IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-印刷装置 図1
  • 特許-印刷装置 図2
  • 特許-印刷装置 図3
  • 特許-印刷装置 図4
  • 特許-印刷装置 図5
  • 特許-印刷装置 図6
  • 特許-印刷装置 図7
  • 特許-印刷装置 図8
  • 特許-印刷装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230926BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20230926BHJP
   B41J 19/20 20060101ALI20230926BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20230926BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J3/407
B41J19/20 L
B41J29/00 A
A45D29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021125519
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020257
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅弘
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-037691(JP,A)
【文献】特開平04-367845(JP,A)
【文献】特開2003-019850(JP,A)
【文献】特開2006-130666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 3/407
B41J 19/20
B41J 29/00
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷手段を収容する筐体と、
前記筐体の下面から出没可能なように、上下に移動可能に前記筐体に支持された棒状部材を備え、前記筐体の非接地状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が前記非接地状態を検出した場合に、前記印刷手段の移動を規制する規制手段と、を備え、
前記規制手段は、
回動軸回りに上下に回動可能に支持され、
前記棒状部材の上端が当接する押圧部と、当該規制手段のうち前記回動軸を介して前記押圧部の反対側に立設されたロックピンと、を有し、
前記棒状部材の下方への移動に伴って、前記押圧部が下方に下がり、前記ロックピンが前記印刷手段の移動方向側に起立した状態と、前記棒状部材の上方への移動に伴って、前記棒状部材に前記押圧部が上方に押圧され、前記ロックピンが前記印刷手段の移動方向側よりも下側まで倒伏した状態と、を取り得るように構成されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記棒状部材は、前記回動軸と平行な方向に突出した突起を上端部に有し、
前記押圧部は、前記突起を案内するガイド孔を有し、
前記ガイド孔は、前記突起と当接して前記規制手段の回動を規制する下部孔と、前記下部孔の上側に連通し、前記規制手段の回動を規制しない上部孔と、を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記棒状部材を下方に付勢する付勢手段を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷手段は、水平面内の第1方向に移動可能に構成され、非印刷時において前記第1方向の可動範囲の一端部に配置され、
前記規制手段は、前記印刷手段の前記第1方向における他端側への移動を規制する、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷手段を収容する筐体と、
前記筐体の非接地状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が前記非接地状態を検出した場合に、前記印刷手段の移動を規制する規制手段と、を備え、
前記印刷手段は、水平面内の第1方向に移動可能に構成され、水平面内で前記第1方向と直交する第2方向に長尺に形成され、
前記規制手段は、前記印刷手段の前記第2方向の両側にそれぞれ設けられ、当該両側において前記印刷手段の移動を個別に規制する、
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の印刷装置においては、装置全体の小型化が進むにつれ、キャリッジの相対的な重量割合が大きくなる。そのため、装置本体の落下等による衝撃がキャリッジの可動方向に加わると、キャリッジが動いてしまい、キャリッジ自身や駆動部等が破損するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、給紙トレイの着脱に連動して回動するロッドによりキャリッジをロック(固定)可能なキャリッジ固定機構を備える画像形成装置が記載されている。この画像形成装置では、装置本体を移動する際には給紙トレイを取り外すことによりキャリッジをロックし、キャリッジの破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-19850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャリッジをロックするために給紙トレイを取り外す必要があり、予期し得ない装置本体の落下等に対して十分に配慮されているとは言い難い。
