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特許7355303レセプトデータ有意性判定プログラム、レセプトデータ有意性判定方法、及び、情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】レセプトデータ有意性判定プログラム、レセプトデータ有意性判定方法、及び、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20230926BHJP
【FI】
G16H10/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020139185
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035097
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520453434
【氏名又は名称】株式会社クオリティライフ・クリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100189201
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優介
(72)【発明者】
【氏名】長坂 知美
(72)【発明者】
【氏名】若島 雄大
(72)【発明者】
【氏名】本多 正人
【審査官】安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212117(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030840(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0151814(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0287685(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出し、
前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行ない、
前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成する、
処理をコンピュータに実行させる、レセプトデータ有意性判定プログラム。
【請求項2】
前記判定処理において、前記第1算定項目の請求の有無と、前記複数の診療項目の各々の診断の有無とに基づき、前記第1算定項目の請求に関連性のある前記1以上の第2診療項目を判定する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項1に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【請求項3】
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、前記第1算定項目の請求の有無を示す正解データと、前記複数の診療項目とを含み、
前記判定処理において、前記第1算定項目の請求の有無、及び、前記複数の診療項目の各々の診断の有無のそれぞれの組み合わせの集計結果に基づき、前記1以上の第2診療項目を判定する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項2に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【請求項4】
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、診療対象者に関する属性情報を含み、
前記条件は、前記属性情報に関する条件であり、
前記第2データの抽出は、前記第1データから、前記条件を満たす属性情報を有するデータを抽出することを含む、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【請求項5】
前記学習データを用いて、前記レセプトの診療報酬の算定漏れを検知するための検知モデルの機械学習を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【請求項6】
学習済みの前記検知モデルを用いて、複数のレセプトに関する第5データの診療報酬の算定漏れ検知を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項5に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【請求項7】
複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出し、
前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行ない、
前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成する、
処理をコンピュータが実行する、レセプトデータ有意性判定方法。
【請求項8】
複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出する抽出部と、
前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行なう有意差判定部と、
前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成する学習データ生成部と、を備える、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レセプトデータ有意性判定プログラム、レセプトデータ有意性判定方法、及び、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療機関において用いられる医事管理システムは、医師又は看護師等により入力される診療記録、看護記録及びオペ情報等を含む電子カルテ情報に基づき、レセプトデータを生成し出力する機能を備えることがある。「レセプト」は、医療機関が保険機関に提出する月ごとの診療報酬明細書である。
【0003】
レセプトデータは、保険機関において精査され、誤ったレセプトが存在する場合には、当該レセプトが医療機関に差し戻される。保険機関から差し戻されるレセプトは、過剰請求となるレセプトが主であり、診療報酬の算定漏れのあるレセプトについては差し戻されない場合が多い。従って、医療機関では、診療結果によって算定できる診療報酬をチェック漏れにより見逃した場合、本来得られるはずの医療収益が得られないことになる。
【0004】
医事管理システムにより生成されるレセプトデータには、数千項目以上の項目が存在することがあるため、医療事務担当者が保険機関への提出前にレセプトデータを漏れなく精査(チェック)することは困難である。
【0005】
