(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】半導体デバイスを形成する方法および半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230926BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230926BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20230926BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20230926BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20230926BHJP
H10B 41/30 20230101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L29/78 301H
H01L29/78 301J
H01L29/78 301X
H01L29/78 301Y
H01L29/78 371
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H01L29/78 618C
H01L29/78 618F
H10B41/30
(21)【出願番号】P 2020532918
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2018060321
(87)【国際公開番号】W WO2019123303
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】リ、ユーロン
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン、ポール、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コスワッタ、シユランガ
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0218211(US,A1)
【文献】特表2009-532905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318029(US,A1)
【文献】特開2004-235230(JP,A)
【文献】特開2002-252348(JP,A)
【文献】特開2000-353790(JP,A)
【文献】特開2016-171216(JP,A)
【文献】米国特許第09799777(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 27/04
H01L 29/78
H01L 29/786
H10B 41/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスを形成する方法であって、
基板上に電界効果トランジスタ(FET)のソース端子とドレイン端子とを形成することであって、前記ソース端子と前記ドレイン端子とがチャネル領域の両側に形成される、前記形成することと、
前記ソース端子と前記チャネル領域とに隣接してエネルギー障壁を形成することと、
前記チャネル領域の上に導電ゲートを形成することと、
前記導電ゲートに隣接してスペーサ側壁を形成することであって、前記
導電ゲート上に蓄積された電荷が前記スペーサ側壁に、前記エネルギー障壁の高さを調節するフリンジ場を生じさせる、前記スペーサ側壁を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記エネルギー障壁と前記チャネル領域とが第1のドーパントを使用してドープされ、前記エネルギー障壁が前記チャネル領域よりも高いドーピング濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ソース端子と前記ドレイン端子とが第2のドーパントを使用してドープされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー障壁がヘテロ障壁材料から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導電ゲートにおいてフローティング・ゲートを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導電ゲートにおいて金属層上に強誘電体の層を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
半導体デバイスを形成する方法であって、
基板上に半導体フィンのソース端子を形成することと、
前記ソース端子に隣接してエネルギー障壁を形成することと、
前記エネルギー障壁に隣接してチャネルを形成することと、
前記チャネルに隣接してドレイン端子を形成することと、
前記チャネルの両側で前記ドレイン端子と前記チャネルとを陥凹化させることと、
前記陥凹化させることによって形成された凹部においてエネルギー障壁をエッチングすることと、
前記エネルギー障壁をエッチングすることによって形成された前記凹部内の前記ソース端子の一部を除去するように時間調節エッチングを使用して前記ソース端子を陥凹化させることと、
前記ソース端子の一表面と前記半導体フィンの側壁の上に第1の下部スペーサを形成することと、
前記第1の下部スペーサの表面上にゲート・スタックを形成することとを含む、方法。
【請求項8】
前記ゲート・スタックをエッチングすることと、
前記ゲート・スタックの一表面上に第2の下部スペーサを形成することと、
前記ドレイン端子を第1の線に接続するアクティブ接点を形成することと、
前記ゲート・スタックを第2の線に接続するゲート接点を形成することとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の下部スペーサはシリコン窒化物からなり、前記ドレイン端子と前記ソース端子とはP+ドープSiGeからなり、前記チャネルはN-ドープSiGeからなり、前記エネルギー障壁はSiからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
半導体デバイスであって、
ソース端子と、
ドレイン端子であって、前記ソース端子と前記ドレイン端子とが基板上の所定のチャネル領域の両側に形成された、前記ドレイン端子と、
前記ソース端子と前記チャネル領域とに隣接したエネルギー障壁と、
前記チャネル領域の上に形成された導電ゲート・スタックと、
前記導電ゲート・スタックに隣接したスペーサ
側壁と
を含み、
前記導電ゲート・スタック上に蓄積された電荷が前記スペーサ側壁に、前記エネルギー障壁の高さを調節するフリンジ場を生じさせる、
半導体デバイス。
【請求項11】
前記エネルギー障壁は第1のエネルギー障壁を含み、
前記ドレイン端子と前記チャネル領域とに隣接して第2のエネルギー障壁が形成された、請求項10に記載の半導体デバイス。
【請求項12】
半導体デバイスであって、
基板上に形成された半導体フィンであって、前記半導体フィンのソース端子とチャネル領域とに隣接したエネルギー障壁
と、前記半導体フィンのドレイン端子と前記チャネル領域とに隣接した第2のエネルギー障壁とを含む、前記半導体フィンと、
前記半導体フィンの前記チャネル領域の上の導電ゲートと、
前記導電ゲートと前記基板との間の下部スペーサとを含む、半導体デバイス。
【請求項13】
前記導電ゲートが金属層上の強誘電体の層を含む、請求項12に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、半導体デバイスの製作方法およびその結果の構造に関する。より詳細には、本発明は、制御可能な抵抗を有する電界効果トランジスタ(FET)に関する。
【0002】
また、本発明は、一般には、2端子抵抗型処理ユニット(resistive processing unit(RPU))以外の追加の処理要素を必要とせず、ローカル・データ・ストレージおよびローカル・データ処理を提供する2端子RPUのクロスバー・アレイからなり、それによって人工ニューラル・ネットワーク(ANN)の行列乗算などのアルゴリズムを実装する能力を促進する、ANNで使用するための半導体デバイスの製作方法およびその結果の構造にも関する。
【背景技術】
【0003】
「機械学習」とは、データから学習する電子システムの主要機能を広義に表すために使用される。機械学習および認知科学において、ANNは、動物の生体神経回路網、特に脳から着想を得た統計学習モデルの一部門である。多数の入力に依存し、一般には未知であるシステムおよび機能を推定または近似するためにANNを使用することができる。クロスバー・アレイは、ANNアーキテクチャ、ニューロモーフィック・マイクロチップ、および超高密度不揮発性メモリを含む、様々な電子回路およびデバイスを形成するために使用される、高密度の低コスト回路構造である。基本クロスバー・アレイ構成は、1組の行導電線と、その1組の行導電線と交差するように形成された1組の列導電線とを含む。2組の電線の交差点は、薄膜材料で形成可能な、いわゆるクロスポイント・デバイスによって分離されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、制御可能な抵抗を有する半導体デバイスを形成する方法および半導体デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の半導体デバイスを形成する方法は、基板上に電界効果トランジスタ(FET)のソース端子とドレイン端子とを形成することを含む。ソース端子とドレイン端子は、チャネル領域の両側に形成される。ソース端子とチャネル領域に隣接してエネルギー障壁が形成される。チャネル領域の上に導電ゲートが形成される。
【0006】
本発明の実施形態の半導体デバイスを形成する方法は、基板上に半導体フィンのソース端子を形成することを含む。ソース端子の表面上にエネルギー障壁が形成される。エネルギー障壁の一表面上にチャネルが形成され、チャネルの一表面上にドレイン端子が形成される。ドレイン端子とチャネルとは、チャネルの両側で陥凹化され、エネルギー障壁は陥凹化によって形成された凹部においてエッチングされる。ソース端子は、エネルギー障壁をエッチングすることによって形成された凹部内のソース端子の一部を除去するように時間調節エッチングを使用して陥凹化される。ソース端子の一表面と半導体フィンの側壁の上に第1の下部スペーサが形成され、第1の下部スペーサの表面上にゲート・スタックが形成される。
【0007】
本発明の実施形態の半導体デバイスは、ソース端子とドレイン端子とを含む。ソース端子とドレイン端子は、基板上の所定のチャネル領域の両側に形成されている。ソース端子とチャネル領域とにエネルギー障壁が隣接し、チャネル領域の上に導電ゲート・スタックが形成される。
【0008】
本発明の実施形態の半導体デバイスは、基板上に形成された半導体フィンを含む。半導体フィンは、半導体フィンのソース端子とチャネル領域との間にエネルギー障壁を含む。半導体フィンのチャネル領域の上に導電ゲートが形成され、導電ゲートと基板との間に下部スペーサが形成される。
【0009】
本発明の実施形態の半導体デバイスは、基板上に形成された半導体フィンを含む。半導体フィンは、第1のドーパントを使用してドープされたソース端子と、第1の濃度で第2のドーパントを使用してドープされたドレイン端子と、第2の濃度で第2のドーパントを使用してドープされたチャネルとを含む。第2の濃度は第1の濃度より低い。
【0010】
その他の技術的特徴および利点も、本発明の技術により実現される。本発明の実施形態および態様は、本明細書で詳細に記載され、特許請求される主題の一部とみなされる。よりよく理解することができるように、詳細な説明および図面を参照されたい。
【0011】
本明細書に記載の排他的権利の明細については、本明細書の末尾の特許請求の範囲で具体的に示され、明確に特許請求されている。本発明の実施形態の上記およびその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を添付図面とともに読めば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】生体ニューロンの入力接続と出力接続とを示す略図である。
【
図2】
図1に示す生体ニューロンの周知の単純化モデルを示す図である。
【
図3】
図2に示す生体ニューロン・モデルを組み込んだANNの周知の単純化モデルを示す図である。
【
図4】周知の重み更新方法の略ブロック図を示す図である。
【
図5】1つまたは複数の実施形態による、重みのアレイを含むANNを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態によるRPUデバイスのクロスバー・アレイを、RPUの動作を示す電圧シーケンスとともに示す図である。
【
図7】本発明の1つまたは複数の実施形態による、プレーナ拡散FET700を製作する例示の方法のフローチャートを示す図である。
【
図8】本発明の1つまたは複数の実施形態による、例示のSOIウエハ800の断面図を示す図である。
【
図9】本発明の1つまたは複数の実施形態による例示のFET構造を示す図である。
【
図10】ソース/ドレインとエネルギー障壁とを形成した後の、本発明の1つまたは複数の実施形態による例示のFET構造を示す図である。
【
図11】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図12】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図13】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図14】ゲート・スタックを形成した後の、本発明の1つまたは複数の実施形態による例示のFET構造を示す図である。
【
図15】本発明の1つまたは複数の実施形態によるFET800に重みを記憶するための一実施形態を示す図である。
【
図16】本発明の1つまたは複数の実施形態によるFET800に重みを記憶するための一実施形態を示す図である。
【
図17】本発明の1つまたは複数の実施形態によるFET800に重みを記憶するための別の実施形態を示す図である。
【
図18】本発明の1つまたは複数の実施形態によるFETの例示の半導体構造を示す図である。
【
図19】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のIII-V HBFET構造1800におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図20】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のSiGe-Si HBFET構造1800におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図21】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET1800に重みを記憶するための一実施形態を示す図である。
【
