(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 8/15 20210101AFI20230926BHJP
A61L 9/04 20060101ALI20230926BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230926BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20230926BHJP
F24F 8/95 20210101ALI20230926BHJP
F24F 7/003 20210101ALN20230926BHJP
F24F 7/007 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
F24F8/15
A61L9/04
B01D53/04
F24F8/80 150
F24F8/80 155
F24F8/80 200
F24F8/95
F24F7/003
F24F7/007 B
(21)【出願番号】P 2022164889
(22)【出願日】2022-10-13
【審査請求日】2022-10-14
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593131839
【氏名又は名称】アンデックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】川口 晃
(72)【発明者】
【氏名】松崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】久田見 卓也
(72)【発明者】
【氏名】永田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】服部 一隆
(72)【発明者】
【氏名】平本 歩
(72)【発明者】
【氏名】堀江 巧磨
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 美沙
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-259344(JP,A)
【文献】中国実用新案第207287059(CN,U)
【文献】米国特許第03430420(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0117412(KR,A)
【文献】中国実用新案第213492849(CN,U)
【文献】登録実用新案第3087971(JP,U)
【文献】特開昭51-123777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 8/00-8/99
F24F 7/003
F24F 7/007
B01D 53/04
A61L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる溶剤又は臭気物質を吸着する換気装置であって、
筐体と、
前記筐体に取り付けられ、当該筐体の内部に空気を吸い込んで外部に排出するファンと、
前記ファンにより生成される前記筐体内の空気流の流路上に配置された吸着フィルタとを備え、
前記吸着フィルタは、前記筐体に対し着脱可能な通気性のフィルタ容器と、当該フィルタ容器を通過する空気中の溶剤を吸着するように前記フィルタ容器の内部に充填された
、ゼオライト製の粒状の吸着材とを含み、
前記フィルタ容器は、一対の相対向する枠板を含むフレーム体と、一対の前記枠板に固定された一対の多孔プレートとを含み、
前記各多孔プレートは、前記各枠板に形成された開口を通気可能に覆
うものであって、多数の貫通孔を有するパンチングプレートと、線材がメッシュ状に編み合わされたメッシュプレートとを含み、
前記フィルタ容器は、一対の前記多孔プレートが前記空気流の方向に並ぶ姿勢で前記筐体に取り付けられ、
前記各枠板は、外枠と、当該外枠の相対向する縁どうしを連結する複数の桟とを含
み、
前記パンチングプレート及び前記メッシュプレートは、前記メッシュプレートが前記パンチングプレートよりも前記フィルタ容器の内側になる関係で、厚み方向に互いに積層されつつ前記枠板に固定され、
前記吸着材の粒径は前記パンチングプレートの前記貫通孔の直径よりも小さく、前記メッシュプレートの目開きは前記吸着材の粒径よりも小さい、換気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の換気装置において、
前記フィルタ容器は、前記フレーム体の幅方向の中間において一対の前記枠板どうしを連結するリブをさらに含み、
前記リブは、前記桟に対応する幅方向位置に設けられている、換気装置。
【請求項3】
請求項1に記載の換気装置において、
前記フィルタ容器内に充填される前記吸着材の入口として機能する充填口が、前記フレーム体の外周の一面に形成され、
前記フィルタ容器は、前記フレーム体における前記充填口を塞ぐ位置に着脱可能に取り付けられる蓋部材をさらに含む、換気装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の換気装置において、
前記筐体は、空気を吸い込むための吸込口が形成された第1区画と、当該第1区画の上側に位置しかつ前記吸着フィルタをスライド自在に支持する第2区画と、当該第2区画の上側に位置しかつ前記ファンを収容する第3区画とを含む、換気装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の換気装置において、
