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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】手持式ナットランナ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B25B21/00 F
B25B21/00 540D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019159335
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037565
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142517
【氏名又は名称】株式会社空研
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】末吉 隆信
(72)【発明者】
【氏名】小熊 淳
(72)【発明者】
【氏名】貞末 和宏
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁孝
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-052676(JP,U)
【文献】実開昭58-113469(JP,U)
【文献】特開2015-208833(JP,A)
【文献】特開2015-168020(JP,A)
【文献】実開昭53-079498(JP,U)
【文献】特表2016-516604(JP,A)
【文献】特開昭57-083379(JP,A)
【文献】実開昭52-040093(JP,U)
【文献】米国特許第05544553(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板の取り付けと取り外しのための六角ボルトと六角ナットとからなるネジ部材を着脱する際に使用されるH形鋼の添接板着脱用の手持式ナットランナであって、
前記添接板は、前記H形鋼の各フランジの外側の面に設けられる2枚の外側添接板と、前記H形鋼のウエブの各面に設けられる2枚のウエブ添接板と、前記H形鋼の各フランジの各内側の面に設けられる4枚の内側添接板とから形成されており、
前記ナットランナは、一つのモータと、前記モータから伝動された第一出力軸と、前記第一出力軸に装着又は固着された第一ソケットと、前記第一出力軸から伝動部材を介して伝動された第二出力軸と、前記第二出力軸に装着又は固着された第二ソケットと、前記伝動部材が収納された伝動部材ケースと、前記伝動部材ケースに形成された複数の反力受け部材とを備えており、
前記ナットランナの第一ソケットの先端部は、前記第二ソケットの先端部よりも軸方向外方に少なくとも前記六角ボルトの頭部の厚みを超えた状態で突出されており、
前記ナットランナの前記第二ソケットと前記第一ソケットとは、前記第二ソケットが前記内側添接板の前記ウエブ側に位置する前記ネジ部材に嵌合される際に、前記第一ソケットの全体が前記H形鋼のフランジの側端の外方に位置する状態に離れて形成されており、
2枚の前記外側添接板が、それぞれ2枚の前記内側添接板と前記ねじ部材により共に着脱されるようにされており、
前記複数の反力受け部材のうちの第一反力受け部材は、前記第一ソケットを用いて前記ウエブ添接板が前記ネジ部材により着脱される際に着脱されるネジ部材の隣のネジ部材により反力を受け止められるとともに、前記第一ソケットから前記ネジ部材の配列ピッチ離れ前記第一ソケットの先端部と略同じ突出位置にリング状であって、前記伝動部材ケースにおける前記第二ソケットの反対側の端面に取り付けられており、
前記複数の反力受け部材のうちの第二反力受け部材は、前記第二ソケットを用いて前記内側添接板が前記ネジ部材により着脱される際に前記H形鋼のフランジの側端により反力を受け止められるとともに、前記第一ソケットの先端部と略同じ突出位置に板状であって、前記第一ソケットを挟んで前記伝動部材ケースの軸方向の端面に一対取付けられており、