図22】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET1800に重みを記憶するための一実施形態を示す図である。
【
図23】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET1800に重みを記憶するための別の実施形態を示す図である。
【
図24】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFETに縦型半導体構造を使用した例示のRPUアレイ600を示す図である。
【
図25】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET2400領域の基板作製を示す図である。
【
図26】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400のその後の中間構造を示す図である。
【
図27】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400のその後の中間構造を示す図である。
【
図28】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400のその後の中間構造を示す図である。
【
図29】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400のその後の中間構造を示す図である。
【
図30】本発明の1つまたは複数の実施形態による、半導体デバイスを製作する例示の方法の中間動作中の、上部スペーサ開口および上部ドレイン形成後のVFET構造の断面図を示す図である。
【
図31】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す図である。
【
図32】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す図である。
【
図33】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す図である。
【
図34】本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す図である。
【
図35】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET2400とRPUアレイ600との間の接続部を示す図である。
【
図36】HBFET2400をRPUアレイ600に接続するための、本発明の1つまたは複数の実施形態による製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す図である。
【
図37】本発明の1つまたは複数の実施形態によるトンネルFET3700の一実施形態を示す図である。
【
図38】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のトンネルFET構造が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図39】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のトンネルFET構造が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図40】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のトンネルFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す図である。
【
図41】本発明の1つまたは複数の実施形態による、トンネルFET3700に重みを記憶するための一実施形態を示す図である。
【
図42】本発明の1つまたは複数の実施形態による、トンネルFET3700に重みを記憶するための一実施形態を示す図である。
【
図43】本発明の1つまたは複数の実施形態による、トンネルFET370に重みを記憶するための別の実施形態を示す図である。
【
図44】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載の非対称FET構造を備えたRPUアレイを使用したフォワード・パスを示す図である。
【
図45】本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載の非対称FET構造を備えたRPUアレイを使用したバックワード・パスを示す図である。
【
図46】本発明の1つまたは複数の実施形態による、拡散FETの例示の対称半導体構造を示す図である。
【
図47】本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFETの例示の対称半導体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の図面は例示である。本発明の思想から逸脱することなく本明細書に記載の図面または操作には多くの変形があり得る。例えば、アクションは異なる順序で行うことができ、またはアクションを追加、削除または修正することができる。
【0014】
添付図面および開示する実施形態の以下の詳細な説明では、図面に示されている様々な要素に2桁、3桁または4桁の参照番号が付されている。わずかな例外はあるが、各参照番号の左端の桁は、その要素が最初に示されている図面に対応する。
【0015】
本明細書では本発明の様々な実施形態について関連する図面を参照しながら説明する。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態も考案することができる。以下の説明および図面では、要素間の様々な接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が記載されている。これらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に明記されていない限り、直接的または間接的とすることができ、本発明はこの点に関して限定的であることが意図されていない。したがって、実体の結合は、直接結合または間接結合を指す場合があり、実体間の位置関係は、直接的位置関係または間接的位置関係であり得る。また、本明細書に記載の様々な作業およびプロセス工程は、本明細書で詳細に記載していない追加の工程または機能を有する、より包括的な手順またはプロセスに組み込むことができる。
【0016】
特許請求の範囲および本明細書の解釈のために以下の定義および略語を使用するものとする。本明細書で使用する「含んでいる(comprises)」、「含む(comprising)、「含んでいる(includes)」、「含む(including)」、「有している(has)」、「有する(having)」、「含んでいる(contains)」、または「含む(containing)」という用語またはこれらの任意のその他の変形は、非排他的包含を含むものと意図されている。例えば、列挙されている要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物、または装置は、必ずしもそれらの要素のみには限定されず、明示的に記載されていないかまたはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物、または装置に固有の他の要素を含み得る。
【0017】
さらに、本明細書では「例示の」という用語を使用して、「例、事例または例示となる」ことを意味する。「例示の」として本明細書に記載されているいずれの実施形態または設計も、必ずしも他の実施形態または設計よりも好ましいかまたは有利であるものと解釈されるべきではない。「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という用語は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4などを含むものと理解される。「複数の」という用語は、2以上の任意の整数、すなわち、2、3、4、5などを含むものと理解される。「接続」という用語は、間接的な「接続」と直接的な「接続」とを含み得る。
【0018】
「約」、「実質的に」、「ほぼ」という用語およびこれらの変形は、本願の出願の時点で利用可能な機器に基づく特定の数量の測定に付随する誤差を含むことが意図されている。例えば、「約」は、記載されている値の±8%もしくは5%、または2%の範囲を含み得る。
【0019】
簡潔にするために、半導体デバイスおよび集積回路(IC)製作に関する従来の技術については、本明細書で詳細に記載する場合もしない場合もある。また、本明細書に記載の様々な作業およびプロセス工程は、本明細書で詳細に記載していない追加の工程または機能を有する、より包括的な手順またはプロセスに組み込むことができる。具体的には、半導体デバイスおよび半導体ベースのICの製造における様々な工程はよく知られており、したがって、簡潔にするために、本明細書では、多くの従来の工程については、周知のプロセスの詳細を示さずに簡単に言及するにとどめるかまたは完全に省略する。
【0020】
次に、本発明の態様により具体的に関連する技術の概説に移ると、現代の半導体デバイス製作プロセスにおいては、単一のウエハ上に電界効果トランジスタ(FET)などの多数の半導体デバイスが製作される。また、縦型電界効果トランジスタ(VFET)などの一部の非プレーナ・トランジスタ構造は、アクティブ領域の外部に接触させることができる半導体フィンとサイド・ゲートを採用しており、その結果、横型デバイスよりもデバイス密度が高くなり、いくらかのパフォーマンス向上がある。VFETでは、ソースからドレインへの電流が、基板の主要面に対して垂直な方向に流れる。例えば、周知のVFET構成では、主要基板面は水平であり、基板面から垂直フィンまたはナノワイヤが上方に延びている。フィンまたはナノワイヤはトランジスタのチャネル領域を形成する。チャネル領域の上端と下端に電気的に接触してソース領域とドレイン領域が位置し、ゲートはフィンまたはナノワイヤの側壁のうちの1つまたは複数の上に配置される。
【0021】
しかし、VFETに横型デバイスと同等またはよりすぐれたパフォーマンス特性をもたせることに課題がある。VFETでは、下部ソース/ドレイン(S/D)への接点は、下部S/D接点がゲートに重なるように、構造の上部から形成される。この垂直方向に積層された構成がVFETの占有面積の縮小と組み合わさって、基板のゲートとS/D領域との間に大きな寄生容量を生じさせる。2つの導体の間の寄生容量(導体間容量とも呼ぶ)は、導体の長さおよび厚さと導体間を離隔する距離の関数である。寄生容量は、抵抗容量(RC)遅延、電力損失、およびクロストークなどの、望ましくないデバイス作用の一因となる。RC遅延とは、回路構成要素の抵抗と容量との積の関数として回路において起こる信号速度または伝播の遅延を指す。残念ながら、寄生容量は、より微小な電子デバイスの需要拡大に応えるためにデバイス寸法と構成要素間隔が小さくなるに伴って増大し続ける。VFET基板のゲートとS/D領域との間の寄生容量を低減する従来の手法は、完全には成功していない。例えば、従来のVFETでは、ゲートと下部S/D領域との間に薄い下部スペーサが形成されて、寄生容量が若干軽減される。しかし、従来のVFETにおけるこの薄い下部スペーサの厚さは、チャネル長要件によって制約される。その結果として寄生容量は比較的高いままであり、よりよい解決策が必要とされる。
【0022】
次に、本発明の態様の概説に移ると、本発明の1つまたは複数の実施形態は、FETに制御可能な抵抗をもたせるように構成された方法および構造を提供する。このようなFETは、人工ニューラル・ネットワーク(ANN)を実装するために使用される電子回路およびデバイスなどのシステムを向上させる。具体的には、ANNの実装における技術的課題は、深層ニューラル・ネットワーク用途(以下で詳述)のための学習速度要件である。本発明の態様は、学習速度要件を満たすアナログ重み更新構成要素を容易にすることによってこのような技術的課題に対処する技術的解決策を提供する。
【0023】
また、抵抗型処理ユニット(RPU)アレイを使用したANN実装形態について簡単に説明する。本発明の態様は、例えばRPUアレイのクロスポイントに重みを記憶するために、このようなANN実装形態で使用可能な半導体デバイスの提供を容易にする。なお、本明細書に記載の半導体デバイスは、上記の例以外の方式でも使用可能であることに留意されたい。
【0024】
本発明の1つまたは複数の実施形態について、脳の構造と機能のモデル化に特に重点をおいて生体神経回路網の文脈で説明するが、本明細書に記載の教示の実装は特定の環境のモデル化には限定されないことを前もって理解されたい。むしろ、本発明の実施形態は、環境への様々な入力をベクトルに変換することができる限り、例えば天候パターン、インターネットから収集された任意のデータなどを含む、あらゆる種類の環境をモデル化することができる。したがって、本発明の実施形態は電子システムを対象としているが、参照と説明を簡単にするために、例えばニューロン、可塑性、およびシナプスなどの神経学用語を使用して電子システムの様々な態様について説明する。本明細書における電子システムの説明または例示で、神経学用語または神経学の簡便表記の使用は参照を容易にするためであり、記載されている神経学的機能または神経学構成要素の、ニューロモーフィック、ANNにおける同等物を対象として含むことを意図している。
【0025】
人工ニューラル・ネットワーク(ANN)は、多数の入力に依存し、一般に未知である、システムおよび機能を推定または近似するために使用することができる。ニューラル・ネットワークは、相互接続された「ニューロン」の概念に基づくアルゴリズム群を使用する。典型的なニューラル・ネットワークでは、ニューロンが入力に対して作用する所与の活性化機能を有する。適切な接続重みを決定すること(「トレーニング」とも呼ばれるプロセス)によって、ニューラル・ネットワークは、画像や文字などの所望のパターンの効率的な認識を実現する。多くの場合、グループ間の接続をより明白にし、値のそれぞれの計算を容易にするために、これらのニューロンは「層」にグループ化される。ニューラル・ネットワークをトレーニングすることは、計算を多用するプロセスである。
【0026】
ANNは、シミュレーションされた「ニューロン」として機能し、互いに電子信号の形態の「メッセージ」を交換する、相互接続されたプロセッサ要素からなる、いわゆる「ニューロモーフィック」システムとして実現されることが多い。生体ニューロン間でメッセージを伝達するシナプス神経伝達物質の接続のいわゆる「可塑性」と同様に、シミュレートされたニューロン間で電子メッセージを伝達するANN内の接続には、所与の接続の強さまたは弱さに対応する数値重みが与えられる。重みは、経験に基づいて調整および調節することができ、それによってANNを入力に適応させ、学習することができるようにする。例えば、手書き文字認識のためのANNを、入力画像の画素によって活性化することができる1組の入力ニューロンによって定義することができる。ネットワークの設計者によって決定された関数により重み付けされ、変換された後で、これらの入力ニューロンの活性化は、次に、多くの場合に「隠れ」ニューロンと呼ばれる、他の下流ニューロンに渡される。このプロセスは、出力ニューロンが活性化されるまで繰り返される。活性化された出力ニューロンは、どの文字が読み取られたかを決定する。
