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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】鋼板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/04 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B08B1/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019138555
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021020167
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-01-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107837
【氏名又は名称】株式会社サイト
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大庭 義信
(72)【発明者】
【氏名】石津 眞人
(72)【発明者】
【氏名】益田 良男
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-070865(JP,U)
【文献】特開平08-089910(JP,A)
【文献】特開平06-084858(JP,A)
【文献】特開平10-147865(JP,A)
【文献】特開2017-225738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された鋼板の裏面を支持する支持部材を備えたレール部材と
前記レール部材の延伸方向に沿って水平移動可能なフレームユニットと、
前記フレームユニットを水平移動させるフレーム駆動機構と、
前記レール部材の延伸方向に直交する方向に延び、前記フレームユニットに回転可能に軸支されると共に前記支持部材に支持された前記鋼板を洗浄するブラシロールと、
前記ブラシロールを回転駆動するブラシ駆動機構と、
を有する鋼板洗浄装置。
【請求項2】
前記フレームユニットは、前記ブラシロールの上下方向の移動を許容して軸支するギャップ調整機構を有している、請求項1に記載の鋼板洗浄装置。
【請求項3】
前記ギャップ調整機構は、前記ブラシロールを前記鋼板側へ付勢するばね部材を有している、請求項2に記載の鋼板洗浄装置。
【請求項4】
前記レール部材上には、弾性部材で構成されて鋼板のレール部材の延伸方向に沿った一方の端面に当接する当接部材と、が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板洗浄装置。
【請求項5】
前記当接部材の前記鋼板の端面に当接する当接面の外周部には、前記当接部材との接触によりばらついた前記ブラシロールのブラシ毛の流れを整える整毛部材が設けられている、請求項4に記載の鋼板洗浄装置。
【請求項6】
前記ブラシロールは、前記鋼板の表面を洗浄する上側ブラシロールと、前記鋼板の裏面を洗浄する下側ブラシロールと、で構成されており、
前記上側ブラシロールは、前記鋼板との接触部位における前記上側ブラシロールの外周部の接線に沿う移動方向が、前記フレームユニットの水平移動方向と同一方向となるように回転し、
前記下側ブラシロールは、前記鋼板との接触部位における前記下側ブラシロールの外周部の接線に沿う移動方向が、前記フレームユニットの水平移動方向と反対方向となるように回転する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の鋼板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事の現場等において、通路の確保や作業場の養生等のために鋼板(敷鉄板)が多く用いられている。従来、この鋼板は、例えば表面に高圧水を噴射して洗浄した後に再利用されていたが、水処理にコストがかかるという問題があった。この問題を解決するため、例えば特許文献1には、回転駆動される一対のブラシロール間に鋼板を通過させることで、水を使用せずに鋼板の表面を洗浄する鋼板洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-70865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示す鋼板洗浄装置では、ブラシロールが設置されたフレーム内に鋼板を搬出入する構成であるため、鋼板の搬送中に鋼板が傾いたり歪んだりする虞があった。