(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】植毛装置、及び、植毛装置を用いたかつらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A41G3/00 H
A41G3/00 N
(21)【出願番号】P 2022526287
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043944
(87)【国際公開番号】W WO2022118857
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020200655
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391064739
【氏名又は名称】株式会社スヴェンソン
(73)【特許権者】
【識別番号】591165366
【氏名又は名称】ハムス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519191293
【氏名又は名称】株式会社H&Kエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本谷 光洋
(72)【発明者】
【氏名】賀曽利 進一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 康次
(72)【発明者】
【氏名】新垣 功貢
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040084(JP,A)
【文献】特開昭63-220899(JP,A)
【文献】中国実用新案第205412219(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
A63H 3/44
D05C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらベースに毛髪を植毛する植毛装置であって、
前記かつらベースを保持するベース保持機構と、
前記かつらベースに植毛する前記毛髪の一方の毛片を把持する第1端部把持部と、前記毛髪の他方の毛片を把持する第2端部把持部とを有するチャック機構と、
前記第1端部把持部及び前記第2端部把持部で保持された毛髪をU字状に2つ折りにして、前記ベース保持機構に保持された前記かつらベースの一方の面側から他方の面側へと導き、前記かつらベースの線状部で折り返し、前記かつらベースの他方の面側から一方の面側へ、U字状に2つ折りした前記毛髪を引き出す鉤針機構と、
前記鉤針機構で前記かつらベースの一方の面側に引き出された、前記毛髪のU字状の第1ループを広げ、前記第1ループを保持するループ保持機構と、
鉗子を用いて、前記第1ループを有する前記毛髪に結び目を形成して、前記毛髪を前記かつらベースに植毛する鉗子機構と、
を備え、
前記鉗子機構に設けられた前記鉗子は、
棒状の基部と、
前記基部に対して開閉自在に設けられ、前記基部との間に前記毛髪を挟んで保持可能な第1可動片と、
前記基部を介在して前記第1可動片と対向する位置に、前記第1可動片と独立して前記基部に対して開閉自在に設けられ、前記基部との間に前記毛髪を挟んで保持可能な第2可動片と、
を備える、植毛装置。
【請求項2】
前記第1可動片及び前記第2可動片の少なくともいずれか一方は、前記基部に対して閉状態となったときに前記基部との間に中空領域を形成し、前記中空領域にて前記毛髪を遊動自在に保持する、
請求項1に記載の植毛装置。
【請求項3】
前記第1可動片及び前記第2可動片の少なくともいずれか一方は、前記基部と密着する平坦面を有しており、前記基部と前記平坦面とにより前記毛髪を挟持する、
請求項1に記載の植毛装置。
【請求項4】
前記第1可動片は、前記基部に対して閉状態となったときに前記基部との間に中空領域を形成し、前記中空領域にて前記毛髪を遊動自在に保持し、
前記第2可動片は、前記基部と密着する平坦面を有しており、前記基部と前記平坦面とにより前記毛髪を挟持する、
請求項1に記載の植毛装置。
【請求項5】
前記基部は、三角支柱状又は台形支柱状でなり、前記第1可動片が対向する第1側面と、前記第2可動片が対向する第2側面とが傾斜している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の植毛装置。
【請求項6】
前記鉗子機構は、
前記ループ保持機構により形成された前記毛髪の前記第1ループの中に前記鉗子の先端を挿入した後、前記毛髪の少なくとも1本の毛片を前記基部及び前記第1可動片により保持する第1毛片保持動作と、
前記基部及び前記第1可動片とで前記毛片を保持したまま前記鉗子を前記第1ループから引き抜く第1引き抜き動作と、
前記基部及び前記第1可動片で前記毛片を保持したまま前記鉗子を前記第1ループの側方に移動させて、前記基部及び前記第1可動片で保持している前記毛片を前記第1ループで折り返して少なくとも第2ループを形成し、前記第2ループの中に前記鉗子の前記第2可動片を挿入する第2ループ形成動作と、
前記毛髪の少なくとも1本の前記毛片を前記基部及び前記第2可動片により保持するとともに、前記基部及び前記第1可動片で保持している前記毛片を離して、前記毛片を持ち替える第2毛片保持動作と、
前記基部及び前記第2可動片で前記毛片を保持したまま前記鉗子を前記第2ループから引き抜いて、前記毛髪に前記結び目を形成する第2引き抜き動作と、
を実行する、請求項1~5のいずれか1項に記載の植毛装置。
【請求項7】
前記第1毛片保持動作と前記第1引き抜き動作と前記第2ループ形成動作とでは、
前記基部及び前記第1可動片によって前記毛髪を遊動自在に保持する、
請求項6に記載の植毛装置。
【請求項8】
前記第2毛片保持動作と前記第2引き抜き動作とでは、
前記基部及び前記第2可動片によって前記毛髪を挟持する、
請求項6又は7に記載の植毛装置。
【請求項9】
かつらベースに毛髪を植毛する植毛装置を用いたかつらの製造方法であって、
前記植毛装置のベース保持機構によって前記かつらベースを保持する、かつらベース保持工程と、
前記植毛装置における、第1端部把持部及び第2端部把持部を備えるチャック機構によって、前記かつらベースに植毛する前記毛髪の一方の毛片を前記第1端部把持部で把持するとともに、前記毛髪の他方の毛片を前記第2端部把持部で把持する、把持工程と、
前記植毛装置の鉤針機構によって、前記第1端部把持部及び前記第2端部把持部で保持された毛髪をU字状に2つ折りにして、前記ベース保持機構に保持された前記かつらベースの一方の面側から他方の面側へと導き、前記毛髪を前記かつらベースの線状部で折り返し、前記かつらベースの他方の面側から一方の面側へ、U字状に2つ折りした前記毛髪を引き出す、引き出し工程と、
前記植毛装置のループ保持機構によって、前記鉤針機構で前記かつらベースの一方の面側に引き出された、前記毛髪のU字状の第1ループを広げ、前記第1ループを保持する第1ループ保持工程と、
前記植毛装置の鉗子機構に設けられた鉗子によって、前記第1ループを有する前記毛髪に結び目を形成して、前記毛髪を前記かつらベースに植毛する植毛工程と、
を備え、
前記植毛工程で用いる前記鉗子は、
棒状の基部と、
前記基部に対して開閉自在に設けられ、前記基部との間に前記毛髪を挟んで保持可能な第1可動片と、
前記基部を介在して前記第1可動片と対向する位置に、前記第1可動片と独立して前記基部に対して開閉自在に設けられ、前記基部との間に前記毛髪を挟んで保持可能な第2可動片と、
を備え、
前記植毛工程は、
前記鉗子機構によって、前記鉗子を所定位置に移動させつつ、
前記基部及び前記第1可動片で前記毛片を保持する動作と、前記基部及び前記第1可動片で保持している前記毛片を離して、前記基部及び前記第2可動片で新たに前記毛片を保持して前記毛片を持ち替える動作と、を選択的に行い、前記かつらベースに前記毛髪を植毛してゆく、
かつらの製造方法。
【請求項10】
前記植毛工程では、
前記ループ保持機構により形成された前記毛髪の前記第1ループの中に前記鉗子の先端を挿入した後、前記毛髪の少なくとも1本の毛片を前記基部及び前記第1可動片により保持する第1毛片保持動作と、
前記基部及び前記第1可動片とで前記毛片を保持したまま前記鉗子を前記第1ループから引き抜く第1引き抜き動作と、
