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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】エレベータ装置及びかご位置登録方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20230926BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B66B3/02 P
B66B7/00 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023041461
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-03-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】横井 彰敏
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-17154(JP,A)
【文献】特開2021-127192(JP,A)
【文献】特開2018-177489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/02
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降するかごと、
前記かごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部と、
前記かごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部と、
前記第1の検出部が交換される前に前記第2の情報に基づく情報と前記かごの位置情報とを対応付けて記憶した記憶部と、
前記第1の検出部が交換された後、前記第2の情報を取得し、前記第2の情報に基づいて前記記憶部から前記位置情報を読み出し、読み出した前記位置情報と交換後の前記第1の検出部が出力した前記第1の情報に基づく情報とを対応付けて前記記憶部に記憶させる制御装置と
を備えたエレベータ装置。
【請求項2】
前記第1の検出部は、
前記昇降路内に吊り下げられる媒体と、
前記かごに設けられ、前記媒体を読み取り、前記第1の情報を出力する読取部と
を有し、
前記第2の検出部は、前記かごに接続された主ロープが巻き掛けられる綱車の回転量を検出し、前記第2の情報を出力するエンコーダである請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記第1の検出部は、前記かごに接続された主ロープが巻き掛けられる綱車の回転量を検出し、前記第1の情報を出力するエンコーダであり、
前記第2の検出部は、
前記昇降路内に吊り下げられる媒体と、
前記かごに設けられ、前記媒体を読み取り、前記第2の情報を出力する読取部と
を有する請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1の検出部が交換された後、前記かごの移動可能範囲の一端から他端に向かって前記かごが移動する間に、前記第2の情報を取得し、前記第2の情報に基づいて前記記憶部から前記位置情報を読み出し、読み出した前記位置情報と交換後の前記第1の検出部が出力した前記第1の情報に基づく情報とを対応付けて前記記憶部に記憶させる請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
昇降路内を昇降するかごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部と前記かごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部とを備えるエレベータ装置のかご位置登録方法であって、
記憶部が、前記第2の情報に基づく情報と前記かごの位置情報とを対応付けて記憶するステップと、
前記第1の検出部が交換された後、制御装置が、前記第2の検出部から出力される前記第2の情報を取得するステップと、
前記制御装置が、取得した前記第2の情報に基づいて、前記第1の検出部の交換前に前記記憶部に記憶された前記位置情報を読み出すステップと、
前記制御装置が、読み出された前記位置情報と交換後の前記第1の検出部が出力した前記第1の情報に基づく情報とを対応付けて前記記憶部に記憶させるステップと
を有するかご位置登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ装置及びかご位置登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ装置は、エレベータ装置を据え付けた後、きわめて低速でかごを移動させる学習走行がなされる。かごに取り付けられた磁気センサが昇降路に設けられた磁石を検出すると、読取部から出力された位置信号が適切なレジストリに登録され、これらの位置が認識される。なお、読取部は、かごに取り付けられ、昇降路の全長にわたり張られたベルトと係合して連続的に駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-343696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のエレベータ装置において、読取部又はベルトが交換された場合、読取部から出力される位置信号の位置を認識するために学習走行を再度実施する。学習走行では、きわめて低速でかごを移動させるため、位置信号の位置を認識するまでに時間がかかるという課題があった。