【0027】
クロスバー・アレイは、クロスポイント・アレイまたはクロスワイヤ・アレイとも呼ばれ、ANNアーキテクチャ、ニューロモーフィック・マイクロチップ、および超高密度不揮発性メモリを含む、様々な電子回路およびデバイスを形成するために使用される、高密度で低コストの回路アーキテクチャである。基本クロスバー・アレイ構成は、1組の行導電線と、その1組の行導電線と交差するように形成された1組の列導電線とを含む。2組の線の交差点は、薄膜材料で形成することができるいわゆるクロスポイント・デバイスによって分離されている。
【0028】
クロスポイント・デバイスは、実質的に、ANNのニューロン間の重み付き接続として機能する。シナプス可塑性を高エネルギー効率でエミュレートするために、ナノスケール・デバイス、例えば「理想的な」導通状態切り換え特性を有するメモリスタがクロスポイント・デバイスとして使用されることが多い。理想的なメモリスタ材料の導通状態(例えば抵抗)は、行電線および列電線の個々の電線間に印加される電圧を制御することによって変更することができる。高導通状態または低導通状態を実現するように交差点におけるメモリスタ材料の導通状態を変更することによって、デジタル・データを記憶することができる。メモリスタ材料は、材料の導通状態を選択的に設定することによって、2つ以上の明確に異なる導通状態を維持するようにプログラムすることもできる。メモリスタ材料の導通状態は、材料に電圧を印加し、目標クロスポイント・デバイスを流れる電流を測定することによって読み取ることができる。
【0029】
電力消費を制限するために、ANNチップ・アーキテクチャのクロスポイント・デバイスは、初期トレーニング段階が完了した後は目的関数の近似が変化しない、オフライン学習技術を利用するように設計されることが多い。オフライン学習は、クロスバー型ANNアーキテクチャのクロスポイント・デバイスがごくわずかな電力しか引き出さないように、クロスポイント・デバイスを簡素化することを可能にする。
【0030】
電力消費低減の可能性にもかかわらず、典型的には、トレーニング・データの入力-出力の対を一致させるように、トレーニング期間中にANNモデルにおけるかなりの数の調整可能パラメータ(例えば重み)を修正する必要があるため、オフライン・トレーニングの実行は難しく、資源集約的となる可能性がある。したがって、電力節減を優先するためにANNアーキテクチャのクロスポイント・デバイスを簡素化すると、オフライン学習技術は一般にトレーニング速度とトレーニング効率とが最適化されないことになる。
【0031】
ゼロと1とを操作する従来のデジタル・モデルを利用する代わりに、ANNは、推定または近似されるコア・システム機能の実質的に機能的同等物である処理要素間に接続を作成する。例えば、IBM(TM)のSYNAPSE(TM)コンピュータ・チップは、哺乳動物の脳に類似した形態、機能およびアーキテクチャの提供を試みる、電子ニューロモーフィック・マシンの中心構成要素である。IBM SyNapseコンピュータ・チップは、従来のコンピュータ・チップと同じ基本トランジスタ構成要素を使用しているが、そのトランジスタは、ニューロンおよびそれらのシナプス接続の挙動を模倣するように構成されている。IBM SyNapseコンピュータ・チップは、生体ニューロン間のシナプス伝達に類似した電気スパイクを使用して互いに通信する、100万個を上回るシミュレートされた「ニューロン」のネットワークを使用して情報を処理する。IBM SyNapseアーキテクチャは、メモリ(すなわちシミュレートされた「シナプス」)を読み取り、単純な演算を行うプロセッサ(すなわちシミュレートされた「ニューロン」)からなる構成を含む。典型的には異なるコア内にあるこれらのプロセッサ間の通信は、オンチップ・ネットワーク・ルータによって行われる。
【0032】
典型的なANNがどのように動作するかについての概説を、
図1、
図2および
図3を参照しながら以下に示す。本明細書で前述したように、典型的なANNは、ニューロンと呼ばれる約1000億個の相互接続された細胞を含む人間の脳をモデル化している。
図1に、図のように構成され、配置された、生体ニューロン102を上流の入力112、114と、下流の出力116と、下流の「他の」ニューロン118とに接続する経路104、106、108、110を有する生体ニューロン102の略図を示す。各生体ニューロン102は、経路104、106、108、110を介して電気インパルスを送信し、受信する。これらの電気インパルスの性質と、電気インパルスが生体ニューロン102内でどのように処理されるかが、脳全体の機能に主として関与する。生体ニューロン間の経路接続は、強いかまたは弱いかのいずれかであり得る。あるニューロンが入力インパルスを受け取ると、そのニューロンは、そのニューロンの機能に従ってその入力を処理し、その機能の結果を下流の出力または下流の「他の」ニューロンあるいはその両方に送る。
【0033】
生体ニューロン102は、
図2では、
図2に示す数式によって示される数学関数f(x)を有するノード202としてモデル化されている。ノード202は、入力212、214から電気信号を取得し、各入力212、214にそれぞれの接続経路204、206の強度を乗じ、入力の和をとり、その和を関数f(x)に通し、結果216を生成し、この結果は最終出力または別のノードへの入力、あるいはその両方とすることができる。本明細書では、乗算を表すためにアスタリスク(*)を使用する。弱い入力信号にきわめて小さい接続強度数値が乗じられ、したがって関数に与える弱い入力信号の影響はきわめて低い。同様に、強い入力信号には、より高い接続強度数値が乗じられ、したがって強い入力信号が関数に与える影響はより大きくなる。関数f(x)は設計的事項であり、様々な関数を使用することができる。f(x)の設計的事項の一例は、直前の和の関数をとり、マイナス1とプラス1の間の数値を出力する、双曲線正接関数である。
【0034】
図3に、人工ニューロンがノード(例えば302、308、316)であり、重み付き有向エッジ(例えばm1ないしm20)がそれらのノードを接続する重み付き有向グラフとして編成された、単純化ANNモデル300を示す。ANNモデル300は、ノード302、304、306が入力層ノードであり、ノード308、310、312、314が隠れ層ノードであり、ノード316、318が出力層ノードであるように編成されている。各ノードは、
図3で接続強度m1ないしm20を有する有向矢印として図示されている接続経路によって、隣接層内のすべてのノードに接続されている。1つの入力層と、1つの隠れ層と、1つの出力層のみが示されているが、実際には複数の入力層と、隠れ層と出力層とを設けることができる。
【0035】
人間の脳の機能と同様に、ANN300の各入力層ノード302、304、306は、接続強度調整もノード加算もなしに、供給源(図示せず)から直接、入力x1、x2、x3を受け取る。したがって、
図3の下部に列挙されている数式によって示すように、y1=f(x1)、y2=f(x2)、およびy3=f(x3)である。各隠れ層ノード308、310、312、314は、関連する接続経路に関連付けられた接続強度に従ってすべての入力層ノード302、304、306からその入力を受け取る。したがって、隠れ層ノード308では、y4=f(m1*y1+m5*y2+m9*y3)であり、ここで*は乗算を表す。
図3の下部に示す関数y5ないしy9を定義する数式によって示すように、同様の接続強度乗算およびノード加算が隠れ層ノード310、312、314および出力層ノード316、318についても行われる。
【0036】
ANNモデル300は、データ・レコードを一度に1つずつ処理し、レコードの最初は任意である分類をそのレコードの既知の実際の分類と比較することによって「学習」する。「バックプロパゲーション」(すなわち「誤差の逆伝播」)と呼ばれるトレーニング方法を使用して、最初のレコードの初期分類から誤差がネットワーク内にフィードバックされ、2回目にネットワークの重み付き接続を修正するために使用され、このフィードバック・プロセスが多数の反復回続く。ANNのトレーニング段階では、各レコードの正しい分類がわかっており、したがって出力ノードに「正しい」値を割り当てることができる。例えば、正しいクラスに対応するノードのノード値が「1」(または0.9)となり、他のノードのノード値が「0」(または0.1)となる。したがって、出力ノードのネットワークの計算値をこれらの「正しい」値と比較することと、各ノードの誤差項を計算することが可能である(すなわち「デルタ」ルール)。これらの誤差項は、次に、次の反復回で出力値が「正しい」値により近づくように、隠れ層内の重みを調整するために使用される。
【0037】
多くの種類のニューラル・ネットワークがあるが、2つの最も広いカテゴリはフィードフォワード・ネットワークとフィードバック/回帰ネットワークである。ANNモデル300は、入力と、出力と、隠れ層とを有する非回帰フィードフォワード・ネットワークである。信号は一方向にのみ伝播することができる。入力データは、計算を行う処理要素の層に渡される。各処理要素は、その入力の加重和に基づいて計算を行う。新たに計算された値は次に、次の層に供給される新たな入力値となる。このプロセスは、すべての層を通過し、出力を決定するまで続く。出力層におけるニューロンの出力を定量化するために閾値伝達関数が使用される場合がある。
【0038】
フィードバック/回帰ネットワークは、フィードバック経路を含み、これは、信号がループを使用して双方向に伝播することができることを意味する。ノード間のすべてのあり得る接続が可能とされる。この種のネットワークにはループが存在するため、特定の動作では、平衡状態に達するまで連続して変化する非線形動的システムとなり得る。フィードバック・ネットワークは、ネットワークが相互接続されたファクタの最良の配置を探す、連想メモリおよび最適化問題で使用されることが多い。
【0039】
フィードフォワードおよび回帰ANNアーキテクチャにおける機械学習の速度と効率は、ANNクロスバー・アレイのクロスポイント・デバイスが典型的な機械学習アルゴリズムの中核動作をいかに効率的に行うかに依存する。機械学習の厳密な定義を与えるのは難しいが、ANNの文脈における学習プロセスは、ネットワークが特定のタスクを効率的に行うことができるようにクロスポイント・デバイス接続重みを更新する問題とみなすことができる。クロスポイント・デバイスは、典型的には、入手可能なトレーニング・パターンから必要な接続重みを学習する。ネットワーク内の重みを反復的に更新することによってパフォーマンスを時間の経過とともに向上させる。人間の専門家によって指定された1組のルールに従うのではなく、ANNは、代表的な例の与えられた集合から(入力-出力の関係のような)基礎にあるルールを「学習」する。したがって、学習アルゴリズムとは、関連する重みの更新または調整あるいはその両方を行うために学習ルールが使用される手続であると一般的に定義することができる。
【0040】
3つの主要な学習アルゴリズム・パラダイムは、教師あり、教師なし、およびハイブリッドである。教師あり学習、または「教師」付きの学習では、ネットワークにすべての入力パターンの正しい回答(出力)が与えられる。ネットワークが既知の正しい回答に可能な限り近い回答を生成することができるようにするように重みが決定される。強化学習は、ネットワークに、正しい回答自体ではなく、ネットワーク出力の正しさに関する評価のみが与えられる教師あり学習の一変形である。それに対して、教師なし学習、または教師の付かない学習は、トレーニング・データ・セット内の各入力パターンに関連付けられた正しい回答を必要としない。教師なし学習は、データ内で基礎にある構造、またはデータ内のパターン間の相関関係を探索し、それらの相関関係からパターンをカテゴリ別に編成する。ハイブリッド学習は、教師あり学習と教師なし学習を組み合わせる。重みの部分が通常、教師あり学習で決定され、他の部分は教師なし学習で得られる。
【0041】
本明細書で前述したように、電力消費を制限するために、ANNチップ・アーキテクチャのクロスポイント・デバイスは、しばしば、オフライン学習技術を使用するように設計され、目的関数の近似は、初期トレーニング段階が完了した後は変化しない。オフライン学習は、クロスバー型ANNアーキテクチャのクロスポイント・デバイスがごくわずかな電力しか引き出さないようにクロスポイント・デバイスを簡素化することを可能にする。
【0042】
電力消費低減の可能性にもかかわらず、オフライン・トレーニングの実行は、典型的には、トレーニング・データの入力-出力の対を一致させるように、トレーニング期間中にANNモデル内のかなりの数の調整可能パラメータ(例えば重み)を修正する必要があるため、オフライン・トレーニングの実行は難しく、資源集約的となる可能性がある。
図4に、CPU/GPUコア(すなわちシミュレートされた「ニューロン」)がメモリ(すなわちシミュレートされた「シナプス」)を読み取り、重み更新処理動作を行い、次に更新された重みをメモリに書き戻す、典型的な読み出し-処理-書き込み重み更新動作の略図を示す。したがって、電力節減を優先するためにANNアーキテクチャのクロスポイント・デバイスを簡素化すると、オフライン学習技術は一般にトレーニング速度とトレーニング効率とが最適化されないことになる。
【0043】
図5に、人工ニューラル・ネットワーク(ANN)アーキテクチャ500を示す。フィードフォワード動作時、1組の入力ニューロン502がそれぞれ、それぞれの重み504の行に対して並行して入力電圧を与える。重み504は、RPUなどのクロスポイント・デバイスである。重み504は、重み付き入力を表すために電流出力が重み504からそれぞれの隠れニューロン506に流れるように、それぞれ設定可能抵抗値を有する。所与の重みによって出力される電流は、
【数1】
と求められ、ここでVは入力ニューロン502からの入力電圧であり、rは重み504の設定抵抗である。各重みからの電流が列方向に加算し、隠れニューロン506に流れる。1組の基準重み507が固定抵抗を有し、その出力を、隠れニューロン506のそれぞれに与えられる基準電流へと結合する。コンダクタンス値は正数値でしかあり得ないため、行列における正の値と負の値の両方を符号化するために何らかの基準コンダクタンスが必要である。重み504によって生成される電流は連続値かつ正であり、したがって、基準重み507を使用して基準電流を供給し、この基準電流を上回る電流は正の値を有するとみなされ、基準電流を下回る電流は負の値を有するものとみなされる。FETの抵抗値(r)を容易に制御可能にし、所定の閾値(例えば10MΩ、90MΩ、99MΩ、100MΩなど)を超えて制御可能とすることによって、本明細書に記載の技術的解決策は、RPUアレイ内のクロスポイントにおける重み記憶構成要素としてのFETの使用を容易にする。あるいは、各クロスポイントにおけるキャパシタが重みを記憶し、FETはキャパシタからの値の読み取りを容易にする。
【0044】
