(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】金融商品積立システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/06 20120101AFI20230926BHJP
【FI】
G06Q40/06
(21)【出願番号】P 2021165897
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】321004895
【氏名又は名称】株式会社リミットレスコンサルティング
(74)【代理人】
【識別番号】100101524
【氏名又は名称】長谷川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀起
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-234140(JP,A)
【文献】特開2007-004250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0185225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定されている基準購入額に基づいて、予め設定されている購入期日ごとに金融商品を購入して積み立てる金融商品積立システムであって、
記憶手段と、比較手段と、変動購入手段と、平均購入価格算出手段とを有し、
前記記憶手段には、購入する金融商品、基準購入額、少なくとも1つの変動購入額、購入期日、購入履歴、及び、平均購入価格が各顧客に対応して記憶され、
前記比較手段は、顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入期日において、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている当該購入期日における金融商品の市場価格と、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている当該金融商品についての平均購入価格とを比較し、
前記変動購入手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている基準購入額及び少なくとも1つの変動購入額のうちのいずれかの購入額を選択し、当該金融商品について前記選択した購入額の分を購入する処理を実行するとともに、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入履歴を更新する処理を実行し、
前記平均購入価格算出手段は、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入履歴に基づいて、当該金融商品についてこれまでの平均購入価格を算出し、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている平均購入価格を更新する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【請求項2】
請求項1に記載の金融商品購入システムであって、
前記変動購入手段は、購入依頼手段と、購入手段とを有し、
前記購入依頼手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている基準購入額及び少なくとも1つの変動購入額のうちのいずれかの購入額を選択し、当該金融商品及び前記選択した購入額を含む購入依頼信号を前記購入手段に出力する処理を実行し、また、前記購入手段から出力された購入信号が入力されると、当該入力された購入信号に基づいて、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入履歴を更新する処理を実行し、
前記購入手段は、前記購入依頼手段から購入依頼信号が入力されると、当該入力された購入依頼信号に含まれている金融商品及び購入額に基づいて、当該金融商品について当該購入額の分を購入する処理を実行するとともに、当該金融商品について当該購入額の分を購入したことを示す購入信号を前記購入依頼手段に出力するものである、
金融商品積立システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の金融商品積立システムであって、
前記記憶手段には、前記基準購入額より高額の変動購入額が記憶されており、
前記変動購入手段は、
前記比較手段の比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を基準に高額であることを示している場合は、前記金融商品について前記基準購入額の分を購入する処理を実行し、
同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を基準に低額であることを示している場合は、前記金融商品について前記変動購入額の分を購入する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の金融商品積立システムであって、
前記記憶手段には、前記基準購入額より高額の第1の変動購入額、及び、前記第1の変動購入額より高額の第2の変動購入額が記憶されており、
前記変動購入手段は、
前記比較手段の比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を含む所定価格範囲内であることを示している場合は、前記金融商品について前記第1の変動購入額の分を購入する処理を実行し、
同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記所定価格範囲より高額であることを示している場合は、前記金融商品について前記基準購入額の分を購入する処理を実行し、
同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記所定価格範囲より低額であることを示している場合は、前記金融商品について前記第2の変動購入額の分を購入する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の金融商品積立システムであって、
さらに、プール情報記憶手段と、プール残高更新手段とを有し、
前記プール情報記憶手段には、プール用加算期日、プール用加算額、及び、プール残高が各顧客に対応して記憶されており、
前記プール残高更新手段は、顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール用加算期日において、当該顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高に、当該顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール用加算額を加算する処理を実行し、また、顧客及び購入額を含むプール残高更新指示信号が前記変動購入手段から入力されると、当該入力されたプール残高更新指示信号に含まれている顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高から、当該入力されたプール残高更新指示信号に含まれている購入額を減算する処理を実行し、
前記変動購入手段は、前記金融商品について前記選択した購入額の分を購入する処理を実行するとともに、顧客及び購入額を含むプール残高更新指示信号を前記プール残高更新手段に出力する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【請求項6】
請求項5に記載の金融商品積立システムであって、
前記変動購入手段は、顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高が前記比較手段の比較結果に基づいて選択した購入額に満たない場合には、前記金融商品について、前記基準購入額及び前記
少なくとも1つの変動購入額のうち当該プール残高の範囲内で最も高額の購入額の分を購入する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【請求項7】
請求項5に記載の金融商品積立システムであって、
前記変動購入手段は、顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高が前記比較手段の比較結果に基づいて選択した購入額に満たない場合には、当該顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高を増額する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の期日ごとに金融商品を購入して積み立てる金融商品積立システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
投資のために、所定の期日ごとに金融商品が購入され積み立てられる場合がある。
その代表例として、定額購入法(「ドル・コスト平均法」ともいわれる)がある。これは、所定の期日ごとに、所定の金融商品について、所定の金額分を購入する、というものである。
この方法では、その金融商品の市場価格(1口あたりの価格)が変動するものの場合、所定の金額分の口数が変動する。すなわち、市場価格が安価の場合は、多くの口数を購入する一方、市場価格が高価の場合は、少しの口数を購入するのである。
これによって、所定の期日ごとに定量の口数を購入する場合よりも、平均購入価格が引き下げられる、という効果がある。平均購入価格が低下するということは、その分、顧客にとって、投資効果が高まる(売却時損益及び評価損益が改善される)といえる。
【0003】
しかしながら、定額購入法では、上述のように所定の期日ごとに定量の口数を購入する場合よりも平均購入単価が引き下げられる、という効果はあるが、それも限定的である。
このため、より投資効果の高い金融商品積立システムが模索されている。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術を示すものとして、例えば、特許文献1が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、投資効果の高い金融商品積立システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様は、予め設定されている基準購入額に基づいて、予め設定されている購入期日ごとに金融商品を購入して積み立てる金融商品積立システムであって、記憶手段と、比較手段と、変動購入手段と、平均購入価格算出手段とを有し、前記記憶手段には、購入する金融商品、基準購入額、少なくとも1つの変動購入額、購入期日、購入履歴、及び、平均購入価格が各顧客に対応して記憶され、
前記比較手段は、顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入期日において、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている当該購入期日における金融商品の市場価格と、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている当該金融商品についての平均購入価格とを比較し、前記変動購入手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている基準購入額及び少なくとも1つの変動購入額のうちのいずれかの購入額を選択し、当該金融商品について前記選択した購入額の分を購入する処理を実行するとともに、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入履歴を更新する処理を実行し、前記平均購入価格算出手段は、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入履歴に基づいて、当該金融商品についてこれまでの平均購入価格を算出し、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている平均購入価格を更新する処理を実行するものである、金融商品積立システムである。
【0008】
「これまで」には、「初回から前回までの全てにおいて」に限らず、「初回から前回までのうち、最近の所定の回において」も含まれるものとする。また、「それらのうちの一部において」(例えば、1回おき、5回のうち1回等)も含まれるものとする。
「変動購入額」とは、基準購入額に対して割増した購入額(基準購入額よりも高額の購入額)に限らず、割引した購入額(基準購入額よりも低額の購入額)も含まれる。