前記第2区画における上下方向に離れた複数の高さ位置に、前記吸着フィルタをスライド自在に支持する支持部がそれぞれ設けられた、換気装置。
【請求項6】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の換気装置において、
前記吸着フィルタを通過した空気中の溶剤又は臭気物質の濃度を測定する濃度測定装置と、
前記濃度測定装置により測定された前記濃度が予め定められた基準値を超えた場合に警報を発する警報器とをさらに備えた、換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気中に含まれる溶剤又は臭気物質を吸着する換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装、脱脂、洗浄、印刷等を行う作業場では、有機溶剤(以下、単に溶剤という)が多用される。溶剤は、一般に揮発性が高いため、蒸気となって作業者に吸収されるおそれがある。そこで、溶剤が使用される作業場では、換気装置を用いて空気中の溶剤の濃度を下げる措置を講じることが望ましい。
【0003】
換気装置の一例として、下記特許文献1には、自動車ボディ等の被塗物を塗装する塗装設備に用いられる換気装置であって、給気ファン及び排気ファンと、塗装室の天井部に設けられた給気チャンバと、給気ファンと給気チャンバとを接続する給気路と、塗装室と排気ファンとを接続する排気路と、を備えたものが開示されている。給気ファンは、空調機で生成された空調空気を給気路及び吸気チャンバを通じて塗装室に供給する。塗装室に供給された空気は、排気ファンによって塗装室から排気路を通じて外部に排出される。これにより、塗装室が換気されるとともに、塗装室の温湿度が塗装に適した温湿度に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の換気装置は、作業場の天井又は壁等に設置された給気ファン及び排気ファン等を用いて作業場の空気自体を入れ替える構造であるため、装置の大型化を招き易い。また、排気ファンから排出された空気を天井の上に導出するための排気ダクトを設置する必要もある。このため、初期費用や消費電力が増大する上に、移設が困難という問題がある。
【0006】
本開示は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、安価でかつ移設が容易な換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためのものとして、本開示の一局面に係る換気装置は、空気中に含まれる溶剤又は臭気物質を吸着する換気装置であって、筐体と、前記筐体に取り付けられ、当該筐体の内部に空気を吸い込んで外部に排出するファンと、前記ファンにより生成される前記筐体内の空気流の流路上に配置された吸着フィルタとを備え、前記吸着フィルタは、前記筐体に対し着脱可能な通気性のフィルタ容器と、当該フィルタ容器を通過する空気中の溶剤を吸着するように前記フィルタ容器の内部に充填された、ゼオライト製の粒状の吸着材とを含み、前記フィルタ容器は、一対の相対向する枠板を含むフレーム体と、一対の前記枠板に固定された一対の多孔プレートとを含み、前記各多孔プレートは、前記各枠板に形成された開口を通気可能に覆うものであって、多数の貫通孔を有するパンチングプレートと、線材がメッシュ状に編み合わされたメッシュプレートとを含み、前記フィルタ容器は、一対の前記多孔プレートが前記空気流の方向に並ぶ姿勢で前記筐体に取り付けられ、前記各枠板は、外枠と、当該外枠の相対向する縁どうしを連結する複数の桟とを含み、前記パンチングプレート及び前記メッシュプレートは、前記メッシュプレートが前記パンチングプレートよりも前記フィルタ容器の内側になる関係で、厚み方向に互いに積層されつつ前記枠板に固定され、前記吸着材の粒径は前記パンチングプレートの前記貫通孔の直径よりも小さく、前記メッシュプレートの目開きは前記吸着材の粒径よりも小さいものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、安価であり、移設が容易で、かつ汎用性に優れた換気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る換気装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】前記換気装置の内部構造を示す概略斜視図である。
【
図5】吸着フィルタの構造を示す分解斜視図である。
【
図7】前記吸着フィルタにおけるフィルタ容器の形状を示す斜視図である。
【
図9】前記フィルタ容器における多孔プレートの構造を示す分解斜視図である。
【
図10】前記吸着フィルタを再生するためのフィルタ再生装置の一例を示す概略図である。
【
図11】前記換気装置の使用例を示す斜視図である。
【
図12】前記換気装置の他の使用例を示す斜視図である。
【
図13】前記換気装置のさらに他の使用例を示す模式図である。
【
図14】前記換気装置のさらに他の使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[換気装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る換気装置1の外観を示す斜視図であり、
