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特許7355398無接点充電コイルユニット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】無接点充電コイルユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20230926BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230926BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20230926BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20230926BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230926BHJP
   B60M 7/00 20060101ALN20230926BHJP
   B60L 53/12 20190101ALN20230926BHJP
   B60L 53/30 20190101ALN20230926BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/32 140
H01F41/12 Z
H02J50/10
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L53/12
B60L53/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021056758
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153964
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000132574
【氏名又は名称】株式会社セルコ
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖知
(72)【発明者】
【氏名】山崎 今朝夫
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 佑治
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076605(JP,A)
【文献】特開2014-120325(JP,A)
【文献】特開2015-012066(JP,A)
【文献】特開2012-151207(JP,A)
【文献】特開平09-306760(JP,A)
【文献】特開2012-089618(JP,A)
【文献】特開2015-162475(JP,A)
【文献】実開平04-125412(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/32
H01F 41/12
H02J 50/10
H02J 7/00
B60M 7/00
B60L 53/12
B60L 53/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部を有するベース部材と、
絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を前記巻線収納部に沿って巻回してなるコイルと、
下面に前記ベース部材の巻線収納部に対応し嵌め合い可能な凸部を有し、前記ベース部材の上部を覆うカバー部材と、
前記コイルを前記ベース部材とカバー部材との間に固着し、水密に封止するための封止材とを備えていることを特徴とする無接点充電コイルユニット。
【請求項2】
前記巻線収納部は、前記ベース部材の上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された溝から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無接点充電コイルユニット。
【請求項3】
前記リッツ線は前記凸部の押圧により断面が平角形状となるように平角形状化されていることを特徴とする請求項2に記載の無接点充電コイルユニット。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記凸部に上面まで貫通した複数の貫通穴が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の無接点充電コイルユニット。
【請求項5】
前記巻線収納部は、前記ベース部材の上面に立設された複数のガイドピンから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無接点充電コイルユニット。
【請求項6】
前記ベース部材及び前記カバー部材は、柔軟な可撓性を有する樹脂から所定の湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無接点充電コイルユニット。
【請求項7】
前記封止材は、シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無接点充電コイルユニット。
【請求項8】
上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部を有するベース部材の少なくとも前記巻線収納部に所定量の封止材を塗布する封止材塗布工程と、
絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を前記巻線収納部に沿って巻回してコイルを成形するコイル成形工程と、