【0005】
本開示は上記の課題を解決するためになされたものであり、かごの位置を検出するための情報を出力する検出部の交換後、かごの位置登録を迅速に行うことができるエレベータ装置及びかご位置登録方法を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるエレベータ装置は、昇降路内を昇降するかごと、かごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部と、かごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部と、第1の検出部が交換される前に第2の情報に基づく情報とかごの位置情報とを対応付けて記憶した記憶部と、第1の検出部が交換された後、第2の情報を取得し、第2の情報に基づいて記憶部から位置情報を読み出し、読み出した位置情報と交換後の第1の検出部が出力した第1の情報に基づく情報とを対応付けて記憶部に記憶させる制御装置とを備えたエレベータ装置。
【0007】
本開示にかかるかご位置登録方法は、昇降路内を昇降するかごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部とかごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部とを備えるエレベータ装置のかご位置登録方法であって、記憶部が、第2の情報に基づく情報とかごの位置情報とを対応付けて記憶するステップと、第1の検出部が交換された後、制御装置が、第2の検出部から出力される第2の情報を取得するステップと、制御装置が、取得した第2の情報に基づいて、第1の検出部の交換前に記憶部に記憶された位置情報を読み出すステップと、制御装置が、読み出された位置情報と交換後の第1の検出部が出力した第1の情報に基づく情報とを対応付けて記憶部に記憶させるステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかるエレベータ装置及びかご位置登録方法は、かごの位置を検出するための情報を出力する検出部の交換後、かごの位置登録を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1におけるエレベータ装置の側面図である。
図2】実施の形態1におけるエレベータ装置の運転装置の正面図である。
図3】実施の形態1におけるエレベータ装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態1における記憶部に記憶されたデータを示す図である。
図5】実施の形態1における制御装置の制御を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1における制御装置の制御を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1における記憶部に記憶されたデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下に実施の形態1にかかるエレベータ装置及びかご位置登録方法を詳細に説明する。なお、各図面における同一の符号は同一又は相当の構成を表している。
【0011】
図1に示すように、エレベータ装置は、かご1、釣合おもり2、主ロープ3、かごガイドレール4、釣合おもりガイドレール5、巻上機6、そらせ車7、第2の検出部であるエンコーダ8、第1の検出部9、一対の終点スイッチ10、登録開始スイッチ11、運転装置14及び制御装置20を備える。なお、エンコーダ8及び登録開始スイッチ11は、図1への図示を省略している。
【0012】
昇降路12内には、かご1及び釣合おもり2が設けられる。かご1は、主ロープ3の一端に接続され、かごガイドレール4に沿って昇降路12内を昇降する。釣合おもり2は、主ロープ3の他端に接続され、釣合おもりガイドレール5に沿って昇降路12内を昇降する。主ロープ3は、巻上機6の綱車6a及びそらせ車7に巻き掛けられる。
【0013】
昇降路12の上部には、機械室13が設けられる。機械室13内には、巻上機6、そらせ車7及びエンコーダ8が設けられる。巻上機6は、綱車6a及びモータ(図示せず)を有しており、モータは綱車6aを回転させる。モータにはエンコーダ8が設けられる。エンコーダ8は、例えばインクリメンタル方式のロータリエンコーダである。エンコーダ8は、綱車6aの回転量を常に検出してパルス信号に変換し、入出力インタフェース(図示せず)を介して後述する取得部21に出力する。エンコーダ8から出力されるパルス信号は、かご1の位置を検出するための第2の情報に相当する。
【0014】