ところで、医事管理システムから出力された修正前のレセプトと電子カルテ情報とに基づき、算定漏れの可能性があるかどうかを機械学習等のAI(Artificial Intelligence)を用いて検知する手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2008/047835号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した機械学習を用いる手法では、レセプトデータから学習対象の算定項目ごとにデータを抽出し、有意差がある診療項目を選択して機械学習を行なうことで、精度の高いレセプト算定漏れ検知モデルを生成することができる。
【0008】
しかし、算定項目には性別又は年齢等に限定される項目が存在することがあり、算定項目には無関係な診療項目が、有意性のある項目として選択されてしまうことがある。例えば、男性(例えば成人男性)特有の算定項目について学習を行なう際に、有意差判定のデータとして、女性又は小児のレセプトデータが利用される場合が挙げられる。このような場合、算定項目には無関係な診療項目が含まれる学習データによる機械学習によって、レセプト算定漏れ検出の精度が低下することがある。
【0009】
1つの側面では、本発明は、レセプトデータに含まれる診療項目の有意性を適切に判定することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの側面では、レセプトデータ有意性判定プログラムは、コンピュータに、以下の処理を実行させてよい。前記処理は、複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出してよい。前記処理は、前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行なってよい。前記処理は、前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成してよい。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、レセプトデータに含まれる診療項目の有意性を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るシステムの一例を説明するための図である。
図2】一実施形態に係るレセプト算定漏れ検知システムの処理の一例を簡単に説明するための図である。
図3】一実施形態に係る算定漏れ検知システムの機能構成例を示すブロック図である。
図4】入力データの一例を示す図である。
図5】一実施形態の比較例に係るシステムによる機械学習の一例を説明する図である。
図6】一実施形態の比較例に係るシステムによるレセプト算定漏れ検知の機械学習の一例を説明する図である。
図7】一実施形態に係る検知システム(生成部)による学習データの生成処理の一例を説明する図である。
図8】ルール適用済データの一例を示す図である。
図9】算定項目請求済データの一例を示す図である。
図10】有意差算出用データの一例を示す図である。
図11】有意差判定処理の一例を説明するための図である。
図12】学習データの一例を示す図である。
図13】判定データの一例を示す図である。
図14】一実施形態に係る検知システムの学習処理の動作例を説明するフローチャートである。
図15】一実施形態に係る検知システムの判定処理の動作例を説明するフローチャートである。
図16】検知システムの機能を実現するコンピュータのハードウェア(HW)構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形又は技術の適用を排除する意図はない。例えば、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、以下の説明で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
【0014】
〔1〕一実施形態
〔1-1〕システムの説明
図1は、一実施形態に係るシステム1の一例を説明するための図である。図1に示すように、システム1は、医事管理システム1a、及び、レセプト算定漏れ検知システム(以下、単に「検知システム」と表記する場合がある)10を備えてよい。
【0015】
医事管理システム1aは、例えば、病院等の医療機関で利用される、医療事務等の業務を管理、支援するためのシステムである。医事管理システム1aは、例えば、診療報酬請求事務の業務の出力として、複数のレセプトを含むレセプト情報1bを生成し、検知システム10に出力してよい。
【0016】
医事管理システム1aには、医師、看護師、医療スタッフ等により、レセプトに関する情報が入力されてよい。
【0017】
また、システム1は、電子カルテ情報1cを備え、電子カルテ情報1cの情報を検知システム10に出力してよい。電子カルテ情報1cには、医師、看護師、医療スタッフ等により、診療記録1d、看護記録、オペ記録等の複数の電子カルテに関する情報が入力されてよい。電子カルテ情報1cは、例えば、医事管理システム1aに格納されてもよいし、他のシステムに格納されてもよい。
【0018】
検知システム10は、入力されるレセプト情報1b及び電子カルテ情報1cに基づき、AI11によりレセプト算定漏れの検知を行ない、検知結果12を出力する。検知結果12は、一例として、レセプト情報1bに含まれる各々のレセプトについての診療報酬の算定漏れの確率を示す情報を含んでよい。
【0019】
例えば、システム1において、医療事務担当者等のオペレータ、又は、医事管理システム1a等のシステムは、検知結果12に基づき、レセプト情報1bを修正した修正後レセプト情報1eを生成し、修正後レセプト情報1eを保険機関に提出する。
【0020】
図2は、一実施形態に係るレセプト算定漏れ検知システム2の処理の一例を簡単に説明するための図である。検知システム2は、図1に示す検知システム10の一例である。
【0021】
図2に示すように、検知システム2による処理は、例示的に、検知モデル23を作成するモデル作成フェーズ2Aと、作成した検知モデル23を用いて算定漏れ候補レコメンド26を出力するモデル適用フェーズ2Bと、を含んでよい。
【0022】
(モデル作成フェーズ2A)
検知システム2は、モデル作成フェーズ2Aにおいて、過去の算定実績21に基づき、機械学習部22による機械学習を実行し、検知モデル23を生成する。例えば、検知システム3は、機械学習部22により、図2に符号(i)で示すように、算定実績21から得られる算定項目ごとに異なる算定ルールを学習してよい。
【0023】
算定実績21は、例えば、複数のレセプトを含むレセプト情報21aと、複数の電子カルテを含む電子カルテ情報21bと、を備えてよい。例えば、検知システム2は、図2に符号(ii)で示すように、電子カルテ情報21bのテキストから学習用の情報、例えば数値及び文字列等を抽出するために、電子カルテ情報21bに対して自然言語処理技術を用いた言語処理を行なってよい。
【0024】
また、算定実績21は、正解(教師)データ、例えば正解ラベルとしての算定結果を含んでよい。算定結果は、例えば、レセプト情報21a及び電子カルテ情報21bに含まれるデータについて算定された算定項目21cを示す情報を含んでよい。このように、算定実績21は、符号(iii)で示すように、学習データセットの一例である。
【0025】
検知システム2は、後述する手法により、複数のレセプト情報21a及び複数の電子カルテ情報21bから、算定項目21cに関する所定の条件に基づき、機械学習に利用する適切なデータを抽出してよい。