下面に前記ベース部材の巻線収納部に対応し嵌め合い可能な凸部を有するカバー部材を上からかぶせて前記凸部を前記巻線収納部に嵌合し、余分の前記封止材を外部へ押し出すと共に、前記コイルを前記巻線収納部に水密に封止する封止工程と、
前記コイルを前記ベース部材と前記カバー部材との間に固着するように、前記封止材を硬化させる硬化工程とを備えていることを特徴とする無接点充電コイルユニットの製造方法。
【請求項9】
前記巻線収納部は、前記ベース部材の上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された溝から構成され、
前記封止工程で前記カバー部材を上からかぶせて前記凸部を前記巻線収納部に嵌合する際に、所定圧力で加圧することにより前記リッツ線を断面が平角形状となるように平角形状化する平角形状化工程をさらに備えていることを特徴とする請求項8に記載の無接点充電コイルユニットの製造方法。
【請求項10】
前記巻線収納部は、前記ベース部材の上面に立設された複数のガイドピンから形成され、
前記封止材塗布工程では、前記複数のガイドピンの間に前記封止材を塗布し、
前記コイル成形工程では、前記複数のガイドピンにより形成された前記巻線収納部に沿って巻回してコイルを成形することを特徴とする請求項8に記載の無接点充電コイルユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)に非接触充電を行うための電磁誘導型非接触充電システム用の無接点充電コイルユニット及び無接点充電コイルユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電ケーブルによって、電気自動車専用のコンセントを使って充電する方法が一般的である。EV市場は今後さらに拡大する中で、充電の自動化は必須条件である。充電ケーブルを接続しなくても指定の位置に駐車するだけで充電ができる無接点充電(非接触充電)と呼ばれる車体に触れず充電できるシステムが期待を集めている。
【0003】
電気自動車の無接点充電方法の一つとして、コイルを用いた電磁誘導方式の非接触給電システムが提案されている。この非接触給電システムは、交流電源から電力が供給される給電側コイル(1次コイル)と、給電側コイルに対向して配置され、給電側コイルと磁気的に結合する受電側コイル(2次コイル)とを備える。このような電気自動車用の非接触給電システムにおいては、給電側コイルが車外(床面)に配置され、受電側コイルが車内に配置される。1次コイルとその上に近接させた受信部の2次コイルとの間で発生する電磁気誘導により、2次コイルに電気的に連結されたバッテリーを充電するようになっている。
【0004】
非接触給電システム用コイルユニットは、IH電磁調理器のように、上ケースと下ケースとの間にコイルを配置する構成となっている。近年、線材と、コイルユニット周辺に配置されるシールド材等の金属系材料との絶縁を十分に確保すると共に、コイルユニットの耐荷重性能を向上するワイヤレス電力伝送用コイルユニットが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載されているワイヤレス電力伝送用コイルユニットは、平面状ボビンの表面に中央から外周側に向けて渦状に形成された溝状の巻線収納部が設けられ、この巻線収納部に沿って線材(丸線)が巻回され、平面状ボビンの上に絶縁カバー部材が覆うように配置されている。
【0006】
また、非接触給電システムの高性能化に対応して給電側コイル及び受電側コイルには平角線を使用することが望まれている。また、コイルの占積率のさらなる向上を目的として巻線の断面積が大きくなる傾向にある。しかし、断面積が大きくなるにつれて渦電流損失が増大する問題があった。この渦電流損失への対策として、コイルの導体として複数本のエナメル線からなるリッツ線(集合線)を用いる方法が注目されている。リッツ線を用いることにより、単線に比べて、渦電流の影響により生じる導体損失(渦損失)を低減することができる利点がある。しかし、一般的なリッツ線を用いる場合は、コイルの占積率が低いという問題点があった。
【0007】
近年、寸法上の要求を満たしながら、安定した高い電気特性を確保するために、リッツ線を渦巻き状に巻線し円環状の平面コイルに形成した後、厚さ方向に加圧成形によりリッツ線の断面を略矩形にした無接点給電システム用のリッツ線コイルが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
特許文献2に記載されているリッツ線コイルの製造方法は、円環状の平面部と、平面部の中央に円筒状に形成された内径規制部と、平面部の外周縁に起立して形成された外径規制部とを有する巻枠を用いて、リッツ線を巻枠内に渦巻き状に巻線し円環状の平面コイルに形成した後、巻枠の平面部に対応する円環形状を有する加圧部材によって、巻線されたリッツ線を厚さ方向に所定の圧力で加圧成形する。これにより、リッツ線の断面が矩形となり、占積率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-76605号公報
【文献】特開2014-120325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、電気自動車用の非接触給電システム用コイルユニットは、屋外環境で使用されるため、薄い皮膜を持つ繊細なリッツ線からなるコイルを水や振動、さらに荷重等に対して保護することが要求される。