【0009】
この態様の金融商品積立システムでは、次の作用効果が得られる。
このシステムでは、予め設定されている購入期日ごとに、予め設定された基準購入額に基づいて、顧客のために金融商品が購入され積み立てられる。
その際、比較手段によって、購入期日における金融商品の市場価格と、これまで当該金融商品を購入した平均購入価格とが比較される。
そして、その比較結果に基づいて、変動購入手段によって、当該金融商品について、基準購入額及び少なくとも1つの変動購入額のうちから選択された購入額が選択され、当該金融商品について、その購入額の分が購入され、記憶手段に記憶されている購入履歴が更新される。
また、記憶手段に記憶されている購入履歴に基づいて、平均購入価格算出手段によって、当該金融商品についてこれまでの平均購入価格が算出され、記憶手段に記憶されている平均購入価格が更新される。
【0010】
こうして、該当する購入期日における金融商品の市場価格が前回までの当該金融商品の平均購入価格を基準に割安(低額)の場合は、定額購入法に基づく場合よりも多めに当該金融商品を購入したり、逆に、同市場価格が同平均購入価格を基準に割高(高額)の場合は、定額購入法に基づく場合よりも少なめに当該金融商品を購入したりすることが可能となる。
以上のようにして、この態様の金融商品積立システムでは、顧客にとって、定額購入法に基づく場合よりも、投資効果がより高まる(売却時損益及び評価損益がより改善される)ことが期待できることとなる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様の金融商品積立システムであって、請求項1に記載の金融商品購入システムであって、前記変動購入手段は、購入依頼手段と、購入手段とを有し、前記購入依頼手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている基準購入額及び少なくとも1つの変動購入額のうちのいずれかの購入額を選択し、当該金融商品及び前記選択した購入額を含む購入依頼信号を前記購入手段に出力する処理を実行し、また、前記購入手段から出力された購入信号が入力されると、当該入力された購入信号に基づいて、当該顧客に対応して前記記憶手段に記憶されている購入履歴を更新する処理を実行し、前記購入手段は、前記購入依頼手段から購入依頼信号が入力されると、当該入力された購入依頼信号に含まれている金融商品及び購入額に基づいて、当該金融商品について当該購入額の分を購入する処理を実行するとともに、当該金融商品について当該購入額の分を購入したことを示す購入信号を前記購入依頼手段に出力するものである、金融商品積立システムである。
【0012】
この態様の金融商品積立システムでは、第1の態様の金融商品積立システムの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、変動購入手段が購入依頼手段と購入手段とを有しており、購入依頼手段による購入依頼に基づいて、購入手段が金融商品を購入する。
このため、両手段が別のコンピュータに設けられることも可能となる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の金融商品積立システムであって、
前記記憶手段には、前記基準購入額より高額の変動購入額が記憶されており、
前記変動購入手段は、
前記比較手段の比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を基準に高額であることを示している場合は、前記金融商品について前記基準購入額の分を購入する処理を実行し、
同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を基準に低額であることを示している場合は、前記金融商品について前記変動購入額の分を購入する処理を実行するものである、
金融商品積立システム。
【0014】
「平均購入価格を基準に高額」には、「平均購入価格以上」や「平均購入価格より高額」等がある。「平均購入価格を基準に低額」には、「平均購入価格より低額(未満)」や「平均購入価格以下」等がある。
【0015】
この態様の金融商品積立システムでは、第1又は第2の態様の金融商品積立システムの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、購入期日における金融商品の市場価格がこれまでの当該金融商品の平均購入価格を基準に高額の場合は、当該金融商品について、基準購入額の分が購入され積み立てられる。
一方、同市場価格が同平均購入価格を基準に低額の場合は、当該金融商品について、変動購入額の分が購入され積み立てられる。
こうして、この態様の金融商品積立システムでは、第1の態様の金融商品積立システムの作用効果がより具体的に得られる。
【0016】
なお、「購入額」としては、「基準購入額」「変動購入額」の2段階のものに限らず、複数の「変動購入額」が存在し、全体として3段階以上が存在する態様も含まれる。
すなわち、購入期日における金融商品の市場価格がこれまでの平均購入価格を基準に所定以上に高額の場合は、基準購入額より低額の購入額の分を購入する処理を実行したり、購入期日における金融商品の市場価格がこれまでの平均購入価格を基準に所定以上に低額の場合は、変動購入額より高額の購入額の分を購入する処理を実行したりする態様等でもよい。
さらには、上記の「所定以上に高額/低額の場合」には各々複数段階があり、「基準購入額より低額/変動購入額より高額」にも、各段階に応じて、徐々に低額/高額のものがあってもよい。
【0017】
この態様と実質的に同一の態様として、次のものがある。
「第1又は第2の態様の金融商品積立システムであって、前記記憶手段には、前記基準購入額より低額の変動購入額が記憶されており、前記変動購入手段は、前記比較手段の比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を基準に低額であることを示している場合は、前記金融商品について前記基準購入額の分を購入する処理を実行し、同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を基準に高額であることを示している場合は、前記金融商品について前記変動購入額の分を購入する処理を実行するものである、金融商品積立システム。」
【0018】
本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様の金融商品積立システムであって、前記記憶手段には、前記基準購入額より高額の第1の変動購入額、及び、前記第1の変動購入額より高額の第2の変動購入額が記憶されており、前記変動購入手段は、前記比較手段の比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を含む所定価格範囲内であることを示している場合は、前記金融商品について前記第1の変動購入額の分を購入する処理を実行し、同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記所定価格範囲より高額であることを示している場合は、前記金融商品について前記基準購入額の分を購入する処理を実行し、同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記所定価格範囲より低額であることを示している場合は、前記金融商品について前記第2の変動購入額の分を購入する処理を実行するものである、金融商品積立システムである。
【0019】
「平均購入価格を含む所定価格範囲」とは、例えば、当該平均購入価格の90%~1110%の範囲,同95%~105%の範囲等、種々のものがあり得る。
また、いずれも、その上限や下限を含む場合に限らず、その上限及び下限を含まない場合もあり得る。
【0020】
この態様の金融商品積立システムでは、第1又は第2の態様の金融商品積立システムの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、購入期日における金融商品の市場価格がこれまでの当該金融商品の平均購入価格を基準に所定価格範囲内の場合は、当該金融商品について、第1の変動購入額の分が購入され積み立てられる。
また、同市場価格が同所定価格範囲より高額の場合は、当該金融商品について、基準購入額の分が購入され積み立てられる。
他方、同市場価格が同所定価格範囲より低額の場合は、当該金融商品について、第2の変動購入額の分が購入され積み立てられる。
こうして、この態様の金融商品積立システムでは、第1の態様の金融商品積立システムの作用効果がより具体的に得られる。
【0021】
また、第3の態様の金融商品積立システムでは2種類の購入額の分が購入され積み立てられるものである(又はそれをベースとしているものである)ところ、この態様の金融商品積立システムでは、3種類の購入額の分が購入され積み立てられるものである(又はそれをベースとしているものである)ため、第2の態様の金融商品積み立てシステムよりも、金融商品の購入にあたって、金額ベースでより細やかな変動が加えられることとなり、口数ベースでも、より細やかな変動が加えられることが期待され、積立金額の平準化と積立累計額増加の安定性を高めることが期待できることとなる。
【0022】
なお、「購入額」としては、「基準購入額」「第1の変動購入額」「第2の変動購入額」の3段階のものに限らず、多数(3以上)の「変動購入額」が存在し、全体として4段階以上が存在する態様も含まれる。
すなわち、購入期日における金融商品の市場価格がこれまでの当該金融商品の平均購入価格を基準とする所定価格範囲(その上限)よりも所定以上に高額の場合は、基準購入額より低額の購入額の分を購入する処理を実行したり、同市場価格が同所定価格範囲(その下限)よりも所定以上に低額の場合は、第2の変動購入額より高額の購入額の分を購入する処理を実行したりする態様等でもよい。
さらには、上記の「所定以上に高額/低額の場合」には各々複数段階があり、「基準購入額より低額/第2の変動購入額より高額」には、各段階に応じて、徐々に低額/高額のものがあってもよい。
【0023】
この態様と実質的に同一の態様として、次のものがある。
「第1又は第2の態様の金融商品積立システムであって、前記記憶手段には、前記基準購入額より低額の第1の変動購入額、及び、前記基準購入額より高額の第2の変動購入額が記憶されており、前記変動購入手段は、前記比較手段の比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記平均購入価格を含む所定価格範囲内であることを示している場合は、前記金融商品について前記第1の基準購入額の分を購入する処理を実行し、同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記所定価格範囲より高額であることを示している場合は、前記金融商品について前記第1の変動購入額の分を購入する処理を実行し、同比較結果が、前記購入期日における前記金融商品の市場価格が前記所定価格範囲より低額であることを示している場合は、前記金融商品について前記第2の変動購入額の分を購入する処理を実行するものである、金融商品積立システム。」
【0024】
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様の金融商品積立システムであって、さらに、プール情報記憶手段と、プール残高更新手段とを有し、前記プール情報記憶手段には、プール用加算期日、プール用加算額、及び、プール残高が各顧客に対応して記憶されており、前記プール残高更新手段は、顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール用加算期日において、当該顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高に、当該顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール用加算額を加算する処理を実行し、また、顧客及び購入額を含むプール残高更新指示信号が前記変動購入手段から入力されると、当該入力されたプール残高更新指示信号に含まれている顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高から、当該入力されたプール残高更新指示信号に含まれている購入額を減算する処理を実行し、前記変動購入手段は、前記金融商品について前記選択した購入額の分を購入する処理を実行するとともに、顧客及び購入額を含むプール残高更新指示信号を前記プール残高更新手段に出力する処理を実行するものである、金融商品積立システムである。