前記基部及び前記第1可動片で前記毛片を保持したまま前記鉗子を前記第1ループの側方に移動させて、前記基部及び前記第1可動片で保持している前記毛片を前記第1ループで折り返して少なくとも第2ループを形成し、前記第2ループの中に前記鉗子の前記第2可動片を挿入する第2ループ形成動作と、
前記毛髪の少なくとも1本の前記毛片を前記基部及び前記第2可動片により保持するとともに、前記基部及び前記第1可動片で保持している前記毛片を離して、前記毛片を持ち替える第2毛片保持動作と、
前記基部及び前記第2可動片で前記毛片を保持したまま前記鉗子を前記第2ループから引き抜いて、前記毛髪に前記結び目を形成する第2引き抜き動作と、
を実行する工程を含む、
請求項9に記載のかつらの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらベースに毛髪を植毛する植毛装置、及び、植毛装置を用いたかつらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かつらは、頭部の形状や頭部を覆う範囲等に応じて形成されたかつらベースに、天然毛髪や人工毛髪等の毛髪を植毛することで作製される。かつらベースは、繊維部材でなる線状部により、網目状に形成されている。このような、かつらベースの線状部に毛髪を結着する場合には、例えば、特許文献1に示すように、1つの鈎針を備えた鉗子を使用して、毛髪にループを形成したり、或いは、ループ内から毛髪を引き抜いたりして毛髪に結び目を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すように、鉗子の先端部にある1つの鈎針だけを用いて作業者が手作業でかつらベースに毛髪を1本1本植毛してゆくことは、作業者への負担が大きいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、毛髪をかつらベースに植毛してゆく際の作業者の負担を軽減できる植毛装置、及び、植毛装置を用いたかつらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の植毛装置は、かつらベースに毛髪を植毛する植毛装置であって、前記かつらベースを保持するベース保持機構と、前記かつらベースに植毛する前記毛髪の一方の毛片を把持する第1端部把持部と、前記毛髪の他方の毛片を把持する第2端部把持部とを有するチャック機構と、前記第1端部把持部及び前記第2端部把持部で保持された毛髪をU字状に2つ折りにして、前記ベース保持機構に保持された前記かつらベースの一方の面側から他方の面側へと導き、前記かつらベースの線状部で折り返し、前記かつらベースの他方の面側から一方の面側へ、U字状に2つ折りした前記毛髪を引き出す鉤針機構と、前記鉤針機構で前記かつらベースの一方の面側に引き出された、前記毛髪のU字状の第1ループを広げ、前記第1ループを保持するループ保持機構と、鉗子を用いて、前記第1ループを有する前記毛髪に結び目を形成して、前記毛髪を前記かつらベースに植毛する鉗子機構と、を備え、前記鉗子機構に設けられた前記鉗子は、棒状の基部と、前記基部に対して開閉自在に設けられ、前記基部との間に前記毛髪を挟んで保持可能な第1可動片と、前記基部を介在して前記第1可動片と対向する位置に、前記第1可動片と独立して前記基部に対して開閉自在に設けられ、前記基部との間に前記毛髪を挟んで保持可能な第2可動片と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、鉗子機構によって、鉗子を所定位置に移動させつつ、基部及び第1可動片で毛片を保持したまま、基部及び第2可動片でも毛片を保持する動作や、基部及び第2可動片で毛片を保持したまま、基部及び第1可動片でも毛片を保持する動作を選択的に行うことで、かつらベースに毛髪を自動的に植毛してゆくことができる。よって、従来のように、作業者自身が鉗子を保持して当該鉗子で毛髪を1本1本かつらベースに植毛してゆく作業が不要となり、その分、毛髪をかつらベースに植毛してゆく際の作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の植毛装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1のZ軸方向から見たときの植毛装置の構成を示す概略図である。
【
図5】ループ保持機構の第1係止可動片及び第2係止可動片を開状態にしたときの構成を示す概略図である。
【
図8】鉗子の第1可動片及び第2可動片の開閉状態を変えたときの様子を示す概略図である。
【
図9】鉤針により第1ループを毛髪に形成する際の動作(1)を説明するための概略図である。
【
図10】鉤針により第1ループを毛髪に形成する際の動作(2)を説明するための概略図である。
【
図11】鉤針により第1ループを毛髪に形成する際の動作(3)を説明するための概略図である。
【
図12】ループ保持機構によって毛髪の第1ループを広げる際の動作(1)を説明するための概略図である。
【
図13】ループ保持機構によって毛髪の第1ループを広げる際の動作(2)を説明するための概略図である。
【
図14】ループ保持機構によって毛髪の第1ループを広げる際の動作(3)を説明するための概略図である。
【
図15】「パンダブル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(1)を説明するための概略図である。
【
図16】「パンダブル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(2)を説明するための概略図である。
【
図17】「パンダブル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(3)を説明するための概略図である。
【
図18】「パンダブル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(4)を説明するための概略図である。
【
図19】「シングルパンシングル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(1)を説明するための概略図である。
【
図20】「シングルパンシングル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(2)を説明するための概略図である。
【
図21】「シングルパンシングル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(3)を説明するための概略図である
【
図22】「ダブルシングル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(1)を説明するための概略図である。
【
図23】「ダブルシングル植え」により毛髪を植毛するときの鉗子の動作(2)を説明するための概略図である。
【
図24】他の実施形態に係る、基部と第1可動片と第2可動片の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(1)本実施形態に係る植毛装置の構成
図1及び
図2は、本実施形態に係る植毛装置1の全体構成を示した概略図である。
図1及び
図2では、水平面内で互いに直交する二方向をX軸方向及びZ軸方向とし、X軸方向を前後方向、Z軸方向を幅方向とする。また、X軸方向及びZ軸方向と直交する鉛直方向をY軸方向とする。
【0011】
植毛装置1は、当該植毛装置1を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)構成の制御部6に対して、ベース保持機構2とチャック機構3とループ保持機構4と鉗子機構5と鉤針機構7とが接続された構成を有する。制御部6は、図示しない操作部を介して入力される各種命令に応じて、制御部6内のROM(Read Only Memory)(図示せず)に予め格納されている植毛動作プログラム等の各種プログラムを読み出して制御部6内のRAM(Random Access Memory)(図示せず)上で展開することにより、これら各種プログラムに従って植毛装置1全体を制御し、各種機能を実現する。
【0012】
