(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ウェアラブルスマートデバイス、生体情報の測定方法、衣類、及びスポーツシャツ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20230926BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01R12/77
A41D13/00 115
(21)【出願番号】P 2022017231
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2017067574の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2022-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】権 義哲
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/093194(WO,A1)
【文献】特表2015-529475(JP,A)
【文献】特開2007-105179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/77-12/78
H01R 13/11
H01R 31/06
A41D 1/00
A41D 13/00
A44B 17/10
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服型入出力インターフェースとデタッチャブルデバイスを少なくとも含むウェアラブルスマートデバイスであって、衣服型入出力インターフェースと前記デタッチャブルデバイスの電気的接続が、少なくとも接触面の一部が導電性材料である一対の雄型と雌型から構成される嵌合体を介して行われるものであり、前記嵌合体の雄型と雌型の一組当たりの脱離力が
0.40N以上、
7N以下の範囲である事を特長とする自動車運転者用のウェアラブルスマートデバイス。
【請求項2】
衣服型入出力インターフェースとデタッチャブルデバイスを少なくとも含むウェアラブルスマートデバイスであって、衣服型入出力インターフェースと前記デタッチャブルデバイスの電気的接続が、少なくとも接触面の一部が導電性材料である一対の雄型と雌型から構成される嵌合体を介して行われるものであり、前記嵌合体の雄型と雌型の一組当たりの脱離力が
0.40N以上、
7N以下の範囲である事を特長とするスポーツ用のウェアラブルスマートデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のウェアラブルスマートデバイスを被着体に着用させて、前記衣服型入出力インターフェースから生体情報を取得し、前記デタッチャブルデバイスを用いて生体情報を測定する生体情報の測定方法。
【請求項4】
未舗装の道を運転中の運転者の生体情報を測定する請求項3に記載の生体情報の測定方法。
【請求項5】
請求項2に記載のウェアラブルスマートデバイスを被着体に着用させて、前記衣服型入出力インターフェースから生体情報を取得し、前記デタッチャブルデバイスを用いて生体情報を測定する生体情報の測定方法。
【請求項6】
跳躍を伴う運動中の運動者の生体情報を測定する請求項5に記載の生体情報の測定方法。
【請求項7】
請求項1に記載のウェアラブルスマートデバイスを用いた自動車運転者用の衣類。
【請求項8】
請求項2に記載のウェアラブルスマートデバイスを用いたスポーツシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服型入出力インターフェースとデタッチャブルデバイスを少なくとも含むウェアラブルスマートデバイスにおける、衣服型入出力インターフェースと前記デタッチャブルデバイスの電気的接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、着衣にセンサーデバイスを仕込み、ヒトや動物等の生体信号や動作を計測する技
術が急速に進展しており、スポーツ、メディカル、ヘルスモニタリングなどの分野で広く
使用されるようになってきている。これら着用型の電子機器はウェアラブルスマートデバイスと呼ばれている。
【0003】
衣服型のウェアラブルスマートデバイスの代表的な構成は、電極やセンサデバイス、配線、コネクタ等を有する衣服型入出力インターフェースと、着脱可能なデタッチャブルデバイスとの組み合わせである。ここにデタッチャブルデバイスは電極やセンサデバイスから得られる微細な信号の検知、測定、演算、記憶、外部への通信等を行う電子装置である。
ウェアラブルスマートデバイスは身体に着用して使用される性格上、生体由来の物質や外界の塵芥などにより汚染されるため、通常の衣服と同様に洗濯に耐える必要がある。しかしながら一般の、従来型の電子回路で構成される電子装置は、多少の防水機能は備えている場合はあれど、衣料品と同等の高い防水性能や洗剤、乾燥工程に耐えうる洗濯耐久性能は備えていない。結果として、洗濯時には電子装置部分を取り外す、という現実的で折衷的な様式が一般化されている。また、同様の考え方はウェアラブルスマートデバイスに限らず、絨毯型のシートヒーターなどのファブリックと電気要素を組み合わせた製品にも適用されている。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-77566号公報
