(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】車両用表示装置、表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230926BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230926BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230926BHJP
B60Q 1/50 20060101ALI20230926BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/16 C
B60R11/02 C
B60K35/00 A
B60K35/00 Z
B60Q1/50 Z
B60Q1/00 G
(21)【出願番号】P 2022080072
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2018005818の分割
【原出願日】2018-01-17
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章
(72)【発明者】
【氏名】安藤 栄祐
(72)【発明者】
【氏名】早島 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 早紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 真央
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140929(JP,A)
【文献】特開2016-100028(JP,A)
【文献】特開2017-043138(JP,A)
【文献】特開2003-081040(JP,A)
【文献】特開2009-252003(JP,A)
【文献】特開2011-065561(JP,A)
【文献】特開2007-121798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60R 9/00 - 11/06
B60K 35/00 - 37/06
B60Q 1/00 - 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示可能とされ、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示することが可能な表示手段を備え、
前記伝達情報には、車両がどのように運転制御されているかを示す情報
、前記車両の運転履歴に応じて物理的に変化する
タイヤ及びブレーキパッドの摩耗状況を含む運転制御情報
、前記車両の搭乗者の運転習熟度を定量的に示す指標、前記車両の走行地域における前記搭乗者の運転頻度、前記搭乗者の年齢、体温、心拍数及び目線の動きを含む生体情報、並びに、前記車両の周囲の状況を示す環境情報が含まれ、
前記環境情報及び前記運転制御情報は、通信手段によって、後続車両の車内に表示可能な情報として、前記後続車両へ送信可能である、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記重要度が高い情報は、前記複数の伝達情報同士の重要度を比較することにより相対的に判断される、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記伝達情報が前記搭乗者の非正常状態に起因する場合は、前記伝達情報を前記重要度が高い情報として判断する、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記複数の伝達情報同士のうち、新しい情報を前記重要度が高い情報として判断する、
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
重要度が高い情報を表示させる場合は、前記表示手段の表示領域を拡大させる、
請求項1~4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記伝達情報には前記車両の搭乗者の意図を示す所望の情報が含まれる、