【0026】
機械学習部22は、学習データセットを学習する。例えば、機械学習部22は、所定回数の学習が実行された場合、又は、ニューラルネットワークの出力値と正解データとの誤差が所定値よりも小さくなった場合に学習を終了する。そして、機械学習部22は、各種パラメータ等を検知モデル23として保存する。
【0027】
(モデル適用フェーズ2B)
検知システム2は、モデル適用フェーズ2Bにおいて、新規の修正前レセプト24と、新規の電子カルテ25とを検知モデル23に入力することで、算定漏れ候補レコメンド26を取得する。
【0028】
算定漏れ候補レコメンド26は、図2に示すように、例示的に、対象患者、検知日、算定漏れ項目、及び、算定漏れ確率の項目を含んでよい。対象患者は、算定漏れが検知された修正前レセプト24及び電子カルテ25における患者の氏名であってよい。検知日は、算定漏れが検知された日時のタイムスタンプであってよい。算定漏れ項目は、算定漏れが検知された算定項目21c、例えばラベルを示す情報である。算定漏れ確率は、算定漏れ項目において算定漏れが発生している確率を示す情報である。
【0029】
〔1-2〕機能構成例
図3は、一実施形態に係る算定漏れ検知システム3の機能構成例を示すブロック図である。図3に示すように、検知システム3は、例示的に、通信部31、メモリ部32、及び、制御部33を備えてよい。
【0030】
通信部31は、図示しないネットワークを介して、他のコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置との間で情報の通信を行なう。通信部31は、例えば、オペレータが利用する情報処理装置から、学習フェーズ(モデル作成フェーズ)で用いるデータ、判定フェーズ(モデル適用フェーズ)で用いるデータ等の種々のデータを受信してよい。また、通信部31は、情報処理装置に、学習結果、判定結果等の種々の情報を送信してもよい。
【0031】
メモリ部32は、記憶領域の一例であり、検知システム3が利用する種々のデータを記憶する。図3に示すように、メモリ部32は、例示的に、入力データ32a、抽出ルール32b、ルール適用済データ32c、算定項目請求済データ32d、有意差算出用データ32e、学習データ32f、検知モデル32g、及び、判定データ32hを記憶可能であってよい。
【0032】
以下の説明では、便宜上、メモリ部32が記憶するデータ32a~32f及び32hのそれぞれをテーブル形式のデータとして説明するが、これに限定されるものではなく、DB(Database)又は配列等の種々のデータ形式であってよい。
【0033】
制御部33は、機械学習に関する種々の制御を行なう。図1に示すように、制御部33は、例示的に、取得部33a、生成部33b、学習部33c、及び、判定部33dを備えてよい。
【0034】
取得部33aは、例えば、通信部31を介して入力されるデータに基づき入力データ32aを取得し、取得した入力データ32aをメモリ部32に格納してよい。入力データ32aは、学習フェーズで用いられるデータであり、例えば、図2に示すレセプト情報21a、電子カルテ情報21b、及び、算定項目21cの情報に基づいてよい。
【0035】
入力データ32aは、複数のレセプトに関する第1データの一例であり、例えば、通信部31を介して外部、例えば図示しない端末等の情報処理装置から入力される複数のデータに基づき取得(例えば受信又は生成)されてよい。情報処理装置の一例としては、図1の説明において示した医事管理システム1a、及び、電子カルテ情報1cを出力するシステムのうちの一方又は双方が挙げられる。
【0036】
図4は、入力データ32aの一例を示す図である。図4に示すように、入力データ32aは、例示的に、ID、ラベル、性別、年齢、及び、診療項目1~診療項目N(Nは1以上の整数)の項目を含んでよい。
【0037】
IDは、レセプト算定漏れの学習対象のデータ、換言すれば、1つのエントリを識別する識別情報である。例えば、IDは、レセプト情報21aのエントリの識別情報であってもよい。
【0038】
ラベルは、エントリごとに、算定漏れの検知対象とする算定項目に該当するか否か、換言すれば、算定項目の請求の有無を示す情報である。ラベルは、正解データの一例であり、例えば、算定項目21cの情報に基づき設定されてよい。図4の例では、ラベルには各エントリが「算定項目1」に該当するか否かを示す情報が設定されている。
【0039】
「算定項目1」は、検知対象の算定項目であり、第1算定項目の一例である。なお、一実施形態では、検知対象として「算定項目1」に着目した入力データ32aの一例を示すが、これに限定されるものではない。メモリ部32は、検知対象として他の算定項目に着目した入力データ32a(他の算定項目に該当するか否かを示すラベルを含む入力データ32a)を記憶してもよい。
【0040】
性別及び年齢は、レセプトに係る診療対象者の性別及び年齢を示す情報である。例えば、性別及び年齢は、レセプト情報21a及び電子カルテ情報21bに基づき設定されてよい。
【0041】
診療項目1~診療項目Nは、エントリのデータが関連する1以上の第1診療項目の一例であり、説明変数項目の一例である。診療項目には、診療報酬の請求に関する種々の項目が設定されてよい。例えば、診療項目1~診療項目Nは、レセプト情報21aに基づき設定されてよい。
【0042】
また、取得部33aは、例えば、通信部31を介して入力されるデータに基づき判定データ32hを取得し、取得した判定データ32hをメモリ部32に格納してよい。判定データ32hは、判定フェーズで用いられるデータであり、例えば、図2に示す新規の修正前レセプト24及び新規の電子カルテ25の情報に基づいてよい。判定データ32hは、例えば、入力データ32aのうちのラベル(正解データ)を除外したデータ構造を有してよい。
【0043】
生成部33bは、入力データ32aに基づき、学習データ32fを生成する。以下、生成部33bによる学習データ32fの生成処理の一例を説明する。
【0044】
図5は、一実施形態の比較例に係るシステム100による機械学習の一例を説明する図である。図5に示すように、システム100は、各ラベルのデータが大量に存在するデータ110を用いて学習120を実行することで、モデル130を生成する。図5の例では、データ110が大量に存在するため、説明変数項目が多い場合であっても適切に学習120を行なうことができる。
【0045】
図6は、一実施形態の比較例に係るシステム200によるレセプト算定漏れ検知の機械学習の一例を説明する図である。図6に示すように、入力データ32aには、算定項目(ラベル)ごとのデータ(図6の例では算定項目1に該当するデータ)が少量しか存在しない場合がある。算定項目1に該当するデータが少量であるため、大量の診療項目(説明変数項目)がある場合、システム200は、適切な学習を行なうことが困難となる。
【0046】
そこで、システム200は、入力データ32aからデータ抽出処理(符号a参照)を行ない、入力データ32aから、算定項目請求済データ210及び有意差算出用データ220を抽出する。算定項目請求済データ210は、入力データ32aのうちの検知対象の算定項目を請求した、例えば「算定項目1を請求した」データのみを抽出(符号b参照)したデータである。有意差算出用データ220は、入力データ32aのうちの、「算定項目1を請求した」データ、以外のデータから、ランダムで抽出したデータである(符号c参照)。