隠れニューロン506は、重み504のアレイからの電流と、基準重み507とを使用して何らかの計算を行う。次に、隠れニューロン506はそれ自体の電圧を重み507の別のアレイに出力する。このアレイは同じように機能し、重み504の列がそれぞれの隠れニューロン506から電圧を受け取って、行方向に加算して出力ニューロン508に与えられる加重電流出力を生成する。
【0045】
アレイと隠れニューロン506の追加の層を挿入することによって、任意の数のこのような段階を実装することができることを理解されたい。また、一部のニューロンは、アレイに定電圧を供給する定ニューロン509とすることができることにも留意されたい。定ニューロン509は、入力ニューロン502または隠れニューロン506あるいはその両方の間に存在することができ、フィードフォワード動作時のみ使用される。
【0046】
バック・プロパゲーション時、出力ニューロン508が重み504のアレイにわたって電圧を逆伝播させる。出力層は、生成されたネットワーク応答をトレーニング・データと比較し、誤差を計算する。誤差は、電圧パルスとしてアレイに印加され、パルスの高さまたは持続期間あるいはその両方は誤差値に比例して調整される。この例では、重み504の行が並行してそれぞれの出力ニューロン508から電圧を受け取り、その電圧を、隠れニューロン506に入力を供給するために列方向に加算する電流に変換する。隠れニューロン506は、加重フィードバック信号をそのフィードフォワード計算の導出値と結合し、そのそれぞれの重み504の列にフィードバック信号電圧を出力する前に誤差値を記憶する。このバック・プロパゲーションは、すべての隠れニューロン506と入力ニューロン502が誤差値を記憶するまでネットワーク500全体を伝播する。
【0047】
重み更新時、ネットワーク500を介して、入力ニューロン502と隠れニューロン506とが、前方向に第1の重み更新電圧を印加し、出力ニューロン508と隠れニューロン506とが逆方向に第2の重み更新電圧を印加する。これらの電圧の組み合わせが各重み504内に状態変化を生じさせ、重み504に新たな抵抗値をとらせる。このようにして、ニューラル・ネットワーク500をその処理における誤差に適応させるように重み504をトレーニングすることができる。なお、フィードフォワード・プロパゲーションと、バック・プロパゲーションと、重み更新の3つの動作モードは互いに重なり合わないことに留意されたい。
【0048】
本明細書で前述したように、深層ニューラル・ネットワーク用途の学習速度要件に対応するために、本発明の実施形態はアナログ重み更新構成要素を提供する。例えば、クロスバー構造における抵抗型処理ユニット(RPU)が、並列行列乗算を可能にし、ニューラル・ネットワークのトレーニング速度を向上させることができる。通常、百万個を超える重み要素を含む大規模なニューラル・ネットワークの場合、各重み要素が10MΩのオーダーの高抵抗である必要があり、抵抗は可変である必要がある。抵抗をゲート電位によってよく制御することができる電界効果トランジスタ(FET)は、そのようなニューラル・ネットワークを実装するための重み要素の候補である。しかし、現代のFETの抵抗は10kΩの範囲であり、したがって、この仕様を満たすには約1000倍に増大させる必要がある。本発明の実施形態は、このような技術的課題に対処し、このような仕様を満たすFET構造を提供し、それによってRPUクロスバー構造を使用するニューラル・ネットワークの実装を容易にする。
【0049】
次に本発明の概説に移ると、1つまたは複数の実施形態は、ローカル・データ記憶機能とローカル・データ処理機能とを提供する、本明細書でクロスポイント・デバイスまたは抵抗型処理ユニット(RPU)と呼ぶ、プログラマブル抵抗型クロスポイント構成要素を対象とする。言い換えると、データ処理を行うとき、各RPUに記憶されている値が並列してローカルに更新され、それによって関連データをプロセッサと別個の記憶素子とに出し入れする必要がなくなる。また、記載のRPUによって提供されるローカル・データ記憶およびローカル・データ処理は、行列乗算などのアルゴリズムを実装するANNの能力を促進する。したがって、記載のRPUを有する機械学習ANNアーキテクチャを実装することによって、ANNの速度、効率および電力消費を最適化する実装形態が可能になる。記載のRPUおよびその結果のANNアーキテクチャは、ANNパフォーマンス全体を向上させ、より広範囲な実用ANN用途を可能にする。
【0050】
クロスバー構造におけるRPUは、並列行列乗算を可能にし、ニューラル・ネットワークのトレーニング速度を大幅に向上させる。通常、100万超を超える重み要素を含む大規模なニューラル・ネットワークの場合、各重み要素は10MΩのオーダーの高抵抗である必要があり、抵抗は可変である必要がある。例えば、抵抗をゲート電位によってよく制御することができるFETは、ニューラル・ネットワークの重み要素の1つの候補である。しかし、現代のFETの抵抗は10kΩの範囲であり、大規模なニューラル・ネットワークを実装するのに必要な抵抗よりも大幅に低い(この仕様を満たすには、ほぼ1000分の1の低さである)。本明細書に記載の本発明により、10MΩないし100MΩなどの大幅により高い範囲の、増大させた制御可能抵抗を有する重み記憶要素を容易にすることによって、このような技術的課題に対処する。
【0051】
1つまたは複数の実施例では、FET構造における2つの電荷搬送変化が、FETの制御可能抵抗を大幅に増大させ、それによってFETをRPUアレイにおける重み記憶素子として使用することができるようにする。
【0052】
図6に、本発明の実施形態によるRPUデバイスのクロスバー・アレイを、RPUの動作を示す電圧シーケンスとともに図示する。
図6は、本発明の実施形態による、フォワード行列乗算と、バックワード行列乗算と、重み更新とを行う2次元(2D)クロスバー・アレイ600を示す図である。クロスバー・アレイ600は、1組の行導電線802、804、806と、その1組の行導電線802、804および806と交差する1組の列導電線808、810、812および814とからなる。1組の行電線と1組の列電線との交差点はRPUによって分離され、RPUは、
図6では、それぞれがσ11、σ21、σ31、σ41、σ12、σ22、σ32、σ42、σ13、σ23、σ33およびσ43としてそれぞれ示されているそれ自体の調整可能/更新可能抵抗重みを有する抵抗素子として示されている。図を簡単にするために、
図6では1つのRPU820のみが参照番号でラベル付けされている。フォワード行列乗算では、RPUに電圧を印加し、RPUを流れる電流を測定することによって、RPUの導通状態(すなわち記憶されている重み)を読み取ることができる。
【0053】
行電線802、804、806にそれぞれ入力電圧V1、V2、V3が印加される。各列電線808、810、812、814が、その特定の列電線に沿って、各RPUによって生成される電流I1、I2、I3、I4を合計する。例えば、
図6に示すように、列電線814によって生成される電流I4は、式I4=V1σ41+V2σ42+V3σ43に従う。したがって、アレイ600は、RPUに記憶されている値に、電圧V1、V2、V3によって定義される行電線入力を乗じることによってフォワード行列乗算を計算する。バックワード行列乗算も非常に類似している。バックワード行列乗算では、電圧が列電線808、810、812、814に印加され、次に行電線802、804、806から読み出される。以下で詳述する重み更新の場合、列電線と行電線に同時に電圧が印加され、関連するRPUデバイスに記憶されているコンダクタンス値がすべて並列して更新される。したがって、重み更新を行うために必要な乗算および加算動作がアレイ600の各RPU820で、RPUデバイスそれ自体に加えてアレイ600の関連する行電線または列電線を使用してローカルに行われる。
【0054】
図6の図を続けて参照して、1つまたは複数の実施形態による、行導電線806と列導電線812との交差点におけるRPU820およびそれに対応する重みσ33の正の重み更新方法の動作を以下に示す。必要な電圧パルスを2Dクロスバー・アレイ600のすべてのRPUに適用される確率論的ビット・ストリームの形態で生成するために、クロスバー・アレイ600の周辺に更新生成回路(図示せず)が設けられ、周辺「変換器」として使用される。
【0055】
したがって、本明細書に記載のようにRPUを含むクロスバー・アレイを使用して実装されたこのANNを参照すると、このアレイでは、各ノードの抵抗(またはコンダクタンス)の値がノード間の結合を決定し、ノードはアレイ内のRPUデバイスによって表される。また、ANNに従ってクロスポイント・アレイをトレーニングすると、抵抗(またはコンダクタンス)は所望の結合に応じてデバイスごとに異なることになる。ニューラル・ネットワークのトレーニングのためには、抵抗値を能動的に調整する必要がある。トレーニングが完了した後は、新たなタスクのためにトレーニングが開始するまで、抵抗値はクロスポイント・アレイ回路の動作中、固定したままとなる。
【0056】
以下に、本発明の実施形態による半導体デバイスの形成方法と半導体デバイスについて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0057】
本明細書では本発明の様々な実施形態について関連する図面を参照しながら説明する。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態も考案することができる。以下の説明および図面では、要素間の様々な接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が記載されていることに留意されたい。これらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に明記されていない限り、直接的または間接的とすることができ、本発明はこの点に関して限定的であることが意図されていない。したがって、実体の結合は、直接結合または間接結合を指す場合があり、実体間の位置関係は、直接的位置関係または間接的位置関係であり得る。間接的位置関係の一例として、本説明で層「A」を層「B」の上に形成すると言う場合、層「A」と層「B」の関連特性および機能が介在層によって実質的に変更されない限り、層「A」と層「B」との間に1つまたは複数の介在層(例えば層「C」)がある状況を含む。
【0058】
以下の説明において、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」という用語およびこれらの派生語は、記載されている構造および方法に対して、図面における向きの通りの関係にあるものする。「重なっている」、「~の上に(atop)」、「~上に(on top)」、「~の上に位置する」または「~上に位置する」という用語は、第1の構造などの第1の要素が、第2の構造などの第2の要素の上に存在することを意味し、その際、第1の要素と第2の要素との間に境界面構造などの介在要素が存在し得る。「直接接触」という用語は、第1の構造などの第1の要素と、第2の構造などの第2の要素とが、それら2つの要素の境界面に中間の導電層、絶縁層または半導体層なしに接続されることを意味する。例えば「第2の要素に対して選択的な第1の要素」などの、「~に対して選択的」という用語は、第1の要素がエッチングされることができ、第2の要素がエッチ・ストップとして機能することができることを意味することに留意されたい。「約」という用語は、本願の出願の時点で利用可能な機器に基づく特定の数量の測定に付随する誤差を含むことが意図されている。例えば、「約」は、記載されている値の±8%もしくは5%、または2%の範囲を含み得る。
【0059】
背景技術として、本発明の1つまたは複数の実施形態を実装する際に利用可能な半導体デバイス製作プロセスのより一般的な説明を以下に示す。本発明の1つまたは複数の実施形態を実装する際に使用される特定の製造作業は、個々には知られている場合があるが、本発明の作業またはその結果の構造あるいはその両方の、記載されている組み合わせは固有のものである。したがって、本発明による、接触抵抗が低減された高密度な縦型トランジスタを有する半導体デバイスの製作に関連して説明する作業の固有の組み合わせは、半導体(例えばシリコン)基板上で行われる、個々に知られている様々な物理的および化学的プロセスを使用しており、それらの一部について以下の各段落で説明する。
【0060】
一般に、ICにパッケージ化されるマイクロチップを形成するために使用される様々なプロセスは、4つの大まかなカテゴリ、すなわち、膜付着と、除去/エッチングと、半導体ドーピングと、パターン形成/リソグラフィとに分類される。付着は、ウエハ上に材料を成長、コーティング、またはその他の方法で移す任意のプロセスである。利用可能な技術としては、物理気相付着(PVD)、化学気相付着(CVD)、プラズマ化学気相付着(PECVD)、電気化学付着(ECD)、分子線エピタキシ(MBE)、および最近では原子層堆積(ALD)などがある。
【0061】
除去/エッチングは、ウエハから材料を除去する任意のプロセスである。例としては、エッチング・プロセス(ウェットまたはドライ)および化学機械平坦化(CMP)などがある。バッファード・フッ酸(BHF)エッチングなどのウェット・エッチング・プロセスは、液状化学薬品またはエッチャントを使用して表面から材料を除去する材料除去プロセスである。反応性イオン・エッチング(RIE)などのドライ・エッチングは、化学反応性プラズマを使用して、露出表面から材料の一部を取り除くイオンの衝撃に材料をさらすことにより、半導体材料のマスク・パターンなどの材料を除去する。プラズマは、電磁界により低圧(真空)下で生成される。
【0062】
半導体ドーピングは、例えば、一般には、拡散またはイオン注入あるいはその両方によってトランジスタのソースおよびドレインをドープすることによる電気特性の改変である。これらのドーピング・プロセスの後に、炉アニールまたは高速熱アニール(RTA)が行われる。アニールは、注入されたドーパントを活性化する役割を果たす。導体(例えばポリシリコン、アルミニウム、銅など)と絶縁体(例えば様々な形態の二酸化シリコン、シリコン窒化物など)の両方の膜を使用して、トランジスタとその構成要素を接続および分離する。半導体基板の様々な領域の選択的ドーピングによって、電圧の印加により基板の導電率を変化させることができる。これらの様々な構成要素からなる構造を形成することによって、数百万個のトランジスタを製作し、互いに配線して最新のマイクロエレクトロニクス・デバイスの複雑な回路を形成する。
【0063】
半導体リソグラフィは、後でパターンを基板に転写するための、半導体基板上での3次元レリーフ・イメージまたはパターンの形成である。半導体リソグラフィでは、フォトレジストと呼ばれる感光性ポリマーによってパターンが形成される。トランジスタを構成する複雑な構造と、回路の数百万個のトランジスタを接続する多くの電線とを製作するために、リソグラフィ工程とエッチ・パターン転写工程とが複数回繰り返される。ウエハ上にプリントされる各パターンは、その前に形成されたパターンと位置合わせされ、導体、絶縁体および選択的ドープ領域が徐々に構築されて最終的なデバイスを形成する。
【0064】
1つまたは複数の実施形態では、抵抗素子は、ポリシリコンなどの半導体ストリップを使用して形成される。ストリップは、半導体の抵抗性を制御するためにドープすることができる。典型的には、抵抗値は、異なる寸法のストリップを使用して変えることができる。ただし、従来の方法は、ストリップの端部によって接触が確実に行われるようにするために、複数のリソグラフィ・マスクを調整することを含むことがある。