【0025】
この態様の金融商品積立システムでは、第1~第4のいずれかの態様の金融商品積立システムの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
プール用加算期日において、プール残高更新手段によって、プール情報記憶手段に記憶されているプール残高に、プール用加算額が加算される。一方、変動購入手段によって前述したように当該金融商品について所定の購入額の分が購入されるのに併せて、同じく変動購入手段によって、プール残高更新手段に対してプール残高更新指示信号が出力される。それに基づいて、プール残高更新手段によって、プール情報記憶手段に記憶されているプール残高から、上記所定の購入額が減算される。
【0026】
以上のようにして、顧客の口座から所定の引落期日(プール用加算期日)ごとに所定の金額がプール用の口座に引き落とされ、それによってプール用の口座にプールされた資金を原資として、金融商品が購入され積み立てられることが可能となる。
そのようにされた場合、顧客の口座からは所定の引落期日(プール用加算期日)ごとに定額の金額が引き落とされるため、顧客としては、自身の口座(プール用の口座に送金される口座)の管理が容易なものとなる。所定の期日ごとに引き落とされる金額が変動する場合は、その残高について注視しておく必要があるが、その配慮をする必要が軽減されるのである。
これにより、定額積立によりプールされた安定的な資金を原資として、前述した第1~第4の態様による作用効果を確保することが期待できることとなる。
【0027】
また、プール用の口座にプールされた資金を原資として金融商品が購入され積み立てられていくため、一般的には、プール用の口座には、その積み立てには使用されない資金が残ることとなる。そこで、普通預金口座やMRF(マネー・リザーブ・ファンド)等、流動性を有する口座をプール用口座とすることによって運用を行うこととなる。また、当該残った資金の全て又は一部を他の投資に使用することも可能である。
【0028】
本発明の第6の態様は、第5の態様の金融商品積立システムであって、前記変動購入手段は、顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高が前記比較手段の比較結果に基づいて選択した購入額に満たない場合には、前記金融商品について、前記基準購入額及び前記少なくとも1つの変動購入額のうち当該プール残高の範囲内で最も高額の購入額の分を購入する処理を実行するものである、金融商品積立システムである。
【0029】
この態様の金融商品積立システムでは、第5の態様の金融商品積立システムの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
プール残高が比較手段の比較結果に基づいて選択された購入額(本来的な購入額)に満たない場合には、プール残高の範囲内で当該本来的な購入額に最も近い購入額の分が購入される。こうして、次善の策がとられることとなる。
【0030】
本発明の第7の態様は、第5の態様の金融商品積立システムであって、前記変動購入手段は、顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高が前記比較手段の比較結果に基づいて選択した購入額に満たない場合には、当該顧客に対応して前記プール情報記憶手段に記憶されているプール残高を増額する処理を実行するものである、金融商品積立システムである。
【0031】
この態様の金融商品積立システムでは、第5の態様の金融商品積立システムの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
プール残高が比較手段の比較結果に基づいて選択された購入額に満たない場合には、プール用口座に追加送金されることによってプール残高が増額され、プール残高が当該購入額に足りることとなり得る。
こうして、比較手段の比較結果に基づいて選択された購入額にプール残高が本来的には満たない場合であっても、あくまで当該購入額の分が購入されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施例1の金融商品積立システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1の金融商品積立システムの作動の全般を示すフローチャートである。
【
図3A】本発明の実施例1の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図2中のステップS30を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図3B】本発明の実施例1の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図2中のステップS60を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図4A】本発明の実施例1の変形例1の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図2中のステップS30を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図4B】本発明の実施例1の変形例1の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図2中のステップS60を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例1の変形例2の金融商品積立システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施例2の金融商品積立システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施例2の金融商品積立システムの作動の全般を示すフローチャートである。
【
図8A】本発明の実施例2の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図7中のステップS130を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図8B】本発明の実施例2の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図7中のステップS150を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図8C】本発明の実施例2の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図7中のステップS160を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例2の変形例1の金融商品積立システムの作動の全般を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施例2の変形例1の金融商品積立システムの作動のうちの一部(
図9中のステップS160を中心とする)を詳細に示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例2の変形例2の金融商品積立システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】本発明の実施例2の変形例3の金融商品積立システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の複数の実施例について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施例の積立システムは、毎月の所定の日(購入期日)に所定の金融商品を購入して積み立てるものである。その金融商品は、株式や国債等、その市場価格が日々(又は時々刻々)変動するものである。
すなわち、この積立システムは、このシステムの運営者のコンピュータが、月々、顧客の銀行口座から引き落とされた資金に基づいて、証券会社や投資信託委託会社等の金融商品取引業者に所定の金融商品の買い付け(購入)を依頼し、積み立てていくものである。
【0034】
金融商品の具体的内容、すなわち、株式か国債か、どの会社の株式か、又は、それらのどのような組み合わせか等については、顧客が自由に決定するようにしてもよいし、運営者が複数の選択肢を顧客に提供し、その中から顧客が選択する、というのでもよい。また、1つしか選択肢がない場合もある。
いずれにしても、毎月、同じ内容の金融商品を購入し積み立てるものであり、購入する口数(個数)が月々変動するのである。
【0035】
また、本発明の実施例としては、変額引き落としタイプと、定額引き落としタイプがある。定額引き落としタイプとは、顧客の銀行口座から月々引き落とされる金額が定額のものである。変額引き落としタイプとは、顧客の銀行口座から月々引き落とされる金額が定額ではない(変動する)ものである。
月々積み立てるための購入額(金額ベース)としては、2種類に限らず、3種類又はそれ以上のものがあり得る。
【0036】
[実施例1]
実施例1の積立システムは、変額引き落としタイプであり、購入額が標準とn倍の2種類のタイプのものである。
例えば、基準購入額が2万円であり、割増分が3倍の場合である。すなわち、割り増しされた購入額である割増購入額(変動購入額)が6万円である。
【0037】
すなわち、金融商品の購入期日において、市場価格がこれまでの平均購入価格と比較して割高の場合(同額の場合を含む)には、基準購入額(2万円)の分の金融商品が購入される。市場価格がこれまでの平均購入価格と比較して割安の場合には、割増購入額(6万円)の分の金融商品が購入される。
こうして、顧客の銀行口座から、毎月、基準購入額(2万円)又は割増購入額(6万円)が引き落とされ、その口数の金融商品が購入され、積み立てられていくのである。
【0038】
まずは、この積立システムの構成について、
図1に基づいて説明する。
そのシステムの運営者のコンピュータ10は制御部20を有し、制御部20には記憶部30,通信部80等が接続されている。
運営者のコンピュータ10は、通信部80において、接続装置90を介してインターネット又は専用回線等の通信網95に接続され得る。
運営者のコンピュータ10は、通信網95を介して、金融商品取引業者のコンピュータ10A,各顧客の口座を運営する銀行のコンピュータ10B,運営者の口座を運営する銀行のコンピュータ10D等と接続され得る。
【0039】
制御部20は、比較手段21,変動購入依頼手段23,平均購入価格算出手段25等の機能を発揮する。
また、金融商品取引業者のコンピュータ10A(その制御部)は、購入手段24等の機能を発揮する。そして、変更購入依頼手段23及び購入手段24によって、変動購入手段22が形成される。
制御部20(その各手段)においては、次の制御及び演算が行われる(後ほど詳述する)。
比較手段21においては、各顧客について、購入期日における所定の金融商品の市場価格と、当該金融商品についてのこれまでの平均購入価格とが比較される。
変動購入依頼手段23においては、比較手段21の比較結果に基づいて、基準購入額及割増購入額(変動購入額)のうちのいずれかの購入額が選択され、当該金融商品について、その選択された購入額の分を購入すべく購入依頼信号が、購入手段24に対して出力される。
購入手段24においては、上述のように購入依頼手段23から購入依頼信号が入力されると、当該金融商品について当該購入額の分が購入する処理が実行されるとともに、その旨を示す購入信号が変動購入依頼手段23に出力される。
変動購入依頼手段23においては、上述のように購入手段24から出力された購入信号が入力されると、当該顧客について記憶部30に記憶されている購入履歴が更新される。
平均購入価格算出手段25においては、当該金融商品についてこれまでの平均購入価格が算出され、当該顧客について記憶部30に記憶されている平均購入価格が更新される。
【0040】
記憶部30(記憶手段)には、プログラム記憶部31,市場価格記憶部32,顧客情報記憶部40等がある。
プログラム記憶部31には、後述する手順を実行するためのプログラムが記憶されている。
市場価格記憶部32には、金融商品の市場価格が記憶される。この積立システムが取り扱う金融商品について、その金融商品取引業者から受信する少なくとも現在(最新)の市場価格が記憶される。
【0041】
顧客情報記憶部40には、この積立システムの全顧客の情報が記憶される。
