(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
C08G59/40
(21)【出願番号】P 2020550529
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2019039054
(87)【国際公開番号】W WO2020075611
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2018193020
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018247436
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 充孝
(72)【発明者】
【氏名】郭 思博
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183108(JP,A)
【文献】特開2013-018240(JP,A)
【文献】特開2013-159639(JP,A)
【文献】特開平06-057155(JP,A)
【文献】特開平05-262969(JP,A)
【文献】特開2007-009187(JP,A)
【文献】特開2003-342461(JP,A)
【文献】米国特許第04943619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C08G59/00-59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表され、重量平均分子量(Mw)が500以上10,000以下の範囲であることを特徴とするポリカーボネートオリゴマーと、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する
下記式(5)で表されるポリエポキシ化合物
を、成分(A)と成分(B)との混合比率「(成分(B)エポキシ基のモル数)/(成分(A)の水酸基及び炭酸エステル基の合計モル数)」が0.9~5.0の範囲で含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(1)、(2)、(3)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各
々水素原
子を示し、X
は炭素原子数5~15のシクロアルキリデン基
(但し、アルキル基を有しても良いシクロヘキシリデン基は除く。)を示し、nは、1以上の整数である
。)
【化4】
(式(5)中のYは、各々独立して炭素原子数1~5のアルキリデン基を示し、mは、0又は1~10の整数である。)
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び誘電特性に優れるエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、密着性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性などに優れた硬化物となるために、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。
例えば、特許文献1、2には、ビスフェノールA型のポリカーボネートオリゴマーを硬化剤として使用することにより、可撓性、柔軟性、耐熱性に優れ、機械特性が向上したエポキシ樹脂発泡体が得られることが具体的に開示されているが、その耐熱性等の性能は、近年求められるレベルからみて、十分といえるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平01-103633号公報
【文献】特開平04-16337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した事情を背景としてなされたものであって、耐熱性のみならず誘電特性にも優れるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題解決のために鋭意検討した結果、下記式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表され、重量平均分子量(Mw)が500以上10,000以下の範囲であることを特徴とするポリカーボネートオリゴマーを硬化剤として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物と組み合わせてエポキシ樹脂組成物とすることにより、耐熱性のみならず誘電特性をも向上し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は以下の通りである。
1.(A)下記式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表され、重量平均分子量(Mw)が500以上10,000以下の範囲であることを特徴とするポリカーボネートオリゴマーと、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(1)、(2)、(3)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立して水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~12のシクロアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基を示し、Xは単結合、炭素原子数1~15のアルキレン基、炭素原子数5~15のシクロアルキレン基、炭素原子数2~15のアルキリデン基、炭素原子数5~15のシクロアルキリデン基、フェニレン基、アダマンタン-1,3-イルエン基、アダマンタン-2-イリデン基、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基又はフルオレン-9-イリデン基を示し、nは、1以上の整数である。但し、R
1、R
2、R
3及びR
4が全て水素原子を示し且つXがイソプロピリデン基である場合を除く。)