図2は、当該換気装置1の内部構造を示す概略斜視図である。本図に示される換気装置1は、空気中に含まれる溶剤を吸着してその濃度を低下させる装置であり、溶剤が使用される作業場を換気するために使用される。換気装置1は、溶剤が使用される種々の作業場に適用し得るが、一例として、塗装や脱脂を行う作業場の換気に換気装置1を好適に使用することができる。また、換気装置1により吸着し得る溶剤は特に限定されず、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、アセトンなど、揮発性を有する種々の有機溶剤を吸着するのに換気装置1を使用することができる。
【0011】
換気装置1は、筐体2と、ファン3と、第1吸着フィルタ4Aと、第2吸着フィルタ4Bと、不織布フィルタ5とを備える。筐体2は、換気装置1の外装を構成するボックス状部材である。ファン3は、筐体2の内部に空気を吸い込んで外部に排出する送風機である。第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4Bは、筐体2内を通過する空気中の溶剤を吸着するフィルタである。不織布フィルタ5は、不織布を用いたフィルタであり、空気中に含まれる粉塵等を濾過するために用いられる。
【0012】
第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4Bは、筐体2の上下方向の下方から第1吸着フィルタ4A、第2吸着フィルタ2Bの順に並べて配置されている。不織布フィルタ5は、第2吸着フィルタ4Bのさらに上方に配置されている。なお、以下では、第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4Bを区別せずに指すときは、単に吸着フィルタ4というものとする。
【0013】
筐体2は、上下方向に延びる4つの周面11~14(
図1)を有する直方体である。各周面11~14の下部には、それぞれ矩形の吸込口16が形成されている。吸込口16は、筐体2の内部に吸引される空気の入口として機能する。各吸込口16には、それぞれプレフィルタ17が取り付けられている。プレフィルタ17は、例えば不織布を用いたフィルタであり、吸込口16を覆う位置に着脱可能に取り付けられている。なお、プレフィルタ17をさらに外から覆う通気性のカバーを各周面11~14の下部に取り付けてもよい。当該カバーは、例えばその一辺を中心に回動可能なように筐体2にヒンジ結合され得る。
【0014】
筐体2の下面には、複数のキャスター15が取り付けられている。キャスター15は、方向転換可能な車輪を含み、筐体2を移動可能に支持している。すなわち、本実施形態の換気装置1は、作業場の床面上を適宜の方向に移動可能である。
【0015】
図3は、換気装置1の側面断面図である。
図1~
図3に示すように、ファン3は、筐体2の上部に配置され、筐体2内に導入された空気を上方に吸引する。すなわち、ファン3は、筐体2の4つの周面11~14の各吸込口16から導入された空気を上方に吸引することにより、下方から上方へと流れる空気流(
図3の矢印参照)を筐体2内に生成する。筐体2の上面には、当該空気流の出口として機能する排出口18が形成されている。排出口18は、通気性の上カバー19によって覆われている。
【0016】
ファン3は、筐体2を上下に仕切る仕切壁20の上に支持されている。仕切壁20の中央には開口が形成されている。ファン3は、仕切壁20の開口に上方から対向する吸込部31と、吸込部31から吸い込んだ空気を遠心方向に導出する羽根車32と、羽根車32を回転駆動する電動式のモータとを含む。羽根車32から遠心方向に導出された空気は、排出口18を通じて筐体2の外部に排出される。
【0017】
第1吸着フィルタ4A、第2吸着フィルタ4B、及び不織布フィルタ5は、仕切壁20の下方に配置されている。言い換えると、吸着フィルタ4及び不織布フィルタ5は、吸込口16から筐体2内に導入されてファン3へと向かう空気流の流路上に配置されている。詳しくは、筐体2における吸込口16とファン3との間において、第1吸着フィルタ4A、第2吸着フィルタ4B、及び不織布フィルタ5が、下からこの順に並ぶように配置されている。
【0018】
ここで、前記のような位置関係で各要素を収容する筐体2は、上下方向に3つの区画R1,R2,R3に区分できる。以下では、下から順に第1区画R1、第2区画R2、及び第3区画R3と称する。第1区画R1は、最も下側の区画であり、吸込口16を有する。第3区画R3は、仕切壁20を底とする最も上側の区画であり、排出口18を有する。第2区画R2は、第1区画R1と第2区画R2の間の中間の区画である。そして、第2区画R2に吸着フィルタ4及び不織布フィルタ5が収容され、かつ第3区画R3にファン3が収容されることにより、ファン3に向かって上昇する空気流の流路上に吸着フィルタ4及び不織布フィルタ5が配置されるレイアウトが実現されている。
【0019】
図3に示すように、第2区画R2の内部には、第1支持部21、第2支持部22、及び第3支持部23が、下からこの順に設けられている。第1支持部21は、第1吸着フィルタ4Aをスライド自在に支持する支持部である。第2支持部22は、第2吸着フィルタ4Bをスライド自在に支持する支持部である。第3支持部23は、不織布フィルタ5をスライド自在に支持する支持部である。第1吸着フィルタ4A、第2吸着フィルタ4B、及び不織布フィルタ5は、これらの支持部21~23を介して、いずれも同一の方向にスライド自在に支持されている。第1支持部21は、筐体2と第1吸着フィルタ4Aとの気密を保持するシール機能を有し、第2支持部22は、筐体2と第2吸着フィルタ4Bとの気密を保持するシール機能を有する。