【0047】
システム200は、各診療項目の有意差判定処理(符号d参照)を行ない、入力データ32aのうちの「有意差あり」の診療項目のみを学習データ230として利用して学習(符号f参照)を行なうことで、検知モデル240を生成する。
【0048】
このように、比較例に係るシステム200は、学習に有効な診療項目のみを抽出することで、学習させる診療項目数を削減することができる。図6の例では、システム200は、「有意差あり」の診療項目として、「診療項目1」~「診療項目N」のうちの「診療項目2」及び「診療項目4」のみを抽出したデータを学習データ230として利用する。これにより、精度の高いレセプト算定漏れの検知モデル240を生成することができる。
【0049】
しかしながら、算定項目には、性別又は年齢等に限定される項目が存在することがあり、算定項目には無関係な診療項目が、有意性のある項目として選択されてしまうことがある。例えば、成人男性特有の算定項目について学習(符号f参照)を行なう際に、有意差判定のデータ220として、女性又は小児のレセプトデータがランダム抽出される場合がある。このような場合、算定項目には無関係な診療項目が「有意差あり」として抽出(符号e参照)される可能性がある。このように、検知対象の算定項目には関係の無い診療項目が学習データ230に含まれることで、レセプト算定漏れ検出の精度が低下することがある。
【0050】
図7は、一実施形態に係る検知システム3(生成部33b)による学習データ32fの生成処理の一例を説明する図である。
【0051】
図7に示すように、生成部33bは、入力データ32aから、抽出ルール32bに基づきデータ抽出処理(符号A参照)を行ない、ルール適用済データ32cを生成し、メモリ部32に格納してよい。
【0052】
抽出ルール32bは、入力データ32aからレセプトの算定項目を抽出する条件の一例であり、図7に例示するように、算定項目ごとに、入力データ32aからデータ(エントリ)を抽出するためのルールを示す。抽出ルール32bは、例えば、予め検知システム3に設定されてよい。
【0053】
ルールは、例えば、算定項目に対応する属性の制限を含んでよい。属性とは、例えば、対象患者の性別及び年齢の一方又は双方を含んでよい。属性の制限とは、例えば、性別の区分、年齢の範囲、等の指定を含んでよい。図7の例では、「算定項目1」のルールは、性別:男性、且つ、年齢:20歳以上である。なお、属性としては、性別及び年齢に限定されるものではなく、種々の項目を含んでよい。また、抽出ルール32bでは、例えば、少なくとも1つ又は全ての属性の制限が設定されないというルール(「算定項目2」及び「算定項目5」参照)が許容されてもよい。
【0054】
例えば、生成部33bは、入力データ32aから、検知対象の算定項目の抽出ルール32bを満たすエントリを抽出することで、ルール適用済データ32cを生成してよい。ルール適用済データ32cは、第2データの一例である。
【0055】
図8は、ルール適用済データ32cの一例を示す図である。図8の例では、生成部33bは、図7の抽出ルール32bのうちの「算定項目1」に対応する、性別:男性、且つ、年齢:20歳以上のルールに従い、入力データ32aから該当するデータ(エントリ)のみを抽出した場合を示す。図8に例示するように、ルール適用済データ32cは、図4に示す入力データ32aから、「算定項目1」に対応するルールが適用されて抽出されたデータ(エントリ)を含むものとなる。換言すれば、ルール適用済データ32cは、入力データ32aにおいて、当該ルールの対象外である「ID002」、「ID004」、「ID005」、「ID010」のデータ(エントリ)が除外されたデータであるといえる。
【0056】
このように、生成部33bは、算定項目ごとに、対象の年齢、性別等の条件を予め設定しておき、診療項目ごとの有意差判定を実施する前に、年齢、性別等に基づいて、利用するレセプトデータを選択するのである。
【0057】
以上のように、生成部33bは、複数のレセプトに関する入力データ32aから、レセプトの算定項目を抽出する抽出ルール32bに従ってルール適用済データ32cを抽出する抽出部の一例である。
【0058】
図7に例示するように、生成部33bは、上述のように生成したルール適用済データ32cから、第3データの一例である算定項目請求済データ32dと、第4データの一例である有意差算出用データ32eとを抽出し、メモリ部32に格納してよい。
【0059】
図9は、算定項目請求済データ32dの一例を示す図である。算定項目請求済データ32dは、ルール適用済データ32cから検知対象の「算定項目に該当する」(算定項目を請求した)データのみを抽出したデータである。図9の例では、算定項目請求済データ32dは、ルール適用済データ32cから算定項目1に該当する「ID001」、「ID003」、「ID006」、「ID008」のデータのみを抽出したデータである(図7の符号B参照)。
【0060】
なお、生成部33bは、入力データ32aから検知対象の「算定項目に該当する」(算定項目を請求した)データのみを抽出して算定項目請求済データ32dを生成してもよい。検知対象の算定項目を請求したデータは、検知対象の算定項目の抽出ルール32bに合致するデータであるためである。
【0061】
図10は、有意差算出用データ32eの一例を示す図である。有意差算出用データ32eは、ルール適用済データ32cから、抽出ルール32bで絞られ、且つ、検知対象の「算定項目に該当しない」(算定項目を請求しない)データのみをランダムで(図10の例では全て)抽出したデータである。換言すれば、有意差算出用データ32eは、ルール適用済データ32cのうちの検知対象の算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出したデータである。図10の例では、有意差算出用データ32eは、ルール適用済データ32cから算定項目1に該当しない「ID007」、「ID009」のデータのみを抽出したデータとなる(図7の符号C参照)。
【0062】
図7に例示するように、生成部33bは、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eに基づき、各診療項目の有意差判定処理(符号D参照)を行なう。
【0063】
図11は、有意差判定処理の一例を説明するための図である。図11に示すように、生成部33bは、過去の算定実績から、検知対象の算定項目(診療行為)が算定された際に診断されている診療項目、例えば病名及び他の診療行為等の関係性を検定する。過去の算定実績としては、例えば、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eが用いられてよい。
【0064】
図11では、検知対象の算定項目として「特別食加算」を例に挙げ、診療項目として、傷病名:前腕骨折、頭痛、糖尿病に関係する各項目を例に挙げて説明する。図11に示すように、生成部33bは、検知対象の算定項目である「特別食加算」について、診療項目ごとに、傷病名に関する診療項目があるか否か(有無)、及び、「特別食加算」が算定されたか否かに基づき、関係性の有無を検定(判定)してよい。「特別食加算」が算定されたか否かは、算定された場合は算定項目請求済データ32d、算定されなかった場合は有意差算出用データ32eから取得できる。