本実施形態に係る植毛装置1では、ベース保持機構2の中心部に鉤針機構7が配置されており、ベース保持機構2を中心にしてベース保持機構2の周囲に、チャック機構3とループ保持機構4と鉗子機構5とが配置されている。本実施形態に係る植毛装置1は、鉗子機構5がベース保持機構2を挟んでチャック機構3に対して対向配置されている。また、植毛装置1では、ループ保持機構4が鉗子機構5の上方に配置されており、当該ループ保持機構4がベース保持機構2を挟んでチャック機構3に対して対向配置されている。
【0013】
植毛装置1は、天然毛髪又は人工毛髪等の毛髪(図示せず)を植毛してゆくかつらベースBがベース保持機構2に載置され、制御部6による制御によって、ベース保持機構2と、チャック機構3と、ループ保持機構4と、鉗子機構5と、鉤針機構7とを予め設定した所定の軌跡で動作させることにより、かつらベースBの線状部に毛髪を1本1本結び付けてゆき、かつらベースBに複数の毛髪を順次植毛してゆく。
【0014】
(2)ベース保持機構
次にベース保持機構2について説明する。ベース保持機構2は、かつらベースBが載置される円環状の台座22a,22bを有しており、台座22a,22bの中心部が同軸上に位置するように台座22aの上方に台座22bが配置されている。下方に位置する台座22aは、上方の台座22bよりも外径が大きく形成され、かつら使用者の頭部の形状に合わせて形成した球冠状又は半球状のかつらベースBが、台座22a,22bを覆うように載置される。この際、下方に位置する台座22aは、上方の台座22bよりも外径が大きく形成されていることから、かつらベースBの開口末端を広げて球冠状又は半球状に保持し得る。
【0015】
また、ベース保持機構2は、制御部6に接続された台座駆動部21を有しており、当該制御部6からの動作命令に応じて台座駆動部21が台座22aを水平面内のX軸方向及びZ軸方向に移動させる。これにより、台座駆動部21は、上方の台座22b上に広がったかつらベースBをX軸方向及びZ軸方向に移動させ、後述する鉤針23がかつらベースBに挿通する挿通位置を調整し得る。
【0016】
(3)鉤針機構
次に鉤針機構7について説明する。鉤針機構7は、ベース保持機構2の台座22a,22bの中空空間内に配置された、Y軸方向に沿って延びる鉤針23と、当該鉤針23をY軸方向に移動させる鉤針駆動部24と、が設けられている。鉤針駆動部24は、制御部6に接続されており、当該制御部6からの動作命令に応じて鉤針23をY軸方向に沿って上昇又は下降させる。なお、鉤針23の形状等の構成については後述する。
【0017】
鉤針23は、鉤針駆動部24によりY軸方向に沿って下降することにより、鉤針先端が上方側の台座22bよりも下方に移動し、台座22b上に載置されたかつらベースBに挿通されることなく、鉤針先端がかつらベースBの下方に位置する。これにより、ベース保持機構2では、台座駆動部21により下方の台座22aを移動させた際に、鉤針23が妨げとならずに、上方の台座22bにおいて、鉤針23が挿通されるかつらベースBの挿通位置を変更させることができる。
【0018】
鉤針23は、かつらベースBの下方に鉤針先端が位置した状態から、鉤針駆動部24によりY軸方向に沿って上昇することにより、かつらベースBに挿通し得る。
【0019】
このように、鉤針機構7は、鉤針23のかつらベースBへの挿通と、挿通した鉤針23のかつらベースBからの引き抜きとを実行し、ベース保持機構2によってかつらベースBが移動されることで、かつらベースBに対する鉤針23の挿通位置が決められる。
【0020】
なお、本実施形態においては、鉤針23のX軸方向及びZ軸方向における位置を固定し、ベース保持機構2によりかつらベースBをX軸方向及びZ軸方向に移動させることにより、かつらベースBに対する鉤針23の挿通位置を調整するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、ベース保持機構2にかつらベースBを固定し、鉤針機構7により鉤針23をX軸方向及びZ軸方向に移動させることにより、かつらベースBに対する鉤針23の挿通位置を調整するようにしてもよい。
【0021】
(4)チャック機構
次にチャック機構3について説明する。
図3に示すように、チャック機構3は、基台31上にY軸方向に延びる対の支柱31a,31bが並走して立設されており、各支柱31a,31bにそれぞれX軸方向に延びる棒状の支持部32a,32bが設けられている。支持部32a,32bの先端には、後述する保持機構33a,33bが設けられている。
【0022】
一方の保持機構33aには、毛髪の一方の端部(毛片とも称する)を摘まんで保持可能な第1端部把持部34aが設けられており、他方の保持機構33bには、毛髪の他方の端部(毛片とも称する)を摘まんで保持可能な第2端部把持部34bが設けられている。本実施形態に係る保持機構33a,33bも同一構成を有することから、ここでは、主に保持機構33aに着目して以下説明する。また、本実施形態に係る第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bは同一構成を有することから、ここでは、主に第1端部把持部34aに着目して以下説明する。
【0023】
保持機構33aには、X軸方向に第1端部把持部34aを移動させるための前後シリンダ311と、水平面内においてX軸方向と直交するZ軸方向に沿って第1端部把持部34aを移動させるための左右シリンダ312と、Y軸方向に第1端部把持部34aを移動させるための上下シリンダ313と、が設置部35に設けられている。
【0024】
保持機構33aは、これら前後シリンダ311、左右シリンダ312及び上下シリンダ313が制御部6に接続されており、制御部6から動作命令に応じて、前後シリンダ311により第1端部把持部34aを前後方向となるX軸方向に沿って移動させ、左右シリンダ312により第1端部把持部34aを左右方向となるZ軸方向に沿って移動させ、上下シリンダ313により第1端部把持部34aを上下方向となるY軸方向に沿って移動させる。
【0025】
第1端部把持部34aは、第1把持片316及び第2把持片317を有しており、制御部6からの動作命令に応じて開閉シリンダ314により第1把持片316及び第2把持片317が開閉動作する。この場合、第1把持片316及び第2把持片317は、棒状に形成され、閉状態のときに、先端部が互いに密着して1本の毛髪を把持し得る。また、第1把持片316及び第2把持片317は、開状態となることで、先端部に把持していた毛髪を離し得る。
【0026】
これにより、チャック機構3は、前後シリンダ311、左右シリンダ312及び上下シリンダ313により、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bの前後左右上下の位置をそれぞれ個別に調整し、所定位置にある毛髪を把持可能な位置にまで第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bを移動させることができる。また、チャック機構3は、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bの第1把持片316及び第2把持片317を開閉動作させて毛髪を把持し得、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bの位置をそれぞれ調整することで、毛髪を直線状に保持したり、毛髪の一方の毛片と他方の毛片を隔離して配置したり、毛髪の一方の毛片と他方の毛片を近接して配置したりすることができる。
【0027】
(5)ループ保持機構
次にループ保持機構4について説明する。
図4に示すように、ループ保持機構4は、毛髪に形成された第1ループ(後述する)を広げて当該第1ループの中空状のループ内領域を保持する開閉係止部42と、毛髪に対して開閉係止部42の位置を調整する可動部41とを有する。
【0028】
可動部41には、支持部411に設けられた上下可動部412と、当該上下可動部412の下端部4121に設けられた前後可動部413と、当該前後可動部413に固定部415を介して設けられた回動部416と、が設けられている。支持部411は、支柱状に形成されており、長手方向に沿って形成された凸状の第1案内部4111に上下可動部412の凹状の第2案内部4122が嵌め込まれ、第1案内部4111に沿って支持部411の長手方向に上下可動部412がスライド自在に設けられている。
【0029】
上下可動部412は、制御部6に接続された構成を有し、制御部6からの動作命令に応じて上下方向にスライド移動し、鉤針23に係止された毛髪の高さ位置等の所定位置に、後述する開閉係止部42を位置決めし得る。
