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特許7355372動釣合い試験機用のコレットおよび動釣合い試験機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】動釣合い試験機用のコレットおよび動釣合い試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/02 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G01M1/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019173417
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050981
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井岡 達哉
(72)【発明者】
【氏名】山上 潤也
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025349(JP,A)
【文献】特開2019-128283(JP,A)
【文献】国際公開第2018/215636(WO,A1)
【文献】実開昭59-093808(JP,U)
【文献】特開平08-019909(JP,A)
【文献】実開昭49-068787(JP,U)
【文献】特開2004-205275(JP,A)
【文献】特開2003-065878(JP,A)
【文献】特開2000-241303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00 - 1/38
B23B 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動釣合い試験機において、中心軸線まわりに回転する回転部であって、前記中心軸線を中心とするテーパー状の外周面を有するテーパー部を有する回転部被試験体を一体回転可能に連結するコレットであって、
前記テーパー部の前記外周面に面接触可能なテーパー状の内周面を有し、被試験体の内周部に内嵌されて当該内周部を把持する円筒状の把持部であって、複数の割溝が前記把持部の周方向に並んで形成され、前記割溝の溝幅の変化に応じて拡縮可能な把持部と、
前記把持部において前記周方向に隣り合う前記割溝の間の部分に1つずつ連結され、前記周方向に並ぶ複数のバネ部であって、前記把持部を拡縮させるために弾性変形可能な複数のバネ部と、
前記把持部に設けられ、前記把持部および前記バネ部を前記回転部に対して回り止めする回り止め部とを含み、
前記回り止め部が、テーパー状の前記内周面に形成されたスリットを含む第1係合部を含む、動釣合い試験機用のコレット。
【請求項2】
請求項1に記載のコレットと、前記コレットが取り付けられて前記中心軸線まわりに前記周方向に回転する前記回転部であって、前記中心軸線を中心とするテーパー状の前記外周面を有する前記テーパー部を有する前記回転部とを含む動釣合い試験機であって、
前記回り止め部は、前記第1係合部を含み、
前記回転部には、前記スリットに差し込まれた突起を含む第2係合部であって、前記周方向において前記第1係合部と係合する第2係合部が設けられている、動釣合い試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動釣合い試験機用のコレット、および、このコレットを含む動釣合い試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、被試験体が固定されたスピンドルを所定速度で回転させることによって当該被試験体の不釣合いを測定する動釣合い試験機と、被試験体をスピンドルに固定するコレットとを開示している。コレットは、被試験体の内周部に嵌め込まれて拡縮可能な円筒部を有する。円筒部は、拡径されることによって被試験体の内周部に圧入される。これにより、被試験体がコレットによって把持されることでスピンドルに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-128283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動釣合い試験機が設置される作業現場では、作業効率向上のために不釣り合い測定のサイクルタイムの短縮が望まれている。