顧客情報記憶部40には、第1顧客情報記憶部41,第2顧客情報記憶部42,…,第X顧客情報記憶部4X,…があり、各顧客ごとに種々の情報が記憶される。すなわち、第1顧客情報記憶部41には、1番目の顧客の情報が記憶される。第2顧客情報記憶部42には、2番目の顧客の情報が記憶される。第X顧客情報記憶部4Xには、X番目の顧客の情報が記憶される。
【0042】
第1顧客情報記憶部41,第2顧客情報記憶部42,…,第X顧客情報記憶部4X,…の各々には、個人情報記憶部51,設定内容記憶部52,購入履歴記憶部60等がある。
個人情報記憶部51には、当該顧客の個人情報が記憶される。当該顧客の氏名,住所,銀行口座情報等である。
設定内容記憶部52には、この積立システムを当該顧客が利用する上での設定内容が記憶される。すなわち、どの金融商品を購入するか、月々の引き落とし日(購入期日)はいつか、基準購入額及び割増購入額(変動購入額)は各々いくらか等である。
【0043】
購入履歴記憶部60には、初回購入履歴記憶部61,第2回購入履歴記憶部62,…,第n回購入履歴記憶部6n,…がある。
初回購入履歴記憶部61には、初回の購入履歴が記憶される。第2回購入履歴記憶部62には、第2回の購入履歴が記憶される。第n回購入履歴記憶部6nには、第n回の購入履歴が記憶される。
第n回購入履歴記憶部6nには、第n回の市場価格mpn,購入額(金額ベース)pan,購入口数pun(=pan/mpn)が記憶される。また、初回~第n回の平均購入価格avnも記憶される。
【0044】
次に、この金融商品積立システムの作動について、フローチャート(
図2~
図3B)に基づいて説明する。
この実施例では、モデルケースとして、その金融商品の市場価格が次のように変動する場合を想定する。すなわち、初回の市場価格(1口あたりの価格)mp
1が1,500円,第2回(初回から1ヶ月後)の市場価格mp
2が1,300円,第3回(初回から2ヶ月後)の市場価格mp
3が1,450円,第4回(初回から3ヶ月後)の市場価格mp
4が1,350円,第5回(初回から4ヶ月後)の市場価格mp
5が1,400円と変動する場合を想定する。
また、先に例示したように、基準購入額が2万円であり、割増分が3倍の場合であって、割増購入額(変動購入額)が6万円の場合を想定する。
【0045】
図2に示すように、各月の所定の日になると購入期日となり(ステップS10でYesとなり)、以下のステップに進むことによって、顧客の銀行口座から所定の金融商品が購入される。
【0046】
初回の場合(ステップS14でYes)は、これまでの購入実績がないため、これまでの平均購入価格と比較することなく(すなわち、ステップS20の判断を受けることなく)、基準購入額である2万円分を購入して積み立てる(ステップS30)。すなわち、初回の購入金額pa
1=2万円である。このステップS30が、変動購入手段22(
図1)に該当する(変動購入手段22は、変動購入依頼手段23及び購入手段24からなる)。
なお、この態様に限らず、初回は割増購入額である6万円分を購入する、という態様でもよい。また、初回については、基準購入額及び割増積立額以外の金額でもよい。
【0047】
その購入の手順は、以下のとおりである。
図3Aに示すように、運営者のコンピュータ10は、銀行(顧客の口座を運営する銀行)のコンピュータ10Bに対して、基準購入額(2万円)の送金を依頼する(ステップS35)。すなわち、運営者のコンピュータ10は、銀行のコンピュータ10Bに対して、当該顧客の銀行口座から運営者の口座にpa
1=2万円を送金する旨の信号を送信する(以下同様である)。
これに基づいて、銀行は、運営者の口座に2万円を送金する(ステップSB35)。
【0048】
運営者のコンピュータ10は、その入金を確認した(ステップS36でYesになった)後に、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について基準購入額(2万円)分の買い付けを依頼する(ステップS37)。すなわち、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに、その旨の信号を送信する(以下同様である)。今回(初回)の購入口数pu
1は、pa
1/mp
1=2万円/1,500円=13.3333である(小数点以下5桁目を四捨五入。以下同様)。このステップS37が、変動購入依頼手段23に該当する。
また、運営者は、金融商品取引業者に対して、基準購入額(2万円)を送金する(ステップS38)。すなわち、運営者のコンピュータ10は、自身の口座を運営する銀行のコンピュータ10D(
図1)に、その旨の信号を送信する(以下同様である)。
【0049】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA38)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA39)。これらのステップSA38及びSA39が、購入手段24に該当する。
【0050】
図2に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS70でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS72)。
すなわち、初回の購入内容として、市場価格mp
1=1,500円,基準購入額(2万円)分を購入した旨、購入口数pu
1=pa
1/mp
1=2万円/1,500円=13.3333が、初回購入履歴記憶部61(
図1)に記憶される。このステップS72も、変動購入依頼手段23に該当する。
【0051】
また、これまでの平均購入価格av
1が算出され、これも初回の購入履歴として初回購入履歴記憶部61(
図1)に記憶される(ステップS74)。このステップS74が、平均購入価格算出手段25に該当する。
今回は初回のため、これまでの平均購入価格av
1=今回の市場価格mp
1である。
こうして、初回の処理は終了する。
【0052】
初回以外は、購入期日において、ステップS14においてNoとなり、以下のように、所定の金融商品について、当該回(すなわち、その日)の市場価格と、それまで(すなわち前回まで)の平均購入価格とが比較される。
【0053】
まず、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品における今回の市場価格を問い合わせる(ステップS16)。これに応じて、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは今回の市場価格を送信し(ステップSA10)、運営者のコンピュータ10は、その通知を受信する(ステップS18)。
第2回の場合は、市場価格mp2が1,300円である旨の通知を受ける。
【0054】
次に、ステップS20において、今回の市場価格とこれまでの平均購入価格とが比較される。すなわち、第n回においては、当該回の市場価格mpnと、初回から第(n-1)回までの平均購入価格avn-1とが比較される。このステップS20が、比較手段21に該当する。
【0055】
第2回の場合は、市場価格mp2=1,300円と、これまでの平均購入価格(初回の購入価格)av1=1,500円とが比較される。
第2回の場合は、その際の市場価格mp2=1,300円がこれまでの平均購入価格av1=1,500円と比較して割安(mp2<av1)であるため、ステップS20においてYesとなり、ステップS60に進み、割増購入額6万円分を購入する。すなわち、第2回の購入金額pa2=6万円である。このステップS60が、変動購入手段22に該当する(変動購入手段22は、変動購入依頼手段23及び購入手段24からなる)。
【0056】
その購入の手順は、以下のとおりである。
図3Bに示すように、運営者のコンピュータ10は、銀行のコンピュータ10Bに対して、割増購入額(6万円)の送金を依頼する(ステップS65)。
これに基づいて、銀行は、運営者の口座に6万円を送金する(ステップSB65)。
【0057】
運営者のコンピュータ10は、その入金を確認した(ステップS66でYesになった)後に、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について割増購入額(6万円)分の買い付けを依頼する(ステップS67)。今回(第2回)の購入口数pu2は、pa2/mp2=6万円/1,300円=46.1538である。このステップS67も、変動購入依頼手段23に該当する。
また、運営者は、金融商品取引業者に対して、割増購入額(6万円)を送金する(ステップS68)。
【0058】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA68)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA69)。これらのステップSA68及びSA69も、購入手段24に該当する。
【0059】
図2に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS70でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS72)。
今回は、第2回の購入内容として、市場価格mp
2=1,300円,割増購入額(6万円)分を購入した旨、購入口数pu
2=pa
2/mp
2=6万円/1,300円=46.1538が、第2回購入履歴記憶部62(
図1)に記憶される(以下同様である)。
【0060】
また、これまでの平均購入価格av
2が制御部20(
図1)において算出され、これも第2回の購入履歴として第2回購入履歴記憶部62(
図1)に記憶される(ステップS74)(以下同様である)。
今回の購入口数pu
2は、pa
2/mp
2であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av
2は、次のようになる。
av
2=(pa
1+pa
2)/(pu
1+pu
2)
=(pa
1+pa
2)/(pa
1/mp
1+pa
2/mp
2)
=(2万+6万)/(2万/1,500+6万/1,300)
=(2万+6万)/(13.3333+46.1538)=8万/59.4871
=1,344.83円となる(小数点以下3桁目を四捨五入。以下同様)。
こうして、第2回の処理は終了する。
【0061】
第3回の場合は、ステップS18において、金融商品取引業者から、市場価格mp3が1,450円である旨の通知を受ける。
【0062】
次に、ステップS20において、今回の市場価格mp3=1,450円と、これまでの平均購入価格av2=1,344.83円とが比較される。
第3回の場合は、その際の市場価格mp3=1,450円がこれまでの平均購入価格av2=1,344.83円と比較して割高(mp3>av2)であるため、ステップS20においてNoとなり、ステップS30に進み、基準購入額である2万円分を購入して積み立てる。すなわち、第3回の購入金額pa3=2万円である。
【0063】
図3Aに示すように、その購入の手順は、初回と同様に以下のとおりである。
運営者のコンピュータ10は、銀行のコンピュータ10Bに対して、今回の購入金額pa
3=2万円の送金を依頼する(ステップS35)。
これに基づいて、銀行は、運営者の口座に2万円を送金する(ステップSB35)。
【0064】
運営者のコンピュータ10は、その入金を確認した(ステップS36でYesになった)後に、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について基準購入額(2万円)分の買い付けを依頼する(ステップS37)。今回(第3回)の購入口数pu3は、pa3/mp3=2万円/1,450円=13.7931である。
また、運営者は、金融商品取引業者に対して、基準購入額(2万円)を送金する(ステップS38)。
【0065】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA38)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA39)。
【0066】
図2に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS70でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS72)。
今回は、第3回の購入内容として、市場価格mp
3=1,450円,基準購入額(2万円)分を購入した旨、購入口数pu
3=pa
3/mp
3=2万円/1,450円=13.7931が記憶される。
【0067】
また、これまでの平均購入価格av
3が制御部20(
図1)において算出され、これも第3回の購入履歴として記憶される(ステップS74)。