2.1.記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表され、特定の重量平均分子量を有するポリカーボネートオリゴマーを硬化剤として含有することにより、誘電特性が向上し工業的に有利な効果を発揮する。
また、本発明によるエポキシ樹脂組成物を硬化することにより得られた硬化物は、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れているため、耐熱性が要求される工業用材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
<本発明の成分(A)について>
本発明における成分(A)のポリカーボネートオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が500以上10,000以下の範囲である、下記式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表される化合物である。
【化4】
【化5】
【化6】
(式(1)、(2)、(3)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立して水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~12のシクロアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基を示し、Xは単結合、炭素原子数1~15のアルキレン基、炭素原子数5~15のシクロアルキレン基、炭素原子数2~15のアルキリデン基、炭素原子数5~15のシクロアルキリデン基、フェニレン基、アダマンタン-1,3-イルエン基、アダマンタン-2-イリデン基、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基又はフルオレン-9-イリデン基を示し、nは、1以上の整数である。但し、R
1、R
2、R
3及びR
4が全て水素原子を示し且つXがイソプロピリデン基である場合を除く。)
【0009】
上記式(1)~(3)において、R1、R2、R3及びR4のいずれかが、炭素原子数1~8のアルキル基である場合、アルキル基としては、好ましくは炭素原子数1~6の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。このようなアルキル基には、本発明の効果を損なわない範囲で例えばフェニル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
上記式(1)~(3)において、R1、R2、R3及びR4のいずれかが、炭素原子数5~12のシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基としては、好ましくは炭素原子数5~7のシクロアルキル基であり、具体的には、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロへプチル基等が挙げられる。このようなシクロアルキル基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。
また、上記式(1)~(3)において、R1、R2、R3及びR4のいずれかが、炭素原子数1~8のアルコキシ基である場合、アルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数1~4の直鎖状、分岐鎖状のアルコキシ基であり、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。このようなアルコキシ基には本願の効果を損なわない範囲で、例えば、フェニル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
さらに、上記式(1)~(3)において、R1、R2、R3及びR4のいずれかが、炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。このような芳香族炭化水素基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基及び/又は、炭素原子数1~4のアルコキシ基が1~3程度置換していてもよい。
【0010】
上記式(1)~(3)において、Xが炭素原子数1~15のアルキレン基である場合、アルキレン基としては、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~8のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキレン基であり、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。このようなアルキレン基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば芳香族炭化水素基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよく、フェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基などが例示できる。
上記式(1)~(3)において、Xが炭素原子数5~15のシクロアルキレン基である場合、シクロアルキレン基としては、好ましくは炭素原子数5~7のシクロアルキレン基であり、具体的には、例えば、1,3-シクロペンチレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基等が挙げられる。このようなシクロアルキレン基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基が1~3程度置換していてもよい。
上記式(1)~(3)において、Xが炭素原子数2~15のアルキリデン基である場合、好ましいアルキリデン基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2~15のアルキリデン基であり、具体的には、例えば、エチリデン基、プロパン-1-イリデン基、イソプロピリデン基、ブタン-1-イリデン基、ブタン-2-イリデン基、2-メチルプロパン-1-イリデン基、ペンタン-2-イリデン基、3-メチルブタン-1-イリデン基、ヘキサン-2-イリデン基、ヘプタン-4-イリデン基、2-エチルヘキサン-1-イリデン基、ノナン-2-イリデン基等が挙げられる。このようなアルキリデン基には本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、芳香族炭化水素基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