【0065】
次に、本発明の態様の概説に移ると、1つまたは複数の実施形態は、制御可能な高抵抗値(>10MΩ)を有する複数のクロスポイント・デバイスを含むクロスポイント・アレイを有する半導体デバイスを製作する方法を提供する。1つまたは複数の実施形態では、複数のクロスポイント・デバイスを含むクロスポイント・アレイを製作するために、光リソグラフィまたは電子ビーム・リソグラフィあるいはその両方を使用した後、選択的プラズマ・エッチングを行う。
【0066】
図7に、本発明の1つまたは複数の実施形態によるプレーナ拡散FETを製作する例示の方法のフローチャートを示す。この方法は、シリコン・オン・インシュレータ(silicon-on-insulator(SOI))ウエハまたは任意のその他の半導体基板などの基板805を設けることを含む(702)。
【0067】
図8に、本発明の1つまたは複数の実施形態による半導体デバイス800を製作するために使用される例示のウエハ805の断面図を示す。1つまたは複数の実施例では、ウエハ800は低濃度ドープされる。ウエハ800がSOIである場合、基板805上にさらに絶縁体層(例えば埋め込み酸化物(BOX)層またはその他の適切な絶縁層)を含んでもよい。
【0068】
図7に戻って参照すると、プレーナFETの製作方法は、基板805内にFET構造のためのソース領域825とチャネル領域827とをパターン形成することをさらに含む(704)。
【0069】
図9に、本発明の1つまたは複数の実施形態による例示のFET構造を示す。このFET構造は、半導体層805内にデバイス領域を画定するためにシャロー・トレンチ・アイソレーション(shallow trench isolation(STI))領域820を含む。1つまたは複数の実施例では、ソース領域825とチャネル領域827を形成するために、パターン形成およびドーピング・プロセスが行われる。ソース領域とドレイン領域の間は、所定のチャネル領域850となる。パターン形成プロセスは、イオン注入と高温アニーリングによる光リソグラフィおよびドーピング・プロセスによって行われる。
【0070】
また、製作方法(
図7)は、ネルギー障壁領域830を形成することを含む(706)。
【0071】
図10に、エネルギー障壁830を形成した後の、本発明の1つまたは複数の実施形態による例示のFET構造を示す。ソース825とドレイン827に加えて、チャネル850のパターン形成と部分ドーピングによって、エネルギー障壁830がソース825とチャネル850の間に付加される。エネルギー障壁830は、ソース825(またはドレイン827)とチャネル850の間の領域に所定サイズLdに作成される。
【0072】
エネルギー障壁830は、エネルギー障壁830の領域に、チャネル850で行われるドーピングと比較してより高濃度でドーピングすることによって作成される。例えば、イオン注入の場合、エネルギー障壁830は、チャネル850(P-)よりも高濃度(P+)にドーピングされ、ソース825とドレイン827はN型ドーピングされ、それによってN-P-N FETを形成する。他の実施形態では、エネルギー障壁830にチャネル850(N-)と比較して高濃度に(N+)ドープするようにイオンを注入し、ソース825とドレイン827とに(P)ドープするように注入することによって、P-N-P FETが製作される。
【0073】
ドープ領域(825、827および830)は、基板815に、注入およびプラズマ・ドーピングなどの様々な方法で形成することができる。1つまたは複数の実施例では、異なる方法、例えばインサイチュ・ドープ・エピタキシ、エピタキシ後ドーピングなどにより、これらをエッチング除去し、再成長させてもよい。ドープ領域は、超高真空化学気相付着(UHVCVD)、高速熱化学気相付着(RTCVD)、有機金属化学気相付着(MOCVD)、低圧化学気相付着(LPCVD)、限定反応処理CVD(LRPCVD)、およびMBEを含むがこれらには限定されない任意の適合するプロセスによって形成することができる。ある実施形態では、ドープ領域は、気体前駆体または液体前駆体から成長させたエピタキシャル半導体材料を含む。
【0074】
図11に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す。プロット1110は拡散FETのオン状態を示し、プロット1120はオフ状態を示す。両方のプロットにおいて、価電子帯1135と伝導帯1145が示されている。典型的には、拡散FETでは、「オン」状態電流は、チャネル850を介したソース825からドレイン827への拡散電流によって支配される。本明細書に記載のFET構造では、電流レベルは、ソース825と追加ドーピング領域830との間のエネルギー障壁高さ(Hで示す)によって支配される。この障壁高さは、側壁スペーサを介したゲート電圧によって調節することができる。スペーサは絶縁層であり、高誘電率誘電体より好ましい。ゲート上の電荷が、スペーサにフリンジ場を生じさせ、これを介してエネルギー障壁の高さを調節する。
【0075】
図12に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のFETにおけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す。図示されているプロットは、エネルギー障壁830のない典型的なFETの第1の伝達特性1210と、エネルギー障壁830を備えた拡散FETの第2の伝達特性1220とを示す。図からわかるように、エネルギー障壁830を備えた拡散FETは、より低い電流を有する。なお、
図12のプロットは、特定の例示の状況から得られた結果の値を示していることと、他の例ではプロットはこれらの図示されているものとは異なり得ることに留意されたい。
【0076】
図13に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す。図示されているプロットは、エネルギー障壁830を備えた拡散FETの抵抗を、追加ドーピングされたエネルギー障壁領域830の異なる長さ(Ld)によるゲート電圧の関数として示している。例えば、このプロットは、Ldをそれぞれ16nm(1330)、18nm(1320)、および20nm(1310)に設定したときのFETの抵抗を示す。なお、Ldの値は、上記の例示の値とは異なってもよく、それによってFETの抵抗を
図13に示すものとは異なるように変化させることができることに留意されたい。
【0077】
図7に戻って参照すると、プレーナFETの製作方法は、ゲート・スタック840を形成するための従来の処理をさらに含む(708)。
【0078】
図14に、ゲート・スタックを形成した後の本発明の1つまたは複数の実施形態による例示のFET構造を示す。FET構造は、デバイス領域内の所定のチャネル領域850の上に、ゲート・スタック840(例えば、ゲート誘電体層841と、ゲート誘電体層841上のゲート導電体層842と、ゲート導電体層842上の窒化物キャップ層などのキャップ層843)をさらに含む。典型的には、ゲート誘電体層は、シリコンの酸化物であるが、ゲート誘電体として使用するのに適した任意の材料を使用することができる。他のゲート誘電体材料の例としては、HfO
2およびAl
2O
3がある。ゲート導電体層842は、金属またはポリシリコンあるいはその両方、または半導体デバイス800のゲート電極として機能する任意のその他の材料からなってよい。
【0079】
さらに、ゲート・スタック840の対向する両側にゲート側壁スペーサ845が形成される(710)。1つまたは複数の実施例では、集積方式(例えば早期か後期か)に応じて、ソース/ドレイン拡張領域またはハロー領域あるいはその両方も形成することができる。上記の従来の処理の詳細は周知であり、読者が本明細書に記載の実施形態の際だった態様に焦点を合わせることができるように省略する。
【0080】
また、FET800に重みを記憶するために、FETデバイス800のゲート電位は特定の値に維持される。これは、異なる構造により実現可能である。
【0081】
図15に、本発明の1つまたは複数の実施形態によるFET800に重みを記憶するための一実施形態を示す。FET800は、キャパシタ1510に接続されている。ゲート電圧を供給するように電荷がプレートに蓄積され、蓄積される電荷はRPUアレイ600のクロスポイントに記憶される重みを表す。図を簡単にするために、
図15にはFETデバイス800の各部のうちの一部のみが示されていることに留意されたい。
【0082】
図16に、本発明の1つまたは複数の実施形態によるFET800に重みを記憶するための一実施形態を示す。ゲート・スタック840にフローティング・ゲートなどの電荷蓄積層1610が付加される。ゲート電圧を供給するために電荷蓄積層1610に電荷を蓄積することができる。電荷蓄積層1610はポリシリコンからなる。1つまたは複数の実施例では、電荷蓄積層1610の後に別のゲート誘電体層841が付加され、その後、電極のための導体層842などの他の層がゲート・スタック840に付加される。
【0083】
図17に、本発明の1つまたは複数の実施形態によるFET800に重みを記憶するための別の実施形態を示す。ここでは、ゲート・スタックがゲート誘電体層841と、それに続く第1の導体層842を含む。その後、二酸化ハフニウム(HfO
2)からなるものなどの強誘電体層1710が付加される。強誘電体層1710の分極は、層830のエネルギー障壁高さを調節するためのスペーサにおいて電界を誘導する。また、ゲート・スタック840は、制御ゲート電極を形成するための第2の導体層842を含む。第1の導体層842は、強誘電体層1710の脱分極という技術的課題に対処する。
【0084】
また、1つまたは複数の実施例では、ソース825とチャネル850との間のエネルギー障壁830が、側壁845誘電体を介して間接的に調節される。例えば、側壁845は二酸化ハフニウム(HfO2)からなってよく、高誘電率誘電体層を形成するために窒化チタン(TiN)付着が使用される。したがって、強誘電体層1710と側壁845とが金属高誘電率(MHK)ゲート・スタックを形成する。
【0085】
したがって、本明細書に記載の1つまたは複数のプレーナ拡散FET半導体デバイスは、制御可能な抵抗、特に10MΩを超える抵抗をもたせるという技術的課題の技術的解決策を提供する。このようなプレーナ拡散FETは、ANNを実装するためなど、行列乗算を行うRPUアレイ600の一部であるクロスポイント・デバイスで使用することができる。
【0086】
また、本発明の1つまたは複数の実施形態によると、半導体FETは、例えば(III-V構造)を備えたヘテロ障壁FET(HBFET)である。
図18に、本発明の1つまたは複数の実施形態によるFETの例示の半導体構造を示す。(図のように)ヘテロ障壁FET(III-V)構造1800は、前述の拡散FETと類似しているが、エネルギー障壁領域830としてソース近傍のドープ領域を使用する代わりに、ヘテロ障壁FETはヘテロ接合材料を組み込んでいる。
【0087】
例えば、HBFET1800においてソース825、ドレイン827、およびチャネル850は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタのスイッチング速度を向上させるために、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)またはガリウムヒ素アンチモン(GaAsSb)などのIII-V族小バンドギャップ・チャネルからなる。また、ヘテロ障壁を形成するために、エネルギー障壁830はリン化インジウム(InP)などの広バンドギャップ材料からなる。HBFET1800は、フリンジ場を介したヘテロ障壁調節を容易にするSi3N4などのスペーサ材料からなる側壁を備えたゲート・スタック840をさらに含む。1つまたは複数の実施例では、これらの領域は、ソース825とドレイン827とがN+にドープされ、エネルギー障壁830とチャネル850とがP-にドープされるように、NPN HBFETを形成するようにドープされる。なお、他の実施形態では、ドーピングは、PNP HBFETを形成するように異なっていてもよいことに留意されたい。
【0088】
図19に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のIII-V HBFET構造1800におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す。プロット1910はHBFETのオン状態を示し、プロット1920はHBFETのオフ状態を示す。両方のプロットにおいて、価電子帯1935と伝導帯1945とが示されている。典型的には、拡散FETにおいて、「オン」状態電流はチャネル850を介したソース825からドレイン827への拡散電流によって支配される。本明細書に記載のHBFET構造では、電流レベルは、ソース825とエネルギー障壁領域830との間のヘテロ障壁エネルギー障壁高さ(Hで示す)によって支配される。この障壁高さは、側壁スペーサを介したゲート電圧によって調節することができる。
【0089】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、HBFET1800は、Si-SiGe構造であり、ソース825とドレイン827とチャネル850とがストレインド・シリコン・ゲルマニウム(SiGe)またはゲルマニウム(Ge)からなる。また、エネルギー障壁830はSiからなる。HBFET1800は、Si3N4などのスペーサ材料からなる側壁を備えたゲート・スタック840も含む。1つまたは複数の実施例では、これらの領域は、ソース825とドレイン827がN+にドープされ、エネルギー障壁830とチャネル850がP-にドープされるように、NPN HBFETを形成するようにドープされる。なお、他の実施形態では、PNP HBFETを形成するようにドーピングが異なっていてもよいことに留意されたい。
【0090】
図20に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のSiGe-Si HBFET構造1800におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す。プロット2010はHBFETのオン状態を示し、プロット2020はHBFETのオフ状態を示す。両方のプロットにおいて、価電子帯2035と伝導帯2045が示されている。典型的には、拡散FETにおいて、「オン」状態電流はチャネル850を介したソース825からドレイン827への拡散電流によって支配される。本明細書に記載のHBFET構造では、電流レベルは、ソース825とエネルギー障壁領域830との間のヘテロ障壁エネルギー障壁高さ(Hで示す)によって支配される。この障壁高さはゲート電圧によって調節可能である。
【0091】
また、HBFET1800に重みを記憶するために、HBFETデバイス1800のゲート電位は特定の値に維持される。これは異なる構造により実現可能である。
【0092】
