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特許7355140セリンプロテアーゼの検出用または測定用試薬
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  • 特許-セリンプロテアーゼの検出用または測定用試薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】セリンプロテアーゼの検出用または測定用試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/573 20060101AFI20230926BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230926BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20230926BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G01N33/573 A
G01N33/543 581A
C07K16/40
C12M1/34 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022029580
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125474
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】屋鋪 哲也
(72)【発明者】
【氏名】曽根 拓也
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-265138(JP,A)
【文献】特表2004-524522(JP,A)
【文献】国際公開第2000/009739(WO,A1)
【文献】特表平10-504902(JP,A)
【文献】特公平03-070184(JP,B2)
【文献】特開2012-026955(JP,A)
【文献】特開2014-085311(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171967(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047793(WO,A1)
【文献】特開平11-124399(JP,A)
【文献】特表平07-508103(JP,A)
【文献】特開昭59-203958(JP,A)
【文献】特表2001-502669(JP,A)
【文献】特開2019-138919(JP,A)
【文献】特表2002-503812(JP,A)
【文献】特表平08-504276(JP,A)
【文献】特開2011-110021(JP,A)
【文献】特開昭51-077389(JP,A)
【文献】特表平03-503486(JP,A)
【文献】特開2003-235556(JP,A)
【文献】特公昭60-036758(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0209977(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0096233(US,A1)
【文献】特表2002-538818(JP,A)
【文献】特開昭58-148963(JP,A)
【文献】特開昭59-203957(JP,A)
【文献】特許第2614155(JP,B2)
【文献】特開平11-258231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/573
G01N 33/543
C07K 16/40
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼの検出または測定用試薬であって、
以下のAおよびB:
(A)界面活性剤、
(B)該セリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメント
を含み、
該界面活性剤が、該結合体からセリンプロテアーゼを遊離させるためのものであり、
該セリンプロテアーゼが、トリプシンまたはエラスターゼであり、
該界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含み、
界面活性剤の含有量が、試薬全体の0.03~3重量%である、
試薬。
【請求項2】
請求項1に記載の試薬であって、
以下の試薬A1および試薬B1:
(A1)界面活性剤Aを含む試薬A1、
(B1)該セリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、試薬B1
を含み、
試料の測定時に、試料と試薬A1と試薬B1が混合される、
試料の測定時において、試料とA1とB1の混合物中の前記界面活性剤の含有量が、0.03~3重量%である、
試薬。
【請求項3】
前記試薬が、免疫学的測定用試薬である、請求項1または2に記載の試薬。
【請求項4】
