)又は(3)に記載の信号発信機器。
(5)前記制御部は、前記地上側給電装置へ送信すべき前記情報の量が基準情報量以上である場合には、前記外部環境にかかわらず、前記電波信号発信装置に前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる、上記(2)~(4)のいずれか1つに記載の信号発信機器。
(6)前記信号発信装置は、異なる周波数の電波により無線で前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信する電波信号発信装置を有し、
前記外部環境取得部は、前記外部環境に関する情報として前記地上側給電装置の周辺における降水の有無に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記地上側給電装置の周辺において降水中である場合には、降水中以外である場合に比べて、低い周波数の電波により前記地上側給電装置へ向けて前記信号を発信させる、上記(1)に記載の信号発信機器。
(7)前記制御部は、前記車両の速度が相対的に遅い場合には、前記車両の速度が相対的に速い場合に比べて、前記情報の発信頻度を高くする、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の信号発信機器。
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の信号発信機器と、前記地上側給電装置に設けられた信号検出機器とを有する信号送受信システムであって、
前記信号検出機器は、前記信号発信機器から異なる信号発信態様で発信された前記信号を検出する、信号送受信システム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、地上側給電装置の周辺の外部環境によらずに車両から地上側給電装置に情報を送信することができる信号発信機器等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、コントローラ及びコントローラに接続された機器の概略的な構成図である。
【
図3】
図3は、ECU及びECUに接続された機器の概略的な構成図である。
【
図4】
図4は、ECUのプロセッサの、車両から地上側給電装置への情報通信に関する機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、信号送受信システムを構成する信号発信
機器によって行われる信号発信処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、車両の速度と、電波信号発信装置又は磁界信号発信装置によって信号を発する頻度との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係る信号発信
機器によって行われる信号発信処理の流れを示す、
図5と同様なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0011】
<第一実施形態>
以下、
図1~
図6を参照して、第一実施形態に係る情報送受信システムを有する非接触給電システム1について説明する。
【0012】
図1は、非接触給電システム1の構成を概略的に示す図である。非接触給電システム1は、地上側給電装置2と、道路100上の走行する車両3とを有し、地上側給電装置2から車両3へ磁界共振結合(磁界共鳴)による非接触電力伝送を行う。特に、本実施形態では、非接触給電システム1は、車両3が走行しているときに、地上側給電装置2から車両3への非接触電力伝送を行う。地上側給電装置2は、非接触で送電するように構成された送電装置4を有し、車両3は、非接触で送電装置4から受電するように構成された受電装置5を有する。
図1に示したように、送電装置4は車両3が走行する道路100内(地中)に埋め込まれる。
【0013】
<地上側給電装置の構成>
図1に示したように、地上側給電装置2は、送電装置4に加えて、電源21及びコントローラ22を備える。電源21及びコントローラ22は、道路100内に埋め込まれてもよいし、道路100内とは別の場所(地上を含む)に配置されてもよい。
【0014】
電源21は、送電装置4に電力を供給する。電源21は、例えば、単層交流電力を供給する商用交流電源である。なお、電源21は、三相交流電力を供給する交流電源等であってもよいし、燃料電池又は太陽電池のような直流電源であってもよい。
【0015】
送電装置4は、電源21から供給された電力を車両3へ送る。送電装置4は、送電側整流回路41、インバータ42及び送電側共振回路43を有する。送電装置4では、電源21から供給される交流電力が送電側整流回路41において整流されて直流電流に変換され、この直流電流がインバータ42において交流電力に変換され、この交流電力が送電側共振回路43に供給される。
【0016】
送電側整流回路41は、電源21及びインバータ42に電気的に接続される。送電側整流回路41は、電源21から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をインバータ42に供給する。送電側整流回路41は例えばAC/DCコンバータである。
【0017】
インバータ42は送電側整流回路41及び送電側共振回路43に電気的に接続される。インバータ42は、送電側整流回路41から供給された直流電力を、電源21の交流電力よりも高い周波数の交流電力(高周波電力)に変換し、高周波電力を送電側共振回路43に供給する。