【0030】
前後可動部413は、上下可動部412の下端部4121に、上下可動部412のスライド方向と直交する方向に沿ってスライド自在に設けられている。前後可動部413は、制御部6に接続された構成を有し、制御部6からの動作命令に応じて前後方向にスライド移動し、鉤針23に係止された毛髪の位置等の所定位置に、開閉係止部42を位置決めし得る。
【0031】
前後可動部413の先端には、回動部416が固定された固定部415が設けられている。回動部416は、前後可動部413のスライド方向を軸方向として、当該軸方向を中心に360度回動可能に固定部415に設けられている。回動部416は、制御部6に接続された構成を有し、制御部6からの動作命令に応じて所定方向に向けて所定角度回動し、鉤針23に係止された毛髪の状態に合わせて、開閉係止部42を回動させ得る。
【0032】
回動部416には、固定部415に回動自在に設けられた一端部と対向する他端部に、開閉係止部42が固定されている。開閉係止部42は、第1係止片418aと、第2係止片418bと、これら第1係止片418a及び第2係止片418bを開閉自在に動作させる開閉可動部417とを有する。
【0033】
この場合、開閉可動部417は、第1係止片418a及び第2係止片418bの根本部が回動自在に設けられており、第1係止片418a及び第2係止片418bの先端部を近づける方向、及び、当該先端部を遠ざける方向に移動させる。開閉可動部417は、制御部6に接続された構成を有し、制御部6からの動作命令に応じて、第1係止片418a及び第2係止片418bの根本部を回動させ、第1係止片418a及び第2係止片418bの先端部を密着させた閉状態、又は、先端部を離した開状態とさせる。
【0034】
第1係止片418a及び第2係止片418bは、
図5に示すように、左右対称でなり、平坦状の尖鋭端部を有した先端部419a,419bを有する。先端部419a,419bには、閉状態のときに当接する当接面421が内側面に形成されている。また、先端部419a,419bは、尖鋭端部近傍の外側面に根元外方側に山部が向いた、かえし状の係止部420が形成されている。
【0035】
第1係止片418a及び第2係止片418bは、閉状態で先端部419a,419bの係止部420を、毛髪の第1ループに係止させ、この状態のまま開状態となることで、第1ループのループ内領域を広げることができる。
【0036】
(6)鉗子機構
次に鉗子機構5について説明する。
図6に示すように、鉗子機構5は、鉗子52と、鉗子52を所定の位置に移動させる鉗子可動部51とを有する。鉗子可動部51は、基台511と、基台511の上端部に一端部が水平面において回動自在に設けられた第1アーム部512と、第1アーム部512の他端部に一端部が鉛直面において回動自在に設けられた第2アーム部513と、第2アーム部513の他端部に一端部が鉛直面において回動自在に設けられた第3アーム部514と、第3アーム部514の他端部に一端部が鉛直面において回動自在に設けられている第4アーム部515とを有する。
【0037】
第4アーム部515には、第3アーム部514と連結した一端部の回動面に対して直角に位置する他端部の回動面を有しており、当該他端部の回動面に鉗子52が回動自在に設けられている。第4アーム部515は、第3アーム部514に対して一端部が回動することで、他端部に設けられた鉗子52の向きを上方から下方、又は、下方から上方へと変える。
【0038】
鉗子機構5は、制御部6からの動作命令に応じて、これら第1アーム部512、第2アーム部513、第3アーム部514及び第4アーム部515を所定の軌跡で前後左右上下に移動させてゆき、毛髪に対して鉗子を所定位置に移動させてゆく。
【0039】
次に鉗子52の構成について説明する。
図7の7Aは、鉗子52を所定の一方向側から見たときの構成を示す斜視図であり、
図7の7Bは、鉗子52を他方向側から見たときの構成を示す斜視図である。
【0040】
図7の7A及び7Bに示すように、鉗子52は、支持基板520の両側面にそれぞれ固定板5211が設けられており、一方の固定板5211に第1回動シリンダ521aが設けられ、他方の固定板5211に第2回動シリンダ521bが設けられている。第1回動シリンダ521aは、第1ロッド5212を進退させることにより、第1ロッド5212の先端に設けられた連結部5125及び第2ロッド5122を介して第1回動支持部5123aを回動させる。
【0041】
第1回動支持部5123aは、L字状の板材からなり、角部中心部を支点5124として支持基板520に回動自在に設けられている。第1回動支持部5123aは、一端部に第2ロッド5122が回動自在に設けられ、他端部に第1可動片54が固定されており、第1回動シリンダ521aにより第2ロッド5122が進退することで支点5124を中心に回動し、他端部の第1可動片54を基部53に対して開閉動作させる。
【0042】
第2回動シリンダ521bは、第1ロッド5212を進退させることにより、第1ロッド5212の先端に設けられた連結部5125及び第2ロッド5122を介して、支点5124を回動軸として第2回動支持部5123bを回動させる。なお、第2回動支持部5123bは第1回動支持部5123aと同一構成を有することからここではその説明は省略する。第2回動支持部5123bは、第2回動シリンダ521bにより第2ロッド5122が進退して支点5124を中心に回動することで、他端部の第2可動片55を基部53に対して開閉動作させる。
【0043】
これら支持基板520、固定板5211、連結部5125、第1ロッド5212、第2ロッド5122、第1回動支持部5123a及び第2回動シリンダ521bは、例えば、アルミニウムやステンレス、チタン、鉄等の金属材料により形成されている。
【0044】
鉗子52は、基部53と、基部53に沿って設けられた第1可動片54と、同じく基部53に沿って設けられた第2可動片55と、が支持基板520の先端に設けられている。本実施形態の場合、これら基部53、第1可動片54及び第2可動片55は、例えば、アルミニウムやステンレス、チタン、鉄等の金属材料により棒状に形成されている。
【0045】
基部53は、例えば、直線状に延びた四角支柱状に成形されており、固定部530を介して支持基板520に固定されている。また、基部53は、後述する第1可動片54が閉状態のときに一方の第1側面531に第1可動片54が当接し、後述する第2可動片55が閉状態のときに、当該第1側面531と対向した他方の第2側面532に第2可動片55が当接する。
【0046】
第1可動片54は、直線状に延びた四角支柱状に成形されているとともに、基部53の第1側面531と当接する内面のうち、先端部近傍に凹部541が形成されている。
図8の8A及び8Cに示すように、第1可動片54は、第1回動シリンダ521aにより第2ロッド5122が進退することで、第1回動支持部5123aが回動して、先端が開閉可能な構成を有している。
【0047】
この場合、第1可動片54は、
図8の8Aに示すように、第1回動シリンダ521aにより第1ロッド5212が鉗子52の先端側に向かう方向CLに向けて前進すると、第1回動支持部5123aが回動して、先端部が基部53に近づく方向に回動する。かくして、第1可動片54は、基部53に対向する内面と、基部53の第1側面531と、が当接し、凹部541によって基部53との間に中空領域となる保持領域ER1が形成されて閉状態となる。ここで、第1可動片54は、先端部分の内面が基部53の第1側面531の形状に合わせて平坦状に形成されており、閉状態になったとき、先端部分の内面が基部53の第1側面531に隙間なく密着し、凹部541及び基部53の間に形成された保持領域ER1が外空間と非連通状態となる。
【0048】
一方、第1可動片54は、
図8の8Cに示すように、第1回動シリンダ521aにより第1ロッド5212が鉗子52の根本側に向かう方向OPに向けて後退すると、第1回動支持部5123aが回動して、先端部が基部53から遠ざかる方向に回動する。かくして、第1可動片54は、基部53に対向する内面が、基部53の第1側面531から離れ、凹部541によって基部53との間に形成されていた中空領域である保持領域ER1が外空間と連通した開状態となる。
【0049】