今回の購入口数pu
3は、pa
3/mp
3であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av
3は、次のようになる。
av
3=(pa
1+pa
2+pa
3)/(pu
1+pu
2+pu
3)
=(pa
1+pa
2+pa
3)/(pa
1/mp
1+pa
2/mp
2+pa
3/mp
3)
=(2万+6万+2万)/(2万/1,500+6万/1,300+2万/1,450)
=(2万+6万+2万)/(13.3333+46.1538+13.7931)=10万/73.2802
=1,364.63円となる。
こうして、第3回の処理は終了する。
【0068】
第4回の場合は、ステップS18において、金融商品取引業者から、市場価格mp4が1,350円である旨の通知を受ける。
【0069】
次に、ステップS20において、今回の市場価格mp4=1,350円と、これまでの平均購入価格av3=1,364.62円とが比較される。
第4回の場合は、その際の市場価格mp4=1,350円がこれまでの平均購入価格av3=1,364.63円と比較して割安(mp4<av3)であるため、ステップS20においてYesとなり、ステップS60に進み、割増購入額である6万円分を購入して積み立てる。すなわち、第4回の購入金額pa4=6万円である。
【0070】
図3Bに示すように、その購入の手順は、第2回と同様に以下のとおりである。
運営者のコンピュータ10は、銀行のコンピュータ10Bに対して、今回の購入金額pa
4=6万円の送金を依頼する(ステップS65)。
これに基づいて、銀行は、運営者の口座に6万円を送金する(ステップSB65)。
【0071】
運営者のコンピュータ10は、その入金を確認した(ステップS66でYesになった)後に、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について割増購入額(6万円)分の買い付けを依頼する(ステップS67)。今回(第4回)の購入口数pu4は、pa4/mp4=6万円/1,350円=44.4444である。
また、運営者は、金融商品取引業者に対して、割増購入額(6万円)を送金する(ステップS68)。
【0072】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA68)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA69)。
【0073】
図2に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS70でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS72)。
今回は、第4回の購入内容として、市場価格mp
4=1,350円,割増購入額(6万円)分を購入した旨、購入口数pu
4=pa
4/mp
4=6万円/1,350円=44.4444が記憶される。
【0074】
また、これまでの平均購入価格av4が算出され、これも第4回の購入履歴として記憶される(ステップS74)。
今回の購入口数pu4=pa4/mp4であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av4は、次のようになる。
av4=(pa1+pa2+pa3+pa4)/(pu1+pu2+pu3+pu4)
=(pa1+pa2+pa3+pa4)/(pa1/mp1+pa2/mp2+pa3/mp3+pa4/mp4)
=(2万+6万+2万+6万)/(2万/1,500+6万/1,300+2万/1,450+6万円/1,350円)
=(2万+6万+2万+6万)/(13.3333+46.1538+13.7931+44.4444)
=16万/117.7246
=1,359.10円となる。
こうして、第4回の処理は終了する。
【0075】
上述と同様にして、第5回の場合は、市場価格mp5=1,400円がこれまでの平均購入価格av4=1,359.10円と比較して割高(mp5>av4)である(ステップS20でNo)ため、基準購入額である2万円分を購入して積み立てる(ステップS30)。すなわち、第5回の購入金額pa5=2万円である。
【0076】
運営者のコンピュータ10は、その購入を確認した(ステップS70でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS72)。すなわち、第5回の購入内容として、市場価格mp5=1,400円,基準購入額(2万円)分を購入した旨、購入口数pu5=pa5/mp5=2万円/1,400円=14.2857が記憶される。
【0077】
また、これまでの平均購入価格av5が算出され、これも第5回の購入履歴として記憶される(ステップS74)。
今回の購入口数pu5=pa5/mp5であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av5は、次のようになる。
av5=(pa1+…+pa5)/(pu1+…+pu5)
=(pa1+…+pa5)/(pa1/mp1+…pa5/mp5)
=(2万+6万+2万+6万+2万)/(2万/1,500+6万/1,300+2万/1,450+6万/1,350+2万/1,400)
=(2万+6万+2万+6万+2万)/(13.3333+46.1538+13.7931+44.4444+14.2857)
=18万/132.0103
=1,363.53円となる。
こうして、第5回の処理は終了する。
【0078】
以上のように、第n回の場合は、市場価格mp
nが、これまでの平均購入価格av
n-1と比較される。ここで、これまでの平均購入価格av
n-1は次のように算出される。
【数1】
【0079】
このように、この実施例の積立システムでは、これまでの平均購入価格と比較して市場価格が割安の場合は、そうでない場合よりも高額(3倍)の分の金融商品を購入するものである。
このため、定額購入法(ドル・コスト平均法)よりも、さらに平均購入価格を引き下げる効果が期待される。
その結果、顧客にとって、より投資効果が高まる(売却時損益及び評価損益が改善される)といえる。
【0080】
[実施例1の変形例1]
次に、実施例1の変形例1について、実施例1との相違点に基づいて説明する。
この変形例は、 購入の手順において、実施例1と相違する。
【0081】
初回,第3回のように、所定の金融商品について基準購入額分を購入する場合は、次のとおりである。
図4Aに示すように、まず、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について基準購入額(2万円)分の買い付けを依頼する(ステップS34)。このステップS34も、変動購入依頼手段23に該当する。
また、運営者のコンピュータ10は、銀行(顧客の口座を運営する銀行)のコンピュータ10Bに対して、基準購入額(2万円)の送金を依頼する(ステップS35)。すなわち、運営者のコンピュータ10は、銀行のコンピュータ10Bに対して、当該顧客の銀行口座から金融商品取引業者の口座にpa
1=2万円を送金する旨の信号を送信する(以下同様である)。
これに基づいて、銀行は、金融商品取引業者の口座に2万円を送金する(ステップSB35)。
【0082】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA38)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA39)。これらのステップSA38及びSA39も、購入手段24に該当する。
【0083】
一方、第2回,第4回のように、所定の金融商品について割増購入額分を購入する場合は、次のとおりである。
図4Bに示すように、まず、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について割増購入額(6万円)分の買い付けを依頼する(ステップS64)。このステップS64も、変動購入依頼手段23に該当する。
また、運営者のコンピュータ10は、銀行(顧客の口座を運営する銀行)のコンピュータ10Bに対して、基準購入額(6万円)の送金を依頼する(ステップS65)。
これに基づいて、銀行は、金融商品取引業者の口座に6万円を送金する(ステップSB65)。
【0084】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA68)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA69)。これらのステップSA68及びSA69も、購入手段24に該当する。
【0085】
上記変形例では、顧客の口座を運営する銀行(その口座)から、購入額(基準購入額又は割増購入額)が運営者の口座を介さずに直接的に金融商品取引業者の口座に送金される。
このため、その分、手順が簡略化され、金融商品の購入がより円滑に行われ得ることとなる。
【0086】
[実施例1の変形例2]
次に、実施例1(その変形例1を含む)の変形例2について、実施例1との相違点に基づいて説明する。
このシステムの運営者と金融商品取引業者とは同一であってもよい。その場合においては、
図5に示すように、運営者のコンピュータと金融商品取引業者のコンピュータとが同一となることが一般的である。
【0087】
その場合は、金融商品取引業者でもある運営者のコンピュータ10の制御部20が、変動購入手段22の機能を発揮する。
変動購入手段22は、実施例1(
図1)における変動購入依頼手段23及び購入手段24に該当するものである。変動購入手段22においては、比較手段21の比較結果に基づいて、基準購入額及割増購入額(変動購入額)のうちのいずれかの購入額が選択され、当該金融商品について当該購入額の分が購入する処理が実行されるとともに、当該顧客について記憶部30に記憶されている購入履歴が更新される。
【0088】
この変形例の場合は、
図2~
図3Bにおいて、金融商品取引業者のコンピュータ10Aのラインは運営者のコンピュータ10のラインに統合され、ステップS16・SA10(
図2),ステップS37・S38・SA39(
図3A),ステップS67・S68・SA69(
図3B)が存在しないこととなり、ステップSA38(
図3A),ステップSA68(
図3B)が変動購入手段22に該当することとなる。
同様に、
図4A,
図4Bにおいて、金融商品取引業者のコンピュータ10Aのラインは運営者のコンピュータ10のラインに統合され、ステップS34・SA39(
図4A),ステップS64・SA69(
図4B)が存在しないこととなり、ステップSA38(
図4A),ステップSA68(
図4B)が変動購入手段22に該当することとなる。
【0089】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について、
図6~
図8Cに基づいて説明する。
実施例2の積立システムは、定額引き落としタイプであり、購入額が3種類のタイプのものである。
例えば、毎月、定額の4万円ずつが引き落とされ、プール用の口座(プール用口座)にプールされる。そして、そのプール用口座にプールされた資金を原資として、金融商品が購入される。
3種の購入額としては、例えば、基準購入額が2万円であり、第1割増分が2倍,第2割増分が3倍の場合である。すなわち、第1増購入額(第1の変動購入額)が4万円,第2割増購入額(第2の変動購入額)が6万円の場合である。
【0090】
すなわち、金融商品の購入期日において、市場価格がこれまでの平均購入価格を基準に所定の範囲(平均購入価格を含む所定価格範囲内)の場合、すなわち、例えばこれまでの平均購入価格の90%~110%の範囲内の場合は、第1割増購入額(4万円)の分の金融商品が購入される。
市場価格がその所定の範囲よりも高額の場合は、基準購入額(2万円)の分の金融商品が購入される。また、市場価格がその所定の範囲よりも低額の場合には、第2割増購入額(6万円)の分の金融商品が購入される。
こうして、顧客の銀行口座から、毎月、定額の4万円がプール用口座に引き落とされ、それを原資として、毎月、基準購入額(2万円),第1割増購入額(4万円),第2割増購入額(6万円)のいずれかの口数の金融商品が購入され、積み立てられていくのである。
なお、このプール用口座は、運営者の名義のものでもよいし、顧客の名義のものでもよい。
【0091】
まずは、この積立システムの構成について、
図6に基づいて説明する。
この積立システムの構成は、実施例1における積立システムの構成とほぼ同様であるため、相違点を中心に説明する。
【0092】
