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  • 特許-流体の供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】流体の供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/04 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
F17C13/04 301B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021525425
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2019022980
(87)【国際公開番号】W WO2020250284
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】716001223
【氏名又は名称】合同会社パッチドコニックス
(72)【発明者】
【氏名】川口淳一郎
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-144878(JP,A)
【文献】特開2006-242225(JP,A)
【文献】特開2006-177536(JP,A)
【文献】特開2011-149502(JP,A)
【文献】特表2018-536115(JP,A)
【文献】特表2007-524201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるべき流体が収容された格納容器を有し、該流体を排出させる機能を発揮するための、開口部と操作部を除く手動の弁の主体と、ないし開口部を除く電気的に遠隔で操作する弁の主体と、同じく開口部を除く配管の主体と、該弁および該配管に接続される、熱交換器、該流体を一時的に貯蔵するための容器、圧力センサー、安全弁で構成される機構の全てが、該格納容器内部に構築され、該格納容器の外部には、露出する要素が、該流体を注液する開口部、あるいは該流体を排出する開口部、あるいは該流体を排出させるための、手動の弁にあっては、それらの操作部、あるいは該流体を排出させるための、電気的に遠隔で操作する弁にあっては、電気信号を交換するための端子盤類に限定される、構成様式を特徴とする、流体を供給する装置。
【請求項2】
前記流体を注液する入口と、同流体を排出する出口が同一である、請求項1の流体を供給する装置。
【請求項3】
前記流体を注液する入口と、同流体を排出する出口のいずれか、ないしは両方が省略された、請求項1の流体を供給する装置。
【請求項4】
前記流体が、気体である、請求項1の流体を供給する装置。
【請求項5】
前記流体が、高圧ガスである、請求項1の流体を供給する装置。
【請求項6】
前記流体が、液化ガスである、請求項1の流体を供給する装置。
【請求項7】
前記機構に、熱交換器を含む、請求項1の流体を供給する装置。
【請求項8】
供給されるべき流体が収容された格納容器を有し、該流体を排出させる機能を発揮するための、開口部と操作部を除く手動の弁の主体と、ないし開口部を除く電気的に遠隔で操作する弁の主体と、同じく開口部を除く配管の主体と、該弁および該配管に接続される、熱交換器、該流体を一時的に貯蔵するための容器、圧力センサー、安全弁で構成される機構の全てが、該格納容器内部に構築され、該格納容器の外部には、露出する要素が、該流体を注液する開口部、あるいは該流体を排出する開口部、あるいは該流体を排出させるための、手動の弁にあっては、それらの操作部、あるいは該流体を排出させるための、電気的に遠隔で操作する弁にあっては、電気信号を交換するための端子盤類に限定される、構成様式を特徴とする、流体を供給する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明において、流体を供給させる装置(以下、装置)は、同流体を格納する容器(以下、容器ないし格納容器)と、同流体を排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構(以下、注液と投棄に関わる弁を含み、機構)から成る。
本発明は、流体を供給する装置において、手動式ないし電気的に遠隔で操作する弁を用いて、同流体を排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を、同流体を格納する容器の内部に構築し、配置・収蔵させる形式を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を格納して輸送し、また供給させる装置においては、同流体を格納する容器(以下、容器ないし格納容器)が存在し、同容器上あるいは直近の外部に、同流体を注液および投棄させる弁を装備し、同容器の外部に、同流体を排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構(以下、注液と投棄に関わる弁を含み、機構)が設けられ、同容器より流体を取り出す出口の下流に、同流体の供給を制御するための、手動式ないし電気的に遠隔で操作する弁を設け、同弁の下流に、同流体を排出する出口を設けることが通常の機構の構成である。