【文献】特開2015-135723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衣服に配線要素を埋め込んで、電子、電気的機能を付与する試みは古くから行われているが、その多くは衣服内に仕込んだ配線に既存のコネクタを接続したものであった。たとえばオーディオ用のピンジャックや、USB端子などである。このようなコネクタは、使用中に外れやすく、またサイズも比較的大きいためにコネクタの厚さにより衣服が部分的に肌と擦れたり、外部とひっかかり易くなったりするトラブルが生じやすかった。
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載されているようなスナップホック型コネクタは、衣料品を製作する工程に適合した手法であると云え、フレキシブルな生地どうしにおいて、着脱する場合においては良好に使用可能である。が、本発明が意図するデタッチャブルデバイスに適用した場合には、デバイス側においては複数の接続部がリジッドな筐体面に配置されるため、着脱時に衣服側にのみ変形機能が求められる結果、スナップホックの取り付け部に過大な力が加わり、衣服型インターフェース側の電気的接続が破損しやすいという課題がある。
【0007】
さらに、運動中の生体情報計測のような被験者が激しく動く状況では、デタッチャブルデバイスの質量が持つ慣性により、衣服側のコネクタ部に過大な力が連続的に加わり、破損を招きやすく、コネクタ部の電気的接触に粗密が生じてノイズとなる場合や、特に動きが激しい場合にはデタッチャブルデバイスが脱落するなどの問題も生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、嵌合式コネクタの着脱強度を所定の範囲に収めることにより、使用中のデタッチャブルデバイスの脱落や、接続部の不完全さに起因するノイズの発生を無くし、さらにデタッチャブルデバイスの取り外しの際に過大な負荷を衣服型インターフェース側に与えず、長期間にわたって使用可能なウェアラブルスマートデバイスを見出すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の構成である。
[1] 衣服型入出力インターフェースとデタッチャブルデバイスを少なくとも含むウェアラブルスマートデバイスであって、衣服型入出力インターフェースと前記デタッチャブルデバイスの電気的接続が、少なくとも接触面の一部が導電性材料である一対の雄型と雌型から構成される嵌合体を介して行われるものであり、前記嵌合体の雄型と雌型の一組当たりの脱離力が0.3N以上、10N以下の範囲である事を特長とするウェアラブルスマートデバイス。
[2] 前記デタッチャブルデバイスの質量が2g以上80g以下である事を特長とする[1]に記載のウェアラブルスマートデバイス
[3] 前記デタッチャブルデバイス側に取り付けられた前記嵌合体の雄型または雌型が、同一平面上に取り付けられていることを特長とする[1]または[2]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
[4] 前記衣服型入出力インターフェース側に取り付けられた前記嵌合体の雄型または雌型のいずれか一個あたりと、衣服側の生地または配線材料との接する面積が15平方mm以上であることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
[5] 前記衣服型入出力インターフェース側に取り付けられた前記嵌合体の雄型または雌型いずれかと、衣服型入出力インターフェース側の生地または配線材料との接する面積の総計が30平方mm以上であることを特長とする[1]から[4]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
[6] 前記衣服型入出力インターフェースにおける電気配線材料が、伸縮性導体組成物であることを特長とする[1]から[5]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
[7] 前記衣服型入出力インターフェースにおける電気配線材料が、導電糸であることを特長とする[1]から[5]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
[8] 前記衣服型入出力インターフェースにおける電気配線材料が、金属箔であることを特長とする[1]から[5]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
スマートデバイス。
[9] 前記衣服型インターフェースにおいて、電気的接続部の少なくとも周囲10mmの範囲において、衣服の破断伸張度が70%以下である事を特長とする[1]から[8]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイス。
【0010】
本発明は、さらに以下の構成を好ましく含む。
[10] 前記[1]から[9]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイスを用いて自動車運転中の運転者の生体情報を計測することを特長とする生体情報の計測方法。
[11] 前記[1]から[9]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイスを用いて跳躍を伴う運動中の運動選手の生体情報を計測することを特長とする生体情報の計測方法。
[12] 前記[1]から[9]のいずれかに記載のウェアラブルスマートデバイスを用いて人以外の哺乳動物の生体情報を計測することを特長とする生体情報の計測方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明における少なくとも接触面の一部が導電性材料である雄型/雌型一対の嵌合体は、所謂コネクタとして機能し、電気的接続と機械的接続の双方を機能を有する。着脱の容易性の観点から、の前記嵌合体の雄型/雌型の脱離力は小さい方が好ましい。一方でデタッチャブルデバイスを、運動に伴う振動や加速度に対して安定的に脱離しないように保持するためには、デタッチャブルデバイスの質量に応じた一定以上の脱離力が必要である。