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、キャリッジ等の印刷手段を好適に保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、
印刷手段を収容する筐体と、
前記筐体の下面から出没可能なように、上下に移動可能に前記筐体に支持された棒状部材を備え、前記筐体の非接地状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が前記非接地状態を検出した場合に、前記印刷手段の移動を規制する規制手段と、を備え、
前記規制手段は、
回動軸回りに上下に回動可能に支持され、
前記棒状部材の上端が当接する押圧部と、当該規制手段のうち前記回動軸を介して前記押圧部の反対側に立設されたロックピンと、を有し、
前記棒状部材の下方への移動に伴って、前記押圧部が下方に下がり、前記ロックピンが前記印刷手段の移動方向側に起立した状態と、前記棒状部材の上方への移動に伴って、前記棒状部材に前記押圧部が上方に押圧され、前記ロックピンが前記印刷手段の移動方向側よりも下側まで倒伏した状態と、を取り得るように構成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷手段を好適に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る印刷装置の上部筐体を取り外した状態の要部斜視図である。
図3】実施形態に係る印刷装置の概略の制御構成を示す制御ブロック図である。
図4】実施形態に係る装置本体の斜視図であり、筐体が非接地状態の図である。
図5】上部筐体を取り外した状態における、ロック機構の断面位置での印刷装置の縦断面図であり、筐体が非接地状態の図である。
図6】上部筐体を取り外した状態における、ロック機構の断面位置での印刷装置の縦断面図であり、筐体が接地状態の図である。
図7】実施形態に係るロック機構の動作を説明するための図である。
図8】実施形態に係るロック機構の動作を説明するための図である。
図9】実施形態に係るロック機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図9を参照しつつ、本発明に係る印刷装置の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0011】
図1は、印刷装置1の要部外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図中に示した向きをいうものとする。また、X方向は左右方向、Y方向は前後方向をいうものとする。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2は、その上側半部の上部筐体2Uと、下側半部の下部筐体2Lとを含む。
筐体2は、前面側(印刷装置1の正面側、図1において前側)の下側部分に、左右方向(印刷装置1の横方向、図1において左右方向、X方向)のほぼ全面に亘って形成された開口部21を有している。また、筐体2の左右方向のほぼ中央部には、開口部21の上側に連続して切り欠き部22が形成されている。切り欠き部22は、後述するカートリッジ7を装置に対して着脱する際の出入口として機能する。
なお、図示はしないが、筐体2は、開口部21や切り欠き部22を覆うカバー部材等を備えていてもよい。カバー部材は、筐体2とは別体に分離されたものであってもよいし、例えば筐体2に対してヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられていてもよい。
【0013】
また、筐体2(上部筐体2U)の上面(天板)には、印刷装置1の操作部12が設けられている。操作部12は、例えば印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)である。
筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、操作部12は、筐体2の上面ではなく側面や背面等に設けられていてもよい。また、筐体2にはその他各種の操作ボタンが操作部12として設けられていてもよいし、各種表示部やインジケータ等が設けられていてもよい。
【0014】
筐体2の内部には、装置本体10が収容されている。
装置本体10は、基台11と、これに取り付けられた指固定部6、印刷対象の爪を撮影する撮影部50、印刷対象の爪に印刷を施す印刷部40等を備えている。
【0015】
指固定部6は、基台11における装置前面側の左右方向(X方向)のほぼ中央部に配置されており、本実施形態における印刷対象である爪を有する指(印刷指)を印刷に適した領域内に固定する。