サイクルタイムの短縮のためには、動釣合い試験機において被試験体が固定されたスピンドルの回転の加減速時間の短縮が重要である。一方、動釣合い試験機での不釣合い測定のためには、スピンドルの回転速度をある程度の所定速度まで上昇せざるを得ない。この事情を踏まえると、スピンドルの回転の加減速時間を短縮するために、当該所定速度までスピンドルの加速度や、当該所定速度からのスピンドルの減速度を増加させることが考えられる。しかし、スピンドルの加速度や減速度が増加すると、被試験体を把持するコレットには、スピンドルの加減速に伴う大きなトルク負荷が作用する。このようなトルク負荷がコレットに作用した状態において、コレットが被試験体を把持する把持力が足りないと、コレットと被試験体との間で滑りが発生してしまう。滑りの発生を防止するためには把持力が増加させる必要があり、そのためには、コレットが一層拡径して被試験体の内周部に圧入されるようにコレットのバネ定数を下げることが考えられる。しかし、コレットのバネ定数が下がると、前述したトルク負荷によってコレットが捩じれて破損するおそれがある。
【0005】
この発明は、トルク負荷による破損を防止できる動釣合い試験機用のコレット、および、このコレットを含む動釣合い試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、動釣合い試験機(1)において回転する回転部(3)に被試験体(2)を一体回転可能に連結するコレット(4)であって、被試験体の内周部(2A)に嵌められて当該内周部を把持する円筒状の把持部(22)であって、複数の割溝(4A)が前記把持部の周方向(S)に並んで形成され、前記割溝の溝幅(W)の変化に応じて拡縮可能な把持部と、前記把持部において前記周方向に隣り合う前記割溝の間の部分(22F)に1つずつ連結され、前記周方向に並ぶ複数のバネ部(23)であって、前記把持部を拡縮させるために弾性変形可能な複数のバネ部と、前記把持部および前記バネ部の少なくともいずれかに設けられ、前記把持部および前記バネ部を前記回転部に対して回り止めする回り止め部(24)とを含む、動釣合い試験機用のコレットである。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成によれば、動釣合い試験機用のコレットでは、円筒状の把持部が被試験体の内周部に嵌められた状態でバネ部が弾性変形して割溝の溝幅が広がると、把持部が、拡径して被試験体の内周部に圧入されることによって当該内周部を把持する。これにより、被試験体が動釣合い試験機の回転部に一体回転可能に連結される。この状態では、把持部およびバネ部の少なくともいずれかに設けられた回り止め部が、把持部およびバネ部を回転部に対して回り止めしている。そのため、動釣合い試験機による被試験体の不釣合い測定のために回転部が回転した場合において大きなトルク負荷がコレットに作用しても、回り止めされたコレットが捩じれにくいので、トルク負荷によるコレットの破損を防止できる。
【0008】
前記回転部が、中心軸線(J)を中心とするテーパー状の外周面(17A)を有するテーパー部(17)を有していてもよい。前記把持部が、前記テーパー部の外周面に面接触可能なテーパー状の内周面(22E)を有していてもよい。前記回り止め部が、テーパー状の前記内周面に形成されたスリットを含む第1係合部(25)を含んでいてもよい。
また、本発明は、前記コレットと、前記コレットが取り付けられて前記周方向に回転する前記回転部とを含む動釣合い試験機(1)であって、前記回り止め部は、第1係合部(25)を含み、前記回転部には、前記周方向において前記第1係合部と係合する第2係合部(26)が設けられている、動釣合い試験機である。
【0009】
この構成によれば、コレットの回り止め部における第1係合部と、回転部に設けられた第2係合部とが、把持部の周方向つまり回転部の回転方向において係合するので、把持部およびバネ部が回転部に対して回り止めされる。そのため、前述したようにトルク負荷によるコレットの破損を防止できる。