(以下、衣服側に雄型、デタッチャブルデバイス側に雌型を配置した例について説明するが、雄雌を入れ替えても同じ構図となり、本発明の範疇である。)
ところが、デタッチャブルデバイスの安定保持を優先するあまり、脱離力を高く設定し
すぎると、特に取り外しの際に、衣服側に取り付けた嵌合体の雄型と衣服に配置した電気配線材料との接続部、あるいは雄型と衣服を構成する布生地そのものとの接続部に過大な負荷が加わり電気的、機械的両面の破損が生じやすくなる。
特に、デタッチャブルデバイス側の構造がリジッドで有り、さらに嵌合体の雌型が同一平面に設置されているケースでは、衣服側を引っ張る形で脱離操作を行うことになり、さらに脱離力が嵌合体の一部に集中しやすくなるため、特に破損に対するケアが必要となる。
本発明における嵌合体の脱離力の範囲であれば、デタッチャブルデバイスの保持と、脱理事の破損防止の両方を両立する。さらに本発明では嵌合体の衣服生地ないしは伊具区側配線との接触面積が所定の条件を満たす場合に特に高い効果を得ることができる。
なおさらに、デタッチャブルデバイスの質量が所定の条件を満たす場合に高い効果を得ることができる。
【0012】
結果として本発明のウェアラブルスマートデバイスは、十分な実用耐久性を有すると共に、振動を伴う自動車などの運転中の運転者の生体情報の計測、跳躍を伴う激しい運動を行う運動選手の運動中の生体情報の計測、さらには時に激しく運動する人以外の哺乳動物(家畜、愛玩動物)の生体情報の計測に有効に利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に用いられるか雄型/雌型一対の嵌合体の雄型と雌型の一例である。
【
図2】
図2は本発明に用いられる雄型/雌型一対の嵌合体の嵌合状態の一例である。
【
図3】
図3は、本発明において、雄型/雌型一対の嵌合体の脱離力を測定法する際の様子を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はウェアラブルスマートデバイスである。本発明におけるウェアラブルスマートデバイスは衣服型入出力インターフェースとデタッチャブルデバイスを組み合わせて構成される。両者は電気的および機械的に接合されてウェアラブルスマートデバイスとして機能する。
ウェアラブルスマートデバイスとは被着体に装着されて用いられる電子装置であり、好ましくは被着体に関する情報を含む信号を検知、記憶、演算処理、通信、表示から選択される少なくとも一つ以上の機能を有する電子装置である。
ここに被着体としては、特に限定されないが、人間、動物(家畜、愛玩動物)、少なくとも機械的可動部分を有する機械装置を例示できる。
また、ウェアラブルとは、文字どおり着衣することを指し、さらには被着体に直接的ないし間接的に貼り付け(パッチ)すること、飲み込むこと、埋設設置することを含む。
【0015】
本発明における衣服型入出力インターフェースとは、主として繊維素材にて構成された着衣(上着、下着、トップス、ボトムス、靴下、手袋、帽子などを含む)あるいは繊維素材による部品を一部に含む身体装着具(ヘルメット、靴、防護衣、プロテクター)に、電気的要素を組み込んだものを云う。電気的要素とは、特に限定されないが、電気信号または電力を伝送するための電気配線、衣服型入出力インターフェースの被着体からの情報を収集するためのセンサ機能、被着体およびまたは周辺の情報を収集するためのセンサ機能、あるいは電極、被着体の位置を示すGPS機能、被着体の動作を検出するためのセンサ機能、情報表示機能、電源機能、通信機能(アンテナ)、加熱機能(ヒーター)、冷却機能(熱電素子)、記憶機能、情報処理機能、演算機能等または、それらの一部を云う。
本発明においては少なくとも被着体の生体情報を収集するための電極および電気配線を含む衣服型入出力インターフェースを好ましく取り扱う。また本発明のインターフェースは入出力機能両方を備える場合、入力機能のみの場合、出力機能のみの場合のいずれの場
合でも良い。
【0016】
本発明におけるデタッチャブルデバイスとは衣服型のインターフェースと電気的、機械的に接合されてウェアラブルスマートデバイスを構成する。デタッチャブルデバイスと衣服型入出力インターフェースとは相互に信号、電力を伝送しウェアラブルスマートデバイスとしての機能を完結する。
本発明において、典型的な一例として例えば、
<1>衣服型入出力インターフェースに生体電位測定用の電極と配線を有し、デタッチャブルデバイスが電位測定機能、情報処理機能、通信機能を有し、生体の心電位ないし筋電位を測定し、記憶または外部端末ないしネットワークに通信する装置。
<2>衣服型入出力インターフェースが電熱体を有し、デタッチャブルデバイス側に電源並びに制御機能を有する装置。
<3>衣服型入出力インターフェースが伸縮ないし歪みにより体躯の変形を電気量の変化に転換する機能を有し、デタッチャブルデバイス側に体躯の変形に基づく電気量を測定し、記憶または外部端末ないしネットワークに通信する装置。
等を例示することができる。
【0017】
本発明におけるデタッチャブルデバイスの質量は、好ましくは2g以上80g以下であり、さらに好ましくは3g以上70g以下であり、なお好ましくは5g以上50g以下である。デタッチャブルデバイスにおいて大きな質量を占めるのは電源装置である場合が多く、デタッチャブルデバイスの質量を必要以上に軽量化させると、稼働時間が短くなる。またデタッチャブルデバイスの質量が所定範囲を超えると慣性が大きくなり、被着体が動作時に脱落するリスクが大きくなる。