前記複数の反力受け部材のうちの第三反力受け部材は、前記第二ソケットを用いて前記内側添接板が前記ネジ部材のウエブ側のネジ部材により着脱される際に、前記側端側のネジ部材が反力を受け止められるように前記伝動部材ケースの両側縁部に一対形成されていることを特徴とする手持式ナットランナ。
【請求項2】
前記伝動部材は、前記第一ソケットとともに回動される第一平歯車と、前記第一平歯車と噛み合う中間平歯車と、前記中間平歯車と噛み合い前記第二ソケットとともに回動される第二平歯車とから形成されており、
前記伝動部材ケースは、前記第二ソケットの軸方向厚みと略同じ厚みに形成されるとともに、軸方向の端面が前記第二ソケットの先端部と略同一の突出位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の手持式ナットランナ。
【請求項3】
前記第一ソケットと前記第一平歯車とは一体に形成されており、前記第二ソケットと前記第二平歯車とは一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の手持式ナットランナ。
【請求項4】
前記内側添接板は、ネジ部材用の穴が前記フランジのウエブ側と側端側とに平行に各列4個形成され、
前記側端側のネジ部材用の穴は、前記内側添接板の長さ方向を二分する中心線を挟んで第一所定ピッチで対称に各1個の中央側穴と、前記中央側穴と第二所定ピッチで前記中心線を挟んで対称に各1個の端部側穴とから形成され、
前記ウエブ側のネジ部材用の穴は、前記中央側穴と前記端部側穴とを結ぶ仮想線の中央を通って直交する仮想直交線上の位置を挟んで第三所定ピッチで対称に各1個のウエブ中央側穴と、前記ウエブ中央側穴と前記第二所定ピッチで前記仮想直交線を挟んで対称に各1個のウエブ端部側穴とから形成され、
前記第二ソケットが前記ウエブ側のネジ部材に嵌合された際に、前記伝動部材ケースが前記側端側のネジ部材に当接しない幅に形成されていることを特徴とする請求項1~請求項のいずれかに記載の手持式ナットランナ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板の着脱用の手持式ナットランナに係り、特に、前記ナットランナは、一つのモータと、前記モータから伝動された第一出力軸と、前記第一出力軸に装着又は固着された第一ソケットと、前記第一出力軸から伝動部材を介して伝動された第二出力軸と、前記第二出力軸に装着又は固着された第二ソケットと、前記伝動部材が収納された伝動部材ケースと、前記伝動部材ケースに形成された複数の反力受け部材とを備えて、前記添接板におけるネジ部材の着脱ができるようにした手持式ナットランナに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板は、前記H形鋼のフランジの外側の面に設けられる外側添接板と、前記H形鋼のウエブの各面に設けられるウエブ添接板と、前記H形鋼のフランジの内側の面に設けられる内側添接板とから形成されている(例えば、特許文献1参照)。
従来、添接板の取り付けと取り外しのための六角ボルトと六角ナットとからなるネジ部材を着脱する着脱工具として、インパクトレンチを使用することが広く行われているが、近隣住民への打撃に伴う騒音が問題になっていた。
【0003】
そこで、打撃を伴わないため騒音問題が発生しにくいナットランナを使用することが考えられるが、従来のナットランナは、ネジ部材の周囲の障害物が様々であるため、1台のナットランナで添接板の着脱が不可能であった(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3798118号公報 (図4図7参照)
【文献】特許第5975756号公報 (図1参照)
【文献】実開昭58-113469号公報 (図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、特許文献1に記載の、隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板の取り付けと取り外しのための六角ボルトと六角ナットとからなるネジ部材を着脱する際に、特許文献2及び特許文献3に記載の、打撃音の発生しないナットランナの使用が考えられる。