また、フレームの挿入口の上流側、及び導出口の下流側に、フレームに搬出入される鋼板の待機スペースが必要となるため、鋼板洗浄装置の全長が長くなっていた。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、鋼板を搬送する必要がなく、装置の全長を短くすることができる鋼板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の鋼板洗浄装置は、載置された鋼板の裏面を支持する支持部材を備えたレール部材と、前記レール部材の延伸方向に沿って水平移動可能なフレームユニットと、前記フレームユニットを水平移動させるフレーム駆動機構と、前記レール部材の延伸方向に直交する方向に延び、前記フレームユニットに回転可能に軸支されると共に前記支持部材に支持された前記鋼板を洗浄するブラシロールと、前記ブラシロールを回転駆動するブラシ駆動機構と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、レール部材に沿ってフレームユニットを水平移動させつつ、フレームユニットに軸支されたブラシロールを回転させることで、ブラシロールによってレール部材に載置された鋼板を洗浄することができる。また、ブラシロールを鋼板側へ移動させる構成のため、鋼板をブラシロール側へ移動させる構成と比較して、鋼板を搬送する必要がなく、鋼板が傾いたり歪んだりすることを抑制することができるとともに、鋼板洗浄装置の全長を短くすることができる。
【0008】
請求項2に記載の鋼板洗浄装置は、請求項1に記載の鋼板洗浄装置であって、前記フレームユニットは、前記ブラシロールの上下方向の移動を許容して軸支するギャップ調整機構を有している。
【0009】
上記構成によれば、ギャップ調整機構によってブラシロールの上下方向の移動が許容されているため、変形した鋼板であっても鋼板の表面形状にブラシロールを追随させることができ、鋼板の洗浄性能を高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の鋼板洗浄装置は、請求項2に記載の鋼板洗浄装置であって、前記ギャップ調整機構は、前記ブラシロールを前記鋼板側へ付勢するばね部材を有している。
【0011】
上記構成によれば、ばね部材によってブラシロールが鋼板側へ付勢されているため、ブラシロールを所定の圧力で鋼板の表面に押し付けることができ、鋼板の洗浄性能を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の鋼板洗浄装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板洗浄装置であって、前記レール部材上には、弾性部材で構成されて鋼板のレール部材の延伸方向に沿った一方の端面に当接する当接部材と、が設けられている。
【0013】
上記構成によれば、鋼板の裏面を支持部材に支持させて鋼板の端面を当接部材に突き当てることで、レール部材上に鋼板を位置決めすることができる。ここで、当接部材が弾性部材で構成されているため、鋼板の端面を当接部材に突き当てた際の衝撃を和らげることができる。
【0014】
請求項5に記載の鋼板洗浄装置は、請求項4に記載の鋼板洗浄装置において、前記当接部材の前記鋼板の端面に当接する当接面の外周部には、前記当接部材との接触によりばらついた前記ブラシロールのブラシ毛の流れを整える整毛部材が設けられている。
【0015】
上記構成によれば、鋼板をブラシロールによって洗浄する際、当接部材とブラシロールとが接触してブラシロールのブラシ毛がばらつくことがある。ここで、当接部材の当接面の外周部に整毛部材が設けられているため、整毛部材によってブラシ毛の流れを整えることで、ブラシロールのブラシ毛がばらついて鋼板洗浄効率が低下することを抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載の鋼板洗浄装置は、請求項1~5のいずれか1項に記載の鋼板洗浄装置において、前記ブラシロールは、前記鋼板の表面を洗浄する上側ブラシロールと、前記鋼板の裏面を洗浄する下側ブラシロールと、で構成されており、前記上側ブラシロールは、前記鋼板との接触部位における前記上側ブラシロールの外周部の接線に沿う移動方向が、前記フレームユニットの水平移動方向と同一方向となるように回転し、前記下側ブラシロールは、前記鋼板との接触部位における前記下側ブラシロールの外周部の接線に沿う移動方向が、前記フレームユニットの水平移動方向と反対方向となるように回転する。