【0018】
本発明においては、衣服型入出力インターフェースと前記デタッチャブルデバイスとの電気的接続が、少なくとも接触面の一部が導電性材料である一対の雄型と雌型から構成される嵌合体を介して行われる。かかる嵌合体は同時に機械的接合としての側面を有するが、本発明においてはかかる嵌合体による接合以外の機械的接合手法との組み合わせを用いても良い。
本発明においては嵌合体の雄型または雌型のいずれか片方側を衣服型入出力インターフェース側に設置し、対向する側をデタッチャブルデバイス側に設置する。通常、電気的接続の場合には最低限2極を要することが多いため、本発明における嵌合体の個数は複数であることが好ましい。
複数の嵌合体は衣服型入出力インターフェース側において雄雌を揃えて設置しても良く、雄型雌型を組み合わせて設置しても良い。このような形態は電気的接続のプラスマイナスを確定させなければならない場合に有効である。また、嵌合部の大きさが異なる嵌合体を組み合わせて用いる事もできる。
【0019】
本発明における嵌合体の雄型と雌型の脱離力は0.3N以上、10N以下の範囲である。この脱離力は、雄型を雌型の接合面に対して垂直方向に引っ張った場合の脱離力として定義される。本発明における嵌合体の雄型と雌型の脱離力の下限は、さらに0.40N以上が好ましく、さらに0.50N以上が好ましくさらに0.8N以上が好ましい。また脱離力の上限は8N以下が好ましく、さらに7N以上が好ましく、なおさらに6N以下である事が好ましい。
脱離力が所定の範囲を下回ると、被着体が激しく運動した際にデタッチャブルデバイスが脱落する可能性がある。また脱離力が所定の範囲を上回ると、デタッチャブルデバイスの着脱時に、過大な力が入出力インターフェース側の嵌合体取り付け部に加わり、電気的接続の破損、機械的接続の破損に繋がるリスクが増加する。
【0020】
本発明におけるデタッチャブルデバイス側においては、複数の嵌合体の雄型または雌型
が、同一平面上に取り付けられていることが好ましい。ここに同一平面上とは、複数の嵌合体の雄型または雌型の基板との接触面が同一平面上にある事を云う。同一平面上に配置する事により、ウェアラブルスマートデバイスを着用した被着体が、他の物体に接触、衝突するなどして衝撃、ないし大きな加速度が加わった場合に、デタッチャブルデバイスの脱落を防ぐ効果が高くなる。
【0021】
本発明における衣服型入出力インターフェース側において、取り付けられた前記嵌合体の雄型または雌型のいずれか一個あたりと、衣服側の生地または配線材料との接触は、メン接触であることが好ましく、その接触面積は15平方mm以上であることが好ましい。接触面積は25平方mm以上がさらに好ましく、37平方mm以上がさらに好ましく、60平方mm以上がさらに好ましく、80平方mm以上がなお好ましい。接触面は十分に接触圧が得られる場合には圧接で十分であるが、さらに導電性の接着剤などで電気的接触を十分に確保することが好ましい。配線材料側に柔軟な導電体を使用することで、圧接力を高めることができる。
【0022】
本発明における衣服型入出力インターフェース側に取り付けられた前記嵌合体の雄型または雌型いずれかと、衣服型入出力インターフェース側の生地または配線材料との接する面積の総計は30平方mm以上であることが好ましく、50平方mm以上であることがさらに好ましく、接触面積は75平方mm以上がさらに好ましく、120平方mm以上がさらに好ましく、160平方mm以上がさらに好ましく、200平方mm以上が、なお好ましい。
【0023】
本発明における衣服型入出力インターフェースにおける電気配線材料は、伸縮性導体組成物であることが好ましい。
【0024】
本発明における伸縮性導体組成物は、少なくとも導電粒子(金属粒子ないし炭素系粒子)、引張弾性率が1MPa以上1000MPa以下の柔軟性樹脂、から構成される。また柔軟性樹脂の配合量は、導電粒子と柔軟性樹脂の合計に対して7~35質量%である。
本発明に用いられる伸縮性導体組成物は、導電粒子と柔軟性樹脂を混練混合し、フィルム状ないしシート状に成型することにより得ることができる。本発明の伸縮性導体層は、好ましくは導電粒子と柔軟性樹脂に溶剤などを加えて伸縮性導体形成用ペースト化、ないしスラリー化した状態を経て、塗布、乾燥によりシート状ないしフィルム状に加工することが出来る。また、ペースト化した後、印刷することにより所定の形状を与えることもできる。
【0025】
本発明の導電性粒子は、好ましくは比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質からなる、粒子径が100μm以下の粒子である。比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質としては、金属、合金、カーボン、ドーピングされた半導体、導電性高分子などを例示することができる。本発明で好ましく用いられる導電性粒子は銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金粒子、銀被覆銅のようなハイブリッド粒、さらには金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子などを用いることができる。
【0026】
本発明ではフレーク状銀粒子ないし不定形凝集銀粉を主体に用いることが好ましい。なお、ここに主体に用いるとは導電性粒子の90質量%以上用いることである。不定形凝集粉とは球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。不定形凝集粉およびフレーク状粉は球状粉などよりも比表面積が大きいことから低充填量でも導電性ネートワークを形成できるので好ましい。不定形凝集粉は単分散の形態ではないので、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネートワークを形成しやすいので、さらに好ましい。