【0065】
例えば、生成部33bは、図11に示すように、診療項目の有無、及び、算定項目が算定されたか否かの組み合わせに該当するデータ(エントリ)数をそれぞれ集計し、集計結果に基づき、関係性があるか否か、換言すれば、有意差があるか否かを判定してよい。
【0066】
有意差の有無の判定は、有意差検定等の種々の手法が用いられてよい。例えば、生成部33bは、診療項目があり、且つ、算定項目が算定された場合の集計数、当該集計数と他のいずれか1つ以上の集計数の合計との割合、等の少なくとも一方に基づき、有意差の有無を判定してもよい。
【0067】
図11に例示するように、生成部33bは、糖尿病の診療項目について、下記(i)の集計数が閾値を超えた、及び/又は、下記(i)の集計数と下記(ii)~(iv)のいずれか1つ以上の集計数の合計との割合が閾値を超えた場合、有意差ありと判定してよい。なお、生成部33bは、上記以外の組み合わせに基づき、有意差の有無を判定してもよい。
(i)糖尿病あり且つ算定された場合の集計数“800”
(ii)糖尿病なし且つ算定された場合の集計数“1200”
(iii)糖尿病あり且つ算定されなかった場合の集計数“500”
(iv)糖尿病なし且つ算定されなかった場合の集計数“10000”
【0068】
一方、図11に例示するように、生成部33bは、前腕骨折及び頭痛のそれぞれの診療項目について、有意差の有無の判定を行ない、関係性がない、換言すれば、有意差がないと判定してよい。
【0069】
以上のように、判定処理は、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eに基づき、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eに含まれる複数の診療項目についての、検知対象の算定項目に関する有意差を判定する処理といえる。このため、生成部33bは、有意差の判定処理を実行する有意差判定部の一例である。
【0070】
なお、一実施形態に係る検知システム3は、生成部33bによる有意差の判定処理の結果を出力してもよい。有意差の判定処理結果の出力としては、例えば、モニタ等の出力装置への表示、メモリ部32又は記憶装置等への格納、通信部31を介した検知システム3外部(例えば情報処理装置)への送信、等が挙げられる。
【0071】
このように、検知システム3は、例えば、複数の診療項目についての、検知対象の算定項目に関する有意差(有意性)を判定する有意差判定装置と捉えられてもよい。
【0072】
図7に例示するように、生成部33bは、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eのうちの、有意差判定処理において「有意差あり」と判定した診療項目のみを抽出して(符号E参照)、学習データ32fを生成してよい。そして、生成部33bは、学習データ32fをメモリ部32に格納してよい。算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eのうちの「有意差あり」と判定した診療項目は、1以上の第2診療項目の一例である。
【0073】
なお、生成部33bは、ルール適用済データ32cのうちの「有意差あり」と判定した診療項目のみを抽出することで学習データ32fを生成してもよい。
【0074】
図12は、学習データ32fの一例を示す図である。図12の例では、図11に示す傷病名:前腕骨折、頭痛に関する診療項目がそれぞれ「診療項目2」、「診療項目4」であり、傷病名:糖尿病に関する診療項目が「診療項目1」である場合を想定する。また、図12の例では、「診療項目3」、「診療項目5」~「診療項目N」についても、有意差判定処理において「有意差あり」と判定された場合を想定する。
【0075】
図12に示すように、学習データ32fは、ルール適用済データ32cから、「有意差あり」と判定された「診療項目1」、「診療項目3」、「診療項目5」~「診療項目N」を抽出したデータとなる。換言すれば、学習データ32fは、ルール適用済データ32cから、「有意差なし」と判定された「診療項目2」、「診療項目4」を除外したデータとなる。
【0076】
このように、生成部33bは、学習データ32fを生成する学習データ生成部の一例である。
【0077】
以上のように、生成部33bは、検知対象の算定項目と関係性が高い診療項目を学習データ32fに設定することで、後述する学習部33cにより汎用的な検知モデル32gを構築することができる。このとき、生成部33bは、国の定義等を学習データ32fの生成に利用することを抑止してよい。
【0078】
また、生成部33bは、有意差算出用データ32eを用いた有意差判定処理により、検知対象の算定項目(例えば算定項目1)に関する同条件のデータについての有意差(有意性)を判定するため、関係のない診療項目が「有意差あり」と判定される件数を削減できる。
【0079】
図7の説明に戻り、学習部33cは、図2に示す機械学習部22の一例であり、生成部33bが生成した学習データ32fに基づき、検知モデル32gの機械学習、例えば検知モデル32gの作成又は更新を行ってよい。検知モデル32gの機械学習は、学習データ32fを機械学習の推論に入力することで実施されてよい。
【0080】
例えば、学習部33cは、学習指示の入力に応じて、学習データ32fを機械学習に入力して、機械学習の推論結果と教師データ(ラベル)との誤差に基づいて、当該誤差が小さくなるように学習を行なう。一例として、学習部33cは、判定精度が高くなるように機械学習のパラメータを学習する。
【0081】
学習部33cは、所定回数の学習を実行した場合、又は、誤差が所定値よりも小さくなった場合に学習を終了し、各種パラメータ等を検知モデル32gとしてメモリ部32に記憶してよい。学習方法は、誤差逆伝播法等の様々な手法を採用することができる。
【0082】
このように、学習部33cは、学習データ32fを用いて、レセプトの診療報酬の算定漏れを検知するための検知モデル32gの機械学習を行なうモデル学習部の一例である。
【0083】
判定部33dは、学習部33cによる検知モデル32gの学習後に、新規の判定データ32hを入力とした、学習済みの検知モデル32gによる判定結果(検知結果)を取得する。判定データ32hは、第5データの一例である。判定部33dは、判定結果に基づき、算定漏れ候補レコメンドを出力してよい。
【0084】
図13は、判定データ32hの一例を示す図である。図13に示すように、判定データ32hは、例示的に、属性(例えば性別、年齢)、並びに、複数の診療項目を含んでよい。
【0085】
例えば、判定部33dは、メモリ部32を参照し、学習済みの検知モデル32gを用いて、判定データ32hに対して算定漏れ検知を実行する。例えば、判定部33dは、判定データ32hを、学習済みの検知モデル32gを用いて構築した機械学習の推論プロセスに入力して判定結果を取得し、取得した判定結果に基づき、算定漏れ候補レコメンドを出力してよい。例えば、判定部33dは、図2に示す算定漏れ候補レコメンド26のように、対象患者、検知日、算定漏れ項目、及び、算定漏れ確率の少なくとも1つの項目を含む算定漏れ候補レコメンドを出力してよい。
【0086】