前記免疫学的測定用試薬が、酵素免疫測定法、蛍光酵素免疫測定法、化学発光酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光測免疫測定法、蛍光抗体法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法、イムノブロット法、ラテックス凝集法、およびイムノクロマトグラフィー法からなる群から選択される少なくとも1種の免疫学的測定法に用いるための試薬である、請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
前記免疫学的測定用試薬が、ラテックス凝集法を用いるための試薬である、請求項3に記載の試薬。
【請求項6】
前記ラテックス凝集法を用いるための試薬中のラテックス粒子の平均粒子径が、100~500nmである、請求項5に記載の試薬。
【請求項7】
前記セリンプロテアーゼが、トリプシンである、請求項1~6のいずれかに記載の試薬。
【請求項8】
セリンプロテアーゼに関連する疾患の診断に用いるための、請求項1~7のいずれかに記載の試薬。
【請求項9】
前記セリンプロテアーゼがトリプシンであり、前記プロテアーゼに関連する疾患が膵疾患である、請求項8に記載の試薬。
【請求項10】
対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼの検出または測定方法であって、
(1)請求項1~9のいずれかに記載の試薬と、試料を接触させること、
(2)該試薬中の界面活性剤により、該結合体からセリンプロテアーゼを遊離させること、
)セリンプロテアーゼを検出または測定すること
を含み、
該セリンプロテアーゼが、トリプシンまたはエラスターゼである、
方法。
【請求項11】
前記試料が、血清または血漿である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼに関連する疾患の診断を行うために必要な測定データを提供する方法であって、
(1)請求項1~9のいずれかに記載の試薬と、試料を接触させること、
(2)該試薬中の界面活性剤により、該結合体からセリンプロテアーゼを遊離させること、
)セリンプロテアーゼを検出または測定すること、
)得られた検出結果または測定値に基づく、該セリンプロテアーゼに関連する疾患の状態の判断を行うために必要な測定データを提供すること
を含み、
該セリンプロテアーゼが、トリプシンまたはエラスターゼである、
方法。
【請求項13】
前記セリンプロテアーゼがトリプシンであり、前記セリンプロテアーゼに関連する疾患が膵疾患である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリンプロテアーゼの検出用または測定用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
医学分野や臨床検査分野において、血液などの生体試料から、疾患に関連する微量な特定物質を高精度で検出または測定し、疾患の発症や重症度を判断しようとする試みが以前から盛んに行われている。生体試料中の特定物質を検出または測定する方法として、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定方法が広く知られている。
【0003】
生体試料中には、遊離の状態のもの(遊離体)と、それに対応する結合分子と結合した結合体の状態で存在する物質が知られている。例えば、トリプシンは、セリンプロテアーゼの一種であるが、遊離体としてもαアンチトリプシンなどとの結合体としても血液中に存在し、膵疾患などの疾患を患う患者では血液中の濃度が健常者よりも高くなるため、膵疾患のマーカーとして有用である。また、その他の例として、セリンプロテアーゼの一種である前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺癌の腫瘍マーカーとして知られているが、遊離体であるPSAの他、PSAとα-アンチキモトリプシンなどとの結合体で血液中に存在することが知られている。
【0004】
このような物質は、結合分子の量や生体内の環境などにより、遊離体の存在量と結合体の存在量の比率が変化するため、測定する際には、遊離体と結合体の両者を測定する必要があった。しかしながら、このような物質を、免疫学的測定方法で測定すると、抗体の結合率が遊離体と複合体の間で異なってしまい、精度よく測定することができないという問題点があった。
【0005】
このような問題を解決するための従来技術として、例えば特許文献1では、(1)遊離体および結合体の測定対象物質に結合可能な第1モノクローナル抗体を感作した第1不溶性担体粒子を含む第1粒子懸濁液、(2)遊離体および結合体の測定対象物質に結合可能であって、さらに第1モノクローナル抗体と競合しない第2モノクローナル抗体を感作した第2不溶性担体粒子を含む第2粒子懸濁液、及び、(3)遊離体の測定対象物質は認識しないが結合体の測定対象物質を認識する第3モノクローナル抗体を感作した第3不溶性担体粒子を含む第3粒子懸濁液を含む免疫凝集測定用試薬およびそれを用いる方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、遊離体および結合体の抗原の両方に反応性を有し、かつ、それぞれ認識部位が異なる3種類のモノクローナル抗体のうち