【0020】
本実施形態において、第1吸着フィルタ4A、第2吸着フィルタ4B、及び不織布フィルタ5は、筐体2の相対向する周面11,12と直交する方向にスライド自在に支持されている。ここで、各フィルタ4A/B,5がスライドする方向、つまり周面11,12と直交する方向を前後方向とし、一方の周面12から他方の周面11に向かう方向を前、その逆を後とする。
図4は、換気装置1を前方から見た正面図である。
図3及び
図4に示すように、第2区画R2の前面、つまり筐体2の前側の周面11における上下方向中間部には、各フィルタ4A/B,5を挿脱するためのスロットP1~P3が形成されている。各フィルタ4A/B,5は、各支持部21~23に支持されることにより、スロットP1~P3を通じて挿脱可能な状態で第2区画R2に収容されている。第2区画R2の前面には、スロットP1~P2を覆うためのカバー部材25(
図1)が着脱可能に取り付けられている。
図4に示される換気装置1は、当該カバー部材25を取り外した状態のものである。
【0021】
第1支持部21は、スロットP1から挿入された第1吸着フィルタ4Aを受け入れるとともに、受け入れた当該第1吸着フィルタ4Aを前後方向にスライド自在に支持する。第2支持部22は、スロットP2から挿入された第2吸着フィルタ4Bを受け入れるとともに、受け入れた当該第2吸着フィルタ4Bを前後方向にスライド自在に支持する。第3支持部23は、スロットP3から挿入された不織布フィルタ5を受け入れるとともに、受け入れた当該不織布フィルタ5を前後方向にスライド自在に支持する。各支持部21~23は、例えば、第2区画R2の左右の側壁内面に沿って前後方向に延びるレール部材等を含み得る。
【0022】
図2~
図4に示すように、本実施形態では、第1吸着フィルタ4A、第2吸着フィルタ4B、及び不織布フィルタ5の間で、筐体2に取り付けた状態での上下方向の寸法である厚みが異なっている。詳しくは、第2吸着フィルタ4Bの厚みは不織布フィルタ5の厚みよりも大きく、第1吸着フィルタ4Aの厚みは第2吸着フィルタ4Bの厚みよりも大きい。言い換えると、本実施形態では、筐体2内の空気流の上流側(つまり下側)に位置するフィルタほど厚みが大きくなるように、各フィルタの厚みが設定されている。
【0023】
主に
図3及び
図4に示すように、換気装置1は、さらに、濃度測定装置7と、警報器8と、操作部9とを備える。濃度測定装置7は、吸着フィルタ4を通過した空気中の溶剤の濃度を測定する装置である。警報器8は、濃度測定装置7により測定された溶剤の濃度に応じて警報を発する装置である。操作部9は、換気装置1に対する作業者の操作を受け付けるインターフェースである。
【0024】
濃度測定装置7は、主に
図3に示すように、空気管71と、空気管71の上端に接続された濃度センサ72とを含む。濃度センサ72は、空気中の溶剤の濃度に応じた電気信号を出力するセンサであり、筐体2における第2区画R2の上部、つまり不織布フィルタ5とファン3との間に位置する筐体2の上下方向中央に配置されている。空気管71は、溶剤濃度の測定対象となるサンプル空気を取り込むための配管であり、濃度センサ72と反対側の端部(下端)に取込口71aを有している。取込口71aは、濃度センサ72に導かれるサンプル空気の入口として機能する。本実施形態において、取込口71aは、第1吸着フィルタ4Aと第2吸着フィルタ4Bとの間に配置されている。すなわち、濃度測定装置7は、第1吸着フィルタ4Aを通過した空気、換言すれば第1吸着フィルタ4Aを通過して第2吸着フィルタ4Bを通過していない空気に含まれる溶剤の濃度を検出するように構成されている。
【0025】
警報器8は、換気装置1の周りにいる作業者に認識され得る適宜の態様で警報を発する機器であり、筐体2の上部に取り付けられている。警報器8は、例えば、警報音を発する発音部と、回転灯などの発光部とを含み得る。警報器8は、濃度センサ72により検出された溶剤の濃度が予め定められた基準値を超えた場合に作動して、作業者に警告を行う。
【0026】
操作部9は、例えばタッチパネル式のディスプレイからなり、筐体2における第2区画R2の上部に配置されている(
図1及び
図4参照)。操作部9は、例えば、ファン3の運転/停止を切り替える操作と、風量調整のためにファン3の回転数を変更する操作と、を含む所定の操作を受け付けることが可能である。なお、操作部9は、溶剤の濃度を表示する表示部としての機能を兼ねていてもよい。
【0027】
[吸着フィルタの構造]
図5は、吸着フィルタ4の構造を示す分解斜視図であり、
図6は、吸着フィルタ4の平面図である。本実施形態において、第1吸着フィルタ4Aと第2吸着フィルタ4Bとの間の相違は、上下方向の厚み寸法のみである。言い換えると、
図5及び
図6等に示される構造は、第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4Bに共通のものである。このため、以下では、第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4Bを総称した吸着フィルタ4の構造として説明する。
【0028】
図5及び
図6に示すように、吸着フィルタ4は、フィルタ容器41と、フィルタ容器41の内部に充填された吸着材42とを備える。
【0029】
フィルタ容器41は、筐体2の内部に収容可能な平面視矩形のボックス体である。すなわち、フィルタ容器41は、筐体2内の対応する支持部21(22)に対しスロットP1(P2)を通じて着脱できるように形成されている。