【0017】
上記構成によれば、一対のブラシロール(上側ブラシロール及び下側ブラシロール)によって、鋼板の両面を洗浄することができる。
【0018】
また、上記構成によれば、上側ブラシロールは、鋼板との接触部位における上側ブラシロールの外周部の接線に沿う移動方向が、フレームユニットの水平移動方向と同一方向となるように回転するため、上側ブラシロールで掻き取った泥等の汚れが洗浄済みの鋼板の表面に飛び散ることを抑制することができる。
【0019】
一方、下側ブラシロールは、鋼板との接触部位における前記下側ブラシロールの外周部の接線に沿う移動方向が、前記フレームユニットの水平移動方向と反対方向となるように回転するため、フレームユニットが水平移動する際の抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鋼板洗浄装置によれば、鋼板を搬送する必要がなく、装置の全長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る鋼板洗浄装置を示す全体斜視図である。
図2】一実施形態に係る鋼板洗浄装置のレール部材を示す正面図である。
図3】一実施形態に係る鋼板洗浄装置のレール部材を示す平面図である。
図4図3におけるA-A線断面図である。
図5】一実施形態に係る鋼板洗浄装置のフレームユニットを示す正面図である。
図6】一実施形態に係る鋼板洗浄装置のフレームユニットを示す側面図である。
図7】(A)は一実施形態に係る鋼板洗浄装置の上側ブラシロールを示す正面図であり、(B)はその平面図である。
図8】(A)は一実施形態に係る鋼板洗浄装置の下側ブラシロールを示す正面図であり、(B)はその平面図である。
図9】(A)、(B)は、一実施形態に係る鋼板洗浄装置による鋼板洗浄方法を示す正面図である。
図10図9(B)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る鋼板洗浄装置10の一例について、図1図10を参照して説明する。なお、図中において、矢印Xはレール部材の延伸方向、又はフレーム部材の水平移動方向を指し、矢印Yはレール部材の延伸方向に直交する方向、又はブラシロールの軸方向を指し、矢印Zは上下方向(鉛直方向)を指す。
【0023】
(鋼板洗浄装置の全体構成)
図1に示すように、本実施形態の鋼板洗浄装置10は、洗浄対象である鋼板12が載置されるレール部材14と、レール部材14の延伸方向に沿って水平移動可能なフレームユニット16と、を有している。なお、初期位置(ホームポジション)では、フレームユニット16は、レール部材14の延伸方向一端部(図1における手前側)に配置されている。
【0024】
また、フレームユニット16の下部には、図示しないケーブルが挿通されたケーブル支持案内装置18の一端(移動端)が接続されている。ケーブル支持案内装置18の他端(固定端)は、レール部材14の下部に設けられたガイドレール20に固定されており、ガイドレール20を介して図示しない外部電源に接続されている。
【0025】
これにより、ケーブル支持案内装置18を介して外部電源からフレームユニット16に設けられた後述する上側ブラシ用モータ57(図7参照)、下側ブラシ用モータ78(図8参照)、及びフレーム移動用モータ102(図6参照)等に電力が供給される。
【0026】
また、フレームユニット16には、フレームユニット16の下面から下方に突出するフレーム側ストッパ22が設けられており、レール部材14の延伸方向他端部には、フレーム側ストッパ22に対応する位置にレール側ストッパ24が設けられている。フレームユニット16がレール部材14に沿って水平移動する際に、フレーム側ストッパ22がレール側ストッパ24に当接することで、フレームユニット16のレール部材14からの脱落が抑制されている。
【0027】
(レール部材の構成)
図2図4に示すように、レール部材14は、レール部材14の延伸方向に沿って延びてレール部材14の延伸方向に直交する方向に間隔をあけて並設された一対のレール26と、一対のレール26を支持する4本の支柱28と、で構成されている。
