(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】走査型イメージング装置、その制御方法、画像処理装置、その制御方法、走査型イメージング方法、画像処理方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230926BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20230926BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G01N21/17 625
A61B3/10 100
A61B3/12 300
(21)【出願番号】P 2019234964
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019209371
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】安野 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】巻田 修一
(72)【発明者】
【氏名】山口 達夫
(72)【発明者】
【氏名】東 神之介
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068578(JP,A)
【文献】特開2019-154987(JP,A)
【文献】特開2016-017915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/105600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17
A61B 3/10
A61B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの3次元領域からデータを収集する走査部と、
前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築する画像化処理部と、
深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、
前記複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、
前記データシフト量に基づいて、前記走査部により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部と
を含む、走査型イメージング装置。
【請求項2】
前記画像化処理部は、前記走査部により収集された前記データに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築し、
前記プロジェクション処理部は、前記複数の3次元画像データのそれぞれに前記プロジェクションを適用して前記複数の正面画像データを構築する、
請求項1の走査型イメージング装置。
【請求項3】
前記画像化処理部は、前記走査部により収集された前記データから単一の3次元画像データを構築し、
前記プロジェクション処理部は、前記単一の3次元画像データに複数の異なる前記プロジェクションを適用して前記複数の正面画像データを構築する、
請求項1の走査型イメージング装置。
【請求項4】
前記第1データシフト量算出部は、前記複数の正面画像データに基づいて相関係数を算出し、前記相関係数に基づいて前記データシフト量を算出する、
請求項1~3のいずれかの走査型イメージング装置。
【請求項5】
前記第1データシフト量算出部は、
前記複数の正面画像データのそれぞれを部分画像データ群に分割する分割部と、
前記分割部によって前記複数の正面画像データから取得された複数の部分画像データ群に基づいて前記相関係数を算出する相関係数算出部と
を含む、請求項4の走査型イメージング装置。
【請求項6】
前記複数の正面画像データのうちの第1正面画像データ及び第2正面画像データについて、
前記第1正面画像データの第1部分画像データ群に含まれる部分画像データの個数は、第2正面画像データの第2部分画像データ群に含まれる部分画像データの個数に等しく、
前記第1部分画像データ群に含まれる一の部分画像データに対応する、前記走査部により収集された前記データの部分データは、前記第2部分画像データ群に含まれるいずれかの部分画像データに対応する前記データの部分データと同じである、
請求項5の走査型イメージング装置。
【請求項7】
前記相関係数算出部は、前記走査部により収集された前記データの第1部分データに対応する前記複数の正面画像データの複数の部分画像データの少なくとも2つを含む第1群と、第2部分データに対応する前記複数の正面画像データの複数の部分画像データの少なくとも2つを含む第2群とに基づいて、前記第1部分データと前記第2部分データとに対応する相関係数を算出し、
前記第1データシフト量算出部は、当該相関係数に基づいて、前記第1部分データと前記第2部分データとに対応するデータシフト量を算出する、
請求項6の走査型イメージング装置。
【請求項8】
前記1以上の3次元画像データのいずれか1以上に基づいて、前記深さ方向におけるデータシフト量を算出する第2データシフト量算出部を更に含み、
前記補正部は、前記第2データシフト量算出部により算出された前記データシフト量に基づくモーションアーティファクト補正を、前記走査部により収集された前記データに基づく前記画像データに適用する、
請求項1~7のいずれかの走査型イメージング装置。
【請求項9】
前記走査部は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)走査を前記サンプルに適用し、
前記画像化処理部により構築される前記1以上の3次元画像データは、OCT強度画像データ、OCT血管造影画像データ、OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとに基づく合成画像データ、及び、OCT偏光画像データのいずれかを含む、
請求項1~8のいずれかの走査型イメージング装置。
【請求項10】
前記走査部は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査を前記3次元領域に適用して前記データを収集する、
請求項1~9のいずれかの走査型イメージング装置。
【請求項11】
前記走査部は、
互いに異なる第1方向及び第2方向に光を偏向可能な偏向器を含み、且つ、
前記第1方向に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ前記第2方向に沿った偏向方向の変化を前記第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって前記走査を前記サンプルに適用する、
請求項10の走査型イメージング装置。
【請求項12】
前記偏向器は、リサージュ関数に基づき予め設定された走査プロトコルに基づき制御される、
請求項11の走査型イメージング装置。
【請求項13】
前記一連のサイクルは、互いに交差する、
請求項10~12のいずれかの走査型イメージング装置。
【請求項14】
前記2次元パターンは、互いに平行な一連のラインスキャンを含むラスターパターンである、
請求項10の走査型イメージング装置。
【請求項15】
サンプルに走査を適用してデータを収集する走査部と、プロセッサとを含む走査型イメージング装置を制御する方法であって、
前記走査部を、前記サンプルの3次元領域からデータを収集するように制御し、
前記プロセッサを、
前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築し、
深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、
前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、
前記データシフト量に基づいて、前記走査部により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する
ように制御する、
走査型イメージング装置の制御方法。
【請求項16】
サンプルの3次元領域に走査を適用して収集されたデータを記憶する記憶部と、
前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築する画像化処理部と、
深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、
前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、
前記データシフト量に基づいて、前記走査により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部と
を含む、画像処理装置。
【請求項17】
記憶部とプロセッサとを含む画像処理装置を制御する方法であって、
サンプルの3次元領域に走査を適用して収集されたデータを前記記憶部に記憶させ、
前記プロセッサを、
前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築し、
深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、
前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、
前記データシフト量に基づいて、前記走査により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する
ように制御する、
画像処理装置の制御方法。
【請求項18】
サンプルの3次元領域に走査を適用してデータを収集し、
前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築し、
深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、
前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、
前記データシフト量に基づいて、前記走査により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する、
走査型イメージング方法。
【請求項19】
サンプルの3次元領域に走査を適用して収集されたデータを準備し、
前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築し、
深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、
前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、
前記データシフト量に基づいて、前記準備された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する、
画像処理方法。
【請求項20】
請求項15、17、18及び19のいずれかの方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項21】
請求項20のプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走査型イメージング装置、その制御方法、画像処理装置、その制御方法、走査型イメージング方法、画像処理方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージング技術の1つに走査型イメージングがある。走査型イメージングとは、サンプルの複数の箇所に順次にビームを照射してデータを収集し、収集されたデータからサンプルの像を構築する技術である。
【0003】
光を利用した走査型イメージングの典型例として光コヒーレンストモグラフィ(OCT;光干渉断層撮影法)が知られている。OCTは、光散乱媒質をマイクロメートルレベル又はそれ以下の分解能で画像化することが可能な技術であり、医用イメージングや非破壊検査などに応用されている。OCTは、低コヒーレンス干渉法に基づく技術であり、典型的には、光散乱媒質のサンプルへの深達性を担保するために近赤外光を利用する。
【0004】
例えば眼科画像診断ではOCT装置の普及が進んでおり、2次元的なイメージングだけでなく、3次元的なイメージング・構造解析・機能解析なども実用化され、診断の強力なツールとして広く利用されるに至っている。また、眼科分野では、走査型レーザー検眼鏡(SLO)など、OCT以外の走査型イメージングも利用されている。なお、近赤外光以外の波長帯の光(電磁波)や超音波を利用した走査型イメージングも知られている。
【0005】
OCTやSLOで利用される走査モードには様々なものがあるが、モーションアーティファクト補正などを目的とした所謂「リサージュ(Lissajous)スキャン」が近年注目を集めている(例えば、特許文献1~4、非特許文献1及び2を参照)。
【0006】
典型的なリサージュスキャンでは、或る程度の大きさを持つ複数のループ(互いに交差する複数のサイクル)を描くように測定光を高速走査するため、1つのサイクルからのデータ取得時間の差を実質的に無視することができる。また、異なるサイクルの交差領域を参照してサイクル間の位置合わせを行えるため、サンプルの動きに起因するモーションアーティファクトを補正することが可能である。このようなリサージュスキャンの特徴に着目し、眼科分野では眼球運動に起因するモーションアーティファクトへの対処を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-17915号公報
【文献】特開2018-68578号公報
【文献】特開2018-140004号公報
【文献】特開2018-140049号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Yiwei Chen, Young-Joo Hong, Shuichi Makita, and Yoshiaki Yasuno, ”Three-dimensional eye motion correction by Lissajous scan optical coherence tomography”, Biomedical Optics EXPRESS, Vol. 8, No. 3, 1 Mar 2017, PP. 1783-1802
【文献】Yiwei Chen, Young-Joo Hong, Shuichi Makita, and Yoshiaki Yasuno, ”Eye-motion-corrected optical coherence tomography angiography using Lissajous scanning”, Biomedical Optics EXPRESS, Vol. 9, No. 3, 1 Mar 2018, PP. 1111-1129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の1つの目的は、モーションアーティファクト補正の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
幾つかの態様に係る走査型イメージング装置は、サンプルの3次元領域からデータを収集する走査部と、前記データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築する画像化処理部と、深さ方向のプロジェクションを前記1以上の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、前記複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、前記データシフト量に基づいて、前記走査部により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部とを含む。
【0011】
幾つかの態様において、前記画像化処理部は、前記走査部により収集された前記データに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築し、前記プロジェクション処理部は、前記複数の3次元画像データのそれぞれに前記プロジェクションを適用して前記複数の正面画像データを構築する。
【0012】
前記画像化処理部は、前記走査部により収集された前記データから単一の3次元画像データを構築し、前記プロジェクション処理部は、前記単一の3次元画像データに複数の異なる前記プロジェクションを適用して前記複数の正面画像データを構築する。
【0013】
幾つかの態様に係る走査型イメージング装置は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集する走査部と、複数の異なる画像化処理を前記データに適用して複数の3次元画像データを構築する画像化処理部と、深さ方向のプロジェクションを前記複数の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、前記データシフト量に基づいて、前記走査部により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部とを含む。
【0014】
幾つかの態様において、前記第1データシフト量算出部は、前記複数の正面画像データに基づいて相関係数を算出し、前記相関係数に基づいて前記データシフト量を算出する。
【0015】
幾つかの態様において、前記第1データシフト量算出部は、前記複数の正面画像データのそれぞれを部分画像データ群に分割する分割部と、前記分割部によって前記複数の正面画像データから取得された複数の部分画像データ群に基づいて前記相関係数を算出する相関係数算出部とを含む。