、少なくとも1種類を、粒径が小さい方の担体に感作し、残りのモノクローナル抗体を粒径が大きい方の担体に感作することにより遊離体および結合体の抗原の反応性を調整する測定試薬およびそれを用いる測定方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献3では、遊離体および結合体の測定対象物質を含む検体と、測定対象物質に対するモノクローナル抗体1を固定化したラテックス1とを反応させて反応体1を得る工程(1)、抗体1と測定対象物質に対する認識部位の異なるモノクローナル抗体2を固定化したラテックス2と、反応体1とを反応させて反応体2を得る工程(2)を含む、測定方法が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献4では、PSAの遊離体と結合体の両者と反応性を有するモノクローナル抗体1が固定化されたラテックス1と、抗体1とはPSAに対する認識部位が異なる、PSAの遊離体と結合体の両者と反応性を有するモノクローナル抗体2が固定化された、ラテックス1とは平均粒径の異なるラテックス2とを含む、PSA測定用試薬およびそれを用いる測定方法が提案されている。
【0009】
さらにまた、特許文献5には、遊離体および結合体のPSAの双方に反応する抗PSAモノクローナル抗体であって、互いにエピトープを異にする2種の抗PSAモノクローナル抗体で、所定の粒子径の不溶性担体を感作し、凝集促進剤の共存下で、試料と接触させるPSAの測定方法およびそれに用いるPSA測定用試薬が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-108681号公報
【文献】WO2006/068206パンフレット
【文献】特開2007-163319号公報
【文献】特開2005-106609号公報
【文献】WO2012/133482パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、試料中の遊離体および結合体の両方のセリンプロテアーゼを、高感度かつ高精度で検出または測定する新たな試薬および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、試料中のセリンプロテアーゼの検出および測定を、所定の界面活性剤の存在下で行うことで、結合体からセリンプロテアーゼを遊離させることができ、その結果、試料中に含まれる免疫学的に測定可能な全て又は一部のセリンプロテアーゼを、存在形態(遊離体、結合体)およびそれらの存在比にかかわらず、高感度かつ高精度で検出または測定できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
1.対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼの検出または測定用試薬であって、
以下のAおよびB:
(A)界面活性剤、
(B)該セリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメント
を含む、
試薬。
2.項1に記載の試薬であって、
以下の試薬A1および試薬B1:
(A1)界面活性剤Aを含む試薬A1、
(B1)該セリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、試薬B1
を含み、
試料の測定時に、試料と試薬A1と試薬B1が混合される、
試薬。
3.前記試料の測定時において、試料とA1とB1の混合物中の前記界面活性剤の含有量が、0.02重量%以上である、項2に記載の試薬。
4.前記試料の測定時において、試料とA1とB1の混合物中の前記界面活性剤の含有量が、0.03~3重量%である、項3に記載の試薬。
5.前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、項1~4のいずれかに記載の試薬。
6.前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、および3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、項1~4のいずれかに記載の試薬。
7.前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含む、項1~4のいずれかに記載の試薬。
8.前記試薬が、免疫学的測定用試薬である、項1~7のいずれかに記載の試薬。
9.前記免疫学的測定用試薬が、酵素免疫測定法、蛍光酵素免疫測定法、化学発光酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光測免疫測定法、蛍光抗体法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法、イムノブロット法、ラテックス凝集法、およびイムノクロマトグラフィー法からなる群から選択される少なくとも1種の免疫学的測定法に用いるための試薬である、項8に記載の試薬。
10.前記免疫学的測定用試薬が、ラテックス凝集法を用いるための試薬である、項8に記載の試薬。
11.前記ラテックス凝集法を用いるための試薬中のラテックス粒子の平均粒子径が、100~500nmである、項10に記載の試薬。
