(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】金属ペースト、電子部品、及び電子部品製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/12 20060101AFI20230926BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20230926BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H05B3/12 A
B22F9/00 B
B22F7/04 D
(21)【出願番号】P 2019062120
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年2月15日に公開された2019年第66回応用物理学会春季学術講演会予稿集で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】的場 彰成
(72)【発明者】
【氏名】筒口 善央
(72)【発明者】
【氏名】米澤 保人
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052198(JP,A)
【文献】特開2008-166086(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106147405(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104341860(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0111070(KR,A)
【文献】国際公開第2010/055845(WO,A1)
【文献】特表2012-500332(JP,A)
【文献】特開2010-245299(JP,A)
【文献】特開2011-094223(JP,A)
【文献】特開2001-234355(JP,A)
【文献】特開2010-225719(JP,A)
【文献】特開2010-229544(JP,A)
【文献】特開2016-069710(JP,A)
【文献】特開2014-111800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/12
B22F 7/04、9/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷により、基板の上に金属ペーストを塗布するステップと、
前記塗布するステップにより、金属ペーストが塗布された基板を焼成するステップと
を有し、
前記金属ペーストは、
所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子と、
前記金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子と、
前記金属元素のイオンが含まれる金属錯体と
を有
し、
前記金属ペーストは、ニッケル金属及びクロム金属からなる合金ペーストであり、
前記第1の金属粒子は、ニッケルマイクロ粒子、クロムマイクロ粒子、又は、ニッケルマイクロ粒子及びクロムマイクロ粒子であり、
前記第2の金属粒子が、ニッケルナノ粒子、クロムナノ粒子、又は、ニッケルナノ粒子及びクロムナノ粒子である
電子部品製造方法。
【請求項2】
金属を粉砕し、前記第1の金属粒子を生成するマイクロ粒子生成ステップと、
金属を粉砕し、前記第2の金属粒子を生成するナノ粒子生成ステップと、
金属錯体を調整及び還元して金属原子を凝集させ、凝集した金属原子を含む金属錯体を生成する還元ナノ粒子生成ステップと、
前記マイクロ粒子生成ステップにより生成された第1の金属粒子と、前記ナノ粒子生成ステップにより生成された第2の金属粒子と、前記還元ナノ粒子生成ステップにより生成された金属錯体と、バインダとを混合する混合ステップと
をさらに有し、
前記金属錯体は、配位子に酢酸化合物を有する
請求項1に記載の電子部品製造方法。
【請求項3】
前記バインダは、粘度が調整された混合物であり、
前記混合物は、
イソプロピルアルコールと、ポリビニルピロリドンとを有する
請求項2に記載の電子部品製造方法。
【請求項4】
前記混合ステップにおいて、粉末状のガラスをさらに添加し、
前記粉末状のガラスの融点は、450℃以下である
請求項2に記載の電子部品製造方法。
【請求項5】
所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子と、
前記金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子と、
前記金属元素のイオンが含まれる金属錯体と前記第1の金属粒子と、前記第2の金属粒子と、前記金属錯体とを結合するバインダと