図21に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET1800に重みを記憶するための一実施形態を示す。HBFET1800はキャパシタ1510に接続されている。ゲート電圧を供給するように電荷がプレートに蓄積され、蓄積される電荷はRPUアレイ600のクロスポイントに記憶される重みを表す。図を簡単にするために、
図21にはHBFET1800の各部のうちの一部のみが示されていることに留意されたい。
【0093】
図22に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET1800に重みを記憶するための一実施形態を示す。ゲート・スタック840にフローティング・ゲートなどの電荷蓄積層1610が付加される。ゲート電圧を供給するために電荷蓄積層1610に電荷を蓄積することができる。電荷蓄積層1610はポリシリコンからなる。1つまたは複数の実施例では、電荷蓄積層1610の後に別のゲート誘電体層841が付加され、その後、電極のための導体層842などの他の層がゲート・スタック840に付加される。
【0094】
図23に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET1800に重みを記憶するための別の実施形態を示す。ここでは、ゲート・スタックがゲート誘電体層841と、それに続く第1の導体層842を含む。その後、二酸化ハフニウム(HfO
2)からなるものなどの強誘電体層1710が付加される。強誘電体層1710の分極は、層830のエネルギー障壁高さを調節するための側壁スペーサにおいて電界を誘導する。また、ゲート・スタック840は、制御ゲート電極を形成するための第2の導体層842を含む。第1の導体層842は、強誘電体層1710の脱分極という技術的課題に対処する。
【0095】
また、1つまたは複数の実施例では、ソース825とチャネル850との間のエネルギー障壁830が、側壁845誘電体を介して間接的に調節される。例えば、側壁845は二酸化ハフニウム(HfO2)からなってよく、高誘電率誘電体層を形成するために窒化チタン(TiN)付着が使用される。したがって、強誘電体層1710と側壁845とが金属高誘電率(MHK)ゲート・スタックを形成する。
【0096】
以上のように、本明細書に記載の1つまたは複数のプレーナHBFET半導体デバイスは、制御可能な抵抗、特に10MΩを超える抵抗をもたせるという技術的課題の技術的解決策を提供する。このようなプレーナHBFETは、ANNを実装するためなど、行列乗算を行うRPUアレイ600の一部であるクロスポイント・デバイスで使用することができる。
【0097】
また、本発明の1つまたは複数の実施形態によると、半導体HBFETは縦型HBFETとすることができる。
図24に、本発明の1つまたは複数の実施形態によるHBFETに縦型半導体構造を使用した例示のRPUアレイ600を示す。RPUアレイ600は、各クロスポイントにおける追加の回路(例えばキャパシタ、重み更新FETなど)とともに、各クロスポイントに縦型HBFET2400を含む。軸A-A’に沿った縦型HBFET2400の断面図が示されている。縦型HBFET2400は、本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による(III-VまたはSiGe-Si、または任意のその他の)エネルギー障壁830を含むことができる。
【0098】
ここでは、802、804、806が、上部デバイス端子(この場合はドレイン827)に接触する上部金属電線(行電線)である。基板上に成長させた半導体層によって下部接点(ソース825)が形成され、アクティブ半導体領域808、810(列方向)を形成する。また、縦型HBFET2400は、
図25ないし
図36のプロセス工程によって示すように様々な半導体層スタックを保持する。一方、HBFET2400の外部の808、810の残りの領域は、p+SiGe層2530まで下方にエッチングされ、それによって、領域808、810内のHBFETまで共通下部導体(列方向)を形成する(図示せず)。
【0099】
RPUアレイ600における縦型HBFET2400の製作についてさらに説明する。この製作方法の説明のために使用される様々な図は、工程ごとのA-A’軸に沿った断面図をさらに使用する。Si-SiGeベースの構造の製作プロセスについて説明するが、当業者は、本明細書に記載のような他の種類の縦型HBFETを製作するためにもこの説明を使用することができる。
【0100】
図25に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET2400領域の基板の作製(特に
図20に関連)を示す。まず、基板2510上にHBFET領域(例えば、STI内の開口デバイス領域)が画定される。基板2510は、例えばSiC、または半導体オン・インシュレータ(SOI)などの任意の適合する基板材料とすることができる。ある実施形態では、基板2510は、埋め込み酸化物層(図示せず)を含む。シャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)2512によって半導体アクティブ領域を基板2510の他の領域から電気的に分離することができる。STI2512は、例えばシリコン酸化物など、任意の適合する誘電体とすることができる。デバイス間分離2512を形成する任意の周知の方式を使用することができる。ある実施形態では、STI2512は、まず、基板全体の上に誘電体(2512)を付着させ、次に、エッチング・プロセスを使用してアクティブ半導体領域808、810を開口し、次に、この開口部内に追加の半導体層2520、2530、2540、2550、2560を成長させることによって形成される。ある実施形態では、STI2512は、まず、基板2510全体の上に異なる半導体層2520、2530、2540、2550、2560を成長させ、次に、基板2510まで下方にエッチングしてトレンチを形成し、トレンチにSTI2512材料を充填し、例えばCMPプロセスを使用して半導体層2560の表面まで平坦化することによって形成される。
【0101】
したがって、基板2510上にひずみ緩和バッファ層(strain-relaxed-buffer(SRB))領域2520を成長させる。その後、SRB領域2520上にP+SiGe(下部ソース825)2530を成長させる。さらに、n-Si(ヘテロ障壁830)層2540の成長を行う。その後、N-SiGe(チャネル850)層2550を成長させる。さらに、P+SiGe(上部ドレイン827)層2560を成長させる。なお、これらの層はソースおよびドレインとして図示されているが、他の実施形態ではドレイン層とソース層とを交換してもよい。
【0102】
例えば、基板の高濃度ドープ領域2530は、例えばインサイチュ・ドープ・エピタキシ、エピタキシ後ドーピング、または注入とプラズマ・ドーピングなどの様々な方法によって、基板2510内に形成されたソース領域またはドレイン領域とすることができる。高濃度ドープ領域2530は、超高真空化学気相付着(UHVCVD)、高速熱化学気相付着(RTCVD)、有機金属化学気相付着(MOCVD)、低圧化学気相付着(LPCVD)、限定反応処理CVD(LRPCVD)、およびMBEを含むがこれらには限定されない任意の適合するプロセスによって形成することができる。ある実施形態では、高濃度ドープ領域2530は、気体前駆体または液体前駆体から成長させたエピタキシャル半導体材料を含む。ある実施形態では、基板2510の上にエピタキシャル領域をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル半導体材料は、気相エピタキシ(VPE)、MBE、液相エピタキシ(LPE)、またはその他の適合するプロセスを使用して成長させることができる。ドーパント、n型ドーパント(例えばリンまたはヒ素)、またはp型ドーパント(例えばGa、B、BF2またはAl)を加えることによって、付着中にエピタキシャル・シリコン、SiGeまたは炭素ドープ・シリコン(Si:C)あるいはこれらの組み合わせをドープ(インサイチュ・ドープ)することができる。ドープ領域のドーパント濃度は、1×1019cm-3から2×1021cm-3の範囲、または1×1020cm-3と1×1021cm-3の間とすることができる。
【0103】
ある実施形態では、エピタキシャル半導体材料の付着のためのガス源は、シリコン含有ガス源、ゲルマニウム含有ガス源、またはこれらの組み合わせを含む。例えば、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、エチルシラン、メチルジシラン、ジメチルジシラン、ヘキサメチルジシラン、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択されたシリコン・ガス源から、エピタキシャルSi層を付着させることができる。ゲルマン、ジゲルマン、ハロゲルマン、ジクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、テトラクロロゲルマン、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択されたゲルマニウム・ガス源から、エピタキシャル・ゲルマニウム層を付着させることができる。このようなガス源の組み合わせを使用して、エピタキシャル・シリコン・ゲルマニウム合金層を形成することができる。水素、窒素、ヘリウムおよびアルゴンなどのキャリア・ガスを使用することができる。ある実施形態では、ドープ領域はシリコンを含む。ある実施形態では、ドープ領域は炭素ドープ・シリコン(Si:C)を含む。このSi:C層は、他のエピタキシ工程のために使用されるのと同じチャンバ内、または専用のSi:Cエピタキシ・チャンバ内で成長させることができる。Si:Cは、約0.2パーセントから約3.0パーセントの範囲の炭素を含み得る。
【0104】
図26に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400の後続の中間構造を示す。この工程では、リソグラフィ技術を使用して、最初のSi層2540までSiGe層2550および2560をエッチングするために垂直エッチングが行われる。所定寸法のドレインおよびチャネルを残すように垂直エッチングを行うために、所定寸法を使用したマスクが使用される。
【0105】
例えば、半導体フィンのそれぞれの表面上にハード・マスクが形成される。ハード・マスクは、多層を含む、酸化物、窒化物、酸窒化物またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ある実施形態では、ハード・マスクは、シリコン酸化物またはシリコン窒化物を含み得る。ハード・マスクは、例えば、化学気相付着(CVD)、プラズマ化学気相付着(PECVD)、化学溶液付着、蒸発などの付着プロセスを使用して形成することができる。ある実施形態では、ハード・マスクは、例えば、上部半導体層の酸化または窒化などの熱プロセスによって形成することができる。ハード・マスクの形成に上記のプロセスの任意の組み合わせを使用することもできる。ハード・マスクは、20nmから80nm、例えば30nmから60nmの厚さを有し得る。
【0106】
ある実施形態では、ハード・マスクは、半導体フィンの前に形成される。ハード・マスクは、次に、パターン形成され、パターンが基板2510に転写されて、周知のリソグラフィ・プロセスを使用して半導体フィンを形成する。リソグラフィ工程は、ハード・マスク上にフォトレジスト層(図示せず)を塗布することと、フォトレジスト層を所望の照射パターンに露光することと、露光されたフォトレジスト層をレジスト現像液を使用して現像することとを含み得る。エッチング・プロセスは、ドライ・エッチングまたはウェット化学エッチングあるいはその両方を含み得る。使用可能なドライ・エッチング・プロセスの例には、反応性イオン・エッチング(RIE)、イオン・ビーム・エッチング、プラズマ・エッチング、またはレーザ・アブレーションが含まれる。エッチング・プロセスによって、パターン形成されたフォトレジスト層からパターンをハード・マスクに、さらに基板2510に転写することができる。ある実施形態では、埋め込み絶縁層(図示せず)がエッチ・ストップとして機能する。半導体フィンの形成後、パターン形成されたフォトレジスト層を、例えばアッシングなどのレジスト除去プロセスを使用して除去することができる。ある実施形態では、半導体フィンは、サイドウォール・イメージ・トランスファ(SIT)プロセス(図示せず)を使用して形成される。SITプロセスでは、ダミー・マンドレル上にスペーサを形成することができる。ダミー・マンドレルは、除去することができ、残りのスペーサを、上部半導体層をエッチングするためのハード・マスクとして使用することができる。次に、半導体フィンが形成された後でスペーサを除去することができる。
【0107】
図27に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400の後続の中間構造を示す。この工程では、リソグラフィ技術を使用して、Si層2540をSiGe層2530までエッチングするように垂直エッチングが行われる。次に、ソース825のSiGe層2530上で時間調節エッチングが行われる。エッチングは、所定持続期間にわたって、またはSiGe層2530の所定深度Sにエッチングするまで行われる。このエッチングは本明細書に記載のように行われる。
【0108】
図28に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400の後続の中間構造を示す。この工程では、ゲート・スタック840の側壁スペーサ845を作製するために使用される材料を付着させて層2570を形成する。層2570は、ソース825を形成する層2530上とドレイン827を形成する層2560上の、垂直エッチングされたトレンチ内に付着させる。1つまたは複数の実施例では、層2530の上の所定高さのスペーサ層2570を有するように異方性エッチングが行われる。
【0109】
第1の下部スペーサ2570は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、またはこれらの組み合わせなどの誘電体を含むことができ、周知の付着プロセスを使用して形成することができる。ある実施形態では、第1の下部スペーサ2570は、例えば、ガス・クラスタ・イオン・ビーム(Gas Cluster Ion Beam(GCIB))プロセスなどの方向性付着を行うことによって形成される。GCIBプロセスは、高い方向性を有し得る付着プロセスである。例えば、方向性付着プロセスにより、ハード・マスクおよび基板2510の上面など、デバイスの水平方向に配向している表面上に誘電体を付着させることができるようになり、一方で、半導体フィンの側壁など、デバイスの垂直方向に配向した表面には実質的な量の誘電体を付着させない。
【0110】
図29に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中のHBFET2400の後続の中間構造を示す。この工程では、例えば、半導体フィンの間の領域を充填するために、HBFET構造の露出面上に層間誘電体(ILD)材料2580を付着させるように、誘電体充填が行われる。ILD2580は、例えばシリコン酸化物などの任意の適合する誘電体とすることができる。