12.前記セリンプロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、および前立腺特異抗原からなる群から選択される、項1~11のいずれかに記載の試薬。
13.前記セリンプロテアーゼが、トリプシンである、項1~11のいずれかに記載の試薬。
14.セリンプロテアーゼに関連する疾患の診断に用いるための、項1~13のいずれかに記載の試薬。
15.前記セリンプロテアーゼがトリプシンであり、前記プロテアーゼに関連する疾患が膵疾患である、項14に記載の試薬。
16.対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼの検出または測定方法であって、
(1)項1~15のいずれかに記載の試薬と、試料を接触させること、
(2)セリンプロテアーゼを検出または測定すること
を含む、方法。
17.前記試料が、血清または血漿である、項16に記載の方法。
18.対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼに関連する疾患の診断方法であって、
(1)項1~15のいずれかに記載の試薬と、試料を接触させること、
(2)セリンプロテアーゼを検出または測定すること、
(3)得られた検出結果または測定値に基づいて該セリンプロテアーゼに関連する疾患の状態を判断すること
を含む、方法。
19.前記セリンプロテアーゼがトリプシンであり、前記セリンプロテアーゼに関連する疾患が膵疾患である、項18に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料中に含まれる免疫学的に測定可能な全て又は一部のセリンプロテアーゼを、存在形態(遊離体、結合体)およびそれらの存在比にかかわらず、高感度かつ高精度で検出または測定することができる。
さらに、本発明によれば、試料中のセリンプロテアーゼを高感度かつ高精度で検出または測定することできるので、セリンプロテアーゼの量または濃度をカットオフ値などとして用いることにより、セリンプロテアーゼに関連する疾患の診断や、その疾患の重症度の決定などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、各界面活性剤濃度(0%、0.3%、0.5%、0.75%または1.0%Tween20)の試薬を用いて、各血清試料中のトリプシン濃度を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における「対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼ」は、生体内に単独で、または対応する結合分子と結合した状態で存在し得るセリンプロテアーゼであれば、特に限定されない。ここで、「対応する結合分子」は、セリンプロテアーゼに対して親和性を有し、該セリンプロテアーゼと生体内で結合し、結合体を形成し得る物質を意味する。このようなセリンプロテアーゼとしては、例えば、トリプシン、エラスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)などが挙げられ、好ましくは、トリプシンが挙げられる。
上記対応する結合分子としては、特に限定されないが、例えば、セリンプロテアーゼがトリプシンである場合、αアンチトリプシンまたはαマクログロブリンが挙げられ、エラスターゼの場合、α-プロテアーゼインヒビターが挙げられ、PSAの場合、α-アンチキモトリプシンまたはプロテインCインヒビターが挙げられる。
【0016】
本明細書における「セリンプロテアーゼに関連する疾患」としては、例えば、セリンプロテアーゼがトリプシンの場合、急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、乳頭炎などの膵炎、あるいは膵液うっ滞を合併しやすい疾患などの膵疾患、胆石症、胆道癌、腎不全などが挙げられ、特に膵疾患が挙げられる。
エラスターゼの場合、急性膵炎、慢性膵炎、膵癌などの膵疾患、胃癌、肝硬変、肝癌、胆管癌、肺癌などが挙げられ、特に膵疾患が挙げられる。
PSAの場合、前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎などが挙げられ、特に前立腺癌が挙げられる。
【0017】
本明細書における「対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメント」は、上記セリンプロテアーゼに特異的結合能を有するものであれば特に限定されない。
上記「抗体」は、モノクローナル抗体でも、ポリクローナル抗体でもよい。また、当該抗体は、市販品でもよく、セリンプロテアーゼまたはその一部分を抗原として用いて細胞融合技術、遺伝子組換え技術、ファージディスプレイ等の既知の方法にしたがって生産したものでもよい。
また、上記「抗原結合フラグメント」は、上記抗体のフラグメントであって、セリンプロテアーゼに結合能を有するフラグメントを意味し、例えば、上記抗体をパパイン等で部分分解して得られるFabフラグメント、ペプシン等で部分分解して得られるF(ab’)2フラグメント、F(ab’)2フラグメントを還元処理して得られるFab’フラグメント等が挙げられる。