【0028】
一対のレール26は例えばH形鋼からなり、一対のレール26間には、複数の板状の支持部材30が架設されている。複数の支持部材30は、レール26に対して直交する方向、すなわちレール部材14の延伸方向に直交する方向にそれぞれ延び、互いにレール部材14の延伸方向に間隔をあけて配置されている。
【0029】
また、支持部材30は、レール26の上面に設置された台座32を介して、架設方向両端部が一対のレール26にそれぞれ固定されている。なお、支持部材30の架設方向は、レール26に対して直交する方向に限らず、レール26に対して斜め方向とされていてもよい。
【0030】
支持部材30の架設方向一端部の上面には、当接部材34が設置されている。当接部材34は、支持部材30の上面から立ち上がる固定部36と、固定部36より支持部材30の架設方向他端部側に位置する矩形状の突き当てブロック38と、を有している。また、固定部36と突き当てブロック38との間には、一端が固定部36に固定され、他端が突き当てブロック38に固定された弾性部材の一例としてのコイルばね40が設けられている。
【0031】
例えばフォークリフト等で支持部材30の架設方向他端部側から鋼板12をレール部材14上に載置した際、図4に示すように、鋼板12の裏面が支持部材30によって支持される。また、突き当てブロック38の当接面38A、すなわち支持部材30の架設方向他端部側に位置する面が、コイルばね40によって付勢された状態で鋼板12の端面に当接する。
【0032】
さらに、突き当てブロック38の当接面38Aの外周部には、後述するブラシロール48のブラシ毛52(図5参照)の流れを整える整毛部材42が設けられている。図3に示すように、整毛部材42は、突き当てブロック38の当接面38Aの上辺及び両側辺からそれぞれ外側に延出するとともに、固定部36側、すなわち支持部材30の架設方向一端部側に向かってそれぞれ斜め方向に延びる3枚の板材で構成されている。なお、整毛部材42は、少なくとも突き当てブロック38の当接面38Aの両側辺に設けられていればよく、上辺の整毛部材42は省略しても構わない。
【0033】
また、図4に示すように、H形鋼からなる一対のレール26の下フランジの内側の上面には、レール26の延伸方向に沿って延びるラックギア44がそれぞれ設けられている。このラックギア44には、フレームユニット16に設けられている後述するピニオンギア96(図6参照)が噛み合っており、これにより、フレームユニット16がレール部材14に沿って水平移動可能とされている。
【0034】
また、図2に示すように、H形鋼からなるレール26の延伸方向両端部のウェブの外側(側面)には、一対のセンサ46がそれぞれ設置されている。図1に示すフレームユニット16がレール部材14に沿って水平移動する際に、フレームユニット16に設置された図示しない検知手段がセンサ46を検知することで、フレームユニット16が停止又は方向転換される。
【0035】
なお、レール26に設置されるセンサ46の数は2つに限らず、3つ以上設けられていてもよい。例えば、本実施形態では、全長6mのフルサイズの鋼板12に対応した位置にセンサ46が設けられている。しかし、全長3mのハーフサイズの鋼板に対応した位置にセンサを設けてもよく、レール部材14の延伸方向両端部の際にリミットセンサをそれぞれ設けてもよい。
【0036】
(フレームユニットの構成)
図5図6に示すように、フレームユニット16には、鋼板12(図1参照)の表面(上面)を洗浄する上側ブラシロール48Aと、鋼板12の裏面(下面)を洗浄する下側ブラシロール48Bと、で構成されたブラシロール48が設けられている。
【0037】
図5に示すように、一対のブラシロール48(上側ブラシロール48A及び下側ブラシロール48B)は、軸部50と、軸部周りに設けられた例えばナイロン等からなるブラシ毛52と、を有している。
【0038】
また、一対のブラシロール48は、互いに上下方向に重なる位置に配置されているとともに、レール部材14の延伸方向に直交する方向に延びている。なお、図10に示すように、ブラシロール48の軸方向の長さL1は、フルサイズの鋼板12の幅L2よりも僅かに大きくされている。
【0039】
また、図5に示すように、上側ブラシロール48Aの軸部50は、フレームユニット16の上側支持フレーム54に軸周りに回転可能に軸支されている。一方、下側ブラシロール48Bの軸部50は、フレームユニット16の下側支持フレーム56に軸周りに回転可能に軸支されている。