しかしながら、特許文献2に記載の従来のナットランナは以下の課題があった。
【0006】
すなわち、H形鋼の接合部に設けられる添接板のネジ部材の着脱を行う場合には1台のナットランナですべてのネジ部材の着脱を行えるのが望ましい。
また、作業現場ではH形鋼のフランジのすぐ外側には往々にして障害物があるため、フランジの外側と内側の添接板用ネジ部材の着脱を行うにはナットランナを2枚のフランジの間に保持して作業できることが必要となる。
【0007】
しかし、特許文献2に記載の従来のナットランナは、モータと出力軸を結ぶ方向の寸法が長すぎるため2枚のフランジの間に保持することができないという課題があった。
また、特許文献3に記載の従来のナットランナは、複数のネジ部材を同時に着脱するために、複数個の出力部を備えているが、それらはすべて同一形状であるためネジ部材の着脱箇所ごとに様々な障害物がある添接板の着脱のためには使用することができないという課題があった。
【0008】
本発明は、従来のインパクトレンチの騒音発生という課題及び従来のナットランナの使用ができないという課題を解決しようとするものであり、ソケット及び反力受け部材に改良を施してナットランナを使用可能とした手持式ナットランナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る本発明の手持式ナットランナは、隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板の取り付けと取り外しのための六角ボルトと六角ナットとからなるネジ部材を着脱する際に使用されるH形鋼の添接板着脱用の手持式ナットランナであって、
前記添接板は、前記H形鋼の各フランジの外側の面に設けられる2枚の外側添接板と、前記H形鋼のウエブの各面に設けられる2枚のウエブ添接板と、前記H形鋼の各フランジの各内側の面に設けられる4枚の内側添接板とから形成されており、
前記ナットランナは、一つのモータと、前記モータから伝動された第一出力軸と、前記第一出力軸に装着又は固着された第一ソケットと、前記第一出力軸から伝動部材を介して伝動された第二出力軸と、前記第二出力軸に装着又は固着された第二ソケットと、前記伝動部材が収納された伝動部材ケースと、前記伝動部材ケースに形成された複数の反力受け部材とを備えており、
前記ナットランナの第一ソケットの先端部は、前記第二ソケットの先端部よりも軸方向外方に少なくとも前記六角ボルトの頭部の厚みを超えた状態で突出されており、
前記ナットランナの前記第二ソケットと前記第一ソケットとは、前記第二ソケットが前記内側添接板の前記ウエブ側に位置する前記ネジ部材に嵌合される際に、前記第一ソケットの全体が前記H形鋼のフランジの側端の外方に位置する状態に離れて形成されており、
2枚の前記外側添接板が、それぞれ2枚の前記内側添接板と前記ねじ部材により共に着脱されるようにされており、
前記複数の反力受け部材のうちの第一反力受け部材は、前記第一ソケットを用いて前記ウエブ添接板が前記ネジ部材により着脱される際に着脱されるネジ部材の隣のネジ部材により反力を受け止められるとともに、前記第一ソケットから前記ネジ部材の配列ピッチ離れ前記第一ソケットの先端部と略同じ突出位置にリング状であって、前記伝動部材ケースにおける前記第二ソケットの反対側の端面に取り付けられており、
前記複数の反力受け部材のうちの第二反力受け部材は、前記第二ソケットを用いて前記内側添接板が前記ネジ部材により着脱される際に前記H形鋼のフランジの側端により反力を受け止められるとともに、前記第一ソケットの先端部と略同じ突出位置に板状であって、前記第一ソケットを挟んで前記伝動部材ケースの軸方向の端面に一対取付けられており、
前記複数の反力受け部材のうちの第三反力受け部材は、前記第二ソケットを用いて前記内側添接板が前記ネジ部材のウエブ側のネジ部材により着脱される際に、前記側端側のネジ部材が反力を受け止められるように前記伝動部材ケースの両側縁部に一対形成されているものである。
【0010】