好ましくは、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0018】
本明細書における「界面活性剤」としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(商品名Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(商品名Tween 80)、ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(商品名Triton X-100)、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール(商品名Nonidet(R) P40)などが挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)などが挙げられる。
好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられ、特にポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートが挙げられる。
【0019】
本明細書において「診断」とは、疾患の現在または未来の病状を判定することをいう。
本明細書において、「重症度」としては、軽症、中等症、重症等が挙げられ、「重症化」としては、軽症から中等症または重症への重症化、中等症から重症への重症化が挙げられる。
本明細書において「発症」とは、疾患の症状が現れることをいう。
【0020】
本明細書における「試料」としては、例えば、ヒト被験者から採取された生体試料、特に血液から調製した血液試料が挙げられる。本明細書における「血液試料」とは、血液成分の少なくとも一部を含む試料を意味し、全血、血清、および血漿のいずれであってもよく、これらを希釈したものであってもよい。血液試料は、好ましくは血清または血漿であり、より好ましくは血清である。血液試料の調製は、既知の方法で行うことができる。
【0021】
本発明は、一実施態様として、対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼの検出または測定用試薬であって、
以下のAおよびB:
(A)界面活性剤、
(B)該セリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメント
を含む、
試薬を含む。
【0022】
上記試薬において、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、試薬全体の0.02重量%以上であり、好ましくは0.03~3重量%である。
【0023】
上記試薬の構成、形状、状態などは、特に限定されない。
また、上記試薬において、上記抗体またはその抗原結合フラグメント(以下、特に言及しない限り「抗体」と総称する)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0024】
上記試薬において、上記抗体は、支持体に固定化されていてもよい。支持体は、当該試薬を用いる方法に応じて、適宜選択することができる。支持体としては、例えば、ウェルプレート(例、96ウェルマイクロプレートなど)、メンブレン(例、ニトロセルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜など)、スライドガラス、磁気ビーズ、ラテックス粒子等が挙げられる。抗体の支持体への固定化は、支持体の材質に応じて選択した既知の方法により行うことができる。
【0025】
上記抗体が支持体に固定されている場合、上記セリンプロテアーゼの異なるエピトープに結合する第二の抗体を含んでいてもよい。
この場合、第一の抗体と第二の抗体の両方が抗体でもよく、一方が抗体であり、他方が抗原結合フラグメントでもよく、両方が抗原結合フラグメントでもよい。
【0026】
また、上記抗体は、標識化されたものであってもよい。標識化のための標識物質は、特に限定されず、既知のものを用いればよい。標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素標識;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などの蛍光標識;ヨウ素125などの放射性同位体標識;ルテニウム錯体などの電気化学発光標識;ビオチン;金属ナノ粒子等が挙げられる。抗体またはその抗原結合フラグメントの標識化は、標識物質の種類に応じて選択した既知の方法により行うことができる。
【0027】
上記試薬は、緩衝液を含むことができる。緩衝液としては、抗体がセリンプロテアーゼに結合するのを妨げる性質を有しないものであればよく、例えばpH5.0~10.0、好ましくはpH5.5~8.5の中性付近に緩衝作用を有する、例えばMES緩衝液、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液、グリシン緩衝液、ホウ酸緩衝液などが挙げられる。また、緩衝液中の緩衝剤の濃度としては、通常10~500mM、好ましくは10~300mMの範囲から適宜選択される。