算定漏れ候補レコメンドの出力としては、例えば、モニタ等の出力装置への表示、メモリ部32又は記憶装置等への格納、通信部31を介した検知システム3外部(例えば情報処理装置)への送信、等が挙げられる。
【0087】
このように、判定部33dは、学習済みの検知モデル32gを用いて、複数のレセプトに関する判定データ32hの診療報酬の算定漏れ検知を行なう検知部の一例である。
【0088】
以上のように、一実施形態に係る検知システム3によれば、有意差判定処理により、検知対象の算定項目と関係のない(関係の小さい)診療項目が「有意差あり」と判定される件数を削減できる。これにより、レセプト算定漏れの検知精度低下を低減させることができ、診療報酬の算定漏れを防ぐことができるため、医療収益を改善させることができる。
【0089】
〔1-3〕動作例
以下、上述した検知システム3の動作例を、フローチャートを参照しながら説明する。
【0090】
〔1-3-1〕学習処理(モデル作成フェーズ)
図14は、一実施形態に係る検知システム3の学習処理の動作例を説明するフローチャートである。
【0091】
図14に例示するように、検知システム3の制御部33において、取得部33aは、オペレータ等が利用する情報処理装置から通信部31を介して入力される学習用のデータに基づき、入力データ32aを取得し(ステップS1)、メモリ部32に格納する。取得部33aは、入力データ32aを取得すると、生成部33bに学習データ32fの生成指示を通知してもよい。学習用のデータには、レセプト情報、電子カルテ情報及び算定項目(正解データ)の情報が含まれてよい。入力データ32aは、図4に例示するように、ラベル、属性(例えば性別、年齢)、並びに、複数の診療項目を含んでよい。
【0092】
生成部33bは、取得部33aから生成指示が入力されると、抽出ルール32bのうちの検知対象の算定項目のルールに合致するデータを入力データ32aから抽出することでルール適用済データ32cを生成し(ステップS2)、メモリ部32に格納する。
【0093】
生成部33bは、ルール適用済データ32cから、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eを生成(抽出)し(ステップS3)、メモリ部32に格納する。例えば、生成部33bは、ルール適用済データ32c又は入力データ32aから、検知対象の「算定項目に該当する」(算定項目を請求した)データのみを抽出することで算定項目請求済データ32dを生成してよい。また、生成部33bは、ルール適用済データ32cから、抽出ルール32bで絞られ、且つ、検知対象の「算定項目に該当しない」(算定項目を請求しない)データのみをランダムで抽出することで、有意差算出用データ32eを生成してよい。
【0094】
生成部33bは、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eを用いて有意差判定処理を実行する(ステップS4)。例えば、生成部33bは、有意差判定処理において、検知対象の算定項目と、複数の診療項目の各々との関係性の有無を判定することで、各診療項目が算定項目に関係するか否か、換言すれば有意差があるか否かを判定してよい。
【0095】
生成部33bは、有意差判定処理の処理結果に基づき、入力データ32a、ルール適用済データ32c、又は、算定項目請求済データ32d及び有意差算出用データ32eから学習データ32fを生成し(ステップS5)、メモリ部32に格納する。学習データ32fは、入力データ32aのうちの、検知対象の抽出ルール32bに該当するエントリのみを含み、且つ、診療項目が、有意差判定処理において有意差があると判定された診療項目に制限されたデータとなる。
【0096】
学習部33cは、学習データ32fを用いた機械学習により、検知モデル32gを生成して(ステップS6)、メモリ部32に格納し、モデル作成フェーズの処理が終了する。なお、モデル作成フェーズでは、取得部33a、生成部33b及び学習部33cは、検知対象の算定項目ごとに、ステップS1~S6の処理を実行してよい。
【0097】
〔1-3-2〕判定処理(モデル適用フェーズ)
図15は、一実施形態に係る検知システム3の判定処理の動作例を説明するフローチャートである。
【0098】
図15に例示するように、取得部33aは、オペレータ等が利用する情報処理装置から通信部31を介して入力される検知対象のデータに基づき、判定データ32hを取得し(ステップS11)、メモリ部32に格納する。取得部33aは、判定データ32hを取得すると、判定部33dに判定指示を通知してもよい。検知対象のデータには、レセプト情報及び電子カルテ情報の情報が含まれてよい。
【0099】
判定部33dは、例えば、取得部33aから判定指示が入力されると、メモリ部32を参照し、学習済み検知モデル32gを用いて、判定対象の判定データ32hを判定する(ステップS12)。例えば、判定部33dは、検知モデル32gを適用した機械学習の推論プロセスに判定データ32hを入力し、機械学習からの出力を判定結果として取得してよい。
【0100】
判定部33dは、判定結果に基づき、算定漏れ候補レコメンドを生成して(ステップS13)、出力し(ステップS14)、モデル適用フェーズの処理が終了する。
【0101】
〔1-4〕ハードウェア構成例
一実施形態に係る検知システム3は、例えば、仮想サーバ(VM;Virtual Machine)、又は、物理サーバ等のコンピュータ(情報処理装置)により実現されてもよい。また、検知システム3の機能は、1台のコンピュータにより実現されてもよいし、2台以上のコンピュータにより実現されてもよい。さらに、検知システム3の機能のうちの少なくとも一部は、クラウド環境により提供されるHW(Hardware)リソース及びNW(Network)リソースを用いて実現されてもよい。
【0102】
図16は、検知システム3の機能を実現するコンピュータ30のハードウェア(HW)構成例を示すブロック図である。検知システム3の機能を実現するHWリソースとして、複数のコンピュータが用いられる場合は、各コンピュータが図16に例示するHW構成を備えてよい。
【0103】
図16に示すように、コンピュータ30は、HW構成として、例示的に、プロセッサ30a、メモリ30b、記憶部30c、IF(Interface)部30d、IO(Input / Output)部30e、及び読取部30fを備えてよい。
【0104】
プロセッサ30aは、種々の制御や演算を行なう演算処理装置の一例である。プロセッサ30aは、コンピュータ30内の各ブロックとバス30iで相互に通信可能に接続されてよい。なお、プロセッサ30aは、複数のプロセッサを含むマルチプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサコアを有するマルチコアプロセッサであってもよく、或いは、マルチコアプロセッサを複数有する構成であってもよい。
【0105】
プロセッサ30aとしては、例えば、CPU、MPU、GPU、APU、DSP、ASIC、FPGA等の集積回路(IC;Integrated Circuit)が挙げられる。なお、プロセッサ30aとして、これらの集積回路の2以上の組み合わせが用いられてもよい。CPUはCentral Processing Unitの略称であり、MPUはMicro Processing Unitの略称である。GPUはGraphics Processing Unitの略称であり、APUはAccelerated Processing Unitの略称である。DSPはDigital Signal Processorの略称であり、ASICはApplication Specific ICの略称であり、FPGAはField-Programmable Gate Arrayの略称である。