前記回転部が、中心軸線(J)を中心とするテーパー状の外周面(17A)を有するテーパー部(17)を有していてもよい。前記回り止め部が、テーパー状の前記内周面に形成されたスリットを含む第1係合部(25)を含んでいてもよい。前記第2係合部が、前記スリットに差し込まれた突起を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機の要部の縦断面図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図1のB-B矢視断面図である。
図4】この発明の変形例に係る動釣合い試験機の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、動釣合い試験機1の縦断面図である。図1の上下方向は、動釣合い試験機1の上下方向である。図1の左右方向を動釣合い試験機1の左右方向である。動釣合い試験機1は、被試験体2とともに回転する回転部3と、回転部3を振動可能かつ回転可能に支持する支持部(図示せず)と、回転部3を回転駆動させるモータ等の駆動部(図示せず)と、回転中における回転部3の振動を検出する検出部(図示せず)と、被試験体2を回転部3に一体回転可能に連結するコレット4とを含む。
【0012】
被試験体2は、ロータ等であり、その中心には、内周部2Aによって縁取られた円形状の穴2Bが形成されている。穴2Bは、貫通穴であってもよいし、底を有する凹部であってもよい。
【0013】
回転部3は、左右方向に延びる中心軸線Jを有する円筒状に形成されたスピンドル11と、スピンドル11内に同軸上で挿通された円柱状のドローバー12とを含む。スピンドル11とドローバー12とは、それぞれの根元側(左側)において例えばスプライン結合されているので、左右方向に相対移動可能かつ中心軸線J周りの周方向Sに一体回転可能である。
【0014】
スピンドル11は、根元側の第1部品13や先端側(右側)の第2部品14等の複数の部品によって構成されている。第1部品13は、円筒状であり、第2部品14は、左右方向に細長い円管状である。第2部品14の途中には、中心軸線Jに直交する径方向Rの外側へ張り出したリング状のフランジ部14Aが設けられている。第2部品14においてフランジ部14Aよりも右側の部分は、先端部14Bであり、第2部品14においてフランジ部14Aよりも左側の部分は、根元部14Cである。フランジ部14Aがボルト(図示せず)等によって第1部品13の右端面に固定されることにより、第1部品13と第2部品14とが一体化されている。この状態において、先端部14Bは、右側へ突出していて、根元部14Cは、第1部品13内に挿入されている。
【0015】
ドローバー12は、第1部品13および第2部品14のそれぞれの内部に挿通された左右に細長い円柱状の軸部16と、軸部16の右端に同軸上で連結されたテーパー部17とを含む。軸部16は、複数の部品に分かれていて、これらの部品を連結することによって構成されてもよい。テーパー部17は、円錐台形状であり、その外周面17Aは、右側へ向かうにつれて大径になったテーパー面である。外周面17Aの左端の外径は、軸部16の右端の外径よりも大きい。ドローバー12の外周面には、軸部16とテーパー部17との境界として周方向Sに延びる溝12Aが形成されている。テーパー部17は、スピンドル11の先端部14Bよりも右側にはみ出している。ドローバー12は、中心軸線Jに沿ってスピンドル11に対して相対的にスライド可能である。動釣合い試験機1は、ドローバー12をスライドさせるアクチュエーター(図示せず)も含む。
【0016】
コレット4は、回転部3と同軸上に配置される円筒体である。コレット4は、円環状のベース部21と、被試験体2の内周部2Aに嵌め込まれる円筒状の把持部22と、ベース部21と把持部22との間に架設された複数のバネ部23とを一体的に含む。
【0017】
ベース部21は、スピンドル11のフランジ部14Aに右側から対向した状態で、スピンドル11の先端部14Bの左端部を取り囲んでいる。ベース部21がボルトBを介してフランジ部14Aに固定されることにより、コレット4がスピンドル11に対して一体回転可能に取り付けられている。ベース部21には、その内周部を縁取りつつ右側へ突出した円環の突出部21Aが設けられている。
【0018】