指固定部6は、装置前面側に開口部61を有している。また指固定部6の内部には、指固定部材62が設けられている。指固定部材62は、開口部61から挿入された指を下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。
指固定部6の上面には開口部61から挿入され指固定部材62により保持された指の爪部分を露出させる窓部63が形成されている。
【0016】
撮影部50は、上部筐体2Uの上面(天板)の内側であって指固定部6の窓部63の上方位置に設けられ、窓部63から露出する爪(爪を含む指)を撮影して爪の画像を取得する。
撮影部50は、例えばカメラ等である撮影装置51と、撮影対象である爪を照明する白色LED等で構成された照明装置52とを備えている(図3参照)。撮影装置51は、例えば、200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。
なお、撮影部50は、指固定部6に載置された指の爪を撮影可能な位置に設けられていればよく、具体的な配置は特に限定されない。例えば、撮影部50は、カートリッジ7を移動させる移動機構によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0017】
図2は、上部筐体2Uを取り外した状態の印刷装置1の要部斜視図である。
この図に示すように、印刷部40は、印刷ヘッドとしての機能を有するカートリッジ7、カートリッジ7を保持するカートリッジホルダ71、カートリッジホルダ71をX方向に移動可能に支持するキャリッジ8、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等を備えている。
【0018】
カートリッジ7は、印刷ヘッドとして機能するカートリッジ一体型のヘッドであり、下面のインク吐出部から微滴化したインクを印刷対象に吹き付けて印刷を行うインクジェットヘッドである。本実施形態のカートリッジ7は、特に限定はされないが、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインクを吐出可能となっている。
【0019】
カートリッジホルダ71は、カートリッジ7を着脱可能に保持している。
カートリッジホルダ71は、X方向に移動可能なようにキャリッジ8の前部に支持されている。キャリッジ8には、左右方向に延在するX方向レール80が設けられるとともに、X方向移動モータ46が搭載されている。X方向レール80はカートリッジホルダ71の後部に挿通されている。カートリッジホルダ71は、X方向移動モータ46が駆動して駆動ベルト(図示省略)が回転することにより、X方向レール80に沿ってキャリッジ8上をX方向に移動可能となっている。
【0020】
キャリッジ8は、本発明に係る印刷手段の一例である。キャリッジ8は、左右方向(X方向)に長尺な矩形箱状に形成され、左右両端部がそれぞれY方向レール81に支持されている。
各Y方向レール81は、Y方向に延在しており、キャリッジ8をY方向に移動可能に支持している。
【0021】
キャリッジ8の左右両端部の各々には、ベルトクリップ82を介してタイミングベルト83が連結されている。
各タイミングベルト83は、Y方向に延在した状態で前後2つのプーリー84a、84bに張架されている。このうち前側のプーリー84aが従動プーリーであり、後側のプーリー84bが駆動プーリーである。
左右両側のタイミングベルト83のうち、右側のタイミングベルト83は主動(駆動)側であり、Y方向移動モータ48と連結されている。具体的には、右側のタイミングベルト83を張架する後側のプーリー84b(駆動プーリー)は、一体的に構成された歯車86aを有し、当該歯車86aと噛合する中間歯車86bを介してY方向移動モータ48と連結されている。一方、左側のタイミングベルト83は従動側であり、左右両側のプーリー84bを連結する連結シャフト(図示省略)によって、主動側と回転速度及び回転量が同期化されている。
キャリッジ8は、Y方向移動モータ48が駆動することで後側のプーリー84bが回転し、これに伴ってタイミングベルト83が回転することによって、Y方向レール81に支持された状態でY方向に移動可能となっている。
【0022】
基台11のうちの後部右側は、非印刷時にカートリッジ7(カートリッジホルダ71)が待機するホームポジションA1となっている。ホームポジションA1には、カートリッジ7下面のインク吐出面を覆って乾燥等から保護するキャップ部(図示省略)が設けられている。また、カートリッジ7がホームポジションA1に位置するとき、キャリッジ8はそのY方向の可動範囲のうちの最後部に位置している。
基台11のうちの後部左側は、非印刷時にカートリッジ7のクリーニング等のメンテナンスを行うメンテナンス領域A2となっている。メンテナンス領域A2には、図示は省略するが、パージ(スピット)処理を行うパージ部、インク吐出面をワイプするワイプ部、ワイプ部のワイプ部材に付着したインクを除去するスクレープ部が設けられている。
基台11のうちの前側部分であって左右方向のほぼ中央部は、指固定部6の窓部63に対応する領域であって、印刷時においてカートリッジ7が印刷動作を行う印刷領域A3となっている。
カートリッジ7は、キャリッジ8上でのX方向の移動とキャリッジ8自体のY方向の移動とにより、少なくともホームポジションA1、メンテナンス領域A2、印刷領域A3を含む領域をXY平面内で移動可能となっている。