【0106】
メモリ30bは、種々のデータやプログラム等の情報を格納するHWの一例である。メモリ30bとしては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリ、及び、PM(Persistent Memory)等の不揮発性メモリ、の一方又は双方が挙げられる。
【0107】
記憶部30cは、種々のデータやプログラム等の情報を格納するHWの一例である。記憶部30cとしては、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)等の半導体ドライブ装置、不揮発性メモリ等の各種記憶装置が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えば、フラッシュメモリ、SCM(Storage Class Memory)、ROM(Read Only Memory)等が挙げられる。
【0108】
また、記憶部30cは、コンピュータ30の各種機能の全部若しくは一部を実現するプログラム30g(レセプトデータ有意性判定プログラム)を格納してよい。
【0109】
例えば、検知システム3のプロセッサ30aは、記憶部30cに格納されたプログラム30gをメモリ30bに展開して実行することにより、図3に例示する検知システム3(例えば通信部31及び制御部33)としての機能を実現できる。また、図3に例示するメモリ部32は、メモリ30b及び記憶部30cの少なくとも1つが有する記憶領域により実現されてよい。さらに、図3に示す判定部33dは、メモリ30b及び記憶部30cの少なくとも1つが有する記憶領域に、有意差の判定結果、算定漏れ候補レコメンド等の情報を出力し格納してもよい。
【0110】
IF部30dは、ネットワークとの間の接続及び通信の制御等を行なう通信IFの一例である。例えば、IF部30dは、イーサネット(登録商標)等のLAN(Local Area Network)、或いは、FC(Fibre Channel)等の光通信等に準拠したアダプタを含んでよい。当該アダプタは、無線及び有線の一方又は双方の通信方式に対応してよい。例えば、検知システム3は、IF部30dを介して、図示しない情報処理装置と相互に通信可能に接続されてよい。図3に例示する通信部31の少なくとも一部の機能は、IF部30dにより実現されてよい。また、例えば、プログラム30gは、当該通信IFを介して、ネットワークからコンピュータ30にダウンロードされ、記憶部30cに格納されてもよい。
【0111】
IO部30eは、入力装置、及び、出力装置、の一方又は双方を含んでよい。入力装置としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等が挙げられる。出力装置としては、例えば、モニタ、プロジェクタ、プリンタ等が挙げられる。例えば、図3に示す判定部33dは、IO部30eの出力装置に判定結果を出力し表示させてもよい。
【0112】
読取部30fは、記録媒体30hに記録されたデータやプログラムの情報を読み出すリーダの一例である。読取部30fは、記録媒体30hを接続可能又は挿入可能な接続端子又は装置を含んでよい。読取部30fとしては、例えば、USB(Universal Serial Bus)等に準拠したアダプタ、記録ディスクへのアクセスを行なうドライブ装置、SDカード等のフラッシュメモリへのアクセスを行なうカードリーダ等が挙げられる。なお、記録媒体30hにはプログラム30gが格納されてもよく、読取部30fが記録媒体30hからプログラム30gを読み出して記憶部30cに格納してもよい。
【0113】
記録媒体30hとしては、例示的に、磁気/光ディスクやフラッシュメモリ等の非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体が挙げられる。磁気/光ディスクとしては、例示的に、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、HVD(Holographic Versatile Disc)等が挙げられる。フラッシュメモリとしては、例示的に、USBメモリやSDカード等の半導体メモリが挙げられる。
【0114】
上述したコンピュータ30のHW構成は例示である。従って、コンピュータ30内でのHWの増減(例えば任意のブロックの追加や削除)、分割、任意の組み合わせでの統合、又は、バスの追加若しくは削除等は適宜行なわれてもよい。例えば、検知システム3において、IO部30e及び読取部30fの少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0115】
〔2〕その他
上述した一実施形態に係る技術は、以下のように変形、変更して実施することができる。
【0116】
例えば、図3に示す検知システム3が備える通信部31及び制御部33は、併合してもよく、それぞれ分割してもよい。図3に示す制御部33が備える取得部33a、生成部33b、学習部33c及び判定部33dは、任意の組み合わせで併合してもよく、それぞれ分割してもよい。
【0117】
また、図3に示す検知システム3は、複数の装置がネットワークを介して互いに連携することにより、各処理機能を実現する構成であってもよい。一例として、通信部31はWebサーバ、制御部33はアプリケーションサーバ、メモリ部32はDBサーバ、等であってもよい。この場合、Webサーバ、アプリケーションサーバ及びDBサーバが、ネットワークを介して互いに連携することにより、検知システム3としての各処理機能を実現してもよい。
【0118】
〔3〕付記
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0119】
(付記1)
複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出し、
前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行ない、
前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成する、
処理をコンピュータに実行させる、レセプトデータ有意性判定プログラム。
【0120】
(付記2)
前記判定処理において、前記第1算定項目の請求の有無と、前記複数の診療項目の各々の診断の有無とに基づき、前記第1算定項目の請求に関連性のある前記1以上の第2診療項目を判定する、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記1に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【0121】
(付記3)
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、前記第1算定項目の請求の有無を示す正解データと、前記複数の診療項目とを含み、