【0027】
フレーク状粉の粒子径は特に限定されないが、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が0.5~20μmであるものが好ましい。より好ましくは3~12μmである。平均粒子径が15μmを超えると微細配線の形成が困難になり、スクリーン印刷などの場合は目詰まりが生じる。平均粒子径が0.5μm未満の場合、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化する場合がある。
【0028】
不定形凝集粉の粒子径は特に限定されないが、光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が1~20μmであるものが好ましい。より好ましくは3~12μmである。平均粒子径が20μmを超えると分散性が低下してペースト化が困難になる。平均粒子径が1μm未満の場合、凝集粉としての効果が失われ、低充填では良導電性を維持できなくなる場合がある。
【0029】
本発明における非導電性粒子とは、有機ないし無機の絶縁性物質からなる粒子である。本発明の無機粒子は印刷特性の改善、伸縮特性の改善、塗膜表面性の改善を目的に添加され、シリカ、酸化チタン、タルク、アルミナ、硫酸バリウム等の無機粒子、樹脂材料からなるマイクロゲル等を利用できる。
【0030】
本発明における柔軟性樹脂とは、弾性率が、1~1000MPaの、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどが挙げられる。膜の伸縮性を発現させるためには、ウレタン樹脂ないしゴムが好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられる。この中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。本発明で好ましい弾性率の範囲は2~480MPaであり、さらに好ましく3~240MPa、なお好ましくは4~120MPaの範囲である。
【0031】
ニトリル基を含有するゴムは、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18~50質量%が好ましく、40~50質量%が特に好ましい。
【0032】
本発明におけるウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオール、またはポリエステルポリオールをポリオール成分とし、HDI系ポリイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタンゴムを例示することができる。 本発明のウレタンゴムは、高い伸長率を有し、かつ、引張永久ひずみ及び残留ひずみが小さいため繰り返し変形させた際の信頼性に優れる伸縮性誘電体組成物となる。
【0033】
本発明におけるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレントリオール、これらを合成するための環状エーテル等のモノマー材料を共重合させて得た共重合体等のポリアルキレングリコール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変性体、さらにはこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。その理由は、機械的特性が優れるためである。
【0034】
上記ポリエーテルポリオールとしては、市販品を使用することもできる。市販品の具体例としては、例えば、PTG-2000SN(保土谷化学工業社製)、ポリプロピレングリコール、プレミノールS3003(旭硝子社製)、パンデックスGCB-41(DIC社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるポリエステルポリオールとしては芳香族計ポリエステルポリオール、芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂環族ポリエステルポリオールを用いることができる。本発明におけるポリエステルポリオールとしては、飽和型、不飽和型、いずれを用いてもかまわない。
【0036】
本発明におけるHDI系ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又はその変性体であり、分子内に複数のイソシアネート基を有する化合物である。
本発明におけるウレタンゴムは、前述のポリオール成分及び上記イソシアネート成分以外に、更に必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、触媒、加硫促進剤等を含有する混合物を反応させて得られたものでも良い。本発明では硫黄不含型の架橋剤の使用が好ましい。また、本発明の柔軟性を有する高分子材料には可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電フィラー等を含有してもよい。
【0037】
本発明における柔軟性樹脂の配合量は、導電粒子と、好ましくは加えられる非導電性粒子と柔軟性樹脂の合計に対して7~35質量%であり、好ましくは9~28質量%、さらに好ましくは12~20質量%である。
【0038】
本発明における衣服型入出力インターフェースにおける電気配線材料として、導電糸を用いる事ができる。