【0016】
幾つかの態様において、前記複数の正面画像データのうちの第1正面画像データ及び第2正面画像データについて、前記第1正面画像データの第1部分画像データ群に含まれる部分画像データの個数は、第2正面画像データの第2部分画像データ群に含まれる部分画像データの個数に等しく、前記第1部分画像データ群に含まれる一の部分画像データに対応する、前記走査部により収集された前記データの部分データは、前記第2部分画像データ群に含まれるいずれかの部分画像データに対応する前記データの部分データと同じである。
【0017】
幾つかの態様において、前記相関係数算出部は、前記走査部により収集された前記データの第1部分データに対応する前記複数の正面画像データの複数の部分画像データの少なくとも2つを含む第1群と、第2部分データに対応する前記複数の正面画像データの複数の部分画像データの少なくとも2つを含む第2群とに基づいて、前記第1部分データと前記第2部分データとに対応する相関係数を算出し、前記第1データシフト量算出部は、当該相関係数に基づいて、前記第1部分データと前記第2部分データとに対応するデータシフト量を算出する。
【0018】
幾つかの態様において、前記複数の3次元画像データのいずれか1以上に基づいて、前記深さ方向におけるデータシフト量を算出する第2データシフト量算出部を更に含み、前記補正部は、前記第2データシフト量算出部により算出された前記データシフト量に基づくモーションアーティファクト補正を、前記走査部により収集された前記データに基づく前記画像データに適用する。
【0019】
幾つかの態様において、前記走査部は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)走査を前記サンプルに適用し、前記画像化処理部により構築される前記複数の3次元画像データは、OCT強度画像データ、OCT血管造影画像データ、OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとに基づく合成画像データ、及び、OCT偏光画像データのいずれかを含む。
【0020】
幾つかの態様において、前記走査部は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査を前記3次元領域に適用して前記データを収集する。
【0021】
幾つかの態様において、前記走査部は、互いに異なる第1方向及び第2方向に光を偏向可能な偏向器を含み、且つ、前記第1方向に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ前記第2方向に沿った偏向方向の変化を前記第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって前記走査を前記サンプルに適用する。
【0022】
幾つかの態様において、前記偏向器は、リサージュ関数に基づき予め設定された走査プロトコルに基づき制御される。
【0023】
幾つかの態様において、前記一連のサイクルは、互いに交差する。
【0024】
幾つかの態様において、前記2次元パターンは、互いに平行な一連のラインスキャンを含むラスターパターンである。
【0025】
幾つかの態様に係る方法は、サンプルに走査を適用してデータを収集する走査部と、プロセッサとを含む走査型イメージング装置を制御する方法であって、前記走査部を、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集するように制御し、前記プロセッサを、複数の異なる画像化処理を前記データに適用して複数の3次元画像データを構築し、深さ方向のプロジェクションを前記複数の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、前記データシフト量に基づいて、前記走査部により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行するように制御する。
【0026】
幾つかの態様に係る画像処理装置は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用して収集されたデータを記憶する記憶部と、複数の異なる画像化処理を前記データに適用して複数の3次元画像データを構築する画像化処理部と、深さ方向のプロジェクションを前記複数の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、前記データシフト量に基づいて、前記走査により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部とを含む。
【0027】
幾つかの態様に係る方法は、記憶部とプロセッサとを含む画像処理装置を制御する方法であって、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用して収集されたデータを前記記憶部に記憶させ、前記プロセッサを、複数の異なる画像化処理を前記データに適用して複数の3次元画像データを構築し、深さ方向のプロジェクションを前記複数の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、前記データシフト量に基づいて、前記走査により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行するように制御する。
【0028】
幾つかの態様に係る走査型イメージング方法は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集し、複数の異なる画像化処理を前記データに適用して複数の3次元画像データを構築し、深さ方向のプロジェクションを前記複数の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、前記データシフト量に基づいて、前記走査により収集された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する。
【0029】
幾つかの態様に係る画像処理方法は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用して収集されたデータを準備し、複数の異なる画像化処理を前記データに適用して複数の3次元画像データを構築し、深さ方向のプロジェクションを前記複数の3次元画像データのそれぞれに適用して複数の正面画像データを構築し、前記複数の正面画像データに基づいて前記深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、前記データシフト量に基づいて、前記準備された前記データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する。
【0030】
幾つかの態様は、上記した方法のいずれかをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0031】
幾つかの態様は、上記した方法のいずれかをコンピュータに実行させるプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体である。
【0032】
いずれか2以上の態様を少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。また、いずれかの態様に対し、本開示に係る任意の事項を少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。また、いずれか2以上の態様の少なくとも部分的な組み合わせに対し、本開示に係る任意の事項を少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0033】
例示的な態様によれば、モーションアーティファクト補正の精度の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図2】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図3】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図4A】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図4B】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
【
図5】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図6】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図7】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図8】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図9】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図10】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図11】例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置)の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
幾つかの例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置、その制御方法、画像処理装置、その制御方法、走査型イメージング方法、画像処理方法、プログラム、及び記録媒体について、図面を参照しながら説明する。
【0036】
本明細書にて引用された文献に開示された技術や、それ以外の任意の公知技術を、例示的な実施形態に援用することが可能である。また、特に言及しない限り、「画像データ」とそれに基づく「画像」とを区別しないものとし、また、被検眼の「部位」とその「画像」とを区別しないものとする。
【0037】
例示的な実施形態において、一連のサイクルを含む2次元パターンに従うスキャンがサンプルに適用される。この2次元パターンは、典型的には、リサージュ関数に基づき予め設定された走査プロトコルに基づくものであってよく、例えば、特許文献1~4並びに非特許文献1及び2のいずれかに記載された技術に利用された(又は利用可能な)走査プロトコルであってよい。例示的な実施形態の説明において、採用可能なスキャンの態様(スキャンモード)をリサージュスキャンと呼ぶことにする。以下、例示として、非特許文献1に記載されたリサージュスキャンで収集されたデータの処理について説明する。
【0038】
まず、リサージュスキャンで収集されたデータにフーリエ変換等が適用されて、所定の3次元リサージュ座標系で定義された3次元画像データが構築される。この3次元リサージュ座標系は、例えば、3次元直交座標系(αβγ座標系とする)であり、α軸がサイクルを構成する複数のAラインの位置を表し、β軸がサイクルの識別番号(スキャン順序)を表し、γ軸が深さ位置(軸方向の位置)を表す。αβγ座標系で表現される3次元画像データは、スキャン順序にしたがってβ方向に配列された、リサージュスキャンを構成するサイクル群に対応する断面画像データ群(各断面はαγ面を表す)からなる。
【0039】
次に、αβγ座標系で定義された3次元画像データ(ボリューム)が、比較的大きな動きが介在しない複数の部分画像データ(サブボリューム)に分割され、各サブボリュームの正面プロジェクション画像(en face projection image)が構築される。この正面プロジェクション画像は、γ方向のプロジェクションにより構築された、αβ面において定義された2次元正面画像である。このような正面プロジェクション画像はストリップと呼ばれる。
【0040】
続いて、リサージュ座標系(αβ座標系)で定義された各ストリップが、実空間(xy座標系)で定義された画像に変換される。換言すると、αβ座標系からxy座標系への座標変換が各ストリップに適用される。この処理は、リマッピング(remapping)と呼ばれる。更に、リマッピングされた(つまり、xy座標系で定義された)各ストリップに補間処理が適用される。これにより、xy座標系で定義された複数のストリップが得られる。
【0041】
非特許文献1に記載されたリサージュスキャンの特性として、2つのストリップは4箇所で重複する(交差する)。非特許文献1に記載されたデータ処理では、最も大きいストリップが初期基準ストリップとして採用され、この初期基準ストリップに対して大きさ順にストリップが逐次にレジストレーションされ、マージされる。レジストレーションでは、基準ストリップと他のストリップとの間の相対位置を求めるために相関演算(相互相関関数、相関係数)が利用される。ここで、ストリップは任意の形状を有するため、各ストリップを特定形状(例えば正方形状)の画像として扱うためのマスクを用いてストリップ間のオーバーラップ領域の相関演算が行われる(非特許文献1のAppendix Aを参照)。これにより、複数のストリップのマージ画像(合成画像)が得られる。このマージ画像が、目的の画像、つまりモーションアーティファクトが補正された画像である。
【0042】
例示的な実施形態では、リサージュスキャンで収集されたデータから得られる複数種類の画像を用いてレジストレーションを行うことによって、モーションアーティファクト補正の好適化を図る。
【0043】
なお、幾つかの例示的な態様において、リサージュスキャン以外のスキャンモードを採用することが可能である。例えば、一連のサイクルを含む2次元パターンとして、互いに平行な一連のラインスキャン(つまり、一連のBスキャン)を含むパターンを採用することができる。このようなスキャンパターンはラスターパターンなどと呼ばれ、これを用いたスキャンはラスタースキャンと呼ばれる(例えば、特開2013-81763号公報、特開2015-62678号公報などを参照)。より一般に、サンプルの3次元領域からデータを収集するための任意のスキャンパターンを採用することが可能である。
【0044】
以下に説明する例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置は、フーリエドメインOCT(例えば、スウェプトソースOCT)を利用して生体眼の眼底を計測することが可能な眼科装置である。実施形態に採用可能なOCTのタイプは、スウェプトソースOCTに限定されず、例えばスペクトラルドメインOCT又はタイムドメインOCTであってもよい。
【0045】
幾つかの例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置は、OCT以外の走査型モダリティを利用可能であってよい。例えば、幾つかの例示的な実施形態は、SLO等の任意の光走査型モダリティを採用することができる。
【0046】
また、幾つかの例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置に適用可能な走査型モダリティは、光走査型モダリティには限定されない。例えば、幾つかの例示的な実施形態は、光以外の電磁波を利用した走査型モダリティや、超音波を利用した走査型モダリティなどを採用することができる。
【0047】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、OCTスキャンで収集されたデータの処理及び/又はSLOで収集されたデータの処理に加え、他のモダリティで取得されたデータを処理可能であってよい。他のモダリティは、例えば、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡、及び眼科手術用顕微鏡のいずれかであってよい。幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、このようなモダリティの機能を有していてよい。
【0048】
OCTが適用される対象(サンプル)は眼底に限定されず、前眼部や硝子体など眼の任意の部位であってもよいし、眼以外の生体の部位や組織であってもよいし、生体以外の物体であってもよい。
【0049】
以下に説明する例示的な実施形態に係る眼科装置は、走査型イメージング装置の幾つかの態様、走査型イメージング装置を制御する方法の幾つかの態様、画像処理装置の幾つかの態様、画像処理装置を制御する方法の幾つかの態様、画像処理方法の幾つかの態様、及び、走査型イメージング方法の幾つかの態様を提供する。
【0050】
〈走査型イメージング装置の構成〉
図1に示す眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100、及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、被検眼Eを正面から撮影するための要素群(光学要素、機構など)が設けられている。OCTユニット100には、被検眼EにOCTスキャンを適用するための要素群(光学要素、機構など)の一部が設けられている。OCTスキャンのための要素群の他の一部は、眼底カメラユニット2に設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算や制御を実行する1以上のプロセッサを含む。これらに加え、眼科装置1は、被検者の顔を支持するための要素や、OCTスキャンが適用される部位を切り替えるための要素を備えていてもよい。前者の要素の例として、顎受けや額当てがある。後者の要素の例として、OCTスキャン適用部位を眼底から前眼部に切り替えるために使用されるレンズユニットがある。
【0051】