を有
し、
前記第1の金属粒子は、ニッケルマイクロ粒子、クロムマイクロ粒子、又は、ニッケルマイクロ粒子及びクロムマイクロ粒子であり、
前記第2の金属粒子が、ニッケルナノ粒子、クロムナノ粒子、又は、ニッケルナノ粒子及びクロムナノ粒子であり、
ニッケル金属及びクロム金属からなる合金ペーストである
金属ペースト。
【請求項6】
前記金属錯体は、配位子に酢酸化合物を有する
請求項5に記載の金属ペースト。
【請求項7】
前記バインダは、粘度が調整された混合物であり、
前記混合物は、
イソプロピルアルコールと、ポリビニルピロリドンとを有する
請求項5に記載の金属ペースト。
【請求項8】
粉末状のガラスを
さらに有し、
前記粉末状のガラスの融点は、450℃以下である
請求項5に記載の金属ペースト。
【請求項9】
基板と、
スクリーン印刷により、前記基板の上に塗布された金属ペーストと
を有し、
前記基板の上に塗布された前記金属ペーストは焼成されており、
焼成前の前記金属ペーストは、
所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子と、
前記金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子と、
前記金属元素のイオンが含まれる金属錯体と
を有
し、
前記金属ペーストは、ニッケル金属及びクロム金属からなる合金ペーストであり、
前記第1の金属粒子は、ニッケルマイクロ粒子、クロムマイクロ粒子、又は、ニッケルマイクロ粒子及びクロムマイクロ粒子であり、
前記第2の金属粒子が、ニッケルナノ粒子、クロムナノ粒子、又は、ニッケルナノ粒子及びクロムナノ粒子である
電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ペースト、電子部品、及び電子部品製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、基板と前記基板上に形成された導体と前記導体と電気的に接続され、前記基板上に形成された抵抗発熱体と前記導体と前記抵抗発熱体を前記基板上で覆ったオーバーコート層とを具備し、前記抵抗発熱体は、酸化ルテニウムと、ガラスと、酸化チタン、酸化マンガンおよび酸 化鉄を含む混合物と、銀とを含有し、前記銀は、1重量%以上8重量%以下含有されるヒータが開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、セラミック基板に抵抗体が設けられているセラミックヒータにおいて、前記抵抗体が、少なくとも2種以上の貴金属粒子、二酸化ルテニウム及びガラスフリットからなることを特徴とするセラミックヒータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-109245号公報
【文献】WO2002/045465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、効率的な電子部品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子部品製造方法は、スクリーン印刷により、基板の上に金属ペーストを塗布するステップと、前記塗布するステップにより、金属ペーストが塗布された基板を焼成するステップとを有し、前記金属ペーストは、所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子と、前記金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子と、前記金属元素のイオンが含まれる金属錯体とを有する。
【0007】
好適には、金属を粉砕し、前記第1の金属粒子を生成するマイクロ粒子生成ステップと、金属を粉砕し、前記第2の金属粒子を生成するナノ粒子生成ステップと、金属錯体を調整及び還元し、前記金属錯体を生成する還元ナノ粒子生成ステップと、前記マイクロ粒子生成ステップにより生成された第1の金属粒子と、前記ナノ粒子生成ステップにより生成された第2の金属粒子と、前記還元ナノ粒子生成ステップにより生成された金属錯体と、バインダとを混合する混合ステップとをさらに有し、前記金属錯体は、配位子に酢酸化合物を有する。
【0008】
好適には、前記バインダは、粘度が調整された混合物であり、前記混合物は、水又はエタノール、イソプロピルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及び、ポリビニルピロリドンを有する。
【0009】
好適には、前記混合ステップにおいて、粉末状のガラスをさらに添加し、前記粉末状のガラスは、450℃以下の融点である。
【0010】