【0030】
吸着材42は、フィルタ容器41を通過する空気中の溶剤を吸着可能な多数の粒子からなる粒材である。吸着材42の材質は、溶剤を吸着する性質を有するものであればその種類を問わないが、例えば多孔質の結晶性アルミノケイ酸塩、つまりゼオライトが好適である。
【0031】
図7は、フィルタ容器41を単独で示す斜視図であり、
図8は、フィルタ容器41の部分概略断面図である。なお、
図7では、蓋部材47を取り外した状態でフィルタ容器41を示している。
図5~
図8に示すように、フィルタ容器41は、その骨格を構成するフレーム体45と、フレーム体45の厚み方向の両面に取り付けられた一対の多孔プレート46と、フレーム体45に対し着脱可能に取り付けられる蓋部材47と、フレーム体45の内部に設けられた複数のリブ48とを含む。ここで、フィルタ容器41は、
図2及び
図3に示すように、蓋部材47が筐体2の前側に位置する姿勢で筐体2に取り付けられる。このため、以下では、フィルタ容器41もしくは吸着フィルタ4について、蓋部材47が取り付けられる側を前、その反対を後とする。また、この定義に基づく前後方向と平面視で直交する方向を左右方向もしくは幅方向とする。厚み方向は、前後方向及び左右方向(幅方向)の双方と直交する方向であって、筐体2に取り付けた状態での上下方向に相当する。
【0032】
フレーム体45は、厚み方向に相対向する一対の枠板51と、両枠板51の左右の側縁どうしを連結する一対の側板52と、両枠板51の後縁どうしを連結する底板53とを含む。側板52及び底板53は、溶接等の手段により各枠板51に結合されている。言い換えると、フレーム体45の左右の側面及び後端面は、一対の側板52及び底板53によって閉止されている。
【0033】
フレーム体45の前端面は開放されている。吸着材42は、開放された当該前端面からフレーム体45の内部に充填される。言い換えると、フレーム体45は、その前端に、吸着材42の入口として機能する充填口S1を有している。
【0034】
枠板51は、平面視で格子状に形成されている。具体的に、枠板51は、平面視矩形の外枠61と、外枠61の前縁と後縁とを連結する複数の縦桟62と、外枠61の左右の側縁どうしを連結する複数の横桟63とを含む。これら外枠61、縦桟62、及び横桟63は、複数の矩形の開口S2を区画するように互いに交差している。本実施形態において、枠板51は2つの縦桟62と2つの横桟63とを有しており、これによって合計9つの開口S2が形成されている。
【0035】
側板52は、フレーム体45の幅方向の両端に沿って前後方向に延びるように形成され、一対の枠板51の側縁どうしを連結している。側板52は、その前端に、幅方向内側に張り出したフランジ52aを有する。フランジ52aには締結孔h2が形成されている。締結孔h2は、蓋部材47をフレーム体45に結合するための締結部材が螺合される孔である。
【0036】
リブ48は、フレーム体45の幅方向の中間において前後方向に延びるように形成されている。本実施形態では、上述した縦桟62に対応する幅方向の2箇所に、それぞれリブ48が設けられている。各リブ48は、一対の枠板51間の距離に相当する高さを有する骨材であり、溶接等の手段により各枠板51にそれぞれ結合されている。すなわち、リブ48は、フレーム体45の幅方向の中間において一対の枠板51どうしを連結している。
【0037】
多孔プレート46は、多数の孔を有する通気性のプレートである。多孔プレート46は、枠板51の複数の開口S2をフィルタ容器41の内側から覆うように、溶接等の手段により枠板51に固定されている。
【0038】
図9は、多孔プレート46の構造を説明するための分解斜視図である。
図8及び
図9に示すように、多孔プレート46は、多数の貫通孔h1を有するパンチングプレート65と、線材がメッシュ状に編み合わされたメッシュプレート66とを含む。吸着材42の粒径は、パンチングプレート65の貫通孔h1の直径よりも小さい。また、メッシュプレート66の目開き、つまり隣接する線材どうしの最大隙間は、パンチングプレート65の貫通孔h1の直径よりも小さく、かつ吸着材42の粒径よりも小さい。パンチングプレート65及びメッシュプレート66は、厚み方向に互いに積層された状態で枠板51に固定される。より詳しくは、パンチングプレート65及びメッシュプレート66は、メッシュプレート66がパンチングプレート65よりも内側にくる関係、換言すればメッシュプレート66よりもパンチングプレート65が枠板51に近接する関係で、枠板51に固定されている。
【0039】
図5及び
図6に示すように、蓋部材47は、フレーム体45の前端の充填口S1を閉止可能な形状を有する本体部68と、本体部68から前方に突出する取手69とを含む。本体部68は、フレーム体45の前端の締結孔h2に螺合される締結部材を介してフレーム体45の前端に結合されることにより、充填口S1を閉止する。取手69は、筐体2から吸着フィルタ4を取り出す際に作業者が手を掛ける取手として機能する。
【0040】
以上のような構造の吸着フィルタ4は、その厚み方向が上下方向に一致する姿勢、換言すれば一対の多孔プレート46が筐体2内の空気流の方向に並ぶ姿勢で、筐体2に取り付けられる。これにより、筐体2内の空気流は、下側の多孔プレート46を通じてフィルタ容器41内に導入されるとともに、当該フィルタ容器41内にある吸着材42を通過した後に上側の多孔プレート46から外部に導出される。そして、このように空気流が吸着材42を通過する過程で、空気中の溶剤が吸着材42によって吸着される。これにより、空気中の溶剤の濃度が低下し、作業場が換気される。