把持部22の外周面22Aの外径は、把持部22において右側の先端部22Bと左側の根元部22Cとの間の中央部22Dでは、全域にわたって一定である。先端部22Bは、被試験体2の内周部2Aに嵌りやすいように右側へ向かうにつれて小径になっている。根元部22Cは、中央部22Dよりも一段小径になっている。把持部22の内周面22Eは、右側へ向かうにつれて大径になったテーパー面であり、ドローバー12のテーパー部17を取り囲んだ状態でテーパー部17の外周面17Aに面接触している。
【0019】
コレット4には、把持部22の周方向(前述した周方向Sと同じ)に並んだ複数の割溝4Aが形成されている(図2参照)。各割溝4Aは、把持部22の径方向(前述した径方向Rと同じ)および左右方向に沿って把持部22を貫通するスリットである。この実施形態では、6つの割溝4Aが、周方向Sに等間隔で並んで形成されており、把持部22は、これらの割溝4Aによって6つの分割体22Fへと6等分されている。各分割体22Fは、把持部22において周方向Sに隣り合う割溝4Aの間の部分である。把持部22は、各割溝4Aの溝幅W(図2参照)の変化に応じて拡縮可能である。具体的には、溝幅Wが広がることによって把持部22は拡径し、溝幅Wが狭まることによって把持部22は縮径する。待機状態の動釣合い試験機1では、把持部22は縮径状態にある。
【0020】
バネ部23は、割溝4Aと同数設けられ、これらのバネ部23は、周方向Sに等間隔で並んだ状態でスピンドル11の先端部14Bを取り囲んでいる。これらのバネ部23は、把持部22の各分割体22Fに1つずつ連結されている。周方向Sで隣り合うバネ部23の間の空間は、割溝4Aの一部である。各バネ部23は、左右に細長い棒状に形成されている。各バネ部23では、右端部が把持部22の根元部22Cに連結されていて、左端部がベース部21の内周部における突出部21Aに連結されている。各バネ部23は、その左端部を支点として主に径方向Rに弾性変形可能である。各バネ部23の弾性変形に応じて割溝4Aの溝幅Wが変化するので、前述したように把持部22が拡縮する。具体的には、各バネ部23が径方向Rの外側へ撓むと溝幅Wが広がり、各バネ部23が径方向Rの内側へ撓むと溝幅Wが狭まる。このようなコレット4では、ベース部21が固定端であり、把持部22およびバネ部23が自由端である。
【0021】
コレット4では、把持部22およびバネ部23を回転部3に対して回り止めする回り止め部24が、把持部22およびバネ部23の少なくともいずれかに設けられている。回り止め部24は、把持部22における少なくともいずれかの分割体22Fに形成された第1係合部25を含む。この実施形態では、第1係合部25が、全ての分割体22Fに1つずつ合計で6つ設けられている。第1係合部25の一例は、分割体22Fの内周部の一部を左右に切り欠いたスリットであって、把持部22の内周面22Eから露出されているとともに、把持部22の左端面からも露出されている(図3も参照)。
【0022】
第1係合部25に関連して、スピンドル11の先端部14Bには、第2係合部26が設けられている。第2係合部26の一例は、先端部14Bの右端面から右側へ突出した突起であって、第1係合部25と同数設けられて周方向Sに等間隔で並び、各第1係合部25に左側から1つずつ差し込まれている。第1係合部25に差し込まれた第2係合部26は、周方向Sにおいて第1係合部25と係合している。この状態における第1係合部25(把持部22において第1係合部25のスリットを区画する壁面)と第2係合部26との間には、把持部22の拡縮が妨げられない程度の僅かな遊びが確保されている。第1係合部25と第2係合部26とが係合することによって、回転部3に対する把持部22およびバネ部23の相対回転が規制されている。
【0023】
動釣合い試験機1において被試験体2の動釣合い試験を行う場合には、その準備として、待機状態の動釣合い試験機1のコレット4に被試験体2がセットされる。この状態におけるコレット4では、把持部22が被試験体2の穴2Bに挿入されて、把持部22の中央部22Dが被試験体2の内周部2Aに嵌っている。内周部2Aの内径は、縮径状態の把持部22における中央部22Dの外径よりも僅かに大きい。そのため、被試験体2は、コレット4による把持が未だのアンクランプ状態にある。
【0024】