【0018】
送電側共振回路43は、コイル44及びコンデンサ45から構成される共振器を有する。コイル44及びコンデンサ45の各種パラメータ(コイル44の外径及び内径、コイル44の巻数、コンデンサ45の静電容量等)は、送電側共振回路43の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、例えば10kHz~100GHzであり、好ましくは、非接触電力伝送用の周波数帯域としてSAE TIR J2954規格によって定められた85kHzである。
【0019】
送電側共振回路43は、コイル44の中心が車線の中央に位置するように、車両3が通過する車線の中央に配置される。インバータ42から供給された高周波電力が送電側共振回路43に印加されると、送電側共振回路43は、送電するための交流磁界を発生させる。なお、電源21が直流電源である場合には、送電側整流回路41は省略されてもよい。
【0020】
コントローラ22は、例えば汎用コンピュータであり、地上側給電装置2の各種制御を行う。例えば、コントローラ22は、送電装置4のインバータ42に電気的に接続され、送電装置4による電力送信を制御すべくインバータ42を制御する。
【0021】
図2は、コントローラ22及びコントローラ22に接続された機器の概略的な構成図である。コントローラ22は、通信インターフェース221、メモリ222及びプロセッサ223を備える。通信インターフェース221、メモリ222及びプロセッサ223は信号線を介して互いに接続されている。
【0022】
通信インターフェース221は、地上側給電装置2を構成する各種機器(例えば、インバータ42、後述する磁界検出機71及び電波検出機76など)にコントローラ22を接続するためのインターフェース回路を有する。コントローラ22は、通信インターフェース221を介して他の機器と通信する。
【0023】
メモリ222は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)を有する。メモリ222は、プロセッサ223において各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ223によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0024】
プロセッサ223は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ223は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ223は、メモリ222に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0025】
<車両の構成>
一方、車両3は、
図1に示したように、受電装置5に加えて、モータ31、バッテリ32、パワーコントロールユニット(PCU)33及び電子制御ユニット(ECU)34を備える。本実施形態では、車両3は、モータ31が車両3を駆動する電動車両(EV)である。しかしながら、車両3は、モータ31に加えて内燃機関が車両3を駆動するハイブリッド車両(HV)であってもよい。
【0026】
モータ31は、例えば交流同期モータであり、電動機及び発電機として機能する。モータ31は、電動機として機能するとき、バッテリ32に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ31の出力は減速機及び車軸を介して車輪30に伝達される。一方、車両3の減速時には車輪30の回転によってモータ31が駆動され、モータ31は発電機として機能して回生電力を発電する。
【0027】
バッテリ32は、充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等から構成される。バッテリ32は車両3の走行に必要な電力(例えばモータ31の駆動電力)を蓄える。モータ31によって発電された回生電力がバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電され、バッテリ32の充電率(SOC:State Of Charge)が回復する。なお、バッテリ32は、車両3に設けられた充電ポートを介して地上側給電装置2以外の外部電源によっても充電可能であってもよい。
【0028】
PCU33はバッテリ32及びモータ31に電気的に接続される。PCU33は、インバータ、昇圧コンバータ及びDC/DCコンバータを有する。インバータは、バッテリ32から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ31に供給する。一方、インバータは、モータ31によって発電された交流電力(回生電力)を直流電力に変換し、直流電力をバッテリ32に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がモータ31に供給されるときに、必要に応じてバッテリ32の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がヘッドライト等の電子機器に供給されるときに、バッテリ32の電圧を降圧する。
【0029】
受電装置5は、送電装置4から受電し、受電した電力をバッテリ32に供給する。受電装置5は、受電側共振回路51、受電側整流回路54及び充電回路55を有する。
【0030】