【0023】
図3は、印刷装置1の概略の制御構成を示す制御ブロック図である。
この図に示すように、印刷装置1は、上述した操作部12、印刷部40及び撮影部50のほかに、表示部13と、通信部14と、制御装置30等とを備える。
【0024】
表示部13は、例えばLCD、有機ELDその他のフラットディスプレイ等で構成され、制御装置30からの表示指令に応じて各種情報を表示させる。
通信部14は、ネットワーク回線等を通じた有線又は無線でのデータ通信を行うものである。通信部14の通信方式は特に限定されず、例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うもの等であってもよい。
【0025】
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)321及びRAM(Random Access Memory)322等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
【0026】
記憶部32には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的に、記憶部32のROM321には、例えば印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納され、これらのプログラムが制御装置30によって実行されることで印刷装置1の各部が統括制御される。
【0027】
制御部31は、撮影制御部311、印刷制御部312、通信制御部313等の各種機能部を備えている。これら各機能部の機能は、これら各機能部の機能は、制御部31のCPUと記憶部32のROM321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0028】
撮影制御部311は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御し、指固定部6に保持された印刷指の画像を撮影させる。撮影部50により取得された画像データは記憶部32に記憶される。
印刷制御部312は、画像データに基づいて印刷用データを生成する。また、印刷制御部312は、印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、印刷用データに対応した印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、カートリッジ7等を制御する。
通信制御部313は、通信部14の動作を制御し、各種データ通信を行う。
【0029】
なお、印刷装置1は、ユーザインターフェースとしての端末装置(図示省略)との間で通信可能に構成されていてもよい。端末装置は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末である。ただし、端末装置は、印刷装置1と通信可能なものであれば特に限定されず、例えばノート型又は定置型のパソコンや、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
【0030】
続いて、キャリッジ8の移動を規制するロック機構90について説明する。
図4は、装置本体10の斜視図であり、図5及び図6は、上部筐体2Uを取り外した状態における、ロック機構90の断面位置での印刷装置1の縦断面図である。このうち、図4及び図5は筐体2(下部筐体2L)が非接地状態の図であり、図6は下部筐体2Lが略水平な設置台S上に接地した接地状態の図である。また、図7図9は、ロック機構90の動作を説明するための図である。
なお、ロック機構90は装置本体10の左右両側に設けられているが、これら左右2つのロック機構90は互いに左右対称に構成されて同様に動作するため、以下では左右いずれか一方のロック機構90についてのみ説明し、他方についての説明を省略する。また、図4図9はいずれも装置本体10の右側のロック機構90を示している。
【0031】
印刷装置1では、カートリッジ7のX方向移動機構等を搭載するキャリッジ8の重量が比較的に大きくなる。そのため、例えば非印刷時に単純停止させただけの状態のキャリッジ8に対し、装置の落下などによる衝撃力がキャリッジ8の可動方向(Y方向レール81に沿って移動可能な方向;Y方向)に加わった場合、キャリッジ8が急加速でY方向に動いてしまうおそれがある。その結果、キャリッジ8の駆動機構(Y方向移動モータ48、Y方向レール81、ベルトクリップ82等を含む、キャリッジ8を移動可能に支持する機構)やキャリッジ8自体が破損してしまうおそれがある。
【0032】
そこで、本実施形態の印刷装置1は、図4図6に示すように、筐体2が非接地状態にある場合にキャリッジ8の移動を規制するロック機構90を備えている。
ロック機構90は、装置本体10の左右両側にそれぞれ設けられ、キャリッジ8の左右両端を係止してキャリッジ8の可動方向(Y方向)への移動を規制可能に構成されている。各ロック機構90は、装置本体10のうちY方向の後側に配置され、キャリッジ8がY方向の可動範囲のうちの最後部に位置するときにキャリッジ8の移動を規制可能となっている。
【0033】
具体的に、各ロック機構90は、ガイドベース91と、ロッド92と、ロックプレート93とを備える。