【0041】
[フィルタの再生]
換気装置1による換気が長期間継続して行われると、吸着材42への溶剤の吸着量が蓄積する結果、吸着材42による吸着能力が低下するおそれがある。そこで、吸着フィルタ4は定期的に再生することが望ましい。なお、吸着フィルタ4の再生とは、吸着材42に吸着されている溶剤を脱離させる処理のことである。ここで、本実施形態では、吸着材42がフィルタ容器41内に充填されており、このフィルタ容器41と共に吸着材42を筐体2に対し挿脱することが可能である。言い換えると、本実施形態では、溶剤の吸着に必要な機能が交換可能な形態で一体にまとめられたカートリッジ式の吸着フィルタ4が用いられる。したがって、吸着フィルタ4の再生つまり吸着材42からの溶剤の脱離は、このことを利用した比較的簡単な作業により行うことが可能である。
【0042】
図10は、吸着フィルタ4を再生するためのフィルタ再生装置100の一例を示す概略図である。本図に示すように、フィルタ再生装置100は、吸着フィルタ4を収容可能な加熱炉101と、加熱炉101に熱風を供給する熱風供給源102とを備える。熱風供給源102は、空気を加熱しつつ圧送する装置であり、例えば電気ヒータと送風用のファンとを含み得る。加熱炉101は、熱風供給源102から供給された熱風が通過する炉であり、熱風の流れ方向(図の上下方向)と交差する姿勢で複数の吸着フィルタ4を収容、保持する。図の例において、加熱炉101は、第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4Bの組合せを2セット、上下方向に並ぶ姿勢で収容することが可能である。
【0043】
前記のように加熱炉101に吸着フィルタ4がセットされると、吸着フィルタ4を通過する熱風によって内部の吸着材42が加熱される。これにより、吸着材42に吸着していた溶剤が脱離し、当該吸着材42による溶剤の吸着能力が復活する。熱風の温度は、吸着材42から溶剤を脱離させ得る範囲で適宜設定可能であるが、例えば200℃程度とすることができる。吸着フィルタ4は、吸着材42による溶剤の吸着能力を十分に復活させるに足る適宜の時間だけ加熱炉101にセットされ、これによって吸着フィルタ4が再生される。このようにして再生された吸着フィルタ4は、再び換気装置1の筐体2に取り付けられ、溶剤を吸着する用途に供される。
【0044】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、溶剤を吸着可能な吸着材42を含む吸着フィルタ4と、空気流を生成するファン3とが、共通の筐体2に内蔵されるので、作業場の換気(溶剤の吸着)に必要な要素をひとまとめにしたコンパクトな換気装置1を実現することができる。また、筐体2を移動させるだけで各所の作業場に換気装置1を持ち込めるので、例えばビルトイン式の換気設備を作業場ごとに備え付ける場合と比べて、換気に要するコストを大幅に削減することができる。すなわち、本実施形態によれば、安価でかつ移設が容易な換気装置1を実現することができる。
【0045】
しかも、本実施形態では、通気性のフィルタ容器41とその内部に充填された吸着材42とを含むカートリッジ式の吸着フィルタ4が用いられるとともに、フィルタ容器41が筐体2に対し着脱可能であるため、吸着フィルタ4の吸着性能の維持を容易かつ適切に図ることができる。すなわち、吸着材42による溶剤の総吸着量には限界があるため、吸着フィルタ4が継続使用されると、吸着材42による溶剤の吸着能力が低下することがある。このような場合でも、本実施形態によれば、吸着フィルタ4を筐体2から取り外して上述したフィルタ再生装置100等に導入し、吸着材42を加熱して当該吸着材42から溶剤を脱離させる処理(再生処理)を行えば、吸着材42による溶剤の吸着能力を復活させることができる。そして、このように再生処理された吸着フィルタ4を筐体2に戻すことにより、十分な量の溶剤を吸着フィルタ4で吸着することが再び可能になり、吸着フィルタ4の吸着性能を維持することができる。一方、吸着材42の摩滅が進行する等により、上述した再生処理では吸着性能を十分に復活させることが困難な場合には、フィルタ容器41内の吸着材42自体を交換することもあり得る。この場合でも、吸着フィルタ4がカートリッジ化された本実施形態によれば、吸着材42を交換する作業を容易化することができる。
【0046】
さらに、フィルタ容器41内に十分な充填率で吸着材42を充填すれば、フィルタ容器41の内部容積に対応した安定する厚みをもった吸着材42の層が得られるので、局所的に吸着材42の充填厚さが不足するような事態を避けることができる。これにより、充填厚さが不足した箇所に空気流が集中することによる溶剤の破過、つまり溶剤の吸着率が許容レベルを超えて低下することが起き難くなり、吸着フィルタ4の吸着性能を良好に確保することができる。
【0047】