上記式(1)~(3)において、Xが炭素原子数5~15のシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基としては具体的には、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基等が挙げられる。このようなシクロアルキリデン基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、芳香族炭化水素基、アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよく、具体的には、炭素原子数1~4のアルキル基が1~3程度置換していてもよい。その具体例としては、3-メチルシクロヘキサン-1-イリデン基、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イリデン基等が挙げられる。また、このようなシクロアルキリデン基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、芳香族炭化水素基が縮合していてもよい。その具体例としては、フルオレン-9-イリデン基等が挙げられる。
上記式(1)~(3)において、Xがフェニレン基である場合、フェニレン基としては具体的には、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基等が挙げられる。このようなフェニレン基には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、芳香族炭化水素基、アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0011】
上記式(1)~(3)における、Xの好ましい態様として、単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~4のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~15のシクロアルキリデン基が挙げられる。
中でも、Xのより好ましい態様として、単結合、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、フェニルメチリデン基、1-フェニルエタン-1-イリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、4-メチルシクロヘキサン-1-イリデン基、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イリデン基、フルオレン-9-イリデン基が挙げられる。
【0012】
式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表されるポリカーボネートオリゴマーは、従来公知の任意の製造方法により製造されるものを使用できる。具体的には、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。中でも、界面重合法、溶融エステル交換法、プレポリマーの固相エステル交換法を用いることが産業上有利である。これらの中でも、ホスゲンを使用しない溶融エステル交換法や、溶融エステル交換法によるプレポリマーの固相エステル交換法が、特に好ましい。
上記の製造方法は、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成剤とを使用して行われる。
【化7】
(式(4)中のR
1~R
4、Xの定義は、上述の式(1)、(2)、(3)と同じである。)
【0013】
<式(4)で表されるジヒドロキシ化合物について>
式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、具体的には、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル化合物類、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又は1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)メタンの異性体混合物、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
重合反応に際し、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物は単独でも、2種以上を任意の割合で混合して用いても良い。また、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物を使用する場合には、全芳香族ジヒドロキシ化合物中、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物以外のヒドロキシ化合物共重合原料の割合は、0~90モル%の範囲、好ましくは0~85モル%の範囲、より好ましくは0~80モル%の範囲である。
本発明における式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表されるポリカーボネートオリゴマーの重量平均分子量は、500以上10,000以下の範囲であり、好ましくは600以上9,000以下の範囲、より好ましくは800以上8,500以下の範囲、更に好ましくは1,000以上8,000以下の範囲である。
【0014】
<炭酸エステル形成剤について>