次に、前述したアクチュエータ(図示せず)が作動し、ドローバー12を左側へスライドさせる。これにより、ドローバー12のテーパー部17も左側へスライドし、その際、テーパー部17におけるテーパー状の外周面17Aが、コレット4の把持部22におけるテーパー状の内周面22Eに対して左側へ相対移動する。これにより、コレット4では、外周面17Aが内周面22Eを押し広げようとする力によって各バネ部23が径方向Rの外側へ撓むことにより、各割溝4Aの溝幅Wが広がる。そのため、把持部22が拡径し、把持部22の中央部22Dが被試験体2の内周部2Aに圧入される。このときの被試験体2は、コレット4の把持部22によって内周部2Aが把持されることによってクランプされているので、コレット4を介して動釣合い試験機1の回転部3に一体回転可能に連結された状態にある。なお、スピンドル11の先端部14Bの先端に位置する第2係合部26において径方向Rの内側部分は、左右方向の遊びをもってスピンドル11の溝12Aに受け入れられているので、ドローバー12の左側へのスライドを妨げない。
【0025】
被試験体2がクランプされた動釣合い試験機1では、前述した駆動部(図示せず)によって回転部3が所定速度で駆動回転され、この状態における被試験体2の振動が、前述した検出部(図示せず)によって検出される。検出された振動から、被試験体2の不釣り合いが得られる。
【0026】
前述したように、コレット4の回り止め部24における第1係合部25と、回転部3に設けられた第2係合部26とが、把持部22の周方向Sつまり回転部3の回転方向において係合することによって、回り止め部24が把持部22およびバネ部23を回転部3に対して回り止めしている。そのため、動釣合い試験機1による被試験体2の不釣合い測定のために回転部3が回転した場合(特に加減速時や高速回転時)において大きなトルク負荷がコレット4に作用しても、回り止めされたコレット4の自由端が捩じれにくいので、トルク負荷によるコレット4の破損を防止できる。特に、コレット4の中で強度が低いバネ部23に作用する捩じりトルクの影響を大幅に軽減することができるので、捩じりトルクによってバネ部23が折れるような破損を防止できる。なお、コレット4の自由端の捩じれを効果的に抑制するためには、回り止め部24は、コレット4において、バネ部23よりも固定端(ベース部21)から離れた把持部22に設けられることが好ましい。
【0027】
被試験体2の不釣り合い測定を終えた動釣合い試験機1では、前述したアクチュエータ(図示せず)が作動してドローバー12を元の待機位置まで右側へスライドさせる。すると、コレット4では、各バネ部23が径方向Rの内側へ撓んで復元することによって各割溝4Aの溝幅Wが狭まるので、把持部22が縮径する。これにより、被試験体2の内周部2Aに対する把持部22の圧入状態が解除されるので、被試験体2がアンクランプ状態になる。この状態では、被試験体2を交換のためにコレット4から取り外すことができる。
【0028】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0029】
図4は、この発明の変形例に係る動釣合い試験機1の要部の縦断面図である。図4において、図1図3で説明した部分と機能的に同じ部分には同じ符号を付して、当該部分についての説明は省略する。変形例に係る動釣合い試験機1では、回転部3において、前述したテーパー部17が、ドローバー12でなく、スピンドル11の先端部14Bの一部として、左右方向における先端部14Bの途中に設けられている。テーパー部17の外周面17Aは、右側へ向かうにつれて小径になったテーパー面であり、先端部14Bの外周面の途中領域を構成している。ドローバー12の右端部には、軸部16よりも一段大径の円筒状の連結部31が一体的に設けられている。
【0030】
変形例に係るコレット4では、円環状のベース部21が、把持部22よりも右側に位置していて、ドローバー12の連結部31を取り囲んでいる。ベース部21は、その内周面の左端部から径方向Rの内側に張り出した円環状のフランジ部21Bを有している。フランジ部21Bは、連結部31に左側から接触している。ベース部21の内周面の右端部には、周方向Sに延びる溝21Cが形成されている。溝21Cには、円環状のリング32における外周部が嵌め込まれている。リング32の内周部は、連結部31に右側から接触している。連結部31がフランジ部21Bおよびリング32によって左右方向から挟まれることによって、コレット4とドローバー12とは、一体的に左右にスライド可能である。コレット4の把持部22の外周面22Aでは、右端部に面取り22Gが形成されているものの、それ以外の全域の外径は一定である。把持部22の内周面22Eは、右側へ向かうにつれて小径になったテーパー面であり、スピンドル11のテーパー部17を取り囲んだ状態でテーパー部17の外周面17Aに面接触している。