受電側共振回路51は、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。本実施形態では、受電側共振回路51は、車幅方向において車両3の中央に配置される。受電側共振回路51は、送電側共振回路43と同様の構成を有し、コイル52及びコンデンサ53から構成される共振器を有する。コイル52及びコンデンサ53の各種パラメータ(コイル52の外径及び内径、コイル52の巻数、コンデンサ53の静電容量等)は、受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数と一致するように定められる。なお、受電側共振回路51の共振周波数と送電側共振回路43の共振周波数とのずれ量が小さければ、例えば受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数の±20%の範囲内であれば、受電側共振回路51の共振周波数は送電側共振回路43の共振周波数と必ずしも一致している必要はない。
【0031】
図1に示したように受電側共振回路51が送電側共振回路43と対向しているときに、送電側共振回路43によって交流磁界が生成されると、交流磁界の振動が、送電側共振回路43と同一の共振周波数で共鳴する受電側共振回路51に伝達される。この結果、電磁誘導によって受電側共振回路51に誘導電流が流れ、誘導電流によって受電側共振回路51において誘導起電力が発生する。すなわち、送電側共振回路43は受電側共振回路51へ送電し、受電側共振回路51は送電側共振回路43から受電する。
【0032】
受電側整流回路54は受電側共振回路51及び充電回路55に電気的に接続される。受電側整流回路54は、受電側共振回路51から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力を充電回路55に供給する。受電側整流回路54は例えばAC/DCコンバータである。
【0033】
充電回路55は受電側整流回路54及びバッテリ32に電気的に接続される。充電回路55は、受電側整流回路54から供給された直流電力をバッテリ32の電圧レベルに変換してバッテリ32に供給する。送電装置4から送電された電力が受電装置5によってバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電される。充電回路55は例えばDC/DCコンバータである。
【0034】
ECU34は車両3の各種制御を行う。例えば、ECU34は、受電装置5の充電回路55に電気的に接続され、送電装置4から送信された電力によるバッテリ32の充電を制御すべく充電回路55を制御する。また、ECU34は、PCU33に電気的に接続され、バッテリ32とモータ31との間の電力の授受を制御すべくPCU33を制御する。さらに、ECU34は、後述する磁界信号発信装置61及び電波信号発信装置66を含む信号発信装置を制御する。
【0035】
図3は、ECU34及びECU34に接続された機器の概略的な構成図である。ECU34は、通信インターフェース341、メモリ342及びプロセッサ343を有する。通信インターフェース341、メモリ342及びプロセッサ343は信号線を介して互いに接続されている。
【0036】
通信インターフェース341は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークにECU34を接続するためのインターフェース回路を有する。ECU34は、通信インターフェース341を介して他の機器と通信する。
【0037】
メモリ342は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えばROM)を有する。メモリ342は、プロセッサ343において各種処理を実行するためのコンピュータプログラムや、プロセッサ343によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0038】
プロセッサ343は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ343は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ343は、メモリ342に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0039】
また、
図3に示したように、車両3は、GNSS受信機35、ストレージ装置36、複数のセンサ37及び通信モジュール38を更に備える。GNSS受信機35、ストレージ装置36及びセンサ37はECU34に電気的に接続される。
【0040】
GNSS受信機35は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両3の現在位置(例えば車両3の緯度及び経度)を検出する。具体的には、GNSS受信機35は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。そして、GNSS受信機35は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両3の現在位置を検出する。GNSS受信機35の出力、すなわちGNSS受信機35によって検出された車両3の現在位置はECU34に送信される。このGNSS受信機35として、例えば、GPS受信機が用いられる。
【0041】