運営者のコンピュータ10は、通信網95を介して、金融商品取引業者のコンピュータ10A,各顧客の口座を運営する銀行のコンピュータ10B,プール用口座を運営する証券会社又は銀行(以下「証券会社等」という)のコンピュータ10C等と接続され得る。
なお、プール用口座が顧客の名義のものの場合は、実施例1における「顧客の口座を運営する銀行」は、「顧客の大元の口座を運営する銀行」ということになり、プール用口座は顧客の名義ではあるが顧客の大元の口座とは別口座として各々設けられることとなる。
また、本実施例では、プール用口座は、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)、すなわち、オープン型の公社債投資信託の口座である。
【0093】
制御部20も、実施例1(
図1)とほぼ同様であるが、以下の点で相違する。
変動購入依頼手段23においては、比較手段21の比較結果に基づいて、基準購入額、第1割増購入額(第1の変動購入額)及び第2割増積立額(第2の変動購入額)のうちのいずれかの購入額が選択され、当該金融商品について、その選択された購入額の分を購入すべく購入依頼信号が、購入手段24に対して出力される。
【0094】
記憶部30も、実施例1(
図1)とほぼ同様であるが、以下の点で相違する。
設定内容記憶部52には、実施例1と同様に、この積立システムを当該顧客が利用する上での設定内容が記憶されるのであるが、「基準購入額及び割増購入額が各々いくらか」が「基準購入額、第1割増購入額及び第2割増購入額が各々いくらか」に置き換えられる。また、「平均購入価格を含む所定価格範囲」がどの範囲かも記憶される。
【0095】
証券会社等のコンピュータ10Cも制御部及び記憶部(いずれも図示省略)を有している。その制御部は、プール残高更新手段28の機能を発揮する。また、その記憶部には、プール情報記憶部55(プール情報記憶手段)がある。
プール情報記憶部55には、各顧客ごとに、プール用加算期日、プール用加算額、及び記憶されている。
【0096】
プール残高更新手段28においては、各顧客について、プール用口座に所定の入金が確認された場合に、プール用加算期日において、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高にプール用加算額を加算する処理が実行される。
変動購入依頼手段23(変動購入手段22)においては、実施例1において前述したように、所定の金融商品について所定の購入額の分を購入を依頼する(購入する)処理が実行されるとともに、プール残高更新指示信号がプール残高更新手段28に出力される。
プール残高更新手段28においては、上述のようにプール残高更新手段28から出力されたプール残高更新指示信号が入力されると、プール情報記憶55に記憶されているプール残高から、上記所定の購入額を減算する処理が実行される。
【0097】
次に、この金融商品積立システムの作動について、フローチャート(
図7~
図8C)に基づいて説明する。
この実施例2でも、実施例1と同様に、モデルケースとして、その金融商品の市場価格が次のように変動する場合を想定する。すなわち、初回の市場価格(1口あたりの価格)mp
1が1,500円,第2回(初回から1ヶ月後)の市場価格mp
2が1,300円,第3回(初回から2ヶ月後)の市場価格mp
3が1,450円,第4回(初回から3ヶ月後)の市場価格mp
4が1,350円,第5回(初回から4ヶ月後)の市場価格mp
5が1,400円と変動する場合を想定する。
また、先に例示したように、基準購入額が2万円であり、第1割増分が2倍,第2割増分が3倍であって、第1割増購入額が4万円,第2割増購入額が6万円の場合を想定する。
【0098】
図7に示すように、各月の所定の日である引落期日(プール用加算期日)には、顧客の銀行口座(大元の口座)から、定額の4万円がプール用口座に送金される(ステップSB110)。なお、この引落期日は、次述の購入期日と同日でもよいし、それより前の日でもよい。
これに基づいて、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高に4万円が加算される(ステップSC110)。このステップSC110が、プール残高更新手段28に該当する。
こうして、プール用口座には、毎月4万円ずつがプールされていく。
【0099】
各月の所定の日になると購入期日となり(ステップS110でYesとなり)、上述のプール用口座への入金が確認できた場合(ステップS112でYesになった場合)、以下のステップに進むことによって、プール用口座から所定の金融商品が購入される。
【0100】
初回の場合(ステップS114でYes)は、これまでの購入実績がないため、これまでの平均購入価格と比較することなく(すなわち、ステップS120の判断を受けることなく)、基準購入額である2万円分を購入して積み立てる(ステップS130)。すなわち、初回の購入金額pa1=2万円である。このステップS130が、変動購入手段に該当する。
なお、この態様に限らず、初回は第1割増購入額である4万円分又は第2割増購入額である6万円分を購入する、という態様でもよい。また、初回については、基準購入額及び第1・第2割増積立額以外の金額でもよい。
【0101】
その購入の手順は、以下のとおりである。
図8Aに示すように、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について基準購入額(2万円)分の買い付けを依頼する(ステップS134)。すなわち、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに、その旨の信号を送信する(以下同様である)。今回(初回)の購入口数pu
1は、pa
1/mp
1=2万円/1,500円=13.3333である。このステップS134が、変動購入依頼手段23に該当する。
【0102】
また、運営者のコンピュータ10は、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cに対して、基準購入額(2万円)の送金を依頼する(ステップS135)。すなわち、運営者のコンピュータ10は、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cに対して、当該プール用口座から金融商品取引業者の口座にpa1=2万円を送金する旨の信号(プール残高から今回の購入額を減算する旨の更新指示の信号を伴う)を送信する(以下同様である)。
これに基づいて、プール用口座を運営する証券会社等は、金融商品取引業者の口座に2万円を送金するとともに、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高から2万円が減算される(ステップSC135)。このステップSC135も、プール残高更新手段28に該当する。
【0103】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA138)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA139)。これらのステップSA138及びSA139が、購入手段24に該当する。
【0104】
図7に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS170でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS172)。
すなわち、初回の購入内容として、市場価格mp
1=1,500円,基準購入額(2万円)分を購入した旨、購入口数pu
1=pa
1/mp
1=2万円/1,500円=13.3333が、初回購入履歴記憶部61(
図6)に記憶される。このステップS172も、変動購入依頼手段23に該当する。
【0105】
また、これまでの平均購入価格av
1が算出され、これも初回の購入履歴として初回購入履歴記憶部61(
図6)に記憶される(ステップS174)。このステップS174が、平均購入価格算出手段25に該当する。
今回は初回のため、これまでの平均購入価格av
1=今回の市場価格mp
1である。
こうして、初回の処理は終了する。
【0106】
初回以外は、購入期日において、ステップS114においてNoとなり、以下のように、所定の金融商品について、当該回(すなわち、その日)の市場価格と、それまで(すなわち前回まで)の平均購入価格とが比較される。
【0107】
まず、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品における今回の市場価格を問い合わせる(ステップS116)。これに応じて、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは今回の市場価格を送信し(ステップSA110)、運営者のコンピュータ10は、その通知を受信する(ステップS118)。
第2回の場合は、市場価格mp2が1,300円である旨の通知を受ける。
【0108】
次に、ステップS120(及びステップS140)において、今回の市場価格とこれまでの平均購入価格とが比較される。すなわち、第n回においては、当該回の市場価格mpnと、初回から第(n-1)回までの平均購入価格avn-1とが比較される。これらステップS120及びS140が、比較手段21に該当する。
【0109】
第2回の場合は、市場価格mp2=1,300円と、これまでの平均購入価格(初回の購入価格)av1=1,500円とが比較される。
第2回の場合は、その際の市場価格mp2=1,300円が、これまでの平均購入価格av1を基準とする所定の範囲(av1×90% ~av1×110%)よりも低額である。すなわち、当該所定の範囲の下限である1,500円×90%=1,350円よりも低額(mp2<av1×90%)であるため、ステップS120及びステップS140においてYesとなり、本来的にはステップS160に進み、第2割増購入額6万円分を購入しようとする。
【0110】
しかしながら、今回のように第2割増購入額分を購入しようとする場合は、まず、運営者のコンピュータ10は、プール用口座の残高を確認する(ステップS141)。前述したように直前に4万円の入金を受けており(ステップSB110)、その確認済み(ステップS112でYes)のため、プール用口座には4万円以上の残高はあるが、6万円以上の残高があるとは限らないからである。
そこで、まずはプール用口座の残高が確認され(ステップS141)、プール用口座の残高が第2割増購入額(6万円)以上か否かが判断される(ステップS142)。
【0111】
プール用口座の残高が第2割増購入額(6万円)以上の場合は、ステップS142でYesとなり、本来どおりステップS160に進み、第2割増購入額である6万円分を購入し積み立てる。すなわち、第2回の購入金額pa2=6万円である。このステップS160が、変動購入手段に該当する。
【0112】
一方、プール用口座の残高が第2割増購入額(6万円)未満の場合は、ステップS142でNoとなり、変則的扱いとしてステップS150に進み、第1割増購入額である4万円分を購入し積み立てる。このステップS150も、変動購入手段に該当する。これについては後述する。
【0113】
ステップS160に進んで第2割増購入額である6万円分を購入し積み立てる際の手順は、
図8Cに示すように、以下のとおりである。
運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について第2割増購入額(6万円)分の買い付けを依頼する(ステップS164)。今回(第2回)の購入口数pu
2は、pa
2/mp
2=6万円/1,300円=46.1538である。このステップS164も、変動購入依頼手段23に該当する。
【0114】
また、運営者のコンピュータ10は、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cに対して、第2割増購入額(6万円)の送金を依頼する(ステップS165)。
これに基づいて、プール用口座を運営する証券会社等は、金融商品取引業者の口座に6万円を送金する(ステップSC165)。
これに基づいて、プール用口座を運営する証券会社等は、金融商品取引業者の口座に6万円を送金するとともに、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高から6万円が減算される(ステップSC165)。このステップSC165も、プール残高更新手段28に該当する。
【0115】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA168)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA169)。これらのステップSA168及びSA169も、購入手段24に該当する。