【0111】
ILD2580は、例えば、上部スペーサに対して選択的なCMP(例えば窒化物上で停止)を使用して研磨することができる。CMPプロセスを使用して、ILD2580の上面が上部スペーサ2570の上面と同一平面になるようにILD2580の余分な部分を除去することができる。ある実施形態では、ILD2580の材料は、(
図30に示すように)後続のエッチング中に、上面2570の一部とハード・マスクとをILD2580に対して選択的に除去することができるように選択される。
【0112】
図30に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、半導体デバイスを製作する例示の方法の中間動作中の、ILD開口後のVFET構造の断面図を示す。ある実施形態では、半導体フィンの一部を露出させるようにILD2580の一部が除去される。別の実施形態では、
図30に示すように、半導体フィンの一部を露出させるようにILD2580がスペーサ材料2540まで除去される。
【0113】
図31に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す。下部スペーサ845層2570と、誘電体2580の側壁と、半導体フィンの側壁とに高誘電率材料層3110を付着させる。高誘電率材料は、HfO
2などの誘電体、またはゲート・スタック840を形成するのに適合する任意のゲート材料とすることができる。高誘電性ゲート酸化物は、例えば、半導体フィンのチャネル領域(すなわち側壁)と下部スペーサ845の上に付着によって形成することができる。
【0114】
高誘電率誘電体層3110は、例えば二酸化シリコンよりも高い誘電率を有する高誘電率材料などの任意の適合するゲート材料からなり得る。例示の高誘電率材料としては、例えば、HfO2、ZrO2、La2O3、Al2O3、TiO2、SrTiO3、LaAlO3、Y2O3、HfOxNy、ZrOxNy、La2OxNy、Al2OxNy、TiOxNy、SrTiOxNy、LaAlOxNy、Y2OxNy、SiON、SiNx、これらのケイ酸塩、およびこれらの合金が含まれ、xのそれぞれの値は、個別に0.5から3であり、yのそれぞれの値は個別に0から2である。
【0115】
また、1つまたは複数の実施例では、特定の仕事関数を有する金属(WF金属)の薄い層3120を付着させ、その後、導体層3130(ゲート充填金属)を付着させることができる。薄い金属層3120は、FETの閾値電圧を調整するように働く。
【0116】
ゲート導電体層3130は、半導体デバイス2400のゲート電極として機能する、金属またはポリシリコンあるいはその両方、またはその他の材料からなり得る。導電接点は、例えば、金属(例えば、タングステン、チタン、タンタル、ルテニウム、ジルコニウム、コバルト、銅、アルミニウム、鉛、プラチナ、スズ、銀、金)、導電性金属化合物材料(例えば、窒化タンタル、窒化チタン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化チタン・アルミニウム、ケイ化タングステン、窒化タングステン、酸化ルテニウム、ケイ化コバルト、ケイ化ニッケル)、カーボン・ナノチューブ、導電性カーボン、グラフェン、またはこれらの材料の任意の適切な組み合わせなどの、任意の適合する導電性材料からなり得る。導電性材料は、さらに、付着中または付着後に組み込まれるドーパントを含み得る。ある実施形態では、導電接点3130は、銅とすることができ、障壁金属ライナ(図示せず)を含むことができる。障壁金属ライナは、特性を劣化させる可能性がある、周囲の材料への銅の拡散またはドーピングを防止する。例えば、シリコンは銅がドープされると深いトラップを形成する。理想的な障壁金属ライナは、銅の拡散性を十分に制限して銅伝導体を周囲の材料から化学的に分離しなければならず、高電気伝導性を有する必要があり、例えば窒化タンタルおよびタンタル((TaN/Ta)、チタン、窒化チタン、コバルト、ルテニウムおよびマンガンなど、である。
【0117】
1つまたは複数の実施例では、付着は、トレンチに上記の層を充填し、例えばCMPプロセスを使用して窒化物層2570の表面まで平坦化することによって行うことができる。
【0118】
図32に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFETの断面図を示す。前述のようにゲート・スタック層を付着させた後、ゲート・スタック(高誘電率、WF金属、ゲート充填金属)の異方性エッチングが行われる。例えば、使用されているリソグラフィ・ハードマスク材料に対して選択的なRIEなどの、任意のリソグラフィ法またはエッチング法を使用して除去が行われる。
【0119】
図33に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す。このHBFET構造は、上部スペーサ材料3310が充填されている。上部スペーサ材料は、層2570で使用したのと同じ材料とすることができ、シリコン酸化物シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、またはこれらの組み合わせなどの誘電体を含むことができ、周知の付着プロセスを使用して形成することができる。ある実施形態では、スペーサ3310は、例えばGCIBプロセスなどの方向性付着プロセスを使用して付着させる。付着の後、CMPプロセスが行われる。
【0120】
図34に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す。ここでは、ミドル・オブ・ライン処理を使用してHBFET構造2400がRPUアレイ600の行電線(804が示されている)に接続される。ミドル・オブ・ライン(middle of line(MOL))処理は、2570および3310などのスペーサ層で使用されているシリコン窒化物であるライナを通して接点をエッチングすることを含む。接点エッチングは、シリコン酸化物層とシリコン窒化物層とを通過して、半導体領域、より具体的には、ドレイン827を形成するアクティブ結晶半導体領域2560との接点を形成する。下部導電層2530との(列方向導電体808、810を形成する)接点が形成される領域において、接点エッチングはシリコン酸化物層とシリコン窒化物層を通過して半導体層2530(図示せず)との接点を形成する。
【0121】
1つまたは複数の実施例では、MOLライナはプラズマ化学気相付着(PECVD)を使用して半導体構造上に付着させる。プラズマ化学気相付着を使用することによって、コア領域および周辺領域のトランジスタ間の距離に応じて、コア領域および周辺領域に付着させるMOLライナの量を制御することができる。
【0122】
また、1つまたは複数の実施例では、MOLライナの付着と同時に、HBFETと行導電線802の中間に絶縁層(図示せず)を付着させる。例えば、絶縁層はシリコン窒化物、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、またはホウリンケイ酸塩ガラス(BPSG)などの絶縁材料を含む。絶縁層は、絶縁材料の複数の層からなってもよい。
【0123】
絶縁層の付着と同時に、MOLライナを通して接点エッチングが行われる。接点エッチング3410は、窒化物層2570および3310を通して行われる。接点エッチング3410は、半導体構造の表面上にあるアクティブ接点(CA)がHBFETのドレインと電気的に接続されることを可能にする。また、接点3410を行電線804に接続するために、垂直相互接続層(V0)3420を形成し、付着させる。
【0124】
図35に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFET2400とRPUアレイ600との間の接続部を示す。
図36に、HBFET2400をRPUアレイ600に接続するための、本発明の1つまたは複数の実施形態による製作中の縦型HBFET構造の断面図を示す。前述のように、行電線804とHBFET2400の端子との間にアクティブ接点(CA)が作成される(
図34)。また、導電材料をパターン形成し、MOL処理を使用することによって、HBFETを、RPUアレイ600のクロスポイントにおける、キャパシタ1510などの他の回路2410に接続するためのゲート(CB)3510への接点が作成される。キャパシタ1510は、重み記憶キャパシタとすることができる。
【0125】
VFET構造は、例えばRIEを使用してパターン形成することができる。ある実施形態では、RIEは基板2510に対して選択的である。結果の構造は、本明細書に記載のようなエネルギー障壁830を含む。
【0126】
以上に記載したFET構造は、ソースとトレインの間に位置する半導体層の上に配置された絶縁体上に形成され、その絶縁体と接触する、ポリシリコンまたは金属あるいはその両方からなるゲート構造を含む。半導体層は、様々なドーパントをその中に含むことができ、ソースとドレインに1つの型のドーピングが行われ、チャネルとエネルギー障壁層とに別の型のドーピングが行われている。ゲート構造に電圧を印加することにより、ソース端子とドレイン端子との間の半導体層内に導電チャネルを作成することができる。制御可能な高抵抗を生じさせるように、これらの構造にはエネルギー障壁830が製作されている。
【0127】
本発明の追加の実施形態では、FET構造は、酸化物層によって半導体層から分離されたゲート接点を含む、トンネルFETと呼ばれる別のFET構造を使用することができる。半導体層は、ゲートの電圧の制御が半導体層の2端におけるソース接点とドレイン接点との間の電流の流れに影響を与えるように、複数種類の半導体材料およびドーパントを含むことができる。このようなトンネルFET実施形態では、ソースとドレインが同じ型にドープされる拡散FET構造およびHBFET構造と比較して、トンネルFETのソースとドレインとが異なる型にドープされる。
【0128】
図37に、本発明の本発明の1つまたは複数の実施形態によるトンネルFET3700の一実施形態を示す。トンネルFET3700は、前述の拡散FET(例えば
図14参照)と比較すると、エネルギー障壁領域830を含まない。その代わりに、トンネルFET3700では、ソース端子825全体がP+にドープされ、これは例示の実施例ではN+にドープされるドレイン端子827と異なる。なお、他の実施例では、ソース端子825がN+にドープされ、ドレイン端子827がP+にドープされてもよい。また、チャネル850は、ドレイン端子と同じドーパントを使用してドープされるが、ドレイン827と比較して低濃度でドープされる。
【0129】
1つまたは複数の実施例では、ドーピングは、イオン注入を使用し、パターン形成されたマスクを使用して一方の領域を被覆した状態で他方の領域をドープすることによって行うことができる。例えば、ドレイン端子827をN+にドープする間、ソース端子825を被覆してもよく、その後、ドレイン端子827を被覆した状態でソース端子825をP+にドープする。
【0130】
図38に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のトンネルFET構造が電流レベルに及ぼす作用を示す。プロット3810は拡散FETのオン状態を示し、プロット3820はオフ状態を示す。両方のプロットにおいて、価電子帯3835と伝導帯3845が示されている。典型的には、トンネルFETでは、「オン」状態電流は電荷担体のバンド間トンネル現象によって支配される。電流レベルは、ソース825とチャネル850の間の障壁の形状によって決まる。このようなFETの抵抗は、ソース825とチャネル850のドーピングによって調節することができ、ゲートおよびドレイン・バイアスの関数である。
【0131】
図39に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のトンネルFET構造が電流レベルに及ぼす作用を示す。図のプロットは、典型的なFETの第1の伝達特性3910と、ソースのドーピングがドレインおよびチャネルのドーピングとは異なるトンネルFET3700の第2の伝達特性3920との比較を示す。図からわかるように、トンネルFET3700は、より低い電流を有する。なお、
図39のプロットは、1つの例示の状況からの結果値を示していることと、他の実施例ではプロットは例示されているものとは異なることがあることに留意されたい。
【0132】
図40に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載のトンネルFET構造におけるエネルギー障壁が電流レベルに及ぼす作用を示す。例示のプロットは、トンネルFETの抵抗を、ソース端子825における異なるドーピング濃度による、ゲート電圧の関数として示している。例えば、このプロットは、それぞれ、4×10
20cm
-3(4010)、6×10
20cm
-3(4020)、8×10
20cm
-3(4030)、および1×10
21cm
-3(4040)のドーピング濃度を示している。なお、濃度の値は上記の例示の値と異なってもよく、それによってFET抵抗を
図40に示すものとは異なるように変化させることができることに留意されたい。
【0133】
図37に戻って参照すると、トンネルFET構造は、デバイス領域内の所定のチャネル領域850の上のゲート・スタック840(例えば、ゲート誘電体層841と、ゲート誘電体層841上のゲート導体層842と、ゲート導体層842上の窒化物キャップ層などのキャップ層843)をさらに含む。また、ゲート・スタック840の対向する両側にゲート側壁スペーサ845が形成される。
【0134】
また、トンネルFET3700に重みを記憶するために、FETデバイス3700のゲート電位が特定の値に維持される。これは、異なる構造によって実現可能である。
【0135】
図41に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、トンネルFET3700に重みを記憶するための一実施形態を示す。トンネルFET3700は、例えばRPUアレイ600のクロスポイントのそれぞれにおける他の回路2410からキャパシタ1510に接続される。ゲート電圧を供給するためにプレートに電荷が蓄積され、蓄積される電荷は、RPUアレイ600内のクロスポイントに記憶される重みを表す。なお、図を簡単にするために、
図41にはFETデバイス3700の各部のうちの一部のみが示されていることに留意されたい。
【0136】
図42に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、トンネルFET3700に重みを記憶するための一実施形態を示す。ゲート・スタック840にフローティング・ゲートなどの電荷蓄積層1610が付加されている。電荷蓄積層1610には、ゲート電圧を供給するために電荷を蓄積することができる。電荷蓄積層1610はポリシリコンからなる。1つまたは複数の実施例では、電荷蓄積層1610の後に別のゲート誘電体層841が付加され、その後、電極のための導体層842などの他の層がゲート・スタック840に付加される。
【0137】
図43に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、トンネルFET3700に重みを記憶するための別の実施形態を示す。ここでは、ゲート・スタックがゲート誘電体層841と、それに続く第1の導体層842を含む。その後、二酸化ハフニウム(HfO