第1の検出部9は、昇降路12内に設けられる。第1の検出部9は、媒体であるコードテープ9a及び読取部9bを有する。コードテープ9aは、昇降路12内の高さ方向の頂部から底部まで延びるように、昇降路12内に吊り下げられる。コードテープ9aは、その表面に幾何学的パターンが表示されている。コードテープ9aは、昇降路12内の高さ方向における位置によって異なる幾何学的パターンを有している。読取部9bは、例えばかご1に設けられる画像センサである。読取部9bは、コードテープ9aの幾何学的パターンを常に読み取り、15桁の2進数のコードに変換して入出力インタフェースを介して後述する取得部21に出力する。2進数のコードは、かご1の位置を検出するための第1の情報に相当する。以下の説明において、2進数のコードをコードと呼ぶ。
【0015】
一対の終点スイッチ10は、昇降路12内に設けられる。一対の終点スイッチ10は、かごガイドレール4に支持される。一対の終点スイッチ10は、上部終点スイッチ10a及び下部終点スイッチ10bを有する。上部終点スイッチ10aは昇降路12内の頂部付近に設けられ、下部終点スイッチ10bは昇降路12内の底部付近に設けられる。一対の終点スイッチ10は、かご1に設けられたカム(図示せず)により操作されると、かご1を停止させることを示す電気信号である停止信号を後述する制御部24に出力する。そのため、かご1は、上部終点スイッチ10aより上方及び下部終点スイッチ10bより下方には進入することはない。言い換えると、かご1は、上部終点スイッチ10aと下部終点スイッチ10bとの間を移動する。以下の説明において、かご1が移動できる範囲を移動可能範囲と呼ぶ。移動可能範囲の一端とは、下部終点スイッチ10bが設けられた位置であり、移動可能範囲の他端とは、上部終点スイッチ10aが設けられた位置である。
【0016】
登録開始スイッチ11は、コードテープ9aの交換後に作業員により押され、かご1の位置登録を開始することを示す電気信号である登録開始信号を後述する取得部21に出力する。登録開始スイッチ11は、有線又は無線により制御装置20に接続される。
【0017】
運転装置14は、かご1の上部に設けられ、有線により制御装置20に接続される。図2に示すように、運転装置14は、上昇ボタン14a、下降ボタン14b及び登録ボタン14cを有する。運転装置14は、作業員により上昇ボタン14aが押されている間のみかご1を上方へ移動させることを示す電気信号である上移動信号を後述する制御部24に出力する。また、運転装置14は、作業員により下降ボタン14bが押されている間のみかご1を下方へ移動させることを示す電気信号である下移動信号を後述する制御部24に出力する。運転装置14は、作業員により登録ボタン14cが押されると、インクリメンタル値とかご1の位置情報とを対応付けて記憶部26に記憶させることを示す電気信号である登録信号を後述する登録部25に出力する。
【0018】
制御装置20は、機械室13内に設けられる。制御装置20は、半導体の集積回路を含むプロセッサ、メモリ、及び入出力インタフェースにより構成される制御基板等の装置であり、エレベータ装置全体を制御する。図3に示すように、制御装置20は、取得部21、演算部22、判定部23、制御部24、登録部25及び記憶部26を有する。
【0019】
取得部21は、エンコーダ8からパルス信号を取得するソフトウェアモジュール、読取部9bからコードを取得するソフトウェアモジュール、及び登録開始スイッチ11から登録開始信号を取得するソフトウェアモジュールを備える。
【0020】
演算部22は、取得部21が取得したパルス信号を積算し、インクリメンタル値を算出するソフトウェアモジュールを備える。演算部22により算出されたインクリメンタル値は、第2の情報であるパルス信号に基づく情報に相当する。
【0021】
判定部23は、コードテープ9aが交換されたかを判定するソフトウェアモジュール、及びかご1の位置登録を終了するかを判定するソフトウェアモジュールを備える。
【0022】
制御部24は、巻上機6を制御することで、かご1の運転を制御するソフトウェアモジュールを備える。
【0023】
登録部25は、記憶部26からかご1の位置情報を読み出すソフトウェアモジュール、及び読み出したかご1の位置情報と読取部9bが出力したコードとを対応付けて記憶部26に記憶させるソフトウェアモジュールを備える。また、登録部25は、演算部22が算出したインクリメンタル値とかご1の位置情報とを対応付けて記憶部26に記憶させるソフトウェアモジュールを備える。なお、かご1の位置情報とは、昇降路12内におけるかご1の位置を示す情報である。
【0024】
記憶部26は、揮発性又は不揮発性のメモリにより構成される記憶装置である。記憶部26は、インクリメンタル値とかご1の位置情報とを対応付けて記憶する。また、記憶部26は、コードとかご1の位置情報とを対応付けて記憶する。
【0025】
次に、かご1の位置登録方法について説明する。
【0026】
まず、記憶部26が、エンコーダ8から出力されるパルス信号に基づいて算出されるインクリメンタル値とかご1の位置情報とを対応付けて記憶する。公知の方法を適用し、記憶部26がインクリメンタル値とかご1の位置情報とを対応付けて記憶してよいが、以下にその一例を説明する。