ガイドベース91は、基台11上に配置され、ロッド92及びロックプレート93を支持している。
【0034】
ロッド92は、上下に延在した状態に配置され、下端が筐体2(下部筐体2L)の下面から出没可能なように上下に移動可能に下部筐体2L及びガイドベース91に支持されている。ロッド92は、その下端が下部筐体2Lの下面から所定長さだけ突出した状態(図5の状態)と、下端が下部筐体2Lの下面と面一になった状態(図6の状態)との間の範囲で、上下に移動可能となっている。
ロッド92は、中程の高さ位置に大径部92aを有している。大径部92aの上側には、ロッド92の周囲に巻回させたコイルばね94が配置されている。コイルばね94は、大径部92aを下方に押圧し、下部筐体2Lに対してロッド92を下方に付勢している。コイルばね94の付勢力は、2つのロック機構90のものを合せて、少なくとも装置本体10の重量よりも小さく設定されている。
【0035】
ロッド92は、筐体2(下部筐体2L)の非接地状態を検出するためのものであり、本発明に係る検出手段の一例である。ロッド92の上下移動により、下部筐体2Lの下面の所定部位(ロッド92が挿通された部分)が設置台Sに接地している接地状態(図6の状態)と、当該部位が接地していない非接地状態(図5の状態)とが検出される。
接地状態に対応するロッド92の移動範囲は、ロッド92の下端が下部筐体2Lの下面と面一になった状態から、当該下端が下部筐体2Lの下面から或る長さだけ突出した状態までの範囲である。つまり、接地状態は、水平から或る角度の範囲内で筐体2(印刷装置1)が前後に傾斜している状態を含む。
一方、非接地状態に対応するロッド92の移動範囲(状態)は、ロッド92の下端が接地状態の範囲から外れてその下側まで突出した状態である。
【0036】
ロックプレート93は、ロッド92の上下移動に伴って上下に回動し、キャリッジ8の移動を規制するものであり、本発明に係る規制手段の一例である。
ロックプレート93は、左右に沿った回動軸931を前後の略中央部に有しており、当該回動軸931がガイドベース91に軸支されている。
ロックプレート93の前部には、キャリッジ8と当接してその移動を規制するロックピン932が立設されている。ロックピン932は、後述するように、ロックプレート93の回動に伴って、キャリッジ8の側面に突設された係止部87の前側に起立した起立状態と、当該係止部87よりも下側まで倒れた倒伏状態とを取り得るように構成されている。
【0037】
図7(a)、(b)に示すように、ロックプレート93の後部は、ロッド92の上端に当接して下方から押圧される押圧部933となっている。
押圧部933は、左右両側壁933aそれぞれにガイド孔933bを有している。ガイド孔933bは、ロッド92に設けられた突起92bが挿通されており、当該突起92bを案内する。突起92bは、ロッド92の上端部から左右両側方に突出している。
ガイド孔933bは、ロッド92の上下方向位置に応じてロックプレート93の回動が規制されるように構成されている。具体的に、ガイド孔933bは、突起92b程度の前後幅を有するU字状の下部孔933cと、下部孔933cの上側に連通し、当該下部孔933cよりも大きい前後幅を有する上部孔933dとを有する穴形状に形成されている。下部孔933cは、ロックピン932が起立状態のときのロックプレート93の状態(図7、8の状態)において、回動軸931よりも後側かつ下側に位置している。
【0038】
以上の構成を具備するロック機構90では、非印刷時等においてキャリッジ8がY方向の可動範囲の最後部に位置しているときに、筐体2(下部筐体2L)の下面が設置台Sに接地していないと、コイルばね94の付勢力によりロッド92が下方に移動して筐体2の非接地状態が検出される(図5参照)。
このとき、図7(a)、(b)に示すように、ロッド92上端の突起92bがロックプレート93のガイド孔933bのうちの下部孔933cに篏合し、ロックプレート93後部を引き下げる。すると、ロックプレート93が、回動軸931回りに前部を上げる方向に回動し、ロックピン932が起立状態となる。この状態では、ロックピン932がキャリッジ8側面の係止部87の直ぐ前側に位置しているため、キャリッジ8の前方への移動が規制される。またこのとき、キャリッジ8はY方向の可動範囲の最後部に位置しているため、後方への移動も規制されている。
こうして、ロック機構90は、キャリッジ8の可動方向(Y方向)への移動を規制したロック状態となる。
【0039】
このロック状態において、例えば落下等により印刷装置1に前方への衝撃が加わると、比較的に重量の大きいキャリッジ8に前方への衝撃力が働く。そのため、キャリッジ8の係止部87と当接するロックピン932の作用点(当接部)に、キャリッジ8からの衝撃力Fが加わる。この衝撃力Fは、ロックピン932を倒伏させてロック状態が解除される方向にロックプレート93を回動させるように作用する。
しかし、衝撃力Fによりロックプレート93を介してロッド92の突起92bに作用する回転力Pは、前後方向の分力Pyと上下方向の分力Pzに分解される。そして、ロックプレート93のガイド孔933bのうちの下部孔933cに嵌った突起92bが、分力Pyを阻止し、当該下部孔933cの位置(回動軸931よりも後側かつ下側の位置)におけるロックプレート93の前後方向への移動を規制する。