【0028】
上記試薬は、抗体がセリンプロテアーゼに結合するのを妨害しない量で、当該分野で既知の添加剤を含むことができる。例えば、緩衝剤、防腐剤(アジ化ナトリウムなど)タンパク質(アルブミン)、水溶性高分子(糖類、ポリエチレングリコール、デキストランなど)、塩類(塩化ナトリウム、アミノ酸など)などを含む。
【0029】
上記試薬は、上記試薬と他の要素を含むキットの形態であってもよい。他の要素としては、例えば、標識物質の検出試薬、セリンプロテアーゼの標準試料、血液試料調製用試薬、希釈液、支持体、使用説明書などが挙げられる。
【0030】
上記試薬において、上記抗体、界面活性剤、緩衝液、添加剤などの各成分は、2個以上の別個の試薬に分かれて含まれていてもよい。その一例として、例えば、以下の試薬A1および試薬B1:
(A1)界面活性剤Aを含む試薬A1、
(B1)該セリンプロテアーゼに対する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、試薬B1
を含み、
試料の測定時に、試料と試薬A1と試薬B1が混合される、
試薬などが挙げられる。
【0031】
上記試薬において、試料の測定時に試料と試薬A1と試薬B1が混合されるが、その際の混合条件は、測定対象のセリンプロテアーゼと抗体の結合反応(抗原抗体反応)が妨害されない条件であれば、特に限定されない。
【0032】
試料の測定時における試料と試薬A1と試薬B1の混合物中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.02重量%以上であり、好ましくは0.05~1重量%である。
【0033】
上記試薬A1は、試料の測定時に、試料と試薬B1と混合して得られる混合物中の界面活性剤の含有量が、上記所定の範囲内になればよく、界面活性剤そのものであっても、界面活性剤を含む組成物であってもよい。
【0034】
上記試薬A1は、界面活性剤に加えて、上記緩衝液、添加剤などを含んでいてもよい。また、上記試薬B1は、抗体に加えて、上記緩衝液、添加剤などを含んでいてもよい。これらの試薬A1およびB1に含まれる成分は、各々の試薬の安定性、取扱性などを考慮して適宜決定すればよい。
【0035】
上記試薬の例としては、免疫学的測定法に用いるための試薬(免疫学的測定用試薬)が挙げられ、具体的には、酵素免疫測定法、蛍光酵素免疫測定法、化学発光酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光測免疫測定法、蛍光抗体法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法、イムノブロット法、ラテックス凝集法、イムノクロマトグラフィー法、ネフェロメトリー法などに用いるための試薬が挙げられる。好ましくは、ラテックス凝集法に用いるための試薬が挙げられる。これらは、市販されているものでよく、既知の方法にしたがって調製したものでもよい。
【0036】
上記試薬がラテックス凝集法を用いる試薬(以下、「ラテックス試薬」と称する)である場合、当該分野で既知のラテックスを使用することができる。例えば、ポリスチレンラテックスなどのスチレン系ラテックス、アクリル酸系ラテックス、種々の変性ラテックス(例えば、上記ポリスチレン中にカルボキシル基を導入したカルボン酸変性ラテックス)、着色ラテックス、蛍光ラテックス、などが挙げられる。
上記ラテックスは、既知の方法で製造することができるが、市販されているものでもよい。また、上記ラテックスは、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記ラテックス試薬におけるラテックス粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、測定対象となる抗原物質と抗体との抗原抗体反応により生じた凝集体が肉眼または光学的に検出できる大きさを示すものが挙げられる。具体的には、例えば、100~500nmである。
また、ラテックス粒子の平均粒子径は、2種以上であってもよい。
本明細書における「平均粒子径」は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)により測定した数値を意味する。
【0038】
上記ラテックス試薬は、セリンプロテアーゼに対する抗体が結合したラテックス粒子を含む。ラテックスに抗体を結合する方法は、特に限定されず、既知の方法が挙げられる。例えば、抗体とラテックスを、pH5.0~10.0の緩衝液中で混合し、20~30℃の条件で2~3時間反応させた後、遠心分離、ブロッキング処理、加熱(エイジング)処理などの既知の後処理を行うことにより、ラテックスと抗体を結合させることができる。
この際の緩衝液としては、上述した試薬に含まれる緩衝液でよい。
【0039】
上記試薬においては、試料中にセリンプロテアーゼと結合分子との結合体の状態で存在していても、界面活性剤の作用により、セリンプロテアーゼと結合分子を分離し、セリンプロテアーゼを遊離させることができるので、試料中に遊離体として存在していたセリンプロテアーゼばかりでなく、結合体の状態で存在していたセリンプロテアーゼも検出または測定することができる。したがって、上記試薬は、生体内で遊離体と結合体の両方の状態で存在し、生体内の環境によって存在比が異なり得るセリンプロテアーゼを、精度よく検出することができ、その量(濃度)も精度よく測定することができる。