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のコイルユニットは、線材とコイルユニット周辺に配置されるシールド材等の金属系材料との絶縁を十分に確保すること及びコイルユニットの耐荷重性能を向上することができるが、防水性、耐振動及び熱伝導性を確保することができないという問題点があった。また、コイルの占積率が低いという問題点があった。
【0012】
また、上述した特許文献2に記載のリッツ線コイルの製造方法では、リッツ線の断面が矩形となる円環状の平面コイルを形成した後、コイルを巻枠から取り出し、テープ等で固定する必要があり、また、コイルを収納ケースに配置してコイルユニットを構成する必要があるため、コイル巻く作業が煩雑で、品質を確保することが困難である。また、コイルユニットの防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性が考慮されていないという問題点があった。
【0013】
従って、本発明の目的は、防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性が優れた無接点充電コイルユニット及び無接点充電コイルユニットの製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、低コストで生産効率良く、大量生産に適する無接点充電コイルユニット及び無接点充電コイルユニットの製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、コイルの占積率を向上することができる無接点充電コイルユニット及び無接点充電コイルユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、無接点充電コイルユニットは、上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部を有するベース部材と、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部に沿って巻回してなるコイルと、下面にベース部材の巻線収納部に対応し嵌め合い可能な凸部を有し、ベース部材の上部を覆うカバー部材と、コイルをベース部材とカバー部材との間に固着し、水密に封止するための封止材とを備えている。
【0017】
リッツ線を巻線収納部に沿って巻回してなるコイルは、カバー部材の凸部で押えられ、封止材によりベース部材とカバー部材との間に固着、封止されることで、コイルが封止材で保護され、電気的信頼性を確保すると共に、コイルユニットの防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性を向上することができる。また、リッツ線を用いるため、低コストで生産効率良く、大量生産に適する。
【0018】
巻線収納部は、ベース部材の上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された溝から構成されていることが好ましい。
【0019】
リッツ線は凸部の押圧により断面が平角形状となるように平角形状化されていることが好ましい。これにより、コイルの占積率を向上することができる。
【0020】
カバー部材は、凸部に上面まで貫通した複数の貫通穴が設けられていることが好ましい。これにより、封止する際に、溝状の巻線収納部内の空気を外部へ抜くことができ、また、加圧時に封止材が充分に塗布されたかを確認することができる。
【0021】
巻線収納部は、ベース部材の上面に立設された複数のガイドピンから形成されていることが好ましい。これにより、封止材の量をより多く、十分にリッツ線に囲み込めるようにすることができ、耐衝撃性や熱伝導性や防水性の向上ができる。
【0022】
ベース部材及びカバー部材は、柔軟な可撓性を有する樹脂から所定の湾曲形状に形成されていることが好ましい。これにより、湾曲形状のような多彩で柔軟な車載用無接点充電コイルユニットの形状用途に対応することができる。
【0023】
封止材は、シリコーン樹脂からなることが好ましい。
【0024】
本発明によれば、無接点充電コイルユニットの製造方法は、上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部を有するベース部材の少なくとも巻線収納部に所定量の封止材を塗布する封止材塗布工程と、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部に沿って巻回してコイルを成形するコイル成形工程と、下面にベース部材の巻線収納部に対応し嵌め合い可能な凸部を有するカバー部材を上からかぶせて凸部を巻線収納部に嵌合し、余分の封止材を外部へ押し出すと共に、コイルを巻線収納部に水密に封止する封止工程と、コイルをベース部材とカバー部材との間に固着するように、封止材を硬化させる硬化工程とを備えている。
【0025】
巻線収納部は、ベース部材の上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された溝から構成され、封止工程でカバー部材を上からかぶせて凸部を巻線収納部に嵌合する際に、所定圧力で加圧することによりリッツ線を断面が平角形状となるように平角形状化する平角形状化工程をさらに備えていることが好ましい。
【0026】
巻線収納部は、ベース部材の上面に立設された複数のガイドピンから形成され、封止材塗布工程では、複数のガイドピンの間に封止材を塗布し、コイル成形工程では、複数のガイドピンにより形成された巻線収納部に沿って巻回してコイルを成形することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の無接点充電コイルユニットによれば、リッツ線を巻線収納部に沿って巻回してなるコイルは、カバー部材の凸部で押えられ、封止材によりベース部材とカバー部材との間に固着、封止されることで、コイルが封止材で保護され、電気的信頼性を確保すると共に、コイルユニットの防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性を向上することができる。また、リッツ線を用いるため、低コストで生産効率良く、大量生産に適する。