また、本実施形態において、フィルタ容器41は、一対の相対向する枠板51を含むフレーム体45と、各枠板51の開口S2を通気可能に覆う一対の多孔プレート46とを備え、かつ当該一対の多孔プレート46が上下方向に並ぶ姿勢で配置される。このような構成によれば、筐体2内を上下方向に流れる空気流を下側の多孔プレート46を通じて吸着材42に導入し、当該吸着材42から上側の多孔プレート46を通じて外部に導出することができる。これにより、空気中に含まれる溶剤を吸着材42で適切に吸着することができ、当該吸着材42を通過した後の空気中の溶剤の濃度を十分に低下させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、多孔プレート46として、多数の貫通孔h1を有するパンチングプレート65と、線材がメッシュ状に編み合わされたメッシュプレート66とを積層した積層体が用いられるので、フィルタ容器41内に充填された吸着材42が多孔プレート46から漏れ出るのを高い確率で防止することができる。また、多孔プレート46の剛性が向上するので、フィルタ容器41内に吸着材42を充填したときに多孔プレート46が変形するのを抑制することができる。これにより、吸着材42の充填厚さを安定させることができ、吸着フィルタ4の吸着性能を良好に確保することができる。
【0049】
特に、本実施形態の場合、パンチングプレート65及びメッシュプレート66は、目の細かいメッシュプレート66が相対的にフィルタ容器41の内側になる関係で積層される。このような位置関係は、吸着材42の漏れ防止と多孔プレート46の剛性向上とを両立させる上で有利であり、吸着材42の充填厚さの安定化につながる。これにより、吸着フィルタ4の吸着性能をより向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、一対の枠板51どうしを連結するリブ48がフィルタ容器41の幅方向の中間部に設けられるので、フィルタ容器41の剛性をより向上させることができ、吸着材42の充填厚さを安定させる上述した効果を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、フレーム体45の前端に充填口S1が形成されるとともに、当該充填口S1を塞ぐ位置に蓋部材47が着脱可能に取り付けられるので、フィルタ容器41に吸着材42を充填する作業を蓋部材47を取り外した状態で容易に行うことができる。また、吸着材42の充填後に蓋部材47を取り付けることにより、フィルタ容器41内に吸着材42を閉じ込めて安定的に保持することができる。
【0052】
また、本実施形態では、筐体2の下部領域である第1区画R1に吸込口16が形成されるとともに、筐体2の上下方向の中間領域である第2区画R2に吸着フィルタ4が収容され、さらに筐体2の上部領域である第3区画R3にファン3が収容される。このような構成によれば、下方から吸い込まれて上方へと向かう空気流を筐体2内に生成できるとともに、当該空気流の流路上に吸着フィルタ4を適切に配置することができる。また、空気の吸込口16の高さを低くできるので、比重が重く作業場の床面近くに溜まり易い溶剤を効率よく筐体2内に吸い込んで吸着することができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、第2区画R2における複数の高さ位置に設けられた複数の(ここでは2つの)支持部21,22に、それぞれ吸着フィルタ4がスライド自在に支持される。このような構成によれば、複数の吸着フィルタ4(第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4B)に空気流を順次通すことができ、空気中の溶剤の濃度を十分に低下させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、下側の吸着フィルタ4(第1吸着フィルタ4A)を通過した空気中の溶剤の濃度を測定する濃度測定装置7と、測定された当該濃度が所定の基準値を超えた場合に警報を発する警報器8とが、それぞれ筐体2に備え付けられている。このような構成によれば、作業場内の溶剤の濃度が高まりつつあることを作業者に知らせることができ、吸着フィルタ4を再生又は交換する等の必要な措置をとるよう作業者に促すことができる。
【0055】
[使用例]
本実施形態の換気装置1は、筐体2の各周面11~14に形成された4つの吸込口16を有するので、これら4つの吸込口16から空気を吸い込んで吸着フィルタ4に通すことにより、筐体2の周りの広範な範囲の空気を換気することが可能である。ただし、換気装置1の用途はこれに限られず、特に溶剤が溜まり易い場所を集中的に換気する用途にも使用することができる。
図11に示す使用例では、4つの吸込口16のうちの1つにホース90が接続されている。具体的には、ホース90の基端部と接続可能な接続口91aを有するアダプタ91が、1つの吸込口16に取り付けられている。また、他の3つの吸込口16は、遮蔽板93によって塞がれている。このようにすれば、溶剤が溜まり易い場所を集中的に換気する用途に換気装置1を供することができる。すなわち、ホース90の先端部90aを溶剤が溜まり易い場所に配置することで、当該場所内の空気をホース90で吸い込んで筐体2内に導入し、空気中の溶剤を吸着フィルタ4で吸着することができる。
【0056】
図12は、複数の換気装置1を用いて換気を行う場合の使用例を示す図である。本図には、ヘリコプターのボディ200を塗装する作業場を合計6つの換気装置1を用いて換気する例が示される。ボディ200の左右両側に位置する2つの換気装置1にはホース90が接続され、各ホース90の先端部90aがボディ200の内部に挿入されている。これにより、ボディ200の内部に溜まっている溶剤をホース90から吸い込んで効率よく吸着することができる。一方、残り4つの換気装置1にはホース90が接続されていない。つまり、当該4つの換気装置1は、複数の吸込口16から溶剤を吸い込んで吸着する用途に供される。ここで、