本明細書に開示された要素の機能は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能を実行するハードウェア、又は、開示された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0052】
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。取得される眼底Efの画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、例えば近赤外光を用いた動画撮影により得られ、アライメント、フォーカシング、トラッキングなどに利用される。撮影画像は、例えば可視領域又は赤外領域のフラッシュ光を用いた静止画像である。
【0053】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0054】
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、凹面鏡12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ系17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ系20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(眼底Ef)を照明する。観察照明光の被検眼Eからの戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のフォーカス(焦点位置)は、眼底Ef又は前眼部に合致するように調整される。
【0055】
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、結像レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0056】
液晶ディスプレイ(LCD)39は固視標(固視標画像)を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aに反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。LCD39における固視標画像の表示位置を変更することで、被検眼Eの視線を誘導する方向(固視方向、固視位置)が変更される。
【0057】
LCD等の表示デバイスの代わりに、例えば、発光素子アレイ、又は、発光素子とこれを移動する機構との組み合わせを用いてもよい。
【0058】
アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)に用いられるアライメント指標を生成する。発光ダイオード(LED)51から出力されたアライメント光は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。アライメント光の被検眼Eからの戻り光(角膜反射光等)は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントを実行できる。
【0059】
従来と同様に、本例のアライメント指標像は、アライメント状態により位置が変化する2つの輝点像からなる。被検眼Eと光学系との相対位置がxy方向に変化すると、2つの輝点像が一体的にxy方向に変位する。被検眼Eと光学系との相対位置がz方向に変化すると、2つの輝点像の間の相対位置(距離)が変化する。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離が既定のワーキングディスタンスに一致すると、2つの輝点像が重なり合う。xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、所定のアライメントターゲット内又はその近傍に2つの輝点像が提示される。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離がワーキングディスタンスに一致し、且つ、xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、2つの輝点像が重なり合ってアライメントターゲット内に提示される。
【0060】
オートアライメントでは、データ処理部230が、2つの輝点像の位置を検出し、主制御部211が、2つの輝点像とアライメントターゲットとの位置関係に基づいて後述の移動機構150を制御する。マニュアルアライメントでは、主制御部211が、被検眼Eの観察画像とともに2つの輝点像を表示部241に表示させ、ユーザーが、表示された2つの輝点像を参照しながら操作部242を用いて移動機構150を動作させる。
【0061】
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、フォーカス光学系60は照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱される。フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。フォーカス光の被検眼Eからの戻り光(眼底反射光等)は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカシングやオートフォーカシングを実行できる。
【0062】
孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に、視度補正レンズ70及び71を選択的に挿入することができる。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラスレンズ(凸レンズ)である。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナスレンズ(凹レンズ)である。
【0063】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用光路とOCT用光路(測定アーム)とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。測定アームには、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44、及びリレーレンズ45が設けられている。
【0064】
リトロリフレクタ41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、それにより測定アームの長さが変更される。測定アーム長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0065】
分散補償部材42は、参照アームに配置された分散補償部材113(後述)とともに、測定光LSの分散特性と参照光LRの分散特性とを合わせるよう作用する。
【0066】
OCT合焦レンズ43は、測定アームのフォーカス調整を行うために測定アームに沿って移動される。撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に制御することができる。
【0067】
光スキャナ44は、実質的に、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ44は、測定アームにより導かれる測定光LSを偏向する。光スキャナ44は、例えば、x方向のスキャンを行うためのガルバノミラーと、y方向のスキャンを行うためのガルバノミラーとを含む、2次元スキャンが可能なガルバノスキャナである。
【0068】
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを適用するための光学系が設けられている。この光学系は干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系により得られたデータ(検出信号)は、干渉光のスペクトルを表す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0069】
光源ユニット101は、例えば、少なくとも近赤外波長帯において出射波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。測定光LSの光路は測定アームと呼ばれ、参照光LRの光路は参照アームと呼ばれる。
【0070】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、リトロリフレクタ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、測定アームに配置された分散補償部材42とともに、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。リトロリフレクタ114は、これに入射する参照光LRの光路に沿って移動可能であり、それにより参照アームの長さが変更される。参照アーム長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0071】
リトロリフレクタ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119を通じてアッテネータ120に導かれてその光量が調整され、光ファイバ121を通じてファイバカプラ122に導かれる。
【0072】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。測定光LSの被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0073】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、生成された干渉光を所定の分岐比(例えば1:1)で分岐することで一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0074】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードを含む。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集システム(DAS)130に送る。
【0075】
データ収集システム130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐して2つの分岐光を生成し、これら分岐光の一方を光学的に遅延させ、これら分岐光を合成し、得られた合成光を検出し、その検出結果に基づいてクロックKCを生成する。データ収集システム130は、検出器125から入力される検出信号のサンプリングをクロックKCに基づいて実行する。データ収集システム130は、このサンプリングの結果を演算制御ユニット200に送る。
【0076】
本例では、測定アーム長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ41)と、参照アーム長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ114、又は参照ミラー)との双方が設けられているが、一方の要素のみが設けられていてもよい。また、測定アーム長と参照アーム長との間の差(光路長差)を変更するための要素はこれらに限定されず、任意の要素(光学部材、機構など)であってよい。
【0077】
〈制御系・処理系〉
眼科装置1の制御系及び処理系の構成例を
図3、
図4A及び
図4Bに示す。制御部210、画像構築部220、及びデータ処理部230は、例えば演算制御ユニット200に設けられる。眼科装置1は、外部装置との間でデータ通信を行うための通信デバイスを含んでいてもよい。眼科装置1は、記録媒体からのデータ読み出しと、記録媒体へのデータ書き込みとを行うためのドライブ装置(リーダ/ライタ)を含んでいてもよい。
【0078】
〈制御部210〉
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。また、
図4Aに示すように、本実施形態において、主制御部211は走査制御部2111を含み、記憶部212は走査プロトコル2121を記憶している。
【0079】
〈主制御部211〉
主制御部211は、プロセッサを含み、眼科装置1の各要素(
図1~
図4Bに示された要素を含む)を制御する。主制御部211は、プロセッサを含むハードウェアと、制御ソフトウェアとの協働によって実現される。走査制御部2111は、所定形状及び所定サイズの走査エリアに関するOCTスキャンの制御を行う。
【0080】
撮影合焦駆動部31Aは、主制御部211の制御の下に、撮影光路に配置された撮影合焦レンズ31と照明光路に配置されたフォーカス光学系60とを移動する。リトロリフレクタ(RR)駆動部41Aは、主制御部211の制御の下に、測定アームに設けられたリトロリフレクタ41を移動する。OCT合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御の下に、測定アームに配置されたOCT合焦レンズ43を移動する。測定アームに設けられたリトロリフレクタ(RR)駆動部114Aは、主制御部211の制御の下に、参照アームに配置されたリトロリフレクタ114を移動する。上記した駆動部のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。光スキャナ44は、主制御部211(走査制御部2111)の制御の下に動作する。
【0081】
移動機構150は、典型的には、眼底カメラユニット2を3次元的に移動し、例えば、±x方向(左右方向)に移動可能なxステージと、xステージを移動するx移動機構と、±y方向(上下方向)に移動可能なyステージと、yステージを移動するy移動機構と、±z方向(奥行き方向)に移動可能なzステージと、zステージを移動するz移動機構とを含む。各移動機構は、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
【0082】
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、OCT画像、眼底像、被検眼情報、制御情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。制御情報は、特定の制御に関する情報である。本実施形態の制御情報は、走査プロトコル2121を含む。
【0083】
走査プロトコル2121は、所定形状及び所定サイズの走査エリアに関するOCTスキャンのための制御の内容に関する取り決めであり、各種制御パラメータ(走査制御パラメータ)の組を含む。走査プロトコル2121は、走査モード毎のプロトコルを含む。本実施形態の走査プロトコル2121は、リサージュスキャンのプロトコルを少なくとも含み、更に、例えば、Bスキャン(ラインスキャン)、クロススキャン、ラジアルスキャン、ラスタースキャンなどのプロトコルを含んでいてもよい。
【0084】
本実施形態の走査制御パラメータは、光スキャナ44に対する制御の内容を示すパラメータを少なくとも含む。このパラメータは、例えば、スキャンパターンを示すパラメータ、スキャン速度を示すパラメータ、スキャン間隔を示すパラメータなどがある。スキャンパターンは、スキャンの経路の形状を示し、その例として、リサージュパターン、ラインパターン、クロスパターン、ラジアルパターン、ラスターパターンなどがある。スキャン速度は、例えば、Aスキャンの繰り返しレートとして定義される。スキャン間隔は、例えば、隣接するAスキャンの間隔として、つまりスキャン点の配列間隔として定義される。
【0085】
なお、特許文献1~4並びに非特許文献1及び2の開示のような従来技術と同様に、本実施形態の「リサージュスキャン」は、互いに直交する2つの単振動を順序対として得られる点の軌跡が描くパターン(リサージュパターン、リサージュ図形、リサージュ曲線、リサージュ関数、バウディッチ曲線)を経路とした「狭義の」リサージュスキャンだけでなく、一連のサイクルを含む所定の2次元パターンに従う「広義の」リサージュスキャンであってもよい。
【0086】
本実施形態では、光スキャナ44は、x方向に測定光LSを偏向する第1ガルバノミラーと、y方向に測定光LSを偏向する第2ガルバノミラーとを含む。リサージュスキャンは、x方向に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返すように第1ガルバノミラーの制御を行いつつ、y方向に沿った偏向方向の変化を第2周期で繰り返すように第2ガルバノミラーの制御を行うことによって実現される。ここで、第1周期と第2周期とは互いに異なる。
【0087】
例えば、本実施形態のリサージュスキャンは、2つの正弦波の組み合わせから得られる狭義のリサージュパターンのスキャンだけでなく、これに特定項(例えば、奇数次の多項式)を加えたパターンのスキャンや、三角波に基づくパターンのスキャンであってもよい。
【0088】
「サイクル」は、一般に、或る長さを持つ複数のサンプリング点から構成されるオブジェクトを意味し、例えば閉曲線又はほぼ閉曲線であってよい(つまり、サイクルの始点と終点とが一致又はほぼ一致していてよい)。
【0089】
典型的には、走査プロトコル2121はリサージュ関数に基づき設定される。非特許文献1の式(9)に示すように、リサージュ関数は、例えば、次のパラメトリック方程式系で表現される:x(ti)=A・cos(2π・(fA/n)・ti)、y(ti)=A・cos(2π・(fA・(n-2)/n2)・ti)。
【0090】
ここで、xはリサージュ曲線が定義される2次元座標系の横軸、yは縦軸、tiはリサージュスキャンにおける第i番目のAラインの収集時点、Aはスキャン範囲(振幅)、fAはAラインの収集レート(スキャン速度、Aスキャンの繰り返しレート)、nはx(横軸)方向の各サイクルにおけるAラインの個数をそれぞれ示す。