請求項1~5の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置、表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の一部に文字列や画像を装飾等のために表示することがある。例えば下記特許文献1には、乗員の身元情報や広告などを、外部から見えるディスプレイ装置に表示するパーソナライズド車両用ディスプレイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のパーソナライズド車両用ディスプレイでは、車両用センサによって検出された乗員の身元に関する情報がディスプレイに表示される。しかしこれらの表示は、ディスプレイが搭載された車両や周囲の車両の運転に寄与することは難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、自車両に乗車している運転者及び他車両に乗車している運転者の少なくとも一方に対して、走行上役立つ情報を表示できる車両用表示装置、表示方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の車両用表示装置は、車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示可能とされ、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示することが可能な表示手段を備える。
請求項1の車両用表示装置は、車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示可能とされ、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示することが可能な表示手段を備え、前記伝達情報には、車両がどのように運転制御されているかを示す情報、前記車両の運転履歴に応じて物理的に変化するタイヤ及びブレーキパッドの摩耗状況を含む運転制御情報、前記車両の搭乗者の運転習熟度を定量的に示す指標、前記車両の走行地域における前記搭乗者の運転頻度前記搭乗者の年齢、体温、心拍数及び目線の動きを含む生体情報、並びに、前記車両の周囲の状況を示す環境情報が含まれ、前記環境情報及び前記運転制御情報は、通信手段によって、後続車両の車内に表示可能な情報として、前記後続車両へ送信可能である。
一態様の車両用表示装置は、車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示可能とされ、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示することが可能な表示手段を備え、前記伝達情報には、前記車両の搭乗者の運転習熟度を定量的に示す指標、前記車両の走行地域における前記搭乗者の運転頻度及び前記搭乗者の生体情報が含まれる。
一態様の車両用表示装置は、車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示可能とされ、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示することが可能な表示手段を備え、前記伝達情報には、前記車両の周囲の状況を示す環境情報が含まれると共に、前記環境情報は、通信手段によって、後続車両の車内に表示可能な情報として、前記後続車両へ送信可能である。
請求項2の車両用表示装置は、請求項1に記載の車両用表示装置において、前記重要度が高い情報は、前記複数の伝達情報同士の重要度を比較することにより相対的に判断される。
請求項3の車両用表示装置は、請求項1に記載の車両用表示装置において、前記伝達情報が前記搭乗者の非正常状態に起因する場合は、前記伝達情報を前記重要度が高い情報として判断する。
請求項4の車両用表示装置は、請求項1~3の何れか1項に記載の車両用表示装置において、前記複数の伝達情報同士のうち、新しい情報を前記重要度が高い情報として判断する。
請求項5の車両用表示装置は、請求項1~4の何れか1項に記載の車両用表示装置において、重要度が高い情報を表示させる場合は、前記表示手段の表示領域を拡大させる。
一態様の車両用表示装置は、車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示可能とされ、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示することが可能な表示手段を備え、前記伝達情報には少なくとも車両の外部へ向けて安全上の注意を喚起するテキスト情報が含まれる。
請求項6の車両用表示装置は、請求項1~5の何れか1項に記載の車両用表示装置において、前記伝達情報には前記車両の搭乗者の意図を示す所望の情報が含まれる。
一態様の表示方法は、制御装置が、車両用表示装置における表示手段に車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示すると共に、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示する、と共に、前記伝達情報には少なくとも車両の外部へ向けて安全上の注意を喚起するテキスト情報が含まれる、表示方法。