【0040】
図7(B)に示すように、上側支持フレーム54は略板状の部材であり、上側ブラシロール48Aの軸方向に沿って延びる基部54Aと、基部54Aの延伸方向両端部から上側ブラシロール48Aの軸方向に直交する方向に延びる一対の腕部54Bと、を有している。そして、この一対の腕部54Bによって、上側ブラシロール48Aの軸部50の両端が軸支されている。
【0041】
また、上側支持フレーム54の基部54Aには、ブラシ駆動機構の一例としての上側ブラシ用モータ57が載置されている。図7(A)に示すように、上側ブラシ用モータ57の軸部57A周りには、モータ側スプロケット58が固定されている。そして、上側ブラシロール48Aの軸部50周りに固定されたブラシ側スプロケット60と、モータ側スプロケット58とが、ローラーチェーン62によって連結されている。これにより、上側ブラシ用モータ57の駆動力によって上側ブラシロール48Aが回転駆動可能とされている。
【0042】
また、上側支持フレーム54の基部54A及び腕部54Bは、それぞれギャップ調整機構64、66を介してフレームユニット16に固定されている。このギャップ調整機構64、66により、フレームユニット16に対して上側支持フレーム54及び上側ブラシロール48Aの上下方向の移動が許容されている。
【0043】
基部54A側のギャップ調整機構64は、上側支持フレーム54に形成された切欠64Aと、図示しない軸方向両端部がフレームユニット16に固定されたシャフト64Bと、によって構成されている。具体的には、切欠64Aは、上側支持フレーム54の基部54Aの下面に形成されており、この切欠64Aにシャフト64Bが挿入されている。
【0044】
切欠64Aの深さ(上下方向の長さ)は、シャフト64Bの直径よりも大きくされており、シャフト64Bが切欠64A内で上下方向に移動可能とされている。これにより、上側支持フレーム54の基部54Aが、切欠64A及びシャフト64Bを介してフレームユニット16に上下方向に移動可能に固定されている。
【0045】
腕部54B側のギャップ調整機構66は、外周面に雄ねじが形成されたねじ棒66Aと、ねじ棒66Aの外周に取り付けられたばね部材の一例としてのコイルばね66Bと、によって構成されている。
【0046】
具体的には、ねじ棒66Aの軸方向下端部は、フレームユニット16を上下方向に貫通する貫通孔68に挿通されている。一方、ねじ棒66Aの軸方向上端部は、腕部54Bの先端部を上下方向に貫通する貫通孔70(図7(B)参照)を通って腕部54Bの上部まで延びており、ねじ棒66Aの軸方向上端部には、プレート72を介してナット74が螺合されている。
【0047】
また、腕部54Bの下面側、及びフレームユニット16の下面側において、ねじ棒66Aにはナット76がそれぞれ螺合されている。さらに、腕部54Bの上面とプレート72の下面との間には、コイルばね66Bが挟持されている。
【0048】
以上の構成により、上側ブラシロール48A(上側支持フレーム54の腕部54B)が、ねじ棒66A及びコイルばね66Bを介してフレームユニット16に上下方向に移動可能に固定されている。
【0049】
なお、本実施形態では、上側ブラシロール48A(上側支持フレーム54の腕部54B)が初期位置(図7(A)に示す位置)から上側に例えば10mm程度移動した際に、コイルばね66Bによって上側ブラシロール48Aが下側、すなわち図9(B)に示す鋼板12側へ付勢され始めるように、コイルばね66Bの長さや弾性力が調整されている。
【0050】
図8(B)に示すように、下側支持フレーム56は、上側支持フレーム54と同様に、基部56Aと一対の腕部56Bとを有する略板状の部材であり、下側支持フレーム56の一対の腕部56Bによって下側ブラシロール48Bの軸部50の両端が軸支されている。
【0051】
また、下側支持フレーム56の基部56Aには、ブラシ駆動機構の一例としての下側ブラシ用モータ78が載置されている。図8(A)に示すように、下側ブラシ用モータ78の軸部78A周りには、モータ側スプロケット80が固定されている。そして、下側ブラシロール48Bの軸部50周りに固定されたブラシ側スプロケット82と、モータ側スプロケット80とが、ローラーチェーン84によって連結されている。これにより、下側ブラシ用モータ78の駆動力によって下側ブラシロール48Bが回転駆動可能とされている。