ストレージ装置36は、データを記憶する。ストレージ装置36は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)又は光記録媒体を備える。本実施形態では、ストレージ装置36は、地図情報を記憶する。地図情報には、道路に関する情報に加えて、地上側給電装置2の設置位置及び種類、並びに地上側給電装置2の周りの外部環境(例えば、地上側給電装置2が設けられた道路の舗装の種類など)に関する情報等が含まれる。ECU34はストレージ装置36から地図情報を取得する。なお、ストレージ装置が車両3の外部(例えばサーバ等)に設けられ、ECU34は通信モジュール38を介して車両3の外部から地図情報を取得してもよい。
【0042】
センサ37は、車両3の状態及び車両3の周辺における外部環境を検出する。本実施形態では、センサ37は、車両3の状態を検出するセンサとして、例えば、車両3の速度を検出する速度センサを含む。また、センサ37は、車両3の周辺における外部環境を検出するセンサとして、車両3に表面上の雨滴を検出するレインセンサを含む。これらセンサ37の出力は、ECU34に入力される。
【0043】
通信モジュール38は、車両3と車両3の外部のサーバ(図示せず)との広域通信を可能とする機器であり、例えば、データ通信モジュール(DCM:Data Communication Module)である。広域通信は、通信距離が10メートル程度から10キロメートル程度である通信であり、例えばLTE(Long Term Evolution)等が用いられる。
【0044】
<信号送受信システムの構成>
上述したように、非接触給電システム1は、送電装置4の送電側共振回路43において発生させた交流磁界を介して、地上側給電装置2から車両3に電力を伝送する。このような非接触電力伝送を行うには、走行中の車両3から地上側給電装置2へ、車両識別情報や要求給電量などの車両に関する情報(以下、「車両情報」という)を送信し、地上側給電装置2はこの車両情報に基づいて送電装置4を制御することが必要になる。このため、本実施形態の非接触給電システム1は、車両3から地上側給電装置2へ車両情報を含む信号を送信する信号送受信システムを有する。
【0045】
信号送受信システムは、車両3から地上側給電装置2へ車両情報を含む信号を無線で発信する信号発信機器6と、信号発信機器6から発信された信号を検出する信号検出機器7とを有する。本実施形態では、信号発信機器6は、電波を利用せずに磁界を利用して地上側給電装置へ向けて信号を発信する磁界信号発信装置61と、電波を利用して地上側給電装置へ向けて信号を発信する電波信号発信装置66と、これら磁界信号発信装置61及び電波信号発信装置66を制御するECU34とを含む。信号検出機器7は、磁界信号発信装置61によって発信された信号を含む磁界を検出する磁界検出機71と、電波信号発信装置66によって発信された信号を含む電波を検出する電波検出機76と、これら磁界検出機71及び電波検出機76に接続されたコントローラ22とを含む。
【0046】
信号発信機器6の磁界信号発信装置61は、交流磁界を介して、地上側給電装置2へ車両3の車両情報を送信する。磁界信号発信装置61は交流電力発生回路62及び交流磁界発生回路63を備える。
【0047】
交流電力発生回路62は、バッテリ32及び交流磁界発生回路63に電気的に接続される。交流電力発生回路62は、交流電力を発生させ、交流電力を交流磁界発生回路63に供給する。例えば、交流電力発生回路62は、発振回路、変調回路及び増幅器を有する。発振回路は、搬送波を生成し、変調回路は送信すべき車両情報に応じて搬送波を変調し、増幅器は変調された交流電力を増幅する。
【0048】
図1に示したように、交流磁界発生回路63は、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。本実施形態では、交流磁界発生回路63は、車幅方向において車両3の中央に配置され、車両3の前後方向において受電側共振回路51よりも前方に配置される。なお、交流磁界発生回路63は車両3の前後方向において受電側共振回路51と同一の位置又は受電側共振回路51よりも後方に配置されてもよい。
【0049】
交流磁界発生回路63は、送電側共振回路43及び受電側共振回路51と同様の構成を有し、コイル64及びコンデンサ65から構成される共振器を有する。コイル64及びコンデンサ65の各種パラメータ(コイル64の外径及び内径、コイル64の巻数、コンデンサ65の静電容量等)は、交流磁界発生回路63の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、送電側共振回路43及び受電側共振回路51の共振周波数、すなわち磁界共振結合の共振周波数とは異なる値に設定される。また、交流電力発生回路62から交流磁界発生回路63に供給される交流電力の周波数は交流磁界発生回路63の共振周波数と同一の値に設定される。交流電力発生回路62から供給された交流電力が交流磁界発生回路63に印加されると、交流磁界発生回路63は、変調された交流電力に応じた、情報発信用の交流磁界を発生させる。
【0050】
図1に示したように、交流電力発生回路62はECU34に電気的に接続され、ECU34は交流電力発生回路62を制御する。交流電力発生回路62は、ECU34からの指令に基づいて、バッテリ32から供給された直流電力を、車両情報に応じて変調された交流電力に変換し、交流電力を交流磁界発生回路63に供給する。
【0051】