一態様のプログラムは、車両用表示装置における表示手段に車両の外部へ向けて複数の伝達情報を表示すると共に、前記複数の伝達情報のうち重要度が高い情報を、他の伝達情報より大きく表示する又は他の伝達情報の上方に表示する工程を、制御装置に実行させると共に、前記伝達情報には少なくとも車両の外部へ向けて安全上の注意を喚起するテキスト情報が含まれる。
【0007】
一態様の車両用表示装置は、車両がどのように運転制御されているかを示す情報及び前記車両の走行状態に影響を与える可能性がある前記車両に起因した情報を含む運転制御情報を、前記車両の走行中に前記車両の外部及び内部の双方へ向けて表示可能な表示手段と、前記運転制御情報を基に、前記表示手段へ表示する情報を決定する制御装置と、を備えている。
【0008】
一態様の車両用表示装置では、車両の運転制御情報を、表示手段によって車両の外部又は内部の少なくとも一方へ向けて表示する。例えば、車両が自動運転制御されている場合、その旨を車両の外部へ表示する。また、自動運転制御されている車両が進路変更する際に、その旨を車両の外部へ表示する。あるいは減速中に、その旨を車両の外部へ表示する。これにより、他車両に乗車している運転者の運転を補助できる。さらに、車両が手動運転されている場合、アクセルやブレーキの効き具合やハンドルの重さなど、車両の走行状態に影響を与える可能性がある情報を車両の内部へ表示する。これにより、自車両に乗車している運転者の運転を補助できる。
一態様の車両用表示装置は、前記車両がどのように運転制御されているかを示す情報は、前記車両が自動運転モードか手動運転モードかを示す情報、及び、前記車両の搭乗者又は自動運転制御機器の指示によって前記車両がどのように運転制御されているかを示す情報を含み、前記車両に起因した情報は、運転履歴に応じて物理的に変化する部品の状態に関する情報を含む。
【0009】
一態様の車両用表示装置は、前記車両の搭乗者情報を取得する搭乗者情報取得手段と、前記車両の周囲の環境情報を取得する環境情報取得手段と、を備え、前記表示手段は、前記搭乗者情報及び前記環境情報の少なくとも一方を表示する。
【0010】
一態様の車両用表示装置は、搭乗者情報取得手段により取得した搭乗者情報を、車両の外部又は内部の少なくとも一方へ向けて表示する。例えば手動運転時に、搭乗者情報として搭乗者の運転履歴、習熟度又は居住地等を車両の外部へ向けて表示する。これにより、他車両に乗車している運転者へ注意を喚起する。また、搭乗者情報として運転者の運転頻度、体調等の生体情報を車両の内部へ向けて表示する。これにより、自車両に乗車している運転者へ注意を喚起する。
【0011】
また、車両用表示装置は、環境情報取得手段により取得した環境情報を、車両の外部又は内部の少なくとも一方へ向けて表示する。例えば環境情報として車間距離を車両の内部へ向けて表示する。これにより、自動運転時に自車両に乗車している搭乗者へ安心感を与えられる。又は手動運転時に自車両に乗車している運転者へ注意喚起できる。また、例えば自動運転時において、環境情報として障害物を認識している際は、その旨を車両の外部へ向けて表示する。これにより、周囲の歩行者や他車両に乗車している運転者は安心感を得ることができる。
一態様の車両用表示装置は、前記搭乗者情報取得手段は、前記搭乗者情報として、搭乗者の運転履歴、地理情報及び生体情報を取得可能とされ、前記環境情報取得手段は、前記環境情報として、前記車両の外部における定着物の位置情報、動きがある物体の位置情報、速度情報及び加速度情報、並びに、前記車両から離れた場所の遠距離情報を取得可能とされている。
【0012】
一態様の車両用表示装置は、前記運転制御情報、前記搭乗者情報及び前記環境情報から重要度が高い情報を選択する選択手段を備え、前記表示手段は選択された情報を表示する。
【0013】
一態様の車両用表示装置は、選択手段によって、運転制御情報、搭乗者情報及び環境情報から重要度が高い情報を選択する。例えば環境情報として渋滞情報を取得し、搭乗者情報として運転者が眠気を感じている情報を取得した場合、眠気を感じている情報の重要度が高いと判断し、表示手段に表示させる。これにより、自車両に乗車している搭乗者に適切な注意喚起を行える。
【0014】
一態様の車両用表示装置では、前記選択手段は、前記運転制御情報、前記搭乗者情報及び前記環境情報のうち新しい情報を重要度が高いと判断する。
【0015】