本発明に係る金属ペーストは、所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子と、前記金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子と、前記金属元素のイオンが含まれる金属錯体と前記第1の金属粒子と、前記第2の金属粒子と、前記金属錯体とを結合するバインダとを有する。
【0011】
好適には、前記金属錯体は、配位子に酢酸化合物を有する。
【0012】
好適には、前記バインダは、粘度が調整された混合物であり、前記混合物は、水又はエタノール、イソプロピルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及び、ポリビニルピロリドンを有する。
【0013】
好適には、前記金属ペーストは、粉末状のガラスをさらに有し、前記粉末状のガラスは、450℃以下の融点である。
【0014】
本発明に係る電子部品は、基板と、スクリーン印刷により、前記基板の上に塗布された金属ペーストとを有し、前記基板の上に塗布された前記金属ペーストは焼成されており、前記金属ペーストは、所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子と、前記金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子と、前記金属元素のイオンが含まれる金属錯体とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率的に金属ペースト又は電子部品を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、金属ペースト1の模式図であり、(b)は、合金ペースト2の模式図である。
【
図2】第1の金属粒子10と第2の金属粒子12と金属錯体14との製法を例示する図である。
【
図3】スクリーン印刷によるNi-Cr抵抗体3の製造方法を例示する図である。
【
図4】Ni-Cr抵抗体3の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図5】(a)は、Ni-Cr抵抗体3の外観を示す写真であり、(b)は、焼成温度をパラメータとして作製したNi-Cr抵抗体3のXRD結果を示す。
【
図6】(a)は、Ni-Cr抵抗体3の表面の2次電子像を示し、(b)は、Ni-Cr抵抗体3の断面の元素分析結果を示す。
【
図7】(a)は、Ni-Cr抵抗体3の焼成温度に対する抵抗値を示すグラフであり、(b)は、Ni-Cr抵抗体3のガラス添加量に対する抵抗値を示すグラフである。
【
図8】Ni-Cr抵抗体3のヒータ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の金属ペースト1について説明する。
図1(a)は、金属ペースト1の模式図である。
図1(a)に例示するように、金属ペースト1は、第1の金属粒子10、第2の金属粒子12、金属錯体14、及びバインダ16により構成される。
第1の金属粒子10は、所定の金属元素からなり、1μm以上10μm以下の粒径である。具体的には、第1の金属粒子10は、所定の金属を粉砕し、1μm以上10μm以下の粒径となった金属粒子である。
第2の金属粒子12は、第1の金属粒子10と同じ金属元素からなり、10nm以上100nm以下の粒径である。具体的には、第2の金属粒子12は、第1の金属粒子10と同じ金属を粉砕し、10nm以上100nm以下の粒径となった金属粒子である。
【0018】
金属錯体14は、第1の金属粒子10及び第2の金属粒子12と同じ金属元素のイオンを含む金属錯体である。具体的には、金属錯体14は、第1の金属粒子10及び第2の金属粒子12と同じ金属元素を調整し、生成された金属錯体である。より具体的には、金属錯体14は、配位子に酢酸化合物を有する。
バインダ16は、粘度が調整された混合物である。具体的には、バインダ16は、水又はエタノール、イソプロピルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及び、ポリビニルピロリドンを有する。より具体的には、バインダ16は、第1の金属粒子10と第2の金属粒子12と金属錯体14とを結合する。
【0019】
図1(a)に例示する金属ペースト1は、1種類の金属のみから形成されるが、
図1(b)に例示するように、ニッケル及びクロム金属を用いて合金ペースト2を形成してもよい。
合金ペースト2は、第1の金属粒子10である、ニッケルマイクロ粒子30及びクロムマイクロ粒子32と、第2の金属粒子12である、ニッケルナノ粒子34及びクロムナノ粒子36と、金属錯体14である、ニッケル金属錯体38及びクロム金属錯体40と、バインダ16とを有する。
ニッケルマイクロ粒子30は、1μm以上10μm以下の粒径を有するニッケル金属粒子である。クロムマイクロ粒子32は、1μm以上10μm以下の粒径を有するクロム金属粒子である。ニッケルマイクロ粒子30及びクロムマイクロ粒子32は、本発明に係る第1の金属粒子の一例である。