請求項2に係る本発明の手持式ナットランナは、請求項1に係る本発明の手持式ナットランナの構成に加え、前記伝動部材は、前記第一ソケットとともに回動される第一平歯車と、前記第一平歯車と噛み合う中間平歯車と、前記中間平歯車と噛み合い前記第二ソケットとともに回動される第二平歯車とから形成されており、
前記伝動部材ケースは、前記第二ソケットの軸方向厚みと略同じ厚みに形成されるとともに、軸方向の端面が前記第二ソケットの先端部と略同一の突出位置に形成されているものである。
【0011】
請求項3に係る本発明の手持式ナットランナは、請求項2に係る本発明の手持式ナットランナの構成に加え、前記第一ソケットと前記第一平歯車とは一体に形成されており、前記第二ソケットと前記第二平歯車とは一体に形成されているものである。
【0012】
請求項に係る本発明の手持式ナットランナは、請求項1~請求項のいずれかに係る本発明の手持式ナットランナの構成に加え、前記内側添接板は、ネジ部材用の穴が前記フランジのウエブ側と側端側とに平行に各列4個形成され、
前記側端側のネジ部材用の穴は、前記内側添接板の長さ方向を二分する中心線を挟んで第一所定ピッチで対称に各1個の中央側穴と、前記中央側穴と第二所定ピッチで前記中心線を挟んで対称に各1個の端部側穴とから形成され、
前記ウエブ側のネジ部材用の穴は、前記中央側穴と前記端部側穴とを結ぶ仮想線の中央を通って直交する仮想直交線上の位置を挟んで第三所定ピッチで対称に各1個のウエブ中央側穴と、前記ウエブ中央側穴と前記第二所定ピッチで前記仮想直交線を挟んで対称に各1個のウエブ端部側穴とから形成され、
前記第二ソケットが前記ウエブ側のネジ部材に嵌合された際に、前記伝動部材ケースが前記側端側のネジ部材に当接しない幅に形成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明の手持式ナットランナは、一つのモータと、前記モータから伝動された第一出力軸と、前記第一出力軸に装着又は固着された第一ソケットと、前記第一出力軸から伝動部材を介して伝動された第二出力軸と、前記第二出力軸に装着又は固着された第二ソケットと、前記伝動部材が収納された伝動部材ケースと、前記伝動部材ケースに形成された複数の反力受け部材とを備えており、
前記ナットランナの第一ソケットの先端部は、前記第二ソケットの先端部よりも軸方向外方に少なくとも前記六角ボルトの頭部の厚みを超えた状態で突出されており、
前記ナットランナの前記第二ソケットと前記第一ソケットとは、前記第二ソケットが前記内側添接板の前記ウエブ側に位置する前記ネジ部材に嵌合される際に、前記第一ソケット全体が前記H形鋼のフランジの側端の外方に位置する状態に離れて形成されており、
2枚の前記外側添接板が、それぞれ2枚の前記内側添接板と前記ねじ部材により共に着脱されるようにされており、-
前記複数の反力受け部材のうちの第一反力受け部材は、前記第一ソケットを用いて前記ウエブ添接板が前記ネジ部材により着脱される際に着脱されるネジ部材の隣のネジ部材により反力を受け止められるとともに、前記第一ソケットから前記ネジ部材の配列ピッチ離れ前記第一ソケットの先端部と略同じ突出位置にリング状であって、前記伝動部材ケースにおける前記第二ソケットの反対側の端面に取り付けられており、
前記複数の反力受け部材のうちの第二反力受け部材は、前記第二ソケットを用いて前記内側添接板が前記ネジ部材により着脱される際に前記H形鋼のフランジの側端により反力を受け止められるとともに、前記第一ソケットの先端部と略同じ突出位置に板状であって、前記第一ソケットを挟んで前記伝動部材ケースの軸方向の端面に一対取付けられており、
前記複数の反力受け部材のうちの第三反力受け部材は、前記第二ソケットを用いて前記内側添接板が前記ネジ部材のウエブ側のネジ部材により着脱される際に、前記側端側のネジ部材が反力を受け止められるように前記伝動部材ケースの両側縁部に一対形成されて
いるから、複数の反力受け部材と2つのソケットを備えて各添接板のネジ部材の着脱に適合できるとともに、内側添接板のウエブ側のネジ部材を着脱するため、第二ソケットの使用時に第一ソケットが邪魔にならない位置関係に構成しているのである。
したがって、1台の手持式ナットランナにより、内側添接板とウエブ添接板のネジ部材による着脱ができるのである。