例えば、ECU34は、地上側給電装置2の設置位置と車両3との間の距離が所定値以下になったときに、交流電力発生回路62を制御して交流磁界発生回路63によって情報発信用の交流磁界を所定の時間間隔で発生させる。地上側給電装置2の設置位置と車両3との間の距離は、例えば、GNSS受信機35によって検出された車両3の現在位置と、ストレージ装置36に記憶された地上側給電装置2の設置位置とを照合することによって算出される。なお、ECU34は、地上側給電装置2の手前に設けられた路側機から通信モジュール38を介して所定の信号を受信したときに、交流電力発生回路62を制御して交流磁界発生回路63によって情報送信用の交流磁界を発生させてもよい。また、ECU34は、車両3が走行しているときに、交流磁界発生回路63によって微弱な交流磁界を常に一定時間間隔で発生させてもよい。
【0052】
信号検出機器7の磁界検出機71は周囲の磁界を検出する。磁界検出機71は、例えば、磁気インピーダンス(MI:Magneto-Impedance)センサである。磁界検出機71の駆動電力は、例えば電源21等から駆動回路を介して磁界検出機71に供給される。
【0053】
磁界検出機71は、送電装置4が設けられた道路において、車両3の進行方向において送電装置4の送電側共振回路43よりも手前に配置され、車両3が通過する車線の中央に配置される。磁界検出機71は地中(路面の下)又は路面の上に配置される。磁界検出機71の周囲の車両3から情報送信用の交流磁界が発せられると、磁界検出機71は情報送信用の交流磁界を検出する。
【0054】
磁界検出機71はコントローラ22に電気的に接続され、磁界検出機71の出力はコントローラ22に送信される。コントローラ22は、磁界検出機71の出力に基づいて車両3から送信された車両情報を求め、この車両情報に基づいて地上側給電装置2を制御する。すなわち、コントローラ22は、交流磁界発生回路63から発せられた情報送信用の交流磁界を検出することによって、車両3から送信された車両情報を取得する。
【0055】
本実施形態では、情報送信用の交流磁界の周波数は送電側共振回路43及び受電側共振回路51の共振周波数と異なる。このため、電力伝送のために送電側共振回路43において発生する交流磁界と、情報送信のために交流磁界発生回路63において発生する交流磁界との識別が容易となる。好ましくは、情報送信用の交流磁界の周波数は送電側共振回路43及び受電側共振回路51の共振周波数よりも低い値に設定される。このことによって、情報送信用の交流磁界をより容易に発生させることができる。例えば、送電側共振回路43及び受電側共振回路51の共振周波数が85kHzである場合、情報送信用の交流磁界の周波数は、500Hz~50kHz、例えば1kHzに設定される。
【0056】
信号発信機器6の電波信号発信装置66は、電波により、地上側給電装置2へ車両3の車両情報を送信する。電波信号発信装置66は、交流電流発生回路67及びアンテナ68を備える。
【0057】
交流電流発生回路67は、バッテリ32及びアンテナ68に電気的に接続される。交流電流発生回路67は、交流電流を発生させ、交流電流をアンテナ68に供給する。例えば、交流電流発生回路67は、発振回路、変調回路及び増幅器を有する。発振回路は、搬送波を生成し、変調回路は送信すべき車両情報に応じて搬送波を変調し、増幅器は変調された交流電流を増幅する。
【0058】
アンテナ68は、本実施形態では、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。本実施形態では、アンテナ68は、車幅方向において車両3の中央に配置され、車両3の前後方向において受電側共振回路51よりも前方に配置される。なお、アンテナ68は、車両3の前後方向において受電側共振回路51と同一の位置又は受電側共振回路51よりも後方に配置されてもよい。また、アンテナ68は、車両3が地上側給電装置2に近づいたときにのみ地上側給電装置2のアンテナ77へ電波を送信することができれば、車両3の底部以外に配置されてもよい。
【0059】
アンテナ68は、交流電流発生回路67に電気的に接続され、アンテナ68には、交流電流発生回路67において発生された交流電流が供給される。アンテナ68は、交流電流発生回路67から交流電流が供給されると、変調された交流電流に応じた、情報発信用の電波を発生させる。発生される電波の周波数は、例えば、数百kHz~数GHzである。
【0060】
信号検出機器7の電波検出機76は、電波信号発信装置66から発信される特定の周波数の電波を検出する。電波検出機76は、送電装置4が設けられた道路において、車両3の進行方向において送電装置4の送電側共振回路43よりも手前に配置され、車両3が通過する車線の中央に配置される。電波検出機76は地中(路面の下)又は路面の上に配置される。電波検出機76の周囲の車両3から情報送信用の電波が発せられると、電波検出機76は情報送信用の電波を検出する。
【0061】
電波検出機76は、アンテナ77、増幅器及び復調回路を有する。アンテナ77は、アンテナ77の周りを飛び交う電波を電気信号波に変換する。増幅器は、アンテナ77で変換された信号波を増幅する。復調回路は、増幅器で増幅された信号波からこの信号波にのせられた情報、具体的には車両情報を取り出す。
【0062】
電波検出機76はコントローラ22に電気的に接続され、電波検出機76の出力はコントローラ22に送信される。コントローラ22は、電波検出機76の出力に基づいて車両3から送信された車両情報を取得し、この車両情報に基づいて地上側給電装置2を制御する。すなわち、コントローラ22は、アンテナ68から発せられた電波を検出することによって、車両3から送信された車両情報を取得する。