一態様の車両用表示装置では、選択手段は、新しい情報を重要度が高いと判断する。例えば、環境情報としての経路上の工事情報、当該工事による渋滞情報、当該渋滞による事故情報は、工事情報より渋滞情報が新しく、渋滞情報より事故情報が新しい。このため選択手段は、工事情報より渋滞情報の重要度が高く、渋滞情報より事故情報の重要度が高いと判断する。このように、新しい情報を重要度が高いと判断することで、緊急性のある情報を適切に表示できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車両用表示装置によると、自車両に乗車している運転者及び他車両に乗車している運転者の少なくとも一方に対して、走行上役立つ情報を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用表示装置が搭載された車両の概略を示す平面図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る車両用表示装置においてリアウィンドウに形成された表示部の位置の一例を示す車両背面図であり、(B)はフロントバンパーに形成された表示部の位置の一例を示す車両正面図であり、(C)はフロントドア及びリアドアに形成された表示部の位置の一例を示す車両側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用表示装置においてフロントウィンドウ及びインストルメントパネルに形成された表示部の位置の一例を示す斜視図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る車両用表示装置においてリアウィンドウの表示部に表示される情報の一例を示す車両背面図であり、(B)はフロントウィンドウの表示部に表示される情報の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用表示装置における通信手段が後続車両へ情報を送信している状態を示す斜視図である。
【
図6】(A)本発明の実施形態に係る車両用表示装置における表示部において重要度が相対的に低い情報から高い情報へ表示を切り替える例を示した正面図であり、(B)は重要度が相対的に高い情報を低い情報の上方に表示する例を示した正面図であり、(C)は重要度が相対的に高い情報を低い情報より大きく表示する例を示した正面図であり、(D)は本発明の実施形態に係る車両用表示装置における表示部を、自動表示エリアと任意表示エリアに分割した例を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両用表示装置を搭載した車両の走行時における情報表示方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<車両用表示装置>
本発明の実施形態に係る車両用表示装置20は、例えば自動運転制御されている車両が、自動運転中であることを車両の外部へ向けて表示するための情報伝達用表示装置である。また車両用表示装置20は、手動運転している運転者の運転習熟度を車両の外部へ向けて表示したり、事故情報を車両の内部へ向けて表示することもできる。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用表示装置20は、運転決定手段30、運転制御情報取得手段40、搭乗者情報取得手段50、環境情報取得手段60、通信手段70、制御装置80及び表示手段90を備えている。以下の説明においては、まず、車両用表示装置20を構成するこれらの各手段の構成と機能についてそれぞれ説明し、次いで、車両用表示装置20を搭載した車両10の走行時における情報表示方法の一例をフローチャートを用いて説明する。
【0020】
(表示手段)
表示手段90は、後述する運転制御情報、搭乗者情報、環境情報を車両10の外部又は内部へ向けて表示するディスプレイ装置である。表示手段90は、制御装置80から電気信号を受け取って、表示部へ画像、映像、文字、図形又は色彩若しくはこれらの組み合わせを表示させる。
【0021】
図2(A)に示す表示部92Aは、車両10のリアウィンドウに形成されたディスプレイである。表示部92Aは、車両10の後続車両や、歩道を歩く歩行者等へ向けて情報を表示するディスプレイである。
【0022】
図2(B)に示す表示部92Bは、車両10のフロントバンパーに形成されたディスプレイである。表示部92Bは、車両10の前方を走行する車両や、歩道を歩く歩行者等へ向けて情報を表示するディスプレイである。
【0023】
図2(C)に示す表示部92Cは、車両10のフロントドア及びリアドアに形成されたディスプレイである。表示部92Cは、歩道を歩く歩行者等へ向けて情報を表示するディスプレイである。
【0024】
さらに、
図3に示す表示部92Dは、車両10のフロントウィンドウに形成されたディスプレイである。また、92Eは、インストルメントパネルに形成されたディスプレイである。表示部92D、92Eは、車両10の内部の搭乗者へ向けて情報を表示するディスプレイである。
【0025】
これらのディスプレイは、格納可能又は常時露出した液晶画面や有機ELディスプレイでもよいし、表示面に図示しないプロジェクタで画像などを投影するもの(ヘッドアップディスプレイ等)でもよい。あるいは、リアウィンドウ又はフロントウィンドウを形成するガラスの内部に導電層を設け、この導電層に画像等を表示させるものでもよい。
【0026】