これにより、コイルばね94の付勢力よりも大きい衝撃力Fが作用した場合でも、ロックプレート93の回動を規制して好適にロック状態を維持できる。
【0040】
ロック状態から筐体2の下面が設置台Sに近接していくなどして、コイルばね94の付勢力に抗してロッド92が上方に移動していくと、図8(a)、(b)に示すように、やがてロッド92の上端(先端)がロックプレート93の押圧部933に当接する。すると、ロッド92の突起92bが、ロックプレート93のガイド孔933b内で下部孔933cから上部孔933dに移動する。これにより、突起92bによるロックプレート93の前後方向への移動の規制が外れ、ロックプレート93が回動可能になる。
ここで、ロック状態におけるロッド92上端とロックプレート93の押圧部933との上下の距離h(図7(b)参照)と、突起92bが下部孔933cを外れる上下の移動量とは、ほぼ同じ長さに設定してある。そのため、ロッド92がほぼ距離hだけ押し上げられたときに、ロックプレート93の押圧部933がロッド92上端と当接してロックプレート93が回動可能になる(回動が始まる)。
【0041】
この状態から筐体2の下面が設置台Sに接地するなどして、さらにロッド92が上方に移動して接地状態が検出されると、図9(a)、(b)に示すように、ロッド92上端がロックプレート93の押圧部933を押し上げる。これにより、ロックプレート93が回動軸931回りにロックピン932を前傾させる方向に回動する。そして、ロックピン932がキャリッジ8の係止部87よりも下側まで倒れた倒伏状態となり、キャリッジ8の前方への移動を妨げない状態となる。
こうして、ロック機構90は、キャリッジ8の可動方向(Y方向)への移動の規制を解除したロック解除状態となる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、ロッド92により筐体2の非接地状態が検出された場合に、キャリッジ8の移動が規制される。
そのため、キャリッジを固定するために給紙トレイを取り外す必要があった従来と異なり、例えば予期し得ない装置の落下等に対しても、自動で筐体2の非接地状態を検出してキャリッジ8を固定できる。したがって、キャリッジ8を好適に保護することができる。ひいては、キャリッジ8の駆動機構やキャリッジ8自体の破損を抑制することができる。
また、従来では出荷用梱包としてキャリッジをテープや緩衝材で固定する場合があるところ、これらのテープや緩衝材、その梱包作業、さらには開梱時にこれらを取り外すユーザ対応などを不要にできる。
【0043】
また本実施形態によれば、筐体2(下部筐体2L)の下面から出没可能なように下部筐体2Lに支持されたロッド92により、筐体2の非接地状態が検出される。
これにより、簡便な構成で筐体2の非接地状態を検出できる。
【0044】
また本実施形態によれば、ロックプレート93は、ロッド92の下方への移動に伴って、押圧部933が下方に下がり、ロックピン932がキャリッジ8の移動方向側(前側)に起立した状態と、ロッド92の上方への移動に伴って、押圧部933が上方に押圧され、ロックピン932がキャリッジ8の移動方向側よりも下側まで倒伏した状態と、を取り得るように構成されている。
これにより、筐体2が接地状態のときにキャリッジ8の移動を規制し、筐体2が非接地状態のときにキャリッジ8の移動の規制を解除することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、ロックプレート93の押圧部933が、ロッド92上端部の突起92bを案内するガイド孔933bを有している。このガイド孔933bは、突起92bと当接してロックプレート93の回動を規制する下部孔933cと、下部孔933cの上側に連通し、ロックプレート93の回動を規制しない上部孔933dとを有している。
これにより、ロック状態ではロッド92が下方に移動して突起92bが下部孔933cに篏合しているため、ロックピン932に対してロック状態を解除する方向にロックプレート93を回動させる力が作用した場合でも、ロックプレート93の回動が規制される。したがって、ロック状態が好適に維持される。
【0046】
また本実施形態によれば、ロッド92がコイルばね94により下方に付勢されている。
これにより、筐体2が非接地状態となったときに、ロッド92が下部筐体2Lに拘束等されることなく速やかに下方に移動し、筐体2の非接地状態が好適に検出される。
【0047】
また本実施形態によれば、キャリッジ8はY方向(前後方向)に移動可能に構成され、非印刷時においてY方向の可動範囲の最後部に配置され、ロックプレート93はキャリッジ8の前方への移動を規制する。
これにより、ロックプレート93がキャリッジ8の前方への移動を規制するだけで、キャリッジ8の可動方向であるY方向の移動を好適に規制できる。
【0048】
また本実施形態によれば、キャリッジ8は可動方向と直交するX方向(左右方向)に長尺に形成され、ロック機構90(ロックプレート93)はキャリッジ8の左右両側にそれぞれ設けられ、左右両側においてキャリッジ8の移動を個別に規制する。
これにより、例えばキャリッジ8が左右に偏った衝撃力を受けた場合でも、キャリッジ8の左右の平行を保持できる。ひいては、プーリー84a、84bとタイミングベルト83との左右での位置ズレ(左右片側だけプーリーの歯を乗り越える歯飛びが発生してキャリッジ8が左右に平行でなくなるヨーイングズレ)を抑制できる。