【0028】
本発明の無接点充電コイルユニットの製造方法によれば、ベース部材の少なくとも巻線収納部に所定量の封止材を塗布し、リッツ線を巻線収納部に沿って巻回してコイルを成形し、カバー部材を上からかぶせて凸部を巻線収納部に嵌合し、余分の封止材を外部へ押し出すと共に、コイルを巻線収納部に水密に封止し、そして、封止材を硬化させることで、封止材を効果的に充填させることができ、コイルの電気的信頼性が確保されると共に、防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性が優れたコイルユニットを得ることができる。また、低コストで生産効率良く、大量生産に適する無接点充電コイルユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無接点充電コイルユニットの構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2図1に示す無接点充電コイルユニットの構成を概略的に示す局部断面図である。
図3】本発明に係る無接点充電コイルユニットの製造方法の製造工程を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る無接点充電コイルユニットの製造方法の製造工程における状態を示す局部断面図である。
図5】本発明に係る無接点充電コイルユニットの製造方法の封止材塗布工程において、封止材塗布状態の他の例を示す局部断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る無接点充電コイルユニットの構成及び製造方法を概略的に示す局部断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る無接点充電コイルユニットの構成を概略的に示す局部断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る無接点充電コイルユニットの構成を概略的に示す局部分解斜視図及び局部断面図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係る無接点充電コイルユニットの構成を概略的に示す外観斜視図及び局部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る無接点充電コイルユニット及び無接点充電コイルユニットの製造方法の実施形態を、図を参照して説明する。
【0031】
図1は本発明の第1の実施形態に係る無接点充電コイルユニット100の構成を概略的に示している。図1において、無接点充電コイルユニット100のカバー部材20が分解された状態を示している。図2は、図1に示す無接点充電コイルユニット100の構成を概略的に示す局部(A-A線)断面図である。
【0032】
図1及び図2に示すように、無接点充電コイルユニット100は、ベース部材10と、ベース部材10の上部を覆うカバー部材20と、コイル30と、封止材40とを備えている。
【0033】
ベース部材10は、例えば、熱可塑性樹脂材料又は熱硬化樹脂材料から成形され、その上面11に中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部12が形成されている。この巻線収納部12は、ベース部材10の上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された四角形断面の角型の溝から構成されている。この溝の側壁が、コイル30を形成するためにリッツ線を巻回する際のガイドとして機能する。なお、ベース部材10の厚さは必要に応じて適宜に設計することができる。
【0034】
カバー部材20は、例えば、熱可塑性樹脂材料又は熱硬化樹脂材料から成形され、その下面21にベース部材10の巻線収納部12に対応し嵌め合い可能な凸部22が設けられ、ベース部材10の上部を覆うように構成されている。凸部22は、所定高さを有し、コイル30を巻線収納部12内に押え、保持するように構成されている。なお、カバー部材20の厚さは必要に応じて適宜に設計することができる。
【0035】
コイル30は、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部12に沿って巻回して形成される。本実施形態において、図2に示すように、リッツ線は凸部22の押圧により断面が平角形状となるように平角形状化されている。
【0036】
封止材40は、コイル30をベース部材10とカバー部材20との間に固着し、水密に封止するためのものであり、例えば、ゲル状のシリコーンを用いて塗布することが好ましい。図2に示すように、封止材40は、リッツ線の表面を囲むように巻線収納部12に充填され、また、ベース部材10の上面11とカバー部材20の下面21との間にも充填されている。封止材40が硬化されることで、コイル30をベース部材10とカバー部材20との間に固着し、水密に封止することができる。なお、シリコーンシート、又は他の樹脂、接着剤を用いても良い。封止材40として、防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性を有する材料を用いることが望ましい。
【0037】