【0091】
このようなリサージュスキャンにおいて眼底Efに適用されるスキャンラインの分布の例を
図5に示す。
【0092】
(狭義又は広義の)リサージュスキャンに含まれる任意のサイクル対(ペア)が1点以上(特に2点以上、典型的には4点)で互いに交差するため、リサージュスキャンにおける任意のサイクル対から収集されたデータ対の間のレジストレーションを行うことができる。これにより、非特許文献1(又は2)に開示された画像構築手法及びモーションアーティファクト補正手法を利用することが可能となる。以下、特に言及しない限り、非特許文献1に記載された手法が適用される。
【0093】
記憶部212に記憶される制御情報は上記の例に限定されない。例えば、制御情報はフォーカス制御を行うための情報(フォーカス制御パラメータ)を含んでいてよい。
【0094】
フォーカス制御パラメータは、OCT合焦駆動部43Aに対する制御の内容を示すパラメータである。フォーカス制御パラメータの例として、測定アームの焦点位置を示すパラメータ、焦点位置の移動速度を示すパラメータ、焦点位置の移動加速度を示すパラメータなどがある。焦点位置を示すパラメータは、例えば、OCT合焦レンズ43の位置を示すパラメータである。焦点位置の移動速度を示すパラメータは、例えば、OCT合焦レンズ43の移動速度を示すパラメータである。焦点位置の移動加速度を示すパラメータは、例えば、OCT合焦レンズ43の移動加速度を示すパラメータである。移動速度は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。移動加速度についても同様である。
【0095】
このようなフォーカス制御パラメータによれば、眼底Efの形状(典型的には、中心部が深く且つ周辺部が浅い凹形状)や収差分布に応じたフォーカス調整が可能になる。フォーカス制御は、例えば、走査制御(リサージュスキャンの繰り返し制御)と連係的に実行される。それにより、モーションアーティファクトが補正され、且つ、スキャン範囲の全体に亘ってピントが合った、高品質の画像が得られる。
【0096】
〈走査制御部2111〉
走査制御部2111は、走査プロトコル2121に基づいて少なくとも光スキャナ44を制御する。走査制御部2111は、走査プロトコル2121に基づく光スキャナ44の制御と連係して光源ユニット101の制御を更に実行してもよい。走査制御部2111は、プロセッサを含むハードウェアと、走査プロトコル2121を含む走査制御ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0097】
〈画像構築部220〉
画像構築部220は、プロセッサを含み、データ収集システム130から入力された信号(サンプリングデータ)に基づいて、各種のOCT画像データを構築する。典型的なOCT画像データ構築は、従来のフーリエドメインOCT(スウェプトソースOCT)と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。他のタイプのOCT手法が採用される場合、画像構築部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行することによってOCT画像データを構築する。これにより、複数のAスキャン画像データが得られる。これらAスキャン画像データには、走査プロトコルに応じた座標が付与される。
【0098】
前述したように、本実施形態ではリサージュスキャンが眼底Efに適用される。画像構築部220は、リサージュスキャンによる収集とデータ収集システム130によるサンプリングとを介して取得されたデータに対し、例えば非特許文献1及び2のそれぞれに開示された画像構築手法及びモーションアーティファクト補正手法を適用することによって3次元画像データを構築する。幾つかの例示的な態様において、画像構築部220は、データ処理部230とともに3次元画像データ構築を実行するように構成されていてよい。
【0099】
画像構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データにレンダリングを適用して表示用画像を形成することができる。適用可能なレンダリング法の例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値プロジェクション(MIP)、最小値プロジェクション(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
【0100】
画像構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データに基づいてOCT正面画像(enface OCT image)を構築することが可能である。例えば、画像構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データをz方向(Aライン方向、深さ方向)に投影することでプロジェクションデータを構築することができる。また、画像構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データの一部である部分的3次元画像データをz方向に投影することでシャドウグラムを構築することができる。この部分的3次元画像データは、例えば、セグメンテーションを利用して設定される。セグメンテーションは、画像中の部分領域を特定する処理である。本例では、眼底Efの所定組織に相当する画像領域を特定するためにセグメンテーションを行うことができる。
【0101】
眼科装置1は、OCT血管造影(OCT-Angiography)を実施可能であってよい。OCT血管造影は、血管が強調された画像を構築するイメージング技術である(例えば、非特許文献2、特表2015-515894号公報などを参照)。一般に、眼底組織(構造)は時間的に変化しないが、血管内部の血流部分は時間的に変化する。OCT血管造影では、このような時間的変化が存在する部分(血流信号)を強調して画像を生成する。なお、OCT血管造影は、OCTモーションコントラスト撮影(motion contrast imaging)などとも呼ばれる。また、OCT血管造影により取得される画像は、血管造影画像、アンジオグラム(angiogram)、モーションコントラスト画像などと呼ばれる。
【0102】
OCT血管造影が実施される場合、眼科装置1は、眼底Efの同じ領域を所定回数だけ繰り返しスキャンする。例えば、眼科装置1は、前述した走査制御(リサージュスキャンの繰り返し制御)を所定回数だけ繰り返し実施する。それにより、リサージュスキャンの適用領域に対応する複数の3次元データ(3次元データセット)がデータ収集システム130によって収集される。画像構築部220及び/又はデータ処理部230は、この3次元データセットからモーションコントラスト画像を構築することができる。このモーションコントラスト画像は、眼底Efの血流に起因する干渉信号の時間的変化が強調された血管造影画像である。この血管造影画像は、眼底Efの血管の3次元的な分布を表現した3次元血管造影画像データである。
【0103】
画像構築部220及び/又はデータ処理部230は、この3次元血管造影画像データから、任意の2次元血管造影画像データ及び/又は任意の擬似的3次元血管造影画像データを構築することが可能である。例えば、画像構築部220は、3次元血管造影画像データに多断面再構成を適用することにより、眼底Efの任意の断面を表す2次元血管造影画像データを構築することができる。また、画像構築部220は、3次元血管造影画像データにプロジェクション画像化又はシャドウグラム化を適用することにより、眼底Efの正面血管造影画像データを構築することができる。
【0104】
本実施形態の画像構築部220は、データ収集システム130により収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用することで、複数の異なる種類の画像を構築する。これら複数種類の画像は、レジストレーション(すなわちモーションアーティファクト補正)に用いられる。なお、従来のモーションアーティファクト補正技術では単一種類の画像を用いていたため、補正精度に向上の余地があった。本実施形態は、複数種類の画像を用いることによって補正精度の向上を図るものである。
【0105】
このような処理を実行するための画像構築部220の構成の一例を
図4Bに示す。本例の画像構築部220は、画像化処理部221と、プロジェクション処理部222と、ラテラルシフト量算出部223と、アキシャルシフト量算出部224と、補正部225とを含む。なお、特に言及しない限り、本例は、非特許文献1又は2に記載された技術に従う。
【0106】
〈画像化処理部221〉
画像化処理部221は、被検眼Eの3次元領域に対するリサージュスキャンで収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築するように構成されている。
【0107】
典型的には、画像化処理部221は、少なくとも高速フーリエ変換(FFT)を適用して3次元画像データ(ボリューム)を構築するように構成される。また、画像化処理部221は、高速フーリエ変換の前及び/又は後に所定の処理(前処理及び/又は後処理)を実行するように構成されていてもよい。
【0108】
画像化処理部221により構築される3次元画像データの種類は任意であってよい。その幾つかの例として、OCT強度画像データ、OCT血管造影画像データ、OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとに基づく合成画像データ、及び、OCT偏光画像データがある。
【0109】
OCT強度画像データは、例えば非特許文献1に記載された手法で構築された、リサージュ座標系(例えば、前述したαβγ座標系)で定義された3次元画像データである。OCT強度画像データは、被検眼Eの3次元的な構造を可視化した画像データである。
【0110】
OCT血管造影画像データは、例えば非特許文献2に記載された手法で構築された、リサージュ座標系(例えばαβγ座標系)で定義された3次元画像データである。OCT血管造影画像データは、被検眼E(眼底Ef)における血流の3次元的な分布を可視化した画像データである。
【0111】
OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとに基づく合成画像データは、OCT強度画像データの少なくとも一部又はそれを処理して構築された画像データとOCT血管造影画像データの少なくとも一部又はそれを処理して構築された画像データとに対して任意の合成処理を適用することにより作成された一つの3次元画像データである。この合成画像データは、被検眼Eの構造及び血流を3次元的に可視化した画像データである。
【0112】
OCT偏光画像データは、偏光OCT(偏光感受型OCT)と呼ばれるモダリティが採用された場合に取得される3次元画像データである。OCT偏光画像データは、被検眼E(眼底Ef)の組織のメラニンの3次元的な分布を可視化した画像データである。偏光OCTは、偏光を利用することによってサンプルの複屈折による偏光依存性(偏光情報)を検出するモダリティである。偏光OCTについては、例えば、特開2004-28970号公報、特開2007-298461号公報、特開2015-230297号公報などに開示されている。これらの文献にも記載されているように、偏光OCTを実施可能な走査型イメージング装置は、眼科装置1と同様のOCT干渉光学系を有するが、典型的には、偏光を制御するための各種の要素(例えば、偏波コントローラ、偏光変調器、電気光学変調器)と、干渉光(干渉信号)を2つの偏光成分に分割する偏光ビームスプリッタと、これら偏光成分をそれぞれ検出する2つの光検出器とを備えている(図示は省略する)。
【0113】
画像化処理部221により構築される3次元画像データの種類は、以上に説明した例示に限定されない。例えば、所望の種類の3次元OCT画像データを取得するために、特開2014-228473号公報に記載されたジョーンズマトリックスOCTシステム、特開2019-54993号公報に記載されたOCT血流計測装置、及び、他のOCTモダリティのいずれかを用いることが可能である。
【0114】
〈プロジェクション処理部222〉
プロジェクション処理部222は、画像化処理部221により構築された複数の3次元画像データのそれぞれに対し、深さ方向(Aライン方向、軸方向、アキシャル方向、γ方向、z方向)のプロジェクションを適用するように構成されている。それにより、画像化処理部221により構築された各3次元画像データから正面画像データが構築される。プロジェクション処理部222は、一つの3次元画像データから少なくとも一種類の正面画像データを構築することができる。
【0115】
画像化処理部221によりOCT強度画像データが得られた場合、プロジェクション処理部222は、例えば、対数スケール線形プロジェクション(Log-scaled linear projection)、対数スケールプロジェクション(Log-scale projection)、最大値プロジェクション(Maximum intensity projection)など、任意の種類のプロジェクション処理をOCT強度画像データに適用することができる。ここで、対数スケール線形プロジェクションは、線形スケール(Linear scale)で画素値(強度)をAライン方向(深さ方向)に加算し、その和の対数を求めるプロジェクション手法であり、Aライン方向における強度の加算と考えることができる。対数スケールプロジェクションは、画素値の対数を求めてからAライン方向に加算するプロジェクション手法であり、実質的には強度の乗算と考えることができる。最大値プロジェクションは、各Aライン上の画素の値のうち最大値を選択するプロジェクション手法である。なお、ここに挙げたOCT強度画像データのプロジェクション手法は単なる例示であり、これらに限定されない。
【0116】
画像化処理部221によりOCT血管造影画像データが構築された場合、プロジェクション処理部222は、例えば、OCT血管造影画像データ全体をAライン方向にプロジェクションすることや、OCT血管造影画像データの一部のみをAライン方向にプロジェクションすることが可能である。前者の例として、非特許文献2の
図5に示された全深度正面OCT血管造影画像(whole depth en face OCT-A image)がある。また、後者の例として、Yin, X.; Chao, J. R.; Wang, R. K., “User-guided segmentation for volumetric retinal optical coherence tomography images”, J. Biomed. Opt 19, 086020 (2014)の
図9に示された、3つの異なる層(NFL、IPL/INL、OPL)における血管網の画像がある。これらは、セグメンテーションにより抽出されたスラブ(slab)のプロジェクションであり、前述したシャドウグラムに相当する。なお、ここに挙げたOCT血管造影画像データのプロジェクション手法は単なる例示であり、これらに限定されない。
【0117】
OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとに基づく合成画像データが画像化処理部221により構築された場合、プロジェクション処理部222は、例えば、この合成画像データにプロジェクションを適用して網膜血管強調画像を構築することができる。網膜血管強調画像の例として、Makita, S., et al., “Clinical prototype of pigment and flow imaging optical coherence tomography for posterior eye investigation”, Biomedical Optics Express 9, 4372 (2018)の
図13(c)に示された網膜血管造影画像がある。また、Hong, Y.J., et al, “Simultaneous Investigation of Vascular and Retinal Pigment Epithelial Pathologies of Exudative Macular Diseases by Multifunctional Optical Coherence Tomography”, IOVS August 2014, Vol.55, 5016-5031に記載された”hyperpenetration”を強調した画像を、上記の合成画像データから構築することも可能である。なお、ここに挙げた合成画像データのプロジェクション手法は単なる例示であり、これらに限定されない。
【0118】
画像化処理部221によりOCT偏光画像データが構築された場合(つまり、3次元偏光情報が取得された場合)、プロジェクション処理部222は、このOCT偏光画像データにプロジェクションを適用することで、例えば、偏光均一性(DOPU)マップ、複屈折マップ、網膜色素上皮感受型コントラスト(RPE-sensitive contrast)マップ、網膜色素上皮隆起(RPE-elevation)マップなど、任意の2次元画像や任意の2次元マップを構築することが可能である。偏光均一性マップの例として、Miura M., et al.,” Evaluation of intraretinal migration of retinal pigment epithelial cells in age-related macular degeneration using polarimetric imaging”, Sci Rep. 2017;7(1):3150.の
図1~