【0020】
ニッケルナノ粒子34は、10nm以上100nm以下の粒径を有するニッケル金属粒子である。クロムナノ粒子36は、10nm以上100nm以下の粒径を有するクロム金属粒子である。ニッケルナノ粒子34及びクロムナノ粒子36は、本発明に係る第2の金属粒子の一例である。
ニッケル金属錯体38は、ニッケルイオンを含み、配位子に酢酸化合物を有する金属錯体である。クロム金属錯体40は、クロムイオンを含み、配位子に酢酸化合物を有する金属錯体である。ニッケル金属錯体38及びクロム金属錯体40は、本発明に係る金属錯体の一例である。
【0021】
図2は、第1の金属粒子10と、第2の金属粒子12と、金属錯体14との製造方法を例示する図である。
図2に例示するように、第1の金属粒子10及び第2の金属粒子12、すなわち、ニッケルマイクロ粒子30、クロムマイクロ粒子32、ニッケルナノ粒子34、及びクロムナノ粒子36は、トップダウン法を用い、バルク金属を物理的に粉砕して微細化することにより生成される。
金属錯体14、すなわち、ニッケル金属錯体38及びクロム金属錯体40は、ボトムアップ法を用い、金属錯体を溶液で金属イオンから還元して金属原子として凝集させて微細化することにより生成される。
【0022】
図3は、合金ペースト2を用いたNi-Cr抵抗体3の製造方法である。
図3に例示するように、Ni-Cr抵抗体3は、基板4の上に合金ペースト2を塗布し、焼成することにより作製される。具体的には、Ni-Cr抵抗体3は、スクリーン印刷を用いてセラミック基板上に合金ペースト2を塗布し、焼成することにより作製される。なお、Ni-Cr抵抗体3は、本発明に係る電子部品の一例である。
【0023】
図4は、Ni-Cr抵抗体3の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
ステップ100(S100)において、ニッケル金属とクロム金属における第1の金属粒子10を作製する。具体的には、トップダウン法を用いて、ニッケルマイクロ粒子30及びクロムマイクロ粒子32を生成する。
ステップ105(S105)において、ニッケル金属とクロム金属における第2の金属粒子12を生成する。具体的には、トップダウン法を用いて、ニッケルナノ粒子34及びクロムナノ粒子36を生成する。
ステップ110(S110)において、ニッケル金属とクロム金属における金属錯体14を作製する。具体的には、ボトムアップ法を用いて、ニッケル金属錯体38及びクロム金属錯体40を生成する。具体的には、酢酸ニッケル水和物及び酢酸クロム水和物をグリセリンに溶かし、ニッケル金属錯体溶液及びクロム金属錯体溶液を生成する。
【0024】
ステップ115(S115)において、ニッケルマイクロ粒子30、クロムマイクロ粒子32、ニッケルナノ粒子34、クロムナノ粒子36、ニッケル金属錯体38、クロム金属錯体40、及びバインダ16を混合する。具体的には、ニッケル錯体溶液及びクロム錯体溶液に、ニッケルマイクロ粒子30、クロムマイクロ粒子32、ニッケルナノ粒子34、及びクロムナノ粒子36を調整し、さらに、ニッケル:クロム=8:2となるよう調整する。そして、第1の金属粒子10及び第2の金属粒子12を含む金属の錯体溶液に、粘度調整用のバインダとしてイソプロピルアルコールに溶かしたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、及び、ガラスフリットを添加し、合金ペースト2を生成する。ガラスフリットは、セラミック基板との密着性向上及び抵抗値調整のために添加される。なお、ガラスフリットとは、粉末状のガラスであり、融点が450℃以下である。
ステップ120(S120)において、セラミック基板4上に、スクリーン印刷により合金ペースト2を塗布する。
ステップ125(S125)において、合金ペースト2が塗布された基板4を、窒素雰囲気中で焼成してNi-Cr抵抗体3を作製する。
(実施例)
【0025】
本例におけるNi-Cr抵抗体3の作製方法について説明する。