また、ウエブ添接板のネジ部材による着脱のために第一反力受け部材を簡単で使用しやすい構造とすることができるのである。
また、内側添接板のネジ部材による着脱のために第二反力受け部材を簡単な小形軽量の構造とすることができるのである。
さらに、第三反力受け部材を伝動部材ケースの両側縁部に形成することで部材を省略することができるのである。
【0014】
請求項2に係る本発明の手持式ナットランナは、請求項1に係る本発明の手持式ナットランナの効果に加え、前記伝動部材は、前記第一ソケットとともに回動される第一平歯車と、前記第一平歯車と噛み合う中間平歯車と、前記中間平歯車と噛み合い前記第二ソケットとともに回動される第二平歯車とから形成されており、
前記伝動部材ケースは、前記第二ソケットの軸方向厚みと略同じ厚みに形成されるとともに、軸方向の端面が前記第二ソケットの先端部と略同一の突出位置に形成されているから、伝動部材ケースを薄型に形成でき、手持式ナットランナを小形軽量に構成することができるのである。
【0015】
請求項に係る本発明の手持式ナットランナは、請求項2に係る本発明の手持式ナットランナの効果に加え、前記第一ソケットと前記第一平歯車とは一体に形成されており、前記第二ソケットと前記第二平歯車とは一体に形成されているから、手持式ナットランナを一層小形軽量で、簡単な構造に構成することができるのである。
【0016】
請求項4に係る本発明の手持式ナットランナは、請求項1~請求項3のいずれかに係る本発明の手持式ナットランナの効果に加え、前記内側添接板は、ネジ部材用の穴が前記フランジのウエブ側と側端側とに平行に各列4個形成され、
前記側端側のネジ部材用の穴は、前記内側添接板の長さ方向を二分する中心線を挟んで第一所定ピッチで対称に各1個の中央側穴と、前記中央側穴と第二所定ピッチで前記中心線を挟んで対称に各1個の端部側穴とから形成され、
前記ウエブ側のネジ部材用の穴は、前記中央側穴と前記端部側穴とを結ぶ仮想線の中央を通って直交する仮想直交線上の位置を挟んで第三所定ピッチで対称に各1個のウエブ中央側穴と、前記ウエブ中央側穴と前記第二所定ピッチで前記仮想直交線を挟んで対称に各1個のウエブ端部側穴とから形成され、
前記第二ソケットが前記ウエブ側のネジ部材に嵌合された際に、前記伝動部材ケースが前記側端側のネジ部材に当接しない幅に形成されているから、着脱するネジ部材の周囲に他のネジ部材からなる障害物があっても、対象となるネジ部材の着脱を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る手持式ナットランナの斜視図である。
図2図1の一部切欠正面図である。
図3図2のA矢視端面図である。
図4図1の伝動部材ケース周りを断面で示す正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板の取り付け状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る内側添接板の説明図である。
図7】本発明の実施の形態に係るウエブ添接板の説明図である。
図8】本発明の実施の形態に係る手持式ナットランナを用いて内側添接板のネジ部材を締め付ける状態を示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る手持式ナットランナを用いてウエブ添接板のネジ部材を締め付ける状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付した図面により詳細に説明する。
図1図9は本発明の実施の形態に係る図面であり、図1は手持式ナットランナの斜視図、図2図1の一部切欠正面図、図3図2のA矢視端面図、図4図1の伝動部材ケース周りを断面で示す正面図、図5は隣合うH形鋼の接合部に設けられる添接板の取り付け状態を示す斜視図、図6は内側添接板の説明図、図7はウエブ添接板の説明図、図8は手持式ナットランナを用いて内側添接板のネジ部材を締め付ける状態を示す斜視図及び図9は手持式ナットランナを用いてウエブ添接板のネジ部材を締め付ける状態を示す斜視図である。
【0019】
<手持式ナットランナの基本的構成>
本発明の実施の形態に係る手持式ナットランナ1の基本的構成を、図1図4に基づいて説明する。