図4(f)に記載された画像(最小偏光均一性プロジェクション(minimum DOPU projection))がある。複屈折マップの例として、Sugiyama, S., et al., ”Birefringence imaging of posterior eye by multi-functional Jones matrix optical coherence tomography”, Biomedical Optics Express Vol. 6, Issue 12, pp. 4951-4974 (2015)の
図7(b)に示された画像(最大複屈折プロジェクション(maximum birefringence projection))がある。網膜色素上皮感受型コントラストマップの例として、Azuma, S., et al.,” Pixel-wise segmentation of severely pathologic retinal pigment epithelium and choroidal stroma using multi-contrast Jones matrix optical coherence tomography”, Biomedical Optics Express Vol. 9, Issue 7, pp. 2955-2973 (2018)の式(1)に示す値をAライン方向に加算して得られる画像がある。このマップの構築には、3次元偏光情報に加えて、OCT強度画像データ及びOCT血管造影画像データも用いられている。網膜色素上皮隆起マップの例として、同文献の
図4に示された画像がある。このマップの構築においても、3次元偏光情報に加えて、OCT強度画像データ及びOCT血管造影画像データが用いられている。
【0119】
以上の例示以外の3次元画像データが画像化処理部221によって構築される場合、プロジェクション処理部222は、その3次元画像データの種類に応じて決定されたプロジェクション処理を適用可能に構成される。
【0120】
〈ラテラルシフト量算出部223〉
ラテラルシフト量算出部223は、プロジェクション処理部222により構築された複数の正面画像データに基づいて、深さ方向(γ方向、z方向)に直交する方向におけるデータシフト量を算出するように構成されている。本実施形態では、このデータシフト量をラテラルシフト量と呼ぶ。
【0121】
深さ方向に直交する方向は、ラテラル(lateral)方向と呼ばれ、αβγ座標系においてγ方向に直交する方向はαβ面内における任意方向(αβ方向)であり、xyz座標系においてz方向に直交する方向はxy面内における任意方向(xy方向)である。
【0122】
例えば、ラテラルシフト量算出部223は、複数の正面画像データに基づいて相関係数を算出し、この相関係数に基づいてラテラルシフト量を算出するように構成されてよい。そのために、例示的なラテラルシフト量算出部223は、分割部2231と、相関係数算出部2232と、シフト量算出部2233とを含む。
【0123】
〈分割部2231〉
分割部2231は、プロジェクション処理部222により構築された各正面画像データを複数の部分画像データに分割するように構成されている。各部分画像データは、前述したストリップに相当する。
【0124】
例えば、分割部2231は、非特許文献1に記載された手法を用いて正面画像データを複数のストリップ(ストリップ群)に分割するように構成されている。例えば、分割部2231は、正面画像データを解析することによって、この正面画像データを比較的大きな動きが介在しない複数のストリップに分割するように構成される。他の例において、分割部2231は、画像化処理部221により構築された3次元画像データ(ボリューム)を比較的大きな動きが介在しない複数のサブボリュームに分割する処理と、各サブボリュームに対応する正面画像データの部分を特定することによってこれらサブボリュームに対応するストリップ群を決定する処理とを実行するように構成される。このようにして得られる各ストリップは、リサージュ座標系(例えば、αβ座標系)で定義されている。
【0125】
リサージュ座標系(前述したαβ座標系)で定義されたストリップの例を
図6に示す。符号300は、上記の3次元画像データ(ボリューム)全体の正面プロジェクション画像を示す。ボリューム全体はαβγ座標系で定義されており、これをγ方向(深さ方向)にプロジェクションして得られる正面プロジェクション画像(正面画像データ)300はαβ座標系で定義されている。ここで、α軸はサイクルを構成する複数のAラインの位置を表し、これに直交するβ軸はサイクルの識別番号(スキャン順序)を表す。典型的には、γ方向とz方向とはともに、OCTスキャンのAラインに沿った方向(測定光LSの進行方向)に一致する。
【0126】
図6に示す例は、N個のストリップ300(0)~300(N-1)を示している。ここで、Nは2以上の整数であり、典型的には数十~数百である。各ストリップ300(n)は、ボリューム全体の正面プロジェクション画像300の部分画像である。
【0127】
以上のような処理によれば、
図7に示すように、プロジェクション処理部222により構築された複数の正面画像データ300-m(m=1、2、・・・、M:Mは2以上の整数)から複数のストリップ群310-mが得られる。ストリップ群310-mは、複数のストリップ310-m(1)、310-m(2)、・・・、310-m(N
m)からなる。
【0128】
ここで、M個のストリップ群310-1~310-Mにそれぞれ含まれるストリップの個数N1~NMは一般に任意である。しかし、幾つかの例示的な態様において、ストリップ数N1~NMの少なくとも一部が等しくてよい。典型的な例として、本実施形態では、ストリップ数N1~NMの全てが等しくてよい。この場合において、M個の正面画像データ300-1~300-Mにおける所定のM個のストリップ310-1(n1)、310-2(n2)、・・・、310-M(nM)が、収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)の同一の部分データから得られたものであってよい。
【0129】
換言すると、M個の正面画像データ300-1~300-Mのうちの任意のペア(第1正面画像データ300-m1、第2正面画像データ300-m2:m1=1、2、・・・、M;m2=1、2、・・・、M;m1≠m2)が次の2つの条件を満足するように、分割部2231はM個のストリップ群310-1~310-Mを形成することができる。1つ目の条件は、第1正面画像データ300-m1から形成された第1ストリップ群310-m1に含まれるストリップの個数nm1が、第2正面画像データ300-m2から形成された第2ストリップ群310-m2に含まれるストリップの個数nm2に等しいことである(nm1=nm2)。もう1つの条件は、第1ストリップ群310-m1に含まれる任意のストリップに対応する収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)の部分データが、第2ストリップ群310-m2に含まれるいずれかのストリップに対応する収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)の部分データと同一であることである。つまり、収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)が複数の部分データに分けられており、各部分データからM個のストリップ群310-1~310-M中のストリップが1つずつ得られていることである。
【0130】
このような2つの条件が満足される場合、分割部2231は、M個の正面画像データ300-1~300-Mのうちの1つのみに対して、データ分割(ストリップ形成)のための処理(つまり、非特許文献1に記載された、比較的大きな動きが介在するか否か決定するための解析)を適用すれば十分である。例えば、非特許文献1に記載された手法と同様に、分割部2231は、OCT強度画像データ(又は、これから得られた正面画像データ)に対して当該解析を適用してストリップ群(基準ストリップ群)を形成する。更に、分割部2231は、この基準ストリップ群に基づいて、他の3次元画像データ(例えば、前述したOCT血管造影画像データ、合成画像データ、OCT偏光画像データなど)のストリップ群を形成することができる。このとき、分割部2231は、他の3次元画像データを基準ストリップ群と同じ態様で分割する。具体的には、他の3次元画像データから形成されたストリップの個数は、基準ストリップ群のストリップの個数に等しい。加えて、他の3次元画像データの各ストリップについて、そのストリップが表す被検眼Eの領域は、基準ストリップ群のいずれかのストリップが表す被検眼Eの領域に一致する。このような処理を行うことで、M個の正面画像データ300-1~300-Mに対して個別にデータ分割(ストリップ形成)を適用する場合と比較して、処理リソースを節約することができ、処理時間を短縮することができる。
【0131】
〈相関係数算出部2232及びシフト量算出部2233〉
相関係数算出部2232は、分割部2231によって複数の正面画像データ(300-1~300-M)から取得された複数のストリップ群(310-1~310-M)に基づいて相関係数を算出するように構成されている。ここで、各ストリップは、リサージュ座標系(例えば、αβ座標系)で定義されている。特に言及しない限り、相関係数算出部2232は、非特許文献1に記載された手法に従って相関演算を実行することができる。
【0132】
例えば、相関係数算出部2232は、まず、リサージュ座標系で定義されている各ストリップに座標変換を適用する。この座標変換は、リサージュ座標系(例えば、αβ座標系)から実空間座標系(例えば、xy座標系)への座標変換であり、非特許文献1に記載されたリマッピング(remapping)に相当する。
【0133】
画像化処理部221により構築された3次元画像データから、実空間座標系で定義されたストリップ群を作成するための処理は、以上に説明した処理に限定されない。例えば、3次元画像データ全体の正面プロジェクション画像を構築し、この正面プロジェクション画像(リサージュ座標系で定義されている)に座標変換を適用し、変換された正面プロジェクション画像(実空間座標系で定義されている)を分割して複数のストリップを構築することができる。
【0134】
続いて、相関係数算出部2232は、座標変換により形成された各ストリップの画素を補間することができる。この画素補間は、座標変換で値が割り当てられなかった画素に対し、その周囲の画素の値から導出された値を付与するデータ処理である。
【0135】
画素補間は、例えば公知の任意の画素補間演算を含んでいてよい。例えば、相関係数算出部2232は、まず、座標変換後のストリップの画素のうち、座標変換前のストリップの画素からの値が付与されていない画素(換言すると、座標変換の値域に含まれない画素)を特定する。これにより特定された画素が、補間の対象となる。次に、相関係数算出部2232は、補間対象画素の所定近傍領域内の画素のうち、座標変換前のストリップの画素からの値が付与された画素(換言すると、座標変換の値域に含まれる画素)を特定し、これらの画素の値から補間対象画素の値を算出する。
【0136】
ここで、所定近傍領域は任意であり、その内部の画素の値から補間対象画素の値を算出する演算も任意である。例えば、補間対象画素に隣接する画素(典型的には、補間対象画素の上、下、右、左、右上、右下、左上、左下に位置する8個の画素)のうち座標変換の値域に含まれる画素の値の平均を算出し、この平均値を補間対象画素の値とすることができる。
【0137】
このようにして、画素補間がなされた、実空間座標系(例えば、xy座標系)で定義された複数のストリップが得られる。相関係数算出部2232は、得られた複数のストリップに基づいて、非特許文献1に記載された相関演算を実行する。
【0138】
リサージュスキャンの特性として、1つの正面画像データのストリップ群に含まれる任意の2つのストリップは、オーバーラップ領域を有する。非特許文献1に記載された手法と同様に、相関係数算出部2232は、ストリップ間のオーバーラップを利用してストリップ間の相関演算を実行する。
【0139】
非特許文献1に記載された手法では、まず、ストリップ群を大きさ(面積等)に応じて順序付け、この順序に従って、一連の処理(相関演算、ラテラルシフト量算出、レジストレーション、及びマージ処理)を繰り返し実行している。この相関演算では、非特許文献1の式(18)に示された相関係数ρ(r’)が算出される(次式を参照)。
【0140】
【0141】
このように、従来の技術では、単一の正面画像データから得られたストリップ群を用いてストリップ間の相関演算が行われるが、本実施形態では、複数の正面画像データから得られた複数のストリップ群を用いてストリップ間の相関演算が行われる。前述したように、幾つかの例示的な態様において、分割部2231は、上記の2つの条件を満足するように複数のストリップ群を形成することができる。
【0142】
この場合、前述した収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)の複数の部分データの任意のペア(第1部分データ、第2部分データ)について、相関係数算出部2232は、まず、第1部分データに対応する複数のストリップを、複数の正面画像データから形成された複数のストリップ群のうちから選択する。具体的には、相関係数算出部2232は、第1部分データに対応するストリップを、複数の正面画像データから形成された複数のストリップ群から1つずつ選択する。更に、相関係数算出部2232は、選択された複数のストリップのうちの少なくとも2つのストリップを含む第1群を設定する。同様に、相関係数算出部2232は、第2部分データに対応するストリップを複数のストリップ群から1つずつ選択し、選択された複数のストリップのうちの少なくとも2つのストリップを含む第2群を設定する。そして、相関係数算出部2232は、設定された第1群及び第2群に基づいて、第1部分データと第2部分データとに対応する相関係数を算出する。
【0143】
このような相関係数は、複数の正面画像データから得られた複数のストリップ群に基づき算出されたものであり、したがって、複数の異なる種類の画像の情報を考慮したものである。相関係数は例えば次式を用いて算出される。
【0144】
【0145】
ここで、和の添字(インデックス)iは、複数の異なる種類の正面画像データにわたり、fi及びgiは、同一種類の正面画像に基づく2つのストリップ(マスク画像に合成された画像)を示す。例えば、上記の第1群及び第2群が考慮される場合、fi及びgiはそれぞれ第1群及び第2群に属する。また、r=(x、y)は実空間座標系(xy座標系)で表現される位置を示し、σfg
2はf(r)とg(r+r´)とのオーバーラップ領域における共分散であり、σf
2及びσg
2はそれぞれ当該オーバーラップ領域におけるf(r)及びg(r+r´)の分散である。ここで、fiとgiとのペアに対する演算は従来の手法に従うが、複数の異なる種類の正面画像データについてそれぞれ得られた共分散及び分散を組み合わせる点が従来の手法と異なっている。
【0146】
このようにして第1群及び第2群から得られた相関係数は、前述した第1部分データと第2部分データとの間のラテラルシフト量を反映している。シフト量算出部2233は、相関係数のピークを検出することにより、第1部分データと第2部分データとに対応するラテラルシフト量を算出することができる。
【0147】
相関係数算出部2232及びシフト量算出部2233は、例えば、前述した収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)の複数の部分データの様々なペアに対して以上の処理を適用することにより、複数の部分データの全てについて(つまり、収集データ(サンプリングデータ、3次元画像データ)の全体について)、ラテラルシフト量が得られる。
【0148】
このような処理は、非特許文献1の「rough lateral motion correction」に相当する。更に、ラテラルシフト量算出部223は、スロードリフト(slow drift)やトレモア(tremor)等の眼球運動に起因するラテラル方向の小さなモーションアーティファクトを除去するために、非特許文献1の「fine lateral motion correction」の処理を実行するように構成されてよい。「fine lateral motion correction」についても、複数の正面画像データに基づく複数のストリップ群を用いて精度の向上を図ることが可能である。
【0149】
〈アキシャルシフト量算出部224〉
アキシャルシフト量算出部224は、画像化処理部221により構築された複数の3次元画像データのいずれか1以上に基づいて、深さ方向(z方向、アキシャル方向)におけるデータシフト量(アキシャルシフト量)を算出するように構成されている。
【0150】
例えば、アキシャルシフト量算出部224は、非特許文献1の「rough axial motion correction」の処理、及び「fine axial motion correction」の処理のいずれか一方又は双方を実行するように構成される。前者は、上記の「rough lateral motion correction」と同様の処理を、画像化処理部221により構築された3次元画像データ(ボリューム)の複数のサブボリュームに対して適用するものである。後者は、各々のサイクルにはモーションアーティファクトが介在しないとの前提の下に、前者と同様の処理をサイクル間に適用するものである。なお、アキシャルシフト量を算出する処理はこれらに限定されず、例えば、z方向を1つの次元とする任意の画像データを利用することができる。
【0151】