本発明における導電糸とは、糸長1cmあたりの抵抗値が100Ω以下の糸を云う。ここに導電糸とは導電繊維、及び導電繊維の繊維束、導電繊維を含む繊維から得られる撚糸、組み糸、紡績糸、混紡糸の総称である。本発明の導電糸として、金属被覆された化学繊維、金属被覆された天然繊維、導電性酸化物がより被覆された化学繊維、導電性酸化物により被覆された天然繊維、カーボン系導電性材料(グラファイト、カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)により被覆された化学繊維、カーボン系導電性素材により被覆された天然繊維、導電性高分子により被覆された化学繊維、導電性高分子により被覆された天然繊維などから得られる導電糸を例示できる。かかるタイプの導電糸には、高分子フィルムに金属、カーボン系導電性素材、導電性金属酸化物、導電性高分子から選択される一種以上の導電性素材を被覆した高分子フィルムを800μm幅以下に細くスリットした導電性極細スリットフィルムが含まれる。
【0039】
本発明における導電糸としては、金属、カーボン系導電性素材、導電性金属酸化物、導電性高分子から選択される一種以上の導電性素材を練り込んだ高分子を紡糸して得られる導電繊維から得られる導電糸を用いることができる。
さらに本発明では。太さが250μm以下、好ましくは120μm以下、さらに好ましくは80μm以下、なおさらに好ましくは50μm以下の金属微細線を導電繊維ないし導電糸として用いる事ができる。
本発明では特に、金属被覆された化学繊維、導電性高分子を含浸させた繊維束、太さが50μm以下の金属微細線、から選択される少なくとも一種以上の導電糸を用いる事が好ましい。
【0040】
本発明に於ける導電糸は幾何学的冗長性を持って衣服型インターフェースに配置されることが好ましい。ここに幾何学冗長性とは、空間中に、点A、点Bの二点を定義した際に、二点間の最短距離Xに対して、最短距離よりも長い経路Yを用いて2点を結ぶことにより、二点間の距離が伸びた際にも余裕をもって接続状態が維持されることを云う。
ここに冗長係数は、
冗長係数=Y/X
にて定義される。
本発明における冗長係数は1.41.以上が好ましく、1.8以上がさらに好ましく2.2以上がなお好ましく、2.8以上がさらに好ましい。冗長係数を大きくするには、端的には導電糸をジグザクに配置すれば良い。より具体的には刺繍の手法であるジグザグステッチ、チェーンステッチ、クロスステッチ、フェザーステッチ、等を用いる事ができる。またかかる冗長性は、面方向だけでなく生地の厚さ方向にも発揮することができる。本発明では適度にループが形成され、好ましくは結び目が生じない形態でのステッチを用いる事が推奨される。
【0041】
本発明における衣服型入出力インターフェースにおける電気配線材料として金属箔を用いる事ができる。本発明における金属箔とは、厚さが50μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下、なお好ましくは8μm以下、なおさらに好ましくは4μm以下であり、かつ0.08μm以上である、銅箔、りん青銅箔、ニッケルメッキ銅箔、錫めっき銅箔、ニッケル/金めっき銅箔、アルミニウム箔、銀箔、金箔から選択される少なくとも一種以上の金属箔であることが好ましい。
これら金属箔は、電解法、無電解法、圧延法、蒸着法、スパッタリング法、などの常法にて製造可能である。かかる金属箔はエッチング法、リフトオフ法、アディティブ法、打ち抜き法、レーザーカッティング法などにより所定のパターン形状に加工することができる。
【0042】
本発明における金属箔を用いた電気配線は幾何学的冗長性を有する配線パターンとすることが好ましい。とは、空間中に、点A、点Bの二点を定義した際に、二点間の最短距離Xに対して、最短距離よりも長い経路Yを用いて2点を結ぶことにより、二点間の距離が伸びた際にも余裕をもって接続状態が維持されることを云う。
ここに金属箔による電気配線の冗長係数は、
冗長係数=Y/X
にて定義される。ここでの長さは、幅を持った線路であれば、その中央を通るラインの長さである。
本発明における金属箔による電気配線の冗長係数は1.41以上が好ましく、1.8以上がさらに好ましく2.2以上がなお好ましく、2.8以上がさらに好ましい。冗長係数を大きくするには金属箔をジグザクないし正弦波形状、繰り返し馬蹄形状に配置すれば良い。
【0043】
本発明の衣服型インターフェースにおける衣服生地については特に限定されず、公知一般的な衣服用生地を用いれば良い。生地としては布帛であり、布帛としては織物、編物、不織布を例示することができ、さらにこれらに樹脂コート、樹脂含浸したコート布なども基材として用いることができる。また、ネオプレン(登録商標)に代表される合成ゴムシート等も場合によっては衣服生地として用いることができる。本発明で用いられる布帛は繰り返し10%以上の伸縮が可能なストレッチャビリティを有する事が好ましい。また本発明の基材は50%以上の破断伸度を有する事が好ましい。本発明の基材は布元反でもよく、また、リボン、テープ状でも良く、組紐、網組でもよく、元反からカットされた枚葉の布でも良い。
【0044】
布帛が織物(ニット)の場合、例えば平織、綾織、朱子織、等を例示できる。布帛が編み物の場合、例えば平編み、およびその変形、鹿の子編、アムンゼン編、レース編、アイレット編、添え糸網、パイル編、リブ網、リップル編、亀甲編、ブリスター編、ミラノ・リブ編、ダブルピケ編、シングル・ピケ編み、斜文編、ヘリボーン編、ポンチローマ編、バスケット編、トリコット編、ハーフ・トリコット編、サテントリコット編、ダブルトリ
コット編、クインズコード編、ストライプ・サッカー編、ラッセル編、チュールメッシュ編、およびこれらの変形・組み合わせを例示できる。布帛はエラストマー繊維などからなる不織布であっても良い。
【0045】