さらに、上記試薬は、試料中のセリンプロテアーゼを精度よく検出または測定することできるので、セリンプロテアーゼの量または濃度をカットオフ値などとして用いることにより、セリンプロテアーゼに関連する疾患の診断や、その疾患の重症度の決定などに用いることができる。
【0040】
本発明は、一実施態様として、対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼの検出または測定方法であって、
(1)上記試薬と、試料を接触させること、
(2)セリンプロテアーゼを検出または測定すること
を含む、方法を含む。
【0041】
上記方法における試料は、上記試薬を用いた測定の対象となる試料が挙げられる。
上記方法で使用する試薬において、使用される抗体は、1種でもよく、2種以上でもよく、界面活性剤も1種でもよく、2種以上でもよい。
また、上記方法は、1種または2種以上の上記試薬を用いて行うことができる。
【0042】
上記工程(1)は、上記試薬と試料を接触させることにより、該試薬に含まれる抗体と、該試料中に含まれるセリンプロテアーゼを結合させる工程である。したがって、該セリンプロテアーゼと、該抗体が結合可能な条件下での工程であれば、特に限定されない。例えば、既知の免疫学的測定法に準じて行うことができる。
【0043】
上記工程(2)は、上記工程(1)によって得られた該セリンプロテアーゼと該抗体との結合体を検出または測定する工程である。
該結合体の検出または測定方法は、特に限定されず、既知の定性的または定量的方法が挙げられる。具体的には、例えば、既知の免疫学的測定法が挙げられ、具体的には、酵素免疫測定法、蛍光酵素免疫測定法、化学発光酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光測免疫測定法、蛍光抗体法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法、イムノブロット法、ラテックス凝集法、イムノクロマトグラフィー法、ネフェロメトリー法などが挙げられる。
これにより、試料中のセリンプロテアーゼを検出することができ、試料中のセリンプロテアーゼの量(濃度)を定量することができる。
【0044】
例えば、試料中のセリンプロテアーゼの濃度の測定としてラテックス凝集法を用いる場合、セリンプロテアーゼとラテックス粒子に結合した抗体との抗原抗体反応により生じる凝集の度合いを例えば吸光度を用いて測定し、予め求めてあった標準品の検量線から、試料中のセリンプロテアーゼの濃度を求めることができる。なお、吸光度の測定波長は、通常340~1000nm、好ましくは500~900nmが上げられる。また、凝集の度合いは、吸光度に限定されるものではなく、既知の方法を用いることができ、例えばネフェロメトリー、カウンティングイムノアッセイなどの方法により測定することもできる。
【0045】
上記工程(2)で得られたセリンプロテアーゼの検出結果または測定値(濃度、量)に基づいて、該セリンプロテアーゼに関連する疾患の状態を判断することもできる。
したがって、本発明は、一実施態様として、対応する結合分子との結合体の形態で生体内に存在し得るセリンプロテアーゼに関連する疾患の診断方法であって、
(1)上記試薬と、試料を接触させること、
(2)セリンプロテアーゼを検出または測定すること、
(3)得られた検出結果または測定値に基づいて該セリンプロテアーゼに関連する疾患の状態を判断すること
を含む、方法を含む。
【0046】
上記診断方法における工程(1)および(2)は、上記検出または測定方法と同様に行うことができる。
上記工程(3)は、例えば、セリンプロテアーゼの検出結果または測定値(濃度、量)を指標として診断すること、例えば、カットオフ値を決定し、カットオフ値に基づいて重症度を評価、発症もしくは重症化を予測、または発症リスクもしくは重症化リスクを評価すること、などを含む。
【実施例
【0047】
以下、実施例を参照して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
<モノクローナル抗体の作製>
以下の手順にしたがって、抗体A、抗体Bを得た。
(免疫原)
ヒト精製トリプシン(SCRIPPS社製、Cat. No.T0614、精製度≧95%)1mgを1mM TLCK (Tosyl-L-lysyl-chloromethane hydrochloride、ナカライ、Code 34219-94)を含む生理食塩水溶液5mLに溶解し、37℃にて30分間加温後、生理食塩水溶液にて透析し使用した。
(免疫方法)
上記免疫原をアジュバント(Complete Freund’s adjuvant:CFA、GIBCO社製)に懸濁し、25μgトリプシン/匹となるようBALB/cマウス(5週齢、雌)に2週間間隔で免疫した。途中で部分採血を行い、抗血清レベルでの力価上昇度を免疫原であるトリプシンとの反応性を指標に確認した。複数回の免疫にて抗体力価が十分上昇していることを確認した上で、上記免疫原の生理食塩水溶液を腹腔内もしくは静脈内投与した。脾臓より抗体産生細胞を採取し、ミエローマ(P3X63Ag8.653、ECACC)と細胞融合した。細胞融合はPEG法で行い、融合細胞を培養プレートに播種した。その後、37℃の炭酸ガスインキュベーター内で培養した。