【0116】
図7に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS170でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS172)。
今回は、第2回の購入内容として、市場価格mp
2=1,300円,割増購入額(6万円)分を購入した旨、購入口数pu
2=pa
2/mp
2=6万円/1,300円=46.1538が、第2回購入履歴記憶部62(
図6)に記憶される(以下同様である)。
【0117】
また、これまでの平均購入価格av
2が制御部20(
図6)において算出され、これも第2回の購入履歴として第2回購入履歴記憶部62(
図6)に記憶される(ステップS174)。
今回の購入口数pu
2は、pa
2/mp
2であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av
2は、次のようになる。
av
2=(pa
1+pa
2)/(pu
1+pu
2)
=(pa
1+pa
2)/(pa
1/mp
1+pa
2/mp
2)
=(2万+6万)/(2万/1,500+6万/1,300)
=(2万+6万)/(13.3333+46.1538)=8万/59.4871
=1,344.83円となる。
こうして、第2回の処理は終了する。
【0118】
第3回の場合は、ステップS118において、金融商品取引業者から、市場価格mp3が1,450円である旨の通知を受ける。
【0119】
次に、ステップS120(及びステップS140)において、今回の市場価格mp3=1,450円と、これまでの平均購入価格av2=1,344.83円とが比較される。
第3回の場合は、その際の市場価格mp3=1,450円が、これまでの平均購入価格av2を基準とする所定の範囲(av2×90% ~av2×110%)内である。
すなわち、今回の市場価格mp3=1,450円が当該所定の範囲の上限である1,344.83円×110%=1479.31円以下(mp3≦av2×110%)である(ステップS120でYes)とともに、当該所定の範囲の下限である1,344.83円×90%=1,210.34円以上(mp3≧av2×90%)である(ステップS140でNo)ため、ステップS150に進み、第1割増購入額4万円分を購入して積み立てる。すなわち、第3回の購入金額pa3=4万円である。このステップS150も、変動購入手段に該当する。
【0120】
なお、前述したように、プール用口座には、直前に顧客の銀行口座(大元)から4万円の送金を受けており、プール用口座の残高は4万円以上である。今回は第1割増購入額(4万円)分を購入するものであるため、プール用口座の残高は足りているといえる。そこで、プール用口座の残高を事前に確認する必要ない(ステップS141及びS142の処理は不要である)。このことは、基準購入額(2万円)分を購入する場合も同様である。
【0121】
図8Bに示すように、その購入の手順は、以下のとおりである。
運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について第1割引購入額(4万円)分の買い付けを依頼する(ステップS154)。今回(第3回)の購入口数pu
3は、pa
3/mp
3=4万円/1,450円=27.5862である。このステップS154も、変動購入依頼手段23に該当する。
【0122】
また、運営者のコンピュータ10は、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cに対して、第1割増購入額(4万円)の送金を依頼する(ステップS155)。
これに基づいて、プール用口座を運営する証券会社等は、金融商品取引業者の口座に4万円を送金するとともに、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高から4万円が減算される(ステップSC155)。このステップSC155も、プール残高更新手段28に該当する。
【0123】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA158)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA159)。これらのステップSA158及びSA159も、購入手段24に該当する。
【0124】
図7に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS170でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS172)。
今回は、第3回の購入内容として、市場価格mp
3=1,450円,第1割増購入額(4万円)分を購入した旨、購入口数pu
3=pa
3/mp
3=4万円/1,450円=27.5862が記憶される。
【0125】
また、これまでの平均購入価格av3が算出され、これも第3回の購入履歴として記憶される。
今回の購入口数pu3は、pa3/mp3であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av3は、次のようになる。
av3=(pa1+pa2+pa3)/(pu1+pu2+pu3)
=(pa1+pa2+pa3)/(pa1/mp1+pa2/mp2+pa3/mp3)
=(2万+6万+4万)/(2万/1,500+6万/1,300+4万/1,450)
=(2万+6万+4万)/(13.3333+46.1538+27.5862)
=12万/87.0733
=1,378.15円となる。
こうして、第3回の処理は終了する。
【0126】
第4回の場合は、ステップS118において、金融商品取引業者から、市場価格mp4が1,350円である旨の通知を受ける。
【0127】
次に、ステップS120(及びステップS140)において、今回の市場価格mp4=1,350円と、これまでの平均購入価格av3=1,378.14円とが比較される。
第4回の場合も、その際の市場価格mp4=1,350円が、これまでの平均購入価格av3を基準とする所定の範囲(av3×90% ~av3×110%)内である。
すなわち、今回の市場価格mp4=1,350円が当該所定の範囲の上限である1,378.14×110%=1,515.95円以下(mp4≦av3×110%)である(ステップS120でYes)とともに、当該所定の範囲の下限である1,378.14×90%=1240.32円以上(mp4≧av3×90%)である(ステップS140でNo)ため、ステップS150に進み、第1割増購入額4万円分を購入して積み立てる。すなわち、第4回の購入金額pa4=4万円である。
【0128】
図8Bに示すように、その購入の手順は、第3回と同様に以下のとおりである。
運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について第1割引購入額(4万円)分の買い付けを依頼する(ステップS154)。今回(第4回)の購入口数pu
4は、pa
4/mp
4=4万円/1,350円=29.6296である。
【0129】
また、運営者のコンピュータ10は、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cに対して、第1割増購入額(4万円)の送金を依頼する(ステップS155)。
これに基づいて、プール用口座を運営する証券会社等は、金融商品取引業者の口座に4万円を送金するとともに、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高から2万円が減算される(ステップSC155)。
【0130】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA158)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA159)。
【0131】
図7に戻り、運営者のコンピュータ10は、その買い付け(購入)を確認した(ステップS170でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS172)。
今回は、第4回の購入内容として、市場価格mp
4=1,350円,第1割増購入額(4万円)分を購入した旨、購入口数pu
4=pa
4/mp
4=4万円/1,350円=29.6296が記憶される。
【0132】
また、これまでの平均購入価格av4が算出され、これも第4回の購入履歴として記憶される(ステップS174)。
今回の購入口数pu4=pa4/mp4であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av4は、次のようになる。
av4=(pa1+pa2+pa3+pa4)/(pu1+pu2+pu3+pu4)
=(pa1+pa2+pa3+pa4)/(pa1/mp1+pa2/mp2+pa3/mp3+pa4/mp4)
=(2万+6万+4万+4万)/(2万/1,500+6万/1,300+4万/1,450+4万/1,350)
=(2万+6万+4万+4万)/(13.3333+46.1538+27.5862+29.6296)
=16万/116.7029
=1,371.00円となる。
こうして、第4回の処理は終了する。
【0133】
上述と同様にして、第5回の場合は、市場価格mp5=1,400円がこれまでの平均購入価格av4=1,371.00円を基準に所定の範囲内(av4×90 %≦mp5≦av4×110 %)であるため、第1割増立額である4万円分を購入して積み立てる。すなわち、第5回の購入金額pa5=4万円である。
【0134】
運営者のコンピュータ10は、その購入を確認した(ステップS170でYesとなった)後に、顧客の購入履歴を更新する(ステップS172)。すなわち、第5回の購入内容として、市場価格mp5=1,400円,第1割増購入額(4万円)分を購入した旨、購入口数pu5=pa5/mp5=4万円/1,400円=28.5714が記憶される。
【0135】
また、これまでの平均購入価格av5が算出され、これも第5回の購入履歴として記憶される(ステップS174)。
今回の購入口数pu5=pa5/mp5であり、今回を含めたこれまでの平均購入価格av5は、次のようになる。
av5=(pa1+…+pa5)/(pu1+…+pu5)
=(pa1+…+pa5)/(pa1/mp1+…pa5/mp5)
=(2万+6万+4万+4万+4万)/(2万/1,500+6万/1,300+4万/1,450+4万/1,350+4万/1,400)
=(2万+6万+4万+4万+4万)/(13.3333+46.1538+27.5862+29.6296+28.5714)
=20万/145.2743
=1,376.71円となる。
こうして、第5回の処理は終了する。
【0136】
以上のように、第n回の場合は、市場価格mp
nが、これまでの平均購入価格av
n-1と比較される。ここで、これまでの平均購入価格av
n-1は次のように算出される。
【数2】
【0137】
このように、この実施例の積立システムでは、市場価格がこれまでの平均購入価格とほぼ同額(所定の範囲内)の場合は基準購入額の2倍(プール用口座への月々の引落額と同額)の分の金融商品を購入し、市場価格がこれまでの平均購入価格と比較して割高(上記所定の範囲よりも高額)の場合は基準購入額(プール用口座への月々の引落額の半額)の分の金融商品を購入し、市場価格がこれまでの平均購入価格と比較して割安(上記所定の範囲よりも低額)の場合は基準購入額の3倍(プール用口座への月々の引落額の1.5倍)の分の金融商品を購入するものである。
このため、実施例1の積立システムと同様に、定額購入法(ドル・コスト平均法)よりも、さらに平均購入価格を引き下げる効果が期待される。
その結果、顧客にとって投資効果が高まる(売却時損益及び評価損益が改善される)といえる。
【0138】
また、実施例1は購入額が2段階であるところ、実施例2は3段階であるため、市場価格とこれまでの平均購入価格との比較の上に、より細かな対応をした投資を行うことが可能となり、積立金額の平準化と積立累計額増加の安定性を高めることが期待できることとなる。
【0139】
また、実施例1は月々の引落額(顧客の口座からの引落額)が購入額に沿って変動するものであるところ、実施例2では、月々の引落額が定額である。
このため、顧客にとって、自身の口座の管理が容易なものとなる。
【0140】
また、実施例2では、自身の口座から月々定額の金額が引き落とされ、その金額はプール用口座にプールされ、プール用口座にプールされた資金を原資として上述の積み立てが行われる。