【0049】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0050】
例えば、本実施形態では、2つのロック機構90をキャリッジ8の左右両側に配置したが、ロック機構90の位置や数量は特に限定されない。例えば、1つのロック機構90だけを非印刷時のキャリッジ8の後方に配置してもよい。ただし、ロック機構90は、数量等に依らず、キャリッジ8の重心に近い位置に配置され、当該重心に近い位置でキャリッジ8と当接するのが好ましい。
【0051】
また、本実施形態では、ロックプレート93を回動させることにより、ロッド92が上がったときにロックピン932が下がり、ロッド92が下がったときにロックピン932が上がるように構成した。しかし、本発明に係る規制手段は、このようなロックプレート93に限定されない。例えば、ロッド92が下がったときにキャリッジ8を係止し、ロッド92が上がったときにこの係止状態が解除されるように構成してもよい。
【0052】
また、本発明に係る検出手段は、上下に移動する棒状部材(ロッド92)に限定されず、筐体の非接地状態を検出できるものであればよい。
さらに、検出手段の検出結果を制御装置30による印刷装置1の制御に組み込んでもよい。例えば、筐体2が非接地状態にあるとき(または、キャリッジ8の移動が規制されているとき)に、制御装置30が表示部13に警告表示を出力させる等してもよい。
【0053】
また、本発明に係る印刷手段は、いわゆるキャリッジに限定されず、例えば印刷ヘッド等を含む。
【0054】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷手段を収容する筐体と、
前記筐体の非接地状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が前記非接地状態を検出した場合に、前記印刷手段の移動を規制する規制手段と、を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記検出手段は、前記筐体の下面から出没可能なように、上下に移動可能に前記筐体に支持された棒状部材である、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記規制手段は、
回動軸回りに上下に回動可能に支持され、
前記棒状部材の上端が当接する押圧部と、当該規制手段のうち前記回動軸を介して前記押圧部の反対側に立設されたロックピンと、を有し、
前記棒状部材の下方への移動に伴って、前記押圧部が下方に下がり、前記ロックピンが前記印刷手段の移動方向側に起立した状態と、前記棒状部材の上方への移動に伴って、前記棒状部材に前記押圧部が上方に押圧され、前記ロックピンが前記印刷手段の移動方向側よりも下側まで倒伏した状態と、を取り得るように構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記棒状部材は、前記回動軸と平行な方向に突出した突起を上端部に有し、
前記押圧部は、前記突起を案内するガイド孔を有し、
前記ガイド孔は、前記突起と当接して前記規制手段の回動を規制する下部孔と、前記下部孔の上側に連通し、前記規制手段の回動を規制しない上部孔と、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記棒状部材を下方に付勢する付勢手段を備える、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記印刷手段は、水平面内の第1方向に移動可能に構成され、非印刷時において前記第1方向の可動範囲の一端部に配置され、
前記規制手段は、前記印刷手段の前記第1方向における他端側への移動を規制する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記印刷手段は、水平面内の第1方向に移動可能に構成され、水平面内で前記第1方向と直交する第2方向に長尺に形成され、
前記規制手段は、前記印刷手段の前記第2方向の両側にそれぞれ設けられ、当該両側において前記印刷手段の移動を個別に規制する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0055】
1 印刷装置
2 筐体
2L 下部筐体
7 カートリッジ
8 キャリッジ(印刷手段)
10 装置本体
11 基台
40 印刷部
48 Y方向移動モータ
81 Y方向レール
82 ベルトクリップ
83 タイミングベルト
84a プーリー
84b プーリー
86a 歯車
86b 中間歯車
87 係止部
90 ロック機構
91 ガイドベース
92 ロッド(検出手段)
92a 大径部
92b 突起
93 ロックプレート(規制手段)
94 コイルばね(付勢手段)
931 回動軸
932 ロックピン
933 押圧部
933a 左右両側壁
933b ガイド孔
933c 下部孔
933d 上部孔
A1 ホームポジション
F 衝撃力
h 距離
P 回転力
Py Y方向分力
Pz Z方向分力
S 設置台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9