手持式ナットランナ1は、圧縮空気により駆動される一つのモータ11と、モータ11から減速部材12を介して伝動された第一出力軸2と、第一出力軸2に装着された第一ソケット21と、第一出力軸2から伝動部材3を介して伝動された第二出力軸4と、第二出力軸4に固着された第二ソケット41とを備えている。
【0020】
また、手持式ナットランナ1は、前記伝動部材3が収納された伝動部材ケース31と、伝動部材ケース31に形成された3種の反力受け部材5(51、52、53)とを備えている。
伝動部材3は、第一ソケット21と一体に形成されて回動される第一平歯車32と、第一平歯車32と噛み合う中間平歯車33と、中間平歯車33と噛み合い第二ソケット41と一体に形成されて回動される第二平歯車34(第二出力軸4を兼ねる)とから形成されている。
【0021】
このように、伝動部材3を3つの平歯車32、33、34で構成することにより、伝動部材ケース31を薄型に形成でき、手持式ナットランナ1を小形軽量に形成することができるようにしている。
そして、第一ソケット21と第二ソケット41とは、いずれか一方のソケットを用いてネジ部材8を着脱するとき、他方のソケットは空転としている。
【0022】
なお、第一平歯車32と第二平歯車34の歯数は、第一平歯車32が31歯で第二平歯車34が34歯としている。
第一平歯車32と第二平歯車34の歯数を異なるようにしたのは、第一平歯車32から中間平歯車33を介して第二平歯車34への動力の伝達損失を考慮して、第一ソケット21と第二ソケット41のトルクがほぼ同じとなるようにするためである。
【0023】
<H形鋼及び添接板の構成>
本発明の実施の形態に係るH形鋼及び添接板の構成を、図5図6及び図7に基づいて説明する。
図5は、H形鋼6及び添接板7に、六角ボルト81と六角ナット82とからなるネジ部材8が装着された状態を示しており、図6は内側添接板73の説明図、図7はウエブ添接板72の説明図である。
【0024】
手持式ナットランナ1は、隣合うH形鋼6の接合部61に設けられる添接板7の取り付けと取り外しのためのネジ部材8を着脱する際に使用されるH形鋼6への添接板7の着脱用の工具である。
H形鋼6は、2枚のフランジ62の辺の寸法が300mm、厚みが15mmであり、両フランジ62間のウエブ63の寸法が270mm、厚みが10mmで、接合部61に5mmの隙間をあけて隣合う所定長のH形鋼6を接合して土留めなどに使用されるようにしている。
【0025】
添接板7は、H形鋼6の各フランジ62の外側の面に設けられる2枚の外側添接板71と、H形鋼6のウエブ63の各面に設けられる2枚のウエブ添接板72と、H形鋼6の各フランジ62の各内側の面に設けられる4枚の内側添接板73とから形成されている。
各外側添接板71は奥行が300mm、厚みが12mm、長さ(幅)が550mmであり、各ウエブ添接板72は奥行が180mm、厚みが9mm、長さ(幅)が460mmであり、各内側添接板73は奥行が120mm、厚みが12mm、長さ(幅)が550mmである。
【0026】
<H形鋼及び添接板に形成された穴の位置構成>
内側添接板73には、図6の説明図に示すように、ネジ部材8用の穴(図示せず、ネジ部材を図示)がフランジ62のウエブ63側と側端64側とに平行に各列4個形成されている。
内側添接板73の側端64側のネジ部材8用の穴は、内側添接板73の長さ方向を二分する中心線C1を挟んで80mmの第一所定ピッチP1で対称に各1個の中央側穴(中央側ネジ部材83)と、中央側穴(中央側ネジ部材83)と130mmの第二所定ピッチP2で中心線C1を挟んで対称に各1個の端部側穴(端部側ネジ部材84)とから形成されている(以下、中央側ネジ部材83と端部側ネジ部材84とを併せて端部側ネジ部材8という。)。
【0027】
内側添接板73のウエブ63側のネジ部材8用の穴は、中央側穴(中央側ネジ部材83)と端部側穴(端部側ネジ部材84)とを結ぶ仮想線L1の中央を通って直交する仮想直交線L2上の位置を挟んで210mmの第三所定ピッチP3で対称に各1個のウエブ中央側穴(ウエブ中央側ネジ部材85)と、ウエブ中央側穴(ウエブ中央側ネジ部材85)と第二所定ピッチP2で仮想直交線L2を挟んで対称に各1個のウエブ端部側穴(ウエブ端部側ネジ部材86)とから形成されている。