図12の例では、当該4つの換気装置1が作業場の4つのコーナの近傍にそれぞれ配置される。そこで、これら4つの換気装置1については、作業場の外周に近い2つの吸込口16に遮蔽板93が取り付けられている。これにより、遮蔽板93が取り付けられない残り2つの吸込口16から作業場内の空気(溶剤)を効率よく吸い込むことができる。
【0057】
[変形例]
前記実施形態では、筐体2内に2つの吸着フィルタ4(第1吸着フィルタ4A及び第2吸着フィルタ4B)を取り付けた例について説明したが、吸着フィルタ4の数は2つに限られない。すなわち、筐体2内に取り付けられる吸着フィルタ4の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0058】
前記実施形態では、ファン3によって筐体2内に上下方向の空気流が生成されることを前提に、上下方向に並ぶ態様で2つの吸着フィルタ4を筐体2内に配置したが、このように複数の吸着フィルタ4を配置する場合、吸着フィルタ4は筐体2内の空気流の方向に沿って並んでいればよく、その並び方向は空気流の方向によって適宜変更可能である。
【0059】
前記実施形態では、空気流の上流側に相当する下側の第1吸着フィルタ4Aの厚みを、上側の第2吸着フィルタ4Bの厚みよりも大きくしたが、両吸着フィルタ4A,4Bの厚みを同一にしてもよい。
【0060】
図12では、好適な一使用例として、ヘリコプターのボディ200を塗装する作業場に換気装置1を使用する例を説明したが、本開示の換気装置の適用対象はこれに限られず、溶剤が使用される種々の作業場に本開示の換気装置を適用可能である。
【0061】
図13は、印刷を行う作業場に本開示の換気装置を適用した場合を例示する図である。本図に示される作業場は、建屋301の内部で大型のインクジェットプリンター300を用いて印刷を行う作業場である。建屋301には、空調空気CAを生成するエアコン302が取り付けられている。建屋301の内部では、インクジェットプリンター300に用いられる溶剤が蒸発し、蒸発した当該溶剤が空気中に含まれる可能性がある。換気装置1は、空気中に含まれる当該溶剤を吸着するために建屋301内に設置されている。換気装置1に溶剤が吸着されることで、建屋301内の溶剤の濃度を低下させることができる。また、建屋301内に換気装置1が存在するため、建屋301内の空気自体を入れ替える必要性が減り、エアコン302による空調ロスを低減することができる。
【0062】
図14は、ハンダ付け作業を行う作業場に本開示の換気装置を適用した場合を例示する図である。本図に示される作業場には、ハンダのフラックスを吸引する吸引ダクト400が設置されている。吸引ダクト400は、作業者がハンダ付けを行う複数の作業セクションSCの上方に開口する複数の吸引口401と、各吸引口401が共通に接続されたダクト本管402とを含む。ダクト本管402の端部は、アダプタ91を介して換気装置1に接続されている。換気装置1は、吸引ダクト400から導入されるハンダのフラックスを受け入れて、当該フラックス中の溶剤を吸着する。これにより、ハンダ付け作業場内の溶剤の濃度を低下させることができる。
【0063】
図13及び
図14の変形例では、ヘリコプター以外の製造物の製造を行う作業場に本開示の換気装置を適用した例について説明したが、本開示の換気装置は、さらに別の作業場にも適用することが可能である。例えば、消毒や脱臭等の目的で溶剤が使用される病院や介護施設、各種の試験室、美容室、ネイルサロンなど、溶剤が使用される種々の作業場に本開示の換気装置を適用することが可能である。
【0064】
さらにまた、本開示の換気装置は、溶剤を吸着する用途に限られず、悪臭の原因物質である臭気物質を吸着する用途に供することも可能である。言い換えると、本開示の換気装置は、臭気物質の濃度を低下させる脱臭装置としても利用可能である。この場合の換気装置の適用先としては、例えば、ペットショップ等のペット関連施設、動物病院、もしくは介護施設などが好適である。これらの施設では、アンモニア、メタン、ホルマリン等が悪臭の原因物質(臭気物質)として存在し得る。本開示の換気装置を用いることにより、これらの臭気物質を吸着して悪臭を低減することができる。なお、本開示の換気装置を脱臭装置として利用する場合は、
図3等に示した濃度測定装置7に代えて、吸着対象である臭気物質の濃度を測定する濃度測定装置を用いるとよい。このようにすれば、臭気物質が基準値を超えた場合に警報が発せられるので、悪臭レベルが高まりつつあることを作業者に知らせることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 換気装置
2 筐体
3 ファン
4(4A,4B) 吸着フィルタ
7 濃度測定装置
8 警報器
16 吸込口
21 第1支持部(支持部)
22 第2支持部(支持部)
41 フィルタ容器
42 吸着材
45 フレーム体
46 多孔プレート
47 蓋部材
48 リブ
51 枠板
65 パンチングプレート
66 メッシュプレート
R1 第1区画
R2 第2区画
R3 第3区画
S1 充填口
S2 開口
h1 貫通孔
【要約】
【課題】安価でかつ移設が容易な換気装置を提供する。
【解決手段】換気装置1は、筐体2と、筐体2に取り付けられ、当該筐体2の内部に空気を吸い込んで外部に排出するファン3と、ファン3により生成される筐体2内の空気流の流路上に配置された吸着フィルタ4とを備える。吸着フィルタ4は、筐体2に対し着脱可能な通気性のフィルタ容器41と、当該フィルタ容器41を通過する空気中の溶剤を吸着するようにフィルタ容器41の内部に充填された粒状の吸着材42とを含む。
【選択図】
図3