(スクリーニング)
融合細胞を分注した各ウェルの培養上清を採取し、抗体力価をトリプシンとの反応性を指標に確認した。そして抗体産生クローンの細胞を継代培養し、限界希釈法によりクローニングを行った。得られた単一コロニー由来の細胞を抗ヒトトリプシンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとした。
(モノクローナル抗体調製)
次に得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを大量培養した。予め腹腔内にプリスタン(Sigma-Aldrich社製)を投与し、BALB/cマウスに対し、ハイブリドーマを投与した。10~25日間飼育し、腹水の貯留を待った後、腹水を採取し、得られた腹水抗体を硫安塩析、アフィニティー精製を行うことによりマウス抗ヒトトリプシンモノクローナル抗体を取得した。
(モノクローナル抗体の組合せ予備検討)
上記で得られた複数のモノクローナル抗体について、各抗体をラテックスに感作し、ラテックスの凝集のシグナル強度を指標に、シグナルが大きくエピトープが異なると考えられる2種類の抗体A、抗体Bの組合せを得た。
【0049】
<抗体感作>
以下の材料および方法にしたがって、抗体A感作ラテックスα液、抗体B感作ラテックスβ液を調製した。
(材料)
・ラテックス液:ラテックス(JSR製、商品名:IMMUNTEX)、平均粒子径351 nm、固形分:10%
・抗体A溶液:5.0mg/mL 抗体A、40mM NaCl、20mM HEPES(pH7.4)
・抗体B溶液:4.5mg/mL 抗体B、40mM NaCl、20mM HEPES(pH7.4)
・MES緩衝液:1%BSA、20mM MES(pH6.0)、0.05%NaN
・HEPES緩衝液:2%BSA、20mM HEPES(pH7.0)、150mM NaCl 0.05%NaN
(方法)
ラテックス液(10%w/vol)500μLと抗体A溶液(4.9mg/mL)500μLを混和し、20℃で90分間振とう撹拌した。また、別途、同様に調製した混合液に、抗体B溶液(4.38mg/mL)550μLを追加し、20℃で90分間振とう撹拌した。
得られた混合液を、遠心分離機(ローター:R15A(HI抗体ACH))を用いて、10000rpmの条件で、10℃で30分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、得られた沈査にMES緩衝液25mLを添加し、ソニケーションにて分散した。その後、37℃で60分間振とう撹拌した。
得られた分散液を、同遠心分離機を用いて、10000rpmの条件で、10℃で30分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、得られた沈査にHEPES緩衝液50mLを添加し、ソニケーションにて分散させ、各抗体感作ラテックスα、β液を得た。
【0050】
<測定用試薬>
下記の組成を有する試薬Aおよび試薬Bを調製した。試薬Aは、各構成成分を所定の量または濃度になるように混合することにより調製した。試薬Bは、各抗体感作ラテックスα、β液を等量の割合で混合し、さらに他の構成成分を所定の量または濃度になるように混合して調製した。
(1)試薬A
(組成)
・0%、0.3%、0.5%、0.75%または1.0%Tween20、
・0.5%ポリエチレングリコール(PEG)(5000~50000)、
・0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、
・150mM NaCl、
・0.09%NaN
・100mM HEPES緩衝液(pH7.6)
(2)試薬B
(組成)
・0.5%BSA、
・150mM NaCl、
・0.09%NaN
・100mM HEPES緩衝液(pH7.0)
・抗体A感作ラテックスα液
・抗体B感作ラテックスβ液
【0051】
[試験例1]
(1)以下の各血清試料を4μLとり、これに上記実施例1の試薬A(0%、0.3%、0.5%、0.75%または1.0%Tween20)96μLを加えて混和し、37℃で約5分間加温した。この混合液に試薬B 24μLを加えて混和し、37℃で約5分間 反応後の波長700nmの吸光度を測定した。
・血清1:市販のプール血清(Biopredic社製、商品名:Human Serum)
・血清2:膵癌患者(男性、65歳)より調製した血清
・血清3:急性膵炎患者(男性、36歳)より調製した血清
・血清4:慢性膵炎患者(女性、79歳)より調製した血清
(2)試料の代わりにトリプシン標準液を用いて、上記(1)と同様に操作し、吸光度を求めて検量線を作成した。
(3)上記(2)で得られた検量線に試料の吸光度をあてはめ、各血清試料の各界面活性剤濃度(0%、0.3%、0.5%、0.75%または1.0%Tween20)の試薬における試料中のトリプシン濃度を求めた。その結果を図1に示す。
図1に示されるとおり、いずれの血清試料においても、界面活性剤を含む試薬において、トリプシン濃度が一定の値となった。
図1