ラテラルシフト量の算出と同様に、アキシャルシフト量の算出においても、複数の3次元画像データを用いて精度の向上を図ることが可能である。例えば、画像化処理部221により構築された複数の異なる種類の3次元画像データ(例えば、OCT強度画像データ、OCT血管造影画像データ、合成画像データ、及びOCT偏光画像データのうちのいずれか2つ以上)を用いて、「rough axial motion correction」の処理、及び「fine axial motion correction」の処理のいずれか一方又は双方を実行することが可能である。
【0152】
〈補正部225〉
本実施形態では、ラテラルシフト量算出部223により算出されたラテラルシフト量と、アキシャルシフト量算出部224により算出されたアキシャルシフト量とが、補正部225に入力される。補正部225は、これらシフト量にに基づいて、リサージュスキャンで収集されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する。
【0153】
ここで、モーションアーティファクト補正が適用される画像データは、リサージュスキャンで収集されたデータに基づく任意の画像データであってよく、例えば、画像化処理部221により構築された上記複数の3次元画像データのいずれか、又は、プロジェクション処理部222により構築された上記複数の正面画像データのいずれかであってよい。また、モーションアーティファクト補正が適用される画像データは、上記複数の3次元画像データとは別途に画像化処理部221により構築された3次元画像データ、又は、上記複数の正面画像データとは別途にプロジェクション処理部222により構築された正面画像データであってもよい。また、モーションアーティファクト補正が適用される画像データは、画像化処理部221により構築された任意の3次元画像データを処理して得られた画像データ、又は、プロジェクション処理部222により構築された任意の正面画像データを処理して得られた画像データであってもよい。
【0154】
ここまでの処理で利用された画像データにモーションアーティファクト補正を適用する場合、補正部225は、例えば、分割部2231により実行されたデータ分割(ストリップ形成)に応じた当該画像データの複数の部分画像データに対して、ラテラルシフト量及びアキシャルシフト量に基づくレジストレーションを適用することができる。それにより、複数の部分画像データの相対位置が調整され、当該画像データのモーションアーティファクトが低減又は除去される。
【0155】
ここまでの処理で利用されていない画像データにモーションアーティファクト補正を適用する場合、補正部225は、例えば、分割部2231により実行されたデータ分割(ストリップ形成)に従って当該画像データを複数の部分画像データに分割し、これらの部分画像データに対してラテラルシフト量及びアキシャルシフト量に基づくレジストレーションを適用することができる。
【0156】
画像構築部220は、プロセッサを含むハードウェアと、画像構築ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0157】
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、プロセッサを含み、被検眼Eの画像に対して各種のデータ処理を適用する。例えば、データ処理部230は、プロセッサを含むハードウェアと、データ処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0158】
データ処理部230は、被検眼Eについて取得された2つの画像の間のレジストレーションを行うように構成されてよい。例えば、データ処理部230は、OCTで取得された3次元画像データ(例えば、リサージュスキャンで得られた3次元画像データ)と、眼底カメラユニット2により取得された正面画像との間のレジストレーションを行うように構成されてよい。また、データ処理部230は、OCTで取得された2つのOCT画像の間のレジストレーションを行うように構成されてよい。また、OCT画像の解析結果や、正面画像の解析結果に対してレジストレーションを適用するように構成されてもよい。これらのレジストレーションは、公知の手法によって実行可能であり、例えば特徴点抽出とアフィン変換とを含む。
【0159】
〈ユーザーインターフェイス240〉
ユーザーインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置1に接続された外部装置であってよい。
【0160】
〈動作〉
眼科装置1の動作について説明する。眼科装置1の動作の例を
図8に示す。なお、患者IDの入力、走査モードの設定(リサージュスキャンの指定)、固視標の提示、アライメント、フォーカス調整、OCT光路長調整など、従来と同様の準備的な処理は、既になされたものとする。
【0161】
(S1:リサージュスキャンでOCT干渉信号を収集する)
所定の走査開始トリガー信号を受けて、走査制御部2111は、被検眼E(眼底Ef)に対するOCTスキャン(リサージュスキャン)の適用を開始する。
【0162】
走査開始トリガー信号は、例えば、所定の準備動作(アライメント、フォーカス調整、OCT光路長調整など)が完了したことに対応して、又は、操作部242を用いて走査開始指示操作が行われたことに対応して生成される。
【0163】
走査制御部2111は、走査プロトコル2121(リサージュスキャンに対応したプロトコル)に基づいて光スキャナ44及びOCTユニット100などを制御することによってリサージュスキャンを被検眼Eに適用する。このリサージュスキャンにより、3次元データとしてのOCT干渉信号が収集される。収集された3次元データは画像構築部220に送られる。
【0164】
(S2:複数種類の3次元画像データを構築する)
画像構築部220の画像化処理部221は、ステップS1で収集された3次元データに複数の異なる画像化処理を適用する。それにより、複数種類の3次元画像データが得られる。異なる種類の画像化処理により、異なる情報を含む3次元画像データが得られる。
【0165】
本実施形態の典型的な例において、画像化処理部221は、OCT強度画像データ及びOCT血管造影画像データを構築するように構成されてよい。しかし、前述したように、画像化処理部221は、OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとの合成画像データを構築することができる。また、眼科装置1が偏光OCT機能を有する場合、画像化処理部221は、OCT偏光画像データを構築することができる。
【0166】
構築された複数種類の3次元画像データは、プロジェクション処理部222に送られる。また、構築された複数種類の3次元画像データのいずれかが、アキシャルシフト量算出部224に送られる。
【0167】
(S3:複数種類の正面画像データを構築する)
プロジェクション処理部222は、ステップS2で構築された複数種類の3次元画像データに対して深さ方向(アキシャル方向)のプロジェクションを適用することにより、複数種類の正面画像データを構築する。異なる種類の正面画像データは、異なる情報を含んでいる。
【0168】
本実施形態の典型的な例において、プロジェクション処理部222は、OCT強度画像データから1種類以上の正面強度画像データを構築し、且つ、OCT血管造影画像データから1種類以上の正面血管造影画像データを構築するように構成されてよい。なお、OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとの合成画像データが構築された場合には、この合成画像データから1種類以上の正面合成画像データを構築することができる。また、OCT偏光画像データが構築された場合には、このOCT偏光画像データから1種類以上の正面偏光画像データを構築することができる。構築された複数種類の正面画像データは、ラテラルシフト量算出部223に送られる。
【0169】
(S4:ラテラルシフト量を算出する)
ラテラルシフト量算出部223は、ステップS3で構築された複数種類の正面画像データに基づいて、アキシャル方向に直交するラテラル方向におけるデータシフト量(ラテラルシフト量)を算出する。
【0170】
本実施形態の典型的な例において、ラテラルシフト量算出部223は、1種類以上の正面強度画像データ及び1種類以上の正面血管造影画像データに基づいてラテラルシフト量を算出するように構成されてよい。なお、1種類以上の正面合成画像データが構築された場合には、この1種類以上の正面合成画像データを含む複数種類の正面画像データに基づいてラテラルシフト量を算出することができる。また、1種類以上の正面偏光画像データが構築された場合には、この1種類以上の正面偏光画像データを含む複数種類の正面画像データに基づいてラテラルシフト量を算出することができる。
【0171】
本実施形態では、ラテラルシフト量算出部223は、分割部2231によって複数の正面画像データのそれぞれを部分画像データ群(ストリップ群)に分割して複数のストリップ群を形成し、相関係数算出部2232により複数のストリップ群から相関係数を算出し、シフト量算出部2233により相関係数からラテラルシフト量を算出する。ここで、例えば、各相関係数は、2つのストリップの間の偏位量を反映している。算出されたラテラルシフト量の情報は、補正部225に送られる。
【0172】
(S5:アキシャルシフト量を算出する)
アキシャルシフト量算出部224は、ステップS2で構築された複数の3次元画像データのいずれか1以上に基づいて、アキシャル方向におけるデータシフト量(アキシャルシフト量)を算出する。ここで、アキシャルシフト量を算出する処理の精度向上のために、2種類以上の3次元画像データを用いてもよい。
【0173】
本実施形態の典型的な例において、アキシャルシフト量算出部224は、OCT強度画像データ及びOCT血管造影画像データのいずれか一方又は双方に基づいてアキシャルシフト量を算出するように構成されてよい。なお、合成画像データが構築された場合には、この合成画像データを含む1以上の3次元画像データに基づいてアキシャルシフト量を算出することができる。また、OCT偏光画像データが構築された場合には、このOCT偏光画像データを含む1以上の3次元画像データに基づいてアキシャルシフト量を算出することができる。算出されたアキシャルシフト量の情報は、補正部225に送られる。
【0174】
(S6:モーションアーティファクト補正を行う)
ステップS1で収集された3次元データに基づき構築された画像データについて、補正部225は、ステップS4で算出されたラテラルシフト量に基づいてラテラル方向のモーションアーティファクト補正を行い、且つ、ステップS5で算出されたアキシャルシフト量に基づいてアキシャル方向のモーションアーティファクト補正を行う。
【0175】
これらのモーションアーティファクト補正が適用される画像データは、例えば、ステップS2で構築された複数種類の3次元画像データのいずれか、及び/又は、ステップS3で構築された複数種類の正面画像データのいずれかであってよい。
【0176】
(S7:補正された画像データを表示・保存する)
主制御部211は、ステップS6で補正された画像データに基づく画像を表示部241(及び/又は、他の表示装置)に表示させることができる。また、ステップS6で補正された画像データのレンダリング画像が画像構築部220又はデータ処理部230により作成された場合、主制御部211は、このレンダリング画像を表示部241(及び/又は、他の表示装置)に表示させることができる。
【0177】
また、主制御部211は、ステップS6で補正された画像データを記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に格納することができる(エンド)。
【0178】
〈作用、効果等〉
例示的な実施形態の幾つかの特徴について説明し、それらにより奏される幾つかの作用及び幾つかの効果について説明する。
【0179】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1は、走査型イメージング装置の幾つかの態様を提供する。それに加えて、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1は、走査型イメージング装置を制御する方法の幾つかの態様、画像処理装置の幾つかの態様、画像処理装置を制御する方法の幾つかの態様、画像処理方法の幾つかの態様、及び、走査型イメージング方法の幾つかの態様を提供する。
【0180】
さて、例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置(眼科装置1)は、走査部と、画像化処理部(221)と、プロジェクション処理部(222)と、第1データシフト量算出部(ラテラルシフト量算出部223)と、補正部(225)とを含む。
【0181】
走査部は、サンプル(被検眼E、眼底Ef)に走査を適用してデータを収集するように構成されている。この走査は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従って実行される。
【0182】
幾つかの例示的な態様において、サンプルに適用される走査の2次元パターンに含まれる一連のサイクルは互いに交差していてよい。
【0183】
幾つかの例示的な態様において、サンプルに適用される走査は、リサージュ関数に基づき予め設定された走査プロトコルに基づき実行されてよい。このような走査の一例が、上記の例示的な実施形態におけるリサージュスキャンである。
【0184】
幾つかの例示的な態様において、走査部は、互いに異なる第1方向(x方向)及び第2方向(y方向)に光を偏向可能な偏向器(光スキャナ44)を含み、第1方向に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ第2方向に沿った偏向方向の変化を第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって、2次元パターンに従う走査をサンプルに適用するように構成されていてよい。ここで、偏向器は、リサージュ関数に基づき予め設定された走査プロトコルに基づき制御される。
【0185】
上記の例示的な実施形態において、走査部は、OCTユニット100と、測定アームを構成する眼底カメラユニット2内の要素(リトロリフレクタ41、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44、対物レンズ22等)とを含み、被検眼EにOCTスキャンを適用してOCTデータを収集する。
【0186】
画像化処理部(221)は、走査部により収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用することによって複数の3次元画像データを構築するように構成されている。
【0187】
幾つかの例示的な態様において、走査部がOCTスキャンをサンプルに適用する場合、画像化処理部(221)により構築される複数の3次元画像データは、OCT強度画像データ、OCT血管造影画像データ、OCT強度画像データとOCT血管造影画像データとに基づく合成画像データ、及び、OCT偏光画像データのいずれかを含んでいてよい。
【0188】
プロジェクション処理部(222)は、画像化処理部(221)により構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用することによって複数の正面画像データを構築するように構成されている。
【0189】
第1データシフト量算出部(ラテラルシフト量算出部223)は、プロジェクション処理部(222)により構築された複数の正面画像データに基づいて、深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量(ラテラルシフト量)を算出するように構成されている。
【0190】
補正部(225)は、第1データシフト量算出部(ラテラルシフト量算出部223)により算出されたデータシフト量に基づいて、走査部により収集されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行するように構成されている。
【0191】
このような例示的な実施形態に係る走査型イメージング装置によれば、複数種類の画像化処理で得られた複数の画像データを用いてモーションアーティファクト補正を行うように構成されているので、単一種類の画像化処理で得られた画像データを用いる従来の手法よりも高い精度でモーションアーティファクト補正を行うことが可能である。
【0192】
本発明者は、従来のモーションアーティファクト補正手法が或る一種類の情報(例えば強度情報)のみを参照していることに着目し、複数種類の情報(例えば、強度情報、血流情報、偏光情報など)を総合的に参照することで補正精度を向上させられることを見いだした。この技術思想を実装するために上記の例示的な実施形態や幾つかの例示的な態様に想到した。
【0193】
幾つかの例示的な態様において、第1データシフト量算出部(ラテラルシフト量算出部223)は、プロジェクション処理部(222)により構築された複数の正面画像データに基づいて相関係数を算出し、この相関係数に基づいてデータシフト量(ラテラルシフト量)を算出するように構成されていてよい。このような構成によって、非特許文献1等に開示された手法を、複数種類の画像データを用いる手法に拡張することができる。
【0194】
更に、幾つかの例示的な態様において、第1データシフト量算出部(ラテラルシフト量算出部223)は、分割部(2231)と、相関係数算出部(2232)とを含んでいてよい。分割部(2231)は、プロジェクション処理部(222)により構築された複数の正面画像データのそれぞれを部分画像データ群(ストリップ群)に分割するように構成されている。相関係数算出部(2232)は、分割部(2231)によって複数の正面画像データから取得された複数の部分画像データ群(複数のストリップ群)に基づいて相関係数を算出するように構成されている。なお、上記の例示的な実施形態では、ソフト量算出部2233が、相関係数算出部2232により算出された相関係数に基づいてデータシフト量(ラテラルシフト量)を算出している。このような構成によって、非特許文献1等に開示された手法を、複数種類の画像データを用いる手法に拡張することができる。