またこれら織物、編み物を構成する繊維素材としては、綿、羊毛、麻などの天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリベンザゾール、ポリイミド、ポリ芳香族アミド、ポリベンゾオキサゾール、高分子量ポリエチレンなどの化学合成繊維、それらの混紡品などを用いる事ができる。
【0046】
本発明で用いる事ができる衣服型インターフェースの形態の例としては、シャツ、ブラウス、トレーナーなどの上半身を独立に被覆する衣服、ズボン、パンツ、タイツ、レギンス、トレンカのように下半身を独立に被覆する衣服、帽子、手袋、腕カバー、靴下、足袋、ブラジャー、パンティーショーツのように身体の各部を個別に被覆する衣服、ワンピース型の水着、レオタードのように上半身から股間までを被覆する衣服、全身タイツのように上半身と下半身を一体で被覆する衣服を用いる事ができる。
さらに本発明では繊維素材による部品を一部に含む身体装着具(ヘルメット、靴、防護衣、プロテクター)に、電気的要素を組み込んだものも衣服型インターフェースの形態として陥ることができる。これらの例として、格闘技、アメリカンフットボールなどで用いる防具、あるいは実験現場、作業現場、工事現場などで用いられる保護具などを例示することができる。
【0047】
本発明における衣服型インターフェースにおいて、電気的接続部の少なくとも周囲10mmの範囲においては、その部分に用いられている衣服素材の破断伸張度が70%以下である事が好ましい。すなわち電気的接続部近傍に比較的伸張度が低い素材を配置する事により、着脱時に衣服型インターフェース側に存在する電気的接続部に加わる負荷を低減し、信頼性を上げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<スナップホック>
雄型/雌型一対の嵌合体として
図1、
図2に例示されるスナップホックを用いた。スナップホックは、基材にカシメで取り付けるタイプ、糸で縫い付けるタイプの両方を準備した。スナップホックの雌型受部の締め具合、ないしバネを調整することにより、表1に示すスナップホックを調整した。なお脱離力はスナップホックの雌型を板材に、雄型を布地に取り付け、
図3に示す治具を用いて引っ張り試験器にて測定した。表中の設置面積は雌型側の底面である。またホックタイプは、「バネ入り」が雌型内部にバネが有り雄型を挟む形で嵌合保持するタイプ、「六割」は雌型の穴の周囲が六分割されており、撓みにより雄型を保持するタイプである。
【0050】
【0051】
<衣服型インターフェース1>
ニトリル量40質量%、ムーニー粘度46のニトリルブタジエンゴム12質量部、
イソホロン30質量部、
平均粒子径6μmの微細フレーク状銀粉[福田金属箔粉工業社製 商品名Ag-XF301]58.0質量部、
を均一に混合し、三本ロールミルにて分散することにより伸縮性導電層形成用ペーストAG1を得た。
得られた伸縮性導電層形成用ペーストAG1を離型PETフィルム状にスクリーン印刷法を用いて、塗布乾燥し、所定のパターンを有する厚さ26μmの伸縮性導体シートを得た。得られた伸縮性導体シートをウレタン製ホットメルトシートによりスポーツシャツの裏側に転写し、所定の絶縁層を重ねて、胸の左右に心電測定用電極を有し、胸中央の胸骨部分に左右一対、すなわち2個の端子部を有する、伸縮性導体組成物を電極および配線材料に用いたスポーツシャツを得た。得られたスポーツシャツの端子部に、カシメないし導電糸による縫い付けにより、スナップホックを取り付けた。なお、その際に伸縮性導体形成用ペーストAG1をスナップホック側に塗布し、衣服側端子との導通と接着の補助とした。さらにスナップホック部を含む25mm×60mmの部分に破断伸度が62%の補強クロスをホットメルト樹脂により貼り付けて補強し、衣服型インターフェース1を得た。なおスナップホックの間隔は、以後の試験に応じて20mm間隔と45mm間隔の試料双方を準備した。
【0052】
<衣服型インターフェース2>
無電解めっき法により、ナイロン繊維の撚糸(250デニール)を銀メッキした。まず無電解銀めっきのための下地処理として撚糸を精錬剤に浸漬、水洗後、塩化第一スズ10g/リットル、35%塩酸20ミリリットル/リットルを含んだ水溶液に浸漬した後、水洗することにより触媒性を付与し後、下記組成の無電解銀メッキ液を所定量用いて銀を10質量%被覆した。
〔無電解銀めっき液浴比〕(銀5g/1リットル)
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 100g/1リットル
水酸化ナトリウム 25g/1リットル
ホルマリン 50g/1リットル
硝酸銀(水1リットルに溶解して滴下) 15.8g
アンモニア水(水1リットルに溶解して滴下) 50ミリリットル
得られた銀メッキ糸を撚り合わせ、糸長1cmあたりの抵抗値が120mΩの導電糸(F1)を得た。
【0053】
厚さ125μmの離型PETフィルムに、まず電極表面層となる導電性カーボンペーストを所定のパターンにてスクリーン印刷し、乾燥硬化した。次いで伸縮性絶縁被覆層となるウレタン樹脂インクを所定のパターンにスクリーン印刷し乾燥硬化した。次いで、主導
体層となる伸縮性導体形成用ペーストAG1を用いて電極部と端子部をスクリーン印刷し、続いて導電糸F1を心電測定用電極と接続用ホック取り付け用の電極との間に略正弦波形状に配置して電気配線とした。なお正弦波の周期(ジグザグピッチ)は3mm、面方向の振幅を5mmとした。電気配線は平行になるように5本が配置された。冗長係数は1.8である。ついで、さらにウレタン樹脂製のホットメルトシートにて全体にカバーし、不要部分を切り取り、スポーツシャツの裏側に仮接着し、離型PETフィルムを剥離し、さらに115℃にて30分間乾燥し、表面がカーボンペーストで構成された電極及び導電糸による配線を有するスポーツシャツを得た。次いで衣服型インターフェース1と同様の手法にてスナップホックと補強布を取り付け、衣服型インターフェース2を得た。なお所定のパターンは<衣服型インターフェース1>と同様である。