式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と反応させる炭酸エステル形成剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(m-クレジル)カーボネート等の炭酸ジアリール、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等の炭酸ジアルキル、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、シクロヘキシルフェニルカーボネート等の炭酸アルキルアリール又はジビニルカーボネート、ジイソプロペニルカーボネート、ジプロペニルカーボネート等の炭酸ジアルケニル等や炭酸が挙げられる。さらに、ホスゲン等のジハロゲン化カルボニル化合物等やトリホスゲンも挙げられる。これらの中で、炭酸ジアリールが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0015】
<溶融エステル交換法について>
式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表されるポリカーボネートオリゴマーで表されるポリカーボネートオリゴマーの製造方法として、溶融エステル交換法について説明する。
溶融エステル交換反応の方法としては、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と、炭酸エステル形成剤としてジフェニルカーボネートを使用する場合には、触媒の存在下、常圧又は減圧の不活性ガス雰囲気で加熱しながら撹拌し、生成するフェノールを留出させて行われる。通常、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成剤の混合比率や、エステル交換反応時の減圧度を調整して、所望の分子量及び末端水酸基量を調整した、式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表されるポリカーボネートオリゴマーを得ることができる。
式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表されるポリカーボネートオリゴマーを得るために、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成剤との混合比率は、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸エステル形成剤を通常0.2~5モル倍、好ましくは0.3~3.3モル倍、更に好ましくは0.4~2.5モル倍用いる。
溶融エステル交換反応に際し、反応速度を高めるため、必要に応じてエステル交換触媒が用いられる。エステル交換触媒としては、特に制限はなく、例えば、リチウム、ナトリウム、セシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物、アルコラート、有機カルボン酸塩等の有機アルカリ金属化合物等のアルカリ金属化合物;ベリリウム、マグネシウム等の水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物、アルコラート、有機カルボン酸塩等の有機アルカリ土類金属化合物等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩基性ホウ素化合物;トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン等の3価のリン化合物、又は、これらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等の塩基性リン化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物;4-アミノピリジン、2-ジメチルアミノイミダゾール、アミノキノリン等アミン系化合物等の公知のエステル交換触媒を用いることができる。中でも、アルカリ金属化合物が好ましく、特に炭酸セシウム、水酸化セシウム等のセシウム化合物が好ましい。
触媒の使用量は、触媒残留物による生成オリゴマーの品質上の問題が生じない範囲で用いられ、触媒の種類により好適な添加量が異なるので一概には言えないが、概略、例えば、式(B)で表されるジヒドロキシ化合物1モルに対して通常0.05~100μモル、好ましくは0.08~50μモル、より好ましくは0.1~20μモル、さらに好ましくは0.1~5μモルである。触媒はそのままで添加してもよいし、溶媒に溶解して添加してもよく、溶媒としては、例えば水、フェノール等の反応に影響しないものが好ましい。
溶融エステル交換反応の反応条件は、温度は通常120~360℃の範囲、好ましくは150~280℃の範囲、より好ましくは180~260℃の範囲である。反応温度が低すぎるとエステル交換反応が進行せず、反応温度が高いと分解反応等の副反応が進行するので好ましくない。反応は好ましくは減圧下でおこなわれる。反応圧力は、反応温度において原料である炭酸エステル形成剤が系外に留出せず、フェノール等の副生物が留出できる圧力であることが好ましい。このような反応条件において、反応は通常0.5~10時間程度で完結する。
【0016】
<本発明の成分(B)について>
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる成分(B)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物である。所謂プレポリマー(中間生成物)と呼称されるものであり、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するとともに比較的低分子量を有するものである。そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は、後述する硬化(重合)させることにより、硬化物であるエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる成分(B)として、好ましい化学構造は下記式(5)により表されるポリエポキシ化合物である。
【化8】
(式(5)中のYは、各々独立して単結合、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数5~15のシクロアルキレン基、炭素原子数2~15のアルキリデン基、炭素原子数5~15のシクロアルキリデン基又はフェニレン基を示し、mは、0又は1~10の整数である。)