【0003】
もちろん、同機構内に、熱交換器や減圧・昇圧装置、一時貯蔵容器等を設ける場合もある。背景技術の特徴は、一連の装置を構成する容器や機構等の要素が、独立に設けられている点にあり、装置としての容積利用効率は低い。
【0004】
特開2009-199790 は、排出されるべき流体の格納容器の外部に、同流体を排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を設けており、本発明で請求する、同機構を格納容器内に構築する課題解決の手段を開示していない。
【0005】
特開昭62-119313 は、排出されるべき流体の格納容器の外部に、同流体を排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を設けており、本発明で請求する、同機構を格納容器内に構築する課題解決の手段を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-199790
【文献】特開昭62-119313
【非特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の背景技術において、装置を構成する、個々の容器および弁・配管類等の要素で構成する機構の各要素の形状は、独立して定められるため、要素間の空隙容積は有効利用できず、前記機構の大きさが著しく前記の排出すべき流体の格納容器の容積に比べて小さい場合以外は、前記の排出すべき流体の格納容器の容積を十分に確保することは困難である。
【0009】
このことは、人工衛星でのように、小型の流体を供給する装置においては、容積利用効率の著しい低下を招く。

【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で述べる装置の、格納され、排出されるべき流体を排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を、同格納容器の内部に構築することで解決する。
【0011】
本発明でいう装置には、一旦充填された後は、密閉して使用することを前提とする。
同装置には、同流体の格納容器を配置し、同容器内部に、排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構が構築され、
同機構には、少なくても、同流体を排出するための手動式ないし電気的に遠隔で操作する弁が包含され、
前記流体を注液する入口と、前記流体を投棄する出口と、同流体を排出させるべき機能を発揮するための、手動式の弁にあっては、それを操作させるレバー類(操作部)、ないし電気的に遠隔で操作する弁にあっては、それを操作させるための電力ないし電気信号を交換するための端子類、だけが、同格納容器の外部に露出する様式を特徴とする、
流体を供給する装置によって解決する。
【0012】
前記流体を格納する容器の形状は、角柱、球、円柱など形状を問わない。
【0013】
最も簡単な構成例を図1に掲げた。
排出されるべき流体は、格納容器 10 に収容されている。排出させるべき機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構は、流体格納容器内に配置する配管 20 を介して接続される、フィルタ 21、手動弁 22、熱交換器 23、電気的に遠隔で操作する弁 24、オリフィスないし減圧弁 25、流体を一時的に貯蔵する容器 26、圧力センサー 27、安全弁 28 等で構成され、流体は、配管出口 16 を介して、流体を格納する容器外へ取り出される。取り出された流体は、利用のためのノズル 15 によって使用に供される。
【0014】
なお、流体を格納する容器内に構築される機構を構成する要素は、図1の要素に限定されず、各要素の位置や順番も図1の構成に限定されない。
【0015】
また、注液弁 13 と投棄弁 12 が同一であることを妨げない。予め封止された容器においては、注液弁 13 と投棄弁 12 が存在しない場合がありうる。
【0016】
利用のためのノズル 15 も、個数や形態は、図1に限定されるものではなく、また操作法も手動、遠隔等任意の方法で構成されてよい。
【0017】
図2には、流体を格納する容器 10 が、隣接して増設される流体格納容器 30 と接続され、両方の容器を1つの格納容器として使用する形態を掲げた。元の流体を格納する容器 10 から、増設する格納容器 30 に対して、同様に配管出口16 を介して、増設する格納容器内に配置する配管 40 が接続され、配管出口 36 を介して、利用のためのノズル 35 へ供給される。
【0018】