また、各外側添接板71と内側添接板73の各2枚とがねじ部材8により共に着脱されるように、内側添接板73に形成されたネジ部材8用の穴と対応して、H形鋼6のフランジ62及びフランジ62に設けられた外側添接板71にもネジ部材8用の穴が形成されており、穴の径はいずれも25mmで,六角ボルト81及び六角ナット82からなるネジ部材8はいずれもM22である(以下、ウエブ中央側ネジ部材85とウエブ端部側ネジ部材86とを併せてウエブ側ネジ部材8という。)。
【0028】
さらに、ウエブ添接板72に形成されたネジ部材8用の穴は、図7に示すように、100mmの間隔をあけて2列に長手方向両方の端部から40mm離れた位置を基準に75mmの配列ピッチP4で中央側に3個ずつウエブ穴(ウエブ取付ネジ部材87)が形成されている。
同様に、H形鋼6のウエブ63にもウエブ添接板72に形成された穴と対応して穴が形成され、穴の径はいずれも25mmで,六角ボルト81及び六角ナット82からなるネジ部材8はいずれもM22である。
【0029】
そして、手持式ナットランナ1を用いて、H形鋼6の接合部61に添接板7をネジ部材8により取り付ける際には、H形鋼6の接合部61に添接板7をネジ部材8により仮止めした状態で、六角ナット82に回り止め用の治具を当てて、六角ボルト81を締め付けるのである。
【0030】
<手持式ナットランナの詳細構成>
つぎに、以上のH形鋼6及び添接板7の構成を踏まえて、ネジ部材8を着脱可能とした手持式ナットランナ1の詳細構成を図1図8に基づいて説明する。
手持式ナットランナ1の第一ソケット21の先端部22は、第二ソケット41の先端部42よりも図2における紙面の左右となる軸方向の外方(左側)に少なくとも六角ボルト81の頭部の厚み(14mm)を超えた状態で突出されている。
【0031】
手持式ナットランナ1の第二ソケット41と第一ソケット21とは、図8に示すように、第二ソケット41が内側添接板73のウエブ63側に位置するネジ部材8に嵌合される際に、第一ソケット21の全体がH形鋼6のフランジ62の側端64の外方に位置する状態に離れて形成されている。
第一ソケット21と第二ソケット41との構造、位置関係を以上のように形成することにより、ウエブ添接板72のネジ部材8の着脱を第一ソケット21により行う際に、第二ソケット41が邪魔にならないようにしている。
【0032】
また、内側添接板73のネジ部材8の着脱を第二ソケット41により行う際に、第一ソケット21が邪魔にならないようにしている。
伝動部材ケース31は、図2及び図4に示されるように、第二ソケット41の軸方向厚みと略同じ厚みに形成されるとともに、軸方向の端面35が第二ソケット41の先端部42と略同一の突出位置に形成されている。
【0033】
また、手持式ナットランナ1は、図8に示すように、第二ソケット41がウエブ側ネジ部材8に嵌合された際に、伝動部材ケース31が側端側ネジ部材8に当接しない幅に形成されている。
なお、図1図2及び図4において、1aはナットランナ本体、13は給気口、14aは始動レバー、14bは回転切替レバー、15は握り部、16aは操作パネル、16bは表示パネル、17はトルクセンサ、18は制御部及び19は電池ボックスである。
【0034】
<手持式ナットランナにおける反力受け部材の構成>
まず、反力受け部材5は、そのネジ部材8を中心として手持式ナットランナ1のナットランナ本体1aや伝動部材ケース31を回動させる反力を受け止める機能を備えたものである。
なお、反力の作用する方向は、着脱するネジ部材8の回動方向とは反対方向である。
【0035】
そして、本発明の実施の形態では、以下に説明する3種の反力受け部材5を形成して、1台の手持式ナットランナ1により、添接板7のネジ部材8の着脱ができるようにしている。
3種の反力受け部材5のうちの第一反力受け部材51は、図9に示すように、第一ソケット21を用いてウエブ添接板72がネジ部材8により着脱される際に、着脱されるネジ部材8の隣のネジ部材8により反力を受け止められるようにされている。
【0036】