【0063】
特に、本実施形態では、電波信号発信装置66及び電波検出機76は、通信距離が10メートル未満の狭域通信(Dedicated Short Range Communication)を行うように構成される。狭域通信としては、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)、Bluetooth(登録商標)、又はZigBee(登録商標)などが用いられる。
【0064】
<信号送受信システムの制御>
上述したように、本実施形態に係る信号送受信システムは、二つの異なる方法により、車両3から地上側給電装置2へ車両情報を送信することができる。一つ目の方法は、磁界信号発信装置61及び磁界検出機71により電波を利用せずに磁界を利用して車両情報を含む信号を送受信する方法である。二つ目の方法は、電波信号発信装置66及び電波検出機76により電波を利用して車両情報を含む信号を送受信する方法である。
【0065】
ところで、磁界を利用した信号の送受信では、生成される交流磁界の周波数を一定以上に上げることができない。交流磁界を介して単位時間に伝達することができる情報量は、基本的に、周波数が高くなるほど多くなることから、磁界を利用した信号の送受信では、それほど多くの情報を伝達することはできない。一方で、電波を利用した信号の送受信は、比較的高い周波数の電波によって行われる。したがって、電波を介して伝達することができる情報量は多い。したがって、多くの情報を伝達するという観点からは、電波を利用して信号の送受信を行うことが好ましい。
【0066】
一方、電波を利用した信号の送受信では、電波信号発信装置66と電波検出機76との間に水分が存在すると、電波のエネルギが水分に吸収され、電波が減衰される。したがって、水分が存在する場合には、電波検出機76による電波の受信感度が低下する。一方、磁界を利用した信号の送受信では、磁界信号発信装置61と磁界検出機71との間に水分が存在しても、磁界のエネルギは水分にほとんど吸収されず、よって交流磁界はほとんど減衰しない。したがって、水分が存在するときには、磁界を利用して信号の送受信を行うことが好ましい。
【0067】
そこで、本実施形態では、地上側給電装置2の周辺における外部環境に応じて、特に、地上側給電装置2の周辺における降水の有無に応じて、車両3から地上側給電装置2へ車両情報を送信する方法を変更するようにしている。
【0068】
図4は、ECU34のプロセッサ343の、車両3から地上側給電装置2への情報通信に関する機能ブロック図である。
図4に示したように、プロセッサ343は、地上側給電装置の周辺における外部環境を取得する外部環境取得部344と、車両3の速度及び地上側給電装置2へ送信すべき情報などの情報を取得する情報取得部345と、磁界信号発信装置61及び電波信号発信装置66を含む信号発信装置を制御する制御部346と、を有する。プロセッサ343が有するこれら機能ブロックは、例えば、プロセッサ343上に動作するコンピュータプログラムにより実現される。或いは、プロセッサ343が有するこれら機能ブロックは、プロセッサ343に設けられる専用の演算回路であってもよい。
【0069】
外部環境取得部344には、外部環境を検出するセンサ37の出力や、ストレージ装置36に記憶された外部環境に関する情報が入力される。外部環境取得部344は、このようにして入力された外部環境に関する情報(外部環境情報)を制御部346に出力する。
【0070】
情報取得部345には、車両の状態を検出するセンサ37の出力や、ストレージ装置36に記憶された地上側給電装置2の種類に関する情報が入力される。情報取得部345は、このようにして入力された情報を制御部346に出力する。
【0071】
制御部346には、外部環境取得部344から外部環境情報が入力され、情報取得部345から車両の状態に関する情報等が入力される。制御部346は、外部環境情報、車両の状態に関する情報等に基づいて、信号発信機器6を制御する。特に、制御部346は、これら情報などに基づいて、地上側給電装置2へ向けて信号を発信するのに用いる装置を、磁界信号発信装置61と電波信号発信装置66との間で切り替える。
【0072】
図5は、信号送受信システムを構成する信号発信
機器6によって行われる信号発信処理の流れを示すフローチャートである。図示した信号発信処理は一定の時間間隔毎に実行される。
【0073】
まず、外部環境取得部344は、車両3の現在位置及び車両3の現在位置の周りの地図情報を取得する(ステップS11)。外部環境取得部344は、GNSS受信機35から車両3の現在位置を取得する。また、外部環境取得部344は、ストレージ装置36から、車両3の現在位置の周りの地図情報、具体的には現在位置の周りの地上側給電装置2の設置位置及び種類を取得する。
【0074】
次いで、外部環境取得部344は、車両3が地上側給電装置2付近にいるか否か、すなわち車両3の進行方向において最寄りの地上側給電装置2の設置位置と車両3の現在位置との間の距離が所定の基準距離以下であるかを判定する(ステップS12)。地上側給電装置2の設置位置と車両3の現在位置との間の距離は、ステップS11にて取得された車両3の現在位置と、地上側給電装置2の設置位置とに基づいて算出される。基準距離は、例えば、一般に車両3が基準距離を走行している間に、車両3が信号発信機器6による信号の発信準備を整えることができるような距離に設定される。ステップS12において車両3が地上側給電装置2付近にいないと判定された場合には、制御部346は、信号発信機器6による信号発信を停止させる(ステップS13)。