本発明は、前記機構の構成において、少なくても、外部に操作部 11 などを有する手動弁 22と、電力や信号など電気的な入出力を行うための端子盤 14 を介して電気的に遠隔で操作する弁 24 のいずれか、あるいは両方が、同格納容器 10 内に配置されることを特徴とする、流体の排出装置と方法を請求している。
【0019】
本発明では、本装置の構成において、前記の手動弁に対する操作部 11 ないし電気的に遠隔で操作する弁に対する端子盤 14 以外に、注液弁 13 と投棄弁 12 および、流体を格納する容器外への配管出口 16 が存在する様式の装置と方法を請求している。
【0020】
なお、注液弁 13 と投棄弁 12 が同一であることを妨げない。また、予め封止された容器においては、注液弁 13 と投棄弁 12 が存在しない場合がありうる。

【発明の効果】
【0021】
同様式の装置によって、容積利用効率を飛躍的に高めることができ、排出する流体を格納する容器の容積の確保の難しさは劇的に改善される。
【0022】
同格納容器の形状をモジュール状に標準化することが可能になり、多様な応用が可能となる。
【0023】
前記流体を格納する容器の形状は、角柱、球、円柱など形状を問わないため、本発明を適用するシステムの要件に整合させる任意の形状の容器を容積効率が高い状態で設置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】流体を排出させる機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を、同流体を格納する容器内に構築する装置の構成例
図2】装置をモジュール型で増設する場合の構成例
図3】角柱状格納容器内に排出させる機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を構築した例
図4】連続する2つの角柱状格納容器内に排出させる機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を構築した例
図5】隣接する4つの角柱状格納容器内に排出させる機能を発揮する弁・配管類等の要素で構成される機構を構築した例
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、排出され供給される流体が、液体または気体であるかを問わない。本発明は、排出され供給される流体が、液化ガスであってもよい。
【0026】
本発明は、とくに蒸気圧の低い液化ガスにおいて、とくに有用である。蒸気圧が低いため、角柱状(直方体、立方体状)の容器自身を格納容器とすることが可能となり、容積利用効率の大幅な向上につながる。
【0027】
図3には、超小型衛星サイズのボックス型推進器に実装させた場合の実施例を掲げた。ここで流体とは推進剤である。ボックス型推進器が装置であり、またボックス状の箱が容器である。大きさは、10cm x 10cm x 10cm である。図示できない、安全弁や端子盤などの一部要素については、表示を割愛している。
【0028】
このような超小型の推進器では、小さな部品であっても、各々の底面積や高さを占有してしまうため、肝心の推進剤流体を格納する十分な容積の容器を設けるのは容易ではない。かりに設けられても、容積は長さスケールの3乗に比例するため、格納できる流体の量は、非常に限定的である。
【0029】
本発明で、この困難さを克服できる。
図に示したように、全ての機構の要素をボックス内に実装し、ボックス全体を推進剤流体で満たすことで、この例でも、約600ccから700ccの流体を格納して輸送することが可能になる。
【0030】
容器の外部に露出するのは、手動弁の操作部たる回転つまみ、電気的操作のための端子盤、注液弁、投棄弁と、最終的に格納容器外へと推進剤を導く配管出口のみである。
【0031】
推進剤たる流体としては、気体、液体、液化ガス等がありうるが、上述のように、この例でのボックス型容器では、低圧のガス、低蒸気圧の液化ガスで実現することが、もっとも好ましい実現方法である。
【0032】
また、角柱状の容器を採用することで、拡張が自在にシステムたる装置を開発することが可能になる。
【0033】
図4には、2個のボックス型格納容器を接続する形態での実施例を示した。また、図5には、4個のボックス型格納容器を接続する形態での実施例を示した。増設した容器には、ほぼ100%に近い容積の流体を格納することができる。

【産業上の利用可能性】
【0034】
とくに、長小型の人工衛星においては、その輸送コストは単に質量だけではなく、全体の密度、すなわち容積の利用効率に大きく依存する。
【0035】
本発明は、その容積の利用効率を劇的に改善することにつながり、輸送コストの低減化にも貢献する。
【0036】
装置の形状や、格納容器の形状を、統一することにつながり、装置をモジュール単位で増設・拡大することが容易に可能になり、多様な応用につながる。

図1
図2
図3
図4
図5