【0052】
また、下側支持フレーム56の基部56A及び腕部56Bは、それぞれギャップ調整機構86、88を介してフレームユニット16に固定されている。このギャップ調整機構86、88により、フレームユニット16に対して下側支持フレーム56及び下側ブラシロール48Bの上下方向の移動が許容されている。
【0053】
基部56A側のギャップ調整機構86は、下側支持フレーム56に形成された切欠86Aと、図示しない軸方向両端部がフレームユニット16に固定されたシャフト86Bと、によって構成されている。具体的には、切欠86Aは、下側支持フレーム56の基部56Aの上面に形成されており、この切欠86Aにシャフト86Bが挿入されている。
【0054】
切欠86Aの深さ(上下方向の高さ)は、シャフト86Bの直径よりも大きくされており、シャフト86Bが切欠86A内で上下方向に移動可能とされている。これにより、下側支持フレーム56の基部56Aが、切欠86A及びシャフト86Bを介してフレームユニット16に上下方向に移動可能に固定されている。
【0055】
腕部56B側のギャップ調整機構88は、外周面に雄ねじが形成されたねじ棒88Aと、ねじ棒88Aの外周に取り付けられたばね部材の一例としてのコイルばね88Bと、によって構成されている。
【0056】
具体的には、ねじ棒88Aは、フレームユニット16を上下方向に貫通する貫通孔90に軸方向下端部が挿通されており、腕部56Bの先端部を上下方向に貫通する貫通孔92(図8(B)参照)に軸方向上端部が挿通されている。また、腕部56Bの上面側、及びフレームユニット16の下面側において、ねじ棒88Aにはナット94がそれぞれ螺合されており、腕部56Bの下面とフレームユニット16の上面との間には、コイルばね88Bが挟持されている。
【0057】
以上の構成により、下側ブラシロール48B(下側支持フレーム56の腕部56B)が、コイルばね88Bによって上側、すなわち図9(B)に示す鋼板12側へ付勢された状態で、ねじ棒88A及びコイルばね88Bを介してフレームユニット16に上下方向に移動可能に固定されている。
【0058】
また、図6に示すように、フレームユニット16におけるレール26のラックギア44に対応する位置には、一対のピニオンギア96がそれぞれ取り付けられている。一対のピニオンギア96は、シャフト98によって互いに連結されており、このシャフト98には、軸周りにギア側スプロケット100が固定されている。
【0059】
一方、フレームユニット16の下部には、フレーム駆動機構の一例としてのフレーム移動用モータ102が設置されている。そして、フレーム移動用モータ102の軸部102A周りに固定されたモータ側スプロケット104と、ギア側スプロケット100とが、ローラーチェーン106によって連結されている。これにより、フレーム移動用モータ102の駆動力によって一対のピニオンギア96が回転駆動可能とされており、ピニオンギア96がラックギア44上を移動することで、フレームユニット16がレール部材14に沿って水平移動可能とされている。
【0060】
また、フレームユニット16におけるピニオンギア96に対向する位置には、H形鋼からなるレール26の下フランジの外側の上面に当接する複数の従動ローラ108が設けられている。フレームユニット16がレール部材14に沿って水平移動する際に、この従動ローラ108がレール26の下フランジ上を転動することで、レール部材14に対するフレームユニット16の位置ずれを抑制することができる。
【0061】
また、図5に示すように、フレームユニット16には、複数(本実施形態では2本)の安全レバー110が取り付けられている。安全レバー110は、フレームユニット16の側面角部から外側に張り出すとともに、フレームユニット16の側面角部に沿って上下方向に延びている。
【0062】
この安全レバー110に何らかの障害物が接触した場合、又は安全レバー110を手動で押した場合には、フレームユニット16に設けられている図示しない検知手段が安全レバー110の移動を検知し、ブラシロール48の回転及びフレームユニット16の水平移動を緊急停止させる。
【0063】
(鋼板洗浄方法)
次に、本実施形態の鋼板洗浄装置10を用いて鋼板12を洗浄する手順について、図9図10を用いて説明する。
【0064】