【0031】
変形例に係る回り止め部24の第1係合部25は、把持部22におけるいずれかの分割体22Fの内周部の一部を左右に切り欠いたスリットであって、把持部22の内周面22Eから露出されているとともに、把持部22の左端面からも露出されている。第1係合部25は、全ての分割体22Fに設けられてもよい。変形例に係る第2係合部26は、スピンドル11のテーパー部17に形成された穴17Bに差し込まれたピンである。第2係合部26において穴17Bからはみ出した部分が、第1係合部25に径方向Rの内側から差し込まれている。これにより、第1係合部25と第2係合部26とが周方向Sにおいて係合している。変形例でも、第1係合部25と第2係合部26との間には、把持部22の拡縮が妨げられない程度の僅かな遊びが確保されている。
【0032】
変形例に係る動釣合い試験機1において被試験体2の動釣合い試験を行う場合には、その準備として、待機状態の動釣合い試験機1のコレット4に被試験体2がセットされる。この状態におけるコレット4では、縮径状態の把持部22が被試験体2の穴2Bに挿入されて被試験体2の内周部2Aに嵌っている。このときの被試験体2は、コレット4による把持が未だのアンクランプ状態にある。
【0033】
次に、前述したアクチュエータ(図示せず)が作動し、ドローバー12を左側へスライドさせる。これにより、コレット4がドローバー12とともに左側へスライドし、その際、コレット4の把持部22におけるテーパー状の内周面22Eが、スピンドル11のテーパー部17におけるテーパー状の外周面17Aに対して左側へ相対移動する。これにより、コレット4では、外周面17Aが内周面22Eを押し広げようとする力によって各バネ部23が径方向Rの外側へ撓むことにより、各割溝4Aの溝幅Wが広がる。そのため、把持部22が拡径し、把持部22が被試験体2の内周部2Aに圧入される。このときの被試験体2は、コレット4によって把持されることによってクランプされているので、コレット4を介して動釣合い試験機1の回転部3に一体回転可能に連結された状態にある。この状態の動釣合い試験機1では、回転部3が所定速度で駆動回転されることによって、被試験体2の不釣り合いが測定される。なお、スピンドル11側の第2係合部26は、左右方向の遊びをもってコレット4の第1係合部25に受け入れられているので、ドローバー12およびコレット4の左側へのスライドを妨げない。
【0034】
被試験体2の不釣り合い測定を終えた動釣合い試験機1では、前述したアクチュエータ(図示せず)が作動してドローバー12およびコレット4を元の待機位置まで右側へスライドさせる。すると、コレット4では、各バネ部23が径方向Rの内側へ撓んで復元することによって各割溝4Aの溝幅Wが狭まるので、把持部22が縮径する。これにより、被試験体2の内周部2Aに対する把持部22の圧入状態が解除されるので、被試験体2がアンクランプ状態になる。この状態では、被試験体2をコレット4から取り外せる。
【0035】
以上の説明では、第1係合部25が分割体22Fに設けられたスリットであったが、割溝4Aを第1係合部25として用いてもよい。また、以上の説明では、第1係合部25がスリットであって、第2係合部26が第1係合部25に差し込まれる突起であったが、第2係合部26がスリットや溝であって第1係合部25が突起であってもよい。
【0036】
以上の説明では、スピンドル11およびドローバー12が横に配置されることによって、回転部3の中心軸線Jが横に延びているが、中心軸線Jが縦に延びるようにスピンドル11およびドローバー12が縦に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 動釣合い試験機
2 被試験体
2A 内周部
3 回転部
4 コレット
4A 割溝
22 把持部
22F 分割体
23 バネ部
24 回り止め部
25 第1係合部
26 第2係合部
S 周方向
W (割溝4Aの)溝幅
図1
図2
図3
図4