図3は無接点充電コイルユニットの製造方法の製造工程を示している。図4は各製造工程の状態を示している。図4において、図1に示す無接点充電コイルユニット100のA-A線に相当する局部断面図を示している。
【0038】
本実施形態において、予め上面11に中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部12を有するベース部材10と、下面21にベース部材10の巻線収納部12に対応し嵌め合い可能な凸部22を有するカバー部材20とを用意する。
【0039】
無接点充電コイルユニット100の製造方法は、図3及び図4に示すように、まず、封止材塗布工程(ステップS1)で、注入機等でベース部材10の巻線収納部12に所定量の封止材40を塗布する(図4(A)及び(B)参照)。なお、本発明はこれに限定されるものではない。封止材40の塗布は、図5に示すように、ベース部材10の巻線収納部12及び上面11に塗布、塗布するようにしても良い。次いで、コイル成形工程(ステップS2)で、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部12に沿って巻回してコイル30を形成する。巻線収納部12Bにコイル30が配置された場合、リッツ線により封止材40が押し上げられ、リッツ線が封止材40により囲まれるようになる(図4(C)参照)。次いで、封止工程(ステップS3)で、カバー部材20をベース部材10の上からかぶせて凸部22を巻線収納部12に嵌合し、余分の封止材40を外部へ押し出すと共に、コイル30を巻線収納部12に水密に封止する(図4(D)参照)。ここで、ベース部材10とカバー部材20との締めつけにより、封止材40を効果的に充填させることができる。次いで、平角形状化工程(ステップS4)で、カバー部材20の上部から加圧し、リッツ線を断面が平角形状となるように平角形状化する(図4(E)参照)。そして、硬化工程(ステップS5)で、封止材40を硬化(固化)させる。これにより、コイル30がベース部材10とカバー部材20との間に固着、封止される。最後に、外部に押し出された余分の封止材40を取り除き、図1及び2に示す無接点充電コイルユニット100が得られる。
【0040】
上述したように、本実施形態の無接点充電コイルユニット100は、上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された溝状の巻線収納部12を有するベース部材10と、下面21にベース部材10の巻線収納部12に対応し嵌め合い可能な凸部22を有するカバー部材20と、リッツ線を巻線収納部12に沿って巻回して形成されるコイル30と、ゲル状のシリコーンからなる封止材40とを備えている。この場合、巻線収納部12において角型の溝の四隅にシリコーンだまりができて、リッツ線をより効果的に保護することができる。
【0041】
無接点充電コイルユニット100の製造方法は、ベース部材10の巻線収納部12に所定量の封止材40を塗布し、リッツ線を巻線収納部12に沿って巻回してコイル30を形成し、カバー部材20をベース部材10の上からかぶせて凸部22を巻線収納部12に嵌合し、余分の封止材40を外部へ押し出すと共に、コイル30を巻線収納部12に水密に封止し、さらに加圧し、リッツ線を断面が平角形状となるように平角形状化し、そして、硬化工程で封止材40を硬化させる。
【0042】
これにより、封止材40を効果的に充填させることができ、コイル30がモールドされた状態になり、封止材40で保護され、電気的信頼性を確保すると共に、無接点充電コイルユニット100の防水性、耐振動性、絶縁性及び熱伝導性を向上することができる。また、リッツ線を用いるため、低コストで生産効率良く、大量生産に適する。また、リッツ線の断面を平角形状となるように平角形状化することにより、コイル30の占積率を向上することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態に係る無接点充電コイルユニット及びその製造方法の実施形態を説明する。図6は第2の実施形態に係る無接点充電コイルユニット100Aの構成及び製造方法を概略的に示す局部断面図であり、同図(A)は封止材塗布工程でベース部材10Aの巻線収納部12Aに封止材40が塗布され、コイル成形工程でコイル30が巻線収納部12Aに沿って巻回して形成された状態を示しており、(B)は封止工程及び平角形状化工程で余分の封止材40が外部へ押し出され、リッツ線を断面が平角形状化された状態を示しており、(C)は硬化工程の後、外部に押し出された余分の封止材40を取り除いた状態を示している。
【0044】
図6に示すように、無接点充電コイルユニット100Aは、ベース部材10Aと、ベース部材10Aの上部を覆うカバー部材20Aと、コイル30と、封止材40とを備えている。無接点充電コイルユニット100Aにおいて、カバー部材20Aが異なる以外は、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な構成を有している。製造方法も上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様である。
【0045】
カバー部材20Aは、図6(A)に示すように、熱可塑性樹脂材料又は熱硬化樹脂材料から成形され、その下面21Aにベース部材10Aの巻線収納部12Aに対応し嵌め合い可能な凸部22Aを有する。凸部22Aは、所定高さを有し、コイル30を巻線収納部12A内に押え、保持するように構成されている。また、凸部22Aには上面まで貫通した複数の貫通穴23Aが設けられている。これら貫通穴23Aを設けることで、封止する際に、溝状の巻線収納部12A内の空気を外部へ抜くことができ、また、加圧時に封止材40が充分に塗布されたかを確認することができる。