【0027】
まず、エレベータ装置の据付後、移動可能範囲の一端にかご1を移動させる。次に、かご1が移動可能範囲の一端にある状態で作業者が運転装置14の登録ボタン14cを押す。登録ボタン14cが押されると、運転装置14は登録信号を登録部25に出力する。登録部25は、登録信号を受信した回数に応じて、インクリメンタル値とかご1の位置情報を記憶部26に記憶させる。例えば、登録部25が1回目の登録信号を受信したとき、そのとき演算部22が算出したインクリメンタル値である0と基準位置の位置情報とを対応付けて記憶部26に記憶させる。
【0028】
次に、運転装置14を用いてかご1を1階に配置する。具体的には、作業員が運転装置14の上昇ボタン14aを押す。運転装置14は、上昇ボタン14aが押されている間、上移動信号を制御部24に出力する。制御部24は、上移動信号を受信している間、巻上機6を制御してかご1を上方に移動させる。かご1が1階に到達したとき、作業員が上昇ボタン14aを離すと、運転装置14から上移動信号が出力されなくなる。制御部24は、上移動信号を受信しないため、巻上機6を制御してかご1を停止させる。
【0029】
次に、運転装置14を用いてかご1の位置登録をする。具体的には、作業員が運転装置14の登録ボタン14cを押す。登録ボタン14cが押されると、運転装置14は登録信号を登録部25に出力する。登録部25は、登録信号を受信した回数に応じて、インクリメンタル値とかご1の位置情報を記憶部26に記憶させる。例えば、登録部25が2回目の登録信号を受信したとき、そのとき演算部22が算出したインクリメンタル値である100と1階の位置情報とを対応付けて記憶部26に記憶させる。
【0030】
かご1を階床に配置し、かご1位置登録をする作業を全ての階床、並びに移動可能範囲の一端及び他端に対して実施すると、図4に示すように、記憶部26にインクリメンタル値とかご1の位置情報とが対応付けて記憶される。左列に演算部22が算出したインクリメンタル値を示し、右列にかご1の位置情報を示している。図4のうち、基準位置は、移動可能範囲の一端に相当し、終了位置は、移動可能範囲の他端に相当する。なお、図4では説明を簡単にするため、インクリメンタル値として100又は200等の区切りのいい値を示している。
【0031】
上述の方法において、運転装置14を操作してかご1を移動させる際のかごの速度は、定格速度よりも低速度の所定速度である。また、かご1の位置登録をする際、かご1を各階床に停止させる必要がある。そのため、上述の方法だと、かご1の位置を登録し終えるまでに時間がかかる。
【0032】
次に、作業員が第1の検出部9のコードテープ9aを交換する。コードテープ9aへの塵埃等の汚れの付着又はコードテープ9aの経年劣化等により読取部9bがコードテープ9aの幾何学的パターンを読み取れないことがある。そのため、作業員はコードテープ9aを適宜又は定期的に交換する。作業員がコードテープ9aを交換すると、登録開始スイッチ11を押す。登録開始スイッチ11が押されると、登録開始信号が出力される。なお、作業員は、第1の検出部9の読取部9bを交換してもよいし、コードテープ9a及び読取部9bを交換してもよい。
【0033】
最後に、制御装置20が以下の処理を実行する。制御装置20の処理について、図5を用いて説明する。なお、以下の処理は、コードテープ9aが交換された後に実行される処理である。
【0034】
ステップS10において、判定部23は、コードテープ9aが交換されたかを判定する。具体的には、取得部21が登録開始スイッチ11から登録開始信号を受信し、判定部23が登録開始信号の受信の有無を判定する。判定部23が登録開始信号を受信したと判定した場合は、処理をステップS11へ進める。判定部23が登録開始信号を受信していないと判定した場合は、処理をステップS10へ進める。
【0035】
ステップS11において、制御部24は、巻上機6を制御し、かご1を移動可能範囲の一端まで移動させる。具体的には、まず、制御部24が巻上機6を制御して、かご1を下方に移動させる。下部終点スイッチ10bがかご1に設けられたカムにより操作されると、停止信号を制御部24に出力する。制御部24は、停止信号を受信したとき、巻上機6を制御してかご1を停止させる。
【0036】
ステップS12及びステップS13は並行して実行される。つまり、移動可能範囲の一端から他端に向かってかご1が移動する間に、かご1の位置登録がなされる。
【0037】
ステップS12において、制御装置20は、かご1の位置登録をする。詳細な処理について、図6を用いて説明する。
【0038】
ステップS121において、取得部21は、エンコーダ8から出力されるパルス信号を取得する。
【0039】
ステップS122において、演算部22は、取得部21が取得したパルス信号を積算し、インクリメンタル値を算出する。
【0040】
ステップS123において、登録部25は、取得部21が取得したパルス信号に基づいて、コードテープ9aの交換前に記憶部26に記憶されたかご1の位置情報を読み出す。具体的には、登録部25は、パルス信号に基づいて算出されたインクリメンタル値に対応するかご1の位置情報が記憶部26に記憶されている場合、その位置情報を読み出し、処理をステップS124へ進める。例えば、インクリメンタル値が200の場合、登録部25はかご1の位置情報として2階を記憶部26から読み出す。登録部25は、パルス信号に基づいて算出されたインクリメンタル値に対応するかご1の位置情報が記憶部26に記憶されていない場合、かご1の位置情報を読み出さず、処理をステップS121へ進める。