【0195】
更に、幾つかの例示的な態様は、次のように構成されていてよい。プロジェクション処理部(222)により構築された複数の正面画像データのうちの任意の2つ(第1正面画像データ、第2正面画像データ)を考慮する。
【0196】
まず、第1正面画像データの第1部分画像データ群(第1ストリップ群)に含まれる部分画像データ(ストリップ)の個数は、第2正面画像データの第2部分画像データ群(第2ストリップ群)に含まれる部分画像データ(ストリップ)の個数に等しい。つまり、複数の正面画像データから、等しい個数のストリップを含む複数のストリップ群が形成される。
【0197】
更に、第1部分画像データ群(第1ストリップ群)に含まれる任意の部分画像データ(ストリップ)について、その部分画像データ(ストリップ)に対応する、走査部により収集されたデータの部分データ(第1部分データ)は、第2部分画像データ群(第2ストリップ群)に含まれるいずれかの部分画像データ(ストリップ)に対応する当該データの部分データ(第2部分データ)と同じである。つまり、走査部により収集されたデータを複数の部分データに分割したと仮定すると、各部分データに対応する部分画像データ(その部分データが収集された領域を表現したストリップ)が、複数の正面画像データのそれぞれから1つずつ得られる。
【0198】
このような例示的な態様によれば、複数の正面画像データからの複数の部分画像データ群の間に、サンプルのデータ収集領域を基準として、一対一の対応関係を設定することができる。よって、サンプルの第1領域に対応する部分画像データを複数の部分画像データから1つずつ選択することによって、第1領域に対応する複数の部分画像データを設定することができる。同様に、サンプルの第2領域に対応する部分画像データを複数の部分画像データから1つずつ選択することによって、第2領域に対応する複数の部分画像データを設定することができる。そして、第1領域から収集されたデータ(第1部分データ)と第2領域から収集されたデータ(第2部分データ)との間のモーションアーティファクトが、第1領域に対応する複数の部分画像データと、第2領域に対応する複数の部分画像データとに基づいて補正される。
【0199】
これに対し、例えば非特許文献1に記載された従来の手法では、第1領域から収集されたデータ(第1部分データ)と第2領域から収集されたデータ(第2部分データ)との間のモーションアーティファクトは、第1領域に対応する単一の部分画像データと、第2領域に対応する単一の部分画像データとに基づいて補正される。本態様の手法によれば、このような従来の手法よりも高い精度で相関演算を行うことができ、したがって、モーションアーティファクト補正の精度向上を図ることが可能である。
【0200】
幾つかの例示的な態様において、相関係数算出部(2232)は、走査部により収集されたデータの第1部分データに対応する複数の正面画像データの複数の部分画像データの少なくとも2つを含む第1群と、第2部分データに対応する複数の正面画像データの複数の部分画像データの少なくとも2つを含む第2群とに基づいて、第1部分データと第2部分データとに対応する相関係数を算出するように構成されてよい。
【0201】
すなわち、第1群は、サンプルの第1領域から収集された第1部分データに対応する2以上の部分画像データ(ストリップ)からなる。また、第2群は、サンプルの第2領域から収集された第2部分データに対応する2以上の部分画像データ(ストリップ)からなる。相関係数算出部(2232)は、このような第1群及び第2群に基づいて、第1部分データと第2部分データとの間の相関係数を算出することができる。
【0202】
更に、第1データシフト量算出部(シフト量算出部2233)は、このようにして算出された相関係数に基づいて、第1部分データと第2部分データとに対応するデータシフト量(ラテラルシフト量)を算出するように構成されてよい。このような例示的な態様によれば、従来の手法よりも高い精度で相関係数を算出することができ、したがって、モーションアーティファクト補正の精度向上を図ることが可能である。
【0203】
幾つかの例示的な態様に係る走査型イメージング装置(眼科装置1)は、第2データシフト量算出部(アキシャルシフト量算出部224)を更に含んでいてよい。第2データシフト量算出部(アキシャルシフト量算出部224)は、画像化処理部(221)により構築された複数の3次元画像データのいずれか1以上に基づいて、深さ方向(アキシャル方向)におけるデータシフト量(アキシャルシフト量)を算出するように構成されている。
【0204】
更に、補正部(225)は、第2データシフト量算出部(アキシャルシフト量算出部224)により算出されたデータシフト量(アキシャルシフト量)に基づくモーションアーティファクト補正を、走査部により収集されたデータに基づく画像データに適用するように構成することができる。
【0205】
このような例示的な態様によれば、ラテラル方向のモーションアーティファクトに加えて、アキシャル方向のモーションアーティファクトも補正することが可能である。
【0206】
また、画像化処理部(221)により構築された複数の3次元画像データのうちの2つ以上の3次元画像データに基づいてアキシャルシフト量の算出を行い、且つ、このアキシャルシフト量に基づいてアキシャル方向のモーションアーティファクト補正を行うことによって、アキシャル方向のモーションアーティファクトを従来よりも高い精度で補正することが可能になる。
【0207】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1により提供可能な走査型イメージング装置の制御方法の例示的な態様を説明する。幾つかの例示的な態様において、走査型イメージング装置は、サンプルに走査を適用してデータを収集する走査部と、プロセッサとを含んでおり、これを制御する方法は、以下に説明する工程を含んでいてよい。
【0208】
まず、走査型イメージング装置の制御方法は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集するように、走査部を制御する。更に、この制御方法は、プロセッサを、走査部により収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築し、構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用して複数の正面画像データを構築し、構築された複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、算出されたデータシフト量に基づいて、走査部により収集されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行するように制御する。
【0209】
このような走査型イメージング装置の制御方法によれば、例示的な態様に係る走査型イメージング装置(例えば、眼科装置1)と同様に、モーションアーティファクト補正の精度の向上を図ることが可能である。なお、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を、例示的な態様に係る走査型イメージング装置の制御方法に組み合わせることが可能である。
【0210】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1により提供可能な画像処理装置の例示的な態様を説明する。幾つかの例示的な態様において、画像処理装置は、記憶部と、画像化処理部と、プロジェクション処理部と、第1データシフト量算出部と、補正部とを含む。
【0211】
記憶部は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用して収集されたデータを記憶するように構成されている。上記の例示的な実施形態において、この記憶部は記憶部212に相当する。
【0212】
画像化処理部は、記憶部に記憶されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築するように構成されている。上記の例示的な実施形態において、この画像化処理部は、画像化処理部221に相当する。
【0213】
プロジェクション処理部は、画像化処理部により構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用して複数の正面画像データを構築するように構成されている。上記の例示的な実施形態において、このプロジェクション処理部は、プロジェクション処理部222に相当する。
【0214】
第1データシフト量算出部は、プロジェクション処理部により構築された複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出するように構成されている。
【0215】
補正部は、第1データシフト量算出部により算出されたデータシフト量に基づいて、走査により収集されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行するように構成されている。
【0216】
このような画像処理装置によれば、例示的な態様に係る走査型イメージング装置(例えば、眼科装置1)と同様に、モーションアーティファクト補正の精度の向上を図ることが可能である。なお、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を、例示的な態様に係る画像処理装置に組み合わせることが可能である。
【0217】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1により提供可能な画像処理装置の制御方法の例示的な態様を説明する。幾つかの例示的な態様において、画像処理装置は、記憶部とプロセッサとを含んでおり、これを制御する方法は、以下に説明する工程を含んでいてよい。
【0218】
まず、画像処理装置の制御方法は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用して収集されたデータを記憶部に記憶させる。更に、この制御方法は、プロセッサを、記憶部に記憶されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築し、構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用して複数の正面画像データを構築し、構築された複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、算出されたデータシフト量に基づいて、走査部により収集されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行するように制御する。
【0219】
このような画像処理装置の制御方法によれば、例示的な態様に係る走査型イメージング装置(例えば、眼科装置1)と同様に、モーションアーティファクト補正の精度の向上を図ることが可能である。なお、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を、例示的な態様に係る画像処理装置の制御方法に組み合わせることが可能である。
【0220】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1により提供可能な走査型イメージング方法の例示的な態様を説明する。幾つかの例示的な態様において、走査型イメージング方法は、以下に説明する工程を含んでいてよい。
【0221】
まず、走査型イメージング方法は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集し、収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築する。更に、走査型イメージング方法は、構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用して複数の正面画像データを構築し、構築された複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する。加えて、走査型イメージング方法は、算出されたデータシフト量に基づいて、上記走査により収集されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する。
【0222】
このような走査型イメージング方法によれば、例示的な態様に係る走査型イメージング装置(例えば、眼科装置1)と同様に、モーションアーティファクト補正の精度の向上を図ることが可能である。なお、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を、例示的な態様に係る走査型イメージング方法に組み合わせることが可能である。
【0223】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1により提供可能な画像処理方法の例示的な態様を説明する。幾つかの例示的な態様において、画像処理方法は、以下に説明する工程を含んでいてよい。
【0224】
まず、画像処理方法は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用して収集されたデータを準備する。例えば、通信回線や記録媒体を介してサンプルのデータが受け付けられる。或いは、サンプルに走査を適用してデータが収集される。
【0225】
更に、画像処理方法は、準備されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数の3次元画像データを構築し、構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用して複数の正面画像データを構築する。更に、画像処理方法は、構築された複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出し、算出されたデータシフト量に基づいて、準備されたデータに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する。
【0226】
このような画像処理方法によれば、例示的な態様に係る走査型イメージング装置(例えば、眼科装置1)と同様に、モーションアーティファクト補正の精度の向上を図ることが可能である。なお、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を、例示的な態様に係る画像処理方法に組み合わせることが可能である。
【0227】
幾つかの例示的な態様において、走査型イメージング装置を制御する方法のいずれかの態様をコンピュータに実行させるプログラム、画像処理装置を制御する方法のいずれかの態様をコンピュータに実行させるプログラム、画像処理方法のいずれかの態様をコンピュータに実行させるプログラム、又は、走査型イメージング方法のいずれかの態様をコンピュータに実行させるプログラムを提供することが可能である。
【0228】
また、このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0229】
上記の例示的な実施形態では、リサージュスキャンが用いられる場合について詳しく説明したが、前述したように、他のスキャンモードを採用することも可能である。例えば、幾つかの例示的な態様において、走査部は、互いに平行な一連のラインスキャンを含むラスターパターンに従うスキャン(ラスタースキャン)をサンプルに適用してデータを収集することが可能である。
【0230】
この場合、画像化処理部は、ラスタースキャンで収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用することで複数の3次元画像データを構築することができる。プロジェクション処理部は、構築された複数の3次元画像データのそれぞれに深さ方向のプロジェクションを適用することで複数の正面画像データを構築することができる。第1データシフト量算出部は、構築された複数の正面画像データに基づいて、深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出することができる。補正部は、算出されたデータシフト量に基づいて、ラスタースキャンで収集された上記データに基づく(任意の)画像データのモーションアーティファクト補正を実行することができる。
【0231】
このような例示的な態様によれば、ラスタースキャンで収集されたデータに複数種類の画像化処理を適用して得られた複数の画像データを用いてモーションアーティファクト補正を行うように構成されているので、単一種類の画像化処理で得られた画像データを用いる従来の手法よりも高い精度でモーションアーティファクト補正を行うことが可能である。
【0232】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を、このような例示的な態様に係る走査型イメージング装置に組み合わせることが可能である。また、ここに説明した例示的な態様に係る走査型イメージング装置は、走査型イメージング装置の幾つかの態様だけでなく、走査型イメージング装置を制御する方法の幾つかの態様、画像処理装置の幾つかの態様、画像処理装置を制御する方法の幾つかの態様、画像処理方法の幾つかの態様、及び、走査型イメージング方法の幾つかの態様を提供するものである。更に、これらの例示的な態様のいずれかに係る方法をコンピュータに実行させるプログラムを構成することが可能であり、このプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することも可能である。