車両用表示装置20は、表示手段90として、表示部92(表示部92A~92Eを総称して表示部92と称す)の他、照明装置94を備えている。照明装置94は、LED光源と、LED光源の色相や光度を無断階調整し点灯、点滅を制御できる制御装置とを含んで構成されている。
【0027】
(運転決定手段)
図1に示す運転決定手段30は、車両10において運転席に着座している搭乗者が、車両の自動運転モードと手動運転モードとを切り替える運転切替装置である。運転決定手段30としては、例えば車両内部のインストルメントパネルに設置される切替ボタンを用いることができる。または、搭乗者の声を認識する音声認識装置を用いることもできる。
【0028】
運転決定手段30によって決定された運転モード(自動運転モードと手動運転モードの何れか)は、運転制御情報取得手段40に電気信号によって伝達される。
【0029】
(運転制御情報取得手段)
運転制御情報取得手段40は、車両10の運転制御情報を集約する情報集約装置である。また、運転制御情報取得手段40は、集約した運転制御情報を、制御装置80に電気信号で伝達する。
【0030】
「運転制御情報」とは、車両10の運転制御状態を示す情報であり、車両10がどのように運転制御されているかを示す情報としての「運転モード」及び「指示情報」並びに車両10の走行状態に影響を与える可能性がある情報としての「状態情報」を含む。
【0031】
「運転モード」とは、上述したように車両10が自動運転モードと手動運転モードのどちらの状態で運転制御されているかを示す情報である。「指示情報」とは、走行速度、加速度、ヘッドランプの点灯状態、ウィンカーによる方向指示の有無と方向など、搭乗者又は自動運転制御機器の指示によって車両10がどのように運転制御されているかを示す情報である。「状態情報」とは、タイヤやブレーキパッドの摩耗状況など、車両10の走行状態に影響を与える可能性のある情報(車両10に起因した情報)であり、運転履歴に応じて物理的に変化する各種部品の状態に関する情報である。状態情報は、例えばブレーキの利きやすさを運転者に示す指標として用いられる。
【0032】
運転制御情報は、制御装置80へ伝達された後、制御装置80によって表示の要否が決定され、表示手段90で表示される。例えば
図4(A)に示すように、表示部92Aに、運転モードとして「自動運転モード」と表示され、指示情報として「減速走行中」と表示される。これにより後続車両に注意を喚起できる。なお、表示の表現は文字に限定されず、記号や色などを組みあわせることができる。
【0033】
(搭乗者情報取得手段)
搭乗者情報取得手段50は、搭乗者に関する情報を得るための情報取得装置の総称である。搭乗者情報取得手段50は、取得した搭乗者情報を、制御装置80に電気信号で伝達する。
【0034】
「搭乗者情報」とは、運転者や運転者以外の搭乗者の属性や状態を示す情報であり、「運転履歴」、「地理情報」、「生体情報」を含む。
【0035】
「運転履歴」とは、運転席に着座した搭乗者(運転者)が免許を取得してから現在まで運転した総運転距離、運転頻度、運転車種等、運転者の運転に関する習熟度を定量的に示す指標である。「地理情報」とは、運転者の居住地や、現在の走行地域における運転頻度などの情報である。この地理情報を元に、制御装置80が、運転者の土地勘を判断する。
【0036】
運転履歴や地理情報は、運転者が携帯するIDカードやチップ等の識別票に記録され、随時更新されている。搭乗者情報取得手段50は読取端末を備えており、この読取端末が識別票に記録された情報を読み取って運転履歴を取得する。なお、運転履歴や地理情報は、車両10に搭載されたメモリに保存され、随時更新されるものとしてもよい。
【0037】
「生体情報」とは、搭乗者の年齢、体温、心拍数、目線の動きなどの情報である。この生体情報を元に、制御装置80が、搭乗者の体調、緊張状態、眠気、又は睡眠中か否か等を判断する。
【0038】
生体情報は、上述した読取端末を用いて識別票から読み取る他、搭乗者が着座するシートに埋設された熱電対、赤外線センサ、目線追尾装置、搭乗者の手首や首元に取付けた各種センサ等を用いて読み取ることができる。
【0039】
これらの搭乗者情報は、制御装置80へ伝達された後、制御装置80によって表示の要否が決定され、表示手段90で表示される。例えば
図4(B)に示すように、表示部92Dに、生体情報として「居眠り注意」の文字が表示される。この文字は、点滅させて運転者の注意を喚起することができる。また、照明装置94によって、車両10の内部の環境色を変化させて運転者の注意を喚起することができる。
【0040】