このため、一般的には、プール用口座には、上述の積み立てに使用されない資金が残ることとなるが、前述したようにそれはMRFとして運用されるため、その点で収益性が悪化することが低減されるとともに、投資先がその分増えることによって、リスクの分散がされることになる。
【0141】
[実施例2の変形例1]
次に、
図9及び
図10に基づいて、実施例2の変形例について、実施例2との相違点に基づいて説明する。
この変形例は、第2割増購入額分を購入しようとする際の積み立て手順において、実施例2と相違する。
このため、
図9のフローチャートは、
図7中のステップS141及びS142が存在しない点で、
図7のフローチャート(実施例2)と相違する。また、
図10は、
図8C(実施例2)に置き換わるものである。
【0142】
図7に基づいて前述したように、
図9に示すように、初回以外は、ステップS120(及びステップS140)において、今回の市場価格とこれまでの平均購入価格とが比較される。
第2回の場合は、市場価格mp
2=1,300円と、これまでの平均購入価格(初回の購入価格)av
1=1,500円とが比較される。
第2回の場合は、その際の市場価格mp
2=1,300円が、これまでの平均購入価格av
1を基準とする所定の範囲(av
1×90% ~av
1×110%)よりも低額である。すなわち、当該所定の範囲の下限である1,500円×90%=1,350円よりも低額(mp
2<av
1×90%)であるため、ステップS120及びステップS140においてYesとなり、ステップS160に進み、第2割増購入額6万円分を購入する。すなわち、第2回の購入金額pa
2=6万円である。このステップS160も、変動購入手段に該当する。
【0143】
その購入の手順は、以下のとおりである。
図10に示すように、今回のように第2割増購入額分を購入しようとする場合は、まず、運営者のコンピュータ10は、プール用口座の残高を確認する(ステップS161)。
図7に基づいて前述したように直前に4万円の入金を受けており(ステップSB110)、その確認済み(ステップS112でYes)のため、プール用口座には4万円以上の残高はあるが、6万円以上の残高があるとは限らないからである。
残高が第2割増購入額(6万円)に満たない(ステップSC162でNo)場合は、顧客の口座(大元)を運営する銀行のコンピュータ10Bに対して、所定の追加送金の依頼をする(ステップS163)。これを受けて、顧客の口座(大元)を運営する銀行は、プール用口座に対して追加送金を行う(ステップSB163)。
【0144】
これに基づいて、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高に、追加送金された金額が増額される(SC163)。このステップSC163も、変動購入手段の一部である。
そして、残高が第2割増購入額(6万円)以上であることが確認できた場合(ステップS162でYes)には、まず、運営者のコンピュータ10は、金融商品取引業者のコンピュータ10Aに対して、所定の金融商品について第2割増購入額(6万円)分の買い付けを依頼する(ステップS164)。今回(第2回)の購入口数pu2は、pa2/mp2=6万円/1,300円=46.1538である。このステップS164も、変動購入依頼手段23に該当する。
【0145】
また、運営者のコンピュータ10は、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cに対して、第2割増購入額(6万円)の送金を依頼する(ステップS165)。
これに基づいて、プール用口座を運営する証券会社等は、金融商品取引業者の口座に6万円を送金するとともに、プール情報記憶部55に記憶されているプール残高から6万円が減算される(ステップSC165)。
【0146】
これらに基づいて、金融商品取引業者は、顧客のために、所定の金融商品について、その口数の分を買い付ける(ステップSA168)。その後、金融商品取引業者のコンピュータ10Aは、その買い付け(購入)が完了した旨の通知を運営者のコンピュータ10に送信する(ステップSA169)。これらのステップSA168及びSA169も、購入手段24に該当する。
図9に戻り、その後はステップS170に進み、実施例2(
図7)と同様の処理がされる。
【0147】
上記変形例では、今回の市場価格とこれまでの平均購入価格との比較の結果、本来的には第2割増購入額(期日ごとにプール用口座に定額送金される金額より高額の購入額)の分を購入しようとする際には、プール用口座の残高がそれに満たない場合であっても、追加送金を受けることによって、あくまで本来どおりの購入額の分を購入することとなる。
【0148】
[実施例2の変形例2]
次に、実施例2(その変形例1を含む)の変形例2について、実施例2との相違点に基づいて説明する。
実施例1の変形例2と同様に、このシステムの運営者と金融商品取引業者とは同一であってもよい。その場合においては、
図11に示すように、運営者のコンピュータと金融商品取引業者のコンピュータとが同一となることが一般的である。
【0149】
その場合は、金融商品取引業者でもある運営者のコンピュータ10の制御部20が、変動購入手段22の機能を発揮する。
変動購入手段22は、実施例1(
図1)における変動購入依頼手段23及び購入手段24に該当するものである。変動購入手段22においては、比較手段21の比較結果に基づいて、基準購入額及割増購入額(変動購入額)のうちのいずれかの購入額が選択され、当該金融商品について当該購入額の分が購入する処理が実行されるとともに、当該顧客について記憶部30に記憶されている購入履歴が更新される。
【0150】
この変形例の場合は、
図7~
図8Cにおいて、金融商品取引業者のコンピュータ10Aのラインは運営者のコンピュータ10のラインに統合され、ステップS116・SA110(
図7),ステップS134・SA139(
図8A),ステップS154・SA159(
図8B),ステップS164・SA169(
図8C)が存在しないこととなり、ステップSA138(
図8A),ステップSA158(
図8B),ステップSA168(
図8C)が変動購入手段22に該当することとなる。
同様に、
図9,
図10においても、金融商品取引業者のコンピュータ10Aのラインは運営者のコンピュータ10のラインに統合され、ステップS116・SA110(
図9),ステップS164・SA169(
図10)が存在しないこととなり、ステップSA168(
図10)が変動購入手段22に該当することとなる。
【0151】
[実施例2の変形例3]
次に、実施例2(その変形例1を含む)の変形例3について、実施例2との相違点に基づいて説明する。
このシステムの運営者と証券会社等(プール用口座を運営する者)とは同一であってもよい。その場合においては、
図12に示すように、運営者のコンピュータと証券会社等のコンピュータとが同一となることが一般的である。
【0152】
その場合は、証券会社等でもある運営者のコンピュータ10の制御部20が、プール残高更新手段28の機能を発揮する。
また、証券会社等でもある運営者のコンピュータ10の記憶部20における顧客情報記憶部40のうちの各顧客情報記憶部(例えば、第X顧客情報記憶部4X)に、プール情報記憶部55が設けられる。
【0153】
この変形例の場合は、
図7~
図8Cにおいて、プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ10Cのラインは運営者のコンピュータ10のラインに統合され、ステップS135(
図8A),ステップS155(
図8B),ステップS165(
図8C)が存在しないこととなる。
図9,
図10においても、金融商品取引業者のコンピュータ10Aのラインは運営者のコンピュータ10のラインに統合され、ステップS165(
図10)が存在しないこととなる。
【0154】
[実施例2の変形例4]
プール用口座は、MRF以外の投資性を有する他の口座であってもよい。また、プール用口座は、一般的な銀行の口座等のように投資性を有さない口座でもよく、その口座から、その残った資金(その一部又は全部)を他の投資に使用することも可能である。
【0155】
[他の実施例]
上述の実施例1及び実施例2の他に、実施例1及び実施例2の中間のものとして、以下の実施例がある。
【0156】
<実施例1及び実施例2の中間の実施例その1>
この実施例は、実施例1と同様に変額引き落としタイプであり、実施例2と同様に購入額が3種類のタイプである。
この実施例においては、
図2のフローチャートをベースに、そのステップS20,S30,S60が、
図7のフローチャートのステップS120,S130,S150,S160に置き換えられ、S130,S150,S160の具体的積み立て手順は
図3A及び
図3Bのフローチャートが応用されたフローチャートの作動が実行される。
【0157】
<実施例1及び実施例2の中間の実施例その2>
この実施例は、実施例2と同様に定額引き落としタイプであり、実施例1と同様に購入額が2種類のタイプである。
この実施例においては、
図7のフローチャートをベースに、そのステップS120,S130,S150,S160が、
図2のフローチャートのステップS20,S30,S60に置き換えられ、S30,S60の具体的積み立て手順は
図8A及び
図8Cのフローチャートが応用されたフローチャートの作動が実行される。
【0158】
[4件の実施例の効果]
上述の4件の実施例の効果について、比較例と比較して説明する(なお、実施例2の変形例1及びそれに関連するものは含まない)。
比較例は、定額購入法(ドル・コスト平均法)によって、毎月4万円分の金融商品を購入し積み立てたものである。
そして、いずれも、平成11年(1991年)~令和2年(2020年)の東京証券取引所の毎月の最終営業日における東証株価指数(TOPIX)の終値を仮想的に適用したものである。
その結果、下記の表のようになった。
なお、この表においては、プール用口座における運用利益は含まれていない。
【表1】
この表において「中間1」及び「中間2」とは、上述の「実施例1及び実施例2の中間の実施例その1」及び「実施例1及び実施例2の中間の実施例その2」のことである。
実施例2,実施例1及び実施例2の中間の実施例その2において、MRFについて、資金がプールされている期間中の平均残高を年換算利回り0.0014%で運用されたものと仮想的に適用した場合には、上記表のプール残高の他に、実施例2では受取利息(税控除前)累計額として10,232円、実施例1及び実施例2の中間の実施例その2では受取利息(税控除前)累計額として14,861円が見込まれるものとなる。
【0159】
そして、比較例の平均購入単価が1,252.5円であるところ、実施例1~実施例2の平均購入価格は、各々、1,141.3円,1,151.6円,1,166.3円,1,184.1円であり、いずれも比較例の平均購入価格よりも安価となり、投資効果が向上したことがわかる。
また、比較例の単位引き落し累計あたりの評価損益(評価損益/引き落し累計)が44.09%であるところ、実施例1~実施例2においては、各々、58.12%,56.71%,47.82%,46.66%であり、いずれも比較例と比較して収益性が高く、投資効果が向上したことがわかる。
上記の評価損益はプール残高によるMRFへの運用分を含むものであるが、それを含まない積立投資分のみを考慮すると、以下のとおりである。
比較例の単位積立投資あたりの評価損益(評価損益/積立投資)は上記と同様に44.09%であるところ、実施例1~実施例2においては、各々、58.12%,56.71%,54.74%,52.41%であり、この指標においても、いずれも比較例と比較して収益性が高く、投資効果が向上したことがわかる。
【0160】
なお、上記のものはあくまで本発明の複数の実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0161】
10 運営者のコンピュータ
10A 金融商品取引業者のコンピュータ
10B 顧客の口座を運営する銀行のコンピュータ
10C プール用口座を運営する証券会社等のコンピュータ
10D 運営者の口座を運営する銀行のコンピュータ
21,S20,S120,S140 比較手段
22 変動購入手段
23,S34,S37,S64,S67,S72,S134,S154,S164,S172 変動購入依頼手段
24 SA38,SA39,SA68,SA69,SA138,SA139,SA158,SA159,SA168,SA169 購入手段
25 S74,S174 平均購入価格算出手段
28 SC110 SC135 SC155 SC165 プール残高更新手段
30 記憶部(記憶手段)
55 プール残高記憶部(プール残高記憶手段)