【0075】
一方、ステップS12において車両3が地上側給電装置2付近にいると判定された場合には、外部環境取得部344は、その地上側給電装置2の周りの外部環境に関する情報を取得する。加えて、本実施形態では、情報取得部345が、車両3の速度及び地上側給電装置2へ送信すべき情報を取得する(ステップS14)。
【0076】
本実施形態では、外部環境取得部344は、外部環境として、センサ37の一つであるレインセンサによって検出された車両3の表面上の雨滴量に基づいて、車両3の周りにおける降水の有無に関する情報を取得し、したがって車両3付近の地上側給電装置2の周りにおける降水の有無に関する情報を取得する。情報取得部345は、センサ37の一つである速度センサによって検出された車両3の現在の速度を取得する。
【0077】
また、本実施形態では、情報取得部345は、例えば、車両3付近の地上側給電装置2の種類に基づいて、地上側給電装置2へ送信すべき情報を取得する。ここで、地上側給電装置2から車両3への給電を適切に行うためには、車両3から地上側給電装置2へ、車両識別情報や要求給電量などを含む車両情報を送信することが必要になる。このうち、信号発信機器6及び信号検出機器7を含む信号送受信システムでは、地上側給電装置2上に位置して地上側給電装置2から給電が行われる車両3を特定するために、車両識別情報を送信することは必須である。一方で、例えば、要求給電量などの車両情報は、車両識別情報に関連付けて、通信モジュール38及びサーバを介して地上側給電装置2へ予め送信することができれば、必ずしも信号送受信システムで送信する必要はない。したがって、車両3付近の地上側給電装置2が、事前に要求給電量などの車両情報を通信モジュール38からサーバを介して送信しておくことのできる種類である場合には、情報取得部345は、送信すべき情報として車両識別情報を取得する。一方、車両3付近の地上側給電装置2が、事前に要求給電量などの車両情報を通信モジュール38からサーバを介して送信しておくことのできない種類である場合には、情報取得部345は、送信すべき情報として車両識別情報に加えて要求給電量などのその他の情報を含む車両情報を取得する。
【0078】
外部環境に関する情報を取得すると、制御部346は、地上側給電装置2の周辺において降水中であるか否かを判定する(ステップS15)。加えて、制御部346は、地上側給電装置2へ送信すべき情報量が所定の基準情報量以上であるか否かを判定する(ステップS16)。ここで、基準情報量は、最小限の情報量(例えば、車両識別情報のみ)よりも多く且つ最大限の情報量(例えば、要求給電量など、給電に必要な全ての情報)よりも少ない任意の量である。
【0079】
ステップS15において地上側給電装置2の周辺では降水中ではないと判定された場合、又は、ステップS15において地上側給電装置2の周辺において降水中であり且つステップS16において送信すべき情報量が基準情報量以上であると判定された場合には、制御部346は、地上側給電装置2へ車両情報を含む信号を発信する装置として、電波信号発信装置66を設定する(ステップS17)。一方、ステップS15において地上側給電装置2の周辺において降水中であり且つステップS16において送信すべき情報量が基準情報量未満であると判定された場合には、制御部346は、地上側給電装置2へ車両情報を含む信号を発信する装置として、磁界信号発信装置61を設定する(ステップS18)。
【0080】
その後、制御部346は、車両3の速度に基づく頻度にて、電波信号発信装置66及び磁界信号発信装置61のうちステップS17又はS18において設定された装置に、車両情報を含む信号を発信させる(ステップS19)。
図6は、車両3の速度と、電波信号発信装置66又は磁界信号発信装置61によって信号を発する頻度との関係を示す図である。
図6に示したように、本実施形態では、車両3の速度が速くなるにつれて、発信頻度が多くなる。これにより、信号発信
機器6によって信号を発信する距離間隔を一定にすることができ、よって信号検出
機器7による検出漏れを抑制することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、車両3の速度が速くなるにつれて連続的に発信頻度が多くなっているが、車両3の速度が速くなると段階的に発信頻度が多くなってもよい。したがって、制御部346は、車両3の速度が相対的に遅い場合には、車両3の速度が相対的に速い場合に比べて、情報の発信頻度を低くしているといえる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態では、基本的に、降水中である場合には磁界信号発信装置61により磁界を利用した信号発信が行われ、降水中でない場合には電波信号発信装置66により電波を利用した信号発信が行われる。このため、地上側給電装置2おける受信感度を低下させることなく、信号を送信することができる。したがって、地上側給電装置2の周辺の外部環境によらずに車両3から地上側給電装置2に情報を送信することができる。
【0083】