2)からなるものなどの強誘電体層1710が付加される。強誘電体層1710の分極が、ゲート電圧を供給する。また、ゲート・スタック840は、制御ゲート電極を形成するための第2の導体層842を含む。第1の導体層842は、強誘電体層1710の脱分極という技術的課題に対処する。
【0138】
本明細書に記載のFET構造は、例えばエネルギー障壁830のため、またはソースおよびドレイン/チャネルの異なるドーピングのために、非対称な構造をもたらす。デバイスのこの非対称な構造のため、読み出しがフォワード時とバックワード時とで異なる方式で適用される。
【0139】
図44に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載の非対称FET構造を備えたRPUアレイを使用したフォワード・パスを示す。図のように、RPUアレイ600は各クロスポイントにおいて非対称FET4400(拡散FET800、HBFET1400、またはトンネルFET3700)を含む。フォワード・パス時、RPUアレイ600の各行に電圧パルス4420が印加され、列における結果の電流が電流積算器4410を使用して合計される。フォワード・パスでは、FET4400のソース端子825が対応する列の電流積分器4410に接続され、FET4400のドレイン端子827に正パルスが印加される。したがって、フォワード・パス時、FET4400を通る電流はFET4400の制御可能な抵抗の作用を受ける。
【0140】
図45に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、本明細書に記載の非対称FET構造を備えたRPUアレイを使用したバックワード・パスを示す。図のように、RPUアレイ600は、各クロスポイントにおいて非対称FET4400(拡散FET800、HBFET1400またはトンネルFET3700)を含む。バックワード・パス時、RPUアレイ600の各列に電圧パルス4420が印加され、行における結果の電流が電流積算器4410を使用して合計される。バックワード・パス時、ソース825およびドレイン827におけるベース電圧が正値+Vにシフトされる。FET4400のドレイン端子827が対応する行の電流積算器4410に接続され、FET4400のソース端子825に負パルスが印加される。したがって、バックワード・パス時、FET4400を通る電流はFET4400の制御可能抵抗の作用を受ける。
【0141】
また、本発明の1つまたは複数の実施形態によると、RPUアレイ600は対称FET構造を使用して実装することができる。エネルギー障壁830を含む拡散方式FET800およびHBFET1800を、FETデバイス構造を対称にするようにドレイン側に実質的に同じエネルギー障壁830’を備えて製作することができる。
【0142】
図46に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、拡散FETの例示の対称半導体構造を示す。この実施形態では、拡散FETが、ソース825とチャネル850の間の第1のエネルギー障壁830と、チャネル850とドレイン827の間の第2のエネルギー障壁830’との、1対のエネルギー障壁を含む。エネルギー障壁領域830および830’は、チャネル850よりも高濃度にドープされた同じ材料からなる。
【0143】
図47に、本発明の1つまたは複数の実施形態による、HBFETの例示の対称半導体構造を示す。この実施形態では、HBFETは、ソース825とチャネル850の間の第1のエネルギー障壁830と、チャネル850とドレイン827の間の第2のエネルギー障壁830’との、1対のエネルギー障壁を含む。エネルギー障壁領域830および830’は、III-V構造とSi-SiGe構造のいずれを使用するかに応じて、リン化インジウム(InP)またはSiなどの、ヘテロ障壁を形成するための同じ材料からなる。
【0144】
本明細書では本発明の様々な実施形態について関連する図面を参照しながら説明している。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態も考案することができる。以下の説明および図面では、要素間の様々な接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が記載されているが、当業者は、本明細書に記載の位置関係の多くは、向きが変更されても記載されている機能が維持される場合、向きには依存しないことがわかるであろう。これらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に明記されていない限り、直接的または間接的とすることができ、本発明はこの点に関して限定的であることが意図されていない。同様に、「結合される」という用語とその変形は、2つの要素の間に通信経路を有することを表し、要素間に介在要素/接続部がない要素間の直接接続を含意しない。これら変形のすべては、本明細書の一部とみなされる。したがって、実体間の結合は、直接結合または間接結合を指す場合があり、実体間の位置関係は、直接的位置関係または間接的位置関係であり得る。間接的位置関係の一例として、本説明で層「A」を層「B」の上に形成すると言う場合、層「A」と層「B」の関連特性および機能が介在層によって実質的に変更されない限り、層「A」と層「B」との間に1つまたは複数の介在層(例えば層「C」)がある状況を含む。
【0145】
特許請求の範囲および本明細書の解釈のために以下の定義および略語を使用するものとする。本明細書で使用する「含んでいる(comprises)」、「含む(comprising)、「含んでいる(includes)」、「含む(including)」、「有している(has)」、「有する(having)」、「含んでいる(contains)」、または「含む(containing)」という用語またはこれらの任意のその他の変形は、非排他的包含を含むものと意図されている。例えば、列挙されている要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物、または装置は、必ずしもそれらの要素のみには限定されず、明示的に記載されていないかまたはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物、または装置に固有の他の要素を含み得る。
【0146】
さらに、本明細書では「例示の」という用語を使用して、「例、事例または例示となる」ことを意味する。「例示の」として本明細書に記載されているいずれの実施形態または設計も、必ずしも他の実施形態または設計よりも好ましいかまたは有利であるものと解釈されるべきではない。「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という用語は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4などを含むものと理解される。「複数の」という用語は、2以上の任意の整数、すなわち、2、3、4、5などを含むものと理解される。「接続」という用語は、間接的な「接続」と直接的な「接続」とを含み得る。
【0147】
本明細書で「一実施形態」「ある実施形態」、「例示の実施形態」などと言う場合、それは、記載されているその実施形態が、特定の特徴、構造または特性を含み得るが、すべての実施形態がその特定の特徴、構造または特性を備えていてもいなくてもよいことを示している。また、そのような語句は必ずしも同じ実施形態を指していない。さらに、ある実施形態に関連して特定の特徴、構造または特性が記載されている場合、明示的に記載されているか否かを問わず、そのような特徴、構造または特性を他の実施形態に関連して備えることが他の当業者の知識の範囲内にあるものと認められる。
【0148】
以下の説明において、「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」という用語およびこれらの派生語は、記載されている構造および方法に対して、図面における向きの通りの関係にあるものする。「重なっている」、「~の上に(atop)」、「~上に(on top)」、「~の上に位置する」または「~上に位置する」という用語は、第1の構造などの第1の要素が、第2の構造などの第2の要素の上に存在することを意味し、その際、第1の要素と第2の要素との間に境界面構造などの介在要素が存在し得る。「直接接触」という用語は、第1の構造などの第1の要素と、第2の構造などの第2の要素とが、それら2つの要素の境界面に中間の導電層、絶縁層または半導体層なしに接続されることを意味する。
【0149】
「約」、「実質的に」、「ほぼ」という用語およびこれらの変形は、本願の出願の時点で利用可能な機器に基づく特定の数量の測定に付随する誤差を含むことが意図されている。例えば、「約」は、記載されている値の±8%もしくは5%、または2%の範囲を含み得る。
【0150】
例えば「第2の要素に対して選択的な第1の要素」などの、「~に対して選択的」という用語は、第1の要素がエッチングされることができ、第2の要素がエッチ・ストップとして機能することができることを意味する。
【0151】
「共形の」という用語(例えば共形の層)は、その層の厚さがすべての表面で実質的に同じであること、または厚さのばらつきがその層の公称厚さの15%未満であることを意味する。
【0152】
「エピタキシャル成長または付着あるいはその両方」および「エピタキシャル形成された、またはエピタキシャル成長させた、あるいはその両方の」という用語は、半導体材料(結晶性材料)の、別の半導体材料(結晶性材料)の付着面上での成長であって、成長させる半導体材料(結晶性オーバーレイヤ)が付着面(シード材料)の半導体材料と実質的に同じ結晶特性を有する成長を意味する。エピタキシャル付着プロセスでは、付着原子が付着面の原子の結晶配列の方向に向くように表面上を動き回るのに十分なエネルギーを有して、半導体基板の付着面に到着するように、ソース・ガスによって供給される化学反応物質が制御可能であり、システム・パラメータを設定することができる。エピタキシャル成長半導体材料は、そのエピタキシャル成長材料が形成される付着面と実質的に同じ結晶特性を有することができる。例えば、{100}配向結晶面上に付着させたエピタキシャル成長半導体材料は、{100}配向を呈することができる。本発明のある実施形態では、エピタキシャル成長または付着あるいはその両方のプロセスは、半導体表面上での形成に対して選択的とすることができ、二酸化シリコンまたはシリコン窒化物表面などの露出面上に材料を付着させることもさせないことも可能である。
【0153】
本明細書で前述したように、簡潔にするために、半導体デバイスおよび集積回路(IC)製作に関する従来の技術については本明細書では詳細に説明している場合もしていない場合もある。ただし、背景技術として、本発明の1つまたは複数の実施形態を実装する際に利用可能な半導体デバイス製作プロセスのより一般的な説明を以下に示す。本発明の1つまたは複数の実施形態を実装する際に使用される特定の製作作業は、個々には周知の場合があるが、本発明の作業またはその結果の構造あるいはその両方の、記載されている組み合わせは固有のものである。したがって、本発明による半導体デバイスの製作に関連して説明する作業の固有の組み合わせは、半導体(例えばシリコン)基板上で実施される、個々には周知の様々な物理的および化学的プロセスを使用しており、それらの一部について以下の各段で説明する。
【0154】
一般に、ICにパッケージ化されるマイクロチップを形成するために使用される様々なプロセスは、4つの大まかなカテゴリ、すなわち、膜付着と、除去/エッチングと、半導体ドーピングと、パターン形成/リソグラフィとに分類される。付着は、ウエハ上に材料を成長、コーティング、またはその他の方法で移す任意のプロセスである。利用可能な技術としては、物理気相付着(PVD)、化学気相付着(CVD)、電気化学付着(ECD)、分子線エピタキシ(MBE)、および最近では原子層堆積(ALD)などがある。除去/エッチングは、ウエハから材料を除去する任意のプロセスである。例としては、エッチング・プロセス(ウェットまたはドライ)、化学機械平坦化(CMP)などがある。例えば、反応性イオン・エッチング(RIE)は、化学反応性プラズマを使用して、露出表面から材料の一部を取り除くイオンの衝撃に材料をさらすことにより、半導体材料のマスクされたパターンなどの材料を除去するドライ・エッチングの一種である。プラズマは、典型的には、電磁界により低圧(真空)下で生成される。半導体ドーピングは、例えば、一般には、拡散またはイオン注入あるいはその両方によってトランジスタのソースおよびドレインをドープすることによる電気特性の改変である。これらのドーピング・プロセスの後に、炉アニールまたは高速熱アニール(RTA)が行われる。アニールは、注入されたドーパントを活性化する役割を果たす。導体(例えばポリシリコン、アルミニウム、銅など)と絶縁体(例えば様々な形態の二酸化シリコン、シリコン窒化物など)の両方の膜を使用して、トランジスタとその構成要素を接続および分離する。半導体基板の様々な領域の選択的ドーピングによって、電圧の印加により基板の導電率を変化させることができる。これらの様々な構成要素からなる構造を形成することによって、数百万個のトランジスタを製作し、互いに配線して最新のマイクロエレクトロニクス・デバイスの複雑な回路を形成する。半導体リソグラフィは、後でパターンを基板に転写するための、半導体基板上での3次元レリーフ・イメージまたはパターンの形成である。半導体リソグラフィでは、フォトレジストと呼ばれる感光性ポリマーによってパターンが形成される。トランジスタを構成する複雑な構造と、回路の数百万個のトランジスタを接続する多くの電線とを製作するために、リソグラフィ工程とエッチ・パターン転写工程とが複数回繰り返される。ウエハ上にプリントされる各パターンは、その前に形成されたパターンと位置合わせされ、導体、絶縁体および選択的ドープ領域が徐々に構築されて最終的なデバイスを形成する。
【0155】
図面中のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態による製作または作業方法あるいはその両方の可能な実装形態を示す。方法の様々な機能/作業が流れ図にブロックで表されている。代替実装形態によっては、ブロックに記載されている機能は、図に記載されている順序とは異なる順序で行われてもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、関与する機能に応じて、実際には実質的に並行して実行されてよく、またはそれらのブロックは場合によっては逆の順序で実行されてもよい。
【0156】
例示のために本発明の様々な実施形態に関する説明を示したが、網羅的であること、または本明細書に記載の実施形態に限定することを意図したものではない。記載されている実施形態の範囲および思想から逸脱することなく、当業者には多くの変更および変形が明らかとなるであろう。本明細書で使用されている用語は、実施形態の原理、実際の適用、または市場にある技術に優る技術的改良を最もよく説明するため、または当業者が本明細書に記載の実施形態を理解することができるようにするために選択されている。