上記式(5)における、Yの好ましい態様として、炭素原子数1~5のアルキリデン基、炭素原子数1~5のアルキレン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、プロパン-1-イリデン基、ブタン-2-イリデン基、ブタン-1-イリデン基、3-メチルブタン-2-イリデン基、2-メチルペンタン-4-イリデン基等が挙げられる。
上記式(5)で表されるポリエポキシ化合物としては、例えば、ポリエポキシ化合物の化学構造に対応するポリヒドロキシ化合物と、エピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる化合物が挙げられる。上記式(5)で表されるポリエポキシ化合物の原料であるポリヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4,4’-ジヒドロキシビフェニルが挙げられる。
式(5)により表されるポリエポキシ化合物以外のポリエポキシ化合物の原料であるポリヒドロキシ化合物の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂等が挙げられる。
本発明における成分(B)ポリエポキシ化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のほか、公知のエポキシ樹脂、例えば、特開平01-98613号公報等に記載された下記式で表わされるエポキシ樹脂等が挙げられる。なお、下記式中のaは、各々独立して1以上の整数を表し、bは各々1以下の正数を表す。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
これらのエポキシ樹脂は1種あるいは2種以上混合して用いられる。
【0017】
本発明の成分(B)ポリエポキシ化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、例えば、1)ポリヒドロキシ化合物のエポキシ化反応は、原料となるポリヒドロキシ化合物をエピハロヒドリンに溶解し、テトラメチルアンモニウムクロライドやトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩などを触媒として反応させた後、アルカリ金属水酸化物等塩基性化合物をそのままで、及び/又は水溶液として添加してさらに反応させることにより得る方法や、2)原料ポリヒドロキシ化合物をエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンに溶解しメタノールやエタノール等の極性溶媒を添加し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体を添加し、又は添加しながら反応させる方法、また、3)アルカリ金属水酸化物の水溶液を使用し、アルカリ金属水酸化物を逐次的に添加すると共に反応系内から減圧下、又は常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、これを分液し、水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法、4)原料ポリヒドロキシ化合物と、例えばアリルクロリド、アリルブロミド等のハロゲン化ビニル化合物を溶媒中で塩基の存在下に反応させ、次いで、反応終了後、そのままm-クロロ過安息香酸等の炭素-炭素二重結合をエポキシ基に酸化可能な酸化剤を作用させるか、又は、例えば反応液と水を混合し、反応生成物を取り出した後、該反応生成物に前記酸化剤を作用させるかした後、例えば、必要に応じて残存する酸化剤を分解処理し、次いで濃縮処理することにより、ジエポキシ化合物を得る方法等が知られている。本発明における1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物を得るには、これら何れの方法でもよいし、これ以外の方法によるものでもよい。
本発明のポリエポキシ化合物を製造するに際して、エポキシ化反応の進行とともに、二量体、三量体、四量体等のオリゴマーが少量副生するが、本発明においては、用いるポリエポキシ化合物がオリゴマーを少量含んでいてもよい。また、本発明に用いるポリエポキシ化合物は、エポキシ化反応時、エポキシ基の形成が未完了のままの加水分解性塩素を有する末端基を含む化合物等を少量含んでいてもよい。
【0018】
<任意の成分>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記の成分(A)と成分(B)の他にも、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意の成分を含有させることが可能である。任意の成分としては、例えば硬化促進剤、カップリング剤、難燃剤、無機充填材、樹脂、触媒、レベリング剤、消泡剤、イオン捕捉剤、応力緩和剤、染料、着色剤等が挙げられる。これらの任意の成分は、1種が単独で含まれてもよく、2種以上が任意の比率および組み合わせで含まれていてもよい。
硬化促進剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、三級アミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、有機スルフィン類、リン化合物、テトラフェニルボロン塩およびこれらの誘導体等が挙げられる。
カップリング剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルキレート等が挙げられる。
難燃剤としても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、赤燐、燐酸、燐酸エステル、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等の燐窒素含有化合物、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、ブロム化エポキシ樹脂等が挙げられる。
無機充填材としても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコン、フォステライト、ステアライト、スピレル、ムライト、チタニア等の粉体、また、これらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。無機充填材を含有させることにより、得られるエポキシ樹脂組成物を用いたエポキシ樹脂硬化物の吸湿性、熱伝導性および接着性の向上、熱膨張係数の低減を図ることができる。