第2可動片55は、直線状に延びた四角支柱状からなり、基部53の第2側面532に当接する内面が、基部53の第2側面532の形状に合わせて平坦状に形成されている。
図8の8A及び8Bに示すように、第2可動片55は、第2回動シリンダ521bにより第2ロッド5122(
図7)が進退することで、第2回動支持部5123bが回動して、先端が開閉可能な構成を有している。
【0050】
この場合、第2可動片55は、
図8の8Aに示すように、第2回動シリンダ521bにより第2ロッド5122が鉗子52の先端側に向かう方向CLに向けて前進すると、第2回動支持部5123bが回転して、先端部が基部53に近づく方向に回動する。かくして、第2可動片55は、基部53に対向する内面と、基部53の第2側面532と、が隙間なく密着して閉状態となる。
【0051】
一方、第2可動片55は、
図8の8Bに示すように、第2回動シリンダ521bにより第1ロッド5212が鉗子52の根本側に向かう方向OPに向けて後退すると、第2回動支持部5123bが回転して、先端部が基部53から遠ざかる方向に回動する。かくして、第2可動片55は、基部53に対向する内面が、基部53の第2側面532から離れた開状態となる。
【0052】
鉗子52は、制御部6からの動作命令に応じて、第1回動シリンダ521a及び第2回動シリンダ521bを動作させ、植毛動作時、所定のタイミングで第1可動片54及び第2可動片55を開閉動作させる。
【0053】
(7)植毛装置による毛髪の植毛動作例
(7-1)ループ形成動作
次に、制御部6からの動作命令により、ベース保持機構2、チャック機構3、ループ保持機構4及び鉤針機構7を制御して毛髪に第1ループを形成するループ形成動作について、
図9から
図14を用いて、以下説明する。なお、
図9から
図14において、Y1はY軸方向における上方向を示し、Y2はY軸方向における下方向を示す。Z1はZ軸方向における右方向を示し、Z2はZ軸方向における左方向を示す。また、X1はX軸方向における前方向を示し、X2はX軸方向における後方向を示す。
【0054】
鉤針機構7(
図1)は、制御部6からの動作命令に応じて、鉤針23により毛髪Mを補足する補足動作を実行する。この場合、鉤針機構7は、始めに、鉤針駆動部24により鉤針23を下降させ、かつらベースBの下方に鉤針23を配置させている。鉤針機構7は、鉤針23をY1方向に上昇させることにより、
図9に示すように、かつらベースBの線状部Ba間の開口部H1に鉤針23を挿通させる。これにより、鉤針23は、表面に形成されている係止切欠部231(後述する)が、かつらベースBの一方の面側(表面側)に配置され、鉤針23の係止切欠部231によって毛髪Mを補足可能な状態とする。
【0055】
ここで、鉤針23は、尖鋭な針状であって外周面の一部領域に凹状の係止切欠部231が形成されており、当該係止切欠部231の下端部にかえし状の鉤部232が形成されているとともに、当該係止切欠部231の上端部にかえし状の鉤部233が形成されている。鉤針23は、係止切欠部231の上端部の鉤部233が上側に湾曲して凹んでおり、鉤針23の軸方向と直交するZ軸方向に沿って延びた毛髪Mが、係止切欠部231の背面側から当該係止切欠部231の鉤部233内に位置決めされ、直線状に延びた毛髪Mが当該背面側に引かれることで係止切欠部231の上部の鉤部233に毛髪Mが係止可能な構成を有する。
【0056】
チャック機構3は、制御部6からの動作命令に応じて、
図9に示すように、第1端部把持部34aの第1把持片316及び第2把持片317で毛髪Mの一方の毛片Maを把持し、第2端部把持部34bの第1把持片316及び第2把持片317で毛髪Mの他方の毛片Mbを把持して第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bの間に当該毛髪Mを直線状に張架させる。そして、チャック機構3は、前後シリンダ311、左右シリンダ312及び上下シリンダ313により第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bの前後左右上下の位置を調整し、かつらベースBの表面側に配置された鉤針23の係止切欠部231(上部の鉤部233)に、直線状に張架させた毛髪Mを係止させる。
【0057】
次いで、鉤針機構7は、
図10の10A及び10Bに示すように、係止切欠部231に毛髪Mを係止させたまま鉤針23を下降させ、鉤針23を通していたかつらベースBの開口部H1から鉤針23を引き出す。これにより、鉤針機構7は、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bで保持されている毛髪Mを、鉤針23によってU字状に2つ折りにして、かつらベースBの開口部H1を通し、かつらベースBの一方の面側(表面側)から他方の面側(裏面側)へと毛髪Mを突き通す。
【0058】
次いで、ベース保持機構2は、台座駆動部21によって台座22aを後方向(X1方向)に移動させることによりかつらベースBを移動させ、毛髪Mを通したかつらベースBの開口部H1と隣接した開口部H2の下方に鉤針23を位置させる。
【0059】
次いで、
図11の11A及び11Bに示すように、鉤針機構7は、鉤針23に毛髪Mを係止させたまま鉤針23を上昇させることにより、当該毛髪Mを係止切欠部231の下端部にある鉤部232に係止させ、鉤部232に毛髪Mを係止させたまま鉤針23をかつらベースBの新たな開口部H2に突き通す。
【0060】
これにより、鉤針機構7は、鉤針23でU字状に2つ折りした毛髪Mを、かつらベースBの線状部Baで折り返し、毛髪MをかつらベースBの他方の面側(裏面側)から一方の面側(表面側)へと引き戻し、U字状に2つ折りした毛髪MをかつらベースBの表面側に引き出す。このようにして、植毛装置1は、逆U字状の第1ループR1を有した毛髪Mを、かつらベースBの表面に形成する。
【0061】
次いで、ループ保持機構4は、制御部6からの動作命令に応じて、第1係止片418aの先端部419aと、第2係止片418bの先端部419bとを密着させた閉状態とし、可動部41を動かし、
図12の12A及び12Bに示すように、第1係止片418a及び第2係止片418bの先端部419a,419bを、毛髪Mの第1ループR1内に挿通させる。
【0062】
次いで、ループ保持機構4は、第1係止片418a及び第2係止片418bを可動部41により移動させ、第1係止片418a及び第2係止片418bの先端部419a,419bにおける係止部420に、毛髪Mの第1ループR1を係止させる。次いで、
図13の13Aに示すように、ループ保持機構4は、毛髪Mの第1ループR1を係止させた第1係止片418a及び第2係止片418bを、鉤針23から遠ざける方向に移動させることにより、毛髪Mの第1ループR1を鉤針23から係止解除する。その後、ベース保持機構2は、
図13の13Bに示すように、鉤針23を下降させ、かつらベースBの開口部H2から鉤針23を引き抜く。
【0063】
次に、ループ保持機構4は、
図14の14Aに示すように、制御部6からの動作命令に応じて回動部416を回転させることにより、毛髪Mの第1ループR1内で第1係止片418a及び第2係止片418bを回転させ、先端部419a,419bの平坦面を、かつらベースBの表面に並走させるように位置させる。次いで、ループ保持機構4は、
図14の14Bに示すように、第1係止片418a及び第2係止片418bを互いに離す方向に移動させて開状態とさせることにより、毛髪Mの第1ループR1のループ内領域を広げる。
【0064】
以上のようにして、植毛装置1では、ベース保持機構2、チャック機構3、ループ保持機構4及び鉤針機構7を制御し、第1ループR1のループ内領域を広げた毛髪Mを形成するループ形成動作を終了する。
【0065】
(7-2)結び目形成動作
次に、植毛装置1により第1ループR1を形成した毛髪Mに結び目を形成してかつらベースBに毛髪Mを植毛する、結び目形成動作について説明する。ここでは、植毛装置1によって、「パンダブル植え」、「シングルパンシングル植え」及び「ダブルシングル植え」を行う場合についてそれぞれ説明する。
【0066】
(7-2-1)植毛装置による「パンダブル植え」
「パンダブル植え」により毛髪MをかつらベースBの線状部Baに結び付けるときの鉗子機構5の動作について説明する。この場合、
図15の15Aに示すように、チャック機構3とループ保持機構4は、かつらベースBの線状部Baで毛髪Mを折り返して、かつらベースBの一方の面側に形成した毛髪Mの第1ループR1と、毛髪Mの2本の毛片Ma,Mbとを、かつらベースBの一方の面側で対向配置させる(第1ループ形成動作)。