【0233】
上記の例示的な実施形態及び態様では、リサージュスキャン(又は、他モードのスキャン)で収集されたデータに複数の異なる画像化処理を適用して複数種類の3次元画像データを構築し、これら3次元画像データから構築された複数の正面画像データからデータシフト量を求めてモーションアーティファクト補正を行っているが、これとは異なる態様を実施することも可能である。
【0234】
例えば、幾つかの例示的な態様は、リサージュスキャン(又は、他モードのスキャン)で収集されたデータから(1種類の)3次元画像データを構築し、この3次元画像データに複数の異なる処理(プロジェクション)を適用して複数種類の正面画像データを構築し、これら正面画像データからデータシフト量を求めてモーションアーティファクト補正を行うように構成されていてよい。このような態様の幾つかの具体例を以下に説明する。なお、以下の具体例は単なる例示であって限定を意図したものではない。
【0235】
幾つかの例示的な態様は、収集データに基づく3次元画像データとしてOCT強度画像データを構築し、このOCT強度画像データに基づく正面画像データとして、以下の正面画像データのうちのいずれか2以上を構築するように構成されていてよい:対数スケール線形プロジェクションによる正面画像データ;対数スケールプロジェクションによる正面画像データ;最大値プロジェクションによる正面画像データ;他のプロジェクション手法による正面画像データ。OCT強度画像データから構築された2以上の正面画像データは、データシフト量の算出に利用される。算出されたデータシフト量は、収集データに基づく任意の画像データのモーションアーティファクト補正に利用される。
【0236】
幾つかの例示的な態様は、収集データに基づく3次元画像データとしてOCT血管造影画像データを構築し、このOCT血管造影画像データに基づく正面画像データとして、以下の正面画像データのうちのいずれか2以上を構築するように構成されていてよい:OCT血管造影画像データ全体のプロジェクションで得られる画像データ(全深度正面OCT血管造影画像);OCT血管造影画像データの一部のプロジェクション(スラブのプロジェクション)で得られる画像データ;他のプロジェクション手法による正面画像データ。OCT血管造影画像データから構築された2以上の正面画像データは、データシフト量の算出に利用される。算出されたデータシフト量は、収集データに基づく任意の画像データのモーションアーティファクト補正に利用される。
【0237】
幾つかの例示的な態様は、収集データに基づく3次元画像データとしてOCT偏光画像データを構築し、このOCT偏光画像データに基づく正面画像データとして、以下の正面画像データのうちのいずれか2以上を構築するように構成されていてよい:偏光均一性(DOPU)マップ;複屈折マップ;網膜色素上皮感受型コントラストマップ;網膜色素上皮隆起マップ;他のプロジェクション手法による正面画像データ。OCT偏光画像データから構築された2以上の正面画像データは、データシフト量の算出に利用される。算出されたデータシフト量は、収集データに基づく任意の画像データのモーションアーティファクト補正に利用される。
【0238】
これらの具体例によれば、以下に示す態様の走査型イメージング装置が得られ、これに対応した各種の態様(走査型イメージング装置の制御方法、画像処理装置、画像処理装置の制御方法、走査型イメージング方法、画像処理方法、プログラム、及び記録媒体)が得られる。
【0239】
すなわち、幾つかの例示的な態様に係る走査型イメージング装置は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集する走査部と、当該データに画像化処理を適用して3次元画像データを構築する画像化処理部と、当該3次元画像データに複数の異なる処理(プロジェクション)を適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、当該複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、当該データシフト量に基づいて、当該走査部により収集された当該データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部とを含む。
【0240】
このような走査型イメージング装置に対し、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を組み合わせることが可能である。例えば、次のような走査型イメージング装置が得られる。
【0241】
すなわち、幾つかの例示的な態様に係る走査型イメージング装置は、一連のサイクルを含む2次元パターンに従う走査をサンプルに適用してデータを収集する走査部と、当該データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築する画像化処理部と、当該1以上の3次元画像データのそれぞれに1以上の処理(プロジェクション)を適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、当該複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、当該データシフト量に基づいて、当該走査部により収集された当該データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部とを含む。このような走査型イメージング装置に対し、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を組み合わせることが可能である。
【0242】
また、前述したように、例示的な態様に適用可能なスキャンモードは、サンプルの3次元領域からのデータ収集が可能である限りにおいて任意であることを更に考慮し、次のような走査型イメージング装置を構成することが可能である。
【0243】
すなわち、幾つかの例示的な態様に係る走査型イメージング装置は、サンプルの3次元領域からデータを収集する走査部と、当該データに1以上の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築する画像化処理部と、当該1以上の3次元画像データのそれぞれに1以上の処理(プロジェクション)を適用して複数の正面画像データを構築するプロジェクション処理部と、当該複数の正面画像データに基づいて深さ方向に直交する方向におけるデータシフト量を算出する第1データシフト量算出部と、当該データシフト量に基づいて、当該走査部により収集された当該データに基づく画像データのモーションアーティファクト補正を実行する補正部とを含む。このような走査型イメージング装置に対し、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1に関して説明された任意の事項を組み合わせることが可能である。
【0244】
上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1の動作について、他の幾つかの例を説明する(
図9~
図11を参照)。なお、患者IDの入力、走査モードの設定(リサージュスキャンの指定)、固視標の提示、アライメント、フォーカス調整、OCT光路長調整など、従来と同様の準備的な処理は、既になされたものとする。
【0245】
まず、
図9に示す動作例を説明する。本動作例は、
図8に示す動作例のステップS2に変形を施したものである。
【0246】
(S11:リサージュスキャンでOCT干渉信号を収集する)
図8の動作例のステップS1と同じ要領で、被検眼E(眼底Ef)にリサージュスキャンが適用され、3次元データとしてのOCT干渉信号が収集される。収集された3次元データは画像構築部220に送られる。
【0247】
(S12:単一の3次元画像データを構築する)
画像構築部220の画像化処理部221は、ステップS11で収集された3次元データに1つの画像化処理を適用して、単一の3次元画像データを構築する。構築された単一の3次元画像データは、プロジェクション処理部222に送られる。
【0248】
なお、本ステップに対応する
図8のステップS2では、複数の異なる画像化処理が3次元データに適用されて複数種類の3次元画像データが構築される。
【0249】
(S13:複数種類の正面画像データを構築する)
プロジェクション処理部222は、ステップS12で構築された単一の3次元画像データに対して深さ方向(アキシャル方向)のプロジェクションを適用することにより、複数種類の正面画像データを構築する。ここで、プロジェクション処理部222は、複数の異なるプロジェクションを単一の3次元画像データに適用する。これにより、互いに異なる情報を含む、複数の異なる種類の正面画像データが構築される。構築された複数種類の正面画像データは、ラテラルシフト量算出部223に送られる。また、複数種類の3次元画像データのいずれかが、アキシャルシフト量算出部224に送られる。
【0250】
幾つかの例において、ステップS12でOCT強度画像データが構築された場合、ステップS13では、このOCT強度画像データに対して、例えば、対数スケール線形プロジェクション、対数スケールプロジェクション、及び最大値プロジェクションのうちのいずれか2つ又は全てが適用される。
【0251】
また、幾つかの例において、ステップS12でOCT血管造影画像データが構築された場合、ステップS13では、例えば、このOCT血管造影画像データ全体のプロジェクション、及び/又は、このOCT血管造影画像データの一部のみのプロジェクションが実行される。後者は、例えば、セグメンテーションによってこのOCT血管造影画像データから抽出された1以上のスラブのプロジェクションであってよい。
【0252】
また、幾つかの例において、ステップS12でOCT偏光画像データが構築された場合、ステップS13では、このOCT偏光画像データから、例えば、偏光均一性マップ、複屈折マップ、網膜色素上皮感受型コントラストマップ、及び網膜色素上皮隆起マップのうちのいずれか2つ、いずれか3つ、又は全てが構築される。
【0253】
なお、本ステップに対応する
図8のステップS3では、1以上の種類の画像化処理を適用可能である。例えば、
図8のステップS3は、ステップS2で構築された複数種類の3次元画像データのそれぞれに対して同じ種類のプロジェクションを適用することで複数の異なる種類の正面画像データを構築するように構成されてよい。他の例において、
図8のステップS3は、ステップS2で構築された複数種類の3次元画像データを複数の群に分類し、各群に対して同じ種類のプロジェクションを適用するように構成されてよい。更に他の例において、
図8のステップS3は、ステップS2で構築された複数種類の3次元画像データのそれぞれに対して複数の異なる種類のプロジェクションを適用するように構成されてよい。更に他の例において、
図8のステップS3は、ステップS2で構築された複数種類の3次元画像データを複数の群に分類し、各群に対して1以上の種類のプロジェクションを適用するように構成されてよい。
【0254】
(S14~S17)
ステップS14、S15、S16及びS17は、それぞれ、
図8のステップS4、S5、S6及びS7と同じ要領で実行される(エンド)。
【0255】
次に、
図10に示す動作例を説明する。本動作例は、
図8に示す動作例のステップS1に変形(一般化)を施したものである。すなわち、
図8のステップS1はリサージュスキャンを採用しているが、本動作例のステップS21はリサージュスキャンに限定されず、任意の3次元スキャンを採用することが可能である。
【0256】
(S21:サンプルの3次元領域にスキャンを適用してOCT干渉信号を収集する)
走査制御部2111は、サンプル(被検眼E、眼底Ef)の3次元領域にスキャンを適用して、3次元データとしてのOCT干渉信号を収集する。収集された3次元データは画像構築部220に送られる。
【0257】
本ステップに採用可能なスキャンパターンは任意であり、例えば、ラスタースキャン、リサージュスキャン、ラジアルスキャン、マルチクロススキャンなど、任意の3次元スキャンモードを用いることが可能である。
【0258】
サンプルの3次元領域は、例えば、固視位置及びスキャンパターン等によって画定される。例えば、黄斑撮影用の固視位置が適用される場合、黄斑中心(中心窩)を囲む3次元領域が画定される。視神経乳頭撮影用の固視位置が適用される場合、視神経乳頭を囲む3次元領域が画定される。スキャンパターンとしてラスターパターンが適用される場合、このラスタースキャンを構成するBスキャン群の境界(外縁)が3次元領域を画定する。スキャンパターンとしてリサージュパターンが採用される場合、このリサージュパターンに外接する矩形(典型的には正方形)が3次元領域を画定する。スキャンパターンとしてラジアルパターンが採用される場合、このラジアルパターンに外接する図形(典型的には、円又は多角形)が3次元領域を画定する。マルチクロスパターン等、他のスキャンパターンが採用される場合においても同様である。このようにして画定される範囲は、ラテラル方向(xy方向)の範囲である。
【0259】
アキシャル方向(z方向)の範囲については、例えば、Aスキャンの画像化範囲(画像化されるz方向の範囲)により画定される。Aスキャンの画像化範囲は、例えば、測定アーム長及び参照アーム長(例えば、上記の例示的な実施形態の眼科装置1では、測定アームのリトロリフレクタ41の位置、及び/又は、参照アームのリトロリフレクタ114の位置)に応じて決定される。ここで、測定アームのフォーカス位置(例えば、上記の例示的な実施形態の眼科装置1では、OCT合焦レンズ43の位置)を加味してAスキャンの画像化範囲を決定してもよい。
【0260】
以上に例示した方法で、ラテラル方向(xy方向)及びアキシャル方向(z方向)の範囲を決定し、その結果として、サンプルの3次元領域を画定することができる。なお、サンプルの3次元領域の画定方法はこれに限定されず、他の任意の方法を採用することも可能である。
【0261】
(S22~S27)
ステップS22、S23、S24、S25、S26及びS27は、それぞれ、
図8のステップS2、S3、S4、S5、S6及びS7と同じ要領で実行される(エンド)。
【0262】
次に、
図11に示す動作例を説明する。本動作例は、
図8に示す動作例のステップS1に一般化を施しつつステップS2に変形を施したものである。
【0263】
(S31:サンプルの3次元領域にスキャンを適用してOCT干渉信号を収集する)
図10のステップS21と同じ要領で、サンプル(被検眼E、眼底Ef)の3次元領域にスキャンが適用され、3次元データとしてのOCT干渉信号が収集される。収集された3次元データは画像構築部220に送られる。
【0264】
(S32:単一の3次元画像データを構築する)
図9のステップS12と同じ要領で、画像構築部220の画像化処理部221は、ステップS31で収集された3次元データから単一の3次元画像データを構築する。すなわち、画像化処理部221は、ステップS31で収集された3次元データに1つの画像化処理を適用して、単一の3次元画像データを構築する。構築された単一の3次元画像データは、プロジェクション処理部222に送られる。
【0265】
(S33:複数種類の正面画像データを構築する)
図9のステップS13と同じ要領で、プロジェクション処理部222は、ステップS32で構築された単一の3次元画像データに対して複数の異なるプロジェクションを適用する。これにより、互いに異なる情報を含む、複数の異なる種類の正面画像データが構築される。構築された複数種類の正面画像データは、ラテラルシフト量算出部223に送られる。また、複数種類の3次元画像データのいずれかが、アキシャルシフト量算出部224に送られる。
【0266】
(S34~S37)
ステップS34、S35、S36及びS37は、それぞれ、
図8のステップS4、S5、S6及びS7と同じ要領で実行される(エンド)。
【0267】
図9~
図11に示すような幾つかの動作例によれば、サンプルの3次元領域から収集されたデータに1以上の種類の画像化処理を適用して1以上の3次元画像データを構築し、当該1以上の3次元画像データに1以上の種類のプロジェクションを適用して複数種類の正面画像データを構築し、これら正面画像データを用いてモーションアーティファクト補正を行うことが可能である。したがって、上記の例示的な実施形態に係る眼科装置1と同様に、単一種類の画像データを用いる従来の手法よりも高い精度でモーションアーティファクト補正を行うことが可能である。
【0268】
図9~
図11に示すような幾つかの動作例により提供可能な、走査型イメージング装置の制御方法、画像処理装置、画像処理装置の制御方法、走査型イメージング方法、画像処理方法、プログラム、及び記録媒体によっても同様に、単一種類の画像データを用いる従来の手法よりも高い精度でモーションアーティファクト補正を行うことが可能である。
【0269】
本開示は、幾つかの態様を例示するものに過ぎず、発明の限定を意図したものではない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0270】
1 眼科装置
44 光スキャナ
100 OCTユニット
211 主制御部
2111 走査制御部
212 記憶部
2121 走査プロトコル
220 画像構築部
221 画像化処理部
222 プロジェクション処理部
223 ラテラルシフト量算出部
2231 分割部
2232 相関係数算出部
2233 シフト量算出部
224 アキシャルシフト量算出部
225 補正部