前記判定処理において、前記第1算定項目の請求の有無、及び、前記複数の診療項目の各々の診断の有無のそれぞれの組み合わせの集計結果に基づき、前記1以上の第2診療項目を判定する、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記2に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【0122】
(付記4)
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、診療対象者に関する属性情報を含み、
前記条件は、前記属性情報に関する条件であり、
前記第2データの抽出は、前記第1データから、前記条件を満たす属性情報を有するデータを抽出することを含む、
付記1~付記3のいずれか1項に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【0123】
(付記5)
前記学習データを用いて、前記レセプトの診療報酬の算定漏れを検知するための検知モデルの機械学習を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記1~付記4のいずれか1項に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【0124】
(付記6)
学習済みの前記検知モデルを用いて、複数のレセプトに関する第5データの診療報酬の算定漏れ検知を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記5に記載のレセプトデータ有意性判定プログラム。
【0125】
(付記7)
複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出し、
前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行ない、
前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成する、
処理をコンピュータが実行する、レセプトデータ有意性判定方法。
【0126】
(付記8)
前記判定処理において、前記第1算定項目の請求の有無と、前記複数の診療項目の各々の診断の有無とに基づき、前記第1算定項目の請求に関連性のある前記1以上の第2診療項目を判定する、
処理を前記コンピュータが実行する、付記7に記載のレセプトデータ有意性判定方法。
【0127】
(付記9)
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、前記第1算定項目の請求の有無を示す正解データと、前記複数の診療項目とを含み、
前記判定処理において、前記第1算定項目の請求の有無、及び、前記複数の診療項目の各々の診断の有無のそれぞれの組み合わせの集計結果に基づき、前記1以上の第2診療項目を判定する、
処理を前記コンピュータが実行する、付記8に記載のレセプトデータ有意性判定方法。
【0128】
(付記10)
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、診療対象者に関する属性情報を含み、
前記条件は、前記属性情報に関する条件であり、
前記第2データの抽出は、前記第1データから、前記条件を満たす属性情報を有するデータを抽出することを含む、
付記7~付記9のいずれか1項に記載のレセプトデータ有意性判定方法。
【0129】
(付記11)
前記学習データを用いて、前記レセプトの診療報酬の算定漏れを検知するための検知モデルの機械学習を行なう、
処理を前記コンピュータが実行する、付記7~付記10のいずれか1項に記載のレセプトデータ有意性判定方法。
【0130】
(付記12)
学習済みの前記検知モデルを用いて、複数のレセプトに関する第5データの診療報酬の算定漏れ検知を行なう、
処理を前記コンピュータが実行する、付記11に記載のレセプトデータ有意性判定方法。
【0131】
(付記13)
複数のレセプトに関する第1データから、レセプトの算定項目を抽出する条件に従って第2データを抽出する抽出部と、
前記第1データ又は前記第2データから第1算定項目を請求したデータを抽出した第3データと、前記第2データのうちの前記第1算定項目を請求したデータを外したデータからランダムに抽出した第4データとに基づき、前記第3データ及び前記第4データに含まれる複数の第1診療項目についての、前記第1算定項目に関する有意差を判定する判定処理を行なう有意差判定部と、
前記第3データ及び前記第4データから、前記判定処理により有意差があると判定した1以上の第2診療項目を抽出した学習データを生成する学習データ生成部と、を備える、情報処理装置。
【0132】
(付記14)
前記有意差判定部は、前記第1算定項目の請求の有無と、前記複数の診療項目の各々の診断の有無とに基づき、前記第1算定項目の請求に関連性のある前記1以上の第2診療項目を判定する、
付記13に記載の情報処理装置。
【0133】
(付記15)
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、前記第1算定項目の請求の有無を示す正解データと、前記複数の診療項目とを含み、
前記有意差判定部は、前記第1算定項目の請求の有無、及び、前記複数の診療項目の各々の診断の有無のそれぞれの組み合わせの集計結果に基づき、前記1以上の第2診療項目を判定する、
付記14に記載の情報処理装置。
【0134】
(付記16)
前記第1データは、前記複数のレセプトの各々について、診療対象者に関する属性情報を含み、
前記条件は、前記属性情報に関する条件であり、
前記抽出部は、前記第1データから、前記条件を満たす属性情報を有するデータを抽出する、
付記13~付記15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0135】
(付記17)
前記学習データを用いて、前記レセプトの診療報酬の算定漏れを検知するための検知モデルの機械学習を行なうモデル学習部、を備える
付記13~付記16のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0136】
(付記18)
学習済みの前記検知モデルを用いて、複数のレセプトに関する第5データの診療報酬の算定漏れ検知を行なう検知部、を備える
付記17に記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0137】
1 システム
1a 医事管理システム
10、2、3 レセプト算定漏れ検知システム
21 算定実績
21a レセプト
21b 電子カルテ
21c 算定項目
22 機械学習部
23、32g 検知モデル
24 新規修正前レセプト
25 新規電子カルテ
26 算定漏れ候補レコメンド
30 コンピュータ
31 通信部
32 メモリ部
32a 入力データ
32b 抽出ルール
32c ルール適用済データ
32d 算定項目請求済データ
32e 有意差算出用データ
32f 学習データ
32h 判定データ
33 制御部
33a 取得部
33b 生成部
33c 学習部
33d 判定部
図1
図2
図3
図4
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図16