【0067】
この際、チャック機構3は、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bを隔離して配置し、第1端部把持部34aで把持した毛片Maを第1ループR1から遠ざけ、第2端部把持部34bで把持した毛片Mbを第1ループR1に近づける。
【0068】
次いで、鉗子機構5は、第1可動片54と第2可動片55とを閉状態にしたまま、第1ループR1の外側から、第1ループR1に近い毛片Mbに向けて、毛髪Mの第1ループR1内に基部53と第1可動片54と第2可動片55とを挿通させる。
【0069】
次いで、鉗子機構5は、
図15の15Bに示すように、第1可動片54を開状態にし、2本の毛片Ma,Mbのうち、1本の毛片Mbを、基部53及び第1可動片54の間に位置させる。次いで、
図16の16Aに示すように、第1可動片54を閉状態にし、基部53及び第1可動片54の間の保持領域ER1で毛片Mbのみを遊動自在に保持する(第1毛片保持動作)。この際、植毛装置1は、第1端部把持部34aで把持した毛片Maを第1ループR1から遠ざけ、第2端部把持部34bで把持した毛片Mbを第1ループR1に近づけていることから、両方の毛片Ma,Mbを基部53及び第1可動片54で保持することなく、第1ループR1に近い毛片Mbのみを基部53及び第1可動片54により保持し得る。
【0070】
次いで、
図16の16Bに示すように、基部53及び第1可動片54で1本の毛片Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを第1ループR1から引き抜く(第1引き抜き動作)。これにより、基部53及び第1可動片54で保持した1本の毛片Mbが、第1ループR1の中を通過した状態になる。基部53及び第1可動片54は、1本の毛片Mbを引っ張ることで、毛片MbにU字状の第2ループR2を形成する。
【0071】
次いで、
図17の17Aに示すように、基部53及び第1可動片54で毛片Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを第1ループR1の側方(
図17の17A中の矢印方向)に移動させた後、
図17の17Bに示すように、第1ループR1の中を通らずに第1ループR1の側方を通って、残り1本の他方の毛片Maに向けて、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを移動させる。
【0072】
これにより、基部53及び第1可動片54で保持している毛片Mbが、第1ループR1で折り返され、かつ、基部53及び第2可動片55が挿入された第2ループR2を、第1ループR1の側方に配置する(第2ループ形成動作)。
【0073】
次いで、
図17の17Bに示すように、第2可動片55を開状態にし、基部53及び第1可動片54で保持されていない、残り1本の他方の毛片Maを、基部53及び第2可動片55の間に位置させる。そして、
図18の18Aに示すように、第2可動片55を閉状態にし、基部53及び第2可動片55で毛片Maを挟持し、基部53及び第2可動片55で毛片Maを保持する。
【0074】
また、この際、第1可動片54を開状態にし、基部53及び第1可動片54で保持していた毛片Mbを離して開放する(第2毛片保持動作)。このようにして、鉗子52は、基部53及び第1可動片54で保持していた毛片Mbの第2ループR2を離して、チャック機構3で保持している他の毛片Maに持ち替える。
【0075】
次いで、
図18の18Bに示すように、基部53及び第2可動片55により持ち替えた1本の毛片Maを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを第2ループR2内から引き抜く。これにより、基部53及び第2可動片55に持ち替えた1本の毛片Maを、第2ループR2の中に通過させ、毛片Ma,Mbをチャック機構3で引っ張ることで、「パンダブル植え」による結び目を毛髪Mに形成し、毛髪MをかつらベースBの線状部Baに結着させることができる(第2引き抜き動作)。
【0076】
(7-2-2)植毛装置による「シングルパンシングル植え」
次に、「シングルパンシングル植え」により毛髪MをかつらベースBの線状部Baに結び付けるときの鉗子機構5の動作について説明する。この場合、
図19の19Aに示すように、チャック機構3とループ保持機構4は、かつらベースBの線状部Baで毛髪Mを折り返して、かつらベースBの一方の面側に形成した毛髪Mの第1ループR1と、毛髪Mの端部である2本の毛片Ma,Mbとを、かつらベースBの一方の面側で対向配置させる(第1ループ形成動作)。
【0077】
この際、チャック機構3は、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bを近接して配置し、第1端部把持部34aで把持した毛片Maと、第2端部把持部34bで把持した毛片Mbとを並走させて、毛片Ma,Mbの両方を第1ループR1に近づける。
【0078】
次いで、第1可動片54及び第2可動片55を閉状態にしたまま、第1ループR1の外側から、2本の毛片Ma,Mbに向けて、第1ループR1の中に基部53と第1可動片54と第2可動片55とを挿通する。次いで、2本の毛片Ma,Mb両方を、基部53及び第1可動片54の間の保持領域ER1で保持する(第1毛片保持動作)。
【0079】
この際、植毛装置1は、第1端部把持部34aで把持した毛片Maと、第2端部把持部34bで把持した毛片Mbとの両方を隣接させ並走させた状態で第1ループR1に近づけていることから、両方の毛片Ma,Mbを基部53及び第1可動片54で確実に保持し得る。
【0080】
次いで、
図19の19Bに示すように、基部53及び第1可動片54で2本の毛片Ma,Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを第1ループR1から引き抜く(第1引き抜き動作)。これにより、基部53及び第1可動片54で保持した2本の毛片Ma,Mbが、第1ループR1の中を通過した状態になる。
【0081】
この際、基部53及び第1可動片54は、2本の毛片Ma,Mbを引っ張ることで、毛片MbにU字状の第2ループR2を形成するとともに、毛片MaにU字状の第3ループR3を形成する。
【0082】
次いで、基部53及び第1可動片54で毛片Ma,Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを、第1ループR1の側方(
図19の19B中の手前に向かう矢印方向)に移動させた後、
図20に示すように、第1ループR1の中を通さずに第1ループR1の側方を通って、本の毛片Maに向けて基部53と第1可動片54と第2可動片55とを移動させる。
【0083】
これにより、基部53及び第1可動片54で保持している毛片Ma,Mbが、第1ループR1で折り返され、かつ、第1ループR1の側方に配置された第2ループR2及び第3ループR3に、基部53及び第2可動片55を挿入する(第2ループ形成動作)。
【0084】
次いで、第2可動片55を開状態にし、基部53及び第2可動片55の間に1本の毛片Maを位置させる。なお、この際、チャック機構3は、基部53及び第2可動片55の間に1本の毛片Maのみを位置させるようにするため、当該毛片Maを保持した第1端部把持部34aを所定位置に移動させることが望ましい。
【0085】
また、この際、植毛装置1では、第1端部把持部34aで保持した毛片Maを、第2ループR2及び第3ループR3から隔離して配置し、かつ、基部53及び第2可動片55の間に当該毛片Maが位置するように毛片Maを支持する誘導軸70を設けることが望ましい。この場合、誘導軸70は、棒状に形成されており、例えば、
図19の19Bに示すように、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを第1ループR1から引き抜く際に、第1端部把持部34aと第1ループR1との間において、毛片Maの下方側に挿入する。次いで、例えば、毛片Maを把持した第1端部把持部34aがかつらベースBに向かって移動することで、第1端部把持部34aと誘導軸70との間に毛片Maを延在させることができる。これにより、基部53及び第2可動片55の間に1本の毛片Maのみを位置させ得る。