ただし、本実施形態では、地上側給電装置2へ送信すべき情報量が多い場合には、降水の有無にかかわらずに電波を利用した信号発信が行われる。このため、磁界を利用した信号発信によっては十分に情報を伝達することができない場合には、多少水分による電波の減衰があるものの、電波を利用した信号発信が行われる。これによって、十分に情報を伝達することができなくなることが抑制される。
【0084】
<変形例>
上記実施形態では、地上側給電装置2の周辺においる降水の有無に基づいて、信号発信機器6による信号発信態様を変更している。しかしながら、地上側給電装置2の周辺における道路上又は道路内における水分の量に関する他のパラメータに基づいて、信号発信機器6による信号発信態様を変更してもよい。
【0085】
具体的には、外部環境取得部344は、例えば、地上側給電装置2の周辺における道路上又は道路内における水分量を取得してもよい。この場合、外部環境取得部344は、例えば、通信モジュール38を介してサーバから各地の降水量を取得し、この降水量に基づいて地上側給電装置2の周辺の道路における水分量を推定する。制御部346は、このようにして推定された水分量が所定の基準水分量以上である場合には、磁界信号発信装置61に地上側給電装置2へ向けて信号を発信させる。一方、制御部346は、このようにして推定された水分量が所定の基準水分量未満である場合には、電波信号発信装置66に地上側給電装置2へ向けて信号を発信させる。なお、基準水分量は、電波信号発信装置66から発信された電波が減衰されて、電波検出機76によって適切に電波を検出することができなくなるような水分量である。
【0086】
また、制御部346は、送信すべき情報量とは無関係に、地上側給電装置2の周辺において降水中であるか否かに基づいて、磁界信号発信装置61及び電波信号発信装置66のうちのいずれによって信号を発信するかを切り替えてもよい。この場合、制御部346は、地上側給電装置2の周辺において降水中である場合には磁界信号発信装置61により地上側給電装置2へ向けて信号発信させ、降水中でない場合には電波信号発信装置66により地上側給電装置2へ向けて信号を発信させることになる。
【0087】
<第二実施形態>
次に、
図7及び
図8を参照して、第二実施形態に係る情報送信システムを有する非接触給電システムについて説明する。以下では、第一実施形態に係る非接触給電システム1と異なる箇所を中心に説明する。
【0088】
図7は、第二実施形態に係る非接触給電システム1の構成を概略的に示す図である。
図7からわかるように、第二実施形態に係る非接触給電システム1では、信号発信
機器6は、電波信号発信装置66を有するが、磁界信号発信装置61を有していない。同様に、信号検出
機器7は、電波検出機76を有するが、磁界検出機71を有していない。ただし、電波信号発信装置66は、異なる周波数の電波により無線で地上側給電装置へ向けて信号を発信することができる。具体的には、電波信号発信装置66は、低周波の電波信号(例えば、数百kHz~数十MHz)と、高周波の電波信号(例えば、数百Mhz~数GHz)を発生させることができる。
【0089】
ところで、電波を利用した信号の送受信では、電波の周波数が高いほど、電波を介して単位時間に伝達することができる情報量が多くなる。したがって、多くの情報を伝達するという観点からは、高周波の電波を利用して信号の送受信を行うことが好ましい。一方で、上述したように、電波を利用した信号の送受信では、電波信号発信装置66と電波検出機76との間に水分が存在すると、電波のエネルギが水分に吸収され、電波が減衰される。このような電波の減衰は、低周波に比べて高周波の方が大きい。したがって、水分が存在するときには、低周波の電波を利用して信号の送受信を行うことが好ましい。
【0090】
そこで、本実施形態では、地上側給電装置2の周辺における外部環境に応じて、特に、地上側給電装置2の周辺における降水の有無に応じて、車両3から地上側給電装置2へ車両情報を送信する際の電波の周波数を変更するようにしている。
【0091】
図8は、第二実施形態に係る信号発信
機器6によって行われる信号発信処理の流れを示す、
図5と同様なフローチャートである。図示した信号発信処理は一定の時間間隔毎に実行される。なお、
図5と同様なステップについては説明を省略する。
【0092】
ステップS15において地上側給電装置2の周辺では降水中ではないと判定された場合、又は、ステップS15において地上側給電装置2の周辺では降水中であり且つステップS16において送信すべき情報量が基準情報量以上であると判定された場合には、制御部346は、電波信号発信装置66から発信する電波として高周波の電波を設定する(ステップS21)。一方、ステップS15において地上側給電装置2の周辺では降水中であり且つステップS16において送信すべき情報量が基準情報量未満であると判定された場合には、制御部346は、電波信号発信装置66から発信する電波として低周波の電波を設定する(ステップS22)。
【0093】
なお、制御部346は、送信すべき情報量とは無関係に、地上側給電装置2の周辺において降水中であるか否かに基づいて、電波信号発信装置66から発信する電波の周波数を設定してもよい。この場合、電波信号発信装置66は、地上側給電装置2の周辺において降水中である場合には、降水中でない場合に比べて、低い周波数の電波により地上側給電装置2へ向けて信号を発信することになる。
【0094】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0095】
1 非接触給電システム
2 地上側給電装置
3 車両
4 送電装置
5 受電装置
6 信号発信機器
7 信号検出機器