【0041】
ステップS124において、登録部25は、かご1の位置情報と、コードテープ9aを交換した後に読取部9bが出力したコードに基づく情報とを対応付けて記憶部26に記憶させる。具体的には、取得部21が読取部9bからコードを取得する。そして、登録部25は、ステップS123で読み出したかご1の位置情報と読取部9bが出力したコードとを対応付けて記憶部26に記憶させる。なお、本実施の形態において、コードとコードに基づく情報とは、同一の情報を指す。
【0042】
ステップS121からS124の処理が繰り返し実行されると、図7に示すように、コードとかご1の位置情報とが対応付けて記憶部26に記憶される。左列に読取部9bが出力したコードを示し、右列にかご1の位置情報を示している。なお、図7では説明を簡単にするため、読取部9bが出力したコードとして4桁の2進数のコードを示している。
【0043】
ステップS125において、判定部23は、かご1の位置登録を終了するかを判定する。具体的には、ステップS123において読み出されたかご1の位置情報が終了位置の場合、判定部23はかご1の位置登録を終了すると判定し、処理を終了する。ステップS123において読み出されたかご1の位置情報が終了位置でない場合、判定部23はかご1の位置登録を終了しないと判定し、処理をS121へ進める。
【0044】
ステップS13において、制御部24は、かご1を移動可能範囲の他端まで移動させる。具体的には、まず、制御部24が巻上機6を制御して、かご1を上方に移動させる。上部終点スイッチ10aがかご1に設けられたカムにより操作されると、停止信号を制御部24に出力する。制御部24は、停止信号を受信したとき、巻上機6を制御してかご1を停止させる。
【0045】
このような実施の形態1にかかるエレベータ装置及びかご位置登録方法にあっては、コードテープ9aの交換後にかご1の位置登録をする際、かご1を各階床に停止させる必要がない。また、エンコーダ8が綱車6aの回転量を検出することができ、かつ、読取部9bが幾何学的パターンを読み取れる速度、例えば定格速度でかご1を移動させながらかご1の位置登録をすることができる。つまり、かご1を低速で移動させる必要がない。したがって、コードテープ9aが交換された後のかご1の位置登録を迅速に行うことができる。
【0046】
さらに、このような実施の形態1にかかるエレベータ装置にあっては、かご1の移動可能範囲の一端から他端に向かってかご1が移動する間に、かご1の位置登録をする。そのため、かご1が移動する方向を切り替えることなく、移動可能範囲の全領域をかご1が移動することができる。したがって、短時間でかご1の位置登録が完了する。
【0047】
なお、コードテープ9aが交換される例について説明したが、エンコーダ8が交換されてもよい。第1の検出部がエンコーダ8であり、第2の検出部がコードテープ9a及び読取部9bを有する場合、パルス信号が第1の情報に相当し、インクリメンタル値が第1の情報に基づく情報に相当し、コードが第2の情報及び第2の情報に基づく情報に相当する。
【0048】
エンコーダ8が綱車6aの回転量を検出してパルス信号に変換する例について説明したが、エンコーダ8が綱車6aの回転量を検出してパルス信号に変換し、パルス信号を積算してインクリメンタル値を算出してもよい。エンコーダ8は、インクリメンタル値を取得部21に出力する。この場合において、インクリメンタル値が第2の情報及び第2の情報に基づく情報に相当する。
【0049】
読取部9bがコードテープ9aの幾何学的パターンを読み取り、コードに変換して取得部21に出力する例について説明したが、読取部9bは幾何学的パターンを読み取って、取得部21に出力し、制御装置20でコードに変換してもよい。この場合において、幾何学的パターンが第1の情報に相当し、コードが第1の情報に基づく情報に相当する。
【0050】
なお、読取部9bが取得部21に出力するコードは、15桁の2進数のコードに限定されず、桁数が異なる2進数のコードであってもよい。また、2進数のコードでなくてもよく、例えば16進数のコードであってもよい。
【0051】
第1の検出部9又は第2の検出部は、かご1の位置を検出するための情報を出力するものであればよく、エンコーダ8並びにコードテープ9a及び読取部9bに限定されない。例えば、レゾルバであってもよい。
【0052】
エンコーダ8は、アブソリュート方式のロータリエンコーダであってもよい。
【0053】
なお、媒体は、電磁気的特性、光学的特性又は機械的な形状や性質等を利用して第1の情報を有していてもよい。また、読取部9bは、磁気センサ、磁歪センサ又は光学センサ等であってもよい。
【0054】
運転装置14は、無線により制御装置20に接続されてもよい。また、運転装置14が持ち運び可能な端末であってもよい。例えば、作業員が運転装置14を使用するときに運転装置14を制御装置20に接続してもよい。