なお、制御装置80へ伝達される生体情報は、例えば運転者の体温、目線の揺れ等である。制御装置80は、これらの情報を総合的に判断して、運転者が眠気を感じていると判断した場合、表示部92に適切な情報を表示させる。このように、表示部92に表示される情報は、搭乗者情報取得手段50等から直接伝達された情報だけではなく、直接伝達された情報から、制御装置80によって判断された推定情報(例えば「眠気を感じている」)を含む。また、この推定情報から、注意を喚起する言葉に変換された変換情報(例えば「居眠り注意!」)を含む。
【0041】
(環境情報取得手段)
環境情報取得手段60は、車両10の周囲の環境状況を把握するための情報取得装置の総称である。環境情報取得手段60は、取得した環境情報を、制御装置80に電気信号で伝達する。
【0042】
「環境情報」とは、車両10の外部の情報である。環境情報としては、車両10の周囲に存在する道路、建物、ガードレール等の土地への「定着物の位置情報」が含まれる。また、周囲の車両、自転車、歩行者、動物、落下物等の「動きがある物体の位置情報」や「速度情報」及び「加速度情報」が含まれる。
【0043】
位置情報、速度情報、加速度情報は、車両10の外部に向けて設置したカメラ、加速度センサ、赤外線センサ等を用いて取得することができる。
【0044】
また、環境情報としては、道路の渋滞情報、事故情報等、車両10の近辺から得られ難い、車両10から離れた場所の「遠距離情報」が含まれる。遠距離情報は、後述する通信手段70を用いて取得することができる。
【0045】
(通信手段)
通信手段70は、運転制御情報取得手段40、搭乗者情報取得手段50、環境情報取得手段60として機能する。通信手段70は、運転制御情報、搭乗者情報、環境情報を車両の外部から無線通信によって受信したり、車両の外部へ送信する情報授受装置である。
【0046】
上述した運転制御情報における状態情報は、車両10に搭載されたメモリに保存できるほか、通信手段70を用いてインターネットサーバーに保存し、随時更新することができる。また、上述した搭乗者情報における運転履歴や地理情報も、通信手段70を用いてインターネットサーバーに保存して随時更新することができる。
【0047】
またさらに、環境情報における遠距離情報は、通信手段70を用いてインターネットサーバーや、周囲の車両との通信によって得ることができる。インターネットサーバーから遠距離情報を得る場合、通信手段70は、インターネットサーバー上にアップロードされている情報を受信する。
【0048】
通信手段70は、環境情報における位置情報、速度情報、加速度情報や、運転制御情報、搭乗者情報を車両の外部へ送信することができる。例えば
図5に示すように、車両10のリアウィンドウに表示している情報を、車両10の後続車両へ送信して、後続車両11のフロントウィンドウの表示部92Dや、インストルメントパネルに表示させることができる。これにより、例えば車両10のリアウィンドウが直射日光に照らされている場合や豪雨時等、表示情報が後続車両の内部から視認しにくい場合等においても、必要な情報を後続車両へ伝達できる。
【0049】
(制御装置)
本発明における選択手段の一例としての制御装置80は、運転制御情報取得手段40、搭乗者情報取得手段50、環境情報取得手段60及び通信手段70から伝達された情報(運転制御情報、搭乗者情報、環境情報)を元に、表示手段90で表示する内容を決定する制御装置である。なお、以下の説明においては、運転制御情報取得手段40、搭乗者情報取得手段50、環境情報取得手段60及び通信手段70を総称して、情報取得機器類と記載することがある。
【0050】
制御装置80は、情報取得機器類から伝達された情報の中から重要度が高いものを選択して、表示手段90に表示させる。例えば環境情報として渋滞情報を取得し、搭乗者情報として運転者が眠気を感じている情報を取得した場合、眠気を感じている情報の重要度が高いと判断し、表示手段に表示させる。これにより、搭乗者に適切な注意喚起を行える。
【0051】
なお、重要度の高低が反映された表示方法としては、
図6(A)に示すように、相対的に重要度が低い情報(例えば「10km先渋滞」)を消して、相対的に重要度が高い情報(例えば「居眠り注意」)を表示する方法がある。または、
図6(B)に示すように、表示部92Dの表示領域を広げて、相対的に重要度が高い情報を重要度が低い情報の上方に表示する方法がある。または、
図6(C)に示すように、相対的に重要度が高い情報を、重要度が低い情報より大きく表示する方法がある。
【0052】
また、制御装置80は、情報取得機器類から伝達された情報の内容に応じて、別の情報の重要度を判断する。
【0053】
一例として、制御装置80が、搭乗者情報取得手段50から、搭乗者情報として、運転者が車種の異なる車両(以下、車両Aとする)を運転していた期間が長いという情報が伝達された場合について説明する。この場合、制御装置80は、車両10において、車両Aとの差異が大きい部分(例えばブレーキの利き具合、加速のスピード)を、重要度が高い運転制御情報と判断する。そして表示手段90が、選択された情報を車両10の内部(例えば表示部92D)へ表示する。これにより、運転者はアクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み力を調整できる。