【0086】
次いで、
図21の21Aに示すように、第2可動片55を閉状態にし、基部53及び第2可動片55で1本の毛片Maを挟持し、基部53及び第2可動片55で毛片Maを保持する。また、この際、第1可動片54を開状態とし、基部53及び第1可動片54で保持していた2本の毛片Ma,Mbの両方を離して開放する(第2毛片保持動作)。このようにして、鉗子52は、基部53及び第1可動片54で保持した毛髪Mの第2ループR2及び第3ループR3を離して、チャック機構3で保持している他の毛片Maに持ち替える。
【0087】
次いで、
図21の21Bに示すように、基部53及び第2可動片55により持ち替えた1本の毛片Maを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを、第2ループR2及び第3ループR3の中から引き抜く。これにより、基部53及び第2可動片55で保持している1本の毛片Maを、第2ループR2及び第3ループR3の中に通過させ、毛片Ma,Mbをチャック機構3で引っ張ることで、「シングルパンシングル植え」による結び目を毛髪Mに形成し、毛髪MをかつらベースBの線状部Baに結着させることができる(第2引き抜き動作)。
【0088】
(7-2-3)植毛装置による「ダブルシングル植え」
次に、「ダブルシングル植え」により毛髪MをかつらベースBの線状部Baに結び付けるときの鉗子機構5の動作について説明する。この場合、上述した「(7-2―2)植毛装置による「シングルパンシングル植え」」と同様、
図19の19A及び19Bに示すように、第1ループ形成動作、第1毛片保持動作及び第1引き抜き動作を経て、基部53及び第1可動片54で2本の毛片Ma,Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを、第1ループR1から引き抜く。
【0089】
その後、
図22に示すように、基部53及び第1可動片54で毛片Ma,Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを、第1ループR1の側方(
図22中の矢印方向)に移動させた後、第1ループR1の中を通さずに第1ループR1の側方を通って、2本の毛片Ma,Mbに向けて基部53と第1可動片54と第2可動片55とを移動させる。
【0090】
これにより、基部53及び第1可動片54で保持している毛片Ma,Mbが、第1ループR1で折り返され、かつ、第1ループR1の側方に配置された第2ループR2及び第3ループR3に、基部53及び第2可動片55を挿入する(第2ループ形成動作)。
【0091】
次いで、第2可動片55を開状態にし、基部53及び第2可動片55の間に2本の毛片Ma,Mbを位置させる。なお、この際、チャック機構3は、基部53及び第2可動片55の間に2本の毛片Ma,Mbを位置させるようにするために、当該毛片Ma,Mbを保持した第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bを所定位置に移動させることが望ましい。
【0092】
また、この際、植毛装置1では、第1端部把持部34aで保持した毛片Maと、第2端部把持部34bで保持した毛片Mbとを、第2ループR2及び第3ループR3から隔離して配置し、かつ、基部53及び第2可動片55の間に2本の毛片Ma,Mbが位置するように毛片Ma,Mbを支持する誘導軸70を設けることが望ましい。この場合、誘導軸70は、棒状に形成されており、例えば、
図19の19Bに示すように、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを第1ループR1から引き抜く際に、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bと、第1ループR1と、の間において、2本の毛片Ma,Mbの下方側に挿入する。次いで、例えば、毛片Maを把持した第1端部把持部34aと、毛片Mbを把持した第2端部把持部34bとが、かつらベースBに向かって移動して誘導軸70よりも下方に配置されることで、第1端部把持部34a及び誘導軸70の間と、第2端部把持部34b及び誘導軸70の間と、に2本の毛片Ma,Mbを延在させることができる。これにより、基部53及び第2可動片55の間に2本の毛片Ma,Mbを位置させ得る。
【0093】
次いで、
図23の23Aに示すように、第2可動片55を閉状態にし、基部53及び第2可動片55で、2本の毛片Ma,Mbを挟持することにより、基部53及び第2可動片55で2本の毛片Ma,Mbの両方を保持する。
【0094】
また、この際、第1可動片54を開状態にし、基部53及び第1可動片54で保持していた2本の毛片Ma,Mbの両方を離して開放する(第2毛片保持動作)。このようにして、鉗子52は、基部53及び第1可動片54で保持していた2本の毛片Ma,Mbの第2ループR2及び第3ループR3を離して、チャック機構3で保持している2本の毛片Ma,Mbに持ち替える。
【0095】
次いで、
図23の23Bに示すように、基部53及び第2可動片55で2本の毛片Ma,Mbを保持したまま、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを、第2ループR2内及び第3ループR3内から引き抜く。これにより、基部53及び第2可動片55で保持している2本の毛片Ma,Mbを、第2ループR2及び第3ループR3の中に通過させ、毛片Ma,Mbをチャック機構3で引っ張ることで、「ダブルシングル植え」による結び目を毛髪Mに形成し、毛髪MをかつらベースBの線状部Baに結着させることができる(第2引き抜き動作)。
【0096】
(8)作用及び効果
以上の構成において、植毛装置1では、チャック機構3の第1端部把持部34aで毛髪Mの一方の毛片Maを把持し、チャック機構3の第2端部把持部34bで毛髪Mの他方の毛片Mbを把持する。また、植毛装置1では、鉤針機構7によって、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bで保持された毛髪MをU字状に2つ折りにして、ベース保持機構2に保持されたかつらベースBの一方の面側(表面側)から他方の面側(裏面側)へと導き、かつらベースBの線状部Baで折り返し、かつらベースBの他方の面側から一方の面側へ、U字状に2つ折りした毛髪Mを引き出す。
【0097】
そして、植毛装置1では、鉤針機構7でかつらベースBの一方の面側に引き出された、毛髪MのU字状の第1ループR1をループ保持機構4で広げて保持し、鉗子機構5によって、第1ループR1を有する毛髪Mに結び目を形成して、毛髪MをかつらベースBに植毛する。
【0098】
ここで、本実施形態に係る鉗子機構5では、基部53と、基部53に対して開閉自在に設けられた第1可動片54と、基部53を介在して第1可動片54と対向する位置に、第1可動片54と独立して基部53に対して開閉自在に設けられた第2可動片55と、を備えた鉗子52を設けるようにしている。
【0099】
鉗子52は、毛髪Mに結び目を形成する際に必要に応じて、基部53及び第1可動片54の間に毛髪Mを挟んで保持し、第1可動片54とは独立して第2可動片55を開閉動作して、基部53及び第2可動片55の間に毛髪Mを挟んで保持する。
【0100】
これにより、鉗子52は、制御部6からの動作命令に応じて、基部53及び第1可動片54で毛片Mbを保持した状態のまま、必要に応じて、基部53及び第2可動片55でも他の毛片Maを保持することができるので、毛髪Mを絡ませずに植毛動作を実行することができる。かくして、鉗子機構5は、鉗子52が移動する軌道と、第1可動片54及び第2可動片55の開閉動作と、を制御することにより、毛髪MをかつらベースBに植毛することができる。
【0101】
また、鉗子52では、かつらベースBの線状部Baに毛髪Mを結び付ける際、第1可動片54及び第2可動片55で保持する毛片Ma,Mbの本数を変えるだけで、「パンダブル植え」、「シングルパンシングル植え」又は「ダブルシングル植え」のいずれの結び方も実現することができる。
【0102】
本実施形態による鉗子52では、第1可動片54に凹部541を設け、植毛動作時に、基部53及び第1可動片54の間に凹部541により保持領域ER1を形成し、当該保持領域ER1で毛髪Mを遊動自在に保持する。例えば、