【0055】
運転装置14が登録ボタン14cを有する例について説明したが、登録ボタン14cが他の機器に設けられてもよい。
【0056】
制御装置20が記憶部26を有する例について説明したが、記憶部26を制御装置20外に設け、記憶部26と制御装置20とを有線又は無線で接続してもよい。
【0057】
移動可能範囲の一端が、上部終点スイッチ10aが設けられた位置であり、移動可能範囲の他端が、下部終点スイッチ10bが設けられた位置であってもよい。また、移動可能範囲の一端が、昇降路12の底面であり、移動可能範囲の他端が昇降路12の天井であってもよい。
【0058】
インクリメンタル値及びコードが、かご1の位置情報として各階床の情報と対応付けて記憶される例について説明したが、かご1の位置情報として基準位置からの距離の情報等と対応付けて記憶されてもよい。
【0059】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
昇降路内を昇降するかごと、
前記かごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部と、
前記かごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部と、
前記第1の検出部が交換される前に前記第2の情報に基づく情報と前記かごの位置情報とを対応付けて記憶した記憶部と、
前記第1の検出部が交換された後、前記第2の情報を取得し、前記第2の情報に基づいて前記記憶部から前記位置情報を読み出し、読み出した前記位置情報と交換後の前記第1の検出部が出力した前記第1の情報に基づく情報とを対応付けて前記記憶部に記憶させる制御装置と
を備えたエレベータ装置。
(付記2)
前記第1の検出部は、
前記昇降路内に吊り下げられる媒体と、
前記かごに設けられ、前記媒体を読み取り、前記第1の情報を出力する読取部と
を有し、
前記第2の検出部は、前記かごに接続された主ロープが巻き掛けられる綱車の回転量を検出し、前記第2の情報を出力するエンコーダである付記1に記載のエレベータ装置。
(付記3)
前記第1の検出部は、前記かごに接続された主ロープが巻き掛けられる綱車の回転量を検出し、前記第1の情報を出力するエンコーダであり、
前記第2の検出部は、
前記昇降路内に吊り下げられる媒体と、
前記かごに設けられ、前記媒体を読み取り、前記第2の情報を出力する読取部と
を有する付記1に記載のエレベータ装置。
(付記4)
前記制御装置は、前記第1の検出部が交換された後、前記かごの移動可能範囲の一端から他端に向かって前記かごが移動する間に、前記第2の情報を取得し、前記第2の情報に基づいて前記記憶部から前記位置情報を読み出し、読み出した前記位置情報と交換後の前記第1の検出部が出力した前記第1の情報に基づく情報とを対応付けて前記記憶部に記憶させる請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ装置。
(付記5)
昇降路内を昇降するかごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部と前記かごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部とを備えるエレベータ装置のかご位置登録方法であって、
記憶部が、前記第2の情報に基づく情報と前記かごの位置情報とを対応付けて記憶するステップと、
前記第1の検出部が交換された後、制御装置が、前記第2の検出部から出力される前記第2の情報を取得するステップと、
前記制御装置が、取得した前記第2の情報に基づいて、前記第1の検出部の交換前に前記記憶部に記憶された前記位置情報を読み出すステップと、
前記制御装置が、読み出された前記位置情報と交換後の前記第1の検出部が出力した前記第1の情報に基づく情報とを対応付けて前記記憶部に記憶させるステップと
を有するかご位置登録方法。
【符号の説明】
【0060】
1 かご、3 主ロープ、6 巻上機、6a 綱車、8 エンコーダ、9a コードテープ、9b 読取部、12 昇降路、20 制御装置、26記憶部
【要約】
【課題】かごの位置を検出するための情報を出力する検出部の交換後、かごの位置登録を迅速に行うことができるエレベータ装置及びかご位置登録方法を得る。
【解決手段】エレベータ装置は、昇降路内を昇降するかご、かごの位置を検出するための第1の情報を出力する第1の検出部、かごの位置を検出するための第2の情報を出力する第2の検出部、記憶部及び制御装置を備える。記憶部は、第1の検出部が交換される前に第2の情報に基づく情報とかごの位置情報とを対応付けて記憶している。制御装置は、第1の検出部が交換された後、第2の情報を取得し、第2の情報に基づいて記憶部から位置情報を読み出し、読み出した位置情報と交換後の第1の検出部が出力した第1の情報に基づく情報とを対応付けて記憶部に記憶させる。
【選択図】図6
図1
図2
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図5
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図7