【0046】
上述したように、本実施形態の無接点充電コイルユニット100Aは、ベース部材10Aと、カバー部材20Aと、コイル30と、封止材40とを備え、カバー部材20Aに複数の貫通穴23Aを設ける構成を有している。上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な効果が得られる。また、複数の貫通穴23Aを設けることで、封止する際に、溝状の巻線収納部12A内の空気を外部へ抜くことができ、また、加圧時に封止材40が充分に塗布されたかを確認することができる。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態に係る無接点充電コイルユニット及びその製造方法の実施形態を説明する。図7は第3の実施形態に係る無接点充電コイルユニット100Bの構成及び製造方法を概略的に示す局部断面図であり、同図(A)は封止材塗布工程でベース部材10Bの巻線収納部12Bに封止材40が塗布され、コイル成形工程でコイル30が巻線収納部12Bに沿って巻回して形成された状態を示しており、(B)は封止工程及び硬化工程の後、外部に押し出された余分の封止材40を取り除いた状態を示している。
【0048】
図7に示すように、無接点充電コイルユニット100Bは、ベース部材10Bと、ベース部材10Bの上部を覆うカバー部材20Bと、コイル30と、封止材40とを備えている。無接点充電コイルユニット100Bにおいて、カバー部材20Bの凸部22Bの高さが小さく形成した以外は、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な構成を有している。また、本実施形態において、リッツ線を断面が平角形状となるように平角形状化する平角形状化工程を省略した以外、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100の製造方法と同様である。
【0049】
即ち、まず、封止材塗布工程(ステップS1)で、ベース部材10Bの巻線収納部12に所定量の封止材40を塗布する。次いで、コイル成形工程(ステップS2)で、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部12Bに沿って巻回してコイル30を形成する。巻線収納部12Bにコイル30が配置された場合、リッツ線が封止材40により囲まれるようになる(図7(A)参照)。次いで、封止工程(ステップS3)で、カバー部材20Bをベース部材10Bの上からかぶせて凸部22Bを巻線収納部12に嵌合し、余分の封止材40を外部へ押し出すと共に、コイル30を巻線収納部12Bに水密に封止する。そして、硬化工程(ステップS5)で、封止材40を硬化させる。これにより、コイル30がベース部材10Bとカバー部材20Bとの間に固着、封止される。最後に、外部に押し出された余分の封止材40を取り除き、図7(B)に示す無接点充電コイルユニット100Bが得られる。この無接点充電コイルユニット100Bにおいて、コイル30はリッツ線の断面が円形断面のまま、ベース部材10Bとカバー部材20Bとの間に固着し、水密に封止されている。この場合、巻線収納部12Bにおいて角型の溝の四隅にシリコーンだまりができて、リッツ線をより効果的に保護することができる。
【0050】
上述したように、本実施形態の無接点充電コイルユニット100Bは、ベース部材10Bと、カバー部材20Bと、コイル30と、封止材40とを備えている。この場合、コイルの占積率はリッツ線を断面が平角形状化された場合より低い以外、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な効果が得られる。
【0051】
次に、本発明の第4の実施形態に係る無接点充電コイルユニット及びその製造方法の実施形態を説明する。図8は第4の実施形態に係る無接点充電コイルユニット100Cの構成及び製造方法を概略的に示しており、同図(A)は無接点充電コイルユニット100Cの局部分解、断面図であり、封止材塗布工程でベース部材10Cの巻線収納部12Cに封止材40が塗布され、コイル成形工程でコイル30が巻線収納部12Cに沿って巻回して形成された状態を示しており、(B)は無接点充電コイルユニット100Cの局部断面図であり、封止工程及び硬化工程の後、外部に押し出された余分の封止材40を取り除いた状態を示している。
【0052】
図8に示すように、無接点充電コイルユニット100Cは、ベース部材10Cと、ベース部材10Cの上部を覆うカバー部材20Cと、コイル30と、封止材40とを備えている。本実施形態において、コイル30及び封止材40は、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な構成を有している。
【0053】
ベース部材10Cは、例えば、熱可塑性樹脂材料又は熱硬化樹脂材料から成形され、その上面11Cに中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部12Cを有する。この巻線収納部12Cは、ベース部材10Cの上面11Cに立設された複数のガイドピン13Cから形成されている。即ち、これら複数のガイドピン13Cが、リッツ線を巻回する際のガイド用側壁となる。複数のガイドピン13Cは、例えば、樹脂材料から成形されている。
【0054】
カバー部材20Cは、例えば、熱可塑性樹脂材料又は熱硬化樹脂材料から成形され、その下面21Cにベース部材10Cの巻線収納部12Cに対応し嵌め合い可能な凸部22Cを有し、ベース部材10Cの上部を覆うように構成されている。凸部22Cは、所定高さを有し、コイル30を巻線収納部12C内に押え、保持するように構成されている。