まず、例えばフォークリフト等で鋼板12を搬送し、支持部材30の架設方向他端部側から鋼板洗浄装置10のレール部材14上に鋼板12を載置する。このとき、図10に示すように、鋼板12は、裏面が複数の支持部材30によって支持され、端面が当接部材34の突き当てブロック38の当接面38Aに当接することで、レール部材14上で位置決めされる。なお、図9(A)に示すように、フレームユニット16は、初期位置であるレール部材14の延伸方向一端部に配置されている。
【0065】
次に、フレームユニット16に設けられている図示しない制御盤を、例えばリモコンを用いて無線操作し、鋼板洗浄装置10を起動する。そして、予め設定されたプログラムに基づいて鋼板洗浄装置10を動作させ、鋼板12の洗浄を行う。
【0066】
具体的には、上側ブラシ用モータ57(図7参照)によって上側ブラシロール48Aを回転させ、下側ブラシ用モータ78(図8参照)によって下側ブラシロール48Bを回転させる。そして、フレーム移動用モータ102によってフレームユニット16をレール部材14に沿って移動させ、回転する一対のブラシロール48を鋼板12の表面及び裏面にそれぞれ接触させてブラッシングすることで、鋼板12に付着した泥等の汚れを掻き取る。
【0067】
ここで、本実施形態では、図9(B)に示すように、鋼板12を洗浄する際、上側ブラシロール48Aは、フレームユニット16の水平移動方向(矢印R方向)と反対方向(矢印S方向)へ回転する。一方、下側ブラシロール48Bは、フレームユニット16の水平移動方向(矢印R方向)と同じ方向(矢印T方向)へ回転する。
【0068】
フレームユニット16がレール部材14の延伸方向他端部まで水平移動すると、フレームユニット16に設置された図示しない検知手段がレール部材14に設置されたセンサ46を検知し、フレームユニット16が方向転換される。
【0069】
そして、鋼板12を再び洗浄しながらフレームユニット16がレール部材14の延伸方向他端部から延伸方向一端部へレール部材14に沿って水平移動する。フレームユニット16が図9(A)に示す初期位置に戻ってくると、プログラムが終了して鋼板洗浄装置10が停止する。
【0070】
以上の手順により、鋼板洗浄装置10によって鋼板12が洗浄される。なお、上記手順は一例であり、順番が異なっていたり他の手順が含まれたりしても構わない。例えば上記手順では、フレームユニット16がレール部材14に沿って往復移動する構成とされていたが、往復移動せずにレール部材14の延伸方向他端部で停止する構成としてもよい。
【0071】
また、フレームユニット16のレール部材14の延伸方向一端部から延伸方向他端部への移動時と、延伸方向他端部から延伸方向一端部への移動時とで、フレームユニット16の移動速度やブラシロール48の回転方向等を変える構成としてもよい。
【0072】
(作用、効果)
本実施形態の鋼板洗浄装置10によれば、レール部材14に沿ってフレームユニット16を水平移動させつつ、フレームユニット16に軸支されたブラシロール48を回転させることで、ブラシロール48によってレール部材14に載置された鋼板12を洗浄することができる。
【0073】
すなわち、ブラシロール48を鋼板12側へ移動させる構成のため、鋼板12をブラシロール48側へ移動させる構成と比較して、鋼板12を搬送する必要がなく、鋼板12が傾いたり歪んだりすることを抑制することができるとともに、鋼板洗浄装置10の全長を短くすることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、ブラシロール48が、上側ブラシロール48Aと下側ブラシロール48Bとで構成されている。このため、上側ブラシロール48Aによって鋼板12の表面を洗浄するとともに、下側ブラシロール48Bによって鋼板12の裏面を洗浄することができ、鋼板12をひっくり返すことなく鋼板12の両面を一度に洗浄するこができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、一対のブラシロール48が、ギャップ調整機構64、66、86、88によって上下方向の移動が許容された状態でフレームユニット16にそれぞれ固定されている。このため、例えば変形した鋼板12を洗浄する場合であっても、鋼板12の表面形状に一対のブラシロール48を追随させることができ、鋼板12の洗浄性能を高めることができる。
【0076】