また、第一反力受け部材51は、第一ソケット21からネジ部材8の配列ピッチP4の距離だけ離れ、第一ソケット21の先端部22と略同じ突出位置にリング状であって、伝動部材ケース31における第二ソケット41の反対側の端面に取り付けられている。
3種の反力受け部材5のうちの第二反力受け部材52は、第二ソケット41を用いて内側添接板73がネジ部材8により着脱される際に、H形鋼6のフランジ62の側端64により反力を受け止められるとともに、第一ソケット21の先端部22と略同じ突出位置に板状であって、第一ソケット21を挟んで伝動部材ケース31の軸方向の端面35に一対取付けられている(図1参照)。
【0037】
さらに、3種の反力受け部材5のうちの第三反力受け部材53は、第二ソケット41を用いて内側添接板73がウエブ側ネジ部材8により着脱される際に、側端側ネジ部材8が反力を受け止められるように伝動部材ケース31の両側縁部36に一対形成されている。
そして、3種の反力受け部材5のうち、第二反力受け部材52及び第三反力受け部材53は、いずれも内側添接板73のネジ部材8を第二ソケット41により着脱される際に、H形鋼6のフランジ62の側端64又は着脱対象のネジ部材8と異なるネジ部材8により、選択的に反力を受け止められるようにしたものである。
【0038】
<実施形態の変形例>
以上の実施の形態では、手持式ナットランナ1は、圧縮空気により駆動されるようにしたが、圧縮空気駆動に替えて、交流電源又は蓄電池による電気駆動としてもよい。
以上の実施の形態では、伝動部材3は、第一ソケット21とともに回動される第一平歯車32と、第一平歯車32と噛み合う中間平歯車33と、中間平歯車33と噛み合い第二ソケット41とともに回動される第二平歯車34とから形成したが、3個の平歯車に替えてタイミングベルトやチェーンなどの伝動機構としてもよい。
【0039】
また、以上の実施の形態では、第一平歯車32と第二平歯車34との歯数を異ならせたが、同一の歯数でもよい。
以上の実施の形態では、第一ソケット21と第二ソケット41とは、常に同時に回動するようにしたが、伝動部材3と各ソケット21、41との伝動をスプラインなどで連結・解除可能な構成にしてもよい。
【0040】
以上の実施の形態では、第一ソケット21と第一平歯車32及び第二ソケット41と第二平歯車34とをそれぞれ一体に形成されるようにしたが、それぞれ別体に形成されるようにしてもよい。
また、以上の実施の形態では、第一平歯車32・第一ソケット21は、第一出力軸2に着脱自在に装着しているが、第一出力軸2に固着するようにしてもよい。
【0041】
以上の実施の形態では、第二平歯車34・第二ソケット41は、第二出力軸4に固着しているが、第二出力軸4に着脱自在に装着するようにしてもよい。
以上の実施の形態では、反力受け部材5を3種の第一反力受け部材51、第二反力受け部材52及び第三反力受け部材53としたが、構造を変更することにより、少なくとも2種以上の複数の反力受け部材を伝動部材ケース31に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 手持式ナットランナ
11 モータ
2 第一出力軸
21 第一ソケット
22 第一ソケットの先端部
3 伝動部材
31 伝動部材ケース
32 第一平歯車
33 中間平歯車
34 第二平歯車
35 伝動部材ケースの軸方向の端面
36 伝動部材ケースの側縁部
4 第二出力軸
41 第二ソケット
42 第二ソケットの先端部
5 反力受け部材
51 第一反力受け部材
52 第二反力受け部材
53 第三反力受け部材
6 H形鋼
61 接合部
62 フランジ
63 ウエブ
64 フランジの側端
7 添接板
71 外側添接板
72 ウエブ添接板
73 内側添接板
8 ネジ部材
81 六角ボルト
82 六角ナット
83 中央側ネジ部材
84 端部側ネジ部材
85 ウエブ中央側ネジ部材
86 ウエブ端部側ネジ部材
87 ウエブ取付ネジ部材
C1 中心線
L1 仮想線
L2 仮想直交線
P1 第一所定ピッチ
P2 第二所定ピッチ
P3 第三所定ピッチ
P4 配列ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9