【0055】
本実施形態の無接点充電コイルユニット100Cの製造方法は、まず、封止材塗布工程で、ベース部材10Cの巻線収納部12Cに所定量の封止材40を塗布する。次いで、コイル成形工程(ステップS2)で、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部12Cに沿って巻回してコイル30を形成する。巻線収納部12Cにコイル30が配置された場合、リッツ線が封止材40により囲まれるようになる(図8(A)参照)。次いで、封止工程で、カバー部材20Cをベース部材10Cの上からかぶせて凸部22Cを巻線収納部12Cに嵌合し、余分の封止材40を外部へ押し出すと共に、コイル30を巻線収納部12Cに水密に封止する。そして、硬化工程で、封止材40を硬化させる。これにより、コイル30がベース部材10Cとカバー部材20Cとの間に固着、封止される。最後に、外部に押し出された余分の封止材40を取り除き、図8(B)に示す無接点充電コイルユニット100Cが得られる。
【0056】
上述したように、本実施形態の無接点充電コイルユニット100Cは、ベース部材10Cと、カバー部材20Cと、コイル30と、封止材40とを備えている。ベース部材10Cの巻線収納部12Cが複数のガイドピン13Cから形成されているため、溝状の巻線収納部12より簡単に形成することができる。また、封止材40の量をより多く、十分にリッツ線に囲み込めるようにすることができ、耐衝撃性や熱伝導性や防水性の向上ができる。なお、この場合、リッツ線を平角形状化しないため、コイル30の占積率はリッツ線を断面が平角形状化された場合より低い以外、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な効果が得られる。
【0057】
次に、本発明の第5の実施形態に係る無接点充電コイルユニット及びその製造方法の実施形態を説明する。図9は第5の実施形態に係る無接点充電コイルユニット100Dの構成を概略的に示しており、同図(A)は無接点充電コイルユニット100Dの外観を示しており、(B)は無接点充電コイルユニット100Dの局部断面を示している。
【0058】
図9に示すように、無接点充電コイルユニット100Dは、ベース部材10Dと、ベース部材10Dの上部を覆うカバー部材20Dと、コイル30Dと、封止材40とを備えている。本実施形態において、封止材40は、上述した第1の実施形態の無接点充電コイルユニット100と同様な構成を有している。
【0059】
ベース部材10Dは、例えば、シリコーン等の柔軟な可撓性材料から湾曲形状に成形され、その上面11Dに中央部から外周側に向けて渦状に形成された巻線収納部12Dを有する。この巻線収納部12Dは、ベース部材10Dの上面に中央部から外周側に向けて渦状に形成された四角形断面の溝から構成されている。ベース部材10Dの厚さは必要に応じて適宜に設計することができる。
【0060】
カバー部材20Dは、例えば、シリコーン等の柔軟な可撓性材料から湾曲形状に成形され、その下面21Dにベース部材10Dの巻線収納部12Dに対応し嵌め合い可能な凸部22Dを有し、ベース部材10Dの上部を覆うように構成されている。凸部22Dは、所定高さを有し、コイル30Dを巻線収納部12D内に押え、保持するように構成されている。カバー部材20Dの厚さは必要に応じて適宜に設計することができる。
【0061】
コイル30Dは、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線を巻線収納部12Dに沿って巻回して形成されている。この場合、コイル30Dは、ベース部材10Dと同様な湾曲形状に形成されている。
【0062】
無接点充電コイルユニット100Dの製造方法は、上述した第3の実施形態に係る無接点充電コイルユニット100Bと同様である。ここで、詳細な説明を省略する。
【0063】
上述したように、本実施形態の無接点充電コイルユニット100Dは、ベース部材10Dと、カバー部材20Dと、コイル30Dと、封止材40とを備えている。ベース部材10D及びカバー部材20Dは、シリコーン等の柔軟な可撓性材料から湾曲形状に成形されているため、車載用無接点充電コイルユニットとして、様々な形状、用途に対応することができる。また、耐衝撃性をより向上することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態において、コイル30、30Dの形状は、略角環状である例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、円環状、長円環状等の形状であっても良い。
【0065】
また、上述した実施形態においては、コイル30、30Dには、リッツ線を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、丸線、角線を用いても良い。
【0066】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、電気自動車の無接点充電システムに利用できる。
【符号の説明】
【0068】
10、10A、10B、10C、10D ベース部材
11、11A、11B、11C、11D 上面
12、12A、12B、12C、12D 巻線収納部
20、20A、20B、20C、20D カバー部材
21、21A、21B、21C、21D 下面
22、22A、22B、22C、22D 凸部
30、30D コイル
40 封止材
100、100A、100B、100C、100D 無接点充電コイルユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9