【0054】
また一例として、制御装置80が、運転制御情報取得手段40から、車両10が自動運転モードであることを伝達された場合について説明する。この場合、制御装置80は、自動運転制御されていること自体を、重要度が高い情報として選択する。そして表示手段90が、選択された情報を車両の外部(例えば表示部92A)へ表示する。
【0055】
またさらに一例として、制御装置80が、運転制御情報取得手段40から、車両10が手動運転モードであることを伝達された場合について説明する。この場合、制御装置80は、搭乗者情報のうち、運転履歴、習熟度又は居住地等を、重要度が高い情報として選択する。そして表示手段90が、選択された情報を車両の外部(例えば表示部92A)へ表示する。
【0056】
また、制御装置80は、運転制御情報、搭乗者情報及び環境情報のうち新しい情報を重要度が高いと判断する場合がある。
【0057】
例えば、環境情報としての経路上の工事情報、当該工事による渋滞情報、当該渋滞による事故情報では、工事情報より渋滞情報が新しく、渋滞情報より事故情報が新しい。このため選択手段は、工事情報より渋滞情報の重要度が高く、渋滞情報より事故情報の重要度が高いと判断する。このように、新しい情報を重要度が高いと判断することで、緊急性のある情報を適切に表示できる。
【0058】
このように、複数の情報を組み合わせて重要度を判断することで、表示手段に適切な情報を表示させることができる。
【0059】
なお、制御装置80が重要度の高いものを選択する方法としては様々な方法を採用できる。例えば、制御装置80のメモリに、情報機器類から伝達される可能性のある情報と、点数化されたそれぞれの情報の重要度とを、予め保存しておく。複数の情報が情報取得機器類から伝達された場合に、それらの重要度を比較して、表示内容を決定する。
【0060】
また、制御装置80に、複数の情報が伝達された場合毎にそれぞれの重要度を比較するアルゴリズムをプログラムしておいてもよい。または制御装置80に人工知能を搭載して最適な表示を選択することもできる。
【0061】
さらに、制御装置80には、搭乗者が直接表示内容を指示することもできる。例えば後続車両に感謝の意図を伝えたい場合や、急停車する必要がある場合などは、搭乗者が制御装置80に、表示させたい表示部92(表示部92A~92E)と、表示させたい内容を入力できる。入力の方法はタッチパネルによる入力、音声による入力、複数の選択肢の中から選択する入力など、様々な方法を採用できる。
【0062】
このように、搭乗者が所望の情報を任意のタイミングで伝達するために、例えば
図6(D)に示すように、表示部92Aを、自動表示エリア92A1と、任意表示エリア92A2に分割してもよい。
【0063】
またさらに、制御装置80は、表示部92に各種の情報を表示するタイミングを決定できる。例えば車両10の周囲に他の車両や歩行者がいない場合は、制御装置80は、表示部92A~92Cに情報を表示させない。環境情報取得手段60によって、他の車両や歩行者が近接してきたとの情報が伝達された場合に、制御装置80は、表示部92A~92Cに情報を表示させる。このように、情報を常時表示させないことで、消費電力を低減できる。
【0064】
<表示方法>
車両用表示装置20を搭載した車両10の走行時における情報表示方法の一例をフローチャートを用いて説明する。
【0065】
図7に示すステップ100において、搭乗者が
図1に示す車両10に着席する。
【0066】
次に、ステップ102において、搭乗者情報取得手段50が、搭乗者情報を取得する。搭乗者情報は、制御装置80へ伝達される。
【0067】
次に、ステップ104において、搭乗者が、運転決定手段30を用いて、車両10の運転モードを決定する。決定された運転モードは、運転制御情報取得手段40へ伝達され、さらに制御装置80へ伝達される。
【0068】
次のステップ106で、車両10が走行を開始する。
【0069】
次のステップ108において、環境情報取得手段60が、他の車両や歩行者等が車両10へ近接してきたことを検知すると、ステップ110に進む。本実施形態においては、例えば車両10の後ろに他の車両が近接してきた場合について説明する。
【0070】
ステップ110では、制御装置80が、車両10の運転モードに応じて表示部92A(
図2(A)参照)に表示する内容を判断する。車両10が自動運転モードの場合、ステップ112に進む。車両10が自動運転モードでなく、手動運転モードの場合、ステップ114に進む。
【0071】