金属ニッケル粉(粒径2~3μm、高純度化学研究所製)、及び金属クロム粉(粒径10μm、高純度化学研究所製)を用いて、トップダウン法により、物理的に粉砕して微細化し、1μm以上10μm以下の粒径を有するニッケルマイクロ粒子30及びクロムマイクロ粒子32を生成した。さらに、金属ニッケル粉(粒径2~3μm、高純度化学研究所製)、及び金属クロム粉(粒径10μm、高純度化学研究所製)を用いて、トップダウン法により、物理的に粉砕して微細化し、10nm以上100nm以下の粒径を有するニッケルナノ粒子34及びクロムナノ粒子36を生成した。そして、酢酸ニッケル水和物(シグマアルドリッチジャパン製)及び酢酸クロム水和物(シグマアルドリッチジャパン製)をグリセリン(関東化学製)に溶かし、ニッケル金属錯体溶液及びクロム金属錯体溶液を生成した。バインダ16として、イソプロピルアルコール(シグマアルドリッチジャパン製)に溶かしたポリビニルアルコール(シグマアルドリッチジャパン製)、ポリビニルピロリドン(シグマアルドリッチジャパン製)、ポリエチレングリコール(シグマアルドリッチジャパン製)、及びガラスフリットを添加し、合金ペースト2を生成した。さらに、セラミック基板4上にスクリーン印刷により合金ペースト2を塗布し、ホットプレート上で、120℃で30分以上加熱し、乾燥後、管状炉(いすゞ(株)社製 EPKRO-14K、EP-K-1200)を用いて窒素雰囲気中で仮焼成400℃を1時間、本焼成800℃、700℃、600℃、及び500℃の4通りで1時間焼成してNi-Cr抵抗体3を作製した。
【0026】
図5(a)は、Ni-Cr抵抗体3の外観を示す写真である。
図5(a)のNi-Cr抵抗体3は、合金ペースト2をセラミック基板4上に5mm×15mmのパターンを印刷し、窒素雰囲気中で仮焼成400℃を1時間、本焼成800℃、700℃、600℃、及び500℃の4通りで1時間焼成して作製された。
図5(b)は、焼成温度をパラメータとして作製したNi-Cr抵抗体3のXRD結果を示す。
図5(b)の縦軸の強度は、各スペクトルの最大値で規格化されている。
図5(b)から、Ni-Cr抵抗体3は、いずれの焼成温度でも2つのピークがあり、複数の結晶相を持つことが示され、800℃~600℃ではNi-Cr合金に近い位置にピークが見られた。
作製したNi-Cr抵抗体3は、通電により発熱し、6Wの電力を印加することで250℃まで到達及び飽和することが確認された。
【0027】
図6(a)は、Ni-Cr抵抗体3の表面の2次電子像を示し、(b)は、Ni-Cr抵抗体3の断面の元素分析結果を示す。
図6(a)に例示するように、焼成温度の上昇に伴い、粒子が凝集した表面が平坦なNi-Cr抵抗体3が形成された。また、
図6(b)に例示するように、Ni-Cr抵抗体3は、粘度調整剤にポリビニルアルコール(PVA)を用いることで残留有機物の低減が可能となった。Ni-Cr抵抗体3は、残留有機物の低減により、有機物揮発によるひび割れを防ぎ、通電時の耐久性を向上させることができる。
【0028】
図7(a)は、Ni-Cr抵抗体3の焼成温度に対する抵抗値を示すグラフであり、(b)は、Ni-Cr抵抗体3のガラス添加量に対する抵抗値を示すグラフである。
図7(a)に例示するように、Ni-Cr抵抗体3は、焼成温度の上昇に伴い、抵抗値が減少していることがわかる。これは、結晶化及び残留有機物の減少によるものである。
図7(b)に例示するように、Ni-Cr抵抗体3は、ガラス添加量(ガラスフリット添加量)を調整することにより、抵抗値を5桁以上変化させることができる。
【0029】
図8は、Ni-Cr抵抗体3の特性を示すグラフである。
図8に例示するように、Ni-Cr抵抗体3は、投入電力5.4Wにおいて、230℃到達まで、180secであり、投入電力9.5Wにおいて、10secであった。また、Ni-Cr抵抗体3は、230℃から室温まで自然冷却において、約100secであった。
【0030】
以上説明したように、金属ペースト1は、トップダウン法により生成された、1μm以上10μm以下の粒径である第1の金属粒子10と、トップダウン法により生成された、第1の金属粒子10と同じ金属元素からなる、10nm以上100nm以下の粒径である第2の金属粒子12と、ボトムアップ法により生成された、第1の金属粒子10と同じ金属元素のイオンが含まれる金属錯体14とを有する。合金ペースト2では、第1の金属粒子10、第2の金属粒子12、金属錯体14に、ニッケル及びクロム金属を用い、この合金ペースト2を印刷、焼成することで抵抗体の作製を可能にし、低コストによる抵抗体の形成を実現した。また、合金ペースト2の生成において、ガラスの添加量を変えることで抵抗値調整が可能であり、さらに、通電することでヒータとして機能し、電力を調整することで10秒程度で230℃まで加熱可能である。
【0031】
[変形例]
上記実施形態では、合金ペースト2にニッケル金属及びクロム金属を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、銅、亜鉛、又は鉄を用いた合金ペースト2を作製してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1・・・金属ペースト
2・・・合金ペースト
3・・・Ni-Cr抵抗体
4・・・基板
10・・・第1の金属粒子
12・・・第2の金属粒子
14・・・金属錯体
16・・・バインダ
30・・・ニッケルマイクロ粒子
32・・・クロムマイクロ粒子
34・・・ニッケルナノ粒子
36・・・クロムナノ粒子
38・・・ニッケル金属錯体
40・・・クロム金属錯体