特に、本実施形態によれば、上側支持フレーム54及び下側支持フレーム56の腕部54B、56B側のギャップ調整機構66、88が、コイルばね66B、88Bを有している。このため、コイルばね66B、88Bによって一対のブラシロール48を鋼板12側へそれぞれ付勢することで、ブラシロール48を所定の圧力で鋼板12の表面及び裏面に押し付けることができ、鋼板12の洗浄性能をより高めることができる。
【0077】
さらに、本実施形態によれば、鋼板12を洗浄する際に、上側ブラシロール48Aはフレームユニット16の水平移動方向と反対方向へ回転し、下側ブラシロール48Bはフレームユニット16の水平移動方向と同じ方向へ回転する。
【0078】
このように、上側ブラシロール48Aをフレームユニット16の水平移動方向と反対方向へ回転させることで、上側ブラシロール48Aで掻き取った泥等の汚れが洗浄済みの鋼板12の表面に飛び散ることを抑制することができる。また、下側ブラシロール48Bをフレームユニット16の水平移動方向へ回転させることで、フレームユニット16が水平移動する際の抵抗を低減することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、レール部材14上に支持部材30と当接部材34が設けられているため、鋼板12の裏面を支持部材30に支持させて鋼板12の端面を当接部材34に突き当てることで、レール部材14上に鋼板12を位置決めすることができる。特に、本実施形態によれば、当接部材34の突き当てブロック38と固定部36との間にコイルばね40が設けられているため、鋼板12の端面を突き当てブロック38の当接面38Aに突き当てた際の衝撃を和らげることができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、突き当てブロック38の当接面38Aの外周部に整毛部材42が設けられているため、整毛部材42によってブラシロール48のブラシ毛52の流れを整えることができる。
【0081】
具体的には、図10に示すように、ブラシロール48の軸方向の長さL1は、鋼板12の幅L2よりも大きくされている。このため、鋼板12をブラシロール48によって洗浄する際に、ブラシロール48の軸方向端部のブラシ毛52が当接部材34に接触してブラシ毛52がばらつくことがある。
【0082】
このとき、整毛部材42が、突き当てブロック38の当接面38Aの外周部から斜め外側に延びているため、ばらついたブラシ毛52が整毛部材42に沿って整えられることにより、ブラシ毛52のばらつきが抑制される。これにより、ブラシロール48のブラシ毛52がばらついて鋼板12の洗浄効率が低下することを抑制することができる。
【0083】
(その他の実施形態)
なお、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0084】
例えば上記実施形態では、フレームユニット16に上側ブラシロール48Aと下側ブラシロール48Bの一対のブラシロール48が設けられていた。しかし、1本のブラシロールをフレームユニット16の上側又は下側のどちら一方のみに設け、この1本のブラシロールによって鋼板12の片面を洗浄する構成としてもよい。
【0085】
また、図示しない噴射装置をフレームユニット16に設け、泥等の汚れが掻き取られた鋼板12に噴射装置によって低圧水を噴射する構成としてもよい。ブラシロール48による洗浄と、低圧水の噴射とを併用することで、鋼板12の洗浄能力をより高めることができるとともに、粉塵等の拡散を抑制することができる。
【0086】
その他、風を吹き出す図示しないブロアーをフレームユニット16に設ける構成としてもよい。ブロアーによって鋼板12に風を当てることで、鋼板12から掻き取られた泥等の汚れを所定方向へ吹き飛ばすことができ、鋼板12の洗浄能力をより高めることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 鋼板洗浄装置
12 鋼板
14 レール部材
16 フレームユニット
30 支持部材
34 当接部材
42 整毛部材
48 ブラシロール
48A 上側ブラシロール
48B 下側ブラシロール
52 ブラシ毛
57 上側ブラシ用モータ(ブラシ駆動機構の一例)
64、66、86、88 ギャップ調整機構
66B、88B コイルばね(ばね部材の一例)
78 下側ブラシ用モータ(ブラシ駆動機構の一例)
102 フレーム移動用モータ(フレーム駆動機構の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10