図17の17A及び17Bに示すように、基部53及び第1可動片54で毛片Mbを保持しながら鉗子52を第1ループR1周辺で適宜移動させる「パンダブル植え」を行う際、鉗子52では、毛片Mbが保持領域ER1内を自由に移動できるので、鉗子52を移動させても、毛片Mbに急激な捻じれが生じることなく、毛片Mbへの負担を低減できる。
【0103】
また、本実施形態による鉗子52では、基部53及び第2可動片55で毛髪Mを挟持する。鉗子52では、第1可動片54と第2可動片55の形状を非対称としつつも、第1可動片54及び第2可動片55のいずれも支柱状に形成している。これにより、鉗子52では、例えば、「パンダブル植え」を行う際、
図17の17B及び
図18の18Bに示すように、第2ループR2内に挿通するとき、第2ループR2に引っ掛からずにスムーズに通過させることができる。
【0104】
さらに、例えば、「パンダブル植え」を行う際、基部53及び第2可動片55により毛片Maを挟持するときには、
図18の18A及び18Bに示すように、毛片Maを挟持した基部53及び第2可動片55を第2ループR2内から単に引き抜くだけであるため、基部53及び第2可動片55により毛片Maを挟持して固定状態で保持しても、毛片Maへの負担が小さいため、毛片Maの損傷を防止できる。
【0105】
また、上述した植毛装置1を用い、かつらベースBに複数の毛髪Mを植毛したかつらを製造する製造方法としては、先ず植毛装置1のベース保持機構2によってかつらベースBを保持する(かつらベース保持工程)。次いで、植毛装置1において第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bを備えるチャック機構3によって、かつらベースBに植毛する毛髪Mの一方の毛片Maを第1端部把持部34aで把持するとともに、当該毛髪Mの他方の毛片Mbを第2端部把持部34bで把持する(把持工程)。
【0106】
そして、植毛装置1の鉤針機構7によって、第1端部把持部34a及び第2端部把持部34bで保持された毛髪MをU字状に2つ折りにして、ベース保持機構2に保持されたかつらベースBの一方の面側から他方の面側へと導き、かつらベースBの線状部Baで折り返し、かつらベースBの他方の面側から一方の面側へ、U字状に2つ折りした毛髪Mを引き出す(引き出し工程)。次いで、植毛装置1のループ保持機構4によって、鉤針機構7でかつらベースBの一方の面側に引き出された、毛髪MのU字状の第1ループR1を広げ、当該第1ループR1を保持する(第1ループ保持工程)。次いで、植毛装置1の鉗子機構5に設けられた鉗子52によって、第1ループR1を有する毛髪Mに結び目を形成して、毛髪MをかつらベースBに植毛する(植毛工程)。
【0107】
そして、本実施形態に係る植毛装置1を用いたかつらの製造方法では、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを備えた鉗子52を植毛工程に用い、当該植毛工程において、鉗子機構5により、鉗子52を所定位置に移動させつつ、(i)基部53及び第1可動片54で毛片Mbを保持する動作と、(ii)基部53及び第1可動片54で保持している毛片Mbを離して、基部53及び第2可動片55で毛片Maを新たに保持して、毛片Mbから毛片Maに持ち替える動作と、を選択的に行い、かつらベースBに毛髪Mを植毛してゆく。
【0108】
以上の構成によれば、鉗子機構5では、鉗子52を所定位置に移動させつつ、基部53及び第1可動片54で毛髪Mの毛片Mbを保持したまま、基部53及び第2可動片55でも毛片Maを保持する動作や、基部53及び第2可動片55で毛片Maを保持したまま、基部53及び第1可動片54でも毛片Mbを保持する動作を選択的に行うことで、かつらベースBに毛髪Mを自動的に植毛してゆくことができる。よって、従来のように、作業者自身が鉗子を保持し当該鉗子で毛髪MをかつらベースBに1本1本植毛してゆく作業が不要となり、その分、毛髪MをかつらベースBに植毛してゆく際の作業者の負担を軽減できる。
【0109】
(9)他の実施形態
なお、本実施形態においては、鉗子機構5がベース保持機構2を挟んでチャック機構3に対して対向配置され、ループ保持機構4が鉗子機構5の上方に配置され、当該ループ保持機構4がベース保持機構2を挟んでチャック機構3に対して対向配置されている構成としたが、本発明はこれに限らず、上述したループ形成動作、第1毛片保持動作、第1引き抜き動作、第2ループ形成動作、第2毛片保持動作及び第2引き抜き動作を実行できれば、チャック機構3、ループ保持機構4及び鉗子機構5を種々の位置に配置させるようにしてもよい。
【0110】
また、上述した実施形態においては、第1可動片54の内面に凹部541を設け、第1可動片54が閉状態のときに基部53と第1可動片54との間に凹部541により中空領域となる保持領域ER1を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、基部53の第1側面531に凹部を設け、内面が平坦状の第1可動片が閉状態のときに基部53と第1可動片との間に当該凹部により中空領域である保持領域ER1を形成するようにしてもよい。また、基部の第1側面531と、第1可動片54の内面との両方に凹部を設けて、第1可動片54が閉状態のときに中空領域たる保持領域ER1を形成するようにしてもよい。
【0111】
また、上述した実施形態においては、四角支柱状に基部53を形成し、基部53と第1可動片54と第2可動片55とを直列に配置させた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、三角支柱状又は台形支柱状に基部を形成し、第1可動片が対向する第1側面と、第2可動片が対向する第2側面とが傾斜した構成としてもよい。
【0112】
例えば、
図24は、基部73を三角支柱状に形成し、第1可動片54が当接する第1側面73aと、第2可動片55が当接する第2側面73bとが、傾いて形成されている鉗子72の構成を示す。より具体的には、第1側面73aと第2側面73bとの角度θは、20度以上120度以下であることが望ましい。
【0113】
第1側面73aと第2側面73bとの角度θを20度以上とすることで、基部73を肉厚に形成でき、基部73の機械的強度を維持し得る。第1側面73aと第2側面73bとの角度θを120度以下とすることで、基部73の幅方向y1の大きさを小さくしつつ、第1可動片54及び第2可動片55を、基部73を介在させて対向配置させることができる。これにより、鉗子72では、幅方向y1における、基部73、第1可動片54及び第2可動片55の配置領域が狭まり、毛片Mbの小さな第1ループR1等でも容易に挿通させることができる。
【0114】
また、上述した実施形態においては、三角支柱状の基部73とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、台形支柱状からなり、第1可動片が対向する第1側面と、第2可動片が対向する第2側面とが傾斜している基部としてもよい。また、上述した実施形態においては、棒状の基部として、四角柱状や五角柱状などの多角柱状の基部を適用してもよい。
【0115】
また、上述した実施形態においては、アクチュエータとして、前後シリンダ311、左右シリンダ312、上下シリンダ313、開閉シリンダ314、第1回動シリンダ521a及び第2回動シリンダ521bを適用したが、制御部6から動作命令に応じて各部を可動させることができれば、例えば、電気モータや、電磁ソレイド等その他種々のアクチュエータを適用してもよい。
【0116】
また、上述した実施形態においては、第1可動片54に凹部541を設け、第2可動片55を平坦状に形成するようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、第1可動片54及び第2可動片55の両方に凹部541を設け、第1可動片54及び第2可動片55の両方に、毛髪Mを保持するための保持領域ER1を有する構成としてもよい。また、第1可動片54及び第2可動片55の両方を平坦状にし、第1可動片54及び第2可動片55の両方で毛髪Mを非遊動に挟持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 植毛装置
2 ベース保持機構
3 チャック機構
4 ループ保持機構
5 鉗子機構
7 鉤針機構
52 鉗子
53 基部
54 第1可動片
55 第2可動片