【0054】
<衣服型インターフェース3>
厚さ9μmの圧延銅箔を弱粘着剤を塗布したポリエステルフィルムにラミネートし、次いで銅箔上にドライフィルムレジストを用いて所定のパターンを形成し、塩化第二銅溶液によりエッチング後、ドライフィルムレジストをアルカリ剥離し、銅箔表面の酸化膜を希硫酸で除去した後、イオン交換水で十分に洗浄の後、ドライエアーにて乾燥し、所定の冗長係数を有する金属箔F1を得た。
以下<衣服型インターフェースの準備2>において導電糸の代わりに前記金属箔F1を配置した以外は同様に操作して、表面がカーボンペーストで構成された電極及び銅箔による配線を有する衣服型インターフェース3を得た。
【0055】
<デタッチャブルデバイス1>
本実施例においては、質量40gの面取りした矩形の金属板をデタッチャブルデバイスに見立て、衣服型インターフェース側に取り付けたスナップホックの型と対になる型を20mm間隔にて取り付けた。以下デタッチャブルデバイス1と称する。
【0056】
<デタッチャブルデバイス2>
本実施例においては、質量80gの面取りした矩形の金属板をデタッチャブルデバイスに見立て、衣服型インターフェース側に取り付けたスナップホックの型と対になる型を45mm間隔にて取り付けた。以下デタッチャブルデバイス2と称する。
【0057】
(実施例1~5、比較例1,2)
表2に示すスナップホックと衣服型インターフェースの組み合わせにて、繰り返し着脱試験と、振動試験を行った。
【0058】
<繰り返し着脱試験>
デタッチャブルデバイスを衣服型インターフェースに、手動操作にて装着し、デタッチャブルデバイスを左手で支え。衣服側インターフェースの端子部の(衣服を正面から見て)右側約150mm離れた個所を右手で持ち、デタッチャブルデバイスの板面に垂直方向に引っ張るようにして脱離する操作を繰り返し、衣服側インターフェースのスナップホックと対応する心電測定用電極との間の導通が遮断されるまでの着脱回数をカウントした。なお導通の遮断はスナップホックと電極間の抵抗値が100kΩ以上に達した時点で遮断と判断した。また導通が維持されている場合には着脱1000回にて試験を打ち切った。結果を遮断までの回数により以下のようにランク付けした。
ランク0 1~99回
ランク1 100~299回
ランク2 300~999回以上
ランク3 1000回以上
【0059】
<振動試験>
衣服型インターフェースをデタッチャブルデバイスを取り付けた状態にてマネキンに装着し、振動試験器にて周波数60Hzにて振幅10mmの振動を加え、デタッチャブルデバイスが脱落するまでの時間を測定した。なおデタッチャブルデバイスが脱落しない場合には5分間にて試験を打ち切った。結果を脱落までの時間により以下のようにランク付けした。
ランク0 3秒未満
ランク1 3秒以上、30秒未満
ランク2 10秒以上5分未満
ランク3 5分以上
結果を表2に示す。
【0060】
【0061】
(実施例6~40、比較例3~16)
以下、衣服側インターフェース、デタッチャブルデバイス、衣服側スナップホックの雄/雌を表3、表4、表5、表6、表7、表8、表9に示す組み合わせで実験を行った。結果をそれぞれの表に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
(応用例1)
実施例3に用いた衣服型インターフェースを用い、デタッチャブルデバイスとしてスマートホンへの無線データ伝送機能を有するユニオンツール社製の心拍センサWHS-2を接続して、測定と同時にWHS-2から心電信号をスマートホンに発信し、同心拍センサWHS-2専用のアプリ「myBeat」を組み込んだアップル社製スマートホンで心拍データを受信し、画面表示できるように設定した。以上のようにして心拍計測機能を持つウェアラブススマートデバイスを構成した。
【0070】
得られたウェアラブルスマートデバイスを運転者に着用させ、オフロードカーにより未舗装の山道を含む道路を連続30分間ドライブし、ドライバーの心拍計測を行った。なお、オフロードカーに搭載した加速度計により、運転中の瞬間最大加速度は6.7Gであった。デタッチャブルデバイスは運転中に脱落すること無く、良好に心拍計測を行う事ができた。
【0071】
(応用例2)
実施例18に用いた衣服型インターフェースを用い、デタッチャブルデバイスとしてポラーレ社製の遠隔心電計測装置を用い、応用例1と同様に心拍計測機能を持つウェアラブススマートデバイスを構成した。
得られたウェアラブルスマートデバイスをアメリカンフットボール選手に着用させ、試合中の選手の心電計測を行った。デタッチャブルデバイスは運転中に脱落すること無く、良好に心拍計測を行う事ができた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上、示してきたように、本発明のウェアラブルスマートデバイスは、衣服型インターフェースとデタッチャブルデバイスとの繰り返し着脱性に優れ、かつ、振動試験にも十分に耐えることから、被着者の運動中にデタッチャブルデバイスが脱落する可能性も低く、安定した動作が期待できる。本発明のウェアラブルスマートデバイスは、被着体として人体のみならず、家畜、愛玩動物などの動物、あるいは振動を伴う動作を行う機械装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0073】
100:基材
101:雄型
102:雌型
201:布基材
202:板基材
301:クリップ
302:固定台
303:クランプ