また、無機充填材としても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等を含有させることができる。これらを含有させることにより、難燃効果の向上を図ることができる。
イオン捕捉剤としても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス等の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン捕捉剤を含有させることにより、得られるエポキシ樹脂組成物を用いた電子機器の耐湿性、高温放置特性(耐熱性)を向上させることができる。
応力緩和剤としても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えばシリコーンゴム粉末等が挙げられる。さらに、着色剤としても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えばカーボンブラック等が挙げられる。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)ポリカーボネートオリゴマーを硬化剤として含有するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で公知のエポキシ硬化剤を併用することもできる。公知のエポキシ硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA 、ビスフェノールF等のフェノール類、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物類、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン類が挙げられる。成分(A)ポリカーボネートオリゴマーは、使用する全ての硬化剤の総量に対して1重量%以上配合することが好ましく、3重量%以上配合することがより好ましく、5重量%以上配合することが特に好ましい。成分(A)ポリカーボネートオリゴマーの配合量が少ないと、得られる硬化物の物性改良効果が小さくなり好ましくない。そのため、全ての硬化剤における成分(A)ポリカーボネートオリゴマーの配合量比は、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%であり、特に好ましくは95重量%である。
【0020】
<成分(A)と成分(B)との混合比率について>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)の水酸基、炭酸エステル基と成分(B)のエポキシ基との反応により硬化する。成分(A)と成分(B)との混合比率は、化学当量の観点からは、成分(A)の水酸基及び炭酸エステル基の合計モル数に対する成分(B)エポキシ基のモル数の比、すなわち、「(成分(B)エポキシ基のモル数)/(成分(A)の水酸基及び炭酸エステル基の合計モル数)」が、通常0.5~10の範囲、好ましくは0.9~5の範囲、より好ましくは0.95~1.05の範囲、特に好ましくは1で調整するとよい。
【0021】
<成分(A)と成分(B)との混合について>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)のほか、必要に応じた任意成分を含有するものであり、硬化させる前に均一に混合する必要がある。本発明の成分(A)のポリカーボネートオリゴマーが固体である場合には、特に、均一に混合していることを確認した後に、硬化させる必要がある。これらを混合する方法および装置は、これらの成分を均一に分散混合でき、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限されない。ただし、通常は、これらの成分を所定量秤量して同一の系に存在させた後、例えば、ボールミル、二本ロールミル、三本ロールミル、真空雷潰機、ポットミル、ハイブリッドミキサー等を用いて分散混合を行えばよい。
【0022】
<硬化方法について>
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法としては、従来公知のエポキシ樹脂の硬化方法を用いることができ、例えば、エポキシ樹脂組成物を加熱及び/又は光照射して硬化させる方法により行うことができる。
エポキシ樹脂組成物を加熱する場合の加熱温度及び加熱時間は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂組成物の配合に応じて適宜決定することが好ましい。エポキシ樹脂組成物を加熱する際、段階的に昇温しながら加熱することも好ましい。具体的には、本発明の成分(A)ポリカーボネートオリゴマーと成分(B)ポリエポキシ化合物を、通常60~180℃で1~10時間加熱溶融(最適には150℃、6時間)しながら均一に混合して、硬化促進剤等の任意成分を添加・混合してエポキシ樹脂組成物を調製する。次いで、得られたエポキシ樹脂組成物を、加圧下、100~200℃で0.1~60分間プレ成形硬化(最適には6MPa、180℃、30分間)させ、さらに硬化性能の向上を図るために、70~200℃の温度で0.1~10時間の範囲で後硬化(最適には180℃、4時間)を行う。また、エポキシ樹脂組成物の粘性が低い場合には、プレ成形硬化前に増粘を目的として、50~150℃(最適には150℃)の加熱により重合させても良い。
【0023】
<エポキシ樹脂組成物の用途について>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)及び/又は式(2)及び/又は式(3)で表され、特定の重量平均分子量を有するポリカーボネートオリゴマーを含有することにより、耐熱性のみならず誘電特性が向上し、工業的に有利な効果を発揮する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止材、電気絶縁材料、銅張り積層板用樹脂、レジスト、電子部品の封止用樹脂、液晶のカラーフィルター用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、ビルドアップ積層板材料、FRPとして有用である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例における重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。その分析方法は以下のとおりである。