ステップ112では、制御装置80が、表示部92Aに、車両10が自動運転モードであることを表示させる。これにより、車両10の後続車両の運転者に対して注意を喚起できる。例えば後続車両の運転者は、車両10の運転者がハンドルから手を離している姿を視認しても、危険な状態ではないことを推察できる。これにより後続車両の運転者は平常心を維持し易い。
【0072】
そして、ステップ116において、車両10の後ろの車両の近接状態が保持されているかどうかを判断し、近接状態が保持されている場合はステップ112に戻って、表示をし続ける。近接状態が保持されていない、つまり車両10の後ろに別の車両がいなくなった場合は、ステップ120に進んで、表示を消す。
【0073】
ステップ114では、制御装置80が、表示部92Aに、車両10の搭乗者情報を表示させる。これにより、車両10の後続車両の運転者に対して注意を喚起できる。例えば車両10の運転者の運転経験が少ない場合、後続車両の運転者は、走行速度を落としたり車間距離を広めにとるなどの対応ができる。
【0074】
そして、ステップ118において、車両10の後ろの車両の近接状態が保持されているかどうかを判断し、保持されている場合はステップ114に戻って、表示をし続ける。保持されていない、つまり車両10の後ろに別の車両がいなくなった場合は、ステップ120に進んで、表示を消す。
【0075】
なお、ステップ112、114でそれぞれ表示される運転モード、搭乗者情報は、制御装置80が相対的に重要度が高いと判断した情報に置き換えられる場合がある。例えば、環境情報取得手段60からの情報により、後続車両が車間距離を詰め過ぎであると制御装置80が判断した場合は、表示部92Aに、運転モード、搭乗者情報に代えて、車間距離を空けるように促す文字や記号を表示する場合がある。
【0076】
あるいは、車両10の前に子供や動物が飛び出してきて急ブレーキを踏んだ場合、運転制御情報取得手段40からブレーキ情報が制御装置80へ伝達される。この場合、後続車両へ向けて、表示部92Aに、衝突に注意する旨の文字や記号を表示する場合がある。
【0077】
ステップ120で表示が消された後は、ステップ108に戻り、再び車両10に後続車両や歩行者が近づいてきた際に、表示を再開する。
【0078】
なお、通信手段70が、事故情報などの環境情報や、前方車両からの搭乗者情報や運転モードを受信した際には、
図7に示すステップに関わらず、例えば表示部92D(
図3参照)に、当該情報を表示する場合がある。複数の情報を受信した場合の情報表示の優先度は、制御装置80が判断する。これにより、車両10が手動運転されている場合、車両用表示装置20は、運転者の運転補助ができる。
【0079】
なお、本実施形態において、運転制御情報取得手段40は、運転制御情報として上述した運転モード、指示情報、状態情報を含む多くの情報を集約することが好ましいが、本発明の実施形態はこれに限らない。車両用表示装置20が自動運転機能を持つ車両に適用される場合、運転制御情報取得手段40は、少なくとも車両10の「運転モード」を取得できればよい。この場合、表示部92として、表示部92A(
図2(A)参照)のみを備えるものとしてもよい。
【0080】
また、車両用表示装置20が自動運転機能を持たない車両に適用される場合、運転制御情報取得手段40は、少なくとも、タイヤ、ブレーキパッドなどの摩耗状況、ダンパーの弾性率など、運転履歴に応じて物理的に変化する各種部品の状態に関する「状態情報」を取得できればよい。この場合、表示部92として、表示部92D又は表示部92E(
図3参照)のみを備えるものとすることができる。すなわち、表示部92は、車両の外部又は内部の少なくとも一方へ向けて表示するものであればよい。
【0081】
さらに、本実施形態における車両用表示装置20は、運転決定手段30、運転制御情報取得手段40、搭乗者情報取得手段50、環境情報取得手段60、通信手段70、制御装置80及び表示手段90の全てを備えているが、本発明の実施形態はこれに限らず、少なくとも運転制御情報取得手段40、制御装置80及び表示手段90を備えていればよい。
【0082】
自動運転機能を持たない車両においては、運転決定手段30は省略できる。また、搭乗者情報を表示させない場合、搭乗者情報取得手段50は省略できる。さらに、環境情報を表示させない場合、環境情報取得手段60は省略できる。搭乗者情報や環境情報を表示させなくても、運転モードを外部に表示又は状態情報を内部に表示できればよい。
【0083】
またさらに、インターネットサーバーや周囲の車両と通信しない場合、通信手段70は省略できる。通信手段70を省略しても、運転モードは表示部92に表示可能である。また、状態情報を表示部92に表示可能である。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
20 車両用表示装置
40 運転制御情報取得手段
50 搭乗者情報取得手段
60 環境情報取得手段
80 制御装置(選択手段)
90 表示手段