<分析方法>
1.ゲル浸透クロマトグラフィー測定
装置:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
流量:0.35ml/min、移動相:テトラヒドロフラン、打ち込み量:10μl
カラム:TSKgel guardcolumn SuperMP(HZ)-N, TSKgel SuperMultiporeHZ-
N×3本
検出器:RI
解析方法:ポリスチレン換算の相対分子量とする。
ポリスチレン標品:東ソー株式会社製 A-500,A-2500,A-5000,F-1,F-2,F-4
2.末端ヒドロキシル濃度の測定
1H-NMRを用い、TCE(1,1,1,2-テトラクロロエタン)を内部標準として、ビスフェノールA、ビスフェノールCを標品に用いTCEとの重量比の検量線を作成した。この検量線からフェノール末端重量を求める方法で定量した。
装置:BRUKER社製 AscendTM 400
測定条件:室温、積算回数120回
3.動的粘弾性測定
測定装置:EXSTAR DMS6100(日立ハイテクサイエンス社製)
4.比誘電率・誘電正接
測定装置:PNA-LネットワークアナライザN5230A(アジレント・テクノロジ
ー社製)
空洞共振器 1GHz用 CP431(関東電子応用開発社製)
【0025】
<参考例1>1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのポリカーボネートオリゴマーの合成
【化26】
【化27】
【化28】
(上記式中のnは、各々独立して1以上の整数である。)
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン477g(1.4モル)、ジフェニルカーボネート203g(1.0モル)を仕込み、反応容器を窒素置換した後、90℃で0.1%炭酸セシウム水溶液0.1gを加えた。200℃まで昇温した後、減圧操作を行い、13.3kPaで4時間、1.3kPaで1時間、230℃に昇温し0.3kPaで1時間、240℃に昇温し0.3kPaで2時間、生成したフェノールを留出させながら反応し、少なくとも上記化学構造式の何れか1種以上で表される1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのポリカーボネートオリゴマー470gを得た。得られたポリカーボネートオリゴマーの重量平均分子量は2423(ゲル浸透クロマトグラフィー)、末端ヒドロキシル濃度は1.62mmol/gであった。
【0026】
<実施例1>「参考例1」のポリカーボネートオリゴマーを用いたエポキシ樹脂組成物
エポキシ当量が184~194のビスフェノールA型エポキシ樹脂(製造元:三菱化学株式会社)100gと参考例1で得たポリカーボネートオリゴマー149gを計り取り、プラネタリーミキサーを用いて約150℃で約6時間、加熱混合を行った。室温まで冷却した後、この混合物50gを分け取り、110℃の二本ロールミルへ投入した。ここにトリフェニルホスフィン0.4gを添加し、3分間混練を行った。この混合物を100mm×100mmの押込み型にチャージし、圧縮成形機にて、180℃×30分×6MPaの条件でプレスした。成形した板を180℃熱風循環式オーブンで4時間、後硬化させた。作成した硬化板を切削加工し、物性測定を行った。
硬化板をJISK7171に準拠し、動的粘弾性測定をした結果、ガラス転移温度(Tg)は175℃であった。また、ASTM D 250を参考に、比誘電率、誘電正接を測定した結果、比誘電率は2.68、誘電正接は0.0132であった。
【0027】
<参考例2>ビスフェノールAのポリカーボネートオリゴマーの合成
温度計、撹拌機、冷却器を備えた4つ口フラスコに2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン425.4g(1.9モル)、ジフェニルカーボネート280g(1.3モル)を仕込み、反応容器を窒素置換した後、90℃で0.2%炭酸セシウム水溶液0.57gを加えた。210℃まで昇温した後、減圧度を0.6kPaに調整し、8時間、生成したフェノールを留出させながら反応し、目的とするポリカーボネートオリゴマー510gを得た。得られたポリカーボネートオリゴマーの重量平均分子量は2210(ゲル浸透クロマトグラフィー)、末端ヒドロキシル濃度は1.30mmol/gであった。
【0028】
<比較例1>「参考例2」のポリカーボネートオリゴマーを用いたエポキシ樹脂組成物
エポキシ当量が184~194のビスフェノールA型エポキシ樹脂(製造元:三菱化学株式会社)100gと参考例2で得たポリカーボネートオリゴマー114gを計り取り、プラネタリーミキサーを用いて約150℃で約6時間、加熱混合を行った。室温まで冷却した後、この混合物50gを分け取り、110℃の二本ロールミルへ投入した。ここにトリフェニルホスフィン0.4gを添加し、3分間混練を行った。この混合物を130℃の熱風循環式オーブンへ入れて25分間保持し、増粘させた。この混合物を100mm×100mmの押込み型にチャージし、圧縮成形機にて、180℃×30分×6MPaの条件でプレスした。成形した板を180℃熱風循環式オーブンで4時間、後硬化させた。作成した硬化板を切削加工し、物性測定を行った。
硬化板をJISK7171に準拠し、動的粘弾性測定をした結果、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。また、ASTM D 250を参考に、比誘電率、誘電正接を測定した結果、比誘電率は2.82、誘電正接は0.0150であった。
【0029】
実施例1と比較例1の結果より、本発明のエポキシ樹脂組成物は、従来公知のエポキシ樹脂組成物に比べて、ガラス転移温度が大きく向上し、耐熱性に優れるのみならず、誘電特性に優れた硬化物を生成することが確認された。